説明

難燃タフテッドカーペット

【課題】本発明は、大掛かりな設備、及び煩雑な工程を必要とせず、また、カーペットのパイル表面の風合いが低下する事無く、持続性のある、十分な難燃性が付与されたタフテッドカーペット提供する。
【解決手段】タフテッドカーペットを製造する工程、基布2にパイル3を植設、及び裏面に裏貼層5を積層する前に、基布2に予め難燃剤を含浸させることにより、タフテッドカーペットに優れた、各種用途の燃焼試験に対応した難燃性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布に予め難燃剤を含浸させることにより、優れた難燃性が付与された難燃タフテッドカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車輌、自動車、船舶等の乗物用座席や、家庭、オフィス等のフロアにタフテッドカーペットが多く使用されている。一方、火災時の安全性を高めるために、これらのインテリア製品において難燃化が強く要望されている。その難燃性を付与するために、特許文献1では、パイルの表面を難燃剤により処理したものが提案されている。しかし、表面処理では、カーペットのパイル表面の風合いが低下し、カーペットを靴等で使用する際に、表面処理剤が落脱するため、難燃性が持続できないという問題があった。また、特許文献2では、パイルに難燃剤を練り込む方法として、ナイロン6とナイロン66の混合物に無機難燃化剤を添加した糸を用いたカーペットが提案されているが、大掛かりな設備を要するという問題があった。
【0003】
さらに、特許文献3では、自己消火性を有する難燃性繊維を用いてタフトカーペット基布用不織布にする方法が提案されている。しかし、高価な基布となり、十分な難燃効果は得られなかった。また、特許文献4,5では、裏面に設けられる裏貼層に難燃剤を含有せしめることが行われている。しかしながら、裏面だけの難燃性では表面パイルの燃焼は抑えられず、難燃性としては不十分なものであった。
【特許文献1】特開平5−33270号公報
【特許文献2】特開昭58−104218号公報
【特許文献3】特開昭50−65648号公報
【特許文献4】特開平6−166148号公報
【特許文献5】特開2001−73275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、大掛かりな設備、及び煩雑な工程を必要とせず、十分な難燃性が付与されたフテッドカーペット提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、タフテッドカーペットを製造する工程、基布にパイルを植設、及び裏面に裏貼層を積層する前に、基布に予め難燃剤を含浸させることにより、タフテッドカーペットに優れた難燃性を付与することができることを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0006】
[1]基布にパイルが植設された表面パイル層と、該表面パイル層の裏面に積層された裏貼層からなるタフテッドカーペットにおいて、前記基布に予め難燃剤を含浸させることを特徴とする難燃タフテッドカーペット。
【0007】
[2]前記基布がポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等から選ばれる少なくとも一種以上の合成樹脂繊維からなる織布、または不織布からなることを特徴とする前項1に記載の難燃タフテッドカーペット。
【0008】
[3]前記難燃剤が、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等の有機難燃剤、金属水酸化物やアンチモン系難燃剤等の無機難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の難燃剤からなることを特徴とする前項1または2に記載の難燃タフテッドカーペット。
【0009】
[4]前記基布に前記難燃剤を浸漬法又はスプレー法により、予め含浸させることを特徴とす前項1乃至3に記載の難燃タフテッドカーペット。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明では、基布にパイルが植設された表面パイル層と、該表面パイル層の裏面に積層された裏貼層からなるタフテッドカーペットにおいて、前記基布に予め難燃剤を含浸させることにより、大掛かりな設備、及び煩雑な工程を必要とせず、十分な難燃性が付与されたタフテッドカーペットとなる。
【0011】
[2]の発明では、基布がポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等から選ばれる少なくとも一種以上の合成樹脂繊維からなる織布、または不織布からなることから、付与する難燃剤が十分に浸透し、耐久性のある優れた難燃性を有するタフテッドカーペットとなり、パイルの把持力もあり、タフテッドカーペットの形状も安定させることができる。
【0012】
[3]の発明では、難燃剤が、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等の有機難燃剤、金属水酸化物やアンチモン系難燃剤等の無機難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の難燃剤からなることから、各種燃焼試験においても、優れた難燃性を示し、耐久性のある優れた難燃性を有するタフテッドカーペットとなる。
【0013】
[4]の発明では、基布に前記難燃剤を浸漬法又はスプレー法により予め含浸さることから、大掛かりな設備、及び煩雑な工程を必要とせず、簡易な工法により、十分な難燃性が付与されたタフテッドカーペットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の難燃タフテッドカーペットは、基布にパイルが植設された表面パイル層と、該表面パイル層の裏面に積層された裏貼層からなるタフテッドカーペットにおいて、前記基布に予め難燃剤を含浸させることにより、簡易な工法で、タフテッドカーペットに優れた難燃性を付与することができることを見出し本発明に到達したものである。
【0015】
以下この発明に係わる難燃タフテッドカーペット(1)の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。この発明の難燃タフテッドカーペット(1)は、図1に示すように、予め難燃剤を含浸させた基布(2)にパイル(3)が植設された表面パイル層(4)と、裏貼層(5)が積層一体化されてなるものである。
【0016】
本発明における難燃タフテッドカーペット(1)の表面パイル層(4)はタフティング機により基布(2)にパイル(3)を植設され、表面パイル層(4)の形態としては、カットパイル、ループパイル、カットアンドループ等どの様な形態でも用いることができる。
【0017】
前記パイル(3)を構成するパイル素材としては、一般的にカーペット素材として使用しているものを用いればよく、ウール、麻、コットン等の天然繊維やポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成樹脂繊維等が挙げられる。
【0018】
前記パイル(3)の繊度は800〜4000dtexのパイル糸を用いることが好ましい。上記範囲のパイル(3)を用いれば、良好な見栄えとなり、踏み心地の良好なカーペットとなる。800dtexを下回れば、透けが発生し見苦しい表情のカーペットとなり、4000dtexを上回れば経済的にも不利となり、重量が嵩み運搬、収納等に問題が生じる。
【0019】
本発明における基布(2)は、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等から選ばれる少なくとも一種以上の合成樹脂繊維からなる織布、または不織布からなることを特徴とする。ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等から選ばれる少なくとも一種以上の合成樹脂繊維からなることにより、難燃剤を十分に含浸し保持することが可能で、耐久性のある難燃性を有する難燃タフテッドカーペット(1)とすることができる。また耐水性もあり、タフテッドカーペットの形状も安定させることができる。
【0020】
基布(2)の構造はパイルの把持力があれば、織布または不織布どちらでも良く、織布とした場合は経糸と横糸で織られた構成となり、組織は特に限定されず、平織り、綾織、朱子織、変形組織等の織基布であればかまわない。経糸としてはフラットヤーン(透明)が一般に多く使われていて好ましい。また、横糸としては着色されたフラットヤーン、または着色された糸表面に毛羽のある紡績糸からなるものがより好ましい。横糸を紡績糸とすることにより、基布(2)のタッチ感が柔らかく暖かいものとなり、経糸と横糸が共にフフラットヤーンである場合よりは敷物として好適であり、目付としては50〜400g/m程度のものが好適である。
【0021】
不織布とした場合は、タフティング機のニードルの貫通の際に抵抗が少なく、クッション性のあるものが好適で、ニードルパンチ不織布で目付50〜400g/m程度のものが好適である。
【0022】
本発明の最大の特徴として、基布(2)に予め難燃剤を含浸させる必要がある。含浸させる難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等の有機難燃剤、金属水酸化物やアンチモン系難燃剤等の無機難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の難燃剤からなることを特徴とする。有機難燃剤は添加量が比較的小量ですむため、含浸させるのに有効である。有機難燃剤としては、ハロゲン化ジフェニルスルフィド類などのハロゲン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、トリフェニルホスフェート等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモエタン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロデカン等の臭素系難燃剤、塩素化パラフィン、塩化ジフェニル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン等の塩素系難燃剤等が主に挙げられる。
【0023】
前記有機難燃剤の配合量は、含浸溶剤100重量部に対して2〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、更に好ましくは4〜15重量部である。有機難燃剤の量が2重量部未満では効果がなく、一方、50重量部を超えると、不必要な着色やブリーディングが生じると共に、廃棄物処理時における環境汚染の問題が大きくなる。
【0024】
無機難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズの水和物、ホウ砂等の無機金属化合物の水和物、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤が挙げられる。上記の中では、特に水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが難燃効果に優れており、経済的にも有利である。なお、上記の難燃剤は1種のみでも用いられるが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
前記無機難燃剤の配合量は、含浸溶剤の100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部の範囲である。10重量部未満では効果がなく、200重量部を超えると機械的物性に悪影響を与える。
【0026】
前記基布(2)に予め難燃剤を含浸させる方法として、前記基布(2)の状態で加工剤エマルジョンに浸漬する方法、あるいは、前記基布(2)の表面にスプレー等で付与する方法等があるがこれらの方法に限定されるものではない。しかしながら、パイル(3)面にも難燃効果を付与できる浸漬法
によるほうが好ましい。
【0027】
裏貼層(5)としては、タフテッドカーペットの用途によって異なるが、形態として、ペーストによるコーティング、シートラミネート等が使用できる。使用する樹脂として、例えば樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂が挙げられる。あるいは、ゴムラテックスとして、ゴム成分はSBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【0028】
本発明における難燃タフテッドカーペット(1)の製造方法は、予め基布(2)に難燃剤を浸漬法又はスプレー法により含浸させ、該基布(2)にタフティング機によって、パイル糸(3)を植え込んで表面パイル層(4)を作成し、該表面パイル層(4)の裏面に所定の裏貼層(5)を積層一体化し難燃タフテッドカーペット(1)が得られる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明における難燃タフテッドカーペットの各種用途に対応した燃焼試験(車輌材料試験、消防法、自動車内装材燃焼試験)の測定は以下のようにして行った。<車輌材料試験>鉄道車輌用非金属材料の燃焼試験を行ない、難燃性以上を合格とし、合格を○、不合格を×とした。<消防法> ミクロバーナー法により炭化面積30cm2 以下、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下を合格とし、合格を○、不合格を×とした。<自動車内装材燃焼試験> 動車内装材用水平法により燃焼速度4インチ/分以下を合格としし、合格を○、不合格を×とした。
【0030】
<実施例1>基布として、ポリエステル繊維からなる不織布(重量:100g/m)に浸漬法にて、リン系難燃剤であるポリリン酸アンモニウムを含浸させたものを用意し、該基布にタフティングカットパイル機を用いて、単糸繊度が40デシテックスのフィラメントで構成される繊度2400デシテックスのナイロン糸を、1/10ゲージ(ヨコ密度:39本/10cm)、30ステッチ(タテ密度:30本/10cm)、パイル長8mmでタフティングをおこない、カットパイルが形成された表面パイル層(パイル重量:600g/m)を用意した。次にコーティング加工機において、タフテッドカーペット原反の裏面に固形分濃度約50%のスチレンブタジエンラテックスを800g/m塗布し、乾燥して裏打ち層を形成し難燃タフテッドカーペットを得た。
【0031】
<実施例2>基布として、実施例1と同様の難燃処理を施したポリプロピレンテープヤーンからなる織布(重量:80g/m)を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして難燃タフテッドカーペットを得た。
【0032】
<実施例3>基布として、ポリエステル繊維からなる不織布(重量:100g/m)に浸漬法にて、水酸化アルミニウムを含浸させたものを用いたこと以外は実施例1と全く同様にして難燃タフテッドカーペットを得た。
【0033】
<比較例1>基布として、難燃処理を施さないポリエステル繊維からなる不織布(重量:100g/m)を用いたこと以外は実施例1と全く同様にしてタフテッドカーペットを得た。
【0034】
<比較例2>基布として、難燃処理を施さないポリプロピレンテープヤーンからなる織布(重量:80g/m)を用いたこと以外は実施例1と全く同様にしてタフテッドカーペットを得た。
【0035】
上記のようにして得られた各タフテッドカーペットに対して上記評価法に基づいてタフテッドカーペットの燃焼試験を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、実施例1〜3のタフテッドカーペットは、難燃性に優れ、十分に使用に耐えうる難燃タフテッドカーペットを得た。
【0038】
これに対し、比較例1、2のタフテッドカーペットは難燃性に劣り使用に耐えうるタフテッドカーペットは得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態に係る難燃タフテッドカーペットの概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・難燃タフテッドカーペット 2・・・基布 3・・・パイル 4・・・表面パイル層5・・・裏貼層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイルが植設された表面パイル層と、該表面パイル層の裏面に積層された裏貼層からなるタフテッドカーペットにおいて、前記基布に予め難燃剤を含浸させることを特徴とする難燃タフテッドカーペット。
【請求項2】
前記基布がポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等から選ばれる少なくとも一種以上の合成樹脂繊維からなる織布、または不織布からなることを特徴とする請求項1に記載の難燃タフテッドカーペット。
【請求項3】
前記難燃剤が、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等の有機難燃剤、金属水酸化物やアンチモン系難燃剤等の無機難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の難燃剤からなることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃タフテッドカーペット。
【請求項4】
前記基布に前記難燃剤を浸漬法又はスプレー法により、予め含浸させることを特徴とする請求項1乃至3に記載の難燃タフテッドカーペット。

【図1】
image rotate