説明

難燃剤を含有するポリマー繊維、この製造方法およびこのような繊維を含有する材料

本発明は、難燃剤を含有するポリマー繊維を提供する。特に、本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)および280℃以下の温度で溶融する難燃剤を含有する繊維を提供する。本発明はまた、このような繊維を製造する方法およびこのような繊維を取り込む材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤を含有するポリマー繊維、この繊維を製造する方法およびこの繊維を含有する材料に関する。さらに特定すると、本発明は、280℃以下の融点を有するホスフィン酸金属塩を含む難燃剤を含有するポリマー繊維、この製造方法およびこのような繊維を含有する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、難燃特性をポリマーに提供するためにしばしばポリマーに添加されまたは取り込まれる。次いで、難燃ポリマーは、耐燃性が望まれる用途、例えば織物またはカーペット用途に使用されることができる繊維に紡糸されることができる。
【0003】
広範な種々の化合物が、難燃性をポリマーに提供するために使用されている。例えば、リン含有化合物および窒素含有化合物の多数のクラスが、ポリマー中において難燃剤として利用されている。このようなリン含有化合物のクラスは、無機リン化合物、例えば赤リン、モノマー有機リン化合物、オルトリン酸エステルまたはこれらの縮合物、リン酸エステルアミド、窒化リン化合物、ホスフィンオキシド(例えば、トリフェニルホスフィンオキシド)ならびにホスフィン酸、リン酸およびホスホン酸の金属塩を含む。ポリマー中において難燃剤として利用されているホスフィン酸の金属塩(ホスフィン酸金属塩)は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、アンチモン、ビスマス、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、スズおよび鉛から選択される金属を含む配位中心当たり1個、2個、3個または4個のホスフィネート基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー種を含む広範な種々の化合物これら自体を含む。
【0004】
このような難燃化合物は、広範な種々のポリマー中において使用されている。例えば、リン含有化合物は、ポリマー、例えばモノオレフィンおよびジオレフィンのポリマー、例えばポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレンおよびポリブタジエン;ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、ビニルナフタレンおよびp−ビニルトルエンから誘導された芳香族ホモポリマーおよびコポリマー;水素化芳香族ポリマー、例えばポリシクロヘキシルエチレン;ハロゲン含有ポリマー、例えばポリクロロプレンおよびポリ塩化ビニル;α,β−不飽和酸およびこれらの誘導体から誘導されたポリマー、例えばポリアクリレートおよびポリアクリロニトリル;ポリアミド、例えばNYLON−6として販売されているポリ(ε−カプロアミド)およびNYLON−6,6として販売されているポリ(ヘキサメチレンアジパミド)ならびにポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)中において難燃剤として使用されている。
【0005】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(「PTT」)は、PTTを形成するために不可欠なモノマーの1,3−プロパンジオールの近年の商業的量の入手可能性の結果として近年商業的に開発されたポリエステルである。PTTは、繊維用途に使用される場合、他のポリマー、例えばポリアミド、ポリプロピレンならびにこのポリエステル対応物のPETおよびPBTが繊維用途に使用される場合と比べて望ましい特徴、例えばソフトな肌ざわり、レジリエンスおよびこのバネ様分子構造に起因する形状回復性および良好な耐汚染性が列挙される。
【0006】
難燃剤をPTT繊維中に取り込むことにより、PTT繊維に難燃特性を提供することが望まれる。しかしながら、難燃剤のPTT繊維中への取込みは、難燃剤の有効量を含有するPTT繊維が、PTT中の難燃剤の存在に起因して繊維の紡糸の間に破損する傾向にあるため、困難であることが示されている。結果として、高い引っ張り強さ、例えば少なくとも1グラムパーデニール(g/d)の引っ張り強さおよび難燃剤の有効量を有するPTT繊維は、達成困難であることが示されている。高い引っ張り強さを有するPTT繊維は、高品質な糸、カーペットおよび織物をPTT繊維から製造するために必要である。繊維が少なくとも1g/dの引っ張り強さを有し、高度に有効な難燃剤を含有し、現在入手可能な難燃剤を含有するPTT繊維と比べて溶融紡糸時に難燃剤により誘発される破損が減少されるPTT繊維を有することが有用である。
【0007】
米国特許第4,180,495号;米国特許第4,208,321号;および米国特許第4,208,322号は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂またはポリエステル−ポリアミド樹脂に添加されることができるポリ(ホスフィン酸金属)難燃剤を提供する。他のいくつかの用途の中で、樹脂は繊維に紡糸され、その後に布帛および衣服にされることができる。このような難燃剤を添加することができるポリエステル樹脂の1種は、PTTである。ポリエステル、ポリアミドまたはポリエステル−ポリアミド樹脂に添加されることができるポリ(ホスフィン酸金属)難燃剤の列記は広範であり、上記に列記のホスフィン酸の金属塩(ホスフィン酸金属塩)、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、アンチモン、ビスマス、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、スズおよび鉛から選択される金属を含む配位中心当たり1個、2個、3個または4個のホスフィネート基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー種を含む。ポリ(ホスフィン酸金属)難燃剤は、ポリマー中においてポリマー樹脂100重量部当たり0.25重量部から30重量部の量で利用することができる。しかしながら、これらの参考文献は、これらがPTT中の難燃剤の存在に起因して溶融紡糸において破損する傾向にないPTT繊維を提供するものではないので、高い引っ張り強さ、例えば、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有し、有効な難燃剤を含有するPTT繊維を提供するものではない。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0272839号は、a)難燃剤としての、粉末状ホスフィネートおよび/またはジホスフィネートおよび/またはこれらのポリマーならびにb)減容剤としての、難燃活性を幾分有することができる可融性ホスフィン酸亜鉛を含有する圧縮造粒された難燃組成物を提供する。ホスフィネートまたはジホスフィネートは、金属がMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Naおよび/またはKである金属塩である。可融性ホスフィン酸亜鉛は、40℃から250℃の融点を有する。ホスフィネートまたはジホスフィネートは、圧縮造粒された難燃組成物の50重量%から98重量%含まれ、可融性ホスフィン酸亜鉛は、難燃組成物の2重量%から50重量%を形成する。圧縮造粒された難燃剤は、ポリエステル、特にPETおよびPBTを含む広範な種々のポリマー中において使用することができる。圧縮造粒された難燃剤により処理されたポリマーは、ポリマーフィラメントおよびポリマー繊維およびポリマー成形物を製造するために有用であり、処理されたポリマーは、1重量%から70重量%の圧縮造粒された難燃剤を含有することができる。しかしながら、この参考文献は、この参考文献がPTT中の難燃剤の存在に起因して溶融紡糸において破損する傾向にないPTT繊維を提供するものではないので、高い引っ張り強さ、例えば少なくとも1g/dの引っ張り強さを有し、有効な難燃剤を含有するPTTポリマー繊維を提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,180,495号明細書
【特許文献2】米国特許第4,208,321号明細書
【特許文献3】米国特許第4,208,322号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0272839号公報
【発明の概要】
【0010】
発明の要旨
一態様において、本発明は、(a)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)少なくとも75重量%からなるポリマー;および
(b)280℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤を含み;前記難燃ホスフィン酸金属塩は、繊維の0.25重量%から5重量%含まれ、ホスフィン酸金属塩は、難燃剤の少なくとも10重量%含まれており;少なくとも1g/dの引っ張り強さを有しおよび幅の少なくとも100倍の長さを有する難燃ポリエステル繊維に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、複数の繊維を含み、少なくとも5%の繊維は、(a)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)少なくとも75重量%からなるポリマー;および(b)280℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤からなり;ホスフィン酸金属塩は、難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維の0.25重量%から5重量%含まれ、ホスフィン酸金属塩は、難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維の難燃剤の少なくとも10重量%含まれる材料に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤および少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含むポリマーを、180℃から280℃の温度で混合して混合物を形成すること:および混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成することを含み、(a)難燃剤およびポリマーが混合される温度を、ホスフィン酸金属塩およびポリマーが選択された温度より低い融点をそれぞれ有するように選択し;(b)難燃剤を、ホスフィン酸金属塩が難燃剤の少なくとも10重量%含まれるように選択し;(c)混合物中に混合される難燃剤の量を、ホスフィン酸金属塩が混合物の0.25重量%から5重量%含まれるように選択し;(d)混合物中に混合される難燃剤の量を、混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成した後に少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維を提供するように選択する、難燃ポリエステル繊維を製造する方法に関する。
【0013】
本発明の利点は、以下の詳細な説明によりおよび付属の図面を参照することにより当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】糸中に取り込まれる本発明の繊維を製造する工程を示す略図である。
【図2】本発明の繊維をバルク連続フィラメントとして製造する工程を示す略図である。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、繊維が有効な難燃度を有し、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有し、現在入手可能な難燃剤を含有するPTT繊維に比べて繊維紡糸時に難燃剤により誘発される破損が減少されるまたは繊維紡糸時に難燃剤により誘発される破損が回避される、難燃剤を含有するポリエステルPTT繊維を提供する。本発明のPTT繊維は、少量の難燃剤のみをこの中に含有することができ、難燃剤は、280℃以下の融点を有する少なくとも1種の難燃ホスフィン酸金属塩(以下、このような(1種または複数の)ホスフィン酸金属塩は、単数形または複数形のいずれも、「溶融性ホスフィン酸金属塩」と称されることができる。)を含む。本発明の難燃剤含有PTT繊維は、1)繊維中の溶融性ホスフィン酸金属塩が有効な難燃性をPTT繊維に提供するために十分な難燃性をこれ自体有することが見出されておるので;および、2)難燃剤の溶融性ホスフィン酸金属塩が、PTT繊維が溶融紡糸される温度以下のこの融点に起因して繊維中で十分分散され、これにより繊維に難燃剤が十分分布して提供されるので、有効な難燃度を有する。1)繊維が、PTT繊維の破損をこの溶融紡糸時に誘発し得る微粒子状難燃剤を、特に粒度が比較的大きい場合、例えば平均粒径が10ミクロンより大きい場合または粒量が比較的多い場合、例えば繊維の15重量%より多い場合に、ほとんどまたはまったく含有し得ないので;および2)繊維が、溶融紡糸工程において形成されるべき繊維のためにポリマーに過小の固有粘度を誘導させるためおよび/または繊維の引っ張り強さを1グラムパーデニール(g/d)未満に減少させるためには不十分な、例えば5重量%超の溶融性ホスフィン酸金属塩を含有するので、本発明の難燃剤含有PTT繊維を形成することが可能である。
【0016】
本発明の難燃ポリマー繊維は、少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含むポリマー(「PTTポリマー」)および280℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤を含有する。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、繊維の0.25重量%から5重量%含まれる。この繊維は、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する。一実施形態において、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、難燃剤の50重量%超含まれることができる。
【0017】
PTTポリマーは、ホモポリマー、少量の非PTTコモノマーを含有するPTTコポリマー、PTTホモポリマーと少量の他のポリマーとのブレンド、または、少量の他のポリマーと混合された少量の非PTTコモノマーを含有するPTTコポリマーであることができる。このPTTポリマーは、成分中の他の非PTTコモノマーまたは他のポリマーにかかわらず、少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含有する。
【0018】
本明細書中で使用される「非PTTコモノマー」は、トリメチレンテレフタレート単位を形成する少なくとも1種のモノマー、特に1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸またはジメチルエステルテレフタレートと置き換えることができるおよびトリメチレンテレフタレート単位を形成することなくポリマー鎖中に取り込まれることができる繰り返しトリメチレンテレフタレート単位を含有するポリマー中のモノマーと定義される。このような非PTTコモノマーは、限定されるものではないが、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4シクロヘキサンジメタノール、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸および/またはアジピン酸を含む。難燃ポリマー繊維のPTTポリマーは、25モル%までの非PTTコモノマーを含有することができまたは最大15モル%または最大10モル%または最大5モル%の非PTTコモノマーを含有することができる。本発明の繊維のPTTポリマーは、非PTTコモノマーを含有しなくてよい(すなわち、PTTポリマーはホモポリマーである。)。
【0019】
PTTとともに本発明の難燃ポリマー繊維中に含まれることができる他のポリマーは、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(トリメチレンナフタレート)ならびにポリアミド、例えばポリ(ε−カプロアミド)(NYLON−6)およびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(NYLON−6,6)を含む。一実施形態において、繊維中の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の存在の結果もたらされるPTTポリマー繊維において誘発され得る引っ張り強さの減少を幾分またはすべて埋め合わせるために、NYLON−6またはNYLON−6,6がPTTと一緒に本発明の繊維中に含まれる。PTTと一緒に本発明の繊維中に含まれることができる他のポリマーは、繊維の25重量%または15重量%または10重量%または5重量%を超えない。本発明の繊維の別の実施形態において、PTTは、他のポリマーに対する重量比が少なくとも3:1または少なくとも4:1または少なくとも5:1または少なくとも6:1で繊維中に存在することができる。一実施形態において、難燃PTTポリマー繊維中にPTT自体以外のポリマーは存在しない。
【0020】
本発明の難燃PTTポリマー繊維は、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する。本発明の繊維の一実施形態において、この繊維は、少なくとも1.3g/dまたは少なくとも1.4g/dまたは少なくとも1.5g/dの引っ張り強さを有することができる。本発明の目的のため、引っ張り強さは、Statimat ME試験器により100ニュートンのロードセルを用いて測定される。0.05g/dの予備張力を110mmのゲージ長さを有する繊維/糸に適用し、引っ張り強さは、300mm/分のクロスヘッド速度で測定される。試験は、選択された糸または繊維のセグメントにつき10回繰り返され、10回の測定の平均値が本発明の目的のための糸または繊維の引っ張り強さと定義される。
【0021】
本発明の難燃PTTポリマー繊維は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有する難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含有する難燃剤を含有する。ホスフィン酸金属塩は、繊維の0.25重量%から5重量%含まれまたは繊維の0.3重量%から4重量%もしくは0.5重量%から2.5重量%含まれることができる。
【0022】
難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、本発明の難燃PTTポリマー繊維中の難燃剤の少なくとも10重量%含まれる。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、難燃PTTポリマー繊維中の難燃剤の50重量%超含まれることができまたは繊維中の難燃剤の少なくとも75重量%含まれることができる。本発明の難燃PTTポリマー繊維中の難燃剤は、本質的に難燃溶融性ホスフィン酸金属塩からなることができる。
【0023】
難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、式(I)に示される構造を有し、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有するホスフィン酸金属塩のいずれでもよい。
【0024】
【化1】

式(I)において、RおよびRは、同一であることができまたは異なることができ、直鎖または分枝鎖のC−C18アルキルおよび/またはアリールであり、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、NaまたはKであり、mは、1から4である。この難燃ホスフィン酸金属塩は、合わされた難燃溶融性ホスフィン酸金属塩およびPTTポリマーが紡糸されて繊維が形成されることができるように、ポリマーを実質的に分解しない温度にてPTTポリマー中にて溶融され、分散されることができるように、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有さなければならない。
【0025】
好ましい実施形態において、この難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有し、RおよびRが、同一でありまたは異なり、水素、直鎖または分枝鎖のC−C18アルキルおよび/またはアリールであり、Mが亜鉛であり、mが2である式(I)の構造を有するホスフィン酸亜鉛である。一実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有し、RおよびRが、同一でありまたは異なり、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチルまたはフェニルであり、Mが亜鉛であり、mが2である式(I)を有する。好ましい実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸亜鉛、メチルエチルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸亜鉛、エチルブチルホスフィン酸亜鉛およびジブチルホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、ジエチルホスフィン酸亜鉛である。
【0026】
本発明の難燃PTTポリマー繊維の難燃剤は、本発明の目的のために「非可融性難燃成分」と定義される、280℃以下の融点を有さない難燃成分を含有することができる。この非可融性難燃成分は溶融せずに分解し得るので、この非可融性難燃成分は、必須ではないが、280℃より高い融点を有し得、難燃剤の非可融性難燃成分は、存在する場合、280℃以下の融点を有しない。このような非可融性難燃成分は、280℃の温度以下で溶融しない式(I)のホスフィン酸金属塩、無機リン化合物、例えば赤リン、モノマー有機リン化合物、オルトリン酸エステルまたはこれらの縮合物、リン酸エステルアミド、窒化リン化合物、ホスフィンオキシド(例えば、トリフェニルホスフィンオキシド)ならびにリン酸およびホスホン酸の金属塩、ジホスフィン酸塩を含む280℃以下の温度で非可融性である化合物を含有する他のリン含有化合物ならびに窒素含有化合物、例えばベンゾグアナミン化合物、ポリリン酸アンモニウムおよびメラミン化合物、例えばホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリマー性リン酸メラミンおよびシアヌル酸メラミンを含む。シアヌル酸メラミンは、本発明の繊維中に使用される好ましい非可融性難燃剤である。
【0027】
本発明の繊維の一実施形態において、難燃剤は、90重量%未満または50重量%未満または35重量%未満または25重量%未満または10重量%未満または5重量%未満の非可融性難燃成分を含有することができまたは非可融性難燃成分を含有しなくてよい。この繊維中の難燃剤の非可融性難燃成分は、存在する場合、微粒子であることができる。組成物の非可融性難燃成分の平均粒度は、10μmまで及ぶことができるが、平均粒度が大きくとも3μmであることが好ましく、粒子が1μ未満の平均粒度を有するナノ粒子であることがさらにより好ましい。この繊維中の非可融性難燃剤のより小さい平均粒度は、少なくとも2つの利点:1)より良質な難燃性をもたらす、繊維中での微粒子状難燃剤のより均質な分散;および2)紡糸される繊維中の大きい微粒子の結果としての、繊維溶融紡糸時の繊維破損の減少を繊維に提供する。一実施形態において、難燃剤の非可融性難燃成分は、大きくとも3μmの平均粒度を有するシアヌル酸メラミンである。
【0028】
難燃溶融性ホスフィン酸金属塩および非可融性難燃成分(存在する場合)を含む難燃剤は、難燃PTTポリマー繊維中に、繊維の15重量%までまたは繊維の10重量%までまたは繊維の5重量%までまたは繊維の2.5重量%までの量で存在することができ、溶融性ホスフィン酸金属塩は、繊維の5重量%までのみ存在することができる。本発明の繊維の一実施形態において、難燃剤は、難燃PTTポリマー繊維中に、0.25重量%から15重量%または0.3重量%から10重量%または0.5重量%から5重量%の量で存在することができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、難燃PTTポリマー繊維は、充填剤を含有することができる。本明細書中で使用される用語「充填剤」は、「難燃活性を有さない微粒子または繊維材料」と定義される。過多の充填剤は、繊維紡糸時に繊維に破損を誘発することにより本発明の繊維の溶融紡糸に悪影響を及ぼし得るので、繊維は、0重量%から5重量%の充填剤を含有することができまたは0重量%から3重量%の充填剤を含有することができる。本発明の繊維の一実施形態において、充填剤は、繊維中に艶消剤として含まれることができる。繊維中に艶消剤として含まれるための好ましい充填剤は、二酸化チタンである。繊維中に含まれることができる充填材料の他の例は、繊維材料、例えばガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、繊維珪灰石、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維および300℃より高い融点を有する有機繊維、ならびに微粒子または非晶質材料、例えばカーボンブラック、ホワイトカーボン、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉末、ミルド繊維、ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、クレーおよび珪藻土、金属酸化物、例えば酸化鉄、酸化亜鉛およびアルミナ、金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム、金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウムおよび硫酸バリウムならびに金属粉末を含む。
【0030】
本発明の繊維は、繊維を製造するために使用される条件に応じて、延伸されていない、部分配向されたまたは完全配向されたものであることができる。本発明の延伸されていない繊維は、本明細書中では、上記定義のPTTポリマーおよび上記定義の難燃剤を含み、少なくとも120%の破断伸びを有する繊維と定義される。延伸されていない繊維は、0.3未満または0.2未満の複屈折率を有することができる。本発明の部分配向された繊維は、本明細書中では、上記定義のPTTポリマーおよび上記定義の難燃剤を含み、50%から120%までの破断伸びを有する繊維と定義される。部分配向された繊維は、0.3から0.9までの複屈折率を有することができる。本発明の完全配向された繊維は、本明細書では、上記定義のPTTポリマーおよび上記定義の難燃剤を含み、50%までの破断伸びを有する繊維と定義される。完全配向された繊維は、0.9より大きい複屈折率を有することができる。
【0031】
本発明の繊維は、繊維様の寸法、すなわち、繊維の長さが繊維の幅または直径より顕著に大きい寸法を有する。この繊維は、繊維の幅の少なくとも100倍の長さを有し、一実施形態において、繊維の幅の少なくとも1000倍の長さを有する。一実施形態において、繊維は、フィラメント、例えば極端に長い繊維であることができる。一実施形態において、繊維は、フィラメントにバルクを提供するためにフィラメントが例えば噴射空気風合い出し加工により風合い出し加工(textured)されたバルク連続フィラメントである。別の実施形態において、繊維はステープル繊維であることができる。
【0032】
一態様において、本発明は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を少なくとも1種含む難燃剤および少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含むポリマー(上述の「PTTポリマー」)を180℃から280℃の温度で混合して混合物を形成し、次いでこの混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成する、本発明の繊維を製造する方法を対象とする。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩およびPTTポリマーが混合される温度は、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩およびPTTポリマーが十分混合され、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩が混合工程の間にPTTポリマー中に微粒子として分散されないことを確保するため溶融性ホスフィン酸金属塩およびPTTポリマーが選択温度未満の融点をそれぞれ有するように選択される。この難燃剤は、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩が難燃剤の少なくとも10重量%含まれるように選択され、この難燃剤の量は、1)溶融性ホスフィン酸金属塩が混合物の0.25重量%から5重量%含まれ、2)混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成した後に繊維が少なくとも1g/dの引っ張り強さを有するように選択される。
【0033】
本発明の方法に使用される難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、式(I)の構造を有し、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有する任意のホスフィン酸金属塩であることができる。
【0034】
【化2】

式(I)において、RおよびRは、同一であることができまたは異なることができ、直鎖または分枝鎖のC−C18アルキルおよび/またはアリールであり、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、NaまたはKであり、mは、1から4である。この難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、これがポリマーを実質的に分解しない温度でPTTポリマー中で溶融され、分散されることができるように280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有さなければならない。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明の方法に使用される難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有し、RおよびRが、同一でありまたは異なり、水素、直鎖または分枝鎖のC−C18アルキルおよび/またはアリールであり、Mが亜鉛であり、mが2である式(I)の構造を有するホスフィン酸亜鉛である。一実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有し、RおよびRが、同一でありまたは異なり、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチルまたはフェニルであり、Mが亜鉛であり、mが2である式(I)を有する。好ましい実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸亜鉛、メチルエチルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸亜鉛、エチルブチルホスフィン酸亜鉛およびジブチルホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、このホスフィン酸亜鉛は、ジエチルホスフィン酸亜鉛である。
【0036】
本方法における使用のために選択される難燃剤の量は、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩が難燃剤およびPTTポリマーの混合物の0.25重量%から5重量%の量で存在し、混合物の0.3重量%から4重量%または0.5重量%から2.5重量%の量で存在することができるような量である。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、難燃剤の少なくとも10重量%含まれもしくは難燃剤の50重量%超含まれることができもしくは難燃剤の少なくとも75重量%含まれることができまたは難燃剤は本質的にホスフィン酸金属塩からなることができる。
【0037】
本発明の方法に利用される難燃剤は、上述のとおり、本発明の目的のために「非可融性難燃成分」と定義される、280℃以下の融点を有するホスフィン酸金属塩ではない難燃剤を含有することができる。この非可融性難燃成分は溶融せずに分解し得るので、この非可融性難燃成分は、必須ではないが、280℃より高い融点を有し得、難燃剤の非可融性難燃成分は、存在する場合、280℃以下の融点を有さない。このような非可融性難燃剤は、280℃の温度未満で溶融しない式(I)のホスフィン酸金属塩、例えばジエチルホスフィン酸カルシウム、無機リン化合物、例えば赤リン、モノマー有機リン化合物、オルトリン酸エステルまたはこれらの縮合物、リン酸エステルアミド、窒化リン化合物、ホスフィンオキシド(例えば、トリフェニルホスフィンオキシド)ならびにリン酸およびホスホン酸の金属塩、ジホスフィン酸塩を含む280℃未満の温度で非可融性である化合物を含有する他のリン含有化合物ならびに窒素含有化合物、例えばベンゾグアナミン化合物、ポリリン酸アンモニウムおよびメラミン化合物、例えばホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリマーリン酸メラミンおよびシアヌル酸メラミンを含むことができる。シアヌル酸メラミンは、本発明の方法において難燃剤中に使用される好ましい非可融性難燃剤である。
【0038】
本発明の方法の一実施形態において、難燃剤は、90重量%未満または50重量%未満または35重量%未満または25重量%未満または10重量%未満または5重量%未満の非可融性難燃成分を含有するように選択され得るまたは非可融性難燃成分を含有しないように選択され得る。難燃剤の非可融性難燃成分は、存在する場合、微粒子であることができる。本発明の方法の一実施形態において、難燃剤の非可融性難燃成分の平均粒度は、10μm以下もしくは大きくとも3μmになるように選択され得るまたは1μ未満の平均粒度を有するナノ粒子であるように選択され得る。非可融性難燃剤のより小さい平均粒度は、少なくとも2つの利点:1)より良質な難燃性が混合物中にもたらされる、最終的に混合物から紡糸された繊維中にもたらされる、難燃剤およびPTTポリマーを混合させながらのPTTポリマー中での微粒子状難燃剤のより均質な分散;および2)PTTポリマーおよび難燃剤の混合物が繊維に溶融紡糸されるときの、大きい微粒子に起因する繊維破損の減少を本方法に提供する。本方法の一実施形態において、難燃剤の非可融性難燃成分は、大きくとも3μmの平均粒度を有するシアヌル酸メラミンを含有するように選択される。
【0039】
本発明の方法においてPTTポリマーと混合される難燃剤の量は、1)十分な難燃性を混合物から紡糸された繊維に提供するように、2)混合物から紡糸された繊維が糸、織物、カーペットまたは不織材料の製造に続いて使用されるために十分な、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有することを確保するように選択される。混合物および得られた繊維に十分な難燃性を提供するために、PTTポリマーと混合される難燃剤の量は、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩が難燃剤およびPTTポリマーの混合物の0.25重量%から5重量%または混合物の0.3重量%から4重量%または混合物の0.5重量%から2.5重量%含まれるように選択される。
【0040】
少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維に紡糸されることができる混合物を提供するためにPTTポリマーと混合されるために選択される難燃剤の量は、難燃剤中の溶融性ホスフィン酸金属塩の量、PTTポリマーの固有粘度(または、PTTポリマーを重合させつつ難燃剤をPTTポリマーと混合する場合、PTTポリマーが重合される条件)ならびに難燃剤中の微粒子状の非可融性難燃成分の量および大きさ(存在する場合)に依存する。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤をPTTポリマーと混合することは、ポリマーの固有粘度を減少させることができるので、難燃剤が存在しないPTTポリマーから紡糸される繊維と比べて混合物から紡糸される繊維の引っ張り強さを減少させ得る。一般に、混合物中の溶融性ホスフィン酸金属塩の濃度が増大するにつれ、混合物の固有粘度および混合物から紡糸された繊維の引っ張り強さは低下し、反対に、溶融性ホスフィン酸金属塩の量が低下するにつれ、混合物の固有粘度および混合物から紡糸された繊維の引っ張り強さは増大する。混合物中の溶融性ホスフィン酸金属塩の濃度は、難燃剤中の溶融性ホスフィン酸金属塩の割合を増大させることおよび/または混合物中の難燃剤の量を増大させることにより増大させることができる。同様に、混合物中の溶融性ホスフィン酸金属塩の濃度は、難燃剤中の溶融性ホスフィン酸金属塩の割合を低下させることおよび/または混合物中の難燃剤の量を低下させることにより低下させることができる。少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維に紡糸されることができる混合物を製造するためにPTTポリマーと混合するための難燃剤の適切な量は、1g/d以上の引っ張り強さを有する繊維に紡糸されることができる混合物を提供するために必要に応じて、PTTポリマーの固有粘度を決定することならびに溶融性ホスフィン酸金属塩の量および難燃剤中の非可融性難燃成分の量を決定することならびにPTTポリマーと混合される難燃剤の量または難燃剤中の溶融性ホスフィン酸金属塩および非可融性難燃成分の相対量を調節することにより過度の実験を行うことなく決定することができる。
【0041】
少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維に紡糸されることができる混合物を提供するため、PTTポリマーに対する難燃剤の相対量は、難燃剤およびPTTポリマーの混合物中の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の量が混合物の0.25重量%から5重量%になり、混合物が少なくとも0.7dl/gまたは少なくとも0.8dl/gまたは少なくとも0.9dl/gの固有粘度を有するように選択され得る。一実施形態において、PTTポリマーに対する難燃剤の量は、難燃剤が混合物の0.25重量%から15重量%または0.5重量%から10重量%または1重量%から5重量%であることができ、混合物中の溶融性ホスフィン酸金属塩の量が少なくとも0.25重量%であり、4重量%以下または3重量%以下または2.5重量%以下または2重量%以下または1重量%以下であり、混合物が少なくとも0.7dl/gまたは少なくとも0.8dl/gまたは少なくとも0.9dl/gの固有粘度を有するように選択され得る。PTTポリマーならびに難燃剤およびPTTポリマーの混合物の固有粘度は、ポリマーをフェノールおよび1,1,2,2−テトラクロロエタンの溶媒(60容量部のフェノール、40容量部の1,1,2,2−テトラクロロエタン)中に溶解させ、溶解されたポリマーの固有粘度を相対粘度計、好ましくはViscotek Companyから入手可能であるモデル番号Y501Bにより30℃で測定することにより測定され得る。
【0042】
難燃剤が微粒子状の非可融性難燃成分を含有する場合、PTTポリマーと混合されるべき難燃剤の量は、繊維が少なくとも1g/dの引っ張り強さを有するように選択され得、非可融性難燃成分の量は、繊維が少なくとも1g/dの引っ張り強さを有することを確保するために制限される。過剰な微粒子、特に10μmより大きい平均粒径を有する微粒子は、混合物から紡糸された繊維を弱化し得る。一実施形態において、微粒子状の非可融性難燃成分を含有する難燃剤の量は、微粒子状の非可融性難燃成分が難燃剤およびPTTポリマーの混合物の最大15重量%または混合物の最大10重量%または混合物の最大5重量%または混合物の最大2.5重量%含まれるように選択される。
【0043】
本発明の方法の一実施形態において、難燃剤は、1種または複数の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩が難燃剤の少なくとも50重量%含まれるように選択され得、混合物を形成するためにPTTポリマーと混合される難燃剤の量は、混合物中の難燃剤とPTTポリマーとの重量比が1:400から1:10まで(これ自体は含めない)または1:100から1:20または1:50から1:25の範囲内であり、混合物が、少なくとも0.7dl/gまたは少なくとも0.8dl/gまたは少なくとも0.9dl/gの固有粘度を有し、混合物から紡糸された繊維が少なくとも1g/dまたは少なくとも1.2g/dまたは少なくとも1.3g/dまたは少なくとも1.5g/dの引っ張り強さを有するように選択される。本発明の方法の別の実施形態において、難燃剤は、1種または複数の溶融性ホスフィン酸金属塩が難燃剤の10重量%から50重量%含まれるように選択され得、混合物を形成するためにPTTポリマーと混合される難燃剤の量は、混合物中の難燃剤とPTTポリマーとの重量比が1:200(これ自体は含めない)から1:1までまたは1:100から1:5または1:50から1:10の範囲内であり、混合物が、少なくとも0.7dl/gまたは少なくとも0.8dl/gまたは少なくとも0.9dl/gの固有粘度を有し、混合物から紡糸された繊維が少なくとも1g/dまたは少なくとも1.2g/dまたは少なくとも1.3g/dまたは少なくとも1.5g/dの引っ張り強さを有するように選択される。
【0044】
難燃剤は、PTTポリマーを形成する重合工程においてまたはPTTポリマーが重合により形成された後に、180℃から280℃の温度でPTTポリマーと混合され得る。難燃剤およびPTTポリマーが混合される温度は、PTTポリマーおよび難燃剤の溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高くなるように選択されるべきである。
【0045】
本発明の方法の一実施形態において、難燃剤をPTTポリマーを製造する工程において1,3−プロパンジオール(「PDO」)、テレフタル酸(「TPA」)、PTTポリマーおよび場合によって非PTTコモノマーと混合して混合物を形成し、次いで混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成する。PTTポリマーは、TPAによりPDOをエステル化し、次いで場合によって反応生成物を予備重縮合させ、好ましくはモル過剰のPDOと重縮合させることにより作製され得る。さらに好ましくは、反応条件は溶融反応混合物中でPDOおよびTPAを比較的低い濃度で維持することを含む。PDOおよびTPAからのPTTの重合は、連続工程または回分工程において実施され得る。
【0046】
エステル化ステップにおいて、反応塊中の未反応のPDOの瞬間濃度は、高い固有粘度のPTTポリマーを得るために比較的低く維持され得る。このことは、圧力およびモノマー供給の調整により達せられる。PDOおよびTPAは、約1.1:1から約3:1の範囲内の総供給モル比で反応容器に供給され得る。PDO:TPAの供給比は、生成されるアクロレイン副生物の量を最少にするため、約1.1:1から1.5:1であってよい。PDOおよびTPAは、エステルへの変換を生じさせる時間を与え、PDOおよびTPA濃度を低く保持するために徐々に添加され得る。
【0047】
また、エステル化ステップは大気圧より大きい圧力で行われ得るが、エステル化ステップにおいてPDOの所望の瞬間濃度を維持するため、比較的低い反応圧力を維持され得る。低圧エステル化ステップにおける圧力は、0.3MPa(絶対圧)未満、一般に約0.07MPa(絶対圧)から約0.15MPa(絶対圧)の範囲内に維持することができる。エステル化ステップの温度は、240℃から270℃であることができる。エステル化ステップの時間は、1時間から4時間に及ぶことができる。
【0048】
エステル化触媒は、最終ポリマーの重量の5ppmから100ppm(金属)または5ppmから50ppmの量にて任意に選択される。エステル化触媒は、比較的高い活性を有することができ、エステル化ステップの水副生物による失活に耐性であることができる。このようなエステル化触媒は、チタンアルコキシドおよびこれらの誘導体、例えばテトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミノアト)チタン、トリブチルモノアセチルチタネートおよびテトラ安息香酸チタネート;チタン錯塩、例えばアルキルチタンオキサレートおよびマロネート、カリウムヘキサフルオロチタネートおよびチタンならびにヒドロキシカルボン酸、例えば酒石酸、クエン酸または乳酸を有するチタン錯体、触媒、例えば二酸化チタン/二酸化ケイ素共沈物ならびに水和アルカリ含有二酸化チタン;ならびに対応するジルコニウム化合物を含むチタンおよびジルコニウム化合物を含む。他の金属、例えばアンチモン、スズ、亜鉛などの触媒を使用することもできる。PTTポリマーの調製におけるエステル化および重縮合ステップの両方に有用な触媒は、チタンテトラブトキシドである。
【0049】
非PTTコモノマーを、エステル化ステップにおいて含めることができる。非PTTコモノマーは、限定されるものではないが、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4シクロヘキサンジメタノール、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸および/またはアジピン酸を含む。
【0050】
予備縮合(予備重合)ステップは、PDOおよびTPAからPTTポリマーを製造する工程においてあってもなくともよいが、高い固有粘度のPTTポリマーを得るために有用である。このようなステップを実施する場合、エステル化生成混合物上の圧力は0.02MPa未満に減少させ、温度は250℃から270℃の範囲内で維持し、予備縮合は2時間未満で行うことができる。予備縮合ステップは、特に連続工程において、圧力を第2の段階において低下させる2つの真空段階において実施され得る。非PTTコモノマーは、PTTポリマー中に含めるために予備縮合ステップにおいて添加することができ、上述の非PTTコモノマーを含む。
【0051】
本方法の重縮合(または重合)ステップにおいて、0.7dl/gから1.5dl/gの固有粘度を有するPTTポリマーが得られるまで、反応物を2Paから25Paの圧力の真空下で、245℃から270℃の温度で1時間から6時間の時間維持することができる。重縮合ステップは、多量の蒸気塊の移動が可能な大きい表面積の発生反応器、例えば籠型バスケット反応器、有孔ディスク反応器、ディスクリング反応器または2軸スクリュー反応器内で好適に実施される。重縮合は、金属重縮合触媒、例えば上述のチタン化合物の存在下で実施され得る。チタンブトキシドは、PTTポリマーを製造するために有効な重縮合触媒であり、25ppmから100ppmのチタンの量で使用することができる。非PTTコモノマーは、PTTポリマー中に含めるために重縮合ステップにおいて添加され得、上述の非PTTコモノマーを含む。
【0052】
PTTポリマー中に含めるためにエステル化、予備重縮合および/または重縮合ステップにおいて添加される非PTTコモノマーは、PTTポリマーが少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレート単位をポリマー鎖中に含有するように、非PTTコモノマーと、ポリマー鎖中で非PTTコモノマーに置き換えられることが意図されるPTTコモノマーのジオールまたは酸とのモル比を最大1:4で提供するための量にて添加され得る。一実施形態において、非PTTコモノマーは、非PTTコモノマーと、ポリマー鎖中で非PTTコモノマーに置き換えられることが意図されるPTTコモノマーのジオールまたは酸とのモル比を最大1:10で提供するための有効量にて添加され得る。別の実施形態において、非PTTコモノマーは、PTTポリマーがPTTホモポリマーになるように、PTTポリマーの製造において添加されない。
【0053】
難燃剤/PTTポリマーの混合物を形成するため、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含有する難燃剤を、PDOおよびTPAからPTTポリマーを製造する工程において工程の初期に(例えば、供給反応物の一方または両方と混合しながら)添加することができまたは工程の間に(例えば、エステル化段階またはあってもなくともよい予備重縮合段階または重縮合段階において)もしくはPTTが依然として溶融形態である重縮合後に別個に添加することができる。難燃剤は、難燃剤/PTTポリマー混合物を生じさせるため、PTTポリマーが形成される際、例えばエステル化段階、予備重縮合段階または重縮合段階においてあるいはPTTポリマーが形成された後、例えばPTTが依然として溶融形態である重縮合後にPTTポリマーと接触させ得る。
【0054】
難燃剤は、180℃から280℃の温度でPTTポリマーと接触させ、この温度は、PTTポリマーおよび難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高くなるように選択される。好ましくは、難燃剤およびPTTポリマーは、PTTポリマー中での難燃剤の均質な分散を提供するため、PTTポリマーおよび難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高い温度で接触時に十分に混合される。
【0055】
別の実施形態において、難燃剤をPTTポリマーを製造する工程において1,3−プロパンジオール(「PDO」)、ジメチルテレフタレート(「DMT」)およびPTTポリマーと接触させて混合物を形成し、次いで混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成することができる。PTTポリマーは、DMTによりPDOをトランスエステル化し、次いで反応生成物を場合によって予備重縮合させ、好ましくはモル過剰のPDOと重縮合させることにより作製され得、さらに好ましくは、反応条件は、溶融反応混合物中でPDOおよびDMTを比較的低い濃度で維持することを含む。PDOおよびDMTからのPTTの重合は、連続工程または回分工程において実施され得る。
【0056】
PDOおよびDMTからPTTポリマーを製造する工程ステップは、この工程においてDMTがTPAに置換されていることを除き、PDOおよびTPAからPTTポリマーを製造する上述の工程ステップに類似している。非PTTコモノマーは、PDOおよびTPAからPTTポリマーを製造することに関して上に述べた工程において添加され得る。難燃剤/PTTポリマー混合物を形成するため、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含有する難燃剤は、難燃剤をPDOおよびTPAの重合により形成されるPTTポリマーと接触させることに関して上述のとおり、PDOおよびDMTからPTTポリマーを製造する工程に工程の初期に(例えば、供給反応物の一方または両方と混合しながら)添加され得るまたは工程の間に(例えば、トランスエステル化段階またはあってもなくともよい予備重縮合段階もしくは重縮合段階において)またはPTTが依然として溶融形態である重縮合後に別個に添加され得る。難燃剤は、やはり上述のとおり、PTTポリマーおよび難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高い温度でPTTポリマーと接触させる。
【0057】
別の実施形態において、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤をPTTポリマーと、重合工程後に接触させて混合物を形成し、次いで混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成することができる。例えば、難燃剤をペレット化固体PTTポリマーと接触させ、次いでPTTポリマーおよび難燃剤の融点より高い温度に加熱することができる。別の実施形態において、難燃剤は、固体PTTポリマーをPTTポリマーの融点より高い温度に加熱した後に溶融PTTポリマーと接触させることができる。いずれの場合においても、難燃剤は、PTTポリマーの融点より高く、難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高い温度でPTTポリマーと接触させる。
【0058】
本発明の方法の一実施形態において、補助ポリマーを180℃から280℃の温度でPTTポリマーおよび難燃剤と接触させることができ、この温度は、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩、PTTポリマーおよび補助ポリマーが選択された温度より低い融点をそれぞれ有するように選択される。補助ポリマーは、難燃剤、PTTポリマーおよび補助ポリマーの混合物の25重量%までまたは15重量%までまたは10重量%までまたは5重量%まで構成されうる。一実施形態において、補助ポリマーは、ポリアミドおよびポリエステルからなる群から選択される。補助ポリマーは、NYLON−6、NYLON−6,6、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(トリメチレンナフタレート)またはこれらの混合物であることができる。一実施形態において、補助ポリマーはNYLON−6またはNYLON−6,6であり、NYLON−6またはNYLON−6,6を難燃剤およびPTTポリマーと接触させて、補助ポリマーを含まない難燃PTTポリマーと比べて増大した粘度を有し、補助ポリマーを含まない難燃PTTポリマーから紡糸された繊維と比べて増大した引っ張り強さを有する繊維に紡糸されることができる難燃PTT混合物を形成する。
【0059】
本発明の方法の別の実施形態において、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤およびポリマーの混合物をマスターバッチとして調製し、マスターバッチを0重量%から4.5重量%未満の溶融性ホスフィン酸金属塩を含有するPTTポリマーと混合して混合物を調製し、混合物を紡糸口金を通過させて少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維を形成する。ポリマーおよび難燃剤のマスターバッチは、PTTポリマーおよび280℃以下の融点を有する溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤の混合物を形成することに関して上に述べたとおり調製することができるが、ただしマスターバッチは1重量%から40重量%または2重量%から30重量%の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を提供するために有効な難燃剤の量を含有することができ、このマスターバッチは、PTTポリマー以外のポリマーから形成することができる。難燃ポリマーの溶融マスターバッチは、少なくとも0.7dl/gの固有粘度を有することができまたは有さなくてよい。
【0060】
ポリマーを含有する難燃剤のマスターバッチは、0重量%から4.5重量%未満の溶融性ホスフィン酸金属塩を含有するPTTポリマー、好ましくは溶融性ホスフィン酸金属塩を含有しないPTTポリマーと混合されて混合物が形成され、紡糸口金を通過させて繊維を形成することができる。マスターバッチは、180℃から280℃の温度でPTTポリマーと混合され、この温度は、マスターバッチの難燃溶融性ホスフィン酸金属塩、0重量%から4.5重量%未満の溶融性ホスフィン酸金属塩を有するPTTポリマーの溶融性ホスフィン酸金属塩(存在する場合)、マスターバッチのポリマーおよび0重量%から4.5重量%未満の溶融性ホスフィン酸金属塩を含有するPTTポリマーの融点より高くなるように選択される。この溶融マスターバッチは、0.25重量%から5重量%の1種または複数の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含有し、少なくとも0.7dl/gの固有粘度を有する混合物を提供するために有効な量でPTTポリマーと混合され得る。
【0061】
本発明の方法の一実施形態において、マスターバッチを最初に形成するために使用されるポリマーは、少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるPTTポリマーを少なくとも75重量%含有するPTTポリマーである。別の実施形態において、マスターバッチを最初に形成するために使用されるポリマーは、ポリアミド、PTT以外のポリエステル、PTTコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される。PTTポリマー以外のポリマーをマスターバッチポリマーとして使用する場合、最大25重量%のマスターバッチポリマーをPTTポリマーと混合して混合物を形成し、紡糸口金を通過させて繊維を形成することができる。
【0062】
本発明の方法の別の実施形態において、PTTポリマーおよび難燃剤を、充填剤を添加することなく上述のとおり混合して、充填剤を含有しない混合物を形成する。充填剤を含有しない混合物を紡糸口金を通過させ、充填剤を含有せず、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維を形成することができる。別の実施形態において、PTTポリマーおよび難燃剤は、上述のとおり混合され、充填剤は混合物中のPTTポリマーおよび難燃剤と混合され、充填剤の量は、混合物の0.1重量%から10重量%または0.2重量%から5重量%になるように選択される。次いで、充填剤を含有する混合物を紡糸口金を通過させて少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維を形成することができる。一実施形態において、二酸化チタンを充填剤として選択し、二酸化チタンを艶消剤として使用する。
【0063】
好ましい実施形態において、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤および少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートを含有するPTTポリマーを、押出機内で、PTTポリマーの融点より高く、難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高い温度で接触させ、加熱し、一緒に混合して紡糸口金を通過させるための混合物を形成して難燃PTT含有ポリマーを製造する。あるいは、上述のとおり形成された難燃剤およびPTTポリマーの事前に形成された混合物を紡糸口金を通過させるため、押出機内で、PTTポリマーの融点より高く、難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高い温度で加熱し、混合する。あるいは、多量の難燃ポリマーの溶融マスターバッチ混合物を、押出機内でPTTポリマーおよび難燃ポリマーのマスターバッチ混合物を溶融させ、混合するために有効な温度でPTTポリマーに添加し、PTTポリマーと混合することができ、このブレンドを押出機から紡糸口金を通過させることができる。
【0064】
本発明の方法の一実施形態において、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤およびPTTポリマーの混合物を、如何に形成しようとも、織物またはカーペット用途に有用な完全配向された糸、部分的に配向された糸または延伸されていない糸に形成することができる。ここで、図1を参照すると、難燃剤およびPTTポリマーの混合物またはブレンドを押出機内で180℃から280℃の温度、好ましくは240℃から280℃の温度で溶融混合することができ、この温度は、PTTポリマーおよび難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩成分の融点より高くなるように選択される。次いで、溶融混合された難燃剤およびPTTポリマーを、押出機出口に位置する紡糸口金1を通過させて複数の溶融紡糸連続フィラメント2にする。紡糸口金1のダイ孔は、所望の特性を複数のフィラメント2から形成される糸3に提供するために選択される大きさおよび形状を有することができる。難燃PTTポリマー混合物から複数の糸が同時に紡糸されることを可能にするため、複数の紡糸口金(図示せず)が押出機に連結されていてよい。
【0065】
フィラメント2を、急速に冷却し、マルチフィラメント糸3に集束させることができる。フィラメント2は、フィラメント2を冷気に接触させることにより、好ましくは冷気をフィラメント2上に吹きつけることにより冷却することができる。一実施形態において、フィラメント2は、冷気領域を定める、フィラメントを包囲する冷却空気箱または円筒4を通過させることができる。冷気は、冷却空気箱または円筒4の内表面から内側に向け、フィラメント2を冷却することができる。
【0066】
マルチフィラメント糸3は、オイリングロールとして図1に示される紡糸仕上げアプリケータ5を通過させ、仕上げ剤を糸3上に塗布することができる。仕上げ剤は、好ましくは、脂肪酸エステルおよび/もしくは鉱油またはポリエーテルを含有する油剤である。
【0067】
次いで、マルチフィラメント難燃PTT糸3を、完全に延伸された糸、部分的に配向された糸または延伸されていない糸に加工することができる。
【0068】
糸3が完全に延伸された糸にされるべき場合、糸3は、1段階または2段階延伸工程において、巻取機構部9により巻き取られる前にフィード6ならびに延伸ロール7および8上で延伸されることができ、フィード6ならびに延伸ロール7および8は、少なくとも1個の加熱ロールを含むことができ、フィード6ならびに延伸ロール7および8ならびに巻取機構部9の相対速度は、完全に配向された糸を製造するように設定され得る。例えば、完全に延伸された糸は、糸3を1.01から2の第1の延伸比で延伸されることにより製造されることができ、フィードローラ6ならびに延伸ローラ7および8の温度は、フィードローラ6を100℃未満の温度で作動させ、延伸ローラ7および8をフィードローラ6の温度より高く、50℃から150℃の範囲内の温度で作動させるように制御される。第1の延伸比は、延伸ローラ7に対するフィードローラ6の速度を制御することにより制御され得、例えばフィードローラ6は、1000m/分の速度で回転され得、延伸ローラ7は、1050m/分の速度を有することができる。次いで、糸を、第1の延伸比の少なくとも2.2倍の第2の延伸比で延伸し、延伸ローラ8は、延伸ローラ7より高く、100℃から200℃の範囲内の温度に加熱される。第2の延伸比は、延伸ローラ7に対する延伸ローラ8の速度を制御することにより制御され得、例えば延伸ローラ8は、3000m/分の速度を有することができ、延伸ローラ7は、1050m/分の速度を有することができる。次いで、延伸糸を巻取機構部9により巻き取ることができる。デニール制御ロール10およびあってもなくともよい弛緩ローラ11は、糸紡糸工程を簡易化するために使用され得る。延伸された糸は、巻き取りの前または後に、従来の糸風合い出し加工方法により風合い出し加工することができる。
【0069】
糸3が部分的に配向された糸にされるべき場合、糸3は、1段階または2段階工程において、巻取機構部9により巻き取られる前にフィード6ならびに延伸ロール7および8上で延伸されることができ、または糸を巻取機構部9により直接巻き取られ得る。部分配向糸を巻取機構部により巻き取られる前に延伸することにより製造する場合、延伸比は、上述のとおり完全配向糸を製造するために使用される延伸比未満であり、これはポリマー分子の部分な縦配向のみをもたらす。例えば、糸3は、糸のガラス転移温度より高く、例えば少なくとも45℃または少なくとも60℃で加熱され得、単一段階延伸工程において0.7から1.3の延伸比で延伸され得、フィードロール6は、1800m/分から3500m/分の速度で作動させ、延伸ロール7および8は、1250m/分から4550m/分の同じ速度で作動させ、フィードロール6に対する延伸ロール7および8の相対速度が延伸比を決定する。部分配向糸を巻取機構部9により直接巻き取ることにより製造する場合、巻取機構部9は、部分的配向を糸に誘導するために有効な速度で作動させる。例えば、巻取機構部9を3500m/分から4500m/分の速度でまたは2000m/分から2600m/分の速度で作動させ、糸を巻き取りつつ部分的に配向された糸に誘導することができる。部分的に配向された糸は、糸パッケージ上に巻き取ることができ、次いで風合い出し加工することができる。
【0070】
糸3が延伸されていない糸にされるべき場合、この糸は、巻取機構部9により、ポリマー分子の縦配向を糸繊維に誘導しない速度で直接巻き取られ得る。例えば、巻取機構部9は500m/分から1500m/分の速度で作動し、延伸されていない糸を製造することができる。次いで、この延伸されていない糸を、トウ缶中に貯蔵し、風合い出し加工し、延伸し、ステープル繊維に切断することができる。
【0071】
風合い出し加工された完全に配向された糸、風合い出し加工された部分的に配向された糸および風合い出し加工された延伸されていない糸は、完全に配向された糸、部分的に配向された糸または延伸されていない糸から織物またはカーペットを形成する公知の慣用技術により織物またはカーペットを製造するために利用することができる。
【0072】
別の実施形態において、図2に示されているとおり、難燃PTTポリマーの押出フィラメントは、カーペットを形成するために特に有用なバルク連続フィラメントに形成され得る。溶融されたPTTポリマーおよび溶融された難燃溶融性ホスフィン酸金属塩を有する難燃剤を含有する混合物は、180℃から280℃の温度、好ましくは240℃から280℃の温度で紡糸口金13を通過させ、複数の連続フィラメント14にすることができ、この温度は、この温度がPTTポリマーおよび難燃剤の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩の融点より高くなるように選択される。フィラメント14は、好ましくは冷気と接触させることにより急速に冷却され、マルチフィラメント糸15に集束させることができる。マルチフィラメント糸15は、紡糸仕上げアプリケータ16と接触させ、仕上げ剤を糸15上に塗布することができる。仕上げ剤は、好ましくは、脂肪酸エステルおよび/もしくは鉱油またはポリエーテルを含有する油剤である。
【0073】
マルチフィラメント糸15は、制御ロール17および18により第1の延伸段階に供給され得る。第1の延伸段階は、フィードロール19および延伸ロール20により定められる。ロール19および20の間において、糸21を比較的低い1.01から2の範囲内の延伸比、好ましくは1.01から1.35の範囲内の延伸比で延伸することができ、この延伸比は、ロール19および20の速度を選択することにより制御される。フィードロール19の温度は低く保持され、好ましくはフィードロール19は加熱されなく、フィードロール19の温度は高くとも30℃から80℃である。延伸ロール20は、50℃から150℃の温度、好ましくは約90℃から140℃の温度に加熱され、糸を破断させることなく糸21を延伸することを簡易化することができる。
【0074】
延伸糸21は、延伸ロール20および22により定められる第2の延伸段階に導かれ得る。第2の段階の延伸は、第1の段階の延伸比と比べて比較的高い延伸比にて、一般に第1の段階の延伸比の少なくとも2.2倍の延伸比、好ましくは第1の段階の延伸比の2.2倍から3.4倍の範囲内の延伸比で実施され得る。延伸ロール22は、100℃から200℃の範囲内の温度で維持され得る。一般に、3個のローラ18、19および22は、順に温度が高い。
【0075】
延伸糸23を、加熱ロール24および25に導き、延伸糸23を風合い出し加工前に予熱することができる。次いで、加熱された延伸糸26を、糸26のバルクを高めるため、糸26を風合い出し加工空気噴射部27を通過させ、次いで噴射冷却ドラム28に導くことにより、風合い出し加工することができる。次いで、バルク風合い出し加工された糸29を、張力制御部30、31および32を通過させ、アイドラー33を通過させ、糸の交絡のため、必要により用いられる交絡機34に導くことができる。交絡糸35は、アイドラー36により必要により用いられる紡糸仕上げアプリケータ37に進行させ、次いでワインダー38上にワインドする。次いで、バルク連続フィラメント糸を、所望により加撚、風合い出し加工およびヒートセットにより加工することができ、従来の方法によりカーペットをふさふさにすることができる。
【0076】
別の態様において、本発明は、材料を対象とし、この材料は、複数の繊維を含み、少なくとも5%の繊維は、(a)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)の少なくとも75重量%からなるポリマー;および(b)280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤からなり;前記ホスフィン酸金属塩は、難燃PTTポリマー繊維の0.25重量%から5重量%または0.3重量%から4重量%または0.5重量%から2.5重量%を含み、前記ホスフィン酸金属塩は、難燃PTTポリマー繊維の難燃剤の少なくとも10重量%を含む。PTTポリマーおよび難燃剤からなる繊維は、好ましくは、少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する。難燃PTTポリマー繊維中のPTTポリマーは、上述のPTTポリマーである。難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、RおよびRが同一でありまたは異なり、水素、直鎖または分枝鎖のC−C18アルキルおよび/またはアリールであり、Mが、Mg、Ca、Al、Sb、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、NaまたはKであり、mが1から4である、上述の式(I)を有するホスフィン酸金属塩および/またはこのポリマーであることができる。好ましくは、Mは亜鉛であり、mは2である。最も好ましくは、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、ジエチルホスフィン酸亜鉛である。このような難燃PTTポリマー繊維およびこれらを製造する方法は、上述のとおりである。
【0077】
一実施形態において、この材料はカーペットである。好ましくは、このカーペットは、少なくとも50%または少なくとも75%または少なくとも90%の難燃PTTポリマー繊維を含有する。最も好ましくは、難燃PTTポリマーカーペット繊維中の難燃溶融性ホスフィン酸金属塩は、ジエチルホスフィン酸亜鉛である。このカーペットは、難燃PTTポリマー繊維を用いて、合成ポリマー繊維からカーペットを製造する慣用の方法により調製することができる。好ましい実施形態において、このカーペットを製造するために使用される難燃PTTポリマー繊維は、バルク連続フィラメント繊維である。
【0078】
本発明のカーペットは、慣用のPTT繊維ベースのカーペットより表面が耐燃性であることができるPTT繊維ベースのカーペットである。本発明のカーペットは、小規模の着火試験、特に16 C.F.R.§1630(§1630.1−1630.4)(1−1−06版)に記載されている「ピル試験」または同様の試験に少なくとも90%の合格率でまたは少なくとも95%の合格率で合格するために十分な耐燃性を有することができる。特に、本発明のカーペットは、ピル試験において、カーペット上で着火されたメタンアミン小片がカーペットをこの小片から少なくとも7.62cm(3インチ)の距離で灰化させる可能性が少なくとも90%または少なくとも95%であるような耐燃性を有する。
【0079】
16 C.F.R.§1630(1−1−06版)に提供される「ピル試験」または同様の試験は、本発明の目的のため、以下のステップおよび基準を含む。20.32cm(8インチ)より大きい直径を有する、より好ましくは22.86±0.64cm(9±1/4インチ)の直径を有する円形領域を含むカーペットの試料を提供する。本発明の目的のため、試料は任意の形状、例えば正方形または円形であってよいが、試料は少なくとも20.32cmの直径を有する円形領域を含まなければならない(C.F.R.試験は、22.86±0.64cmの辺を有する正方形の試料を要求する。)。試料は、60℃±3℃の洗浄温度および66℃±5℃のタンブル乾燥排出温度を使用して10回洗浄され、乾燥されることができる(洗浄および乾燥は、CFR試験において要求されるが、本発明による試験にとっては必ずしも必要ではない。)。試料は、ゆるんだ端および取扱いの間にパイルになり得るいかなる材料もなくなるまで、好ましくはバキュームクリーナにより清浄される。試料は、乾燥オーブン内に、空気が試料の周囲を105℃で2時間自由に循環するように置き、次いでデシケータ内に、室温に冷却されるまで、しかし1時間以下で、カーペット歩行表面を上にして置く。次いで、この試料をデシケータから取り出し、手袋をはめた手によりブラッシングして試料のパイルを立てる。試料は、試験チャンバ内に水平にフラットに置き、20.32cm(8インチ)の直径の孔を中央に有する金属板平坦化フレームを中央に位置させ、試料の上面に置く(好ましくは、金属板は、20.32cmの直径の孔を有する22.86cm×22.86cm(9インチ×9インチ)の鋼板である。)。次いで、約0.149グラムの重量のメタンアミン小片を、試料上に、平坦化フレームの20.32cmの孔の中央に置く。この小片は、火のついたマッチまたは同等の火源を小片の上面に接触させることにより着火させる。試験は、最後の火炎の痕跡もしくは光の消失までまたは燃焼もしくは燻焼が平坦化フレームの孔の縁の任意の場所の2.54cm(1インチ)以内に接近するまで継続する。すべての燃焼が止んだ後、平坦化フレームの孔の縁と炭化領域との間の最短距離を測定し、記録する。試験に合格する試料は、炭化領域が平坦化フレームの孔の縁の任意の場所から2.54cm(1インチ)より大きい(ピルの位置から7.62cm(3インチ)以下で炭化される)試料である。
【0080】
本発明のカーペットはまた、アメリカ材料試験協会ASTM−E−648(参照により本明細書に組み込む。)の床材放射パネル試験のClassIまたはClassIIカテゴリーに合致するために十分な耐燃性を有することができる。ClassIカテゴリーに合致する試料は、1平方センチメートル当たり0.45ワットの平均最小放射束を有し、ClassIIカテゴリーに合致する試料は、1平方センチメートル当たり0.22ワットの平均最小放射束を有する。床材放射パネル試験ASTM−E−648は、以下のステップを含む。100cm×20cm(39インチ×8インチ)のカーペット試料を、標本上に設置された空気/ガスを燃料とする放射エネルギーパネルを有する試験チャンバの床上に水平に置く。空気/ガスを燃料とする放射エネルギーパネルは、1平方センチメートル当たり約1.1ワットの最大放射エネルギーをパネル直下で発生させるようにおよび1平方センチメートル当たり約0.1ワットの最小放射エネルギーをパネルから離れた試料の遠端部で発生させるように位置させる。ガスを燃料とするパイロットバーナを、試料の燃焼を開始させるために使用する。試験は、試料が燃えてなくなるまで継続する。試料燃焼跡からの距離を測定し、記録する。試料が「自消」した場所での放射加熱エネルギー曝露を記録し、試料の臨界放射束(火炎伝播を持続するために必要とされる最小のエネルギー)として報告する。
【0081】
別の実施形態において、前記材料は織物である。好ましくは、織物は少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも25%または少なくとも50%または少なくとも75%または少なくとも90%の難燃PTTポリマー繊維を含有する。最も好ましくは、難燃PTTポリマー織物繊維中の難燃溶融性ホスフィン酸塩は、ジエチルホスフィン酸亜鉛である。この織物は、難燃PTTポリマー繊維を用いて、合成ポリマー繊維から織物を製造する慣用の方法により調製され得る。一実施形態において、織物を製造するために使用される難燃PTTポリマー繊維は、完全に配向された糸または部分的に配向された糸である。一実施形態において、織物を製造するために使用される難燃PTTポリマー繊維は、ステープル繊維である。
【実施例1】
【0082】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチを、210℃から215℃の融点を有するジエチルホスフィン酸亜鉛および225℃から230℃の融点を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)を245℃から260℃の温度に混合しおよび加熱することにより、調製した。ジエチルホスフィン酸亜鉛(難燃剤)の量は、ジエチルホスフィン酸亜鉛がマスターバッチ混合物の20重量%含まれるように選択された。難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチを調製した後、マスターバッチがマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーの混合物の2.5重量%の量で存在し、混合物が0.5重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛を含有するように(混合物中の2.5重量%のマスターバッチ難燃PTT×マスターバッチ混合物中の20重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛)、難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)、難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチおよびポリ(トリメチレンテレフタレート)を押出機内で加熱し、混合した。この混合物を、押出機内で加熱し、混合し、紡糸ビームに供給し、235℃の開始温度から257℃の温度の温度範囲内で紡糸ポンプにより紡糸口金をポンプ通過させた。この混合物を、0.285mm×0.95mm×1.5mmのトリローバル断面を有する紡糸口金に押出して0.5重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛を含有するポリ(トリメチレンテレフタレート)フィラメントを形成した。68本のフィラメントを合わせてマルチフィラメント繊維を形成した。マルチフィラメント繊維を、1000m/分での第1の延伸ロール紡糸および1030m/分での第2の延伸ロール紡糸の間で周囲温度で延伸し、次いで1030m/分での第2の延伸ロール紡糸および3000m/分での第3の延伸ロール紡糸の間で再度延伸した。次いで、延伸されたマルチフィラメント繊維を150℃の温度でヒートセットし、次いで170℃に加熱し、高圧空気に曝露させることにより風合い出し加工し、冷却ドラム上で冷却し、巻き取った。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例2】
【0083】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例1に記載されている手段にて調製した。ただしポリ(トリメチレンテレフタレート)と混合されるマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)の量は、マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)が混合物中に5重量%にて存在し、ジエチルホスフィン酸亜鉛が混合物中に1重量%で存在するような量であった(混合物中の5重量%のマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレン)テレフタレート×マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)の中の20重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例3】
【0084】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例2に記載されている手段にて調製した。ただしマルチフィラメント繊維を1066m/分での第1の延伸ロール紡糸および1100m/分での第2の延伸ロール紡糸の間で周囲温度で延伸し、次いで1100m/分での第2の延伸ロール紡糸および3200m/分での第3の延伸ロール紡糸の間で再度延伸した。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例4】
【0085】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例1に記載されている手段において作製したが、ただしマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)を、マスターバッチ混合物が15重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛および15重量%のシアヌル酸メラミンを含有するように、難燃成分のジエチルホスフィン酸亜鉛およびシアヌル酸メラミン(平均粒度約3μm)ならびにポリ(トリメチレンテレフタレート)を混合し、加熱することにより調製した。マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)をポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーと混合した後、この混合物は、0.375重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛および0.375重量%のシアヌル酸メラミンを含有した。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例5】
【0086】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例4に記載されている手段において作製したが、ただしポリ(トリメチレンテレフタレート)と混合されるマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)の量は、マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)が混合物中に5重量%で存在するような量であった。結果として、ジエチルホスフィン酸亜鉛は、混合物中に0.75重量%で存在し(混合物中の5重量%のマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレン)テレフタレート×マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)中の15重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛)、シアヌル酸メラミンは、混合物中に0.75重量%で存在した。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例6】
【0087】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例2に記載されている手段において作製したが、ただしマルチフィラメント繊維を、市販の延伸風合い出し加工装置により、マルチフィラメント繊維をこのガラス転移温度未満の温度で最初に延伸する2つの延伸工程において延伸し、風合い出し加工し、第1の延伸ロールは、1030m/分の速度を有し、第2の延伸ロールは、1060m/分の速度を有し、第3の延伸ロールは、3090m/分の速度を有し、延伸された繊維を風合い出し加工のために200℃の温度に加熱した。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例7】
【0088】
本発明の繊維組成物を、本発明の方法により作製した。繊維組成物を実施例6に記載されている手段において作製したが、ただしポリ(トリメチレンテレフタレート)と混合されるマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)の量は、マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)が混合物中に10重量%で存在し、ジエチルホスフィン酸亜鉛が混合物中に2重量%で存在するような量であった(混合物中の10重量%のマスターバッチ難燃ポリ(トリメチレン)テレフタレート×マスターバッチ難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)中の20重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛)。繊維の特性を、表1に提供する。
【実施例8】
【0089】
本発明によるものでない繊維組成物を、比較目的のために作製した。繊維を実施例1に記載されている手段において作製したが、ただし難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチを調製せず、いかなる難燃剤をも有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーのみを繊維材料を製造するために使用した。繊維の特性を、表1に比較繊維1として示す。
【実施例9】
【0090】
本発明によるものでない繊維組成物を、比較目的のために作製した。繊維を実施例3に記載されている手段において作製したが、ただし難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチを調製せず、いかなる難燃剤をも有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーのみを繊維材料を製造するために使用した。繊維の特性を、表1に比較繊維2として示す。
【実施例10】
【0091】
本発明によるものでない繊維組成物を、比較目的のために作製した。繊維を実施例6に記載されている手段において作製したが、ただし難燃ポリ(トリメチレンテレフタレート)のマスターバッチを調製せず、いかなる難燃剤をも有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーのみを繊維材料を製造するために使用した。繊維の特性を、表1に比較繊維3として示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1は、本発明の繊維が、分散された溶融性ホスフィン酸金属塩を有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維と比べて減少した引っ張り強さを有しつつ、1.5より大きい引っ張り強さを有することを示す。
【実施例11】
【0094】
本発明によるカーペットを、実施例1および2において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から作製した。実施例1および2の繊維から形成されたカーペットは、他の繊維を含有しなかった。また、本発明によるものでないカーペットを、比較目的のため、実施例7において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から製造した。糸を1インチ当たり4.75撚りで加撚し、143℃(290°F)でSuperbaヒートセット風合い出し加工(Superba heat−set texture)した。次いで、糸を逆に巻き取り、次いでクリール架けし、各糸種につき5/32ゲージカットパイル装置により2フィート幅の帯状物としてふさふさにした。次いで、得られた各カーペットを、暗赤色にベック(beck)染色し、600型充填剤配合ラテックス(600 filler load latex)により仕上げをした。ピル試験は、カーペットからの試料につき56回実施し、放射パネル試験は、各カーペットの試料につき実施した。結果を以下の表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2は、ピル試験により示されるとおり、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩(ジエチルホスフィン酸亜鉛)を含有するポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットが、溶融性ホスフィン酸金属塩を有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットと比べて減少した可燃性を提示し、カーペットを着火するために要求される放射束エネルギーの顕著な増大を提示し得ることを示す。
【実施例12】
【0097】
本発明によるカーペットを、実施例3、4および5において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から作製した。実施例3から5の繊維から形成されたカーペットは、他の繊維を含有しなかった。また、本発明によるものでないカーペットを、比較目的のため、実施例9において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から製造した。糸を1インチ当たり4.75撚りで加撚し、143℃(290°F)でSuperbaヒートセット風合い出し加工した。次いで、糸を逆に巻き取り、次いでクリール架けし、各糸種につき5/32ゲージカットパイル装置により6フィート幅の帯状物としてふさふさにした。次いで、得られた各カーペットを、暗赤色にベック染色し、600型充填剤配合ラテックスにより仕上げをした。ピル試験は、カーペットからの試料につき24回実施した。結果を以下の表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
表3は、ピル試験により示されるとおり、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩(ジエチルホスフィン酸亜鉛)を含有するポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットが、溶融性ホスフィン酸金属塩を有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットと比べて減少した可燃性を提示したことを示す。たとえ1つのカーペットが難燃剤の総量をより多く含有するがジエチルホスフィン酸亜鉛をより少なく含有したとしても、他のカーペットよりジエチルホスフィン酸亜鉛を多く含有するカーペットが最小の可燃性を示したことに着目することが重要である。
【実施例13】
【0100】
本発明によるカーペットを、実施例6および7において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から作製した。実施例6および7の繊維から形成されたカーペットは、他の繊維を含有しなかった。また、本発明によるものでないカーペットを、比較目的のため、実施例10において製造されたマルチフィラメント繊維(糸)から製造した。糸を1インチ当たり4.75撚りで加撚し、143℃(290°F)でSuperbaヒートセット風合い出し加工した。糸を、各糸種につき5/32ゲージカットパイル装置および3/16ゲージカットパイル装置により12フィート幅でふさふさにした。次いで、得られた各カーペットゲージの2つのロールを、暗赤色にベック染色した。各カーペットのこれらのロールの1つを、ベック染色機内で2回目の通過により再染色した。次いで、得られた各カーペットゲージの3つのロールを、桃色にクスター(Kuster)染色した。次いで、クスター染色されたカーペットロールの1つを、クスター染色により暗赤色に再染色し、別の1つのクスター染色されたカーペットロールをベック染色機内で再染色した。次いで、カーペット試料を600型充填剤配合ラテックスにより仕上げをした。ピル試験は、カーペットからの試料につき32回または48回実施した。結果を以下の表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
表4は、ピル試験により示されるとおり、溶融性ホスフィン酸金属塩を含有しないカーペットが100%の合格率を示さない試験条件下で、難燃溶融性ホスフィン酸金属塩(ジエチルホスフィン酸亜鉛)を含有するポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットが、溶融性ホスフィン酸金属塩を有さないポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維を有するカーペットと比べて減少した可燃性を提示したことを示す。2重量%のジエチルホスフィン酸亜鉛を含有するカーペットは、各タイプのカーペットゲージおよび試験した染色条件につき90%を超える合格率を提示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)の少なくとも75重量%からなるポリマー;および
(b)280℃以下の融点を有するホスフィン酸金属塩を含む難燃剤
を含み、ホスフィン酸金属塩は、繊維の0.25重量%から5重量%含まれており、ホスフィン酸金属塩は、難燃剤の少なくとも10重量%含まれており;
少なくとも1g/dの引っ張り強さを有しおよび幅の少なくとも100倍の長さを有する難燃ポリエステル繊維。
【請求項2】
難燃剤が、繊維の0.5重量%から2.5重量%含まれている、請求項1に記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項3】
ホスフィン酸金属塩が、難燃剤の50重量%超もしくは少なくとも75重量%含まれており、または難燃剤が、本質的にホスフィン酸金属塩からなる、請求項1または2に記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項4】
ホスフィン酸金属塩が、式(I)
【化3】

[式中、
およびRは、同一でありまたは異なり、水素、C−C18アルキルおよびC−C18アリールからなる群から選択され;
Mは亜鉛であり;
mは2である。]
を有するホスフィン酸亜鉛またはこのポリマーである、請求項1または2から3のいずれかに記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項5】
ホスフィン酸亜鉛がジエチルホスフィン酸亜鉛である、請求項4に記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項6】
難燃剤が、10μm以下の平均粒度を有する微粒子状の非可融性難燃化合物をさらに含む、請求項1または2から5のいずれかに記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項7】
少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートを含むポリマー以外のポリアミドまたはポリエステルをさらに含む、請求項1または2から6のいずれかに記載の難燃ポリエステル繊維。
【請求項8】
複数の繊維を含み、これらの繊維の少なくとも5%は、(a)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)の少なくとも75重量%からなるポリマー;および(b)280℃以下の融点を有する難燃ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤からなり;ホスフィン酸金属塩は、難燃剤含有PTTポリマー繊維の0.25重量%から5重量%含まれており、ホスフィン酸金属塩は、難燃剤含有PTTポリマー繊維の難燃剤の少なくとも10重量%含まれている、材料。
【請求項9】
ホスフィン酸金属塩が、式(I)
【化4】

[式中、
およびRは、同一でありまたは異なり、水素、C−C18アルキルおよびC−C18アリールからなる群から選択され;
Mは亜鉛であり;
mは2である。]
を有するホスフィン酸亜鉛またはこのポリマーである、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
ホスフィン酸亜鉛がジエチルホスフィン酸亜鉛である、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
難燃剤含有繊維が少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する、請求項8または9から10に記載の材料。
【請求項12】
材料がカーペットである、請求項8または9から11に記載の材料。
【請求項13】
ピル試験において、カーペット材料上で着火されたメタンアミン小片がカーペットをこの小片から最大7.62cmの距離で炭化させる可能性が少なくとも90%または少なくとも95%であるような耐燃性を有する、請求項12に記載のカーペット材料。
【請求項14】
カーペットが、1平方センチメートル当たり少なくとも0.22ワットまたは1平方センチメートル当たり少なくとも0.45ワットの平均最小放射束を有する、請求項12または13に記載のカーペット材料。
【請求項15】
材料が織物である、請求項8または9から11に記載の材料。
【請求項16】
1)ホスフィン酸金属塩を含む難燃剤および2)少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートを含むポリマーを、180℃から280℃の温度で混合して混合物を形成すること:および
混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成することを含み、
(a)難燃剤およびポリマーが混合される温度を、ホスフィン酸金属塩およびポリマーが選択された温度より低い融点をそれぞれ有するように選択し;
(b)難燃剤を、ホスフィン酸金属塩が難燃剤の少なくとも10重量%含まれるように選択し;
(c)混合物中に混合される難燃剤の量を、ホスフィン酸金属塩が混合物の0.25重量%から5重量%含まれるように選択し;および
(d)混合物中に混合される難燃剤の量を、混合物を紡糸口金を通過させて繊維を形成した後に少なくとも1g/dの引っ張り強さを有する繊維を提供するように選択する、
難燃ポリエステル繊維を製造する方法。
【請求項17】
ホスフィン酸金属塩が、280℃以下または270℃以下または250℃以下または230℃以下または200℃以下または180℃以下の融点を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ホスフィン酸金属塩が、280℃以下の融点を有し、式(I)
【化5】

[式中、
およびRは、同一でありまたは異なり、水素、C−C18アルキルおよび/またはC−C18アリールからなる群から選択され;
Mは亜鉛であり;
mは2である。]
を有するホスフィン酸亜鉛またはこのポリマーである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ホスフィン酸亜鉛がジエチルホスフィン酸亜鉛である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
難燃剤が、微粒子状の非可融性難燃化合物をさらに含む、請求項16または17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
混合物を紡糸口金にポンプ通過させて繊維を形成する前に、混合物を冷却して固体を形成し、次いで固体を、固体が溶融する温度に加熱して混合物を再形成するステップをさらに含む、請求項16または17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
難燃剤が、マスターバッチポリマーをさらに含み、難燃剤および少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含むポリマーが混合される温度が、ホスフィン酸金属塩、マスターバッチポリマーおよび少なくとも75モル%のトリメチレンテレフタレートからなるポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも75重量%含むポリマーが選択された温度より低い融点をそれぞれ有するように選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
マスターバッチポリマーが、ポリアミドおよびポリエステルからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510397(P2010−510397A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537313(P2009−537313)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/084525
【国際公開番号】WO2008/061087
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】