説明

難燃剤を含有する木質材料及び難燃剤を含有する木質材料の製造方法

【課題】屋外で使用しても難燃剤の溶脱がほとんど無く、また白華現象が発生しない十分な難燃性能を具備する木質材料を提供する。
【解決手段】アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、二酸化炭素を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させた、難燃性を有する木質材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤を含有する木質材料及びその製造方法に関し、具体的には、水に難溶性の難燃剤を用いた、難燃剤を含有する木質材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質材料に難燃性を付与するためには、木質材料中の難燃剤固形量は80〜250kg/m3が必要とされており、また難燃剤は水に希釈して液体で木質材料に注入処理を行うことから、難燃剤水溶液中の難燃剤は高い濃度が求められる。このため現在、木質材料に使用される難燃剤は水への溶解性が高いものが主流である。
【0003】
現在主流の難燃性木質材料は、水によって難燃剤が木質材料中から容易に溶け出すため、連続的に雨水に触れる屋外環境で難燃性木質材料を使用すると、急速に難燃性能が失われる。また直接雨水に触れる環境でなくても、難燃性木質材料が空気中の水蒸気を吸収し、木質材料表面に難燃剤が析出する白華現象が発生することが知られており、屋内で難燃性木質材料を使用する際の問題点となっている。
【0004】
難燃性木質材料の難燃剤溶脱防止のため、種々の塗料の研究開発が行われているが、難燃剤の溶脱防止効果は完全ではなく、また塗料自体の耐候性も十分ではないため、根本的な解決には至っていない。このため、水に容易に溶解しない難燃剤を木質材料中に高い固形量で含有させるための処理技術が望まれていた。
【0005】
水に難溶性の難燃剤として、水酸化アルミニウムが挙げられる。水酸化アルミニウムは、プラスチックやゴムなどへの混練用難燃剤として実績があり、高い難燃性能を持っている。しかし水酸化アルミニウムは水に難溶性であり、また有機溶剤にも溶解しない。また、水酸化アルミニウムを水に分散させて加圧注入処理を行っても、水酸化アルミニウムは木質材料表面で濾過されて留まり木質材料内部に浸透しない。このため、水酸化アルミニウムを何らかの溶媒に溶解あるいは分散させて木質材料中に含浸させるという方法を用いることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−159554号公報
【特許文献2】特開2006−44125号公報
【特許文献3】特開2005−288956号公報
【特許文献4】特開2005−271309号公報
【特許文献5】特開平11−34011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、水に難溶性の水酸化アルミニウムを木質材料に含有させ、屋外で使用しても難燃剤の溶脱がほとんど無く、また白華現象が発生しない十分な難燃性能を具備する木質材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、水酸化アルミニウムを木質材料に含有させ、耐候性の高い難燃性木質材料を得るため鋭意研究を行った結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、二酸化炭素を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させた、難燃性を有する木質材料である。
【0010】
一態様において、本発明は、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素を接触させた状態で第1の温度で第1の時間だけ保持し、次いで第1の温度よりも高い第2の温度で第2の時間だけ保持することにより、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させた、上記木質材料である。
【0011】
この木質材料において、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が5〜50重量%であるのが好ましい。
【0012】
また、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比が、Al/NaOH=0.10〜0.85であるのが好ましい。
【0013】
さらに、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が、温度10〜100℃であるのが好ましい。
【0014】
また、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が、ゲージ圧0.01〜1.0MPaであるのが好ましい。
【0015】
本発明はまた、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、炭酸又はカルボン酸を含む酸性水溶液を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させた、難燃性を有する木質材料である。
【0016】
この木質材料において、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が5〜50重量%であるのが好ましい。
【0017】
また、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比が、Al/NaOH=0.10〜0.85であるのが好ましい。
【0018】
さらに、カルボン酸の酸解離定数がpKa=4以下であるのが好ましい。
【0019】
本発明はさらに、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて、アルミン酸ナトリウム含有木質材料を得る工程、及び、得られたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させる工程を含む、難燃性を有する木質材料の製造方法である。
【0020】
本発明はまた、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて、アルミン酸ナトリウム含有木質材料を得る工程、及び、得られたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、炭酸又はカルボン酸を含む酸性水溶液を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させる工程を含むことを特徴とする、難燃性を有する木質材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明において提供される、難燃剤を含有する木質材料及び難燃剤を含有する木質材料の製造方法によれば、木質材料内部に高い固形量の水酸化アルミニウムが生成されるので、十分な難燃性能を得ることができる。木質材料中に生成された水酸化アルミニウムは水に難溶性であるため、これによって、屋外で使用しても難燃剤の溶脱がほとんど無く、また白華現象が発生しない難燃性木質材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る木質材料は、アルミン酸ナトリウム水溶液で注入処理された木質材料に二酸化炭素を接触させ、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成したものであることを特徴としている。
【0023】
アルミン酸ナトリウム水溶液は二酸化炭素に接触すると、水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムが生成される。この反応を木質材料中で行うことにより、木質材料中に目的物である水酸化アルミニウムが生成され、その結果、耐候性の高い難燃性木質材料を得ることができる。木質材料中に生成された水酸化アルミニウムは水に難溶性であり、屋外に暴露され雨水に接触しても水酸化アルミニウムは容易に溶出せず長期間木質材料中に留まる。
【0024】
本発明において、木質材料に接触させるアルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合は、5〜50重量%であるのが好ましい。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が5重量%以上の場合、木質材料中に高い水酸化アルミニウムの固形量が生成されるため、木質材料に難燃性能を付与することが容易となる。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が50重量%以下の場合、アルミン酸ナトリウム水溶液の粘度が低下するため、木質材料の内部にまで均一にアルミン酸ナトリウム水溶液を浸透させることが容易となる。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合は、より好ましくは35重量%以下である。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が35重量%以下の場合、アルミン酸ナトリウム含有木質材料を二酸化炭素に接触させて木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させた際に、水酸化アルミニウムが木質材料表面に噴出して付着する現象が発生しにくくなる。水酸化アルミニウムが木質材料表面に付着すると、水酸化アルミニウムは水や有機溶剤に溶解しないため除去が困難であり問題である。
【0025】
本発明において、木質材料に接触させるアルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比はAl/NaOH=0.10〜0.85であるのが好ましい。アルミン酸ナトリウムは、化学式NaAlO2で表されるメタアルミン酸ナトリウムと、化学式Na3AlO2で表されるオルトアルミン酸ナトリウムが存在するため、アルミニウムとナトリウムのモル比はAl/NaOH=0.33〜1.00の値をとりうる。ただし、アルミン酸ナトリウムは水酸化ナトリウム水溶液にアルミニウムを添加する等の方法により得られることから、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比はAl/NaOH=0〜0.33の値もとることができる。ここで、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比がAl/NaOH=0.10以上の場合、木質材料中に生成される目的物である水酸化アルミニウムの量に対して、副産物の重炭酸ナトリウムの量を低減することができる。このため処理後、難燃性木質材料表面に析出する重炭酸ナトリウムの除去及び廃棄が容易になる。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比がAl/NaOH=0.85以下の場合、アルミン酸ナトリウムが水溶液中で加水分解して水酸化アルミニウムが沈殿する現象を低減することができるため、アルミン酸ナトリウム水溶液の長期保管が容易になる。
【0026】
本発明において、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素は、温度10〜100℃であるのが好ましい。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が温度10℃以上の場合、木質材料中のアルミン酸ナトリウム水溶液と二酸化炭素との反応が進むことによって、木質材料中に難燃性を付与するために十分な固形量の水酸化アルミニウムを生成させることができるようになる。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が温度100℃以下の場合、アルミン酸ナトリウム含有木質材料の急激な温度上昇を抑制することができるため、木質材料中のアルミン酸ナトリウム水溶液が木質材料表面に噴出して多量の水酸化アルミニウムが木質材料表面に付着した状態になるのを防ぐことができる。木質材料表面に水酸化アルミニウムが付着すると、製品としての体裁が悪いためこれらの除去が求められるが、木質材料表面に付着した水酸化アルミニウムは木質材料に難燃性能を付与するための有効成分であり、除去を行うと難燃性能の低下が懸念される。また、木質材料表面に付着した水酸化アルミニウムは、水や有機溶剤に溶解させる方法での除去が困難であり、さらに物理的に削り取る方法は木質材料に損傷を与えるため問題である。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素の温度は、より好ましくは30〜80℃である。30〜80℃の範囲内で二酸化炭素の温度を保持することにより、木質材料表面に水酸化アルミニウムの付着を抑え、さらに短時間で効果的に木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させることができる。
【0027】
本発明において、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素は、ゲージ圧0〜1.0MPaであるのが好ましい。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素がゲージ圧0MPa以下の場合、負圧によってアルミン酸ナトリウム水溶液が引き出されて木質材料表面から流出し、流出したアルミン酸ナトリウム水溶液は木質材料表面で析出する。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素がゲージ圧1.0MPa以上の場合、二酸化炭素やエネルギーの使用量の増大に対して、水酸化アルミニウムの大きな生成効果を得ることはできず、二酸化炭素をゲージ圧1.0MPa以上に加圧することは過剰である。また、圧縮された二酸化炭素は高圧ガス保安法に規定する高圧ガスに該当するため、その使用量によっては許認可の対象となり、有資格者の配置が必要になるなど設備維持のためのコストの点で不利である。
【0028】
本発明に係る木質材料はまた、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に塗布、吹付、浸漬又は注入処理などの手段により接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、炭酸又は酢酸、クエン酸などのカルボン酸から成る酸性水溶液を接触させて木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させたものである。十分に乾燥させたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に酸性水溶液を注入処理すると、木質材料中で塩基であるアルミン酸ナトリウムと酸が中和して水酸化アルミニウムとナトリウム塩が生成する。このとき酸性水溶液は、注入処理装置に損傷を与えず取り扱いが容易であることや、木質材料のセルロースを分解しないことが求められるため、塩酸や硫酸などの強酸を用いることはできない。難燃性木質材料の使用される環境は、住居など人が直接触れることが想定されることから、酸性水溶液には食品に利用される炭酸又はカルボン酸を用いるのが適している。
【0029】
酸性水溶液に用いるカルボン酸は、酸解離定数がpKa=4以下から単独または複数を選択して使用する。このようなカルボン酸に、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、フマル酸を挙げることができる。
【0030】
木材種には特に限定されず、種々の木材を用いることができ、例えば、スギ、ヒノキ、スプルースなどの針葉樹、ブナ、ナラ、キリなどの広葉樹、ラワン、黒檀、チークなどの南洋材等の心材や辺材の他に、集成材、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)、合板、MDF(Medium Density Fiberboard:中質繊維板)、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board:配向性ストランドボード)などの木質接着製品、木材と合成樹脂を複合し成形したWPC(Wood Plastic Composite:木材・プラスチック複合材)も用いることができる。
【0031】
アルミン酸ナトリウム水溶液に、防腐剤、防蟻剤、防黴剤を単独または複数選択して混合してもよい。本発明に係る製造方法に、この防腐剤、防蟻剤、防黴剤を単独または複数選択して混合したアルミン酸ナトリウム水溶液を用いることによって、木質材料に難燃性の他、防腐性、防蟻性、防黴性を追加することができる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
実施例1
アルミン酸ナトリウム25重量部と、水酸化ナトリウム5重量部、残部水を用いて、アルミニウムとナトリウムのモル比がAl/NaOH=0.60のアルミン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0034】
[アルミン酸ナトリウム水溶液の加圧注入処理]
木質材料として3×20×50mmのスギ板を用いた。JIS A 9002「木質材料の加圧式保存処理方法」に準拠した加圧注入処理方法を用いて、スギ板に上で調製したアルミン酸ナトリウム水溶液を加圧注入処理することにより、アルミン酸ナトリウム含有スギ板が得られるよう、以下の方法を行った。圧力容器内に上記スギ板を設置して圧力容器内を減圧し、30分間ゲージ圧−0.08MPaで保持する。減圧保持30分経過後、負圧の状態で上記アルミン酸ナトリウム水溶液を圧力容器内に入れ、圧力容器内をアルミン酸ナトリウム水溶液で満たす。アルミン酸ナトリウム水溶液で満たされた圧力容器に、ポンプを用いてアルミン酸ナトリウム水溶液をさらに送り込むことにより、圧力容器内をゲージ圧1.0MPaまで加圧して30分間圧力を保持する。加圧保持30分経過後、圧力容器内のアルミン酸ナトリウム水溶液を回収し、圧力容器内からアルミン酸ナトリウム含有スギ板を取り出す。
【0035】
[二酸化炭素による処理]
上で得られたアルミン酸ナトリウム含有スギ板を、以下の方法で二酸化炭素を用いて処理し、スギ板中に水酸化アルミニウムを生成させた。
アルミン酸ナトリウム含有スギ板をデシケーターに設置して、このデシケーター内に二酸化炭素を送り込み、デシケーター内を二酸化炭素で満たす。このデシケーターを45℃に調節した恒温器に入れ、3日間静置する。3日間静置後、水酸化アルミニウム含有スギ板を取り出す。得られた水酸化アルミニウム含有スギ板を、酢酸10重量%水溶液に5分間浸漬し、表面に析出して付着した重炭酸ナトリウムを除去する。
【0036】
このようにして得られた水酸化アルミニウム含有スギ板は、JIS K 1571「木材保存剤‐性能基準及びその試験方法」に準拠する耐候操作を行っても水酸化アルミニウムの固形量は250kg/m3以上であり、十分な難燃性能を示した。従って、屋外の雨水に連続的に触れる環境で長期間使用しても、難燃剤の溶脱がほとんど無く耐候性に優れ、また屋内で使用しても白華現象の問題が起こらない、優れた難燃性を持った木質材料を得ることができた。
【0037】
さらにJIS K 1571「木材保存剤‐性能基準及びその試験方法」に規定する室内防蟻性能試験に、本発明の製造方法による水酸化アルミニウム含有スギ材を供試したところ、質量減少率が小さく性能基準を満たしたことから、水酸化アルミニウム含有木質材料は高い防蟻効力を持つことが確認された。
【0038】
本発明の製造方法により水酸化アルミニウムを含有した木質材料は、木質材料内の空隙を水酸化アルミニウムが析出して埋めることにより木質材料表面が硬化することから、特にスギやヒノキなどの軟質の針葉樹材の表面に傷を付きにくくする表面改質にも有効である。
【0039】
実施例2
実施例1中の二酸化炭素による処理に代えて、アルミン酸ナトリウム含有スギ板を設置したデシケーターに、二酸化炭素を送り込んでデシケーター内を満たし、デシケーターを恒温器内に入れて、恒温器の温度を45℃で24時間保持し、その後温度を上げて80℃で16時間保持した。
このように二酸化炭素を、段階的に温度を高めアルミン酸ナトリウム含有スギ板に接触させた場合、実施例1の場合と比較して、スギ板表面に水酸化アルミニウムを付着させることなくスギ板中に同量の水酸化アルミニウムを生成するために必要な時間を短縮させることができた。
【0040】
実施例3
実施例1中の二酸化炭素による処理に代えて、アルミン酸ナトリウム含有スギ板を設置した圧力容器に、二酸化炭素を送り込んで圧力容器内を0.05MPaに保持し、圧力容器を45℃に調節した恒温器に入れ、3日間静置した。
このように二酸化炭素をアルミン酸ナトリウム含有スギ板に加圧して接触させた場合、実施例1の場合と比較して、副生成物である重炭酸ナトリウムがスギ板表面に付着する量を低減することができた。
【0041】
実施例4
実施例1のアルミン酸ナトリウム水溶液の加圧注入処理で得られたアルミン酸ナトリウム含有スギ板に、酸性水溶液を用いた以下の方法でスギ板中に水酸化アルミニウムを生成させた。
アルミン酸ナトリウム含有スギ板を80℃に調節した恒温乾燥器に入れ、16時間乾燥する。乾燥させたアルミン酸ナトリウム含有スギ板を、圧力容器内に設置して圧力容器内を減圧し、30分間ゲージ圧−0.08MPaで保持する。減圧保持30分経過後、負圧の状態で酢酸10重量%水溶液を圧力容器内に入れ、圧力容器内をクエン酸30重量%水溶液で満たす。クエン酸30重量%水溶液で満たされた圧力容器に、ポンプを用いてクエン酸30重量%水溶液を送り込み、圧力容器内をゲージ圧1.0MPaまで加圧して30分間圧力を保持する。加圧保持30分経過後、圧力容器内のクエン酸30重量%水溶液を回収し、圧力容器内から水酸化アルミニウム含有スギ板を取り出す。
実施例1と同様に評価したところ、スギ板中に高い水酸化アルミニウムの固形量を確認し、十分な難燃性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の製造方法によって得られる木質材料は、優れた耐候性と難燃性を持っているため、住宅用外装材やウッドデッキ、木柵などの外構用部材等の難燃性が要求される屋外用木製部材に極めて有用である。また、白華現象が発生しないため、住宅用内装材、家具用材にも有用である。また、原材料の木質材料に間伐材を利用することにより、自然環境の保護にも貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、二酸化炭素を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させたことを特徴とする、難燃性を有する木質材料。
【請求項2】
前記アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素を接触させた状態で第1の温度で第1の時間だけ保持し、次いで第1の温度よりも高い第2の温度で第2の時間だけ保持することにより、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させたことを特徴とする、請求項1に記載の木質材料。
【請求項3】
前記アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が5〜50重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の木質材料。
【請求項4】
前記アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比が、Al/NaOH=0.10〜0.85であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質材料。
【請求項5】
前記アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が、温度10〜100℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の木質材料。
【請求項6】
前記アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素が、ゲージ圧0.01〜1.0MPaであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の木質材料。
【請求項7】
アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて得たアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、炭酸又はカルボン酸を含む酸性水溶液を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させたことを特徴とする、難燃性を有する木質材料。
【請求項8】
前記アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムの割合が5〜50重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の木質材料。
【請求項9】
前記アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比が、Al/NaOH=0.10〜0.85であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の木質材料。
【請求項10】
前記カルボン酸の酸解離定数がpKa=4以下であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の木質材料。
【請求項11】
アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて、アルミン酸ナトリウム含有木質材料を得る工程、及び
得られたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させる工程
を含むことを特徴とする、難燃性を有する木質材料の製造方法。
【請求項12】
アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に接触させて、アルミン酸ナトリウム含有木質材料を得る工程、及び
得られたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に、炭酸又はカルボン酸を含む酸性水溶液を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させる工程
を含むことを特徴とする、難燃性を有する木質材料の製造方法。