難燃剤及びそれを含む難燃性材料
【課題】難燃剤及びそれを含む難燃性材料を提供すること。
【解決手段】難燃剤は、アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることより形成される窒素含有リグニンを含む。リグニンとしては、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せが用いられる。この難燃剤は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に加えて、難燃性材料を形成することができる。
【解決手段】難燃剤は、アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることより形成される窒素含有リグニンを含む。リグニンとしては、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せが用いられる。この難燃剤は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に加えて、難燃性材料を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤及びそれを含む難燃性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、重要な加工剤であるが、その需要量は、可塑剤より少ない。ハロゲン系難燃剤は、燃焼過程で、毒ガス、例えば、ダイオキシン又はフランを生成するので、欧州連合で使用が禁止されている。リン系難燃剤は、ハロゲン系難燃剤より安全である。しかし、それらは、川や湖の富栄養化を引き起こす。この他、リン系難燃剤は、加水分解しやすいので、生産物の信頼性が低下する。吸熱型の無機難燃剤、例えば、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムは、環境に優しい。しかし、それらの添加量が多量でなければ、難燃性効果が達成されない。よって、多量の添加量の無機難燃剤は、生産物の機械的性質を低下させ、その用途を制限する。よって、ハロゲンやリンを含まず、非常に効果的で、最低限の煙しか発生せず、低毒性で、添加量が少ない新規の難燃剤が必要とされている。
【0003】
なお、特許文献1には、組成物100質量部に基づいて、SiO2含有率28質量%以上の水ガラスの5〜20質量%水溶液94〜80質量部と、ポルトランドセメント100質量部にリグニンスルホン酸塩1質量部を混合したもの6〜20質量部とを配合してなる難燃剤組成物が開示されている。この難燃剤組成物は、ハロゲンやリンを含まず、低毒性であるが、その用途が既成のウレタンフォーム用に限定されている。また、この難燃剤組成物において、難燃剤として作用するのは、水ガラスであって、リグニンスルホン酸塩ではない。リグニンスルホン酸塩は、ポルトランドセメントのゲル化時間を長くし、硬化したポルトランドセメントの収縮亀裂などを減少させるために配合されているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−306282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃剤及びそれを含む難燃性材料を提供し、上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ある態様では、難燃剤を提供する。この難燃剤は、アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンを含む。ここで、リグニンは、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せである。
【0007】
本発明は、ある態様では、難燃性材料を提供する。この難燃性材料は、上記の難燃剤と熱硬化性樹脂を含み、難燃剤と熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1である。
【0008】
本発明は、ある態様では、難燃性材料を提供する。この難燃性材料は、上記の難燃剤と熱可塑性樹脂を含み、難燃剤と熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の難燃剤は、ハロゲンやリンを含まず、非常に効果的で、最低限の煙しか発生せず、低毒性で、添加量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】市販のナトリウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図3】調製されたオルガノソルブ籾殻リグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図5】調製されたフェノール性リグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図7】市販のアンモニウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の一製造例のアンモニウムリグニンスルホン酸塩−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図9】市販のアルカリリグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図10】本発明の一製造例によるアルカリリグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図11】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【図12】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【図13】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図14】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図15】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図16】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、難燃剤となる窒素含有リグニンに関する。窒素含有リグニンは、炭素源(チャー形成)と窒素源(不燃性ガス形成)から構成され、これらの炭素源と窒素源は、アルデヒド由来のアルキレン基により結合される。例えば、炭素源と窒素源との間のメチレン橋はホルムアルデヒドに由来する。炭素源は、リグニン、例えば、市販のリグニンスルホン酸塩(例えば、ナトリウムリグニンスルホン酸塩、カルシウムリグニンスルホン酸塩、アンモニウムリグニンスルホン酸塩、又は、それらの組合せ)、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン(例えば、籾殻リグニン、稲わらリグニン、竹リグニン、樟脳木リグニン、松材リグニン、杜松リグニン、又は、それらの組合せ)、フェノール変性リグニン(例えば、フェノール性リグニン、カテコールリグニン、ビスフェノール性リグニン、又は、それらの組合せ)、又は、それらの組合せである。窒素源は、窒素含有化合物、例えば、ジシアンジアミド(DICY)化合物、窒素含有複素環式化合物、アミド化合物、又は、それらの組合せである。窒素含有複素環式化合物は、トリアジン化合物、ジアゾール化合物、又は、窒素原子を1個有する複素環式化合物である。ある態様では、トリアジン化合物はメラミンである。ある態様では、ジアゾール化合物は、ピラゾール、イミダゾール、又は、それらの組合せである。ある態様では、窒素原子を1個有する複素環式化合物は、ピロール、インドール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、又は、それらの組合せである。アミド化合物は、尿素、チオ尿素、又は、それらの組合せである。アルデヒドは、C1−12アルデヒド又はC1−6アルデヒドである。ある態様では、アルデヒドは、ホルムアルデヒドである。
【0012】
窒素含有リグニンは、アルカリ性条件で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される。窒素含有化合物の使用量が多すぎると、未反応の窒素含有化合物が過多になる。窒素含有化合物の使用量が少なすぎると、反応性が不十分になり、生産物の難燃特性が影響を受ける。極めて多量のアルデヒドはリグニンと過剰反応し、リグニンの反応点が減少する。アルデヒドの使用量が少なすぎると、未反応の窒素含有化合物が過多になり、生産物の難燃特性が影響を受ける。ある態様では、上記反応のアルカリ性条件は、pH8〜11である。このようなアルカリ性条件は、リグニンを、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などに溶解することにより実現できる。アルデヒドは、極めて高いpH値の下で、カニッツァロ反応により自己反応し、溶液中のアルデヒド濃度が減少する。極めて低いpH値の下で、未反応のリグニンを溶解させ、アルデヒドと反応させることは、困難である。ある態様では、上記反応は、約70℃〜90℃の温度で約3時間〜4時間行われる。反応温度が高すぎると、アルデヒドが揮発し、溶液中のアルデヒド濃度が低下する。反応温度が低すぎるか、及び/又は、反応時間が短すぎると、反応が不十分になる。
【0013】
ある態様では、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの反応は、下記式1で示される。
【0014】
【化1】
【0015】
別の態様では、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを、アルカリ性条件で反応させ、0.8〜2.4質量部の酸を加えて、反応させ、窒素含有リグニンを形成する。酸は、有機酸、例えば、シアヌル酸、又は、無機酸、例えば、ホウ酸やリン酸である。これらの酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。ある態様では、酸の量は窒素含有化合物の量と同様である。酸の使用量が多すぎると、溶液のpH値が劇的に減少して、リグニンが沈殿して、その反応性が減少する。酸の使用量が少なすぎると、生産物の難燃特性を更に向上させることができない。酸を溶液に加えた後、反応を、95℃〜100℃の温度で2時間〜3時間行う必要がある。反応温度が低すぎるか、及び/又は、反応時間が短すぎると、同様に、反応が不十分になる。
【0016】
ある態様では、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸の反応は、下記式2で示される。式2の点線は水素結合である。
【0017】
【化2】
【0018】
ある態様では、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸の反応は、下記式3で示される。式3の点線は水素結合である。
【0019】
【化3】
【0020】
窒素含有リグニンは、いわゆる難燃剤となる。難燃剤を熱可塑性樹脂に加えて混合することにより、生産物の難燃特性を向上させる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアミドである。窒素含有リグニンと熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3である。窒素含有リグニンの割合が高すぎると、混合工程において、固形分が過多になり、加工することができない。窒素含有リグニンの割合が低すぎると、生産物の難燃効果が低下する。ある態様では、窒素含有リグニンと熱可塑性樹脂は、質量比が1:4より大きく、生産物は、他の市販の難燃剤を加えることなく、UL−94基準下で、V0の難燃特性を達成する。
【0021】
別の態様では、窒素含有リグニンは、難燃剤となるだけでなく、熱硬化性樹脂の硬化剤にもなる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。官能基、例えば、窒素含有リグニンのヒドロキシ基とアミノ基は、更に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、エポキシ樹脂は、架橋して硬化する。窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1である。窒素含有リグニンの割合が高すぎると、反応物は、固形分が過多になり、加工することができない。窒素含有リグニンの割合が低すぎると、生産物の難燃効果が低下する。ある態様では、窒素含有リグニンを他の市販の硬化剤と一緒に用いることにより、窒素含有リグニンの使用量を減少させてもよい。ある態様では、熱硬化性樹脂は、他の市販の硬化剤により硬化させ、窒素含有リグニンは、主に、難燃剤となる。市販の硬化剤を添加する場合、窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:10より大きく、生産物は、UL−94基準下で、V1の難燃特性を達成する。また、他の市販の硬化剤を添加しない場合、窒素含有リグニンは、同時に、難燃剤及び硬化剤となる。この場合、窒素含有リグニンの量を多くする必要がある。市販の硬化剤を添加しない場合、窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:1より大きく、生産物は、UL−94基準下で、V0の難燃特性を達成する。
【実施例】
【0022】
実験1
適切な質量比のリグニンを二ツ口瓶に入れ、pH8〜11のアルカリ性水溶液により溶解した。リグニン溶液を70℃に加熱し、窒素含有化合物をリグニン溶液に加えて、5〜10分間連続して攪拌し、その後、ホルムアルデヒドを加えた。この溶液を90℃に加熱し、更に、4時間反応させた。その後、反応物をろ過して、未反応のリグニンと窒素含有化合物を除去した。ろ過ケーキを、水と共通溶媒、例えば、アセトンにより洗浄して、難溶性の窒素含有リグニンを得た。注意すべきことは、出発材料、例えば、リグニンと窒素含有化合物は、個々に、共通溶媒と温水により溶解させることである。上記の現象は、生産物が、出発材料の混合物ではなく、出発材料の間で化学結合を形成する反応による化合物であることを示す。
【0023】
実験2
適切な質量比のリグニンを二ツ口瓶に入れ、pH8〜11のアルカリ性水溶液により溶解した。リグニン溶液を70℃に加熱し、窒素含有化合物をリグニン溶液に加えて、5〜10分間連続して攪拌し、その後、ホルムアルデヒドを加えた。この溶液を90℃に加熱し、更に、4時間反応させた。酸と触媒(例えば、ヒドラジン、N2H4)を溶液に加え、この溶液を95〜100℃に加熱して、更に1時間反応させた。その後、反応物をろ過して、未反応のリグニン、窒素含有化合物及び酸を除去した。ろ過ケーキを、水と共通溶媒、例えば、アセトンにより洗浄して、窒素含有リグニンを得た。注意すべきことは、出発材料、例えば、リグニン、窒素含有化合物と酸は、温水又は共通溶媒により溶解させることである。生産物は、出発材料の混合物ではなく、出発材料の間で化学結合を形成する反応による化合物である。
【0024】
製造例1
一定質量部のナトリウムリグニンスルホン酸塩と異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニンの生産物1〜2の窒素含有量を、表1に示すように、元素分析(EA)により求めた。表1から明らかなように、ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。ナトリウムリグニンスルホン酸塩は、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているDP−651であった。図1はナトリウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示し、図2は生産物2のIRスペクトルを示す。
【0025】
【表1】
【0026】
製造例2
一定質量部のオルガノソルブ籾殻リグニンと異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物3〜5の窒素含有量を、表2に示すように、元素分析(EA)により求めた。表2から明らかなように、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。オルガノソルブ籾殻リグニンは、ITRI(工業技術研究院)のマテリアル・アンド・ケミカル・リサーチ・ラボラトリーズ(Material and Chemical Research Laboratories)から入手したLab T100により抽出した。図3はオルガノソルブ籾殻リグニンのIRスペクトルを示し、図4は生産物のIRスペクトルを示す。
【0027】
【表2】
【0028】
製造例3
一定質量部のフェノール性リグニンと異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物6〜7の窒素含有量を、表3に示すように、元素分析(EA)により求めた。表3から明らかなように、フェノール性リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。フェノール性リグニンは、ITRI(工業技術研究院)のマテリアル・アンド・ケミカル・リサーチ・ラボラトリーズ(Material and Chemical Research Laboratories)から入手したLab T100により抽出したオルガノソルブリグニンのフェノ−ル化により調製した。図5はフェノール性リグニンのIRスペクトルを示し、図6は生産物7のIRスペクトルを示す。
【0029】
【表3】
【0030】
製造例4
アンモニウムリグニンスルホン酸塩及びアルカリリグニンを、それぞれ、メラミンとホルムアルデヒドと、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物8〜9の窒素含有量を、表4に示すように、元素分析(EA)により求めた。更に、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物10の窒素含有量を、表4に示すように、元素分析(EA)により求めた。アンモニウムリグニンスルホン酸塩は、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているAM−320であった。図7はアンモニウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示し、図8は生産物8のIRスペクトルである。アルカリリグニンは、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているBS−Fであった。図9はアルカリリグニンのIRスペクトルを示し、図10は生産物9のIRスペクトルを示し、図11は生産物10のIRスペクトルを示す。
【0031】
【表4】
【0032】
製造例5
ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物11)を得た。ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物12)を得た。オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物13)を得た。フェノール性リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物14)を得た。フェノール性リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物15)を得た。図12〜16は生産物11〜15のIRスペクトルを示す。
【0033】
【表5】
【0034】
製造例6
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のオルガノソルブ籾殻リグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物4とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化生産物16〜18の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表6に示した。生産物16によると、エポキシ樹脂の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンの添加により向上しなかった。生産物17によると、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとメラミンとを直接混合して、その後、エポキシ樹脂に加えたが、エポキシ樹脂の難燃特性は、混合物の添加により向上しなかった。生産物18によると、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0035】
【表6】
【0036】
製造例7
変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物4、2、9、7、10及び15を、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化生産物18〜23の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表7に示した。生産物18〜21によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加え場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物22〜23によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を反応させることにより形成される窒素系リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0037】
【表7】
【0038】
製造例8
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる産物4、2、及び、7とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用するエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。この他、異なる質量部の難燃剤KFR−DOPO(台湾のクォ・ツェン・ケミカル・カンパニー・リミテッド(Kuo Ching Chemical Co.,Ltd.)から市販されている)を、それぞれ、生産物24〜28に加えた。硬化生産物24〜28の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表8に示した。生産物24によると、生産物の難燃特性は、DOPOと未変性のリグニンを加えることにより向上しなかった。生産物25〜28によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物26〜28によると、窒素含有リグニンを有するエポキシ樹脂は、少量のDOPOを添加するだけで、生産物25と同じ難燃特性を達成した。
【0039】
【表8】
【0040】
製造例9
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物7、15、13、14、11及び10とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。この他、硬化剤DADPM(アクロス(ACROS)から市販されている158040010)を、それぞれ、生産物29〜36に加えた。硬化生産物29〜36の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表9に示した。生産物29によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンの添加により向上しなかった。生産物30と35によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物31〜34と36によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及び酸(例えば、ホウ酸やシアヌル酸)を反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物32によると、窒素含有リグニンを形成する反応において、ホウ酸を酸として用いることは、酸を添加しない場合(生産物35)やシアヌル酸を用いた場合(生産物36)よりも好ましい。生産物32が生産物35又は36よりも高い難燃特性を有するからである。
【0041】
【表9】
【0042】
製造例10
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物2、7及び10とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化剤DADPM(アクロス(ACROS)により市販されている158040010)と難燃剤KFR−DOPO(クォ・ツェン・ケミカル・カンパニー・リミテッド(Kuo Ching Chemical Co.,Ltd.)により市販されている)とを、それぞれ、生産物37〜40に加えた。硬化生産物37〜40の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表10に示した。生産物37によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとDOPOの添加により向上しなかった。生産物38〜39によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物40によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0043】
【表10】
【0044】
製造例11
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニン変性後のリグニン、例えば、難燃剤となる生産物4及び2とを、それぞれ、ポリアミドPA66(台湾のジン・テクノロジー(Ginar Techniology Co.,Ltd.)から市販されているAT0110GN01)に加えて、混合した。この他、メラミンを生産物42に添加した。混合後の生産物41〜44の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表11に示した。生産物41と42によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンを添加するか、又は、更にメラミンを添加しても、向上しなかった。生産物43〜44によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをポリアミドと混合した場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0045】
【表11】
【0046】
製造例12
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、難燃剤となる産物4、2及び7とを、それぞれ、ポリアミドPA66(台湾のジン・テクノロジー(Ginar Technology Co.,Ltd.)から市販されているAT0110GN01)に加えて、混合した。この他、難燃剤MC(チバ・カンパニー(Ciba Company)から市販されているMELAPUR MC25)を生産物45〜48に加えた。混合後の生産物45〜48の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表12に示した。生産物45によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとMCの添加により向上しなかった。生産物46〜48によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをポリアミドに混合した場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0047】
【表12】
【0048】
本発明では、好ましい実施例を上記の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤及びそれを含む難燃性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、重要な加工剤であるが、その需要量は、可塑剤より少ない。ハロゲン系難燃剤は、燃焼過程で、毒ガス、例えば、ダイオキシン又はフランを生成するので、欧州連合で使用が禁止されている。リン系難燃剤は、ハロゲン系難燃剤より安全である。しかし、それらは、川や湖の富栄養化を引き起こす。この他、リン系難燃剤は、加水分解しやすいので、生産物の信頼性が低下する。吸熱型の無機難燃剤、例えば、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムは、環境に優しい。しかし、それらの添加量が多量でなければ、難燃性効果が達成されない。よって、多量の添加量の無機難燃剤は、生産物の機械的性質を低下させ、その用途を制限する。よって、ハロゲンやリンを含まず、非常に効果的で、最低限の煙しか発生せず、低毒性で、添加量が少ない新規の難燃剤が必要とされている。
【0003】
なお、特許文献1には、組成物100質量部に基づいて、SiO2含有率28質量%以上の水ガラスの5〜20質量%水溶液94〜80質量部と、ポルトランドセメント100質量部にリグニンスルホン酸塩1質量部を混合したもの6〜20質量部とを配合してなる難燃剤組成物が開示されている。この難燃剤組成物は、ハロゲンやリンを含まず、低毒性であるが、その用途が既成のウレタンフォーム用に限定されている。また、この難燃剤組成物において、難燃剤として作用するのは、水ガラスであって、リグニンスルホン酸塩ではない。リグニンスルホン酸塩は、ポルトランドセメントのゲル化時間を長くし、硬化したポルトランドセメントの収縮亀裂などを減少させるために配合されているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−306282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃剤及びそれを含む難燃性材料を提供し、上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ある態様では、難燃剤を提供する。この難燃剤は、アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンを含む。ここで、リグニンは、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せである。
【0007】
本発明は、ある態様では、難燃性材料を提供する。この難燃性材料は、上記の難燃剤と熱硬化性樹脂を含み、難燃剤と熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1である。
【0008】
本発明は、ある態様では、難燃性材料を提供する。この難燃性材料は、上記の難燃剤と熱可塑性樹脂を含み、難燃剤と熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の難燃剤は、ハロゲンやリンを含まず、非常に効果的で、最低限の煙しか発生せず、低毒性で、添加量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】市販のナトリウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図3】調製されたオルガノソルブ籾殻リグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図5】調製されたフェノール性リグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図7】市販のアンモニウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の一製造例のアンモニウムリグニンスルホン酸塩−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図9】市販のアルカリリグニンのIRスペクトルを示す図である。
【図10】本発明の一製造例によるアルカリリグニン−メラミンのIRスペクトルを示す図である。
【図11】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【図12】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【図13】本発明の一製造例によるナトリウムリグニンスルホン酸塩−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図14】本発明の一製造例によるオルガノソルブ籾殻リグニン−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図15】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミン/ホウ酸のIRスペクトルを示す図である。
【図16】本発明の一製造例によるフェノール性リグニン−メラミン/シアヌル酸のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、難燃剤となる窒素含有リグニンに関する。窒素含有リグニンは、炭素源(チャー形成)と窒素源(不燃性ガス形成)から構成され、これらの炭素源と窒素源は、アルデヒド由来のアルキレン基により結合される。例えば、炭素源と窒素源との間のメチレン橋はホルムアルデヒドに由来する。炭素源は、リグニン、例えば、市販のリグニンスルホン酸塩(例えば、ナトリウムリグニンスルホン酸塩、カルシウムリグニンスルホン酸塩、アンモニウムリグニンスルホン酸塩、又は、それらの組合せ)、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン(例えば、籾殻リグニン、稲わらリグニン、竹リグニン、樟脳木リグニン、松材リグニン、杜松リグニン、又は、それらの組合せ)、フェノール変性リグニン(例えば、フェノール性リグニン、カテコールリグニン、ビスフェノール性リグニン、又は、それらの組合せ)、又は、それらの組合せである。窒素源は、窒素含有化合物、例えば、ジシアンジアミド(DICY)化合物、窒素含有複素環式化合物、アミド化合物、又は、それらの組合せである。窒素含有複素環式化合物は、トリアジン化合物、ジアゾール化合物、又は、窒素原子を1個有する複素環式化合物である。ある態様では、トリアジン化合物はメラミンである。ある態様では、ジアゾール化合物は、ピラゾール、イミダゾール、又は、それらの組合せである。ある態様では、窒素原子を1個有する複素環式化合物は、ピロール、インドール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、又は、それらの組合せである。アミド化合物は、尿素、チオ尿素、又は、それらの組合せである。アルデヒドは、C1−12アルデヒド又はC1−6アルデヒドである。ある態様では、アルデヒドは、ホルムアルデヒドである。
【0012】
窒素含有リグニンは、アルカリ性条件で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される。窒素含有化合物の使用量が多すぎると、未反応の窒素含有化合物が過多になる。窒素含有化合物の使用量が少なすぎると、反応性が不十分になり、生産物の難燃特性が影響を受ける。極めて多量のアルデヒドはリグニンと過剰反応し、リグニンの反応点が減少する。アルデヒドの使用量が少なすぎると、未反応の窒素含有化合物が過多になり、生産物の難燃特性が影響を受ける。ある態様では、上記反応のアルカリ性条件は、pH8〜11である。このようなアルカリ性条件は、リグニンを、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などに溶解することにより実現できる。アルデヒドは、極めて高いpH値の下で、カニッツァロ反応により自己反応し、溶液中のアルデヒド濃度が減少する。極めて低いpH値の下で、未反応のリグニンを溶解させ、アルデヒドと反応させることは、困難である。ある態様では、上記反応は、約70℃〜90℃の温度で約3時間〜4時間行われる。反応温度が高すぎると、アルデヒドが揮発し、溶液中のアルデヒド濃度が低下する。反応温度が低すぎるか、及び/又は、反応時間が短すぎると、反応が不十分になる。
【0013】
ある態様では、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの反応は、下記式1で示される。
【0014】
【化1】
【0015】
別の態様では、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを、アルカリ性条件で反応させ、0.8〜2.4質量部の酸を加えて、反応させ、窒素含有リグニンを形成する。酸は、有機酸、例えば、シアヌル酸、又は、無機酸、例えば、ホウ酸やリン酸である。これらの酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。ある態様では、酸の量は窒素含有化合物の量と同様である。酸の使用量が多すぎると、溶液のpH値が劇的に減少して、リグニンが沈殿して、その反応性が減少する。酸の使用量が少なすぎると、生産物の難燃特性を更に向上させることができない。酸を溶液に加えた後、反応を、95℃〜100℃の温度で2時間〜3時間行う必要がある。反応温度が低すぎるか、及び/又は、反応時間が短すぎると、同様に、反応が不十分になる。
【0016】
ある態様では、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸の反応は、下記式2で示される。式2の点線は水素結合である。
【0017】
【化2】
【0018】
ある態様では、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸の反応は、下記式3で示される。式3の点線は水素結合である。
【0019】
【化3】
【0020】
窒素含有リグニンは、いわゆる難燃剤となる。難燃剤を熱可塑性樹脂に加えて混合することにより、生産物の難燃特性を向上させる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアミドである。窒素含有リグニンと熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3である。窒素含有リグニンの割合が高すぎると、混合工程において、固形分が過多になり、加工することができない。窒素含有リグニンの割合が低すぎると、生産物の難燃効果が低下する。ある態様では、窒素含有リグニンと熱可塑性樹脂は、質量比が1:4より大きく、生産物は、他の市販の難燃剤を加えることなく、UL−94基準下で、V0の難燃特性を達成する。
【0021】
別の態様では、窒素含有リグニンは、難燃剤となるだけでなく、熱硬化性樹脂の硬化剤にもなる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。官能基、例えば、窒素含有リグニンのヒドロキシ基とアミノ基は、更に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、エポキシ樹脂は、架橋して硬化する。窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1である。窒素含有リグニンの割合が高すぎると、反応物は、固形分が過多になり、加工することができない。窒素含有リグニンの割合が低すぎると、生産物の難燃効果が低下する。ある態様では、窒素含有リグニンを他の市販の硬化剤と一緒に用いることにより、窒素含有リグニンの使用量を減少させてもよい。ある態様では、熱硬化性樹脂は、他の市販の硬化剤により硬化させ、窒素含有リグニンは、主に、難燃剤となる。市販の硬化剤を添加する場合、窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:10より大きく、生産物は、UL−94基準下で、V1の難燃特性を達成する。また、他の市販の硬化剤を添加しない場合、窒素含有リグニンは、同時に、難燃剤及び硬化剤となる。この場合、窒素含有リグニンの量を多くする必要がある。市販の硬化剤を添加しない場合、窒素含有リグニンと熱硬化性樹脂は、質量比が1:1より大きく、生産物は、UL−94基準下で、V0の難燃特性を達成する。
【実施例】
【0022】
実験1
適切な質量比のリグニンを二ツ口瓶に入れ、pH8〜11のアルカリ性水溶液により溶解した。リグニン溶液を70℃に加熱し、窒素含有化合物をリグニン溶液に加えて、5〜10分間連続して攪拌し、その後、ホルムアルデヒドを加えた。この溶液を90℃に加熱し、更に、4時間反応させた。その後、反応物をろ過して、未反応のリグニンと窒素含有化合物を除去した。ろ過ケーキを、水と共通溶媒、例えば、アセトンにより洗浄して、難溶性の窒素含有リグニンを得た。注意すべきことは、出発材料、例えば、リグニンと窒素含有化合物は、個々に、共通溶媒と温水により溶解させることである。上記の現象は、生産物が、出発材料の混合物ではなく、出発材料の間で化学結合を形成する反応による化合物であることを示す。
【0023】
実験2
適切な質量比のリグニンを二ツ口瓶に入れ、pH8〜11のアルカリ性水溶液により溶解した。リグニン溶液を70℃に加熱し、窒素含有化合物をリグニン溶液に加えて、5〜10分間連続して攪拌し、その後、ホルムアルデヒドを加えた。この溶液を90℃に加熱し、更に、4時間反応させた。酸と触媒(例えば、ヒドラジン、N2H4)を溶液に加え、この溶液を95〜100℃に加熱して、更に1時間反応させた。その後、反応物をろ過して、未反応のリグニン、窒素含有化合物及び酸を除去した。ろ過ケーキを、水と共通溶媒、例えば、アセトンにより洗浄して、窒素含有リグニンを得た。注意すべきことは、出発材料、例えば、リグニン、窒素含有化合物と酸は、温水又は共通溶媒により溶解させることである。生産物は、出発材料の混合物ではなく、出発材料の間で化学結合を形成する反応による化合物である。
【0024】
製造例1
一定質量部のナトリウムリグニンスルホン酸塩と異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニンの生産物1〜2の窒素含有量を、表1に示すように、元素分析(EA)により求めた。表1から明らかなように、ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。ナトリウムリグニンスルホン酸塩は、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているDP−651であった。図1はナトリウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示し、図2は生産物2のIRスペクトルを示す。
【0025】
【表1】
【0026】
製造例2
一定質量部のオルガノソルブ籾殻リグニンと異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物3〜5の窒素含有量を、表2に示すように、元素分析(EA)により求めた。表2から明らかなように、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。オルガノソルブ籾殻リグニンは、ITRI(工業技術研究院)のマテリアル・アンド・ケミカル・リサーチ・ラボラトリーズ(Material and Chemical Research Laboratories)から入手したLab T100により抽出した。図3はオルガノソルブ籾殻リグニンのIRスペクトルを示し、図4は生産物のIRスペクトルを示す。
【0027】
【表2】
【0028】
製造例3
一定質量部のフェノール性リグニンと異なる質量部のメラミンとホルムアルデヒドとを、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物6〜7の窒素含有量を、表3に示すように、元素分析(EA)により求めた。表3から明らかなように、フェノール性リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドの質量比が1:1.6:0.6の場合、生産物の窒素含有量が高い。フェノール性リグニンは、ITRI(工業技術研究院)のマテリアル・アンド・ケミカル・リサーチ・ラボラトリーズ(Material and Chemical Research Laboratories)から入手したLab T100により抽出したオルガノソルブリグニンのフェノ−ル化により調製した。図5はフェノール性リグニンのIRスペクトルを示し、図6は生産物7のIRスペクトルを示す。
【0029】
【表3】
【0030】
製造例4
アンモニウムリグニンスルホン酸塩及びアルカリリグニンを、それぞれ、メラミンとホルムアルデヒドと、実験1に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物8〜9の窒素含有量を、表4に示すように、元素分析(EA)により求めた。更に、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させた。窒素含有リグニン生産物10の窒素含有量を、表4に示すように、元素分析(EA)により求めた。アンモニウムリグニンスルホン酸塩は、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているAM−320であった。図7はアンモニウムリグニンスルホン酸塩のIRスペクトルを示し、図8は生産物8のIRスペクトルである。アルカリリグニンは、ボレガード・カンパニー(Borregaard Company)から市販されているBS−Fであった。図9はアルカリリグニンのIRスペクトルを示し、図10は生産物9のIRスペクトルを示し、図11は生産物10のIRスペクトルを示す。
【0031】
【表4】
【0032】
製造例5
ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物11)を得た。ナトリウムリグニンスルホン酸塩、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物12)を得た。オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物13)を得た。フェノール性リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びホウ酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物14)を得た。フェノール性リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を、実験2に示すように、反応させて、窒素含有リグニン(生産物15)を得た。図12〜16は生産物11〜15のIRスペクトルを示す。
【0033】
【表5】
【0034】
製造例6
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のオルガノソルブ籾殻リグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物4とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化生産物16〜18の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表6に示した。生産物16によると、エポキシ樹脂の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンの添加により向上しなかった。生産物17によると、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとメラミンとを直接混合して、その後、エポキシ樹脂に加えたが、エポキシ樹脂の難燃特性は、混合物の添加により向上しなかった。生産物18によると、オルガノソルブ籾殻リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0035】
【表6】
【0036】
製造例7
変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物4、2、9、7、10及び15を、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化生産物18〜23の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表7に示した。生産物18〜21によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加え場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物22〜23によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を反応させることにより形成される窒素系リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0037】
【表7】
【0038】
製造例8
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる産物4、2、及び、7とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用するエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。この他、異なる質量部の難燃剤KFR−DOPO(台湾のクォ・ツェン・ケミカル・カンパニー・リミテッド(Kuo Ching Chemical Co.,Ltd.)から市販されている)を、それぞれ、生産物24〜28に加えた。硬化生産物24〜28の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表8に示した。生産物24によると、生産物の難燃特性は、DOPOと未変性のリグニンを加えることにより向上しなかった。生産物25〜28によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物26〜28によると、窒素含有リグニンを有するエポキシ樹脂は、少量のDOPOを添加するだけで、生産物25と同じ難燃特性を達成した。
【0039】
【表8】
【0040】
製造例9
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物7、15、13、14、11及び10とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。この他、硬化剤DADPM(アクロス(ACROS)から市販されている158040010)を、それぞれ、生産物29〜36に加えた。硬化生産物29〜36の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表9に示した。生産物29によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンの添加により向上しなかった。生産物30と35によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物31〜34と36によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及び酸(例えば、ホウ酸やシアヌル酸)を反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物32によると、窒素含有リグニンを形成する反応において、ホウ酸を酸として用いることは、酸を添加しない場合(生産物35)やシアヌル酸を用いた場合(生産物36)よりも好ましい。生産物32が生産物35又は36よりも高い難燃特性を有するからである。
【0041】
【表9】
【0042】
製造例10
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、硬化剤と難燃剤となる生産物2、7及び10とを、それぞれ、エポキシ樹脂に加えて、硬化反応させた。使用されるエポキシ樹脂は、ナンア・カンパニー(Nanya Company)から市販されているEPOXY−128Eであった。硬化剤DADPM(アクロス(ACROS)により市販されている158040010)と難燃剤KFR−DOPO(クォ・ツェン・ケミカル・カンパニー・リミテッド(Kuo Ching Chemical Co.,Ltd.)により市販されている)とを、それぞれ、生産物37〜40に加えた。硬化生産物37〜40の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表10に示した。生産物37によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとDOPOの添加により向上しなかった。生産物38〜39によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。生産物40によると、リグニン、メラミン、ホルムアルデヒド及びシアヌル酸を反応させることにより形成される窒素含有リグニンをエポキシ樹脂に加えた場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0043】
【表10】
【0044】
製造例11
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニン変性後のリグニン、例えば、難燃剤となる生産物4及び2とを、それぞれ、ポリアミドPA66(台湾のジン・テクノロジー(Ginar Techniology Co.,Ltd.)から市販されているAT0110GN01)に加えて、混合した。この他、メラミンを生産物42に添加した。混合後の生産物41〜44の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表11に示した。生産物41と42によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンを添加するか、又は、更にメラミンを添加しても、向上しなかった。生産物43〜44によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをポリアミドと混合した場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0045】
【表11】
【0046】
製造例12
未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンと変性後のリグニン、例えば、難燃剤となる産物4、2及び7とを、それぞれ、ポリアミドPA66(台湾のジン・テクノロジー(Ginar Technology Co.,Ltd.)から市販されているAT0110GN01)に加えて、混合した。この他、難燃剤MC(チバ・カンパニー(Ciba Company)から市販されているMELAPUR MC25)を生産物45〜48に加えた。混合後の生産物45〜48の難燃特性を、UL−94基準により求めて、表12に示した。生産物45によると、生産物の難燃特性は、未変性のオルガノソルブ籾殻リグニンとMCの添加により向上しなかった。生産物46〜48によると、リグニン、メラミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンをポリアミドに混合した場合には、生産物の難燃特性が効果的に向上した。
【0047】
【表12】
【0048】
本発明では、好ましい実施例を上記の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンを含み、
前記リグニンが、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せであることを特徴とする難燃剤。
【請求項2】
前記オルガノソルブリグニンがオルガノソルブ籾殻リグニンである請求項1に記載の難燃剤。
【請求項3】
前記窒素含有化合物が、ジシアンジアミド化合物、窒素含有複素環式化合物、アミド化合物、又は、それらの組合せである請求項1または2に記載の難燃剤。
【請求項4】
前記窒素含有複素環式化合物が、トリアジン化合物、ジアゾール化合物、又は、窒素原子を1個有する複素環式化合物である請求項3に記載の難燃剤。
【請求項5】
前記トリアジン化合物がメラミンである請求項4に記載の難燃剤。
【請求項6】
前記アルデヒドがC1−12アルデヒドである請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項7】
0.8〜2.4質量部の酸と更に反応した難燃剤であって、前記酸が、ホウ酸、リン酸、シアヌル酸、又は、それらの組合せである請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項8】
前記窒素含有リグニンを形成させる反応のアルカリ性条件がpH8〜11である請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項9】
前記窒素含有リグニンを形成させる反応が約70℃〜90℃の温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記難燃剤と熱硬化性樹脂とを含み、
前記難燃剤と前記熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1であり、
前記難燃剤と前記熱硬化性樹脂とは、互いに混合されていることを特徴とする難燃性材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記難燃剤と熱可塑性樹脂とを含み、
前記難燃剤と前記熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3であり、
前記難燃剤と前記熱可塑性樹脂とは、互いに混合されていることを特徴とする難燃性材料。
【請求項1】
アルカリ性条件下で、1質量部のリグニン、0.8〜2.4質量部の窒素含有化合物、及び、0.3〜0.9質量部のアルデヒドを反応させることにより形成される窒素含有リグニンを含み、
前記リグニンが、リグニンスルホン酸塩、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、フェノール変性リグニン、又は、それらの組合せであることを特徴とする難燃剤。
【請求項2】
前記オルガノソルブリグニンがオルガノソルブ籾殻リグニンである請求項1に記載の難燃剤。
【請求項3】
前記窒素含有化合物が、ジシアンジアミド化合物、窒素含有複素環式化合物、アミド化合物、又は、それらの組合せである請求項1または2に記載の難燃剤。
【請求項4】
前記窒素含有複素環式化合物が、トリアジン化合物、ジアゾール化合物、又は、窒素原子を1個有する複素環式化合物である請求項3に記載の難燃剤。
【請求項5】
前記トリアジン化合物がメラミンである請求項4に記載の難燃剤。
【請求項6】
前記アルデヒドがC1−12アルデヒドである請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項7】
0.8〜2.4質量部の酸と更に反応した難燃剤であって、前記酸が、ホウ酸、リン酸、シアヌル酸、又は、それらの組合せである請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項8】
前記窒素含有リグニンを形成させる反応のアルカリ性条件がpH8〜11である請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項9】
前記窒素含有リグニンを形成させる反応が約70℃〜90℃の温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記難燃剤と熱硬化性樹脂とを含み、
前記難燃剤と前記熱硬化性樹脂は、質量比が1:10〜1:1であり、
前記難燃剤と前記熱硬化性樹脂とは、互いに混合されていることを特徴とする難燃性材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記難燃剤と熱可塑性樹脂とを含み、
前記難燃剤と前記熱可塑性樹脂は、質量比が1:10〜1:3であり、
前記難燃剤と前記熱可塑性樹脂とは、互いに混合されていることを特徴とする難燃性材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−229401(P2012−229401A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60592(P2012−60592)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(390023582)財團法人工業技術研究院 (524)
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(390023582)財團法人工業技術研究院 (524)
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
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