説明

難燃性フィルム

【課題】ポリエステルに非相溶な難燃剤をボイド発生の核材として使用し、耐久性と難燃性に優れた難燃性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルを用いてなる層(A)からなり、層(A)は、ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆された難燃剤(a)および気泡を含有し、10〜50体積%の空隙率を有することを特徴とする難燃性フィルム。上記気泡は、難燃剤(a)を核として発現されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を含有する難燃性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、難燃性に加え、耐久性、耐光性、反射性、隠蔽性等に優れた、太陽電池バックシート用フィルムや反射部材等として好適に用いられる微細気泡含有フィルムに関するものである。特に本発明は、太陽電池バックシート用フィルムに関し、難燃特性として、米国アンダーライターズラボラトリーズ(UNDERWRITERS LABORATORIES)社規格UL−94に規定されたHB(F)、VTM−2相当の難燃レベルを有するフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細な気泡を含有するフィルムとしては、これまで種々のものが提案されており、これらは当該フィルムの優れた特性により、ラベルやポスター、感熱記録紙、昇華感熱記録紙など各種の用途に広く用いられている。また、当該フィルムの特徴として、フィルム自体を微細な気泡を含有する層で構成することによって、フィルムの硬さが軽減され、紙と同じようなソフト感や柔軟性が得られると共に、低比重化を図れることが知られている。このような微細気泡含有フィルムとしては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5等に開示されているフィルムが知られている。
【0003】
一方、これらフィルムを構成するポリエステルの多くは本質的に可燃性であるため、工業用材料として使用するには、一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求される場合が多い。しかし、特許文献6に記載されるようにポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂と難燃剤を別々に添加する場合、一般的にポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂と難燃剤は耐久性(耐熱性、耐湿熱性)に劣るため、フィルム全体の耐久性が落ちるという問題があり、特に太陽電池バックシート用途には使用できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−138844号公報
【特許文献2】特開平5−138781号公報
【特許文献3】特開平5−194773号公報
【特許文献4】特開平10−286920号公報
【特許文献5】特開2008−138068号公報
【特許文献6】特許第3303983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細な気泡を含有するポリエステルフィルムは、気泡内に空気を含有するために燃えやすいという問題があった。そのために難燃性を必要とする用途に使用する際には、通常のポリエステルフィルムよりも多量の難燃剤を添加する必要があるが、それによりフィルムの耐久性(耐熱性、耐湿熱性)が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の状況に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルと非相溶な難燃剤を使用することにより、難燃性と耐久性を両立させた難燃性フィルムを提供することに成功した。すなわち、本発明に係る難燃性フィルムは、ポリエステルを用いてなる層(A)からなり、層(A)は、ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆された難燃剤(a)および気泡を含有し、10〜50体積%の空隙率を有することを特徴とするものからなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、難燃性フィルムの難燃性と耐久性を両立させることができる。特に太陽電池バックシートに本発明を適用することにより、太陽電池の難燃性および耐久性を向上させ、安全性の向上を図ることが可能となる。また、同じく難燃性および耐久性が要求される液晶用反射フィルムにも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施態様に係る難燃性フィルムの含有気泡および難燃剤の状態を示す概略部分断面図である。
【図2】図1の難燃性フィルムを用いてなる太陽電池モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性フィルムの基本構造、該難燃性フィルムを例えば太陽電池バックシート用フィルムとして使用する場合の太陽電池モジュールの概略構造について、図1、図2を参照して説明する。図1に示すように、本発明の難燃性フィルム1は、ポリエステル樹脂3を主成分としており、該ポリエステル樹脂3に非相溶な物質(b)により被覆処理された難燃剤(a)2を含有し、かつポリエステル層(A)中でその難燃剤(a)2が核となり気泡4を有するものである。このような本発明の難燃性フィルム1を用いてなる太陽電池モジュール10の一例を、図2を用いて説明する。太陽電池モジュール10には太陽電池セル6が含まれ、該太陽電池セル6が光を受けて発電をする。この太陽電池セル6を保護するために充填樹脂7(EVA、PVA等)、全光線透過材料5(ガラス等)、および、本発明の難燃性フィルム1が用いられる。太陽光が直接入射する側には光線透過率の高い全光線透過材料5が用いられる。一方、太陽光が直接入射しない側には、難燃性、耐熱性、電気絶縁性に優れる本発明の難燃性フィルム1が太陽電池バックシートとして用いられる。また、太陽電池セル6で発電した電気は、リード線8を通して、太陽電池モジュール10の外部に取り出される。
【0010】
上述のように、本発明の難燃性フィルムは、ポリエステル樹脂を主成分としており、ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆処理された難燃剤(a)を含有し、かつポリエステル層(A)中でその難燃剤(a)が核となり気泡を有する。
【0011】
本発明の難燃性フィルムの主成分を構成するポリエステルとしては、エチレンテレフタレート成分がポリエステルのエステル成分に対し90mol%以上の割合で含まれているものであることが耐熱性、機械特性の点で好ましいが、その他共重合成分として各種ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールが含まれているものであってもよい。ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が共重合成分として含まれていてもよい。また、ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール等を挙げることができる。これらの共重合成分は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。ポリエステルには上記以外の成分が共重合されていてもよく、また上記以外の成分がブレンドされていてもよい。ポリエステルは、250℃以上の融点を有するものが耐熱性の上で好ましく、300℃以下の融点を有するものが生産性の上で好ましい。太陽電池用の難燃性フィルムにおいて用いられるポリエステルとしては、耐水性、耐久性、耐薬品性に優れている点でポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0012】
また、ポリエステルには、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子などが添加されていてもよい。特に、無機粒子や有機粒子は、フィルム表面に易滑性を与え、フィルムの取り扱い性を高めるために有効である。耐光性、経時での安定性の観点からは、無機粒子をポリエステルに添加することが好ましい。上記の無機粒子としてはシリカを用いることが好ましい。
【0013】
ポリエステルは、公知の製造方法に従って製造することができる。例えば、酸成分としてのジアルキルエステルとジオールとの間でエステル交換による化学反応を生じさせた後、この化学反応の生成物を減圧下で加熱して、余剰のジオールを除去しつつ重縮合させることによってポリエステルを製造することができる。また、酸成分としてジカルボン酸を用いて、公知の直接重合法によりポリエステルを製造することもできる。反応触媒としては公知のチタン化合物、リチウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等を用いることができる。こうして得られたポリエステルに固相重合を施すことにより、さらに重合度を上げることができ、かつカルボキシル末端基濃度を低減させることができる。
【0014】
ポリエステル層(A)のカルボキシル末端基濃度は35当量/ポリエステル10g以下であることが好ましく、より好ましくは2当量/ポリエステル10g以上20当量/ポリエステル10g以下、更に好ましくは、2当量/ポリエステル10g以上15当量/ポリエステル10g以下である。なお、カルボキシル末端基濃度が2当量/ポリエステル10g未満である場合には、実質上、重合が出来ない。従って、2当量/ポリエステル10gがカルボキシル末端基濃度の実質的な下限となる。カルボキシル末端基濃度が35当量/ポリエステル10gを越えると耐加水分解性が低下し、フィルムの劣化が早くなる恐れがある。すなわち、使用期間が長期間に及ぶとフィルム自体が割れたり層間が劈開したりする恐れがある。また、フィルムを太陽電池バックシート用途に用いた場合、フィルムにクラックが入るなどの問題が発生する恐れがある。カルボキシル末端基濃度を35当量/ポリエステル10g以下とする方法としては、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂の重合時に固相重合法などを適用し、樹脂を高分子量化することによって熱可塑性樹脂中のカルボキシル末端基濃度を低減する方法があるが、この方法だけでなく、カルボキシル基末端封鎖剤を含有させる方法によって達成することも出来る。固相重合は、乾燥機中200℃〜250℃の温度で1torr以下の減圧下または窒素気流下で行うことができる。
【0015】
ポリエステル層(A)はポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆処理された難燃剤(a)を含有し、かつポリエステル層(A)中でその難燃剤(a)が核となり気泡を有し、ポリエステル層(A)の空隙率が10〜50体積%である。難燃剤(a)はポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆処理されているため、難燃剤(a)とポリエステル樹脂との相溶性は小さい。そのためポリエステルフィルムの耐久性を発現させるために製造時には少なくとも1軸方向には延伸を実施するが、その際に難燃剤(a)を核として気泡が発現する(図1参照)。難燃剤(a)はフィルム中において気泡と隣接して配置されることになる。通常、発泡フィルムにおいてはフィルム中の空気により難燃性が低下するおそれがあるが、難燃性白色ポリエステルフィルムの空気層と難燃剤が隣接している場合には、酸素の遮断が効果的に行われ、少ない量の難燃剤で所望の難燃性を達成できる。
【0016】
また、難燃剤(a)とポリエステルに非相溶な物質(b)についてそれぞれ最適なものを選ぶことにより、難燃性とポリエステルに対する非相溶性の両方を個別に制御でき、使用用途に応じた最適な難燃性白色ポリエステルフィルムを設計および製造することができる。
【0017】
難燃剤(a)の主成分(被覆処理剤の非相溶な物質(b)を除いた成分)としては、臭素化合物、リン化合物等の有機系難燃剤や、アンチモン化合物、金属水酸化物等、市場で入手できるものを広く使用することができる。例えば、リン原子、臭素原子、窒素原子を含む難燃性化合物としてホスフェート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、ポリリン酸アンモニウム、芳香族リン酸エステル、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAや、リン酸エステルとしてトリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)1,3フェニルビス(ジフェニルホスフエート)などが挙げられる。
【0018】
特に優れる難燃剤としては、融点あるいは分解点が270℃以上の難燃剤が挙げられる。融点あるいは分解点は、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。難燃剤の種類としては、臭素化合物、リン化合物等の有機系難燃剤や、アンチモン化合物、金属水酸化物等の無機系難燃剤等が挙げられ、具体的には、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、メラミンシアヌレート、赤リン、ホウ酸亜鉛、酸化ホウ素等が特に有用である。なお、金属水酸化物としての水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カルシウム・アルミネート水和物等の難燃剤は、200℃以上に温度が上がると急激に脱水分解して大きな吸熱反応を起こすものが多く、使用に際しては注意が必要である。
【0019】
ポリエステルに非相溶な物質(b)としては、熱硬化性樹脂、シランカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、チタネートカップリング剤、オルガノシロキサン、オルガノシラン、オルガノシラザン、およびシリカから選ばれる少なくとも1種が用いられることが好ましい。これらの被覆処理剤は単独材料からなる被膜であってもよく、2種以上の材料を組み合わせた被膜であってもよく、2重以上に積層された被膜であってもよい。
【0020】
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、変性メラミン樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂およびシリコーン樹脂等から選ばれる1種以上を挙げることができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などを挙げることができる。特に、樹脂中での分散性等の観点からは、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
シランカップリング剤とは、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、塩素原子等から選ばれる反応性官能基と共に、アルコキシル基に代表される加水分解性基を有するオルガノシランをいう。上記シランカップリング剤としては、特に、限定されるものではないが、例えば、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0022】
高級脂肪酸としては、炭素数14〜24の飽和又は不飽和の高級脂肪酸が好ましく用いられ、例えば、オレイン酸やステアリン酸を用いることができる。また、このような高級脂肪酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩を用いることが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等を挙げることができる。
【0023】
チタネートカップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジ−トリデシルホスファイト)チネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオキチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートを挙げることができる。
【0024】
オルガノシロキサンとしては、オルガノジシロキサンを含むオルガノシロキサンオリゴマ−やオルガノポリシロキサン等が用いられる。オルガノジシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、ナトリウムメチルシリコネート等を挙げることができる。また、オルガノシロキサンオリゴマ−としては、例えば、メチルフェニルシロキサンオリゴマーやフェニルシロキサンオリゴマー等を挙げることができる。オルガノシロキサンとしては、オルガノポリシロキサンが好ましく用いられ、なかでも、所謂シリコーンオイルと呼ばれるものが好適に用いられる。そのようなオルガノポリシロキサンの具体例として、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等の所謂ストレートシリコーンオイルを挙げることができる。また種々の有機基を有する所謂変性シリコーンオイルも好ましく用いられる。そのような変性シリコーンオイルとして、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
オルガノシランの代表例としては、アルキル基及び/又はアリールと共にアルコキシル基のような加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を挙げることができ、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0026】
オルガノシラザンとしては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、メチルポリシラザン、フェニルポリシラザン等を挙げることができる。
【0027】
なお、シリカは、SiO・nHO(0≦n≦2)で表されるケイ素の酸化物である。
【0028】
ポリエステルに非相溶な物質(b)の含有割合は、難燃剤(a)の全体の重量を100重量部としたとき、好ましくは0.5〜30重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。物質(b)の含有割合が0.5重量部未満であると被覆処理が十分に行われず非相溶性の効果が得られない恐れがある。一方、物質(b)の含有割合が30重量部を超えると難燃性が著しく劣る恐れがある。被覆処理方法としては、湿式処理方法や乾式処理方法など公知の処理方法を使用する物質に合わせて適用可能である。
【0029】
ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆処理された難燃剤(a)は、好ましくはポリエステル層(A)中に3〜30重量部、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部の割合で含まれる。難燃剤(a)の含有割合が3重量部未満であると難燃性に劣る恐れがある。難燃剤(a)の含有割合が30重量部を超えると難燃性は向上するがフィルムの耐久性(フィルムの破断強伸度、耐熱性、耐湿熱性等)が著しく劣る恐れがある。
【0030】
ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆処理された難燃剤(a)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましく0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm未満であると、気泡のサイズが小さくなり、ポリエステル層(A)の空隙率が小さくなる恐れがある。平均粒子径が10μmを超えると気泡のサイズが大きくなり、難燃性白色ポリエステルフィルムの特性(フィルムの破断強伸度、耐熱性、耐湿熱性、反射率等)が著しく劣る恐れがある。
【0031】
ポリエステル層(A)中に気泡が存在することにより、フィルムの白色性(色調)、隠蔽性(光学濃度)、光反射性(反射率)が向上する。これらの特性を高くするためには気泡の含有割合を大きくして空隙率を高めることが好ましい。一方、耐久性(フィルムの破断強伸度、耐熱性、耐湿熱性等)や難燃性を確保するために、気泡の含有割合を所定の範囲内にすることが好ましい。気泡の含有割合を表す指標として、空隙率(体積%)を採用することができる。
【0032】
空隙率の算出方法としては、フィルムの断面を撮影して得られた断面写真から気泡部分の面積を測定し、全断面積に対する気泡部分の面積比率をもって空隙率(%)とする方法を採用することができる。
【0033】
ポリエステル層(A)の空隙率は、好ましくは10〜50体積%であり、より好ましくは10〜40体積%であり、さらに好ましくは10〜30体積%である。空隙率が10体積%未満の場合は空隙が少ないために特性(反射率、光学濃度等)が劣る恐れがある。また、空隙率が50体積%を超えると耐久性(フィルムの破断強伸度、耐熱性、耐湿熱性等)や難燃性が劣る恐れがある。
【0034】
難燃性フィルムは、部分放電電圧として1000V以上の電気絶縁性を有し、かつ300μm以下の厚みを有することが好ましい。フィルムの厚みが300μmを超えると低コスト性や製膜安定性に劣る恐れがある。そこで、フィルムの空隙率を最適な範囲内にすることにより、フィルム厚みを300μm以下に抑え、かつ部分放電電圧として1000V以上の電気絶縁性を付与することができる。
【0035】
難燃性フィルムは高い隠蔽性を有するものであることが好ましい。フィルムの隠蔽性を上げて、太陽電池の裏面から光を太陽電池セル内部に通過させないようにすることにより、太陽電池の内部の部材(例えば封止剤や接着剤)の光に対する劣化を抑えることができる。隠蔽性は、光学濃度として定量化することができる。すなわち、光学濃度の数値が高いほど隠蔽性も高い。難燃性白色ポリエステルフィルムの光学濃度は、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。上記の好ましい範囲にするためには、無機粒子やカーボンブラックを添加することが好ましい。無機粒子としてはルチル型酸化チタンが好ましい。
【0036】
難燃性フィルムは、ポリエステル層(A)の少なくとも片面に別のポリエステル層(B)を積層した構造とすることもできる。ポリエステル層(B)に耐光性機能や他の樹脂との接着機能を付加することが好ましい。特にポリエステル層(B)に紫外線吸収剤や二酸化チタンを含有させることにより、耐光性機能を付加することが特に好ましい。
【0037】
難燃性フィルムは、紫外線吸収剤や光安定化剤を含有することが出来る。紫外線吸収剤を含有せしめる方法としてはポリエステル層(A)に紫外線(UV)吸収剤を添加する方法を採用することができるが、より好ましくはポリエステル層(A)の少なくとも片面に別のポリエステル層(B)を積層し、ポリエステル層(B)にUV吸収剤を添加する方法などが挙げられる。紫外線吸収剤は、ポリエステル層(A)またはポリエステル層(B)100重量部中に0.1〜4重量部の割合で含有されることが好ましく、0.5〜2重量部の割合で含有されることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有割合が0.1重量部未満だとフィルムの耐UV効果が得られず、また4重量部以上の場合フィルムの耐久性(耐熱性、耐湿熱性)が劣る恐れがある。
【0038】
紫外線吸収剤、光安定化剤は、無機系のものと有機系のものとに大別される。上記樹脂層は、バインダー樹脂と混合する等の方法により形成することができるが、上記樹脂層より紫外線吸収剤や光安定化剤がブリードアウトすることを防ぐためには、例えば樹脂層を形成するバインダー樹脂と紫外線吸収剤や光安定化剤とを共重合する等の方法を用いることできる。
【0039】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類が、ブリードアウトせず、経済性、耐光性、紫外線吸収性、光触媒活性に優れるという点から好ましく用いられる。中でも酸化亜鉛が経済性、紫外線吸収性、光触媒活性という点で最も好ましい。酸化亜鉛としては、FINEX−25LP、FINEX−50LP(登録商標、堺化学工業(株)製)などを使用することができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、必要に応じて数種類を併用してもよく、さらに、それら紫外線吸収剤自体を多孔質粒子の形態にて用いてもよい。
【0040】
これらの紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することはできるが、紫外線照射により発生する有機ラジカルを捕捉することができないために、このラジカルが連鎖的に基材の白色フィルムを劣化させる恐れがある。これらのラジカル等を捕捉するために光安定化剤が好適に併用される。かかる光安定化剤としてはヒンダードアミン(HALS)系化合物が好ましく使用される。有機系紫外線吸収剤や光安定化剤を固定させる共重合モノマーとしては、汎用性および経済性が高い点でアクリル系、スチレン系などのビニル系モノマーが好ましい。かかる共重合モノマーのなかでも、芳香族環を有するスチレン系ビニルモノマーは黄変しやすい。これに対し、耐光性が高い点で、アクリル系ビニルモノマーを共重合モノマーとして用いることが好ましい。なお、ベンゾトリアゾールが反応性ビニルモノマーで置換された2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名:RUVA−93;大塚化学(株)製)を紫外線吸収剤として使用することができる。また、ヒンダードアミン系化合物が反応性ビニルモノマーで置換された4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:アデカスタブ(登録商標)LA−82;(株)ADEKA製)を紫外線吸収剤として使用することができる。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの有機紫外線吸収剤を含有する樹脂、あるいはベンゾトリアゾール系反応性モノマー、ベンゾフェノン系反応性モノマーを共重合した樹脂、さらにはこれらにヒンダードアミン(HALS)系反応性モノマーなどの光安定化剤を含有及び/又は共重合した樹脂を含むものを、発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。これらの有機紫外線吸収樹脂は、紫外線吸収効果を保持しつつ薄層に形成できる点で好ましい。
【0041】
白色度を70%以上にするためには、ポリエステルに二酸化チタンを添加することが好ましい。二酸化チタンとしては、ルチル型二酸化チタンが耐光性の面で好ましい。二酸化チタンのフィルム中における含有量は、フィルムが複数のポリエステルの層から構成されている場合でも、好ましくは0.5〜20重量部であり、より好ましくは2〜15重量部であり、さらに好ましくは4〜15重量部である。0.5重量部未満であると耐光性が得られない恐れがある。20重量部を超えて添加するとフィルム全体の耐久性(耐熱性、耐湿熱性)が劣るだけでなく、フィルム製膜時に破れが多発し安定製膜が難しくなる恐れがある。また、ポリエステル層(A)の少なくとも片面に別のポリエステル層(B)を積層した構造とした場合は、ポリエステル層(B)層に二酸化チタンを含有することが耐光性の面で好ましい。
【0042】
白色度を15%以下にするためには、ポリエステルにカーボンブラックを添加することが好ましい。カーボンブラックは、一次粒子の平均粒径が、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは10〜70nm、特に好ましくは10〜50nmである。平均粒径が100nmを超えるとフィルム中に斑が発生し、引張強度、製膜性が不良となる問題がある。平均粒径が5nm未満であるとカーボンブラックの分散性に劣るものとなり、ポリエステルフィルム内で局所的に凝集してしまうため好ましくない。カーボンブラックのフィルム中における含有量は、フィルムが複数のポリエステルの層から構成されている場合でも0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜3.0重量%である、最も好ましくは1.0〜2.5重量%である。。カーボンブラック粒子の含有量が0.1重量%未満の場合には、遮光性が不十分になり本発明の目的を達成できず、一方、含有量が10重量%を越えると製膜性が大きく低下し、目的とするフィルムを得ることができなくなる。
【0043】
カーボンブラック粒子を所定のポリエステルに含有せしめる方法としては、重合前、重合中、重合後のいずれに添加してもよいが、ポリエステルに押出機の中でカーボンブラック粒子を直接に溶融させ、分散せしめて添加するコンパウンド化ペレット方法が有効である。
【0044】
次に、難燃性白色ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールとを周知の方法でエステル交換反応させることによって得ることができる。また、重合に際して公知の反応触媒(重合触媒)であるアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物などを用いても良い。さらに色調調整剤としてリン化合物などを添加してもよい。ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。
【0045】
次に、上記ポリエステル樹脂から難燃性フィルムを得るための方法について述べる。まず、ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥し、1台の押出機を用いてポリエステル樹脂を押し出し、流路から送り出すことによって、ダイから吐出させて単層のフィルムを製造する方法が適用可能である。また、2台以上の押出機を用いて、2種以上のポリエステル樹脂や熱可塑性樹脂を、それぞれ押し出し、異なる流路から送り出すことによって、それらの樹脂をマルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー、ピノール等を用いて多層に積層しつつダイから吐出させることで積層フィルムを得る方法が適用可能である。
【0046】
ダイから吐出された樹脂は、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化されることでキャスティングフィルムが得られる。この際に、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力により樹脂をキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。
【0047】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、少なくとも一軸延伸することが必要である。延伸は、逐次二軸延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに縦方向や横方向に再延伸を行ってもよい。
【0048】
ここで、縦方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸をいい、通常は、ロールの周速差を利用して施される。この縦方向への延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階で行ってもよい。好ましい延伸の倍率は、樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍である。
【0049】
〔物性値の測定方法および評価方法〕
以下に、各物性値の測定方法および評価方法について説明する。
【0050】
(1)空隙率
空隙率を算出するにあたっては、フィルムの断面を撮影して得られた断面写真から気泡部分の面積を測定し、全断面積に対する気泡部分の面積比率をもって空隙率(%)とする方法を採用した。まず、ミクロトームを用いてMD方向(フィルムの長手方向)にフィルムを切断し、断面観察用の切片サンプルを得た。次にフィルムの断面を走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて100〜20000倍に拡大観察して撮影した断面写真を得た。この断面写真よりフィルムの積層構成およびその層厚みを確認することができる。得られた断面写真における、空隙率の測定対象たる層(A)の全断面積を、イメージアナライザー(ニレコ株式会社製:ルーゼックス(登録商標)IID)を使用して求め、これを面積a[mm]とする。また、断面写真中の層(A)の気泡を透明なフィルム上に油性フェルトペンで塗りつぶしトレースし、イメージアナライザーを使用してそのトレース部分の面積を求め、これを気泡部分の面積b[mm]とする。このようにして得られた面積aおよび面積bの値を以下の式に代入して空隙率を求める。
空隙率(%)=b/a×100
【0051】
(2)難燃剤の分散径
(1)の空隙率の評価方法と同様に撮影を実施して得られた断面写真の粒子部分を粒子形状に沿ってマーキングして、その粒子部分についてハイビジョン画像解析処理装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行った。測定視野内の計100個の粒子を真円に換算した時の数平均径を算出し、粒子の平均粒径とした。
【0052】
(3)相対反射率
日立製分光光度計U−3310を用いて相対反射率を測定した。標準白色板として酸化アルミナを用い、入射光として波長560nmの光を用いた。試験片開口部の傾斜角度は10°とした。まず、標準白色板の拡散反射率(T)を測定した。その後、試験片の拡散反射率(T)を測定し、下記式により相対反射率(R)を算出した。
R(%)=T/T×100
:標準白色板の反射率
:試験片の反射率
【0053】
(4)白色度
色差計(日本電色製:ND−300A)を用いて2波長法で測定された各物性から、下記式により白色度を算出した。
白色度(W)=100×[(100−L)+a+b1/2
L:明度、a:彩度、b:色相
【0054】
(5)光学濃度
光学濃度計(マクベス製:TR−524)で透過光束の光学濃度を測定した。
光源:可視光線
分光組成:色温度 3006Kのタングステン電球
測定環境:温度23℃±3℃、湿度65±10%RH
【0055】
(6)部分放電電圧
太陽電池モジュール封止シート用フィルム、および太陽電池モジュール封止シートについて、下記の測定条件に基づき部分放電電圧を測定して電気絶縁性を評価した。
準拠規格:IEC60664/A2:2002 4.1.2.4
試験器:KPD2050(菊水電子工業製)
測定パターン:台形
開始電圧電荷しきい値:1.0pC
消滅電圧電荷しきい値:1.0pC
試験時間:22.0s
【0056】
(7)カルボキシル末端基濃度
フィルム0.5gをo−クレゾールに溶解し、水酸化カリウムを用いて電位差滴定してカルボキシル末端基濃度を測定し、当量/ポリエステル10gの単位で示した。
【0057】
(8)固有粘度
フィルムをオルトクロロフェノールに溶解せしめ、25℃で測定した溶液粘度から、下式より固有粘度を算出した。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、固有粘度ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量であり(本測定では、溶解ポリマー重量は1g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0058】
(9)耐熱性
ASTM−D882−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS)に準じて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間距離5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(初期)を測定した。5サンプルについて測定された値の平均値を破断伸度(初期)Aとした。
【0059】
次いで、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、エスペック(株)製回転枠付恒温器GPHH−202を用いて、180℃の条件下で180時間の加熱処理を行った後、ASTM−D882−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS)に準じて、チャック間距離5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(処理後)を測定した。5サンプルについて測定された値の平均値を破断伸度(処理後)Aとした。
【0060】
得られた破断伸度A、Aを用いて、下記式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=A/A×100
【0061】
また、下記式により平均伸度保持率を算出し、この値を耐熱性(%)とした。
平均伸度保持率(%)=(MD方向の伸度保持率+TD方向の伸度保持率)/2
【0062】
(10)耐湿熱性
ASTM−D882−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS)に準じて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間距離5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(初期)を測定した。5サンプルについて測定された値の平均値を破断伸度(初期)Bとした。
【0063】
次いで、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、エスペック(株)製高度加速寿命試験装置EHS−221MDを用いて、125℃、湿度100%の条件下で24時間の加熱処理を行った後、ASTM−D882−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS)に準じて、チャック間距離5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(処理後)を測定した。5サンプルについて測定された値の平均値を破断伸度(処理後)Bとした。
【0064】
得られた破断伸度B、Bを用いて、下記式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=B/B×100
【0065】
また、下記式により平均伸度保持率を算出し、この値を耐湿熱性(%)とした。
平均伸度保持率(%)=(MD方向の伸度保持率+TD方向の伸度保持率)/2
【0066】
(11)難燃性
米国アンダーライターズラボラトリーズ(UNDERWRITERS LABORATORIES)社規格UL−94に基づいて難燃性の試験を実施し、UL−94に規定されたVTM−2の基準をクリアできるかどうかを確認した。
【0067】
(12)カーボンブラックの粒径
まず粒子表面に導電性付与のための金属をごく薄くスパッターし、走査型電子顕微鏡S4000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて、5000倍〜5万倍に拡大した像から測定した。
【実施例】
【0068】
以下では、発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例により限定して解釈されるものではない。
【0069】
[合成例1]シリコーン系撥水処理剤
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、粘度71mm/s、重量平均分子量1,100の薄黄色透明溶液(シリコーン撥水処理剤1)81gを得た。系内のメタノール残存量は5質量%であった。
【0070】
[合成例2]表面処理ポリリン酸アンモニウム
ポリリン酸アンモニウム(分子量15万、P含有率20質量%、かさ密度0.7g/cm、平均粒径6.2μm)100質量部に対し、合成例1のシリコーン系撥水処理剤1を10質量部、エタノールを100質量部の割合で加え、これらを30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、粉砕器で粉砕して、平均粒径10μmのシリコーン処理ポリリン酸アンモニウム(表面処理ポリリン酸アンモニウム)を得た。
【0071】
[合成例3]シリカ表面処理水酸化マグネシウム
水酸化マグネシウムの水スラリー(濃度150g/l)20Lを80℃に加熱し、ケイ酸ナトリウムをSiO換算値で150g加えた後、pHが9になるまで硫酸を加え、さらに80℃で1時間熟成した。次いで、スラリーから固形分を濾過分離し、水洗、乾燥、粉砕した。このようにして粒子の表面にシリカ被覆層が形成された水酸化マグネシウム粉末を用いて、上記の操作をもう一度繰り返し、シリカ被覆層の上にさらにシリカ被覆層を形成した。得られた水酸化マグネシウム粒子には、表面に高密度のシリカ被覆層が形成されていた。
【0072】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100重量部に対しエチレングリコール64重量部を混合し、さらに触媒として酢酸亜鉛を0.1重量部および三酸化アンチモン0.03重量部を添加し、エチレングリコールの還流温度でエステル交換処理を実施した。これにトリメチルホスフェート0.08重量部を添加して徐々に昇温、減圧させ271℃の温度で5時間重合を行った。得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.55であった。得られたポリエチレンテレフタレートのポリマーを長さ4mmのチップ状に切断し、これをPET−1とした。このPET−1を、回転式の真空装置(ロータリーバキュームドライヤー)に入れ、温度220℃、真空度0.5mmHgの条件下で20時間撹拌しながら加熱した。得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.80であった。これをPET−2とした。このPET−2の95重量部に対して、メラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム(商品名:FR CROS487;ブーデンハイム・イベリカ社製、平均粒径18μmのポリリン酸アンモニウム)5重量部を添加した。
【0073】
180℃で3時間乾燥させた後、約280℃に加熱された押出機αに樹脂を供給し、Tダイによりフィルム状に成形した。これを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化し、得られた未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.5倍まで縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.8倍まで横延伸した。その後テンター内で200℃に熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0074】
[実施例2]
原料配合をPET−2:91重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:9重量部の割合へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0075】
[実施例3]
原料配合をPET−2:71重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:29重量部の割合へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0076】
[実施例4]
原料配合をPET−2:55重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:45重量部の割合へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0077】
[実施例5]
難燃剤をシラン表面処理されたポリリン酸アンモニウム(商品名:FR CROS486;ブーデンハイム・イベリカ社製)へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0078】
[実施例6]
原料配合をPET−2:55重量部に対しシラン表面処理されたポリリン酸アンモニウム:45重量部の割合へと変更した以外は実施例5と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0079】
[実施例7]
難燃剤を平均粒径18μmのシリコーン表面処理されたポリリン酸アンモニウム(シリコーンによる表面処理方法は合成例2に記載)へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0080】
[実施例8]
原料配合をPET−2:55重量部に対しシリコーン表面処理されたポリリン酸アンモニウム:45重量部の割合へと変更した以外は実施例7と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0081】
[実施例9]
難燃剤を水酸化チタンコート赤リン(商品名:ヒシガード(登録商標)TP−10;日本化学工業社製、赤リン分90%、平均粒子径5μm、発火点300℃以上)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0082】
[実施例10]
原料配合をPET−2:55重量部に対し水酸化チタンコート赤リン:45重量部の割合へと変更した以外は実施例9と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0083】
[実施例11]
難燃剤をシリカ微粒子で表面被覆した平均粒径4μmのシリカ表面処理メラミンシアヌレートに変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0084】
[実施例12]
原料配合をPET−2:55重量部に対しシリカ表面処理メラミンシアヌレート:45重量部の割合へと変更した以外は実施例11と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0085】
[実施例13]
難燃剤をシリカ表面処理水酸化マグネシウム(合成例3に記載)へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0086】
[実施例14]
原料配合をPET−2:55重量部に対しシリカ表面処理水酸化マグネシウム:45重量部の割合へと変更した以外は実施例13と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0087】
[実施例15]
PET−2:67重量部、ルチル型二酸化チタン:4重量部、メラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:29重量部の割合で原料を混合し、温度180℃、真空度0.5mmHg、3時間の真空乾燥を行い、押出機αに投入して層(A)を形成した。同様に、真空乾燥を実施したPET−2:93重量部、ルチル型二酸化チタン:7重量部の割合で混合したものを押出機βに投入して層(B)を形成した。溶融流路内で2層のポリマーを複合出来る装置(合流装置)を通し、層(B)/層(A)/層(B)の複合構成を有する溶融フィルムをTダイから押し出し、25℃に保った冷却ドラムに静電印加密着させてキャストした。さらにこの未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.5倍まで縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.6倍まで横延伸した。その後テンター内で200℃に熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り厚み300μmのフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、層(A)で270μm、層(B)で片側15μmであった。得られたフィルムの特性評価結果は、表1に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)を評価したところ、良好であった。
【0088】
【表1】

【0089】
[実施例16]
PET−2の93重量部に対して、メラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム(商品名:FR CROS487;ブーデンハイム・イベリカ社製、平均粒径18μmのポリリン酸アンモニウム)5重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm)2重量部を添加した。
【0090】
180℃で3時間乾燥させた後、約280℃に加熱された押出機αに樹脂を供給し、Tダイによりフィルム状に成形した。これを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化し、得られた未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.5倍まで縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.8倍まで横延伸した。その後テンター内で200℃に熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0091】
[実施例17]
原料配合をPET−2:89重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:9重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0092】
[実施例18]
原料配合をPET−2:69重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:29重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0093】
[実施例19]
原料配合をPET−2:53重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0094】
[実施例20]
難燃剤をシラン表面処理されたポリリン酸アンモニウム(商品名:FR CROS486;ブーデンハイム・イベリカ社製)へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0095】
[実施例21]
原料配合をPET−2:53重量部に対しシラン表面処理されたポリリン酸アンモニウム:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例20と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0096】
[実施例22]
難燃剤を平均粒径18μmのシリコーン表面処理されたポリリン酸アンモニウム(シリコーンによる表面処理方法は合成例2に記載)へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0097】
[実施例23]
原料配合をPET−2:53重量部に対しシリコーン表面処理されたポリリン酸アンモニウム:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例22と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0098】
[実施例24]
難燃剤を水酸化チタンコート赤リン(商品名:ヒシガード(登録商標)TP−10;日本化学工業社製、赤リン分90%、平均粒子径5μm、発火点300℃以上)に変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0099】
[実施例25]
原料配合をPET−2:53重量部に対し水酸化チタンコート赤リン:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例24と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0100】
[実施例26]
難燃剤をシリカ微粒子で表面被覆した平均粒径4μmのシリカ表面処理メラミンシアヌレートに変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0101】
[実施例27]
原料配合をPET−2:53重量部に対しシリカ表面処理メラミンシアヌレート:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例26と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0102】
[実施例28]
難燃剤をシリカ表面処理水酸化マグネシウム(合成例3に記載)へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0103】
[実施例29]
原料配合をPET−2:53重量部に対しシリカ表面処理水酸化マグネシウム:45重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例28と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0104】
[実施例30]
PET−2:70.5重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):0.5重量部、メラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:29重量部の割合で原料を混合し、温度180℃、真空度0.5mmHg、3時間の真空乾燥を行い、押出機αに投入して層(A)を形成した。同様に、真空乾燥を実施したPET−2:98重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合で混合したものを押出機βに投入して層(B)を形成した。溶融流路内で2層のポリマーを複合出来る装置(合流装置)を通し、層(B)/層(A)/層(B)の複合構成を有する溶融フィルムをTダイから押し出し、25℃に保った冷却ドラムに静電印加密着させてキャストした。さらにこの未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.5倍まで縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.6倍まで横延伸した。その後テンター内で200℃に熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り厚み300μmのフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、層(A)で270μm、層(B)で片側15μmであった。得られたフィルムの特性評価結果は、表2に示す通りであった。フィルムの難燃性、耐熱性、耐湿熱性を評価したところ、良好であった。
【0105】
【表2】

【0106】
[比較例1]
原料配合をPET−2:98重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:2重量部の割合へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)において劣るものであった。
【0107】
[比較例2]
原料配合をPET−2:48重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:52重量部の割合へと変更した以外は実施例1と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0108】
[比較例3]
難燃剤を表面処理されていない臭素化ポリフェニルに変更した以外は実施例4と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)において劣るものであった。
【0109】
[比較例4]
難燃剤を表面処理されていないポリリン酸アンモニウム FR CROS 485P(ブーデンハイム・イベリカ社製)に変更した以外は実施例4と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)において劣るものであった。
【0110】
[比較例5]
難燃剤を表面処理されていない水酸化マグネシウムに変更した以外は実施例4と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)において劣るものであった。
【0111】
[比較例6]
難燃剤を表面処理されていないトリスジクロロプロピルホスフェートCRP(大八化学工業社製)に変更した以外は実施例4と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性(白色度、光学濃度、相対反射率)において劣るものであった。
【0112】
[比較例7]
難燃剤の代わりにポリエステルに非相溶なポリメチルペンテンに変更した以外は実施例3と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0113】
[比較例8]
原料配合をPET−2:96重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:2重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性において劣るものであった。
【0114】
[比較例9]
原料配合をPET−2:46重量部に対しメラミン表面処理ポリリン酸アンモニウム:52重量部とカーボンブラック(三菱化学株式会社製、中級カラー(MCF)#960、粒子系16nm):2重量部の割合へと変更した以外は実施例16と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0115】
[比較例10]
難燃剤を表面処理されていない臭素化ポリフェニルに変更した以外は実施例19と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0116】
[比較例11]
難燃剤を表面処理されていないポリリン酸アンモニウム FR CROS 485P(ブーデンハイム・イベリカ社製)に変更した以外は実施例19と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0117】
[比較例12]
難燃剤を表面処理されていない水酸化マグネシウムに変更した以外は実施例19と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0118】
[比較例13]
難燃剤を表面処理されていないトリスジクロロプロピルホスフェートCRP(大八化学工業社製)に変更した以外は実施例19と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0119】
[比較例14]
難燃剤の代わりにポリエステルに非相溶なポリメチルペンテンに変更した以外は実施例18と同様の方法で、125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性評価結果は、表3に示す通り、難燃性、耐熱性、耐湿熱性において劣るものであった。
【0120】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の難燃性フィルムは、太陽電池バックシートの他、太陽電池バックシートと同様の特性が要求される液晶ディスプレイ用反射板にも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 難燃性フィルム
2 難燃剤
3 ポリエステル樹脂
4 気泡
5 全光線透過材料
6 太陽電池セル
7 充填樹脂
8 リード線
10 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを用いてなる層(A)からなり、層(A)は、ポリエステルに非相溶な物質(b)により被覆された難燃剤(a)および気泡を含有し、10〜50体積%の空隙率を有することを特徴とする難燃性フィルム。
【請求項2】
前記気泡が難燃剤(a)を核として発現されている、請求項1に記載の難燃性フィルム。
【請求項3】
難燃剤(a)が、100重量部の層(A)に対し3〜50重量部の割合で含まれる、請求項1または2に記載の難燃性フィルム。
【請求項4】
難燃剤(a)が、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、メラミンホスフェートまたはメラミンポリホスフェートからなるリン酸塩を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項5】
物質(b)がメラミン樹脂またはその誘導体からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項6】
物質(b)がシランを用いて表面処理されている、請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項7】
部分放電電圧として1000V以上の電気絶縁性を有し、かつ300μm以下の厚みを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項8】
フィルムの白色度が70%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項9】
フィルムの白色度が15%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性フィルム。
【請求項10】
カーボンを含有し、該カーボンの含有量がフィルム全体に対して1〜2.5重量%であることを特徴とする、請求項9に記載の難燃性フィルム。
【請求項11】
反射率が8〜20%であることを特徴とする、請求項9または10に記載の難燃性フィルム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−211300(P2012−211300A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210962(P2011−210962)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】