説明

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物

【目的】燃焼しても滴下しにくく、かつ透明性の高い難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【構成】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有し、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対する前記パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量が0.03〜0.3重量部で、前記有機シロキサンの含有量が0.05〜2.0重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性のポリカーボネート(以下、PCと略記する。)樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】PCは、透明で衝撃強度に優れていることから、OA機器、家庭電化製品、機械、建築等の多く分野で広く利用されている。このPCは自己消化性を有しており、この点からも種々の材料として好ましいものであるが、各種用途における安全上の要求を満たすために、難燃性を更に高めたPC樹脂組成物(以下、難燃性PC樹脂組成物という。)の開発が強く求められている。
【0003】難燃性PC樹脂組成物としては、芳香族PCにパーフルオロアルカンスルホン酸カリウム塩を添加したものがあるが(特公昭47−40445号公報参照)、この難燃性PC樹脂組成物は一旦燃焼すると滴下し易くなるため、延焼を防ぐという観点からは未だ不十分である。このため、燃焼しても滴下しにくい難燃性PC樹脂組成物として、芳香族PCに有機アルカリ(土類)金属塩を混合し、さらにシロキサンを添加した組成物が開発されている(特公昭60−16473号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芳香族PCに有機アルカリ(土類)金属塩を混合し、さらにシロキサンを添加してなる難燃性PC樹脂組成物には、透明性が低いという難点がある。本発明の目的は、燃焼しても滴下しにくく、かつ透明性の高い難燃性PC樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の難燃性PC樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有し、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対する前記パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の割合が0.03〜0.3重量部で、前記有機シロキサンの割合が0.05〜2.0重量部であることを特徴とするものである。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の難燃性PC樹脂組成物における必須成分の1つである芳香族PCとしては種々のものがあるが、例えば一般式(I)
【化1】


(式中、R1 およびR2 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。mおよびnはそれぞれ1〜4の整数であり、mが2〜4の場合のR1 は互いに異なっていてもよく、nが2〜4の場合のR2 は互いに異なっていてもよい。Zは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基または−SO2 −,−SO−,−S−,−O−,−CO−結合もしくは一般式(II)
【化2】


で表される結合を示す。)で表される繰り返し単位を有する種々の重合体が挙げられる。また、その粘度平均分子量は、機械的強度および成形加工性の点から、10000〜100000であることが好ましく、特に15000〜40000であることが好ましい。
【0007】この芳香族PCは、1種の二価フェノールを用いて得られたホモポリマーの1種または複数種であってもよいし、2種以上の二価フェノールを用いて得られたコポリマーの1種または複数種であってもよい。また、二価フェノールとともに多官能性芳香族化合物を併用して得られた熱可塑性ランダム分岐PCの1種または複数種であってもよい。さらには、これらのホモポリマー、コポリマーおよび熱可塑性ランダム分岐PCのうちの少なくとも2つを用いた混合物であってもよい。
【0008】このような芳香族PCは、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、1種または2種以上の二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは1種または2種以上の二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造される。なお、熱可塑性ランダム分岐PCを得る場合には、多官能性芳香族化合物を反応系に加えることは上述の通りである。
【0009】ここで、前記二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。あるいは、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類等も挙げられる。これらの二価フェノールの中では、特に、ビスフェノールAが好適である。
【0010】また、熱可塑性ランダム分岐PCを得るために分岐剤として用いられる多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、メリト酸、トリメリト酸、トリメリト酸クロリド、無水トリメリト酸、没食子酸、没食子酸n−プロピル、プロトカテク酸、ピロメリト酸、ピロメリト酸第二無水物、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、レゾルシンアルデヒド、トリメリチルクロリド、イサチンビス(o−クレゾール)、トリメリチルトリクロリド、4−クロロホルミルフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4′−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2′−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン、1,3,5−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−プロパン、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2′−ヒドロキシ−5′−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2′,4′−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4′−ヒドロキシアリール)−アミル−s−トリアジン等が挙げられる。
【0011】本発明の難燃性PC樹脂組成物は、芳香族PC以外の必須成分として、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を前記芳香族PC 100重量部に対して0.03〜0.3重量部の割合で含有する。ここで、「パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩」とは、式(III)
【化3】


(式中、nは1〜10の整数を示し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、mはMの価数と同じ整数を示す。)で表される塩を意味する。このパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は1種のみ用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0012】パーフルオロアルカンスルホン酸の具体例としては、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロメチルブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸等が挙げられ、特に炭素数[式(III) 中のnの数]が1〜8のものが好ましい。
【0013】また、上記式(III) においてMで示されるアルカリ金属またはアルカリ土類金の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等(以上アルカリ金属)や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等(以上アルカリ土類金属)が挙げられ、特にカリウムが好ましい。
【0014】このパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の割合を芳香族PC 100重量部に対して0.03〜0.3重量部に限定する理由は、0.03重量部未満では目標とする難燃性[UL94燃焼試験(1/12インチ)のV−0に適合するもの]を達成することが困難となるからであり、0.3重量部を超えると難燃性の更なる向上が期待できなくなるばかりでなく、得られる難燃性PC樹脂組成物に対して衝撃強度等の物性の低下をもたらすと共に透明性の低下をもたらすからである。パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の望ましい割合は、芳香族PC 100重量部に対して0.1〜0.2重量部である。
【0015】本発明の難燃性PC樹脂組成物は、芳香族PCおよびパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩以外の必須成分として、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンを前記芳香族PC 100重量部に対して0.05〜2.0重量部の割合で含有する。この有機シロキサンは、シロキサン結合の主鎖または側鎖の末端のケイ素がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、さらにシロキサン結合の任意のケイ素の箇所にビニル基を有するほか、分子中のケイ素の二つの結合手がフェニル基と任意の割合で置換されたものである。有機シロキサンは1種のみ用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0016】この有機シロキサンの割合を芳香族PC 100重量部に対して0.05〜2.0重量部に限定する理由は、0.05重量部未満では燃焼時の滴下を防止することが困難となるからであり、2.0重量部を超えると滴下防止効果の更なる向上が期待できなくなるばかりでなく、得られる難燃性PC樹脂組成物に対して衝撃強度等の物性の低下をもたらすからである。前記有機シロキサンの望ましい割合は、芳香族PC 100重量部に対して0.1〜0.5重量部である。
【0017】本発明の難燃性PC樹脂組成物は、上述した芳香族PCと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分とするものであるが、必要に応じて各種の添加成分、例えば無機質充填剤を始めとする各種の添加剤、他の合成樹脂、エラストマー等を、本発明の目的を阻害しない範囲で含有することができる。
【0018】前記無機質充填剤は、樹脂組成物の機械的強度や耐久性の向上または増量を目的として配合されるものであり、具体例としてはガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、アスベスト、タルク、クレー、マイカ、石英粉等が挙げられる。また、前記添加剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系,亜リン酸エステル系,リン酸エステル系,アミン系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、脂肪族カルボン酸エステル系やパラフィン系等の外部滑剤、常用の難燃化剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0019】前記合成樹脂の具体例としては、脂肪族ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等が挙げられる。そして、前記エラストマーの具体例としては、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等があげられる。
【0020】本発明の難燃性PC樹脂組成物は、前述した3つの必須成分と必要に応じて用いられる各種添加成分とを配合し、混練することにより得ることができる。このときの配合および混練は、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いた常法により行うことができ、混練に際しての加熱温度は通常240〜300℃の範囲から選ばれる。
【0021】このようにして得られる本発明の難燃性PC樹脂組成物は、燃焼しても滴下しにくく、かつ透明性の高いものであり、既知の種々の成形方法、例えば射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等により所望形状に成形して、各種分野で利用することができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1芳香族PCとして直鎖状PC[出光石油化学(株)製:A2500。以下、直鎖PCと略記する。]を、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としてC4 9 SO3 K[大日本インキ化学(株)製のF114(商品名)]を、アルコキシ基(メトキシ基)、ビニル基、およびフェニル基を有する有機シロキサンとして信越化学(株)製のKR219(商品名)(以下、有機シロキサンAという。)をそれぞれ用意し、これらを乾燥した後、直鎖PC 100重量部に対してC4 9 SO3 Kを0.1重量部、有機シロキサンAを0.3重量部の割合でそれぞれ配合して押出機に供給し、温度280℃で混練して、ペレット状の難燃性PC樹脂組成物を得た。
【0023】この難燃性PC樹脂組成物を120℃で12時間乾燥した後に金型温度80℃の条件で射出成形して試験片を得、これらの試験片を用いて下記の評価を行った。
■酸素指数JIS K7201に準拠して測定した。
■燃焼性UL94燃焼試験(1/12インチ)に準拠(以下、1/12UL94と略記する)、またはUL94燃焼試験(1/16インチ)に準拠(以下、1/16UL94と略記する)して測定した。
■燃焼時の滴下数UL94燃焼試験(1/12インチまたは1/16インチ)に準拠し、試験片5本が消火するまでに各試験片から落下した滴の合計数(以下、5回テストの滴下数と略記する)である。
【0024】■ヘーズJIS K7105に準拠して測定した(肉厚3mm)。これらの結果を表1に示す。
【0025】実施例2〜実施例3直鎖PC、C4 9 SO3 Kおよび有機シロキサンAの配合量をそれぞれ表1に示す割合とした以外は実施例1と同様にして、それぞれ難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、各難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0026】実施例4芳香族PCとして、前述の直鎖PCと熱可塑性ランダム分岐PC[出光石油化学(株):IB2500。以下、分岐PCと略記する。]とを用意し、前者を60重量部、後者を40重量部使用すると共に、これらの合量100重量部に対するC4 9 SO3 Kおよび有機シロキサンAの割合をそれぞれ0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0027】比較例1直鎖PC 100重量部に対するC4 9 SO3 Kの割合を0.2重量とするとともに、有機シロキサンAを用いなかった以外は実施例1と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0028】比較例2有機シロキサンAに代えて、フェニル基のみを有する有機シロキサン[信越化学(株)製のKF56(商品名)。以下、有機シロキサンBという。]を0.3重量部用いた以外は実施例2と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例2と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0029】比較例3有機シロキサンAに代えてメトキシ基のみを有する有機シロキサン[信越化学(株)製のKF851(商品名)。以下、有機シロキサンCという。]を0.3重量部用いた以外は実施例1と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0030】比較例4芳香族PC(直鎖PC)100重量部に対するC4 9 SO3 Kの割合を本発明の限定範囲外である0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0031】比較例5有機シロキサンAを用いなかった以外は実施例4と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記■〜■の評価を実施例4と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】表1に示した実施例1〜実施例3の評価結果と比較例1の評価結果との対比から明らかなように、有機シロキサンAを含有させたものは、酸素指数の向上および燃焼時の滴下防止が図られ、難燃性が向上する。そして、ヘーズの値から明らかなように、透明性の低下も小さい。また、実施例4の評価結果から明らかなように、芳香族PCとして直鎖状PCと熱可塑性ランダム分岐PCとを併用することにより、透明性の低下をもたらすことなく難燃性をさらに向上させることができる。
【0034】これに対し、比較例1〜比較例3および比較例5の評価結果から明らかなように、有機シロキサンAを含有させなかったものは、熱可塑性ランダム分岐PCの併用の有無に拘らず、燃焼時に滴下を生じる。また、比較例2の評価結果から明らかなように、有機シロキサンBを含有させたものは、透明性の低下は小さいが酸素指数の向上および燃焼時の滴下防止が不十分である。そして、比較例3の評価結果から明らかなように、有機シロキサンCを含有させたものは透明性の低下が著しく、不透明である。さらに、比較例4の評価結果から明らかなように、本発明の上限を超えてC49 SO3 Kを含有させた場合には、酸素指数の大きな向上が無いばかりでなく、透明性の低下が著しくなり不透明となる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、燃焼しても滴下しにくく、かつ透明性の高い難燃性PC樹脂組成物を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有し、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対する前記パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の割合が0.03〜0.3重量部で、前記有機シロキサンの割合が0.05〜2.0重量部であることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。