説明

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物

芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、粘度が25℃において300センチストークス以下であるシリコーンワニス0.1〜15重量部および有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【課題】 難燃性と熱安定性に優れ、且つ高い衝撃強度を有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂は優れた機械的性質を有しており、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめ工業的に広く利用されている。一方、OA機器、家電製品等の用途を中心に、使用する合成樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために多数の難燃剤が開発検討されている。通常、ポリカーボネート樹脂の難燃化には主にハロゲン化合物等が使用されている。さらに、近年、環境汚染などの問題から、ハロゲン系化合物の減量を目的として、例えば、リン酸エステル系化合物あるいはフェノール系安定剤を使用した組成物が知られている。しかし、こうしたポリカーボネート樹脂組成物においては耐衝撃性や熱安定性が低下するという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、難燃性と熱安定性に優れ、且つ耐熱性の低下の少ないポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、粘度が25℃において300センチストークス以下であるシリコーンワニス0.1〜15重量部および有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0005】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
【0006】芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することができる。
【0007】分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0008】分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、mー及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2、2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2、2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するポリマーあるいはオリゴマーを共重合することができる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0009】芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜30,000であり、好ましくは18,000〜26,000である。
【0010】本発明におけるシリコーンワニスとしては、主として2官能型単位[R2SiO]と3官能型単位[RSiO1.5]からなり、1官能型単位[R3SiO0.5]および/または4官能型単位[SiO2]を含むことができる比較的低分子量の溶液状シリコーン樹脂である。ここで、Rは炭素数1〜12の炭化水素基または一個以上の置換基で置換された炭素数1から12の炭化水素基であり、置換基としてはエポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびビニル基等が挙げられる。Rの構造を変えることによりマトリックス樹脂との相溶性を改善することが可能である。シリコーンワニスとしては、無溶剤のシリコーンワニスや溶剤を含むシリコーンワニスなどが挙げられ、溶剤を含まないシリコーンワニスが好ましい。
【0011】シリコーンワニスを製造するには、アルキルアルコキシシランの加水分解により製造することができ、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン等を加水分解することにより製造することができる。これらの原料のモル比、加水分解速度等を調整することにより分子の構造(架橋度)及び分子量のコントロールが可能である。さらに、製造条件によってはアルコキシシランが残存するが、組成物中に残存するとポリカーボネート樹脂の耐加水分解性の低下がおこることが有り、残存アルコキシシランは少ないことあるいは無いことが望ましい。
【0012】シリコーンワニスの粘度は、300センチストークス以下である。300センチストークスを越えると難燃性が不十分になる。シリコーンワニスの粘度は、好ましくは250センチストークス以下であり、より好ましくは200センチストークス以下である。
【0013】シリコーンワニスの配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部である。シリコーンワニスの配合量が0.1重量部未満であると難燃性が不十分であり、15重量部を越えると、耐熱性が低下する。シリコーンワニスの配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5〜12重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。
【0014】本発明における有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上を混合して使用することもできる。
【0015】有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩等が挙げられ、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩等が挙げられる。パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土金属塩などが挙げられる。
【0016】パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0017】芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
【0018】芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのナトリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3ースルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0019】有機スルホン酸金属塩の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部である。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると充分な難燃性が得られにくく、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。有機スルホン酸金属塩の配合量は、好ましくは0.02〜4重量部であり、より好ましくは0.05〜3重量部である。
【0020】本発明におけるリン系難燃剤としては、リン原子を分子中に有し樹脂の難燃性を高める効果を有する化合物であり、好ましくは、下記の一般式(1)または(2)で表される非ハロゲンのリン系化合物が挙げられる。
【0021】
【化1】


【0022】(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、それぞれ0または1を示す。)
【0023】
【化2】


【0024】(式中、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、mは1から5の整数であり、Xはアリーレン基を示す)
【0025】一般式(1)で表される非ハロゲンのリン系化合物としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニル2エチルクリジル、燐酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、燐酸ジフェニルクレジル、燐酸トリブチル等が挙げられる。一般式(1)で表される非ハロゲンのリン系化合物は、公知の方法で、オキシ塩化燐等から製造することができる。
【0026】一般式(2)で表される非ハロゲンのリン系化合物としては、mが1〜5の縮合燐酸エステルであり、mが単一の縮合燐酸エステルであってもよく、あるいはmが異なる縮合燐酸エステルの混合物であってもよい。混合物である場合は、混合物のmの平均値が1〜5であればよい。Xはアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される基である。一般式(2)で表されるリン系化合物としては、ジヒドロキシ化合物がレゾルシノールである場合は、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル-P-t-ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェートフェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が挙げられる。
【0027】リン系難燃剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.5〜20重量部である。リン系難燃剤の配合量が0.5重量部未満であると難燃性が不十分であり、20重量部を越えると機械的物性が低下しやすい。リン系難燃剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは0.8〜15重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。
【0028】架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体としては、例えば、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次被覆するような連続した多段階シード重合によって製造される重合体であり、基本的な重合体構造としては、ガラス転移温度の低い架橋されたゴム状重合体成分である内層と組成物のマトリックスとの接着性を改善するアルキル(メタ)アクリレート系高分子化合物からなる最外殻層を有する多層構造重合体である。
【0029】架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体としては、例えば、最内核層を芳香族ビニル単量体からなる重合体で形成し、中間層をガラス転移温度の低いゴム状重合体で形成し、さらに最外殻層をアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる多層構造重合体が挙げられ、パール光沢等の外観不良の改善に効果をもたらす。
【0030】架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.5〜30重量部である。配合量が0.5重量部未満であると衝撃強度が低下しやすく、30重量部を越えると耐熱性が低下しやすい。架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜25重量部であり、更に好ましくは1.5〜20重量部である。
【0031】本発明におけるポリフルオロエチレンとしては、例えば、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、重合体中に容易に分散し、かつ重合体同士を結合して繊維状構造を作る傾向を示すものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より、テフロン6Jまたはテフロン30Jとして、あるいはダイキン化学工業(株)よりポリフロンとして市販されている。
【0032】ポリフルオロエチレンの配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部である。ポリフルオロエチレンが0.01重量部未満であると難燃性が不十分であり、5重量部を越えると外観が低下しやすい。ポリフルオロエチレンの配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは0.02〜4重量部であり、より好ましくは0.03〜3重量部である。
【0033】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、その他難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維等の強化材あるいはチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を添加配合することができる。
【0034】難燃性ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、HIPS樹脂あるいはABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の配合量は、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の合計量の40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、非ハロゲンのポリカーボネート樹脂組成物であり、本発明の樹脂組成物において配合される各成分は、それぞれ非ハロゲンの化合物であることが、環境汚染、成形機や金型の腐食問題等の点より好ましい。
【0035】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、シリコーンワニスおよびスルホン酸金属塩、さらに必要に応じ、リン系難燃剤、架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体および/またはポリフルオロエチレン樹脂等を一括溶融混練する方法、芳香族ポリカーボネート樹脂、シリコーンワニスおよびスルホン酸金属塩、さらに必要に応じ、リン系難燃剤および/またはポリフルオロエチレン樹脂をあらかじめ混練後、架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体を配合し溶融混練する方法などが挙げられる。
【0036】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例および比較例においては次に記載の原材料を用いた。
(1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、ユーピロンS−3000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、粘度平均分子量21,000。(以下、「PC」と称することもある。)
(2)シリコーンワニス−1:KR−219、信越化学(株)、25℃での粘度16.4センチストークス。
(3)シリコーンワニス−2:X−40−9228、信越化学(株)、25℃での粘度21.3センチストークス。
(4)シリコーンワニス−3:X−40−9229−12、信越化学(株)、25℃での粘度366センチストークス。
【0037】(5)有機スルホン酸金属塩−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、F−114、大日本インキ化学工業(株)製。
(6)有機スルホン酸金属塩−2:ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム塩、KSS、ユーシービージャパン製。
(7)リン系難燃剤−1:縮合燐酸エステルFP−500、旭電化工業(株)製。
(8)ポリテトラフルオロエチレン:ポリフロンF−201L、ダイキン(株)製。(以下、「PTFE」と称することもある。)
(9)多層構造重合体−1:ポリブタジエンで形成されたコアとポリメチルメタクリレートで形成されたシェルからなる多層構造重合体、EXL−2603、呉羽化学(株)製。
【0038】なお、試験片の物性評価は次に記載のように行った。
(10)燃焼性:2.0mm厚みのUL規格の試験片により垂直燃焼試験を行い、評価した。総燃焼時間は5本10回燃焼時の燃焼時間の合計、最大燃焼時間は10回の燃焼で最大の燃焼時間、綿着火は滴下による綿の着火回数を分数で表示し、分子が着火回数を表す。評価結果において「V2NG」はV2に合格しないことを示す。
(11)衝撃強度:3.2mmのアイゾット衝撃試験片を成形し、その後0.25Rのノッチを切削し評価を行った。
(12)荷重撓み温度:6.4mmの曲げ試験片を使用し、18.5Kg/cm2荷重での荷重撓み温度を測定した。
【0039】〔実施例1〕芳香族ポリカーボネート樹脂を100重量部、シリコーン樹脂−1を3.1重量部、有機スルホン酸金属塩−1を0.21重量部配合しタンブラーにて20分混合後、30mm二軸押出機にてシリンダー温度270℃でペレット化し、射出成形機にて、1.6mm厚みの燃焼試験片を成形し、燃焼性を評価した。さらに、シリンダー温度270℃にて、アイゾット衝撃試験片および曲げ試験片を成形し、各種評価を行った。評価結果を表−1に示す。
【0040】〔実施例2〕実施例1において、シリコーン樹脂−1の配合量を3.1重量部から5.3重量部に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔実施例3〕実施例1において、シリコーン樹脂−1をシリコーン樹脂−2に変更した以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔実施例4〕実施例1において、有機スルホン酸金属塩−1を0.21重量部用いる代わりに有機スルホン酸金属塩−3を0.52重量部用いること以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
【0041】〔比較例1〕実施例1において、シリコーン樹脂−1および有機スルホン酸金属塩−1を用いない以外は、実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔比較例2〕実施例1において、有機スルホン酸金属塩−1を用いない以外は、実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔比較例3〕実施例2において、有機スルホン酸金属塩−1を用いない以外は、実施例2と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔比較例4〕実施例3において、有機スルホン酸金属塩−1を用いない以外は、実施例3と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
〔比較例5〕実施例1において、有機スルホン酸金属塩−1を有機スルホン酸金属塩−3に変更する以外は、実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−1に示す。
【0042】
【表1】


【0043】〔実施例5〕芳香族ポリカーボネート樹脂を100重量部、シリコーン樹脂−1を1.1重量部、有機スルホン酸金属塩−1を0.23重量部、多層構造重合体−1を5.6重量部、リン系難燃剤−1を5.6重量部、ポリテトラフルオロエチレンを0.34重量部配合しタンブラーにて20分混合後、30mm二軸押出機にてシリンダー温度270℃でペレット化し、射出成形機にて、1.6mm厚みの燃焼試験片を成形し、燃焼性を評価した。さらに、シリンダー温度270℃にて、アイゾット衝撃試験片および曲げ試験片を成形し、各種評価を行った。評価結果を表−2に示す。
〔比較例6〕実施例5において、シリコーン樹脂−1を用いず、有機スルホン酸リ金属塩−1の配合量を0.22重量部に変える以外は、実施例5と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表−2に示す。
【0044】
【表2】


【0045】
【発明の効果】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性と熱安定性に優れ、且つ衝撃強度に優れており、成形時の金型及びスクリュー等の腐食性の問題を大幅に改良しており、成形上の制限が少なくおり、各種用途、特に電気電子機器や精密機械分野における大型成形品や薄肉成形品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、粘度が25℃において300センチストークス以下であるシリコーンワニス0.1〜15重量部および有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】 芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、16,000〜30,000であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】 有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩または芳香族スルホンスルホン酸金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】 有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩であることを特徴とする請求項3に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】 芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、リン系難燃剤0.5〜20重量部を配合してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】 芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、架橋されたゴム状重合体からなる内層とアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなる最外殻層を有する多層構造重合体0.5〜30重量部を配合してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】 芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、ポリフルオロエチレン0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。