説明

難燃性樹脂組成物

【目的】 機械的性質、電気的性質、耐熱性、流動性、耐溶剤性および耐油性を損なうことなく、特に、難燃性および成形品表面の著しく改善された難燃性樹脂組成物を提供すること。
【構成】 (A)ポリフェニレンエーテル樹脂30〜70重量部、(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂30〜70重量部、(C)相溶化剤0.1〜5重量部、(D)難燃剤として
【化1】で示される長鎖アルキル置換フェノールで末端封鎖し、重合度2〜10のハロゲン置換ポリカーボネートオリゴマー3〜20重量部、(E)四酸化アンチモン0.5〜10重量部および(F)エラストマー2〜20重量部を溶融混練してなる難燃性樹脂組成物。
【効果】 電気・電子部品、自動車部品、機械部品、建築部品、家庭用雑貨など幅広い分野で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明の難燃性樹脂組成物は、機械的性質、成形時の流動性、耐熱性、耐溶剤性を損なうことなく、特に成形品外観および難燃性の著しく改善されたポリフェニレンエーテルとナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドからなる樹脂組成物に関し、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、建築部品、雑貨など幅広い分野で使用できる。
【0002】
【従来の技術】従来から、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂からなる組成物は電気的性質、機械的性質、耐熱性、耐熱水性、寸法精度、成形性などに優れているので、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、雑貨など幅広い分野で使用されている。しかしながら、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂からなる組成物は、耐溶剤性および耐油性が不十分なため、改良が強く望まれていた。
【0003】特公昭60−11966号報には、ポリフェニレンエーテルとナイロン、ポリカーボネートおよびポリフェニレンサルファイドを、比較的分子量の低い無水マレイン酸、マレイミド、フマール酸などを相溶化剤として溶融混練し、ポリフェニレンエーテルの耐溶剤性および耐油性を改良する方法が開示されている。しかし、この方法では、耐溶剤性および耐油性は改良できても、難燃性に劣るという問題点があった。ポリフェニレンエーテルとナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドからなる樹脂組成物の難燃化には、赤燐やブロム化ポリスチレン、ブロム化カーボネートオリゴマーなどが使用されている。しかし、難燃剤として赤燐を使用した場合、溶融混練時に異臭を発生したり、着色したり、成形品表面にブツが発生するという問題点があった。また、難燃剤としてブロム化ポリスチレンやブロム化カーボネートオリゴマーを使用した場合、アイゾット衝撃強度や流動性の低下が大きいという欠点もあった。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、機械的性質、電気的性質、耐熱性、流動性、耐溶剤性および耐油性を損なうことなく、特に、難燃性および成形品表面の著しく改善された難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂および(C)相溶化剤とエラストマーとからなる樹脂組成物に、種々の難燃剤と難燃助剤を種々の比率で配合し研究を重ねた。その結果、前記樹脂組成物に、前記一般式「化1」で示される難燃剤と四酸化アンチモンを組み合わせて配合した場合のみ、機械的性質、電気的性質、耐熱性、流動性、耐溶剤性および耐油性を損なうことなく、難燃性および成形品表面の著しく改善された難燃性樹脂組成物が得られることを見出だし、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、(A)ポリフェニレンエーテル30〜70重量部、(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂30〜70重量部、(C)相溶化剤0.1〜5重量部、(D)「化1」で示される難燃剤3〜20重量部、(E)四酸化アンチモン0.5〜10重量部および(F)エラストマー2〜20重量部を溶融混練してなる難燃性樹脂組成物である。
【0007】本発明に使用出来るポリフェニレンエーテルは、例えば公開特許公報昭63−286464に記載されている方法に準じて製造できる。特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン) エーテル、2,6−ジメチル−1,4−フェノール/2,3,6−トリメチル−1,4−フェノール共重合体および前二者にそれぞれスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、および前二者にそれぞれスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,6−ジアリル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2−メチル−6−アリル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン) エーテル、ポリ(2,3,5,6−テトラブロモ−1,4−フェニレン) エーテル等、あるいはそれらの混合物が本発明に用いられる。本発明に好適なポリフェニレンエーテルの極限粘度は25℃クロロホルム溶液で測定し、0.60〜0.30dl/gの範囲にあるのが好ましい。極限粘度が0.60dl/gより高いと組成物の溶融粘度が高くなり、バーフロー値が低下して、特に大型薄肉成形品の成形が困難になる。逆に、極限粘度が0.30dl/gより低くなると機械的強度の低下が大きく、実用成形品としての価値を損なうので、本発明の樹脂組成物には使用できない。
【0008】本発明に使用できる(B)ナイロンは、4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン、6,10−ナイロン、テレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンからのナイロン、アジピン酸とメタキシリレンジアミンからのナイロン、アジピン酸とアゼライン酸および2,2−ビス(P−アミノシクロヘキシル)プロパンからのナイロン、テレフタル酸と4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタンからのナイロンなどが挙げられる。
【0009】本発明に使用される(B)ポリカーボネートは、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下、二価フェノール系化合物およびホスゲンと反応させた後、第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩などの重合触媒を添加して重合させる界面重合法や、二価フェノール系化合物をピリジンまたはピリジンおよび不活性溶媒の混合溶液に溶解し、ホスゲンを導入し直接ポリカーボネートを製造するピリジン法等、従来のポリカーボネート製造法により得られるものが使用される。上記の反応に際し、必要に応じて、分子量調節剤、分岐化剤などが使用される。特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAを出発原料とした粘度平均分子量12000〜35000のものである。ポリカーボネートの粘度平均分子量が12000より低いと組成物の機械的性質が低下し、35000を越えると溶融粘度が高くなり、成形が困難になるので好ましくない。
【0010】本発明に使用される(B)ポリフェニレンサルファイドは、一般式
【化2】


で示される構成単位を70モル%以上含むものが、物性の優れた樹脂組成物を製造するうえで好ましい。ポリフェニレンサルファイドの重合法は、パラジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、パラクロルチオフェノールの自己縮合などが挙げられるが、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとパラジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。この際に、重合度を調整するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加することは好ましい方法である。
【0011】共重合成分として30モル%未満であれば、一般式「化3」〜「化7」により示される構成単位を含有しても、ポリマーの結晶性に大きく影響しない範囲であれば本発明の難燃性樹脂組成物に使用できるが、好ましくは共重合成分は10モル%以下である。
【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【0012】本発明には通常公知の(C)相溶化剤が使用できるが、好ましい相溶化剤は、分子内にカルボキシル基2個と二重結合または水酸基1個を含有する化合物、またはそれらの化合物の誘導体を使用できる。特に好ましい相溶化剤としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、アセトキシコハク酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラマル酸、ヒドロキシグルタル酸、ブロモコハク酸、クロロコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、および特願平5−224591記載の変性芳香族炭化水素・ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。
【0013】本発明においては、(D)前記一般式「化1」で示される難燃剤を必須の要件とする。かかる難燃剤は、特公平5−47586において、スチレン系樹脂およびポリエステル樹脂に対する難燃剤として開示されているもので、公知のハロゲン置換ポリカーボネートオリゴマーの製法に準じて製造することができる。その際に使用されるビスフェノールの具体例としては、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルフォンなどを挙げることができる。これらのビスフェノールは2種以上を混合して使用しても良い。また、末端停止剤の具体例としては、n−オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、ノニルフェノール、ラウリルフェノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノールなどを挙げることができる。平均重合度が2未満では臭素の含有率が低いので、多量の難燃剤が必要となり結果として得られる難燃性樹脂組成物の耐熱性や、機械的性質が大幅に低下しやすくなる。また、nが10を越えるときは、難燃剤の分散が不均一になり、難燃性能のばらつきが大きくなる。
【0014】本発明に使用される(E)難燃助剤は、四酸化アンチモンに限定される。すなわち、一般的に広く使用されている三酸化アンチモンや五酸化アンチモンを難燃助剤として難燃剤と併用すると、難燃剤のカーボネート結合の分解がおこり、成形品表面に銀条が発生したり、機械的性質が大幅に低下するので使用できない。これに対し、四酸化アンチモンを難燃助剤として使用した場合に限り、難燃性樹脂組成物を過酷な成形条件(例えばシリンダー設定温度を高く、シリンダー内での樹脂の滞留時間を長く)で成形しても、成形品表面には銀条の発生もなく綺麗で、機械的性質の低下も認められない。
【0015】本発明に使用される(F)エラストマーは、難燃性樹脂組成物の衝撃強度を改良するものであり、次のようなゴム質重合体が例示される。すなわち、ポリブタジエン、SBR、EPDM、EVA、ポリアクリル酸エステル、ポリイソプレン、水添イソプレン、アクリル系エラストマー、ポリエステル・ポリエーテルコエラストマー、東レからペバックスの商品名で販売されているようなPA系エラストマー、大日本インキ化学からグリラックスAの商品名で販売されているようなPA系エラストマー、エチレン・ブテン1共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボネン共重合体、熱可塑性ポリエステルエラストマー、シェル化学からクレイトンGの商品名で販売されているような水添SEBSエラストマー、三井石油化学からタフマーの商品名で販売されているようなエチレン−αオレフィンコポリマーおよびプロピレン−αオレフィンコポリマー、三井・デュポンポリケミカル社から販売されているようなエチレンメタクリル酸系特殊エラストマー、武田薬品からスタフロイドの商品名で販売されているようなコア層がゴム質でシェル層が硬質樹脂からなるコア・シェルタイプのエラストマー、クレハ化学からパラロイドEXLの商品名で販売されているようなアクリル系(反応タイプ)のエラストマー、MBS系エラストマーやクレハBTAエラストマー、三菱レイヨンからメタブレンSの商品名で販売されているようなコア・シェルタイプのエラストマーなどが使用できる。同じく三菱レイヨンから販売されているようなコア層がシリコンゴム、シェル層がアクリルゴムまたはアクリル樹脂からなるコア・シェルタイプのエラストマーで、グレード名S2001またはRK120などが添加できる。さらにクラレからセプトンの商品名で販売されているようなポリスチレン相と水素添加ポリイソプレン相からなるジブロック、またはトリブロック共重合体も使用できる。
【0016】本発明の難燃性樹脂組成物の配合比率は、(A)ポリフェニレンエーテル30〜70重量部、(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂30〜70重量部、(C)相溶化剤0.1〜5重量部、(D)「化1」で示される難燃剤3〜20重量部、(E)四酸化アンチモン0.5〜10重量部および(F)エラストマー2〜20重量部である。
【0017】(A)ポリフェニレンエーテルと(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂の比率において、ポリフェニレンエーテルが30重量部より低いと荷重撓み温度の低下が大きくなり、70重量部より高くなると溶融粘度が高く、耐溶剤性および耐油性が低下し好ましくない。
(C)相溶化剤が0.1重量部以下では、ポリフェニレンエーテルとナイロン、ポリカーボネートおよびポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂の分散状態が安定せず、成形品の層状剥離や機械的性質の低下を引き起こすので好ましくない。一方、相溶化剤が5重量部以上になると、滞留熱安定性が低下し、さらには溶融混練機や射出成形機のシリンダーやスクリューの腐食を生じるので避けなければならない。
(D)「化1」で示される難燃剤が3重量部より少ないと、難燃効果が不十分となり、逆に20重量部を越えるとアイゾット衝撃強度などの機械的性質の低下が大きく、本発明の目的を達成しない。
(E)四酸化アンチモンが0.5重量部より低いと難燃助剤としての効果が小さく、10重量部を越えるとアイゾット衝撃強度などの機械的性質の低下が大きく好ましくない。
(F)エラストマーが2重量部より低いと耐衝撃性の改良効果が小さく、20重量部を越えると弾性率などが低下するので使用できない。
【0018】本発明の樹脂組成物の機械的強度、剛性、寸法安定性改良のため、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維クロス、ガラス繊維マット、グラファイト、炭素繊維、炭素繊維クロス、炭素繊維マット、カーボンブラック、炭素フレーク、アルミ、ステンレス、真鍮および銅から作った金属繊維や金属フレーク、金属粉末、有機繊維、針状チタン酸カリウム、マイカ、タルク、クレー、(針状)酸化チタン、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、から選ばれた1種以上の強化剤を添加しても良い。剛性・強度を上げて、さらに成形品の外観や平滑性を向上するためには、繊維の径を細くするのが好ましい。繊維径の細いガラス繊維としては、日本無機製のE−FMW−800(平均繊維径0.8μm)やE−FMW−1700(平均繊維径0.6μm)を例示できる。
【0019】上記強化剤の表面を公知の表面処理剤、例えばビニルアルキルシラン、メタクリロアルキルシラン、エポキシアルキルシラン、アミノアルキルシラン、メルカプトアルキルシラン、クロロアルキルシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートのようなチタネート系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤などで表面処理を行っても良い。さらに繊維類の集束剤として、公知のエポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、スチレン系などの集束剤で集束しても良い。
【0020】本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤としてトリフェニルフォスフェートやトリクレジルフォスフェート、あるいはそれらの重縮合体、または赤リンのような公知のリン化合物を添加できる。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、公知のフェノール系、フォスファイト系、チオエーテル系、ヒンダードフェノール系、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの熱および酸化防止剤を用いることができる。さらに必要に応じて、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤なども添加することができる。
【0021】本発明の樹脂組成物は、一般に熱可塑性樹脂組成物の製造に用いられる設備と方法により製造することができる。例えば、本発明の樹脂組成物を構成する成分を一括して溶融混練しても良く、あるいはポリフェニレンエーテルと相溶化剤を溶融混練した後、残りの成分を加えて溶融混練することもできる。さらには、ポリフェニレンエーテルと相溶化剤とエラストマーを溶融混練後、残りの成分を加えて溶融混練しても良い。溶融混練には一軸または二軸の押出機が好適に使用できる。
【0022】本発明の樹脂組成物は、機械的性質、電気的性質、耐熱性、流動性、耐溶剤性および耐油性を損なうことなく、特に難燃性や成形品外観が改善されているので、射出成形、押出成形、ブロー成形なども可能で、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、建築部品、家庭用雑貨など幅広い分野に使用できる。
【0023】
【実施例】次の実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例と比較例における試験片の成形方法、試験方法は次の通りである。
(1)使用原材料ポリフェニレンエーテル(PPE)は三菱ガス化学製で25℃クロロホルム中の極限粘度が0.45dl/gのものを使用した。6ナイロンは東レ製アミランCM1017を使用した。ポリカーボネート(PC)は三菱ガス化学製で粘度平均分子量20000のものを使用した。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、大日本インキ化学製DSP・B−100を使用した。相溶化剤は試薬一級のイタコン酸を使用した。難燃剤は、重合度3、5、9、および比較のために20のP−ノニルフェニル末端ポリ[2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンカーボネート(3難燃剤、5難燃剤、9難燃剤、および20難燃剤)を、また、比較のために重合度5でパラターシャリーブチルフェノール末端のポリ[2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンカーボネート](比較難燃剤)使用した。難燃助剤として日本精鉱製四酸化アンチモンを、比較のために試薬一級三酸化アンチモンを使用した。衝撃改良剤としては、シェル化学製SEBS・クレイトンG1501(SEBS)を使用した。
【0024】(2)組成物の混練条件と試験片の成形条件表1と表2に示した量のポリフェニレンエーテル、SEBS、イタコン酸をシリンダー設定温度280〜320℃で、スクリュー径30mmの二軸押出機により溶融混練しペレットを製造した。このペレットに表1と表2の残りの成分を追加して混合後、シリンダー設定温度270℃〜300℃で、スクリュー径30mmの二軸押出機により溶融混練しペレットを製造した。このペレットを100℃で5時間乾燥後、住友重機械製SG125型射出成形機により金型温度100℃、シリンダー設定温度280℃、射出圧力98MPaで、ASTM−D638規定タイプ1の3.2mm厚引張試験片を成形した。引張試験片と同一条件で、63.5×12.7×3.2mmのアイゾット衝撃試験片、127×12.7×3.2mmの燃焼試験片を成形した。
【0025】(3)引張強さと破断伸びASTM−D638に準じ、引張速度5mm/分、試験温度23℃で5本試験を行い、5本の平均の引張強さ(単位はMPa)と破断伸び(単位は%)を求めた。
【0026】(4)アイゾット衝撃強度測定法(単位はJ/m)
ASTM−D256に準じ、試験片厚み3.2mmの試験片に0.25Rのノッチを切削加工により切り込み、23℃で5本づつ測定し、5本の平均値で示した。
【0027】(5)燃焼試験UL規格94号に準じ、5本の試験片を用い垂直燃焼試験を行った。
【0028】(6)外観判定燃焼試験片5本の表面を目視観察し、5本とも銀条発生のないものをA、5本中1本微小な銀条の発生したものをB、5本中2本以上微小な銀条の発生したものまたは5本中1本小さな銀条の発生したものをC、5本中2本以上小さな銀条の発生したものD、5本中1本以上大きな銀条の発生したものEと判定した。
【0029】実施例1〜7表1に樹脂組成物を構成する各成分の配合比率(重量部)および測定結果を示す。
比較例1〜7表2に樹脂組成物を構成する各成分の配合比率(重量部)および測定結果を示す。
【0030】
【発明の効果】本発明の難燃性樹脂組成物は、機械的性質、成形時の流動性、耐熱性、耐溶剤性を損なうことなく、特に成形品外観および難燃性の著しく改善されているので、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、建築部品、家庭用雑貨など幅広い分野で使用できる。
【0031】
【表1】
実施例[配合] 1 2 3 4 5 6 7PPE 35 35 50 50 50 65 656ナイロン 65 65 50 30 35PC 30PPS 20 20 35イタコン酸 2 0.2 0.5 3 1 1 0.73難燃剤 15 155難燃剤 10 109難燃剤 10 5 4四酸化アンチモン 3 3 2 3 2 1 2SEBS 7 7 4 7 7 2 7[性質]
引張強さ 60 63 55 52 69 67 65破断伸び 56 34 46 43 30 35 43IZ 210 180 210 190 210 130 160UL94 V−0 V−0 V−0 V−0 V−1 V−1 V−O燃焼性成形品外観 A A A A A A A
【0032】
【表2】
比較例[配合] 1 2 3 4 5 6 7PPE 35 35 50 50 50 65 656ナイロン 65 65 50 50PC 30 35PPS 20 35イタコン酸 0.2 0.5 3 1 1 0.75難燃剤 15 15 5 20難燃剤 15 10比較難燃剤 10四酸化アンチモン 3 3 3三酸化アンチモン 3 2 3 2SEBS 7 7 4 7 7 2 7[性質]
引張強さ 37 63 53 42 69 55 54破断伸び 3 14 39 23 30 21 19IZ 20 60 70 70 60 40 70UL94燃焼性 V−0 V−0 V−0 V−0 V−2 HB V−O成形品外観 B A D B C E C

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリフェニレンエーテル30〜70重量部、(B)ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種以上の樹脂30〜70重量部、(C)相溶化剤0.1〜5重量部、(D)「化1」で示される難燃剤3〜20重量部、(E)四酸化アンチモン0.5〜10重量部および(F)エラストマー2〜20重量部を溶融混練してなる難燃性樹脂組成物。
【化1】


[式中、Xは炭素数8〜30の脂肪族炭化水素残基であり、Yは炭素数1〜6の二価の脂肪族炭化水素残基、オキシ基、カルボニル基、スルフォニル基、チオ基でありnは2〜10である]