説明

難着雪リングの撤去装置および難着雪リングの撤去工法

【課題】所定の間隔を開けて電線に装着されている複数の難着雪リングを電線から簡単に取り外すと共に、電線から取り外した難着雪リングが落下してしまう事態の発生を確実に阻止した難着雪リングの撤去装置および難着雪リングの撤去工法を提供する。
【解決手段】本発明に係る難着雪リングの撤去装置は、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の間隔を開けて電線に装着されている複数の難着雪リングを電線から簡単に取り外すと共に、電線から取り外した難着雪リングが落下してしまう事態の発生を確実に阻止した難着雪リングの撤去装置および難着雪リングの撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電線においては、雪の付着を防止するために、リング状に形成された複数の難着雪リングが、所定の間隔を開けて電線に装着されている。
【0003】
そして、近年において、送電線路の老巧化や送電容量の不足等を解消する対策として、既設送電線の張替工事が行われている。この既設送電線の張替工事においては、電線を撤去するに際し、送電線上に所定の間隔を開けて装着されている難着雪リングを撤去する必要がある。
【0004】
この難着雪リングを撤去する工事の途中においては、難着雪リングの欠損割れ等の現象により、難着雪リングの破片が空中に飛散して落下し、公衆災害につながる虞れがある。
【0005】
このような事態の発生を阻止するため、図10に示すように、宙乗機Tに落下防止用の保護ネットQを取り付けたものが使用されている。具体的には、工事作業員が鉄塔に登って、鉄塔間に架設された既設送電線に対し、前後一対の移動用滑車Rにより移動が可能である宙乗機Tが設置される。この宙乗機Tの下方に、難着雪リングPの落下防止用の保護ネットQが配置されている。
【0006】
そして、保護ネットQを下方に配置した状態において、ペンチ等の破断用工具を用いて難着雪リングPを片方の手で捩りながら拡げるか、打撃を加えて難着雪リングPを電線Sから強制的に取り外した後、ロープを介して宙乗機Tに吊り下げている袋6Aに、この取り外した難着雪リングPを収容していた。このような作業を送電線路に沿って連続して行い、既設送電線路から全ての難着雪リングPを撤去してから、新しい送電線の張替工事が実施されるのである。
【0007】
また、従来においては、特許文献1,2,3に開示されているような難着雪リングの取り外し装置が存在し、電線Sを巻き取り可能なウインチを使用して電線Sを巻き取る前に難着雪リングPを撤去する手法がある。
【0008】
すなわち、特許文献1の装置を用いた手法は、電線Sに外嵌めした難着雪リングPをその肉厚を切断して電線Sから除去するものであって、電線Sとの接触により回転力を与えられる難着雪リングPの切断刃を、電線Sの周りで4個以上電線Sの中心から放射状に向けて取り付け、難着雪リングPの肉厚の切断を可能としたものである。
【0009】
また、特許文献2の装置を用いた手法は、間隔を開けて多数の難着雪リングPを嵌めた既設の電線Sをその一端箇所でウインチ等で引っ張り、回収するに際し、これらの回収箇所の電線Sに張力がかかった適宜箇所で、電線Sの移動方向に平行な刃で各難着雪リングPの外周に切り込みを入れ、その後方で各難着雪リングPに衝撃を与えて電線Sから各難着雪リングPを外すものである。
【0010】
さらに、特許文献3の装置を用いた手法は、軸心部に電線Sの通し穴を有する後部円板と、軸心部に難着雪リングの通過穴を有する前部円板を備え、電線Sに対して後部円板が移動され又は引留められた後部円板に対して電線Sが移動されたときに、第1のくさびと第2のくさびにより、難着雪リングを電線Sから離脱させるものである。
【特許文献1】特開平7−111715号公報
【特許文献2】特開平5−252625号公報
【特許文献3】特開平5−211707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1,2の装置を用いた手法は、鉄塔の腕金に金車を取り付けて電線Sを巻き取る際に、金車部分で劣化した難着雪リングPが大きな張力により破損して落下し、公衆災害を引き起こす可能性が高い。
【0012】
また、市街地や、人・車等の通行があるような経過地では、鉄塔間に設置される吊金車を難着雪リングPが通過するときに難着雪リングPが落下してしまうため、難着雪リングPの取り外し装置としては役に立たず、一般的には採用されていない。
【0013】
さらに、特許文献3を用いた手法も、電線Sから外した難着雪リングPが落下してしまうため、人・車等の通行があるような経過地では、その実施が困難であった。
【0014】
この他、いずれの手法においても、巻き取られた電線Sに傷が付き易いため、当該電線Sの再利用も不可能になっていた。加えて、従来の装置を用いた手法は、人力による撤去のため難着雪リングPを取り外す速度が遅く、工事量が多いときには工期が長くなり、送電を停止する工事等では長期間の停止を確保しなければ実施できなかった。
【0015】
一方、作業員が鉄塔に登って電線Sの難着雪リングPを直接撤去する場合には、構造的に難着雪リングPが容易に外れない状態となっているため、その撤去作業時には、ペンチ等の工具により難着雪リングPを強制的に捩ったり、叩いたりして難着雪リングPを取り外さなければならず、この過程において、難着雪リングPの破片が空中に飛散する事態が生じていた。
【0016】
また、取り外した難着雪リングPを手で掴みながら袋6Aに回収する過程において、強風等の不可抗力により難着雪リングPが地上に落下してしまうことも多い。
【0017】
このように、従来の既存技術として、難着雪リングPを撤去する時に取り外した難着雪リングPが地上に落下する事態の発生を確実に阻止できる装置と工法が存在しないこと、また、電線Sの劣化による電線張替工事が今後も増大することから、いかなる周辺環境においても難着雪リングPを落下させずに容易に撤去することのできる装置と工法の開発が強く望まれていた。
【0018】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、例えば、市街地や、人・車等の通行があるような経過地等のいかなる周辺環境においても難着雪リングPを落下させずに容易に撤去することのできる、難着雪リングPの撤去装置および難着雪リングPの撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る難着雪リングの撤去装置は、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与することで、上述した課題を解決した。
【0020】
また、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、チェーン体の凸部を支点として、
操作ロッドの凹部により難着雪リングに破断力を付与することで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
さらに、操作ロッドは、移動筐体内において、一端が枢着部を介して回動可能に支持され、他端が押さえバネによりチェーン体の凸部側へ向けて電線を押圧していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
また、電線に沿った移動筐体の移動に伴い、操作ロッドは難着雪リングに当接し、押さえバネの押圧力に抗して下方側へ移動しながら難着雪リングを凹部内に導入することで、同じく上述した課題を解決した。
【0023】
加えて、チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、チェーン体の凸部が電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0024】
また、チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、アーム側に配された上側の走行用支持ローラが電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0025】
この他、移動筐体は、電線と、電線に装着している難着雪リングを覆うように配置され、破断した難着雪リングの飛散を防止できるようにスリット部を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0026】
また、移動筐体は、全体が所定のカバーにより覆われていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0027】
さらに、移動筐体の下部に、破断した難着雪リングを回収するダクトを備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0028】
また、移動筐体は、自走機構を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
加えて、多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動筐体を、2個以上連結していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0030】
また、移動筐体を、宙乗機に設置したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
この他、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備え、回転軸部を介して互いに開閉可能である第1アーム、第2アームのそれぞれから成る移動アーム体と、第1アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体と、当該チェーン体に正対して、第2アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体とを備え、電線に装着している難着雪リングの一端をいずれか一方のチェーン体の凸部間に導入し、難着雪リングの他端を他方のチェーン体の凸部間に導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与することで、同じく上述した課題を解決した。
【0032】
また、第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転することで、同じく上述した課題を解決した。
【0033】
さらに、移動アーム体は、自走機構を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0034】
また、両チェーン体は、互いに閉じられた状態で、凸部が電線に対して所定の力で圧接するよう、両アーム間に押圧調整部を設けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0035】
加えて、多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動アーム体を、2個以上連結していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0036】
また、移動アーム体を、宙乗機に設置したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0037】
この他、チェーン体は、逆転防止用のラチェット機構部を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0038】
一方、本発明に係る難着雪リングの撤去工法は、操作ロッドとチェーン体を備えた移動筐体を電線に取り付け、チェーン体が備えている複数の凸部もしくは走行用支持ローラと、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、電線に沿って移動筐体を移動させ、難着雪リングの一部を操作ロッドの凹部内に導入し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与することで、同じく上述した課題を解決した。
【0039】
また、操作ロッドとチェーン体を備えた移動筐体を電線に取り付け、チェーン体が備えている複数の凸部もしくは走行用支持ローラと、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、電線に沿って移動筐体を移動させ、難着雪リングの一部を操作ロッドの凹部内に導入し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、チェーン体の凸部を支点として、操作ロッドの凹部により難着雪リングに破断力を付与することで、同じく上述した課題を解決した。
【0040】
さらに、移動アーム体を走行用支持ローラを介して電線に取り付けて電線に沿って移動させ、第1アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの一部を導入し、第2アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与することで、同じく上述した課題を解決した。
【0041】
また、第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転することで、同じく上述した課題を解決した。
【0042】
加えて、チェーン体は、ラチェット機構部により逆転が防止されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0043】
また、移動筐体と移動アーム体は、自走機構により電線に沿って移動することで、同じく上述した課題を解決した。
【0044】
この他、破断した難着雪リングを、ダクトを介して袋に回収することで、同じく上述した課題を解決した。
【0045】
以上のように構成された本発明に係る難着雪リングの撤去装置および難着雪リングの撤去工法にあっては、チェーン体の複数の凸部と、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、チェーン体、操作ロッドのそれぞれから成る移動筐体を電線に沿って移動させる。
【0046】
この移動筐体の移動に伴って、電線に装着している難着雪リングの一部を、操作ロッドの凹部に導入する。これと同時に、チェーン体が回転し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入する。
【0047】
そして、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングを捻るように破断させる。この破断した難着雪リングは、ダクトを介して袋に回収する。
【0048】
また、移動アーム体を走行用支持ローラを介して電線に取り付けて電線に沿って移動させる。このとき、第1アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの一部を導入する。また、第2アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、両チェーン体により難着雪リングを捻るように破断させる。
【発明の効果】
【0049】
本発明は、以上のように構成されているために、例えば、市街地や、人・車等の通行があるような経過地等のいかなる周辺環境においても、難着雪リングを落下させずに容易に撤去することができ、しかも、撤去作業を安全且つ確実に行うことができる。また、難着雪リングが地上に落下する事態が物理的に発生しないため、地上における人や建造物、車両等への難着雪リングの衝突が皆無となり、安全性の確保向上が図れ、公衆災害の未然防止が確実に達成されるものとなる。
【0050】
これは、本発明が、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与するからであり、これにより、難着雪リングの撤去作業を安全且つ確実に行うことができ、しかも、電線に損傷を与えることなく難着雪リングの撤去が可能となる。
【0051】
また、操作ロッドは、移動筐体内において、一端が枢着部を介して回動可能に支持され、他端が押さえバネによりチェーン体の凸部側へ向けて電線を押圧しているので、移動筐体の電線に沿った移動に伴い、操作ロッドは難着雪リングに当接し、押さえバネの押圧力に抗して下方側へ移動しながら難着雪リングをスムーズに凹部内に導入することができる。
【0052】
そして、互いに逆行する操作ロッドとチェーン体とにより、難着雪リングに捻り破断力を付与し、電線から難着雪リングを容易に撤去することができ、しかも、電線における難着雪リングの撤去作業を連続して行うことができる。
【0053】
さらに、チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、チェーン体の凸部が電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えたので、電線に対するチェーン体の凸部による保持が確実に行なわれ、移動筐体の移動に伴う操作ロッドの移動により、電線に装着された難着雪リングに対する破断力を容易に付与することができる。
【0054】
また、チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、アーム側に配された上側の走行用支持ローラが電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えたので、電線に対する移動筐体による保持が確実に行なわれ、電線に装着された難着雪リングに対する破断力を容易に付与することができる。
【0055】
加えて、移動筐体は、電線と、電線に装着している難着雪リングを覆うように配置され、破断した難着雪リングの飛散を防止できるようにスリット部を備えているので、電線から取り外した難着雪リングや、破断した難着雪リングの破片の飛散を確実に防止できる。
【0056】
この他、移動筐体は、全体が所定のカバーにより覆われているので、破断した難着雪リングの破片の装置内への進入を阻止すると共に、破片の飛散も確実に防止できる。
【0057】
また、移動筐体の下部に、破断した難着雪リングを回収するダクトを備えているので、電線から取り外した難着雪リングや、破断した難着雪リングの破片を確実に回収することができる。
【0058】
さらに、移動筐体は、自走機構を備えているので、作業員の手を介さずに、電線上において自動的に難着雪リングを連続して回収することができ、作業効率と作業の安全性が向上する。
【0059】
また、多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動筐体を2個以上連結しているので、電線のサイズや本数等に限定されることなく、難着雪リングの撤去が可能となり、作業効率が向上する。
【0060】
加えて、切断筐体を、宙乗機に設置したので、難着雪リングの連続した撤去が可能となり、作業効率と作業の安全性が向上する。
【0061】
この他、電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備え、回転軸部を介して互いに開閉可能である第1アーム、第2アームのそれぞれから成る移動アーム体と、第1アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体と、当該チェーン体に正対して、第2アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体とを備え、電線に装着している難着雪リングの一端をいずれか一方のチェーン体の凸部間に導入し、難着雪リングの他端を他方のチェーン体の凸部間に導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与することにより、電線から難着雪リングを容易に撤去することができ、しかも、難着雪リングに対して、捻り効率の高い破断力を容易に付与することができる。
【0062】
また、第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転するので、難着雪リングに対して異なる方向への力が作用し、難着雪リングに対して、捻り効率の高い破断力を容易に付与することができる。
【0063】
さらに、移動アーム体は、自走機構を備えているので、作業員の手を介さずに、電線上において自動的に難着雪リングを連続して回収することができ、作業効率と作業の安全性が向上する。
【0064】
また、両チェーン体は、互いに閉じられた状態で、凸部が電線に対して所定の力で圧接するよう、両アーム間に押圧調整部を設けたので、電線に対する両チェーン体の凸部による保持が確実に行なわれ、移動筐体の移動に伴い互いに逆回転する両チェーン体により、電線に装着された難着雪リングに対する破断力を容易に付与することができる。
【0065】
加えて、多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動アーム体を2個以上連結しているので、電線のサイズや本数等に限定されることなく、難着雪リングの撤去が可能となり、作業効率が向上する。
【0066】
また、移動アーム体を、宙乗機に設置したので、難着雪リングの連続した撤去が可能となり、作業効率と作業の安全性が向上する。
【0067】
この他、チェーン体は、逆転防止用のラチェット機構部を備えているので、難着雪リングの捻り破断に対する反作用により、当該チェーン体が逆転してしまう事態の発生を確実に阻止することができる。
【0068】
一方、本発明に係る難着雪リングの撤去工法は、操作ロッドとチェーン体を備えた移動筐体を電線に取り付け、チェーン体が備えている複数の凸部もしくは走行用支持ローラと、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、電線に沿って移動筐体を移動させ、難着雪リングの一部を操作ロッドの凹部内に導入し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与するので、難着雪リングの撤去作業を安全且つ確実に行うことができ、しかも、電線に損傷を与えることなく難着雪リングの撤去が可能となる。
【0069】
また、移動アーム体を走行用支持ローラを介して電線に取り付けて電線に沿って移動させ、第1アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの一部を導入し、第2アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与するので、難着雪リングの撤去作業を安全且つ確実に行うことができ、しかも、電線に損傷を与えることなく難着雪リングの撤去が可能となる。
【0070】
さらに、第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転するので、難着雪リングに対して異なる方向への力が作用し、難着雪リングに対して、捻り効率の高い破断力を容易に付与することができる。
【0071】
また、チェーン体は、ラチェット機構部により逆転が防止されているので、難着雪リングの捻り破断に対する反作用により、当該チェーン体が逆転してしまう事態の発生を確実に阻止し、難着雪リングに対して、捻り効率の高い破断力を常に維持することができる。
【0072】
この他、移動アーム体と移動アーム体は、自走機構を備えているので、作業員の手を介さずに、電線上において自動的に難着雪リングを連続して回収することができ、作業効率と作業の安全性が向上する。
【0073】
また、破断した難着雪リングを、ダクトを介して袋に回収するので、電線から取り外した難着雪リングや、破断した難着雪リングの破片の飛散を防止して、難着雪リングを確実に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。図に示される符号1は、所定の間隔を開けて複数の難着雪リングPを装着している電線Sから、それぞれの難着雪リングPを取り外すための、難着雪リングPの撤去装置本体である。
【0075】
この撤去装置本体1は、図1・図2(a)(b)に示すように、電線Sに沿って移動可能である移動筐体2と、移動筐体2の移動に伴って、難着雪リングPの一部を導入する凹部4Aを備えた操作ロッド4と、当該操作ロッド4に正対して、リンクチェーン12の各凸部3Aの間に難着雪リングPの他の一部を導入するチェーン体3とから概ね構成されている。
【0076】
また、図3(a)(b)に示すように、電線Sがチェーン体3の下側にくる複数の凸部3Aと、操作ロッド4の凹部4A側とにより挟持された状態で、移動筐体2を移動させる。
【0077】
すると、電線Sに沿った移動筐体2の移動に伴い、難着雪リングPの一部を操作ロッド4の凹部4A内に導入し、チェーン体3の回転により、隣り合う凸部3A間に、電線Sに装着している難着雪リングPの他の一部を導入する。
【0078】
そして、操作ロッド4の凹部4Aを支点として、チェーン体3の凸部3Aにより難着雪リングPに破断力を付与するものである。
【0079】
このとき、移動筐体2と一体となって移動する操作ロッド4(凹部4A)の移動方向と、凹部4Aに対向するチェーン体3の下側に位置する凸部3Aの移動方向は、互いに逆方向に作動するようになっている。
【0080】
尚、電線Sを保持している凸部3Aを介してチェーン体3が回転することで、隣り合う凸部3A間に、電線Sに装着している難着雪リングPの一部を導入し、且つ電線Sに沿った移動筐体2の移動に伴い、難着雪リングPの他の一部を操作ロッド4の凹部4A内に導入し、凸部3Aを支点として操作ロッド4の凹部4Aで難着雪リングPを捻り破断するものであっても良い。
【0081】
また、操作ロッド4における凹部4Aの相対向する上端の角縁辺部のそれぞれには、電線Sの傷付き防止用と、凹部4Aに難着雪リングPを挿入し易くするために複数の玉部材4Bが、縁辺部に沿って互いに隣接するように付設されている。
【0082】
移動筐体2の後部側下面に一体突設された取付孔を有する連結金具5には、図3(a)(b)に示すように、電線Sに沿って走行する駆動用モータ(図示せず)を内蔵したボックス状の自走機構Vを、連繋アームLを介して連繋させることで、移動筐体2自体を電線Sに沿って自動的に移動できるように構成している。
【0083】
この移動筐体2、チェーン体3、操作ロッド4のそれぞれから成る撤去装置本体1は、例えば、宙乗機Tの一対の移動用滑車Rの前側に設置しても良い。あるいは、撤去装置本体1を鉄塔等に固定しておき、電線Sを移動させることにより難着雪リングPを捻り破断するようにしても良い。また、操作ロッド4の位置する移動筐体2の内底側には、破断した難着雪リングPを回収するためのダクト6を設けている。このダクト6の先端部は、例えば、ロープを介して宙乗機Tに取り付けている袋6A内に入れてある。
【0084】
さらに、電線Sの本数に対応して、前記移動筐体2、チェーン体3、操作ロッド4のそれぞれから成る撤去装置本体1を、多重連結構造としても良い。すなわち、2本以上の電線Sに装着している難着雪リングPを一度に破断するために、撤去装置本体1を、2個以上連結して構成する。例えば、2本、4本、6本、8本といった多導体から成る電線Sの本数に対応して、撤去装置本体1を2重連結構造、4重連結構造、6重連結構造、8重連結構造とする場合は、連繋部材により移動筐体2同士を連結すれば良い。このとき、例えば、4本の電線Sである場合には、当該電線Sは正方形の頂点に位置するように配置されているため、1つのコーナー位置にある撤去装置本体1を操作・移動させることで、他の3つのコーナーに位置する撤去装置本体1が同時に動作する構成とする。
【0085】
電線Sに装着している難着雪リングPは、肉薄で略W字形に折曲した撓曲可能なヒンジ部と、ヒンジ部を介して左右に拡開可能とした左右一対の半円状の挟持片部と、電線Sを挟み込んだ状態で挟持片部の開放先端部同士を嵌合させるための突起・溝部のそれぞれによる、所謂、パッチン止め式の嵌合部とを備え、電線Sに取り付ける前には、全体が略Cリング状に形成されている。
【0086】
この難着雪リングPは、一般的には、耐熱性プラスチック系樹脂、ポリカーボネート成型材料等により形成されているが、これに限定されることはなく、どの様な材料により形成するものであっても差し支えない。難着雪リングPの抵抗値は、例えば、約100MΩ以下とし、また、難着雪リングPを電線Sに取り付けたときに線条方向に対して所定の把持力を備えるものである。この把持力は、通常は、約29.4N(3kgf)程度以上となるように設定されているが、これに限定されることはなく、どの様な把持力であっても差し支えない。
【0087】
移動筐体2は、図1・図2(a)(b)に示すように、電線Sと、電線Sに装着している難着雪リングPを覆うように略コ字形状の箱枠体により形成されている。また、破断した難着雪リングPの飛散を防止できるように箱枠体の前側にはスリット部7を装備し、移動筐体2の下部には、破断した難着雪リングPを回収するためのダクト6設けている。
【0088】
このダクト6の真上側には、操作ロッド4の凹部4Aが位置するようにしてある。また、移動筐体2の内部におけるダクト6の前後位置には、操作ロッド4を挟み込むようにして傾斜面状の左右一対の仕切部8が設けられている。さらに、移動筐体2の後方側における前後対称位置には、移動筐体2自体が電線Sに沿って移動可能となるよう、走行用支持ローラ9を備えている。この走行用支持ローラ9は、電線Sの外径に対応して、中間がV字状にくびれた略鼓形状に形成されている。
【0089】
チェーン体3は、図3(a)(b)に示すように、移動筐体2に対し開放可能となるように、移動筐体2に回動可能に枢着されたアーム10の先端に配置されている。すなわち、後側の走行用支持ローラ9を回動可能となるように支承させている回転不能な支軸の両側に形成されたネジ部を移動筐体2の左右壁面から突出させ、略中央が鈍角に屈曲して成る左右一対のアーム10の後端部に形成された孔部に前記ネジ部を挿入してから外側から蝶ナットをねじ込んで固定している。そして、両アーム10の先端側で当該両アーム10により挟み込まれるように、前後一対のスプロケット11が回転可能に枢着され、この両スプロケット11に、リンクチェーン12が巻架されている。
【0090】
この前側に位置するスプロケット11の側面には、図1・図3(a)に示すように、ラチェット機構部13としてのラチェットギアが同軸となるように固着され、アーム10に取り付けられたフックをラチェットギアに弾発的に噛合すべく付勢させておくことで、両スプロケット11が逆転してしまう事態の発生を確実に阻止している。すなわち、両スプロケット11は、リンクチェーン12と共に一方向のみ回転できるようになっている。
【0091】
そして、リンクチェーン12の各リンク部には、電線Sの外径に対応して、中央部が円弧状に凹設された長方形状の凸部3Aが固着されている。このとき、凸部3Aの間隔は、操作ロッド4の凹部4A内を難着雪リングPが滑って移動した場合でも、当該難着雪リングPを保持して破断するのに十分な間隔となるように設定してある。
【0092】
また、両アーム10の略中間位置には、当該両アーム10を移動筐体2側に押圧させるための、例えば、締付けハンドル式の押圧調整部14を設け、移動筐体2に対し、アーム10を介してチェーン体3が閉じられた状態で、凸部3Aが電線Sに対して所定の力で圧接するようにしてある。すなわち、押圧調整部14は、図1・図3(a)に示すように、コ字形の枠体の左右先端側を移動筐体2の左右壁面に蝶ナットをねじ込んで固定し、前記枠体の中央部には、締付けハンドルをコイルスプリングを介してねじ込ませてある。そして、両アーム10に架設固定された板片の中央に、締付けハンドルのねじ込み先端側を当接させている。こうして、締付けハンドルを締付け方向に廻すことで、締付けハンドルのねじ込み先端側で板片を介してアーム10が移動筐体2側に押され、これにより凸部3Aが電線Sに対して所定の力で圧接するのである。
【0093】
操作ロッド4は、図1に示すように、移動筐体2内において一端が枢着部を介して回動可能に支持され、他端が押さえバネ15によりチェーン体3の凸部3A側へ向けて電線Sを押圧している。そして、移動筐体2の電線Sに沿った移動に伴い、操作ロッド4は難着雪リングPに当接し、押さえバネ15の押圧力に抗して下方側へ移動しながら難着雪リングPをスムーズに凹部4A内に導入する。
【0094】
このとき、押さえバネ15は、移動筐体2と共に操作ロッド4を電線Sに沿って移動させた際に、電線Sに装着されている難着雪リングPの挟持片部を操作ロッド4の前方傾斜部側から凹部4A内に容易に導入することができる程度のバネ圧を備えている。そして、一旦凹部4A内に難着雪リングPの挟持片部が入ると、そこからは難着雪リングPが簡単に離脱しないように、凹部4Aの上側が、電線Sに隙間無く当接している。
【0095】
次に、以上のように構成された本発明の最良の形態について、難着雪リングPの撤去工法の一例を説明する。
【0096】
まず、操作ロッド4とチェーン体3を備えた移動筐体2を、電線Sに取り付ける。すなわち、押圧調整部14と共に、アーム10後端側の蝶ナットを外して移動筐体2からアーム10を取り外しておき、移動筐体2の前後の走行用支持ローラ9の上に電線Sを載せた状態としてから、アーム10後端側を移動筐体2に蝶ナットで固定し、チェーン体3の複数の凸部3Aと、操作ロッド4の凹部4Aとにより電線Sを挟持させた状態にする。このとき、締付けハンドルを締付け方向に廻すことで、電線S側への凸部3Aの圧力調整がなされ、凸部3Aが電線Sに対して所定の力で圧接する。
【0097】
そして、予め電線Sに取り付けられている自走機構Vを、移動筐体2に連繋して電線Sに沿って移動筐体2を移動させる。このとき、図3(a)に示すように、チェーン体3の凸部3Aは、電線Sに圧接されているため、移動筐体2の移動と共にチェーン体3のリンクチェーン12はスプロケット11と共に回転する。すると、隣り合う凸部3A間に、電線Sに装着している難着雪リングPの一部が導入されると同時に、電線Sに沿った移動筐体2の移動に伴い、難着雪リングPの他の一部が操作ロッド4の凹部4A内に導入される。その後、図3(b)に示すように、さらなる操作ロッド4の移動により、難着雪リングPが捻り破断される。
【0098】
このように、操作ロッド4の凹部4Aに難着雪リングPが導入されたタイミングに合わせて、チェーン体3の連続的な動作により当該難着雪リングPが破断される。このとき、操作ロッド4の凹部4Aを支点として、チェーン体3の凸部3Aにより難着雪リングPに破断力を付与しても良いし、また、チェーン体3の凸部3Aを支点として、操作ロッド4の凹部4Aにより難着雪リングPに破断力を付与するものであっても良い。そして、破断した難着雪リングPは、ダクト6により回収される。
【0099】
難着雪リングPの他の撤去工法としては、前記した構成による撤去装置本体1を電線Sの端部に取り付けておき、撤去装置本体1にロープを取り付けて、電線Sのもう一方の端部方向へ引っ張ることで、難着雪リングPを順次撤去しながら撤去装置本体1を移動させるようにしても良い。
【0100】
また、前記した構成による撤去装置本体1を電線Sの端部に取り付けておき、電線Sを鉄塔に取り付けた金車上に載せて当該電線Sを巻き取ることで、難着雪リングPを順次撤去して回収するようにしても良い。
【0101】
図4乃至図6には、本発明に係る難着雪リングPの撤去装置の他の実施の形態が示されている。尚、前記した本発明の最良の形態における構成部分と略同一の箇所には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施の形態において、撤去装置本体1は、図4・図5(a)(b)(c)・図6(a)(b)に示すように、この移動アーム体20の後部側下面に一体的に突設された取付孔を有する連結金具5に、電線Sに沿って走行する駆動用モータ(図示せず)を内蔵したボックス状の自走機構Vを、連繋アームLを介して連繋させることで、移動アーム体20自体を電線Sに沿って自動的に移動できるように構成している。
【0103】
移動アーム体20の具体的な構成としては、電線Sの上側を支持するための前後一対の走行用支持ローラ9が上片側に回転可能に枢着され、電線Sの側面を支持するための前後一対の走行用支持ローラ9が上下片相互間に枢着されて成る第1アーム20Aを備えている。そして、第1アーム20Aの後側の走行用支持ローラ9を回動可能となるように支承させている回転不能な支軸の両側に形成されたネジ部を上下片から突出させ、略中央が鈍角に屈曲して成る第2アーム20Bの後端部に形成された孔部に前記ネジ部を挿入してから、外側からナットでねじ込み固定してある。
【0104】
そして、第1アーム20Aの先端側および第2アーム20Bの先端側には、共に上下片に挟まれるようにして、チェーン体3としての前後一対のスプロケット11が回転可能に枢着されている。この両スプロケット11に、リンクチェーン12が巻架されて互いに相対峙するように配置されている。また、第1アーム20Aの後側のスプロケット11と、第2アーム20Bの前側のスプロケット11には、伝達用スプロケット21が同軸となってそれぞれ配置されている。この両伝達用スプロケット21,21間にエンドレスベルト22が巻架することで、第1アーム20Aと第2アーム20Bのチェーン体3が、互いに逆方向に回転駆動するようにしている。
【0105】
この第1アーム20Aの前側に位置するスプロケット11の側面には、ラチェット機構部13としてのラチェットギアが同軸となるように固着され、第1アーム20Aに取り付けられたフックをラチェットギアに弾発的に噛合すべく付勢させておくことで、第1アーム20Aの両スプロケット11が逆転してしまう事態の発生を確実に阻止している。すなわち、第1アーム20Aの両スプロケット11はリンクチェーン12と共に一方向のみに回転できるようにしてある。
【0106】
そして、リンクチェーン12の各リンク部には、電線Sの外径に対応して中央部が円弧状に凹設された長方形状の凸部3Aが固着されている。このとき、第1アーム20Aおよび第2アーム20Bそれぞれの凸部3Aの間隔は、互いに両アーム20A,20Bの凸部3A間を難着雪リングPが滑って移動した場合でも、当該難着雪リングPを保持して破断させるのに十分な間隔となるように設定している。
【0107】
両アーム20A,20Bの略中間位置には、当該両アーム20A,20Bを互いに閉塞する方向に、いずれか一方のアーム20A(または20B)を押圧させるための、例えば、締付けハンドル式の押圧調整部14を設けてある。すなわち、押圧調整部14は、コ字形の枠体の左右先端側を第1アーム20Aの上下片にナットでねじ込み固定し、前記枠体の中央部にかけて締付けハンドルをコイルスプリングを介してねじ込ませてある。
【0108】
そして、第2アーム20Bに固設された板片の中央に締付けハンドルのねじ込み先端側を当接させている。こうして、締付けハンドルを締付け方向に廻すことで、締付けハンドルのねじ込み先端側で板片を介して第2アーム20Bが押され、これにより第2アーム20B側のチェーン体3の凸部3Aが電線Sに対して所定の力で圧接するようにしている。
【0109】
従って、第2アーム20Bのチェーン体3だけが凸部3Aにより電線Sに当接しながら回転するものとなり、これにより、電線Sに装着している難着雪リングPの一端を第1アーム20Aのチェーン体3の凸部3A間に導入し、難着雪リングPの他端を第2アーム20Bのチェーン体3の凸部3A間に導入させることで、互いに逆回転する両チェーン体3により難着雪リングPを捻り破断するようにしている。
【0110】
次に、以上のように構成された他の実施の形態について、難着雪リングPの撤去工法の一例を説明する。
【0111】
まず、移動アーム体20を走行用支持ローラ9を介して電線Sに取り付け、自走機構Vに連繋して電線Sに沿って移動アーム体20を移動させる。このとき、第1アーム20Aの正回転するチェーン体3の凸部3A間に電線Sに装着している難着雪リングPの一端を導入し、且つ第2アーム20Bの逆回転するチェーン体3の凸部3A間に電線Sに装着している難着雪リングPの他端を導入し、互いに逆回転する両チェーン体3により難着雪リングPを捻り破断する。
【0112】
図7至図9には、本発明に係る難着雪リングPの撤去装置の他の実施の形態として、前記図1乃至図3に示した片側チェーンタイプの変形例が示されている。
【0113】
尚、前記した本発明の最良の形態における構成部分と略同一の箇所には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0114】
本実施の形態において、撤去装置本体1は、図7(a)(b)・図8に示すように、左右一対のアーム10の前端側に前後一対となって取り付けられているスプロケット11のうちの後側にあるスプロケット11の側面に、当該スプロケット11よりも小径の第1ギヤ31を同軸一体に設けている。また、電線Sを上方側から押え支持するための走行用支持ローラ33を、アーム10に回転可能に枢設してある。こうして電線Sは下側の一対の走行用支持ローラ9と、上側の走行用支持ローラ33との3箇所で挟持された状態となる。このとき、チェーン体3の凸部3Aは、電線Sに対し滑り可能な程度に若干接触した状態となるか、あるいは、不接触の状態となるようにしてある。
【0115】
そして、この走行用支持ローラ33の側面に、前記スプロケット11側の第1ギヤ31とギヤ比の異なる大径の第2ギヤ32を同軸一体に設け、両ギヤにリンクチェーン34が巻架されている。このとき、スプロケット11と走行用支持ローラ33とのギヤ比は、例えば、スプロケット11の回転数が走行用支持ローラ33の回転数よりも大きくなるように設定してある。
【0116】
尚、操作ロッド4の凹部4Aの相対向する上端の縁辺部のそれぞれには、電線Sの傷付き防止用の複数の玉部材4Bが、縁辺部に沿って互いに隣接するように付設されている。
【0117】
また、押圧調整部14は、左右一対のアーム10の後端側に形成したU溝16を移動筐体2の両側壁のボルト軸部17に枢着し、前記アーム10の後部寄り同士を連結した板枠18に、締付けハンドルをコイルスプリングを介してねじ込ませている。そして、この板枠18に対向すべく移動筐体2の左右壁面にコ字枠19の両端がねじ込み支持され、当該コ字枠19の中央に、締付けハンドルのねじ込み先端側を当接させている。こうして、締付けハンドルを締付け方向に廻すことで、締付けハンドルのねじ込み先端側でコ字枠19を介して走行用支持ローラ33が移動筐体2側に押され、電線Sに圧接するようにしている。
【0118】
次に、以上のように構成された他の実施の形態について、難着雪リングPの撤去工法の一例を説明する。
【0119】
まず、操作ロッド4とチェーン体3を備えた移動筐体2を電線Sに取り付ける。すなわち、押圧調整部14と共に、アーム10の後端側の蝶ナットを外して移動筐体2からアーム10を取り外しておき7(a)に示すように、アーム10後端側のU溝16を移動筐体2両側壁のボルト軸部17に枢着し、チェーン体3の複数の凸部3Aと、操作ロッド4の凹部4Aとの間に電線Sが配置されるように電線Sの上側を走行用支持ローラ33で押えた状態にする。このとき、締付けハンドルを締付け方向に廻すことで、アーム10側にある走行用支持ローラ33の電線S側への圧力調整がなされる。
【0120】
予め電線Sに取り付けられている自走機構Vを、移動筐体2に連繋して電線Sに沿って移動筐体2を移動させる。このとき、図9(a)に示すように、電線Sは下側の一対の走行用支持ローラ9と、上側の走行用支持ローラ33との3箇所で挟持され、且つ上側の走行用支持ローラ33の回転によりリンクチェーン34、第1ギヤ31を介してスプロケット11が回転するため、移動筐体2の移動と共にチェーン体3のリンクチェーン12は回転する。このようにスプロケット11の第1ギヤ31と走行用支持ローラ33の第2ギヤ32とはリンクチェーン34により連繋されているため、走行用支持ローラ33の回転と同時にスプロケット11が同一方向に回転するのである。
【0121】
このスプロケット11と走行用支持ローラ33とは、ギヤ比が、例えば、スプロケット11の回転数が走行用支持ローラ33の回転数よりも大きくなるように設定してある。そのため、チェーン体3の凸部3Aは、各走行用支持ローラ9,33よりも速く回転し、移動筐体2の移動に伴い、電線S上を滑るように移動する。
【0122】
そして、図9(a)に示すように、隣り合う凸部3A間に、電線Sに装着している難着雪リングPの一部が導入されると同時に、電線Sに沿った移動筐体2の移動に伴い、難着雪リングPの他の一部が操作ロッド4の凹部4A内に導入され、図9(b)に示すように、さらなる操作ロッド4の移動により、凹部4Aを支点として凸部3Aにより難着雪リングPが捻り破断される。
【0123】
このように、凹部4Aに難着雪リングPが挿入されたタイミングに合わせて、チェーン体3の連続的な動作により当該難着雪リングPが破断される。そして、破断した難着雪リングPは、ダクト6により回収される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、所定の間隔を開けて電線Sに装着されている複数の難着雪リングPを電線Sから簡単に取り外すと共に、電線Sから取り外した難着雪リングPが落下してしまう事態の発生を確実に阻止する難着雪リングPの撤去装置および難着雪リングPの撤去工法として、送電線工事に広く使用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における難着雪リングの撤去装置本体の側面図である。
【図2】同じく難着雪リングの撤去装置本体であり、(a)は撤去装置本体の構成を示す平面図、(b)は撤去装置本体の構成を示す正面図である。
【図3】同じく撤去装置本体の使用状態を示しており、(a)は難着雪リングの破断直前の状態の斜視図、(b)は難着雪リングの破断後の状態の斜視図である。
【図4】本発明を実施するための他の実施の形態における難着雪リングの撤去装置本体の平面図である。
【図5】同じく難着雪リングの撤去装置本体であり、(a)は撤去装置本体の構成を示す側面図、(b)は撤去装置本体の構成を示す正面図、(c)は撤去装置本体の構成を示す背面図である。
【図6】同じく撤去装置本体の使用状態を示しており、(a)は難着雪リングの破断直前の状態の斜視図、(b)は難着雪リングの破断後の状態の斜視図である。
【図7】本発明を実施するための他の実施の形態における難着雪リングの撤去装置本体であり、(a)は撤去装置本体の構成を示す側面図、(b)は撤去装置本体の構成を示す平面図である。
【図8】本発明を実施するための他の実施の形態における難着雪リングの撤去装置本体の正面図である。
【図9】同じく撤去装置本体の使用状態を示しており、(a)は難着雪リングの破断直前の状態の斜視図、(b)は難着雪リングの破断後の状態の斜視図である。
【図10】従来における難着雪リングの撤去方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0126】
P…難着雪リング Q…保護ネット
R…移動用滑車 S…電線
T…宙乗機 V…自走機構
L…連繋アーム
1…撤去装置本体 2…移動筐体
3…チェーン体 3A…凸部
4…操作ロッド 4A…凹部
4B…玉部材 5…連結金具
6…ダクト 6A…袋
7…スリット部 8…仕切部
9…走行用支持ローラ 10…アーム
11…スプロケット 12…リンクチェーン
13…ラチェット機構部 14…押圧調整部
15…押さえバネ 16…U溝
17…ボルト軸部 18…板枠
19…コ字枠 20…移動アーム体
20A…第1アーム 20B…第2アーム
21…伝達用スプロケット 22…エンドレスベルト
31…第1ギヤ 32…第2ギヤ
33…走行用支持ローラ 34…リンクチェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去装置。
【請求項2】
電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備えた移動筐体と、移動筐体の移動に伴って、難着雪リングの一部を導入する凹部を備えた操作ロッドと、当該操作ロッドに正対して、リンクチェーンの各凸部の間に難着雪リングの他の一部を導入するチェーン体とから構成され、チェーン体の凸部を支点として、操作ロッドの凹部により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去装置。
【請求項3】
操作ロッドは、移動筐体内において、一端が枢着部を介して回動可能に支持され、他端が押さえバネによりチェーン体の凸部側へ向けて電線を押圧している請求項1または2に記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項4】
電線に沿った移動筐体の移動に伴い、操作ロッドは難着雪リングに当接し、押さえバネの押圧力に抗して下方側へ移動しながら難着雪リングを凹部内に導入する請求項1乃至3のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項5】
チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、チェーン体の凸部が電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えた請求項1乃至4のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項6】
チェーン体は、移動筐体に対し開放可能となるように、移動筐体に回動可能に枢着されたアームの先端に配置され、移動筐体に対しチェーン体が閉じられた状態で、アーム側に配された上側の走行用支持ローラが電線に対して所定の力で圧接するようにアームを移動筐体側に押圧する押圧調整部を備えた請求項1乃至5のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項7】
移動筐体は、電線と、電線に装着している難着雪リングを覆うように配置され、破断した難着雪リングの飛散を防止できるようにスリット部を備えている請求項1乃至6のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項8】
移動筐体は、全体が所定のカバーにより覆われている請求項1乃至7のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項9】
移動筐体の下部に、破断した難着雪リングを回収するダクトを備えている請求項1乃至8のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項10】
移動筐体は、自走機構を備えている請求項1乃至9のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項11】
多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動筐体を2個以上連結している請求項1乃至10のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項12】
移動筐体を、宙乗機に設置した請求項1乃至11のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項13】
電線に沿って移動可能である走行用支持ローラを備え、回転軸部を介して互いに開閉可能である第1アーム、第2アームのそれぞれから成る移動アーム体と、第1アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体と、当該チェーン体に正対して、第2アームに回転可能に装備され、リンクチェーンのそれぞれに凸部を備えたチェーン体とを備え、電線に装着している難着雪リングの一端をいずれか一方のチェーン体の凸部間に導入し、難着雪リングの他端を他方のチェーン体の凸部間に導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去装置。
【請求項14】
第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転する請求項13に記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項15】
移動アーム体は、自走機構を備えている請求項13または14に記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項16】
両チェーン体は、互いに閉じられた状態で、凸部が電線に対して所定の力で圧接するよう、両アーム間に押圧調整部を設けた請求項13乃至15のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項17】
多導体送電線のように2本以上の電線に装着している難着雪リングを同時に破断するために、移動アーム体を2個以上連結している請求項13乃至16のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項18】
移動アーム体を、宙乗機に設置した請求項13乃至17のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項19】
チェーン体は、逆転防止用のラチェット機構部を備えている請求項1乃至18のいずれかに記載の難着雪リングの撤去装置。
【請求項20】
操作ロッドとチェーン体を備えた移動筐体を電線に取り付け、チェーン体が備えている複数の凸部もしくは走行用支持ローラと、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、電線に沿って移動筐体を移動させ、難着雪リングの一部を操作ロッドの凹部内に導入し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、操作ロッドの凹部を支点として、チェーン体の凸部により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去工法。
【請求項21】
操作ロッドとチェーン体を備えた移動筐体を電線に取り付け、チェーン体が備えている複数の凸部もしくは走行用支持ローラと、操作ロッドの凹部とにより電線を挟持させた後、電線に沿って移動筐体を移動させ、難着雪リングの一部を操作ロッドの凹部内に導入し、リンクチェーンの隣り合う凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、チェーン体の凸部を支点として、操作ロッドの凹部により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去工法。
【請求項22】
移動アーム体を走行用支持ローラを介して電線に取り付けて電線に沿って移動させ、第1アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの一部を導入し、第2アームに回転可能に装備されたチェーン体の凸部間に難着雪リングの他の一部を導入し、両チェーン体により難着雪リングに破断力を付与することを特徴とする難着雪リングの撤去工法。
【請求項23】
第1アームのチェーン体と、第2アームのチェーン体が、互いに逆回転する請求項22に記載の難着雪リングの撤去工法。
【請求項24】
チェーン体は、ラチェット機構部により逆転が防止されている請求項20乃至23のいずれかに記載の難着雪リングの撤去工法。
【請求項25】
移動筐体と移動アーム体は、自走機構により電線に沿って移動する請求項20乃至24のいずれかに記載の難着雪リングの撤去工法。
【請求項26】
破断した難着雪リングを、ダクトを介して袋に回収する請求項20乃至25のいずれかに記載の難着雪リングの撤去工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−166845(P2007−166845A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362782(P2005−362782)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591045541)岳南建設株式会社 (6)