説明

雨押さえ板金の構造と施工方法

【課題】 本発明は、台風のような横殴りの雨の場合でも雨水が小屋裏空間に浸入すること無く、下屋の小屋裏空間を効果的に換気することが出来る下屋の小屋裏換気構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 雨水の浸入を防止するための雨押さえ板金を、下屋の屋根の水上側に取付ける下部雨押さえ板金と、その下部雨押さえ板金に被せる上部雨押さえ板金の2枚で構成し、下部雨押さえ板金と上部雨押さえ板金の隙間から雨水が浸入しても小屋裏まで雨水が達しない構造の雨押さえ板金を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組壁工法住宅の下屋の小屋裏換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの枠組壁工法住宅の下屋の屋根は、屋根用合板の上に屋根材(コロニアル等)を施工し、建物の外壁側から斜め下方向に傾斜して軒を形成し、下屋の小屋裏空間の換気は、下屋の屋根の水下側の軒天部分に設けられた換気口により自然に空気を吸排気させる構造となっていた。この下屋の屋根の水上側は、雨水が下屋の小屋裏内部に浸入するのを防ぐため、外壁と下屋の境目に雨押さえ板金を備えていたため、下屋の小屋裏空間の空気は下屋の屋根の水上側から建物の外に換気されない構造になっていた。
【0003】
このように、小屋裏空間の空気を軒天部分に開口した換気口のみで換気していたため、下屋の小屋裏空間の空気が十分に換気されないといった問題があった。さらに夏季には直射日光を受けた下屋の屋根の影響で、下屋の小屋裏空間の温度が上昇し、それに伴って下屋の室内の温度も上昇して夜になっても室温が下がらず、不快で寝苦しい夜を過さなければならなかった。
【先行技術文献】

【実用新案文献】
【0004】
【実用新案文献】
公開実用新案広報 昭57−153614
【0005】
上記のような、実用新案文献においては、下屋の屋根の水上側にも小屋裏空間の空気を換気するための雨押さえ板金を取付け、下屋の小屋裏空間の空気を換気させる試みは行われたが、このような構造では、通常の小雨の場合には小屋裏空間への雨の浸入を防止して小屋裏空間の換気も有効に行われたが、台風のような横殴りの強い雨に対しては小屋裏空間への雨水の浸入を防ぎ切れず、雨押さえ板金の機能とては効果が限定的であった。
【0006】
さらに、新築住宅に係る「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、雨水の浸入を防止する部分に発生した瑕疵に対して、10年間の保証期間が定められたため、下屋への雨水の浸入を恐れ、下屋の小屋裏空間の空気を換気させるための、有効な雨押さえ板金の開発は進んでいなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下屋の小屋裏空間に籠りやすい熱気や湿気を効率良く換気する事が出来るようになれば、夏季の下屋の室温を下げる事が出来るようになると共に、下屋の小屋裏内部に溜まる湿気を放出して結露の発生を防ぎ、住まいの耐久性と快適性を高めることが可能となる。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、台風のような横殴りの雨の場合でも雨水が小屋裏空間に浸入すること無く、下屋の小屋裏空間を効果的に換気することが出来る小屋裏換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような、雨押さえ板金の通気口から雨水が小屋裏に浸入するといった問題を解決するため、本発明においては、下屋の屋根の水上側に取付ける雨押さえ板金を、下部雨押さえ板金と、その下部雨押さえ板金に被せる上部雨押さえ板金の、2枚の雨押さえ板金で構成し、その下部雨押さえ板金に被せる上部雨押さえ板金の形状を、台風のような強風時の雨を想定し、雨押さえ板金の試作を繰り返し、さらに横殴りの雨を実現するための放水テストも繰り返し、下部雨押さえ板金と上部雨押さえ板金の隙間から雨水が浸入しても小屋裏空間まで雨水が達しない構造の雨押さえ板金を発明した。
【0010】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、建物の外壁側から斜め下方向に下屋の屋根が形成され、その下屋の屋根の水上側に小屋裏空間と屋外とを連通する通気部が形成された通気構造を有する枠組壁工法住宅において、下屋の屋根の水上側に位置する建物外壁の構造用合板に横通気受材を取付けると共に、下屋の屋根用合板の上から横通気受材の上端部まで防水シートを取付け、さらに、屋根用合板の防水シートの上に屋根材を施工し、屋根材の水上側の端部の上に笠木を取付け、その笠木の上と、横通気受材の上に取付けた防水シートの上面に、L型形状の水返し部と水戻し部が形成された下部雨押さえ板金を取付けると共に、このようにして取付けた下部雨押さえ板金に被せるように上部雨押さえ板金を取付け、上部雨押さえ板金と下部雨押さえ板金の間の隙間に、下屋の小屋裏空間と屋外とを連通する通気部が形成された事を特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構造に加え、下部雨押さえ板金の形状は、最下部に屋根の表面に当接する下側水切部が形成され、その上部にはL型形状の笠木押えが形成され、さらに、その上部には、同じくL型形状の水返し部と水戻し部が形成され、さらに、その上部には外壁面と平行になるように水抜き垂直部が形成され、水抜き垂直部の上端には、コの字型の折曲部が形成された事を特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構造に加え、下部雨押さえ板金の中間部に形成したL型形状の水返し部と水戻し部が交わる突端と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部の下端が建物外壁に対して垂直になるように構成し、その水返し部と水戻し部が交わる突端と、下部水切部の下端の隙間を、約10mmとした事を特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構造に加え、下部雨押さえ板金の上部の、コの字型の折曲部の外面と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部との隙間を約10mmとした事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、下屋の屋根の水上側に対して建物外壁の構造用合板に、横通気受材を取付けると共に、屋根用合板の上から横通気受材の上端部まで防水シートを取付け、さらに、屋根用合板の防水シートの上に屋根材を施工し、屋根材の水上側の端部の上に笠木を取付け、その笠木の上と横通気受材の上に取付けた防水シートの上面に、L型形状の水返し部と水戻し部が形成された下部雨押さえ板金を取付けると共に、このようにして取付けた下部雨押さえ板金に被せるように上部雨押さえ板金を取付け、上部雨押さえ板金と、下部雨押さえ板金の間の隙間に下屋の小屋裏空間と屋外とを連通する通気部が形成された事により、下部雨押さえ板金のL型形状の水返し部が雨水の浸入を減少させると共に、水戻し部に浸入した雨水に対してもテーパー形状に形成された水戻し部が雨水を効率良く下屋の屋根に排水する事を可能とし、簡単に構造で構成した、2枚の上部雨押さえ板金と下部雨押さえ板金の間に設けられた通気部より効率的に小屋裏空間の内部に溜まった空気を建物の外に換気する事が可能となった。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、下部雨押さえ板金の形状は、最下部に屋根の表面に当接する下側水切部が形成され、その上部にはL型形状の笠木押えが形成され、さらに、その上部には、同じくL型形状の水返し部と水戻し部が形成され、さらに、その上部には外壁面と平行になるように水抜き垂直部が形成され、水抜き垂直部の上端には、コの字型の折曲部が形成された事により、強風時の雨に対してL型形状の水返し部が雨水返しとしての効果を発揮すると共に、上部雨押さえ板金と下雨押さえ板金の間に設けた水溜り部に浸入した雨水は、斜めに形成されたL型形状の水戻し部より効率良く下屋の屋根に排出する事が可能となった。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、下部雨押さえ板金の中間部に形成したL型形状の水返し部と水戻し部が交わる突端と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部の下端が建物外壁に対して垂直に構成した事により、2階の外壁に吹き付けた雨水が乱れず流下するため、上部雨押さえ板金と下部雨押さえ板金の隙間の通気部から雨水が浸入するのを減少させると共に、その水返し部と水戻し部が交わる突端と、下部水切部の下端の隙間を、約10mmとした事により、相反する条件である、下屋の小屋裏空間の換気と雨押さえ板金内部への雨水の浸入を減少させる事が同時に可能となった。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、下部雨押さえ板金の上部の、コの字型の折曲部の外面と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部との隙間を約10mmとした事により、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部と、下部雨押さえ板金の水返し部と水戻し部が交わる突端の約10mmの隙間から浸入した雨水が、下屋の小屋裏空間に浸入するのを防ぐ事が可能となった。
【実施例】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及至図13には、この発明の実施の形態を示す。
【0020】
図1は、枠組壁工法住宅の下屋の小屋裏空間の換気方法についての実施形態を側面図で示す。この枠組壁工法住宅1には下屋6が備えられ、下屋6の屋根8は、図2に示すように、屋根用合板(野地板)27の上に防水シート28が施工され、その上に屋根材(コロニアル)26が形成され、枠組壁工法住宅1の2階外壁3から斜め下方向に傾斜して突出している。
【0021】
下屋6の小屋裏空間5の通気構造に関しては、屋根8の軒下11に水下側の通気部9が設けられると共に、屋根8の水上側には、小屋裏空間5と屋外とを連通する水上側の通気部4が形成され、水上側の通気部4には小屋裏空間5に雨水が浸入しないように、雨押さえ板金が取付けられている。このように構成された小屋裏空間5の通気において、外気は、点線と矢印7で示すように水下側の通気部9から小屋裏空間5に流れ込み、小屋裏空間5を上昇し水上側の通気部4から屋外に排気される自然換気が行われ、小屋裏空間5を効率的に換気することができる。
【0022】
図2は、図1で説明した下屋6の屋根8の水上側(図1のA部)を説明するための断面図である。枠組壁工法住宅の場合は、スタット(ツーバイ材)41と構造用合板35により外壁が構成され、その構造用合板35の外壁側に垂木受材32が取付けられ、垂木受材32の上部に垂木(ツーバイ材)31が斜めに傾斜して取付けられる。このように取付けられた垂木(ツーバイ材)31の上部に屋根用合板(野地板)27が外壁の構造用合板35との間に隙間(通気層)を設けて取付けられ、つづいて小屋裏空間5の換気が行われるように、垂木(ツーバイ材)31の水上側の構造用合板35に横通気受材37が取付けられると共に、隣り合う垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31との間の、屋根用合板(野地板)27側の空間に通気層29が設けられる。
【0023】
このようにして取付けられた屋根用合板(野地板)27から横通気受材37の上端部まで防水シート28が取付けられる。さらに防水シート28の上部には屋根材(コロニアル)26が取付けられると共に、屋根材(コロニアル)26の壁側の上部には笠木36が釘24により固定される。
【0024】
このように構成された屋根材(コロニアル)26と笠木36と、さらに、横通気受材37の上に施工された防水シート28に被せるように、ガルバニューム鋼板等で作られた金属板の下部雨押さえ板金23が釘25で笠木36に固定され、釘25の頭にコーキング(図示せず)をして釘25の隙間からの雨水の浸入を防止する。
【0025】
さらに、下部雨押さえ板金23の上部には、下部雨押さえ板金23に被せるように上部雨押さえ板金22が被せられ、上部雨押さえ板金22の上部を釘40により構造用合板35に固定する。つづいて、上部雨押さえ板金22の上部の構造用合板35に固定された板金部分に防水シート42を取付けると共に、防水シート42の外側には縦通気受材21が縦方向に取付けられる。このように構成された縦通気受材21に留付金具(図示せず)が取付けられ、留付金具(図示せず)に外壁用パネル(サイディング)20を引っ掛けるようにして取付ける。
【0026】
なお、外壁を構成する構造用合板35のスタット(ツーバイ材)41とスタット(ツーバイ材)41の間には断熱材34(ロックウール又は発泡ウレタン等)が施工され、スタット(ツーバイ材)41の室内側には石膏ボード33が取付けられる。さらに下屋の屋根を構成する屋根用合板(野地板)27の垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31との間の空間には、屋根用合板(野地板)27側に、下屋の小屋裏空間の換気を行うための屋根断熱通気層用スペーサー(図6で説明する)が取付けられ、その下屋側の垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31との間の空間に断熱材30(ロックウール又は発泡ウレタン等)が施工される。
【0027】
つづいて図3において、上部雨押さえ板金22と下部雨押さえ板金23の形状を詳細に説明する。図3aは上部雨押さえ板金22の側面図である。上部雨押さえ板金22の材質はガルバニューム鋼板等の金属板で作られ、上部雨押さえ板金22の上部に位置する上部取付部51の長さは120mmで垂直に形成され、その下に位置するテーパー部52は外壁面に降り込んだ雨水が流れ出やすいように斜め形状で形成され、さらに、その下に位置する下部水切部53の長さは110mmで垂直に形成され、下部水切部53の最下部は、ガルバニューム鋼板等の切断部の腐食を防ぐために室内側に折り曲げられる。
【0028】
図3bは下部雨押さえ板金23の側面図である。下部雨押さえ板金23の材質も上部雨押さえ板金22と同様にガルバニューム鋼板等の金属板で作られ、下部雨押さえ板金23の下部に位置する下部水切部60は、図2で説明したように屋根材(コロニアル)26に当接するように設置させるため屋根材(コロニアル)26を屋根に斜めに取付ける角度と同じように斜め形状に形成される。さらに下部水切部60の下端は、ガルバニューム鋼板等の切断部の腐食を防ぐために屋根材(コロニアル)26側に折り曲げられる。その上に位置する笠木押え58は、下部雨押さえ板金23を釘で固定するための穴(図示せず)が開けられた取付部59と、図2で説明した笠木25の上に被せる笠木押え部66とで構成され、その上部に形成されるL型形状の水返し部57と水戻し部56の形状は、雨水が下屋に入り込まないように、笠木押え部66と水返し部57が直角に構成され、水返し部57の高さは、笠木押え部66から25mmとする。水戻し部56は、図3cで説明するように水溜り部61に浸入した雨水を、すばやく下部雨押さえ板金23の外側に排出するために斜め形状に形成され、その長さは40mmとする。さらに水戻し部56の上部に位置する水抜き垂直部55の高さは90mmとし、外壁面と平行になるように一直線で垂直に形成される。さらに水抜き垂直部55の上部は折り曲げられてコの字型に形成され、折曲部54の長さは25mmとする。
【0029】
このように形成された上部雨押さえ板金22と下部雨押さえ板金23は、図3cで示すように下部水切部53と折曲部54の隙間64を約10mmとなるように組合わせると共に、下部水切部53の下端と、水戻し部56と水返し部57の突端62が垂直になるように構成し、その下部水切部53の下端と水返し部57の突端62との隙間65が約10mmとなるように組合わせ取付けらける。
【0030】
このように上部雨押さえ板金22と下部雨押さえ板金23を組合わせる事により、強風で建物の外壁面に吹き付けられた雨水は、上部雨押さえ板金22の下部水切部53を垂直に形成した事により、雨水が乱れずに流下し、斜めに形成された水返し部57により下屋の屋根部分に押し戻されると共に、隙間65から浸入した雨水は、水溜り部61と水溜り上部63の空間を縦長(水抜き垂直部55を90mmとした)に構成し、上部雨押さえ板金22の下部水切部53と下部雨押さえ板金23の折曲部54との隙間64を約10mmとした車により、台風のような強い雨を想定し、横殴りの雨を実現する放水テストを繰り返しても、下部雨押さえ板金23と上部雨押さえ板金22の隙間から浸入した雨水が下屋通気部39まで到しない事が実験により実証された。
【0031】
図4は、図2で説明した小屋裏空間と外壁通気の空気の流れる方向を点線と矢印で示す。図1でも説明した通り、外気は軒下11に設けられた水下側の通気部9から小屋裏空間5の通気層29に流れ込み、流れ込んだ外気は、図4の点線と矢印48で示すように横通気受材37の間の通気層を通って通気層39に流れ、上部雨押さえ板金22と下部雨押さえ板金23の間に設けられた水溜り部61を通って、隙間65から屋外に換気される。さらに、外壁内部の換気については、点線と矢印47で示すように、上部雨押さえ板金22のテーパー部52と外壁用パネル(サイディング)20と構造用合板35の隙間の縦通気受材21の隙間から、図12で示すように縦通気受材21の隙間に設けられた通気層92を経由して換気される。
【0032】
図5及至図13は、これまで図1及至4で説明してきた雨押さえ板金の構造と施工方法について、分かり安いように斜視図で示す。
【0033】
図5は、枠組壁工法住宅の外壁を構成するスタット(ツーバイ材)41に構造用合板35が釘71で取付けられ、その構造用合板35には垂木(ツーバイ材)31を固定するための垂木受材32が構造用合板35に対して横方向に釘70で取付けられ、その垂木受材32の上部には外壁の構造用合板35から斜め下方向に垂木(ツーバイ材)31が釘72によって取付けられる。
【0034】
図6は、図5で説明した構造用合板35と、垂木(ツーバイ材)31に、横通気受材37と屋根用合板27を取付けた状態を示す。垂木(ツーバイ材)31に屋根用合板27を取付ける際には、構造用合板35と屋根用合板27の間に小屋裏換気用の通気層を形成するため、屋根用合板27を垂木(ツーバイ材)31に取付ける際には、屋根用合板27の上端部と構造用合板35とが当接しないように、屋根用合板27の上端部と構造用合板35の間に通気層79を設けて釘84により垂木(ツーバイ材)31に取付けられる。さらに、垂木(ツーバイ材)31に取付けられた屋根用合板27の下部の垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31の間の空間には、下屋の小屋裏通気をするために、図6bで示すように、垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31の間の寸法に合わせてダンボールの両端がバネの役目を果たすように折返して製作された屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80が屋根用合板27と屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80との間に通気層29を構成するように嵌め込まれる。なお、この図6では屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80は、垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31の間の1ヶ所だけに記載しているが、当然、横並びの、垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31の間にも同様に取付けられる。また、屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80を取付ける際は、屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80の両端の折返し部82、折返し部83がバネの役目を果たして、垂木(ツーバイ材)31と垂木(ツーバイ材)31の間に挿入するだけで落下しないようになっているが、念のため、屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)80の両端の折返し部82、折返し部83をタッカー等の工具を用いて、針(ステープル)(図示せず)で垂木(ツーバイ材)31に固定するのが望ましい。さらに、横通気受材37は縦方向の通気を良くするため、隣り合う横通気受材37同士の横の隙間を30mm以上空けて通気用隙間85を設け、垂木(ツーバイ材)31と構造用合板35が接した上部の構造用合板35に釘38により取付けられる。
【0035】
図7は、図6で説明した屋根用合板27の上部と横通気受材37に対して防水シート28を取付けた状態を示す。このように防水シート28をタッカー等の工具を用いて、針(ステープル)89で屋根用合板27の上部と横通気受材37に対して取付ける事により、万一、雨水が屋根材の隙間から防水シート28に浸入した場合でも下屋に雨水が侵入する事を防止している。さらに防水シート28をこのように取付ける事により、図1と図2で説明した通り、軒下11に設けられた水下側の通気部9から小屋裏空間部5の通気層29に流れ込んだ外気が、横通気受材37同士の隙間85から上方に換気される。
【0036】
図8は、図7で説明した防水シート28の上部に屋根材(コロニアル)26を施工し、さらに、その屋根材(コロニアル)26の水上側の上部に釘24で笠木36を取付けた状態を示す。
【0037】
図9aは、図3で説明した下部雨押さえ板金23を斜視図で示す。図9bは図9aの下部雨押さえ板金23を、図8で説明した笠木36の上部に下部雨押さえ板金23を取付けた状態を斜視図で示す。下部雨押さえ板金23は、図3bで説明した水抜き垂直部55が横通気受材37に密着するように、笠木押え部66が笠木36の上に被せられ、取付部59に開けられた穴(図示せず)に釘25を打ち付けて、下部雨押さえ板金23は笠木36に固定される。さらに、釘25の頭にはコーキング(図示せず)がなされ、雨水が打ち付けた釘25と取付部59との隙間から屋根内部に浸入しないように施工される。
【0038】
図10aは、図3で説明した上部雨押さえ板金22を斜視図で示す。図10bは図10aの上部雨押さえ板金22を、図9bで説明した下部雨押さえ板金23の上に被せた状態を斜視図で示す。図3cで説明したように、下部水切部53の下端と水返し部57と水戻し部56の突端62との隙間を約10mmとなるようにし、上部雨押さえ板金22が下部雨押さえ板金23の上に被せられ、上部取付部51に開けられた穴(図示せず)に釘40を打ち付けて上部雨押さえ板金22は構造用合板35に固定される。
【0039】
図11は、図10で説明した構造用合板35と、その前面に取付けられた上部雨押さえ板金22の上部取付部51の前面に、防水シート42をタッカー等の工具を用いて、針(ステープル)91で取付けた状態を示す。このように防水シート42を上部雨押さえ板金22に被せて取付ける事により、万一、外壁用パネル20の内部に雨水が浸入した場合においても、構造用合板35が雨に濡れることなく、雨水は防水シート42の室外側を流れて上部雨押さえ板金22の表面を経て下屋の屋根材(コロニアル)26に流れる。
【0040】
図12は、図11で説明した防水シート42の前面に、一定の横間隔を開けて縦通気受材21を釘40で取付けた状態を斜視図で示す。このように取付けられた縦通気受材21の前面には、外壁用パネル(サイディング)20を引っ掛けて留めるための、留付金具(図示せず)が取付けられ、図13で示すように、留付金具(図示せず)に外壁用パネル(サイディング)20を引っ掛けて固定し外壁が形成される。
【0041】
以上の実施の形態に基づいて、本発明に係る雨押さえ板金の構造と施工方法について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【0042】
図2において、横通気受材37にツーバイ材を用いて、構造用合板35側の垂木31の上部に取付け、その横通気受材37に屋根用合板(野地板)27を当接するように取付け横通気受材37の厚みを利用して通気層を構成する事も、もちろん可能である。
【0043】
図3bの下部雨押さえ板金23を固定する方法に関しては、笠木36に対して笠木押え58の取付部59に釘を打ち付けて固定する方法以外にも、さらに下部雨押さえ板金23が安定して固定されるように、水抜き垂直部55を釘で横通気受材37に固定する等の方法も当然可能である。
【0044】
図5において、垂木を壁の構造用合板に固定する取付け方法については、垂木受材の上部に垂木の一部をカットして乗せて固定する方法にこだわらず。金物等を利用して垂木を構造用合板に固定する事も当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】下屋の小屋裏空間の換気方法についての実施形態を側面図で示す。
【図2】下屋の屋根の水上側(図1のA部)を説明するための断面図である。
【図3】下部雨押さえ板金と上部雨押さえ板金の主要部の寸法図と、その下部雨押さえ板金と上部雨押さえ板金を組合わせた場合の組み図である。
【図4】図2における小屋裏空間の通気と外壁通気の空気の流れを点線と矢印で示す。
【図5】スタット(ツーバイ材)に構造用合板を取付け構造用合板に垂木(ツーバイ材)を施工した状態を、建築中の外壁と下屋の屋根の斜視図で示す。
【図6】図5の斜視図に、屋根用合板(野地板)と横通気受材と屋根断熱通気層用スペーサー(通気くん)を施工した状態を斜視図で示す。
【図7】図6の斜視図に、防水シートを針(ステープル)で取付けた状態を斜視図で示す。デュポン社のタイベックシート等の防水シートは透明では無いが、この図7においては、防水シートを取付けた状態を分かりやすく説明するため、防水シートを透明形状で表した。
【図8】図7の斜視図に、屋根材(コロニアル)と笠木を施工した状態を斜視図で示す。
【図9】図8の斜視図に、下部雨押さえ板金を取付けた状態を斜視図で示す。
【図10】図9の斜視図に、上部雨押さえ板金を取付けた状態を斜視図で示す。
【図11】図10の斜視図に、防水シートを針(ステープル)で取付けた状態を斜視図で示す。デュポン社のタイベックシート等の防水シートは透明では無いが、この図11においては、防水シートを取付けた状態を分かりやすく説明するため、防水シートを透明形状で表した。
【図12】図11の斜視図に、縦通気受材を施工した状態を斜視図で示す。
【図13】図12の斜視図に、外壁用パネル(サイディング)を施工した状態を斜視図で示す。
【符号の説明】
【0046】
A部 下屋の屋根水上側
1 枠組壁工法住宅
2 屋根
3 2階外壁
4 水上側の通気部
5 小屋裏空間
6 下屋
7 点線と矢印
8 屋根
9 水下側の通気部
10 1階外壁
11 軒下
20 外壁用パネル(サイディング)
21 縦通気受材
22 上部雨押さえ板金
23 下部雨押さえ板金
24 釘
25 釘
26 屋根材(コロニアル)
27 屋根用合板(野地板)
28 防水シート
29 通気層
30 断熱材
31 垂木(ツーバイ材)
32 垂木受材
33 石膏ボード
34 断熱材
35 構造用合板
36 笠木
37 横通気受材
38 釘
39 通気層
40 釘
41 スタット(ツーバイ材)
42 防水シート
43 釘
47 点線と矢印
48 点線と矢印
51 上部取付部
52 テーパー部
53 下部水切部
54 折曲部
55 水抜き垂直部
56 水戻し部
57 水返し部
58 笠木押え
59 取付部
60 下側水切部
61 水溜り部
62 突端
63 水溜り上部
64 隙間
65 隙間
66 笠木押え部
70 釘
71 釘
72 釘
79 通気層
80 屋根断熱通気層用スペーサー(商品名は通気くん)
82 折返し部
83 折返し部
84 釘
85 通気用隙間
89 針(ステープル)
91 針(ステープル)
92 通気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁側から斜め下方向に下屋の屋根が形成され、その下屋の屋根の水上側に小屋裏空間と屋外とを連通する通気部が形成された通気構造を有する枠組壁工法住宅において、下屋の屋根の水上側に位置する建物外壁の構造用合板に横通気受材を取付けると共に、下屋の屋根用合板の上から横通気受材の上端部まで防水シートを取付け、さらに、屋根用合板の防水シートの上に屋根材を施工し、屋根材の水上側の端部の上に笠木を取付け、その笠木の上と、横通気受材の上に取付けた防水シートの上面に、L型形状の水返し部と水戻し部が形成された下部雨押さえ板金を取付けると共に、このようにして取付けた下部雨押さえ板金に被せるように上部雨押さえ板金を取付け、上部雨押さえ板金と下部雨押さえ板金の間の隙間に、下屋の小屋裏空間と屋外とを連通する通気部が形成された事を特徴とする雨押さえ板金の構造と施工方法。
【請求項2】
下部雨押さえ板金の形状は、最下部に屋根の表面に当接する下側水切部が形成され、その上部にはL型形状の笠木押えが形成され、さらに、その上部には、同じくL型形状の水返し部と水戻し部が形成され、さらに、その上部には外壁面と平行になるように水抜き垂直部が形成され、水抜き垂直部の上端には、コの字型の折曲部が形成された事を特徴とする請求項1に記載の雨押さえ板金の構造と施工方法。
【請求項3】
下部雨押さえ板金の中間部に形成したL型形状の水返し部と水戻し部が交わる突端と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部の下端が建物外壁に対して垂直になるように構成し、その水返し部と水戻し部が交わる突端と、下部水切部の下端の隙間を、約10mmとした事を特徴とする請求項1に記載の雨押さえ板金の構造と施工方法。
【請求項4】
下部雨押さえ板金の上部の、コの字型の折曲部の外面と、上部雨押さえ板金の下部の下部水切部との隙間を約10mmとした事を特徴とする請求項1に記載の雨押さえ板金の構造と施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−60793(P2013−60793A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215566(P2011−215566)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)