説明

雨水排水設備運転準備支援システム

【課題】正確な降雨量予測を行い稼動すべき排水設備を確実に予測する。そして、稼動すべき排水設備を事前に知らせて運転準備に対する確実な支援を行う。
【解決手段】配信される気象予測データを受け取り、より細かい空間分解能とより短い時間間隔の細密数値予測データを、より短い周期で求める気象予測用計算機7と、この気象予測用計算機から配信される細密数値予測データに基づいて加工された降雨量予測値の時系列データを入力し、各種排水設備を設けた排水施設に流入する水量を予測する流入量予測手段106と、各種排水設備の設備情報を管理するデータベース103と、予測した流入水量から稼動すべき設備を予測する稼動設備予測手段107と、予測した稼動すべき設備の情報とデータベースが管理している設備情報から該当する稼動排水設備の点検、整備を知らせるガイダンスを作成し手知らせるガイダンス作成手段105を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道や河川に設置される雨水排水施設に設けた雨水排水設備の運転準備支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道や河川に設置される雨水排水施設では、その目的上、大雨時以外に使用しない排水設備や無人の施設などがある。従って、これらの排水設備は運転に先立って準備等を行う必要があり、また、無人の施設では運転に先立ってさらに人員を配置する必要がある。このようなことから、降雨開始前の時点で長時間に渡る正確な降雨予測情報を得ることが望まれる。
【0003】
降雨予測情報としては、例えば、気象庁発表の各種気象予報がある。しかし、都市型水害をもたらす局地的な集中豪雨は、数km四方の強い雨域が移動して行くことにより、僅か1kmほど離れた地点でも雨の降り方が全く異なるという現象が起こり得ることが知られている。従って、市街地の冠水を防ぐことを目的とした雨水排水施設では、ポンプなどの排水設備の運転支援のために、数百mから数km四方の水平方向の空間分解能を持つ雨量データの観測情報を提供するシステムが開発されている。例えば、雨量レーダの観測値から雨域の移動予測を行い、対象地域の数十分先までの降雨量を予測する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、気象庁などの気象情報提供機関から配信される天気予報、注意報・警報は対象地域が広く抽象化された情報である。同様に配信される数値気象予報においても、表1に示すように、例えば、気象庁が(財)気象業務支援センタを介して一般向けに配信している領域モデル(RSM)と呼ばれる気象予報モデルの場合は、水平方向の空間分解能が20kmで、予報期間が51時間、配信周期が12時間で、かつ1時間単位のデータであり、格子点値(Grid Point value − GPV)で提供される。また、メソ数値予報モデル(MSM)の場合は、水平方向の空間分解能が10kmで、予報期間が18時間、配信周期が6時間で、かつ1時間単位のデータである。これらの予報モデルは、局地的な集中豪雨を対象とした雨水排水に用いるには粗いデータである。
【0005】
また、降水短時間予報は、水平方向の空間分解能が5kmで、予報期間が6時間、配信周期が1時間のデータであり、数時間先までの予測値しか配信せず、排水のために降雨予測を行う長時間の予報としては不十分である。また、レーダ雨量を基にした移動予測に至っては数十分先までしか有効でなく、排水のために降雨予測を行うには不十分である。
【表1】

【特許文献1】特開平8−50181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、気象情報提供機関から配信される気象予報モデルをそのまま使用して降雨予測を行い、排水施設に流入する水量を予測するため、局地的な集中豪雨に対して排水のための正確な降雨予測ができず、従って、稼動すべき排水設備を予測するのに不十分さがあった。また、長時間の予報ができないので、稼動すべき排水設備を事前に運転準備させるには不十分であった。
本発明は、局地的な集中豪雨に対しても正確な降雨量予測を行うことで稼動すべき排水設備を確実に予測することができ、また、細かい空間分解能で長時間の予報ができることで稼動すべき排水設備を事前に知らせて運転準備に対する確実な支援ができる雨水排水設備運転準備支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの気象情報提供機関より配信される気象観測データおよび気象予測データから、気象情報提供機関からの気象予測データと同等以上に細かい空間分解能と同等以上に短い時間間隔の細密数値予測データを、気象情報提供機関からの気象予測データと同等以上に短い周期で演算して求める気象予測演算手段と、気象予測演算手段から配信される細密数値予測データに基づいて加工された降雨量予測値の時系列データを1つの入力として取り込み、例えば、ポンプ、発電機、内燃機関等の各種排水設備を設けた排水施設に流入する水量を予測する流入量予測手段と、各種排水設備の運転履歴を含む設備情報を管理するデータベースと、流入量予測手段が予測した流入水量から各種排水設備のうちの稼動すべき設備を予測する稼動設備予測手段と、この稼動設備予測手段が予測した稼動すべき設備の情報とデータベースが管理している設備情報から該当する稼動排水設備の点検、整備を知らせるガイダンスを作成し、出力するガイダンス作成手段とを備えた雨水排水設備運転準備支援システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、局地的な集中豪雨に対しても正確な降雨量予測を行うことで稼動すべき排水設備を確実に予測することができ、また、細かい空間分解能で長時間の予報ができることで稼動すべき排水設備を事前に知らせて運転準備に対する確実な支援ができる雨水排水設備運転準備支援システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は雨水排水設備運転準備支援システムを含む全体の構成を示すブロック図で、1は通信網2を介して気象観測データや領域モデル(RSM)の粗い気象予測データを配信する気象情報提供機関、3は前記気象情報提供機関1が提供する項目には含まれない細密雨量レーダ4や地上雨量計5等を備え、前記通信網2を介して気象観測データを配信する気象観測装置である。
【0010】
前記気象情報提供機関1および気象観測装置3から配信される気象観測データや気象予測データを、データセンタ6に1台又は複数台設けた気象予測演算手段としての気象予測用計算機7が受信し、この気象予測用計算機7で細かい気象予測データを作成し、通信網8を介して配信する構成になっている。
【0011】
前記気象予測用計算機7は、配信先の雨水排水区を含む地域の地理データや気象観測データ、空間分解能と時間間隔の粗い気象予測データを一定期間保持するデータベース71と、前記通信網2を介して配信される空間分解能と時間間隔が粗い気象予測データに比べて同等以上、例えば、より細かい空間分解能と、より短い時間間隔の気象予測データを作成するために細密気象予測モデルを演算する細密気象予測モデル演算手段72と、前記気象情報提供機関1および気象観測装置3から配信される気象観測データや粗い気象予測データおよび前記データベース71から読み込んだ配信先の雨水排水区を含む地域の地理データや気象観測データから前記細密気象予測モデル演算手段72が演算する入力データを作成する入力データ作成手段73を備えている。
【0012】
前記データベース71、細密気象予測モデル演算手段72、入力データ作成手段73は、それぞれ1つ以上の計算機プログラムが実装され、1つの手段を複数の計算機で実行しても、逆に1台の計算機で複数の手段を実行してもよい。
【0013】
前記気象予測用計算機7は細密気象予測モデル演算手段72が演算した細密気象予測モデルの予測データを、前記通信網8を介して雨水排水施設9に1台又は複数台設けた排水設備運転支援計算機10に配信している。
【0014】
前記雨水排水施設9は、下水道や河川に1箇所以上設置されるもので、前記排水設備運転支援計算機10の他、1台以上のポンプ91、ゲート92、発電機93、内燃機関94等からなる雨水排水設備95およびガイダンス表示等に使用するディスプレイ96を設けている。
【0015】
前記排水設備運転支援計算機10は、前記データセンタ6からの細かい気象予測データを加工して降雨量予測値の時系列データd1を出力する気象情報加工手段101と、この気象情報加工手段101からの降雨量予測値の時系列データd1を入力の1つとして、稼動すべき設備の情報d2を出力するために、排水設備の運転をシミュレーションする運転シミュレータ102と、設備の運転履歴、点検履歴、消耗品・燃料などの備蓄状況を管理するデータベース103と、このデータベース103の情報と稼動すべき設備の情報d2から適切な点検、整備のガイダンスを作成して前記ディスプレイ96に出力し、また、必要に応じてアラーム104を駆動するガイダンス作成手段105を備えている。
【0016】
前記運転シミュレータ102は、前記気象情報加工手段101から降雨量予測値の時系列データd1を取り込み、当該排水施設9への流入量を予測し、流入量予測値の時系列データd3を出力する流入量予測手段106と、この流入量予測手段106からの時系列データd3を取り込み、予測される流入量に応じて稼動すべき設備の情報d2を予測して出力する稼動設備予測手段107を備えている。
【0017】
前記流入量予測手段106による流入量予測については、従来周知の、例えば、特願平6−262498号公報に開示されている修正RRL法と管内流下モデルを組み合わせた手法や、特願平10−224766号公報に開示されているシステム同定の手法を用いて非線形モデルの一種であるHammerstein型のBlock-orientedモデルを同定する方法、特願平3−295729号公報に開示されているニューラルネットワークを用いた手法、文献「雨天時汚濁負荷量流出モデル比較検討調査(1994年度、下水道振技術研究所年報2/2巻、財団法人 下水道新技術推進機構発行)で公知であるシミュレーション・ソフトウエアで採用されている雨水流出過程を水文学的に模擬したモデルと水理学に基づく偏微分方程式モデルを組み合わせて数値計算により特方法などで実現できる。
【0018】
前記気象情報加工手段101、運転シミュレータ102、データベース103、ガイダンス作成手段105は、それぞれ1つ以上の計算機プログラムが実装され、1つの手段を複数の計算機で実行しても、逆に1台の計算機で複数の手段を実行してもよい。
【0019】
前記データベース103には、図2に示すように、個々の設備とその種別が予め登録されており、これに点検履歴と運転履歴が1対1に対応付けて記録するようになっている。また、図4に示すように、個々の設備種別と、それに対応する点検項目および点検内容が予め登録されている。
【0020】
また、前記データベース103は、設備の電気的な接続情報を含んだ図面情報や運転履歴、点検履歴などの記録形式の異なる膨大なデータを保持する必要がある。このため、例えば、特願平11−5438号公報に開示されているように、プラント設備を図3のように機場区分、設備区分、機器区分のように階層的に分類した設備機器分類データベースとして管理する。
【0021】
前記気象情報提供機関1の代表としては(財)気象業務支援センタがあり、この気象業務支援センタは、気象庁が観測および解析する各種予報、注意報・警報、アメダス観測値、レーダ雨量観測値等の気象観測データや気象予測データを専用回線やインターネットで事業者に配信している。
【0022】
前記気象予測用計算機7が前記気象情報提供機関1および気象観測装置3から配信を受ける主な気象情報は表1に示す予報項目の数値予報である。前記気象予測用計算機7は、気象情報提供機関1および気象観測装置3から気象観測データや気象予測データをリアルタイムで取り込み、この気象観測データや気象予測データから数値気象予測モデルを用いて、提供された気象予測データよりも細かい空間分解能と短い時間間隔の数値予報を作成し、同等若しくはそれ以上に短い配信周期でリアルタイムに雨水排水施設9に配信する。
【0023】
すなわち、前記気象予測用計算機7は、気象情報提供機関から配信される気象予測データよりも細かい空間分解能と短い時間間隔の数値予報を作成するモデルとして、運動方程式(ナビエ・ストークス方程式)、熱力学方程式、圧縮系の連続方程式、水蒸気混合比の式、雲・降水粒子の混合比の式、雲・降水粒子数密度の式などの非線形微分方程式を中心として記述された非静力学気象モデルを使用している。例えば、雲解像モデルCReSS(Cloud Resolving Storm Simulator)を使用している。この雲解像モデルCReSSは、雲およびその中で起こっている降水の物理過程をシミュレーションするために開発されたモデルで、表2に示すように、予報項目が雨量、気温、風で、水平方向の空間分解能が5kmで、予報期間が51時間、配信周期が12時間になっている。これにより、前記気象予測用計算機7は、細密な数値気象予測データを雨水排水施設9の排水設備運転支援計算機10に配信できる。
【表2】

【0024】
前記雨水排水施設9においては、排水設備運転支援計算機10が細密な数値気象予測データを利用し、予測時間内に対象となる対象地域である雨水集水区に降ると予想される降雨に対して雨水排水設備95の運転準備を支援するのに有用な設備保全管理や点検のためのガイダンスを作成して知らせることを行う。通常、雨水排水施設9の機械設備や電気設備は定期的に点検が行われている。ここでのガイダンスは、降雨が予想される数十時間前から直前までの間に実施可能な設備の点検整備に対するものである。
【0025】
前記排水設備運転支援計算機10によるガイダンスの作成は、気象情報加工手段101が加工した降雨量予測値の時系列データd1を運転シミュレータ102の流入量予測手段106が取り込んで当該排水施設9への流入量を予測し、流入量予測値の時系列データd3を出力し、続いて、運転シミュレータ102の稼動設備予測手段107が予測される流入量に応じて稼動すべき設備の情報d2を予測して出力する。
【0026】
すなわち、稼動設備予測手段107は、ポンプに関しては、流入量予測値の時系列データd3に応じた図5の(a)に示すようなポンプ井の水位変動に対して、例えば、1号ポンプP1、2号ポンプP2、3号ポンプP3の3台のポンプがそれぞれ図に示す水位でオン、オフを行うように運転ルールが設定されているとすると、図5の(a)に示すようなポンプ井の水位変動に対して各ポンプP1、P2、P3は図5の(b)に示すタイミングでオン、オフ動作することになる。すなわち、先ず時刻t1において1号ポンプP1がオンし、続いて時刻t2において2号ポンプP2がオンし、さらに、時刻t3において3号ポンプP3がオンする。そして、水位が下がることで、先ず時刻t4において3号ポンプP3がオフし、続いて時刻t52号ポンプP2がオフする。以降は、1号ポンプP1のみが動作する。従って、時刻と共にポンプの運転台数は図5の(c)に示すように変化することになる。
【0027】
稼動設備予測手段107は、このように、流入量予測値の時系列データd3に応じてポンプ井の水位変動を予測し、その予測によりどの時刻にどのポンプをオンさせ、また、オフさせるのかを選択する。なお、ポンプの運転ルールがない場合も、過去の運転履歴からポンプの起動、停止時刻とその時点のポンプ井水位を見て各ポンプP1、P2、P3をどの水位でオンさせ、どの水位でオフさせるかを決めることができる。
【0028】
また、稼動設備予測手段107は、発電機に関しては、例えばポンプの運転台数の変化が図5の(c)に示すように変化すると予測されたときには、必要な電力量も見積もることができ、施設の契約電力や配電系統による制約を加味して運転すべき発電機を予測することができる。
このように、運転シミュレータ102は、降雨量予測値の時系列データd1を入力の1つとして雨水排水設備95の運転をシミュレートし、稼動すべき設備の情報d2を予測する。
【0029】
運転シミュレータ102が出力する稼動すべき設備の情報d2はガイダンス作成手段105により取り込まれる。前記ガイダンス作成手段105は、稼動すべき設備の情報d2を検索キーとして排水設備の運転履歴、点検履歴、消耗品・燃料などの備蓄状況を管理するデータベース103を参照し、稼動すべき設備やその消耗品、予備品の充足状況を前記ディスプレイ96に提示し、降雨が予想されるまでに実施可能な点検整備の項目を運転員に対して知らせ注意を促す。従って、運転員はディスプレイ96に表示された内容を確認し、予想される降雨に対処するために、稼動すべき設備の事前の点検や整備、消耗品や予備品の準備等行うことになる。これにより、実際の設備稼動をより確実なものにできる。
【0030】
また、設備によっては休止期間の閾値を予め設定したものや稼動回数あるいは稼動期間の閾値を予め設定したものがある。休止期間の閾値を設定したものにおいては、その設備が稼動すべき設備として選択され、その休止期間が閾値として設定した数値以上のときには、さらに、アラーム104を駆動して運転員に特に注意を促す。また、稼動回数あるいは稼動期間の閾値を設定したものにおいても、その設備が稼動すべき設備として選択され、その稼動回数あるいは稼動期間が閾値として設定した数値以上のときには、さらに、アラーム104を駆動して運転員に特に注意を促す。
【0031】
これにより、休止期間が閾値以上に長かった設備や稼動回数が閾値以上に多かった設備や稼動期間が閾値以上長かった設備については、特に点検や整備を入念に行い、場合によっては予備品、消耗品などの部品の交換を行う。
【0032】
このように雨水排水施設9の排水設備運転支援計算機10は、データセンタ6から長時間にわたる細密な数値気象予測データを受け取ることで局地的な集中豪雨に対して排水のための正確な降雨量予測を行って降雨量予測値の時系列データd1を作成できる。そして、この時系列データd1に基づいて運転シミュレーションを実行し、当該排水施設9への流入量を予測して稼動すべき設備の情報d2を予測する。こうして、正確な降雨量予測に基づいて稼動すべき排水設備を正確に予測することができる。さらに、稼動すべき設備の情報d2とデータベース103の管理情報によって稼動すべき設備やその消耗品、予備品の充足状況をディスプレイ96に表示する。これにより、降雨が予想されるまでに実施可能な点検整備の項目を運転員に対して知らせ、稼動すべき排水設備の運転準備に対する確実な支援ができる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図6に示すように、排水設備運転支援計算機10にランク分け手段108を追加したもので、その他の構成は前述した第1の実施の形態と同じである。
前記ランク分け手段108は、気象情報加工手段101から出力される降雨量予測値の時系列データd1を取り込んでランク分けし、また、流入量予測手段106から出力される流入量予測値の時系列データd3を取り込んでランク分けし、さらに、稼動設備予測手段107において得られるポンプ運転台数の変化データを取り込んでランク分けする。
【0034】
すなわち、降雨量予測値の時系列データd1の場合は、図7の(a)に示すように、例えば、毎時何ミリメートルの降雨になるかという降雨強度のランクに分け、これをさらに大まかに抽象化して、豪雨、大雨、小雨という3段階の降り方にランク分けする。
また、流入量予測値の時系列データd3の場合は、図7の(b)に示すように、例えば、最大流入量が毎分何立方メートルかという流入量のランクに分け、これをさらに大まかに抽象化して、流入量傾向が大きいか小さいかの2段階にランク分けする。
また、ポンプ運転台数の変化データの場合は、図7の(c)に示すように、例えば、ポンプ運転台数と消費電力と必要な発電機台数との関係にランク分けし、これをさらに大まかに抽象化して、ポンプ運転台数については多い、少ない、0の3段階にランク分けし、発電機運転については運転が必要か、不要かの2段階にランク分けする。
【0035】
このようなランク分けを行い、最終的に抽象化してランク分けした内容をディスプレイ96に表示する。このようなランク分けを行うことで降雨予測精度や運転シミュレーションの精度が十分でない場合にも対処することができる。また、設備保全管理や点検のためのガイダンスの精度を調整することもできる。
なお、この実施の形態においても前述した第1の実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る、雨水排水設備運転準備支援システムを含む全体の構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態におけるデータベースに記録される情報を示す図。
【図3】同実施の形態におけるプラント設備の管理フォーマットを示す図。
【図4】同実施の形態におけるデータベースに予め登録される情報を示す図。
【図5】同実施の形態における稼動設備予測手段によるポンプの稼動予測例を示すグラフ。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る、排水設備運転支援計算機の構成を示すブロック図。
【図7】同実施の形態におけるランク分け手段のランク分け処理を説明するための図。
【符号の説明】
【0037】
1…気象情報提供機関、3…気象観測装置、7…気象予測用計算機、9…雨水排水施設、10…排水設備運転支援計算機、95…雨水排水設備、96…ディスプレイ、102…運転シミュレータ、103…データベース、105…ガイダンス作成手段、106…流入量予測手段、107…稼動設備予測手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの気象情報提供機関より配信される気象観測データおよび気象予測データから、前記気象情報提供機関からの気象予測データと同等以上に細かい空間分解能と同等以上に短い時間間隔の細密数値予測データを、前記気象情報提供機関からの気象予測データと同等以上に短い周期で演算して求める気象予測演算手段と、
前記気象予測演算手段から配信される細密数値予測データに基づいて加工された降雨量予測値の時系列データを1つの入力として取り込み、各種排水設備を設けた排水施設に流入する水量を予測する流入量予測手段と、
前記各種排水設備の運転履歴を含む設備情報を管理するデータベースと、
前記流入量予測手段が予測した流入水量から前記各種排水設備のうちの稼動すべき設備を予測する稼動設備予測手段と、
この稼動設備予測手段が予測した稼動すべき設備の情報と前記データベースが管理している設備情報から該当する稼動排水設備の点検、整備を知らせるガイダンスを作成し、出力するガイダンス作成手段と、
を備えたことを特徴とする雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項2】
気象予測演算手段をデータセンタに設け、流入量予測手段、データベース、稼動設備予測手段、ガイダンス作成手段を排水施設に設けたことを特徴とする請求項1記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項3】
データセンタは、各排水施設に対して該当する対象地域の細密数値予測データを含む気象情報を配信することを特徴とする請求項1又は2記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項4】
排水施設は各種排水設備としてポンプ、発電機、内燃機関等を設け、データベースはこれらの排水設備の設備情報を管理し、稼動設備予測手段はポンプ、発電機、内燃機関等の各種排水設備のうちの稼動すべき設備を予測することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項5】
流入量予測手段は排水施設の運転をシミュレートしてこの排水施設に流入する水量を予測し、稼動設備予測手段は排水施設の運転をシミュレートしてこの排水施設の稼動すべき排水設備を予測することを特徴とする請求項4記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項6】
ガイダンス作成手段は、稼動すべき排水設備の休止期間が予め設定した閾値期間以上の場合はアラームによって報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項7】
ガイダンス作成手段は、稼動すべき排水設備の稼動回数や稼動期間等の稼動頻度を表す指標が予め設定した閾値以上の場合はアラームによって報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項8】
データベースは、さらに、排水設備に付属する消耗品等の付属部品の備蓄状況を管理し、ガイダンス作成手段は、前記データベースが管理している付属部品の備蓄量が閾値以下の状態で該当する排水設備の稼動が指摘された場合はアラームによって報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の雨水排水設備運転準備支援システム。
【請求項9】
排水施設は、さらに、降雨量予測値、流入量予測値、稼動すべき設備の情報等を大まかに抽象化してランク分けするランク分け手段を設け、ガイダンス作成手段は、前記ランク分け手段がランク分けした抽象化情報に基づいてガイダンスを作成し出力することを特徴とする請求項2記載の雨水排水設備運転準備支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−241900(P2006−241900A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61076(P2005−61076)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】