説明

雨量センサ、及び雨量測定方法

【課題】装置全体の小型化と雨量の測定精度の向上とが共に可能な雨量センサを提供する。
【解決手段】圧力センサはグリッドを含む。グリッドには複数の感圧素子が配列されている。各感圧素子は、外部から受けた圧力に応じたレベルで電気信号を出力する。一つの感圧素子は雨粒のサイズの下限よりもサイズが小さい。圧力センサは、グリッドに一滴の雨粒が衝突した際にグリッド上の圧力分布を検出する。信号処理部は、その圧力分布から、一滴の雨粒が衝突したグリッド上の領域を特定する。信号処理部は更に、その領域の受けた衝撃の大きさから一滴の雨粒の大きさを算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の雨量計には、筒等の貯水槽に雨水を貯めて、その貯水量を計測するものがある。その他に、特許文献1に開示された降水センサのように、貯水槽を利用しない雨量計も知られている。その降水センサは、落下してきた雨粒等が衝突した際に発する音又は振動を計測することによって、雨粒等が降水センサに与える衝撃を測定する。更に、その衝撃の大きさから降水量を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−260269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯水槽を利用するタイプの雨量計では、貯水槽が嵩張るので、雨量計全体の小型化が難しい。一方、特許文献1には、雨粒等の衝撃と降水量との間の関係が具体的には開示されていないので、特許文献1からは、降水量の測定精度を向上させる方法が分からない。
【0005】
本発明の目的は、装置全体の更なる小型化と、雨量の測定精度の更なる向上とが共に可能な雨量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による雨量センサは、圧力センサと信号処理部とを備えている。圧力センサはグリッドを含む。グリッドには複数の感圧素子が配列されている。各感圧素子は、外部から受けた圧力に応じたレベルで電気信号を出力する。一つの感圧素子は雨粒のサイズの下限よりもサイズが小さい。圧力センサは、グリッドに一滴の雨粒が衝突した際にグリッド上の圧力分布を検出する。信号処理部は、その圧力分布から、一滴の雨粒が衝突したグリッド上の領域を特定する。信号処理部は更に、その領域の受けた衝撃の大きさから一滴の雨粒の大きさを算定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による雨量センサは、グリッドを利用して、一滴の雨粒がグリッドに与える衝撃の大きさから雨量を算定する。従って、装置全体の更なる小型化と、雨量の測定精度の更なる向上とが共に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による雨量センサのブロック図である。
【図2】図1に示されている雨量センサ100の具体的な構造を示す模式的な分解組立図である。
【図3】(a)は、図2に示されている感圧素子110の一つの断面図である。(b)は、図2に示されている圧力センサ101の回路図である。
【図4】(a)は、雨粒RD1、RD2が、グリッドの表面に対して垂直に落下したときの様子を表す模式図である。(b)は、(a)に示されているグリッドの表面に生じる圧力分布を模式的に表す平面図である。
【図5】(a)は、雨粒RD3、RD4がグリッドの表面に対して斜めに落下したときの様子を示す模式図である。(b)は、(a)に示されているグリッドの表面に生じる圧力分布を模式的に表す平面図である。
【図6】雨粒の形状を球で近似したときの半径と終端速度、及び、その雨粒が圧力センサ101に衝突した際に圧力センサ101が受ける力との間の関係を示す表である。
【図7】図1に示されている雨量センサ100を用いた雨量測定方法のフローチャートである。
【図8】図2に示されている雨量センサ100を含む傘801を利用した雨量測定システムのブロック図である。
【図9】図2に示されている雨量センサ100を利用した雨監視システムのブロック図である。
【図10】図2に示されている雨量センサ100を利用した自動車間通信装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による雨量センサのブロック図である。図1を参照するに、雨量センサ100は、圧力センサ101、信号処理部102、通信部103、振動発電部104、電源制御部105、及びマイクロ・バッテリ106(以下、μバッテリと表記する。)を含む。
【0011】
圧力センサ101は複数の感圧素子の二次元配列、すなわちグリッドを含む。圧力センサ101はグリッドで雨粒RDを受ける。グリッドに雨粒RDが衝突すると、グリッド上には圧力分布が生じる。圧力センサ101は、その圧力分布を示す電気信号PDを生成して、信号処理部102へ送る。信号処理部102は、まず、その電気信号PDを解析して、圧力分布から、一滴の雨粒が衝突したグリッド上の領域を特定する。信号処理部102は次に、その領域の受けた衝撃の大きさから、一滴の雨粒の大きさを算定する。信号処理部102は更に、グリッドに衝突した各雨粒の大きさを示す情報RIを通信部103へ送る。通信部103は、フィルム・アンテナ131を含み、それを利用して、信号処理部102から送られた情報RIを無線で外部装置、例えば携帯電話又はパーソナル・コンピュータへ送る。その外部装置は、情報RIの示す雨粒の大きさから、雨量を算定する。
【0012】
振動発電部104は、上下に振動可能な板状部材とエレクトレットとを含む。板状部材には電極が固定されている。その電極と所定の距離を隔てて、エレクトレットは設置されている。振動発電部104は板状部材で雨粒RDを受ける。板状部材に雨粒RDが衝突すると、板状部材は上下に振動する。それに伴い、板状部材に固定された電極がエレクトレットに対して振動する。そのとき、電極には起電力PWが生じる。その起電力PWは電源制御部105へ伝達される。電源制御部105は、その起電力PWを利用してμバッテリ106を充電する。μバッテリ106はリチウム電池を内蔵し、振動発電部104によって生成された電力PWを蓄積する。μバッテリ106は更に、蓄積された電力を、圧力センサ101、信号処理部102、及び通信部103へ供給する。図1には、信号の流れが実線の矢印で示され、電力の流れが破線の矢印で示されている。
【0013】
図2は、図1に示されている雨量センサ100の具体的な構造を示す模式的な分解組立図である。雨量センサ100は2cm四方の矩形状のチップである。圧力センサ101、信号処理部102、通信部103、振動発電部104、電源制御部105、及びμバッテリ106はそれぞれ1枚のチップに実装され、互いに積層されている。
【0014】
圧力センサ101は雨量センサ100の最上層に水平に設置されている。それにより、グリッドが雨量センサ100の表面に露出している。グリッドを構成する各感圧素子110は0.01mm四方の矩形状であり、そのサイズは、雨粒のサイズの下限0.1mmよりも十分に小さい。感圧素子110は、外部から受けた圧力に応じたレベルで電気信号を出力する。
【0015】
図3の(a)は一つの感圧素子110の断面図である。図3の(a)を参照するに、感圧素子110は、基板111、第1電極112、誘電体層113、第2電極114、及び絶縁層115を含む。基板111は、圧力センサ101の全体が実装される共通の基板である。第1電極112は基板111の表面に矩形状に形成されている。第1電極112は接地されている。誘電体層113は第1電極112の全体を覆っている。第2電極114は、誘電体層113を隔てて第1電極112と平行に設置されている。第2電極114はエレクトレットから構成され、一定量の電荷を保持している。絶縁層115は誘電体層113と第2電極114とを覆っている。雨粒は絶縁層115に衝突する。絶縁層115は、第2電極114を外部から絶縁すると共に、感圧素子110内部への雨水の侵入を防止する。絶縁層115に雨粒が衝突すると、その衝撃によって誘電体層113が変形し、第1電極112と第2電極114との間の距離Lが縮まる。それにより、第1電極112と第2電極114との間の静電容量が増大する。第2電極114の保持する電荷は一定であるので、第1電極112と第2電極114との間の電圧が下がる。この電圧の降下を電気信号として検出することによって、雨粒の衝撃を検出することができる。特にその電気信号のレベルの変化が、雨粒の衝撃の大きさを表す。
【0016】
図3の(b)は、圧力センサ101の回路構成を表す模式図である。図3の(b)を参照するに、圧力センサ101は、感圧素子110に加え、増幅回路201、行セレクタ202、及び列セレクタ203を含む。増幅回路201は感圧素子110に一つずつ接続されている。増幅回路201は、感圧素子110内の第1電極112と第2電極114との間の電圧の変化を増幅する。行セレクタ202は、感圧素子110の各列に一つずつ設けられ、その列に並ぶ感圧素子110と増幅回路201を通して接続されている。行セレクタ202は、信号処理部102から行選択信号RSLを受けて、その信号RSLの示す行の感圧素子110における第1電極112と第2電極114との間の電圧を受ける。列セレクタ203は各行セレクタ202に接続されている。列セレクタ203は、信号処理部102から列選択信号CSLを受けて、その信号の示す列の行セレクタ202が感圧素子110から受けた電圧を、その行セレクタ202から受ける。列セレクタ203は更にその電圧を電気信号SGLとして信号処理部102へ伝達する。
【0017】
信号処理部102は圧力センサ101の下に配置されている。信号処理部102は、行選択信号RSLと列選択信号CSLとを周期的に変化させることによって、圧力センサ101内の全ての感圧素子110を1/30秒周期で走査する。それにより、1回の走査で得られる圧力分布は、グリッドに同時に衝突した雨粒によるものとみなせる。一滴の雨粒の衝突によって生じる圧力分布の形状は、その雨粒の速度の方向に依存する。雨粒の速度の方向がグリッドの表面の法線方向に近いほど、等圧線の形状は真円に近い。一方、雨粒の速度の方向がグリッドの表面の法線方向から大きく傾くと、その傾いた方向で等圧線の形状は真円から大きく歪む。
【0018】
図4の(a)は、雨粒RD1、RD2がグリッドの表面に対して垂直に落下したときの様子を表す模式図である。図4の(a)では、検出された圧力が高いほど、その圧力を検出した感知素子110の場所が濃く塗られている。図4の(a)に示されているように、雨粒RD1、RD2の中心に近い部分に衝突した感知素子110ほど、高い圧力を検出している。図4の(b)は、図4の(a)に示されているグリッドの表面に生じる圧力分布を模式的に表す平面図である。図4の(b)では、図4の(a)と同様に、検出された圧力が高いほど、その圧力を検出した感知素子110の場所が濃く塗られている。図4の(b)に示されているように、雨粒RD1、RD2の中心が衝突した感知素子S1、S2が最も高い圧力を検出し、それらの感知素子S1、S2を中心として、圧力を検出した感知素子がほぼ円形の領域に拡がっている。図4の(b)では、その領域の境界が破線C1、C2で示されている。
【0019】
図5の(a)は、雨粒RD3、RD4がグリッドの表面に対して斜めに落下したときの様子を示す模式図である。図5の(a)では、検出された圧力が高いほど、その圧力を検出した感知素子の場所が濃く塗られている。図5の(a)に示されているように、1回の走査時間(1/30秒間)の中でも雨粒RD3、RD4に早く衝突した感知素子ほど、高い圧力を検出している。図5の(b)は、図5の(a)に示されているグリッドの表面に生じる圧力分布を模式的に表す平面図である。図5の(b)では、図5の(a)と同様に、検出された圧力が高いほど、その圧力を検出した感知素子の場所が濃く塗られている。図5の(b)に示されているように、1回の走査時間(1/30秒間)の中で雨粒RD1、RD2に最も早く接触した感知素子S3、S4が最も高い圧力を検出し、圧力を検出した感知素子がほぼ涙滴形状の領域に拡がっている。図5の(b)では、その領域の境界が破線C3、C4で示されている。図5の(a)、(b)から明らかなとおり、各涙滴形状C3、C4の長軸方向D3、D4が雨粒RD3、RD4の速度の水平成分の方向と一致する。
【0020】
信号処理部102は、圧力センサ101によって検出された圧力分布から、図4の(b)又は図5の(b)に示されているような、圧力を検出した感知素子が連続する領域C1、C2、C3、C4を検出する。各領域C1−C4は、一滴の雨粒が衝突した領域として特定される。更に、図5の(b)に示されている領域C3、C4のように、特定された領域が涙滴形状である場合、信号処理部102は、その長軸方向を雨粒の速度の水平成分の方向として特定する。
【0021】
信号処理部102は続いて、特定された各領域において感圧素子110によって検出された圧力の総和を、一滴の雨粒がグリッドに与えた力として算定する。ここで、その力と雨粒の大きさとの間には次のような関係がある。図6は、雨粒の形状を球で近似したときの半径と終端速度、及び、その雨粒が圧力センサ101に衝突した際に圧力センサ101が受ける力との間の関係を示す表である。終端速度とは、空気中を落下する雨粒に働く重力と慣性抵抗とが釣り合ったときの速度をいう。雨粒の速度の垂直成分の大きさは終端速度vfに等しいとみなしてよい。終端速度vfは、雨粒の質量m、重力加速度g=9.8[m/s2]、慣性抵抗の比例定数K=0.3、雨粒の断面積A、及び空気の密度ρ=1.3[kg/m3]を用いて次式で表される:vf=(mg/KAρ)1/2。例えば、雨粒の半径が0.5mmであるとき、水の密度は1.0×103[kg/m3]であるので、終端速度vfは約4[m/s]である。垂直方向では、雨粒は圧力センサ101に終端速度vfで衝突する。このとき、衝突時間は、雨粒が圧力センサ101の表面に接触した瞬間から終端速度vfで自身の直径Rだけ進むのに要する時間R/vfとみなせる。また、その衝突時間R/vfに、雨粒の速度の垂直成分が終端速度vfから0にまで減少すると考えてよい。従って、雨粒の衝突時に圧力センサ101の受ける力Fsは次式で表される:Fs=m×(vf−0)/(R/vf)=m×vf2/R。例えば、雨粒の半径が0.5mmであるとき、圧力センサ101の受ける力Fsは8.3×10-3[N]である。このようにして、図6の表に示されている雨粒の半径と力Fsとの間の関係が計算で得られる。その他に、その関係が実験で決定されてもよい。信号処理部102はその関係を予め記憶している。従って、その関係を利用して、一滴の雨粒がグリッドに与えた力からその雨粒の大きさを求めることができる。
【0022】
更に、図5の(b)に示されている圧力分布の涙滴形状C3、C4の長軸の長さを衝突時間R/vfで割った値は、雨粒の速度の水平成分とみなせる。一方、雨粒の速度の垂直成分は終端速度vfである。従って、信号処理部102は、水平成分と垂直成分との比から、雨粒がグリッドに衝突する角度を算定することができる。
【0023】
図2を再び参照するに、振動発電部104は、圧力センサ101と共に、雨量センサ100の最上層に配置されている。それにより、上下に振動する板状部材が雨量センサ100の表面に露出している。電源制御部105は振動発電部104の下に配置されている。信号処理部102と電源制御部105との下には、μバッテリ106が配置されている。μバッテリ106の下には、通信部103が配置されている。通信部103は最下層に位置しているので、フィルム・アンテナ104からの電波は、他の層に妨げられることなく、外部に放出される。
【0024】
図7は、図1に示されている雨量センサ100を用いた雨量測定方法のフローチャートである。この方法による処理は、雨量センサ100の起動によって開始される。
【0025】
ステップS701では、信号処理部102が所定時間、圧力センサ101のグリッドを所定の周期、例えば1/30秒周期で走査する。それにより、信号処理部102は、その所定時間が経過するまでに、圧力センサ101が、グリッドへの雨粒の衝突に起因する圧力分布を新たに検出したか否かを監視する。圧力センサ101が新たな圧力分布を検出した場合、処理はステップS702へ進み、検出しない場合、処理は終了する。
【0026】
ステップS702では、信号処理部102が、一回の走査で得られたグリッド上の圧力分布の形状を調べる。それにより、信号処理部102は、圧力を検出した感知素子が円形状又は涙滴形状に連続している領域を、一滴の雨粒が衝突した領域として検出する。一般に、そのような領域はグリッド上から複数検出される。その後、処理はステップS703へ進む。
【0027】
ステップS703では、信号処理部102は、ステップS702で検出された領域を一つ選択し、その領域の形状から、その領域に衝突した雨粒の速度の方向を特定する。例えば、その領域の境界が、図4の(b)に示されている破線C1、C2のように円形状である場合、信号処理部102は、その領域に衝突した雨粒の速度の方向が垂直方向であると特定する。一方、その領域の境界が、図5の(b)に示されている破線C3、C4のように涙滴形状である場合、信号処理部102は、その領域の長軸方向D3、D4を、その領域に衝突した雨粒の速度の水平成分の方向であると特定する。その後、処理はステップS704へ進む。
【0028】
ステップS704では、信号処理部102は、ステップS703で選択された領域に含まれる感圧素子によって検出された圧力の総和を求める。その総和は、その領域が一滴の雨粒から受けた力の大きさを表す。その後、処理はステップS705へ進む。
【0029】
ステップS705では、信号処理部102は、図6の表に示されている雨粒の半径と力Fsとの間の関係から、ステップS704で求められた力に対応する雨粒の半径を特定する。その半径は、ステップS703で選択された領域に衝突した雨粒の大きさを表す。その後、処理はステップS706へ進む。
【0030】
ステップS706では、信号処理部102は、ステップS702で検出された領域の中に、ステップS703で選択されていない領域が残っているか否かをチェックする。残っている場合、処理はステップS703から繰り返され、残っていない場合、処理はステップS707へ進む。
【0031】
ステップS707では、信号処理部102は、ステップS702で検出された領域の全てについて、ステップS705で求められた雨粒の半径を通信部103へ伝える。通信部103は更に、それらの雨粒の半径を、パーソナル・コンピュータ等の外部装置へ無線で知らせる。その後、処理はステップS701から繰り返される。一方、その外部装置は、知らされた雨粒の半径から各雨粒の雨量を累算する。具体的には、知らされた半径を持つ球の体積をその雨粒の体積とみなす。こうして、信号処理部102による一回の走査時間、例えば1/30秒間に圧力センサ101によって検出された雨粒全体の雨量が決定される。
【0032】
図8は、図2に示されている雨量センサ100を含む傘801を利用した雨量測定システムのブロック図である。図8を参照するに、このシステムは、傘801、携帯電話802、ネットワーク803、及びサーバ804を含む。傘801の表面には、図2に示されている雨量センサ100を実装したチップが1つ以上貼られている。各雨量センサ100は、圧力センサ101を走査する度に、検出された雨粒の大きさを示す情報INFを通信部103から、傘801を差している人の携帯電話802に転送する。携帯電話802は、転送された情報INFをネットワーク803上のサーバ804へ送る。サーバ804は、転送された情報INFから雨量を累算する。一定の場所に設置された雨量計とは異なり、雨量センサ100は傘801と共に様々な場所へ移動することができる。また、サーバ804は、複数の傘801に貼られた雨量センサ100から情報INFを同時に取得することができる。その結果、図8に示されている雨量測定システムは、既存の雨量計を用いたシステムよりも、局所的な雨量分布を詳細に測定することができる。
【0033】
雨量センサ100を傘801に貼り付けた場合、雨量センサ100は一般に水平方向から傾いている。従って、その傾きに応じて、圧力センサ101によって検出された力の大きさを補正する必要がある。また、傘801は人の歩行に伴って上下に動くので、圧力センサ101が雨粒から受ける力の大きさも人の歩行に伴って変動する。従って、雨量センサ100は、携帯電話802に実装されたジャイロセンサを利用して、人の歩行に起因する上下方向の加速度を計測する。雨量センサ100は更に、計測された加速度に基づいて、圧力センサ101によって検出された力の大きさを補正する。尚、ジャイロセンサは雨量センサ100に組み込まれていてもよい。
【0034】
図9は、図2に示されている雨量センサ100を利用した雨監視システムのブロック図である。図9を参照するに、この雨監視システムは、雨量センサ100、監視装置901、及び、テレビ受像器等の表示装置902を含む。雨量センサ100は、家屋の屋根等、屋外に設置され、雨粒RDの落下方向と大きさとを示す情報INFを通信部103から屋内の監視装置901へ送る。監視装置901は、その情報INFの取得に応じて、雨を知らせる旨のメッセージを表示装置902に表示させる。監視装置901は更に、例えば、雨粒の落下方向から「ベランダに干した洗濯物に雨が当たるか否か」を判断し、雨粒の大きさから「雨が鉢植えの花に損傷を与えるか否か」を判断し、それぞれの判断の結果を表示装置902に表示させる。
【0035】
図10は、図2に示されている雨量センサ100を利用した自動車間通信装置のブロック図である。この自動車間通信装置は自動車に搭載され、別の自動車に搭載された自動車間通信装置との間で通信を行う。この通信を利用して、複数の自動車をネットワークで接続する。それにより、一台の自動車が遭遇する渋滞、天候、路面状態、交通事故等の情報が、遠方の自動車にも伝達される。このような情報の共有により、安全性の更なる確保を図ることができる。
【0036】
図10を参照するに、自動車間通信装置は、雨量センサ100、監視部1001、受信部1002、復調部1003、制御部1004、変調部1005、及び送信部1006を含む。雨量センサ100は、自動車の屋根又はボンネットに設置され、雨粒の大きさを示す情報INFを通信部103から監視部1001へ送る。監視部1001は、その情報INFに応じて、制御部1004に雨を知らせる。監視部1001は更に、雨粒の大きさを変調部1005へ知らせる。受信部1002は、他の自動車から信号を受け取って復調部1003へ渡す。復調部1003は、受信部1002によって受け取られた信号から情報を解読して制御部1004へ渡す。制御部1004は、復調部1003によって解読された情報を処理する。制御部1004はまた、他の自動車へ伝えるべき情報を生成して変調部1005へ渡す。制御部1004はその他に、監視部1001から雨が通知されたとき、窓を閉め、かつワイパーを起動させる。変調部1005は、制御部1004によって生成された情報で搬送波を変調する。ここで、搬送波の周波数はテラヘルツ帯域に属し、搬送波の波長が雨粒の大きさに近いので降雨減衰が生じやすい。「降雨減衰」とは、電波が雨粒によって吸収され、又は反射されて減衰することをいう。降雨減衰の防止を目的として、変調部1005は搬送波の周波数を、監視部1001から知らされた雨粒の大きさに応じて調整する。送信部1006は、変調部1005によって変調された搬送波を送信する。
【0037】
図2に示されているように、本発明の実施形態による雨量センサ100は一つのチップに集積化されている。それにより、例えば図8に示されているように、雨量センサ100を傘801に貼って持ち運ぶことができる。このように、雨量センサ100は小型である。一方、雨量センサ100は、図4、5に示されているように、圧力センサ101に衝突する雨粒一つ一つの大きさを測定する。それにより、雨量センサ100は雨粒単位で雨量を累算する。従って、雨量センサ100による雨量の測定精度は高い。
【0038】
《変形例》
【0039】
図2に示されている構造では、雨量センサ100は、複数のチップが積層された三次元集積回路である。その他に、それらのチップが二次元的に配置された構造であってもよい。
【0040】
図2に示されている構造では、雨量センサ100は、振動発電部104を利用して雨粒の運動エネルギーから電力を得る。その他に、雨量センサ100が太陽電池を利用して太陽光から電力を得てもよい。また、雨量センサ100が電池又は商用電源から電力を得てもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、雨量を測定する技術に関し、上記のとおり、圧力センサを利用して一滴の雨粒の大きさを計測する。このように、本発明は明らかに産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 雨量センサ
101 圧力センサ
102 信号処理部
103 通信部
104 振動発電部
105 電源制御部
106 μバッテリ
110 感圧素子
131 フィルム・アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受けた圧力に応じたレベルで電気信号を出力する感圧素子であって、雨粒のサイズの下限よりもサイズが小さい感圧素子が複数、配列されたグリッドを含み、前記グリッドに一滴の雨粒が衝突した際に前記グリッド上の圧力分布を検出する圧力センサ、及び、
前記圧力分布から、前記一滴の雨粒が衝突した前記グリッド上の領域を特定し、前記領域の受けた衝撃の大きさから前記一滴の雨粒の大きさを算定する信号処理部、
を備えた雨量センサ。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記領域の形状から、前記一滴の雨粒が前記領域に衝突した際の前記一滴の雨粒の速度の方向を特定する、請求項1に記載の雨量センサ。
【請求項3】
雨粒の衝撃を受けて振動する部材を含み、前記部材の振動を電力に変換する振動発電部、
二次電池を含み、前記二次電池を利用して電力を蓄える蓄電部、及び、
前記振動発電部によって変換された電力を利用して前記二次電池を充電する電源制御部、
を更に備え、
前記信号処理部は、前記蓄電部に蓄えられた電力で駆動する、
請求項1に記載の雨量センサ。
【請求項4】
外部の装置と無線で通信する通信部を更に備え、
前記信号処理部は、前記通信部を通して外部の装置から前記グリッドの傾き又は速度に関する情報を取得し、前記情報を利用して前記圧力分布を補正する、
請求項1に記載の雨量センサ。
【請求項5】
外部から受けた圧力に応じたレベルで電気信号を出力する感圧素子であって、雨粒のサイズの下限よりもサイズが小さい感圧素子が複数、配列されたグリッドで雨粒を受けて、前記グリッドに一滴の雨粒が衝突した際に、前記グリッド上の圧力分布を検出するステップ、
前記圧力分布から、前記一滴の雨粒が衝突した前記グリッド上の領域を特定するステップ、
前記領域の受けた衝撃の大きさから前記一滴の雨粒の大きさを算定するステップ、及び、
前記一滴の雨粒の大きさから雨量を算定するステップ、
を有する雨量測定方法。
【請求項6】
前記領域の形状から、前記一滴の雨粒が前記領域に衝突した際の前記一滴の雨粒の速度の方向を特定するステップ、
を更に有する、請求項5に記載の雨量測定方法。
【請求項7】
外部の装置から前記グリッドの傾き又は速度に関する情報を取得するステップ、及び、
前記情報を利用して前記圧力分布を補正するステップ、
を更に有する、請求項5に記載の雨量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−79828(P2013−79828A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218888(P2011−218888)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)