説明

雨除け装置及び雨除け構造

【課題】比較的簡易な着脱(装着)作業で取り付け可能で、接合部に雨水等が浸入するのを防止することができる雨除け装置及び雨除け構造を提供すること。
【解決手段】雨除け装置30は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部31と、柱12の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、笠部31の上面の辺から起立した帯部32と、を備え、笠部31は、柔軟性を有するシート状素材からなる。笠部31は、柱12の平断面の四角形状の各辺を短辺とする長方形状の面取り面33と、面取り面33の間に形成される三角形状の覆い面34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力ボルトにより柱梁接合又は柱柱接合を行う場合に適用される雨除け装置及び雨除け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に記載された柱梁接合部や、特許文献2に記載された柱柱接合部において、高力ボルトによる接合作業が行われている。
【0003】
高力ボルトを用いる場合、ボルト締め付け時のトルク管理が重要であるが、水に濡れた状態で、高力ボルトを締め付けると、トルク係数が変動し、トルク管理が困難となる。従って、雨天時には、高力ボルトによる接合作業を行わないのが一般的である。そのため、雨天が長く続くと、工期が長引いてしまうという課題がある。
【0004】
特許文献3、4には、天候に左右されず雨天においても接合作業を行いうる装置が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−058620号公報
【特許文献2】特開2001−262700号公報
【特許文献3】実開平05−64223号公報
【特許文献4】特開2003−328350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの装置は、剛性を有する素材、或いは、シートとシートの形状を保持する枠との組み合わせにより構成されているので、例えば、作業者の頭上であって、作業者と干渉しない高い位置に設置する必要がある。そのため、風を伴う降雨時での使用を想定すると、濡らしたくない部位を覆うためには、装置のサイズを大きくする必要があり、これらの装置は、着脱(装着)作業が容易でないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な着脱(装着)作業で取り付け可能で、接合部に雨水等が浸入するのを防止することができる雨除け装置及び雨除け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の雨除け装置の一態様は、鋼管からなる柱の周囲に巻き付けて使用する雨除け装置であって、正四角錐の頂点が、前記柱の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、前記上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部と、前記柱の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、前記笠部の上面の辺から起立した帯部と、を備え、前記笠部は、柔軟性を有するシート状素材からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部は、前記柱の平断面の四角形状の各辺を短辺とする長方形状の面取り面と、前記面取り面の間に形成される三角形状の覆い面とを有する。
【0010】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部は、前記柱の平断面の四角形状の各辺を上底とする台形状の覆い面を有する。
【0011】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部の下端付近に、前記柱に接合される梁への定着手段、を更に備える。
【0012】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記定着手段が、前記面取り面の下端付近に装着される。
【0013】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部の下辺に接続する延長笠部、を更に備える。
【0014】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記定着手段が、磁石である。
【0015】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記帯部を前記柱に磁着させる為の磁石を、更に備える。
【0016】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部から前記帯部に至る着脱手段を有する閉じ合わせ手段、を更に備える。
【0017】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記帯部の内面側に弾性を有する止水材を備える。
【0018】
本発明の雨除け装置の一態様は、前記笠部が光の透過性を有する素材からなる。
【0019】
本発明の雨除け構造の一態様は、H形鋼からなり、端部に高力ボルトが挿通されるボルト挿通孔を有する接合板が設けられた梁と、角形鋼管からなり側面にタップ孔を有する梁接合面が設けられた柱とを、高力ボルトにより接合する柱梁接合部において、上記雨除け装置を用いる雨除け構造であって、前記笠部の下辺の一部が前記梁に接触するように、前記柱梁接合部より上方の前記柱の位置に前記帯部が巻き付けられることを特徴とする。
【0020】
本発明の雨除け構造の一態様は、角形鋼管からなり、所定の高さに梁が接合された下部柱と、前記下部柱の上端に接合される上部柱とを、高力ボルトにより接合する柱柱接合部において、上記雨除け装置を用いる雨除け構造であって、前記笠部の下辺の少なくとも一部が前記柱柱接合部より低位となるように、前記柱柱接合部の直上に、前記帯部が巻き付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る雨除け装置及び雨除け構造によれば、比較的簡易な着脱(装着)作業で取り付け可能で、接合部に雨水等が浸入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ノンブラケット方式で接合される柱梁接合部の分解側断面図である。
【図2】イーカプラ工法を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る雨除け装置の構成を示す斜視図である。
【図4】帯部が柱に巻き付けらけた状態で、柱の真上から笠部を見た平面図である。
【図5】本実施の形態に係る雨除け装置の別の構成を示す斜視図である。
【図6】帯部が柱に巻き付けらけた状態で、柱の真上から笠部を見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、この実施の形態は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明は記載された実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
(一実施の形態)
本発明に係る雨除け装置は、高力ボルトにより柱と梁又は柱と柱とを接合する場合に好適である。
【0025】
(柱梁接合部)
始めに、本発明に係る雨除け装置を適用する柱梁接合部について説明する。
【0026】
本発明に係る雨除け装置は、所謂ノンブラケット方式を用いて柱と梁とを接合する場合に好適である。ブラケット方式は、柱から突出したブラケットと梁とを接合するのに対し、ノンブラケット方式は、柱からブラケットを突出させずに、柱と梁とを接合する(特許文献1参照)。以下、図1を用いて、ノンブラケット方式について説明する。
【0027】
図1は、ノンブラケット方式で接合される柱梁接合部の分解側断面図である。
【0028】
柱12の側面の所定高さには、複数のタップ孔15を有する梁接合面13が設けられている。タップ孔15は、タップ加工されており、タップ孔15には、高力ボルト14がねじ込まれる。
【0029】
高力ボルト14には、ピンテールを有するトルシア形高力ボルトであって、所定の締め付けトルクが作用した際に、ピンテールが破断され締め付けが終了する、トルク管理が容易(トルク測定不要)なボルトが用いられる。
【0030】
柱12の梁接合面13に接合される梁11は、H形鋼からなり、端部に梁接合面13に当接される接合板(エンドプレート)16を備えている。
【0031】
接合板16には、タップ孔15に対応する位置に、高力ボルトが挿通されるボルト挿通孔17が穿設されている。
【0032】
そして、柱12と梁11とは、柱12の梁接合面13と梁11の接合板16とを当接した状態で、高力ボルト14を接合板16のボルト挿通孔17に挿通するとともに、タップ孔15に締結することにより接合される。
【0033】
(柱柱接合部)
次に、本発明に係る雨除け装置を適用する柱柱接合部について説明する。
【0034】
本発明に係る雨除け装置は、無溶接継手工法を用いて柱と柱とを接合する場合に好適である。無溶接継手工法には、「イーカプラ(登録商標)工法」がある(特許文献2参照)。イーカプラ工法は、角形鋼管柱専用の無溶接継手工法である。
【0035】
図2は、イーカプラ工法を説明するための図である。
【0036】
工場にて、柱柱接合部(柱継ぎ部)の上下の角形鋼管柱である上部柱21a、下部柱21bの端部にコラムカプラー22が溶接接合される。そして、現場にて、コーナークリッパー23と高力ボルト24とを用いて、上下のコラムカプラー22がくさびの原理で機械的に接合される。
【0037】
高力ボルト24には、ピンテールを有するトルシア形高力ボルトであって、所定の締め付けトルクが作用した際にピンテールが破断され締め付けが終了するトルク管理が容易(トルク測定不要)なボルトが用いられる。
【0038】
(雨除け装置の構成1)
次に、本実施の形態に係る雨除け装置の構成について説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態に係る雨除け装置30の構成を示す斜視図である。なお、図3は、雨除け装置30を柱12に設置した例を示している。
【0040】
本実施の形態に係る雨除け装置30は、笠部31と、帯部32と、を備える。笠部31は、雨水等により、柱梁接合部又は柱柱接合部が濡れるのを防止するための部位である。笠部31の詳細な構成については、後述する。帯部32は、柱12に巻き付けられて、雨除け装置30を柱12に固定するための部位である。帯部32は、作業者により、柱12に巻き付けられる。
【0041】
笠部31及び帯部32のうち、少なくとも笠部31は、柔軟性を有するシート状素材からなる。柔軟性を有するシート状素材としては、例えば、テント生地等として使用される素材であるターポリンがある。ターポリンは、ポリエステルの織物に塩化ビニールを貼り合わせたものである。これにより、笠部31が梁等の鉄鋼部材と接触した場合においても、笠部31が破損する頻度を低減することができる。
【0042】
次に、図3及び図4を用いて、笠部31について説明する。図4は、帯部32が柱12に巻き付けらけた状態で、柱12の真上から笠部31を見た平面図である。
【0043】
笠部31は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状と大きさ及び形状がほぼ一致し、柱12の平断面を含む面(以下、「上面」という)で切り取られた略「正四角錐」状を形成する。すなわち、笠部31の上辺の長さは、雨除け装置30が取り付けられる柱12の平断面形状(辺の長さ)に対応している。略「正四角錐」状を形成する笠部31の上面及び底面は、開口されている。
【0044】
また、笠部31は、上面の各辺を短辺とする長方形から形成される面取り面33を有する。
【0045】
また、笠部31は、面取り面33と面取り面33との間に、三角形状の覆い面34を有する。なお、隣り合う面取り面33の長辺が、覆い面34を形成する三角形の対辺となるように、面取り面33と覆い面34とは繋ぎ合わせられている。
【0046】
すなわち、笠部31は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状と大きさ及び形状がほぼ一致する面(上面)で切り取られ、正四角錘の斜辺が、面取り面33で「面取り」された略「正四角錐」状を形成する。
【0047】
なお、ここで略「正四角錘」状は、雨除け装置30を柱12の周囲に巻き付けて、笠部31の各面を撓んだり折れ曲がったりすることなく伸ばした状態での形状であって、実際の使用状況では、笠部31の素材の柔軟性によって萎縮した状態となる。
【0048】
なお、笠部31は、柱12に接合される梁11に定着するために、笠部31の下端付近に、例えば、磁石からなる定着部35を有するようにしてもよい。これにより、定着部35を梁11に定着させることができるので、笠部31がめくれ上がるのを防止し、笠部31のバタつきを抑えることができる。また、定着部35を面取り面33の下端付近に装着するようにすると、笠部31が形成する略「正四角錐」状の斜辺が、梁11の上位に位置するようになる。これにより、笠部31の内部空間を確保することができるため、作業がしやすくなる。
【0049】
なお、笠部31の下辺に、延長笠部36を設けるようにしてもよい。例えば、笠部31の下辺を底辺とする略三角形状の延長笠部36を設けるようにしてもよい。延長笠部36が、梁11の両側に、梁11の上端より垂れ下がるので、雨除け機能を向上させることができる。
【0050】
帯部32は、柱12の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、笠部31の上面の辺から面取り面33を延長するように起立している。これにより、帯部32を、柱12の4つの側面に接した状態で取り付けることができ、柱12に雨除け装置30を固定しやすく、また、柱12の側面を伝い落ちる雨水等が帯部32と柱12との間から浸入するのを防止することができる。なお、帯部32が起立する角度は、笠部31の上面に対して垂直であると好適である。
【0051】
なお、帯部32の内面であって、柱12に接着される側の面に、止水材を接着すると、耐防水性を向上させることができる。止水材には、板状の天然ゴム等の弾性を有する素材を用いることができる。
【0052】
また、帯部32の内面であって、柱12に接着される面に、ポケット等の収納部を設け、収納部内に、板状の磁石が収容されるようにしてもよい。例えば、柱12の4つの面に接着される4箇所にポケットを設け、各ポケット内に板状の磁石を収容する場合には、雨除け装置30がずり落ちにくくなって、雨除け装置30を柱12に巻き付けやすくなる。また、磁石を用いることにより、設置位置の微調整が容易となるため、雨除け装置30を柱12の最適な位置に設置しやすくなる。なお、帯部32に止水材が接着される場合には、磁石が止水材と柱12との間に収納されるように、収納部を設ける必要がある。
【0053】
また、柱12の4つの側面に帯部32が巻き付けられた状態で、帯部32の一方の端と他方の端とを接着するために、帯部32の一方の端に接着部(図示せぬ)を設け、接着部と帯部32の他方の端とを接着させるようにするとよい。これにより、帯部32が柱12の4つの側面にしっかりと巻き付けられるので、雨除け装置30がずり落ちるのを抑えることができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る雨除け装置30は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部31と、柱12の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、笠部31の上面の辺から起立した帯部32と、を備える。笠部31は、柔軟性を有するシート状素材からなり、柱12の平断面の四角形状の各辺を短辺とする長方形状の面取り面33と、面取り面33の間に形成される三角形状の覆い面34とを有する。
【0055】
これにより、比較的簡易な着脱(装着)作業で、雨除け装置30を取り付けることができる。また、笠部31は、長方形、三角形等の単純な形状の柔軟性を有するシート状素材から形成されるため、雨除け装置30を比較的容易に、低コストで製作することができる。また、未使用時に、雨除け装置30をコンパクトに折り畳むことができるため、収納スペースを削減することができる。また、収納スペースを取らず、破損しにくいため、作業現場への運搬時等において取り扱いやすく、運搬時等に、雨除け装置30が破損する頻度を低減することができる。
【0056】
(雨除け装置の構成2)
次に、本実施の形態に係る雨除け装置の別の構成について説明する。
【0057】
図5は、本実施の形態に係る雨除け装置40の構成を示す斜視図である。なお、図5は、雨除け装置40を柱12に設置した例を示している。図5の雨除け装置40において、図3の雨除け装置30と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施の形態に係る雨除け装置40は、笠部41と、帯部32と、を備える。笠部41は、雨水等により、柱梁接合部又は柱柱接合部が濡れるのを防止するための部位である。笠部41の詳細な構成については、後述する。帯部32は、柱12に巻き付けられて、雨除け装置40を柱12に固定するための部位である。帯部32は、作業者により、柱12に巻き付けられる。
【0059】
笠部41及び帯部32のうち、少なくとも笠部41は、柔軟性を有するシート状素材からなる。柔軟性を有するシート状素材としては、例えば、テント生地等として使用される素材であるターポリンがある。これにより、笠部41が梁等の鉄鋼部材と接触した場合においても、笠部41が破損する頻度を低減することができる。
【0060】
次に、図5及び図6を用いて、笠部41について説明する。図6は、帯部32が柱12に巻き付けらけた状態で、柱12の真上から笠部41を見た平面図である。
【0061】
笠部41は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面と大きさ及び形状がほぼ一致し、柱12の平断面を含む面(上面)で切り取られた略「正四角錐」状を形成する。すなわち、笠部41の上辺の長さは、雨除け装置40が取り付けられる柱12の平断面形状(辺の長さ)に対応している。略「正四角錐」状を形成する笠部41の上面及び略「正四角錐」状の底面は、開口されている。
【0062】
また、笠部41は、笠部41の上面を形成する四角の各辺を上底とする台形状の覆い面42を有する。より具体的には、覆い面42は、笠部41の上面を形成する四角の各辺を上底とする等脚台形とする。なお、隣り合う覆い面42の辺同士は、繋ぎ合わせられている。これにより、台形状の覆い面42の下底は、略「正四角錘」状の下面を形成する。
【0063】
なお、ここで略「正四角錘」状は、雨除け装置40を柱12の周囲に巻き付けて、笠部41の各面を撓んだり折れ曲がったりすることなく伸ばした状態での形状であって、実際の使用状況では、笠部41の素材の柔軟性によって萎縮した状態となる。
【0064】
雨除け装置30と雨除け装置40とを比較すると、覆い面42に、面取り面33が含まれている。
【0065】
なお、笠部41は、覆い面42の下底の中央付近に、例えば、磁石からなる定着部43を有するようにしてもよい。これにより、定着部43を梁11に定着させることができるので、笠部41がめくれ上がるのを防止し、笠部41のバタつきを抑えることができる。
【0066】
また、覆い面42の下底の中央付近を梁11に定着させることにより、隣り合う定着部43の間の覆い面42が、梁11と梁11との間に、梁11の上端より垂れ下がって、雨除け機能を向上させることができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態に係る雨除け装置40は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部41と、柱12の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、笠部41の上面の辺から起立した帯部32と、を備える。笠部41は、柔軟性を有するシート状素材からなり、柱12の平断面の四角形状の各辺を上底とする台形状の覆い面42を有する。
【0068】
これにより、比較的簡易な着脱(装着)作業で、雨除け装置40を取り付けることができる。また、笠部41は、台形等の単純な形状の柔軟性を有するシート状素材から形成されるため、雨除け装置40を、比較的容易に、低コストで製作することができる。また、未使用時に、雨除け装置40をコンパクトに折り畳むことができるため、収納スペースを削減することができる。また、収納スペースを取らず、破損しにくいため、作業現場への運搬時等において取り扱いやすく、運搬時等に、雨除け装置40が破損する頻度を低減することができる。
【0069】
以上、本実施の形態に係る雨除け装置の構成について説明した。
【0070】
なお、笠部31、41から帯部32にかけて、縦方向に着脱手段を有する閉じ合わせ部37、44を備えるようにしてもよい。閉じ合わせ部37、44には、例えば、面ファスナー等を利用することができる。これにより、雨除け装置30、40の着脱(装着)作業が更に容易となる。また、閉じ合わせ部37、44を帯部32から絞り込みできるようにしてもよい。これにより、閉じ合わせ部37、44から雨水等が浸入するのをより確実に防止することができる。なお、閉じ合わせ部37、44の位置は、図4、図6に示した位置に限定されるものではない。
【0071】
また、面取り面33と覆い面34との間、覆い面42と覆い面42との間、笠部31、41と帯部32との間等の継ぎ目は、高周波ウエルダー加工されていると、防水及び強度に優れ好適である。
【0072】
また、笠部31、41が、光の透過性を有する素材から形成するようにすると、笠部31、41の内部が暗くなるのが軽減されて、作業がしやすくなる。
【0073】
なお、雨除け装置30、40を柱柱接合時に用いる場合には、作業者が笠部31、41の中に入って接合作業を行うので、柱柱接合部用の雨除け装置30、40は、柱梁接合部用の雨除け装置30、40に比べてサイズが大きい。サイズが大きくなるほど、雨除け装置30、40の重量は重くなり、笠部31、41がめくれ上がる頻度が少なくなるので、柱柱接合部用の雨除け装置30、40には、定着部35,43を設けなくてもよい。また、サイズが大きくなるほど、内部が暗くなるので、柱柱接合部用の雨除け装置30、40は、光の透過性を有する透明あるいは半透明の素材を用いて笠部31、41を形成するのが好ましい。
【0074】
(施工方法1)
次に、上記のように構成された雨除け装置30、40を用いて、柱と梁とを接合する施工方法について説明する。
【0075】
(1)柱12を立設する。
(2)柱12に梁11を仮接合(仮ボルトで仮締め)する。仮接合は、対角に2箇所行う。
(3)雨除け装置30(又は雨除け装置40)が柱梁接合部を覆うように、帯部32を、柱梁接合部の上方の柱12に巻き付ける。
(4)定着部35(又は定着部43)を用いて笠部31(又は笠部41)の下端付近を梁11に磁着させる。
(5)下方より高力ボルト14で本接合(本ボルトで本締め)する。
【0076】
(施工方法2)
上記のように構成された雨除け装置30、40を用いて、柱と柱とを接合する施工方法について説明する。
【0077】
(1)下部柱21bを立設する。
(2)下部柱21bに下階梁11を接合する。なお、下部柱21bと下階梁11との接合には、上述の施工方法1を用いる。
(3)上部柱21aを吊り上げ、下部柱21bの上方に移動させる。
(4)雨除け装置30(又は雨除け装置40)が、柱柱接合部を覆うような上部柱21aの位置に、帯部32を巻き付ける。
(5)上部柱21aを下げ、下部柱21bと嵌合させる。
(6)雨除け装置30の笠部31(又は雨除け装置40の笠部41)の中に入り、高力ボルト24で上部柱21aと下部柱21bとを接合する。
【0078】
なお、施工方法2において、(3)と(4)との順序を入れ替え、上部柱21aを吊り上げる前に、帯部32を上部柱21aに巻き付けておくようにしてもよい。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る雨除け装置30、40は、正四角錐の頂点が、柱12の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部31、41と、柱12の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、笠部31、41の上面の辺から起立した帯部32と、を備え、笠部31、41は、柔軟性を有するシート状素材からなる。
【0080】
これにより、比較的簡易な着脱(装着)作業で、雨除け装置30、40を取り付けることができる。また、雨除け装置30、40を構成する部位は、長方形、三角形、台形等の単純な形状であり、シート状素材から形成するため、比較的容易に、低コストで製作することができる。また、未使用時に、雨除け装置30、40をコンパクトに折り畳むことができるため、収納スペースを削減することができる。また、梁等の鉄鋼部材と接触した場合においても、雨除け装置30、40が破損する頻度を低減することができる。また、収納スペースを取らず、破損しにくいため、作業現場への運搬時等において取り扱いやすく、運搬時等に、雨除け装置30、40が破損する頻度を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る雨除け装置及び雨除け構造は、高力ボルトにより柱梁接合又は柱柱接合を行う場合の雨除け装置等として有用である。
【符号の説明】
【0082】
11 梁
12 柱
13 梁接合面
14 高力ボルト
15 タップ孔
16 接合板
17 ボルト挿通孔
21a 上部柱
21b 下部柱
22 コラムカプラー
23 コーナークリッパー
24 高力ボルト
30、40 雨除け装置
31、41 笠部
32 帯部
33 面取り面
34、42 覆い面
35、43 定着部
36 延長笠部
37、44 閉じ合わせ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる柱の周囲に巻き付けて使用する雨除け装置であって、
正四角錐の頂点が、前記柱の平断面の四角形状に対応する上面で切り取られた略「正四角錐」状を形成し、前記上面及び略「正四角錐」状の底面が開口された笠部と、
前記柱の平断面の四角形状の周囲の長さに対応した長さを有し、前記笠部の上面の辺から起立した帯部と、を備え、
前記笠部は、柔軟性を有するシート状素材からなることを特徴とする、
雨除け装置。
【請求項2】
前記笠部は、前記柱の平断面の四角形状の各辺を短辺とする長方形状の面取り面と、
前記面取り面の間に形成される三角形状の覆い面とを有する、
請求項1に記載の雨除け装置。
【請求項3】
前記笠部は、前記柱の平断面の四角形状の各辺を上底とする台形状の覆い面を有する、
請求項1に記載の雨除け装置。
【請求項4】
前記笠部の下端付近に、前記柱に接合される梁への定着手段、を更に備える、
請求項1ないし3に記載の雨除け装置。
【請求項5】
前記定着手段が、前記面取り面の下端付近に装着される、
請求項4に記載の雨除け装置。
【請求項6】
前記笠部の下辺に接続する延長笠部、を更に備える、
請求項2に記載の雨除け装置。
【請求項7】
前記定着手段が、磁石である、
請求項4ないし6に記載の雨除け装置。
【請求項8】
前記帯部を前記柱に磁着させる為の磁石を、更に備える、
請求項1ないし7に記載の雨除け装置。
【請求項9】
前記笠部から前記帯部に至る着脱手段を有する閉じ合わせ手段、を更に備える、
請求項1ないし8に記載の雨除け装置。
【請求項10】
前記帯部の内面側に弾性を有する止水材を備える、
請求項1ないし9に記載の雨除け装置。
【請求項11】
前記笠部が光の透過性を有する素材からなる、
請求項1ないし10に記載の雨除け装置。
【請求項12】
H形鋼からなり、端部に高力ボルトが挿通されるボルト挿通孔を有する接合板が設けられた梁と、角形鋼管からなり側面にタップ孔を有する梁接合面が設けられた柱とを、高力ボルトにより接合する柱梁接合部において、請求項1ないし11の雨除け装置を用いる雨除け構造であって、
前記笠部の下辺の一部が前記梁に接触するように、前記柱梁接合部より上方の前記柱の位置に前記帯部が巻き付けられることを特徴とする、
雨除け構造。
【請求項13】
角形鋼管からなり、所定の高さに梁が接合された下部柱と、前記下部柱の上端に接合される上部柱とを、高力ボルトにより接合する柱柱接合部において、請求項1ないし11の雨除け装置を用いる雨除け構造であって、
前記笠部の下辺の少なくとも一部が前記柱柱接合部より低位となるように、前記柱柱接合部の直上に、前記帯部が巻き付けられることを特徴とする、
雨除け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23853(P2013−23853A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157808(P2011−157808)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)