説明

雨雪検出装置

【課題】降雨および降雪の検出精度を向上させる雨雪検出装置を提供する。
【解決手段】第1周辺光受光素子41および第2周辺光発光素子42は、前方光6および上方光7を受光し、前方光6および上方光7の強度に応じた信号を出力する。反射光受光素子70は、第2導光体60を透過した赤外線8を受光し、赤外線8の強度に応じた信号を出力する。制御装置90は、反射光受光素子70の出力に基づいて降雨を判断する降雨判断処理、ならびに、第1周辺光受光素子41、第2周辺光受光素子42、および反射光受光素子70の出力に基づいて降雪を判断する降雪判断処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨雪検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウィンドシールドに付着した雨および雪を検出する雨雪検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の雨雪検出装置は、赤外線を射出可能な発光素子、および、当該発光素子が射出した赤外線のうちウィンドシールドと車両外部との境界面で反射された赤外線を受光する受光素子を備える。この雨雪検出装置は、雨または雪のウィンドシールドへの付着による受光素子の出力の低下を検出し、受光素子の出力が所定値以下になると、降雨または降雪と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−071491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、雨と湿雪と乾雪とを比較すると、視界遮蔽面積が同じであっても、乾雪のウィンドシールドとの接触面積は小さい(図7参照)。このため、乾雪のウィンドシールドへの付着による受光素子の出力の低下の程度が少なくなる。よって、特許文献1に記載の雨雪検出装置は、ウィンドシールドに付着する雪の種類が乾雪の場合、降雪と判定するのに時間がかかるおそれがある。
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、降雨および降雪の検出精度を向上させる雨雪検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると雨雪検出装置は、ケース、第1導光体、周辺光受光素子、発光素子、第2導光体、および、反射光受光素子を備える。ケースは、乗物のウィンドシールドの室内側に取り付け可能である。第1導光体は、ケースに収容され、ウィンドシールドを透過した乗物の周辺光を伝達する。周辺光受光素子は、ケース内に設けられ、第1導光体を透過した周辺光を受光し、周辺光の強度に応じた信号を出力する。発光素子は、ケース内に設けられ、光を射出可能である。第2導光体は、所定範囲の波長の光を遮蔽可能に着色され、ケースがウィンドシールドに取り付けられた状態において発光素子とウィンドシールドとの間に位置するようケースに収容され、発光素子から射出された光をウィンドシールドへ伝達し、伝達された光のうちウィンドシールドと乗物の外側との境界面で反射した光を伝達する。反射光受光素子は、ケース内に設けられ、境界面で反射された光のうち第2導光体を透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を出力する。雨雪判断手段は、反射光受光素子の出力に基づいて降雨を判断する降雨判断処理、ならびに、反射光受光素子の出力および周辺光受光素子の出力に基づいて降雪を判断する降雪判断処理を行う。
これにより、反射光受光素子の出力および周辺光受光素子の出力を含む複数の出力に基づいて降雪を判断することで、降雪を速やかに検出することができ、降雨および降雪の検出精度を向上させることができる。
【0006】
請求項2に係る発明によると、雨雪判断手段は、降雨判断処理において、反射光受光素子の出力が予め設定された第1閾値を下回ると降雨と判断する。また、雨雪判断手段は、降雪判断処理において、反射光受光素子の出力および周辺光受光素子の出力が同時に低下し、周辺光受光素子の出力が予め設定されている第2閾値を下回る場合、反射光受光素子の出力が第1閾値より大きい第3閾値を下回ると降雪と判断する。これにより、雨雪判断手段の作動を具体的に例示した。
【0007】
請求項3に係る発明によると、周辺光受光素子の出力に基づき、乗物のライトの点消灯を制御するライトの点消灯制御手段をさらに備える。
これにより、受光素子を追加することなく、雨雪検出用の受光素子を利用して乗物のライトの点消灯を制御することができる。よって、新しい部品を追加することなく多機能化を実現することができる。
【0008】
請求項4に係る発明によると、周辺光受光素子は、特定方向の周辺光を受光する第1周辺光受光素子、および、前記特定方向とは異なる方向の周辺光を受光する第2周辺光受光素子を含む。
これにより、乗物の周辺光を広範囲に検知することができ、雪の付着による照度低下をロバストに検出することができる。
【0009】
請求項5に係る発明によると、ウィンドシールドの温度、または、ウィンドシールド近傍の温度を検出する温度検出手段をさらに備える。雨雪判断手段は、温度検出手段により検出された温度が所定閾値以下のとき、降雪判断処理を行う。
雪以外の原因によって周辺光受光素子の出力が低下した場合、降雪時ではなくても降雪と判定するおそれがある。ここで、降雪判断処理の実行条件を、ウィンドシールドの温度、または、ウィンドシールド近傍の温度が所定閾値以下であるという条件に絞ることで、雨雪判断手段による降雪判断処理の誤作動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の雨雪検出装置を示す模式図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】本発明の一実施形態の雨雪検出装置のマイコンの構成を示す模式図。
【図4】(a)本発明の一実施形態の雨雪検出装置の降雪時の周辺光信号を示す特性図、(b)通常の点消灯制御時の周辺光信号を示す特性図。
【図5】本発明の一実施形態の雨雪検出装置の反射光信号を示す特性図。
【図6】本発明の一実施形態の雨雪検出装置の降雪判断処理を示す特性図。(a)反射光信号を示す特性図、(b)周辺光信号を示す特性図。
【図7】(a)反射光においてウィンドシールドに付着する雨の影響を示す模式図、(b)反射光においてウィンドシールドに付着する乾雪の影響を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
本発明の一実施形態による雨雪検出装置を図1〜図3に示す。雨雪検出装置10は、車両のウィンドシールド1に取り付けられる。ここで、ウィンドシールド1は、車両の進行方向前側に設置されるフロントガラスとする。雨雪検出装置10は、ウィンドシールド1のワイパー払拭領域内で、かつ、運転者の視界を妨げないようウィンドシールド1の上方に取り付けられる。図1は、雨雪検出装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態を示している。
【0012】
雨雪検出装置10は、図1に示すようにケース20、第1導光体30、第1周辺光受光素子41、第2周辺光受光素子42、発光素子50、第2導光体60、反射光受光素子70、温度検出装置80、および、制御装置90などを備えている。
雨雪検出装置10は、ウィンドシールド1に付着した雨および雪の量を検出し、ワイパーの払拭モードを制御するのに用いられる。また、雨雪検出装置10は、車両の周辺光を検出し、車両のヘッドライト等のオン/オフ等を制御するのに用いられる。
【0013】
ケース20は、樹脂等からなる遮光材料によって略直方体状に形成されている。ケース20は、有底箱状のケース本体21および板状の蓋部材22を有している。蓋部材22は、ケース本体21の底部とは反対側の端部を覆っている(図1および図2参照)。ケース20の蓋部材22側には、ブラケット2が装着される。ケース20は、ブラケット2を介して接着剤3によりウィンドシールド1の車室内側に取り付けられる。
【0014】
ここで、以下の説明のために、図1においてx軸、y軸およびz軸を示すことでxyz空間を定義する。x軸は車両の前後方向を示し、y軸は車両の左右方向を示し、z軸は車両の上下方向を示す。すなわち、xy平面は車両に対し水平な面(地面)であり、z軸は鉛直方向の直線と一致する。
【0015】
ケース20は、ケース本体21と蓋部材22との間に開口23を有している。ケース20が取り付けられたウィンドシールド1は、x軸(水平)に対して傾斜角θ1を有している。雨雪検出装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態において、車両の周辺光は、ウィンドシールド1を透過し、開口23を通過することでケース20内へ入射可能である。
【0016】
第1導光体30は、開口23の近傍に配置されるよう、ケース20に収容されている。第1導光体30は、例えばポリカーボネート等の樹脂またはガラス等により形成され、透明である。第1導光体30は、入射面31および射出面32を有している。入射面31は、開口23に位置する。入射面31には、ウィンドシールド1を透過した車両の周辺光のうち特定方向の光6が入射する。ここで、「特定方向」とは、車両の前方から車両に向かう方向のことである。つまり、特定方向の光6は、車両前方の光であって、x軸に一致する方向の光である。以下、特定方向の光6を前方光6という。入射面31に入射した前方光6は、第1導光体30の内部を透過し、射出面32から射出される。
【0017】
第1導光体30は、入射面31および射出面32の他に、入射面33および射出面34を有している。入射面33には、ウィンドシールド1を透過した車両の周辺光のうち上方光7が入射する。ここで、上方光7は、車両の上方から車両に向かう方向、すなわち車両上方の光である。上方光7は、z軸に一致する方向の光である。入射面33に入射した上方光7は、第1導光体30の内側と外側との境界面で全反射し、その光路を変更する。第1導光体30の前記境界面で反射された上方光7は、射出面34から射出される。
【0018】
ケース20の内側には、基板11が設けられている。この基板11に、マイコン91、第1周辺光受光素子41、第2周辺光受光素子42、発光素子50、および、反射光受光素子70などが設置されている。
マイコン91は、基板11上の所定の位置に設置されている(図1および2参照)。マイコン91は、制御処理や演算処理を行うCPU、各種プログラムやデータを保存するための読み取り専用メモリ(ROM)や書き込み可能なメモリ(RAM)等のメモリを含む記憶装置、入力回路、出力回路および電源回路等から構成されたICパッケージである。
【0019】
マイコン91は、図3に示すように、概念的に補正部92、点消灯制御部93、雨雪量検出部94および発光制御部95等を有している。ここで、補正部92、点消灯制御部93、雨雪量検出部94および発光制御部95は、上述のCPU、ROM、RAM、各種プログラム、入力回路および出力回路等を組み合わせることにより構成されている。
【0020】
第1周辺光受光素子41は、フォトダイオードまたはフォトトランジスタ等から構成されている。第1周辺光受光素子41は、第1導光体30の射出面32から射出された前方光6を受光可能な位置に設置されている。
【0021】
第1周辺光受光素子41は、受光面411で前方光6を受光すると、前方光6の強度に応じた信号を出力する。本実施形態では、第1周辺光受光素子41は、特に可視光の強度に応じた信号を出力するよう構成されている。第1周辺光受光素子41からの出力信号は、基板11上のマイコン91、およびコネクタ12を経由し制御装置90に伝送される。
【0022】
第2周辺光受光素子42は、第1周辺光受光素子41と同様、フォトダイオードまたはフォトトランジスタ等から構成されている。第2周辺光受光素子42は、第1導光体30の射出面34から射出された上方光7を受光可能な位置に設置されている。第2周辺光受光素子42は、受光面421で上方光7を受光すると、上方光7の強度に応じた信号を出力する。本実施形態では、第2周辺光受光素子42は、第1周辺光受光素子41と同様、特に可視光の強度に応じた信号を出力するよう構成されている。第2周辺光受光素子42からの出力信号は、基板11上のマイコン91、およびコネクタ12を経由して制御装置90に伝送される。このように、第2周辺光受光素子42は、第1周辺光受光素子41と同様、第1導光体30を透過した周辺光を受光する。
【0023】
本実施形態では、発光素子50は、基板11上に、第2周辺光受光素子42を間に挟むようにして2つ設置されている(図2参照)。また、発光素子50は、例えば赤外線を射出可能に構成されている。
【0024】
ケース20の蓋部材22には、中央部に略矩形の開口24が形成されている。第2導光体60は、この開口24から一方の面61が露出した状態となるよう、ケース20に収容されている。雨雪検出装置10がウィンドシールド1に取り付けられるとき、第2導光体60とウィンドシールド1との間には、透明な板状の弾性部材4が、第2導光体60およびウィンドシールド1と接するようにして設けられる。また、第2導光体60は、雨雪検出装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態では、第1周辺光受光素子41、第2周辺光受光素子42および発光素子50とウィンドシールド1との間に位置する。
【0025】
第2導光体60は、ポリカーボネート等の樹脂またはガラス等により形成されている。ここで、第1導光体30と第2導光体60とは同一の材料により形成されている。また、第2導光体60は、所定範囲の波長の光を遮蔽可能に着色されている。本実施形態では、第2導光体60は、例えば可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されている。よって、赤外線は、第2導光体60を透過可能である。
【0026】
反射光受光素子70は、2つの発光素子50からほぼ同じ距離離れた位置に1つ設置されている(図2参照)。反射光受光素子70は、受光面71で光を受光すると、その光の強度に応じた信号を出力する。本実施形態では、反射光受光素子70は、特に赤外線の強度に応じた信号を出力するよう構成されている。
【0027】
図1に示すように、雨雪検出装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態において、発光素子50が赤外線8を射出すると、当該赤外線8は、第2導光体60の他方の面62に入射し、一方の面61から射出される。第2導光体60の一方の面61から射出された赤外線8は、弾性部材4を透過し、ウィンドシールド1と車両外部との境界面5で反射される。境界面5で反射された赤外線8は、再び弾性部材4を透過して第2導光体60の一方の面61に入射し、他方の面62から射出される。反射光受光素子70は、第2導光体60の他方の面62から射出された赤外線8を受光面71で受光する。反射光受光素子70は、受光面71で赤外線8を受光すると、その強度に応じた信号を出力する。反射光受光素子70からの出力信号(以下、「反射光信号」という)は、基板11上のマイコン91に伝送される。
【0028】
第2導光体60の他方の面62は、発光素子50から照射された赤外線8が境界面5で効率的に反射(全反射)されるよう、かつ、境界面5で反射された赤外線8が反射光受光素子70に効果的に到達するよう、レンズ状に形成されている。
【0029】
発光素子50が赤外線8を射出しているとき、ウィンドシールド1の車両外部側に雨滴または雪が付着すると、雨滴または雪の量に応じ、境界面5で反射される赤外線8の量(強度)が低下する。これにより、反射光受光素子70から出力される信号が変化する。そのため、反射光信号が伝送されるマイコン91の雨雪量検出部94は、当該出力信号の変化に基づき、ウィンドシールド1の車両外部側に付着した雨滴または雪の量を検出可能である。当該検出された雨滴または雪の量に関する信号は、コネクタ12を経由し制御装置90に伝送される。
【0030】
本実施形態では、ブラケット2のウィンドシールド1側に温度検出装置80が設けられている。温度検出装置80は、ウィンドシールド1とブラケット2との間に、ウィンドシールド1に当接するよう設けられている。このように、温度検出装置80はウィンドシールド1の温度を検出可能に設けられている。また、温度検出装置80は、制御装置90に電気的に接続されている。温度検出装置80は、特許請求の範囲における「温度検出手段」に対応する。
【0031】
制御装置90は、CPU、ROMおよびRAM等からなる小型のコンピュータである。制御装置90は、ROMに格納された各種プログラムに従い作動する。制御装置90は、車両に取り付けられた各種センサからの情報等に基づき、車両の各種装置類の作動を制御することで、車両の状態を統合的に制御する。
【0032】
制御装置90には、ヘッドライト101およびワイパー102が接続されている(図1参照)。制御装置90は、点消灯制御部93から点消灯制御信号が伝達されると、その信号に応じてヘッドライト101を点灯または消灯する。ここで、点消灯制御部93は、図4(b)に示すように、例えば、時刻Tonで第1周辺光受光素子41からの出力信号と第2周辺光受光素子42からの出力信号とを相加した値(以下、「周辺光信号」という)が点灯判断閾値A0以下になると点灯信号を発生し、時刻Toffで周辺光信号が消灯判断閾値A1より大きくなると消灯信号を発生する。ここで、制御装置90は、特許請求の範囲における「ライトの点消灯制御手段」に対応する。
【0033】
また、制御装置90は、反射光信号に基づき降雨判断処理を行い、反射光信号および周辺光信号に基づき降雪判断を行うことで、ワイパー102の払拭モードを制御する。ここで、制御装置90は、特許請求の範囲における「雨雪判断手段」に対応する。
ここで、制御装置90の降雨判断処理および降雪判断処理について、図5および図6に基づいて説明する。
制御装置90は、降雨判断処理において、図5に示すように、反射光信号が、第1閾値V1より小さい場合に降雨と判断する。また、制御装置90は、降雨判断処理により降雨と判断された場合、マイコン91から伝送された信号に基づき、ワイパー102の払拭モードを制御する。
【0034】
制御装置90は、降雪判断処理において、図6に示すように以下の処理を行う。制御装置90は、温度検出装置80により検出されたウィンドシールド1の温度に基づいて降雪判断処理を行うか否かを判断する。つまり、制御装置90は、温度検出装置80により検出されたウィンドシールド1の温度が所定閾値以下のときのみ、降雪判断処理を行う。ここで、所定閾値は、例えば、乾雪が降る可能性のある大気の温度に設定されている。
【0035】
まず、制御装置90は、反射光信号および周辺光信号が時刻t3で同時に低下すると、周辺光信号に関し第2閾値V2を設定する。そして、制御装置90は、周辺光信号が時刻t4で第2閾値V2を下回ると、反射光信号に関し閾値として第1閾値V1から第3閾値V3に変更する。ここで、第3閾値V3は第1閾値V1より大きい値である。そして、制御装置90は、反射光信号が時刻t5で第3閾値V3を下回ると、降雪と判断する。
制御装置90は、時刻t5で降雪判断処理により降雪と判断した場合、マイコン91から伝送された信号に基づき、ワイパー102の払拭モードを制御する。すると、ウィンドシールド1上の雪はワイパー102の払拭作動により除去される。よって、時刻t6で、反射光信号および周辺光信号は通常の値に戻る。
【0036】
続いて、本実施形態の効果を図5、図6および図7に基づいて説明する。図7は、雨滴および乾雪が車両のウィンドシールド1に付着した状態で、発光素子50から射出された赤外線8が、雨滴または乾雪とウィンドシールド1との境界面5により反射している様子を示す模式図である。
【0037】
図7(a)に示すように、ウィンドシールド1に雨滴が付着した状態で、境界面5で反射する赤外線8(反射光H)は、境界面5で屈折する赤外線8(屈折光K)より少ない。図7(b)に示すように、ウィンドシールド1に乾雪が付着した状態で、境界面5で反射する赤外線8(反射光H)は、境界面5で屈折する赤外線8(屈折光K)より多い。また、雨滴の視界遮蔽面積S1と乾雪の視界遮蔽面積S2とが同じである場合、ウィンドシールド1と乾雪との接触面積はウィンドシールド1と雨滴との接触面積より小さい。このため、図5および図6(a)に示すように、乾雪がウィンドシールド1に付着していくとき反射光受光素子70から出力される信号の変化率は、雨滴がウィンドシールド1に付着していくとき反射光受光素子70から出力される信号の変化率より小さい。よって、反射光信号のみに基づいて、降雨および降雪を検出する従来方法である場合、降雪を検出するのに必要とする時間t7−t3は、降雨を検出するのに必要とする時間t2−t1より長くなる。
【0038】
上述のように、本実施形態では、第1周辺光受光素子41および第2周辺光受光素子42により出力する周辺光信号、ならびに、反射光受光素子70により出力する反射光信号に基づいて降雪判断処理を行う。これにより、本実施形態では、例え、ウィンドシールド1に付着する雪の種類が乾雪であっても、反射光信号のみに基づいて降雨および降雪を判断する従来の方法より速く降雪を判断することができる(図6(a)参照、(t5−t3)<(t7−t3))。このため、降雪の検出精度を向上させることができ、ワイパー102の制御が遅くなることを抑制することができる。よって、ウィンドシールド1に付着する雪の種類が乾雪であっても、ワイパー102を速やかに始動させることができる。すると、ウィンドシールド1上の乾雪はワイパー102の払拭作動により除去され、反射光信号および周辺光信号は時刻t6で通常の値に戻る。これに対し、反射光信号のみに基づいて降雨および降雪を判断する従来の方法である場合、ワイパー102は時刻t7で作動し、反射光信号および周辺光信号は時刻t8で通常の値に戻る。
【0039】
また、本実施形態では、降雪判断処理において、反射光信号および周辺光信号が同時に低下するとき第2閾値V2を設定し、周辺光信号が第2閾値V2を下回るとき第1閾値V1を第1閾値V1より大きい第3閾値V3に変更し、反射光信号が第3閾値V3を下回ると降雪と判断する。これにより、乾雪以外の原因による誤検出を抑制し、降雪の検出精度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、第1周辺光受光素子41および第2周辺光受光素子42からの周辺光信号に基づく点消灯制御部93の点消灯制御信号により、ヘッドライト101の点灯および消灯を制御する。これにより、新しい受光素子を追加することなく、雨雪検出用の第1周辺光受光素子41および第2周辺光受光素子42を利用してヘッドライト101の点消灯を制御することができる。よって、新しい部品を追加することなく多機能化を実現することができる。
【0041】
また、本実施形態では、x軸に一致する方向の光である前方光6を受光する第1周辺光受光素子41、および、z軸に一致する方向の光である上方光7を受光する第2周辺光受光素子42により周辺光信号を検出する。これにより、車両の周辺光を広範囲に検知することができ、雪の付着による照度低下をロバストに検出することができる。
【0042】
本実施形態では、ウィンドシールド1の温度を検出する温度検出装置80を備え、温度検出装置80により検出されたウィンドシールド1の温度が所定閾値以下のときのみ、降雪判断処理を行う。これにより、温度検出装置80を設け、降雪判断処理の実行条件を、ウィンドシールド1の温度が所定閾値以下であるという条件に絞ることで、雪以外の原因により反射光受光素子70、第1周辺光受光素子41および第2周辺光受光素子42の出力が同時に低下することで、降雪と判断することが抑制される。よって、降雪の誤判断を抑制することができる。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施形態では、雨雪検出装置は、乗物としての車両に取り付けられている。これに対し、他の実施形態では、雨雪検出装置を電車、飛行機、および、船等の乗物の室内または室外に取り付けることとしても良い。
上記実施形態では、雨雪判断手段の全部がケースの外部に設けられている。これに対し、他の実施形態では、雨雪判断手段の一部をケース内に設けること、または、雨雪判断手段の全部をケース内に設けることとしても良い。
上記実施形態では、温度検出装置は、ウィンドシールドの温度を検出可能に設けられている。これに対し、他の実施形態では、温度検出装置は、乗物の室内側または室外側のウィンドシールド近傍の温度を検出可能に設けることとしても良い。
上記実施形態では、第2周辺光受光素子は、特定方向に略垂直な方向の周辺光を受光する。これに対し、他の実施形態では、第2周辺光受光素子は特定方向とは異なる様々な方向の周辺光を受光することとしても良い。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ・・・ウィンドシールド、
6 ・・・前方光(特定方向の周辺光)、
7 ・・・上方光(特定方向とは異なる方向の周辺光)、
8 ・・・赤外線(発光素子から射出された光)、
10 ・・・雨雪検出装置、
20 ・・・ケース、
30 ・・・第1導光体、
41 ・・・第1周辺光受光素子、
42 ・・・第2周辺光受光素子、
50 ・・・発光素子、
60 ・・・第2導光体、
70 ・・・反射光受光素子、
80 ・・・温度検出装置(温度検出手段)、
90 ・・・制御装置(雨雪判断手段、ライトの点消灯制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のウィンドシールドの室内側に取り付け可能なケースと、
前記ケースに収容され、前記ウィンドシールドを透過した前記乗物の周辺光を伝達する第1導光体と、
前記ケース内に設けられ、前記第1導光体を透過した前記周辺光を受光し、前記周辺光の強度に応じた信号を出力する周辺光受光素子と、
前記ケース内に設けられ、光を射出可能な発光素子と、
所定範囲の波長の光を遮蔽可能に着色され、前記ケースが前記ウィンドシールドに取り付けられた状態において前記発光素子と前記ウィンドシールドとの間に位置するよう前記ケースに収容され、前記発光素子から射出された光を前記ウィンドシールドへ伝達し、伝達された光のうち前記ウィンドシールドと前記乗物の外側との境界面で反射した光を伝達する第2導光体と、
前記ケース内に設けられ、前記境界面で反射された光のうち前記第2導光体を透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を出力する反射光受光素子と、
前記反射光受光素子の出力に基づいて降雨を判断する降雨判断処理、ならびに、前記反射光受光素子の出力および前記周辺光受光素子の出力に基づいて降雪を判断する降雪判断処理を行う雨雪判断手段と、
を備えることを特徴とする雨雪検出装置。
【請求項2】
前記雨雪判断手段は、前記降雨判断処理において、前記反射光受光素子の出力が予め設定された第1閾値を下回ると降雨と判断し、
前記降雪判断処理において、前記反射光受光素子の出力および前記周辺光受光素子の出力が同時に低下し、前記周辺光受光素子の出力が予め設定されている第2閾値を下回る場合、前記反射光受光素子の出力が前記第1閾値より大きい第3閾値を下回ると降雪と判断することを特徴とする請求項1に記載の雨雪検出装置。
【請求項3】
前記周辺光受光素子の出力に基づき、前記乗物のライトの点消灯を制御するライトの点消灯制御手段をさらに備える請求項1または2に記載の雨雪検出装置。
【請求項4】
前記周辺光受光素子は、特定方向の前記周辺光を受光する第1周辺光受光素子、および、前記特定方向とは異なる方向の前記周辺光を受光する第2周辺光受光素子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の雨雪検出装置。
【請求項5】
前記ウィンドシールドの温度、または、前記ウィンドシールド近傍の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記雨雪判断手段は、前記温度検出手段により検出された温度が所定閾値以下のとき、前記降雪判断処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の雨雪検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−57553(P2013−57553A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195004(P2011−195004)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)