説明

電位治療器

【課題】 被治療者の導子のあつかいの差異によるインピーダンス変化と治療電流、電圧の変動が目標とする許容範囲を超える場合があった。電位治療器の出力は電圧要素と電流要素があり、たとえば、横になって使用する場合、いすに座って使用する場合等により、周波数や波形を選択する等の手段もあるが、被治療者には不便であり、特に意識せずに使用することができる電位治療器が求められていた。また、電流成分を優先する場合は高周波成分の含有率を上げることが有効であるが、増幅器の発熱やコスト、および、高圧トランスのように二次側の巻数の多いトランスでの高周波領域での周波数特性を得ることが困難であった。
【解決手段】 脈流からなる高周波成分を含む波形をスイッチングによるインバータにより生成し、安価で発熱のない方法で、かつ、高周波成分を含む出力電圧を得、さらに、特殊なボビンと共振抑制インピーダンスを使用した特殊トランスで解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には内部にDA変換回路を有し、増幅器によりアナログ増幅した波形をトランスに入力して、電位治療器の高電圧を二次側に出力するものが提案されている。
【特許文献1】特開平10−216244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の家庭用電位治療器は図1に示すように、商用電源1をたとえば絶縁変圧器2を介して、高電圧用トランス3により昇圧し、電流制限を目的とした安全回路4を介して、人体5に治療電圧6を供給するものであった。
このとき、電位治療器の動作は高電圧を人体5に印課することにより、人体が高電圧にたもたれ、これにより、人体のすべての方面から大地7の接地電位に向かって、浮遊容量8を介して微小な電流9がながれ、且つ、商用周波数に同期した静電力による微小な振動10が人体の表面に発生する。このように、微小な電流と振動が人体に機能することになる。
【0004】
従来の周波数が商用周波数の場合は、人体5に接続される導子11は直流的には絶縁されており、人体に高電圧を供給するには実際には導子11と人体5との間にあるキャパシタンス12を介して人体5に高電圧が供給される。
このキャパシタンス12は通常はおよそ数100〜数1000pF程度であり、人体5と導子11との密着のさせかたによっても、大きく変動するものである。
密着の程度が少ない場合はキャパシタンス12は小さくなるため、インピーダンスが増大し、導子11と人体5との間に発生する電圧降下13が無視できないほど高くなる。たとえば出力電圧の10〜30%程度をこの部分で電圧降下し、人体5と接地電位となる大地7の間に加わる電圧がその分、相対的に低下するため効果についても低減されてしまうことが発生する。
【0005】
また、逆に図2のように、人体5が横たわって使用する場合は、人体5と接地電位となる大地7との間のキャパシタンス14と人体5と大地7の間のキャパシタンス15が大きくなり、通常100〜200pFであるキャパシタンス14、15は数1000pFとなる場合がある。このとき人体5と接地電位となる大地7の間に加わる電圧はキャパシタンスに逆比例するため、インピーダンスの低下により、出力電流値16が増大し、機器内部抵抗17と安全回路4による内部インピーダンス18による電圧降下が増大し、この部分で電圧が消費されてしまうため、人体5に誘起される電圧は相当量の低下となる。
【0006】
したがって、図3の波形変化回路18や図4に示すDA変換器20等を使用して、商用周波数以外の波形出力を得ることが従来より行われていた。たとえば波形変化回路18は商用電源をそのまま使用し、内部に非線形のダミー負荷を設ける方式のため、実際に人体5に負荷としてかけると実効的電源のパワー不足、つまり、波形変化回路の非線形特性の内部インピーダンス19が負荷となる人体5とキャパシタンス12、14、8に比べて大きすぎるため、人体という負荷で電圧降下して飽和線輪んの動作電圧以下となり、ほとんど意味を成さないものであった。具体的には、たとえば波形成形のために高インピーダンスの飽和線輪等を並列に出力に接続する回路であり、無負荷では電圧波形が飽和線輪により歪むだけであり、有負荷時は負荷インピーダンスの方が飽和線輪のインピーダンスより低いため、飽和線輪がほとんど意味をなさないことによる。
一方、図4のDA変換器20を使用する場合は従来の低い周波数の脈流ではキャパシタンス12、14の値によってはインピーダンスが大きくなり、その結果、目標とする電流16が人体5に流れない場合もあり、また、逆に、周波数が高い場合は電流が流れすぎて、内部電圧降下により人体5にかかる電圧が低下し、目標どおり得られなくなったりすることがあった。しかし、DA変換器20による波形は周波数の高いものはCPUの能力やDA変換器20、および、その一部を構成する増幅器の周波数特性等を考慮すると、相対的に高価な機器となり、コスト的に市場価格に見合わないものとなっていた。
加えて、DA変換器20の増幅器は一般にトランジスタ等の素子がつかわれ、内部での発熱が大きくなり、その結果、消費電力も大きなものとなり、換気や熱対策を考慮すると更に高価なものとなっていた。
【0007】
また、出力波形をプログラムにより逐次変化させたり、出力電圧値を変化させたりする場合があるが、このとき、安全回路4やインバータ回路20に内臓されるフィルタ回路の定数、高圧トランスの漏れインダクタンスにより、過渡的な高電圧のサージが発生して機器や高圧トランス3を損傷する場合がしばしば見られた。
【0008】
また、インバータを使用して商用周波数よりも高い周波数を使用する場合は、通常の珪素鋼板等の磁性体を使用した場合は、巻線構成にも依存するが、周波数特性はあまり良好ではなく、特に高圧トランスのような二次の巻数の大きな変圧器の場合は、せいぜい400〜500Hzが帯域の上限となる。このため、1kHz以上の周波数を変換しようとする場合や、脈流の場合は、共振現象により目標の数倍の高い電圧が発生し、トランスを破壊する場合がしばしば見られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1においては、商用周波の電源による電圧を高電圧変圧器により昇圧し、保護インピーダンス回路を介して出力する既知の治療出力回路を有するが、これに加えて、少なくとも商用周波より上の基本周波数と、商用周波より下の基本周波数の二つ以上の商用周波以外の基本周波数からなる脈流波形を有し、該脈流波形は1000Hz以上の波形成分が含まれるように出力される出力波形発生回路を有する電位治療器であり、同商用周波の電源を規定の電圧に変換するタップつきの変圧器と、同変圧器の交流出力を直流電源に変換する直流電源回路と、同直流電源回路に並列に接続された放電回路と、同直流電源をスイッチングするスイッチング回路と、そのスイッチングを制御する制御回路と、同スイッチング出力を円滑な波形に変換するフィルタ回路とからなるインバータ波形出力回路を有し、加えて、該インバータ出力の出力電圧を前述のタップつきの変圧器により制御する機能を有し、該出力電圧を切り替える際、または出力する際、又は出力を停止する際に、CPUにより制御されるスイッチング信号の平均のデューティ比を一時的に変化させること、あるいは、出力を一定時間停止することを特徴とする電位治療器。
【0010】
請求項2においては、たとえば、請求項1に示すようなインバータを使用する任意波形を出力する電位治療器において、出力トランスの巻線構成が巻軸方向に段階的電圧分布となるブロック巻線構造で構成され、各ブロック巻線毎に、あるいは複数のブロック巻線毎に部分共振抑制用インピーダンスを設け、該インピーダンスの合計が通常の無負荷時の内臓インピーダンスとして併用され、高圧トランスの高周波特性を向上させたことを特徴とする電位治療器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
請求項1においては、図5に示すように、商用周波の電源1による電圧を絶縁変圧器2を介して高電圧トランス3により昇圧し、安全回路4を介して出力する既知の治療出力回路を有するが、これに加えて、少なくとも商用周波より上の基本周波数と、商用周波より下の基本周波数の二つ以上の商用周波以外の基本周波数からなる脈流波形を有し、該脈流波形は1000Hz以上の波形成分が含まれるように出力される出力波形発生回路を有する電位治療器であり、同商用周波の電源1を規定の電圧に変換するタップつきの変圧器からなる絶縁変圧器2と、同変圧器2の交流出力を直流電源に変換する直流電源回路21と、同直流電源回路21に並列に接続された放電回路22と、同直流電源回路21をスイッチングするスイッチング回路23と、そのスイッチングを制御する制御回路24と、同スイッチング出力を円滑な波形に変換するフィルタ回路25とからなるインバータ波形出力回路26を有し、加えて、該インバータ出力の出力電圧27を前述のタップつきの絶縁変圧器2により制御する機能を有するものである。
このような構成は一般的にD級アンプと呼ばれ、スイッチングによるPWM出力をフィルタ回路でアナログ化するものであり、内部の発熱が非常に少なく、安価に構成できるものである。しかし、通常はスピーカ等のL負荷、つまり、音響アンプ等に限定して使用される場合が多い。しかしながら、電位治療器の波形は前述したように、基準周波数に重畳して高い周波数があると、電流的に、電圧的な要素による効果が一度に狙えるため、きれいな正弦波はむしろ、効果としては単一化してしまうため、フィルタの要素の中に微小なL負荷(インダクタンス成分)を構成させることにより、離散的パルス出力ではなく、ある程度のパルス波形の間のエンベロープを構成するアナログ出力を得ることができる。
また、インバータを使用した出力波形は、図6に示すように、該出力電圧27を切り替える際、または出力する際、又は出力を停止する際に、CPUにより制御されるスイッチング信号の平均のデューティ比を一時的に小さく変化させることにより、切り替えの瞬間の電圧を小さい値に制御可能であり、これにより、図7のV1、V2、V3というように電圧が変化するときの過渡現象による意図しない過渡電圧41のような高電圧の発生を抑制することが可能となる。このとき、段階的にデューティを小さくすることで過渡的高電圧の発生を更に抑制するようにしてもよい。
【0012】
また、このほかの方法して、図7(b)に示すように、出力を一定時間停止(△T28)することで対応してもよい。ただし、この場合は、高い電圧を一瞬できることによる過渡電圧が発生することもあるため、前者のディユーティを制御することにより電圧を小さくした後に、一定時間の停止を設けることを行う場合もある。
なお、出力波形は図8に示すように、たとえば基本周波数25Hzといっても、脈流であり、実際は50Hz〜1kHZ程度の範囲での周波数成分を含ませるようにする。この例では、最初に大きな波頭を持たせて、ここで目標とする電圧値を得て、それに続く波形部分でより、高周波の成分を混在させている。これにより、同じ25Hzでも、図8の波形例29に示すように、波形31の斜線部分をカットすることにより、トランスが低い周波数により磁気的に飽和することを防止することができ、50Hzにくらべて通常波形30では設計上倍の大きさとなるが、波形29ではトランスを通常とおなじトランスの大きさとすることも副次的効果としてえることができる。
【0013】
請求項2においては、たとえば、請求項1に示すようなインバータを使用する任意波形を出力する電位治療器において、出力トランスの高圧側の巻線構成が図9、図10に示すように、巻軸方向に段階的電圧分布となるブロック巻線構造で構成され、各ブロック巻線35毎に、あるいは複数のブロック巻線毎に部分共振抑制用インピーダンス36を設け、該インピーダンスの合計が通常の無負荷時の内臓インピーダンスとして併用され、高圧トランスの高周波特性を向上させている。共振制動用のインピーダンスは多く設けるほうが効果があり、巻軸方向に低減絶縁となる専用のボビン33を使用する。このとき、巻線ボビン33に、埋め込み電極39を設け、巻線時の巻き始め、巻き終わりの端子としてもよい、また、この埋め込み電極を複数設けて、部分共振抑制用インピーダンス36のハンダつけ用の端子としてもよい。また、各巻線ブロック35との間の距離T40は最低1mm以上の間隔を確保し、ブロック間でのアイソレーションを確保して、ブロック間の相互共振を抑制する。更に、コア32はカットコアやリングコアを使用して、余分な漏れ磁束の発生も防止することで、寄生インダクタンスによる共振への影響も避けてもよい。
このような、高電圧の巻線の周波数特性の向上は、通常の巻き軸に直角な方向に巻き足していく巻線の手法では部分共振抑制用インピーダンス36を絶縁が困難なため適正に巻回することが困難であり、本案ではこれを解決するために軸方向のボビンを適用し、さらに、部分共振抑制用インピーダンス36を各ブロック巻線の直近に設けることが効果があるため、同ボビンに巻線の巻き始め、巻き終わりの端子と、更に、部分共振抑制用インピーダンス36の接続端子をかねる埋め込み電極39を設けていることを特徴とする。また、ブロック間の埋め込み電極39には次段ブロックに移行する際に、巻線を単にからげて、切断することなく連続に巻いていくことを行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の電位治療器の基本構成である。
【図2】従来の電位治療器の被治療者が横になって治療する場合の説明図である。
【図3】波形変化回路による波形生成の説明図である。
【図4】インバータ回路による波形生成の説明図である。
【図5】波形変化回路による波形生成の説明図である。
【図6】波形切り替え時のインバータデューティの変更の説明図である。
【図7】波形切り替え時のデッドタイムを確保するイメージの説明図である。
【図8】インバータ波形の例の説明図である。
【図9】高周波特性を改善したトランスの構造の説明図である。
【図10】高周波特性を改善したトランスのボビン構造の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 商用電源
2 絶縁変圧器
3 高電圧用トランス
4 安全回路
5 人体
6 治療電圧
7 大地
8 浮遊容量
9 微小な電流
10 微小な振動
11 導子
12 キャパシタンス
13 電圧降下
14 キャパシタンス
15 キャパシタンス
16 出力電流値
17 機器内部抵抗
18 波形変化回路
19 波形変化回路の内部インピーダンス(非線形負荷)
20 インバータ回路
21 直流電源回路
22 放電回路
23 スイッチング回路
24 制御回路
25 フィルタ回路
26 インバータ波形出力回路
27 出力電圧
28 一定時間停止(△T)
29 波形例
30 従来波形例
31 波形(カット部)
32 コア
33 ボビン
34 一次巻線
35 二次巻線
36 部分共振抑制用インピーダンス
37 巻き始め
38 巻き終わり
39 埋め込み電極
40 ブロック巻線間クリアランス
41 意図しない過渡電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用周波の電源による電圧を高電圧変圧器により昇圧し、保護インピーダンス回路を介して出力する既知の治療出力回路を有するが、これに加えて、少なくとも商用周波より上の基本周波数と、商用周波より下の基本周波数の二つ以上の商用周波以外の基本周波数からなる脈流波形を有し、該脈流波形は1000Hz以上の波形成分が含まれるように出力される出力波形発生回路を有する電位治療器であり、同商用周波の電源を規定の電圧に変換するタップつきの変圧器と、同変圧器の交流出力を直流電源に変換する直流電源回路と、同直流電源回路に並列に接続された放電回路と、同直流電源をスイッチングするスイッチング回路と、そのスイッチングを制御する制御回路と、同スイッチング出力を円滑な波形に変換するフィルタ回路とからなるインバータ波形出力回路を有し、加えて、該インバータ出力の出力電圧を前述のタップつきの変圧器により制御する機能を有し、該出力電圧を切り替える際、または出力する際、又は出力を停止する際に、CPUにより制御されるスイッチング信号の平均のデューティ比を一時的に変化させること、あるいは、出力を一定時間停止することを特徴とする電位治療器。

【請求項2】
たとえば、請求項1に示すようなインバータを使用する任意波形を出力する電位治療器において、出力トランスの巻線構成が巻軸方向に段階的電圧分布となるブロック巻線構造で構成され、各ブロック巻線毎に、あるいは複数のブロック巻線毎に部分共振抑制用インピーダンスを設け、該インピーダンスの合計が通常の無負荷時の内臓インピーダンスとして併用され、高圧トランスの高周波特性を向上させたことを特徴とする電位治療器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−279024(P2009−279024A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130907(P2008−130907)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(304062432)株式会社 リブレックス (1)
【Fターム(参考)】