説明

電力伝送システム

【課題】送電デバイスと受電デバイス間に異物が存在する場合でも安全性を確保して送電を制御することができる電力伝送システムを提供する。
【解決手段】受電デバイス8側には受電電力値を取得する受電電力値取得手段12を設け、送電デバイス1側には、入射電力値を取得する入射電力値取得手段5と、反射電力値を取得する反射電力値取得手段6と、受電電力値取得手段12で取得した受電電力値、入射電力値取得手段5で取得した入射電力値、および反射電力値取得手段6で取得した反射電力値に基づいて算出した損失電力値が予め設定した閾値を超えた場合に送電を停止する制御を行う送電制御手段7とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に発生した電磁界を通して送電を行う電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、電磁誘導方式に比べて位置自由度が格段に高い、電磁界共鳴を用いた無線電力伝送システムが提案され、実用化されつつある。このような無線電力伝送システムは、送電回路から得たエネルギー波形に基づいて空間に電磁界を発生させる一次側アンテナを備えた送電デバイスと、空間に存在する電磁界から作用を受けエネルギーを取り出す二次側アンテナを備えた受電デバイスとを備えており、送電デバイスと受電デバイスの間が常に密着していないため、空隙に異物を挟み込む可能性がある。
【0003】
また、一次側コイルを内蔵した充電台(送電デバイス)と、電磁誘導により非接触給電を行う受電デバイスとを備えて構成した従来の非接触式給電システムでも、充電台と受電デバイスとの間に異物が混入する可能性があることが知られており、この異物混入を想定して、充電部の発振回路を間欠的に停止することにより異物が高温になるのを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−233706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の無線電力伝送システムでも、送電デバイスと受電デバイスとの伝送空間に異物が存在すると、異物の材質によってはその異物に誘導電流や共振電流が発生し、加熱されるなど安全面の問題が発生する場合がある。従って、従来の非接触式給電システムとは異なり、加熱を生じさせるような異物の混入を判別して送電を停止するような制御を行うのが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、送電デバイスと受電デバイス間に異物が存在する場合でも安全性を確保して送電を制御することができる電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、アンテナを用いて非接触電力伝送を行う送電デバイスと受電デバイスとを備えた電力伝送システムにおいて、前記受電デバイスは、受電電力値を取得する受電電力値取得手段と、前記受電電力値取得手段により取得した受電電力値を前記送電デバイスへ送信する受電電力値送信手段とを備え、前記送電デバイスは、入射電力値を取得する入射電力値取得手段と、前記受電電力値送信手段から送信される受電電力値を受信する受電電力値受信手段と、前記各手段で取得した受電電力値、入射電力値、反射電力値に基づいて損失電力を算出し、その値が一定の値を超えた場合には送電を停止する制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力伝送システムによれば、送電デバイスと受電デバイスとの伝送空間に加熱を生じさせる異物が存在するとき、その種の異物の挟み込みによる加熱などのエネルギー損失が発生した場合の損失電力値から、その他の状況と区別して検出することができるので、望ましくない状況での送電を停止する制御を行うことが可能となる。また、加熱を生じさせる異物の混入を検出するために温度センサを設けることも考えられるものの、温度センサから断熱された位置にこの種の異物が存在した場合、異物混入によるエネルギー損失が発生していても検出することができないが、上述した構成によってこのような状況でも確実に検出することができ、安全かつ高効率な電力伝送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態による電力伝送システムを示したブロック構成図である。
【図2】図1に示した電力伝送システムのエネルギー損失要因検出処理動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態による電力伝送システムを示したブロック構成図である。送電デバイス1は、電気エネルギーを空間での送電に適した波形に変換する送電回路2と、送電回路2から得たエネルギー波形に基づいて空間に電磁界を発生させる一次側アンテナ3と、後述する受電デバイスから受電電力値を受信する受電電力値受信手段4と、送電回路2から送電する入射電力値を取得する入射電力値取得手段5と、受電デバイスまで伝送されることなく送電デバイス1へ反射してきた反射電力値を計算する反射電力値取得手段6と、受電電力値受信手段4を通して通知された受電電力値、入射電力値取得手段5で取得した入射電力値、および反射電力値取得手段6からの反射電力値とに基づいて算出した損失電力が予め設定した一定値を超えた場合に送電を停止する送電停止信号を送電回路2に与える送電制御手段7とを有している。
【0012】
これに対して送電デバイス1に近接して配置した受電デバイス8は、空間に存在する電磁界から作用を受けエネルギーを取り出す二次側アンテナ9と、この二次側アンテナ9でピックアップした電磁エネルギーを使用に適した形式に変換する受電回路10と、この受電回路10での受電電力を用いる機能回路11と、受電回路10が受信した受電電力値を取得する受電電力値取得手段12と、この受電電力値取得手段12により取得した受電電力値を送電デバイス1の受電電力値受信手段4へ送信する受電電力値送信手段13とを有している。
【0013】
次に、異物の挟み込みによる加熱などのエネルギー損失要因が発生した場合のエネルギー損失要因検出処理動作について、図2に示したフローチャートを用いて説明する。
送電デバイス1に近接して給電を受ける受電デバイス8が対向配置され、送電デバイス1の受電電力値受信手段4と受電デバイス8の受電電力値送信手段13との間は、アンテナ14、15で示す無線通信によって接続されており、受電デバイス8の受電電力値送信手段13から送電デバイス1に対し送電希望信号を送信すると、送電デバイス1の送電制御手段7は受電電力値受信手段4を通してステップS1でこれを受信し、ステップS2で送電デバイス1の送電回路2から一次側アンテナ3を通して受電デバイス8への送電を開始する。
【0014】
すると受電デバイス8の受電回路10は、ステップS3で二次側アンテナ9を通してこれを受電する。このとき受電回路10を監視している受電電力値取得手段12は、ステップS4で受電回路10を通して受電電力値を取得し、この取得した受電電力値を受電電力値送信手段13を通して送電デバイス1へ通知する。
【0015】
送電デバイス1では、送電制御手段7がステップS5で受電電力値受信手段4を通して受電電力値送信手段13から通知されてきた受電電力値を受信する。これを受けて、またはその前後のステップS6で、送電デバイス1の入射電力値取得手段5は送電回路2を通して送電電力の入射電力値を取得し、また反射電力値取得手段6は、受電デバイス8まで伝送されることなく送電デバイス1へ反射してきた反射電力値を取得する。送電制御手段7は、受電デバイス8から受電電力値受信手段4を通して受信した受電電力値と、反射電力値取得手段6から取得した反射電力値と、入射電力値取得手段5から取得した入射電力値とを用いて、次の数式1に示した総合損失電力αの算出を行う。
【0016】
〔数1〕
総合損失電力α=入射電力値−(反射電力値+受電電力値)
【0017】
また、送電デバイス1および受電デバイス8の内部回路によって決まる固有の既知損失電力の和をシステム内損失電力βとし、次の数式2によってシステム外損失電力γを算出する。
【0018】
〔数2〕
γ=α−β
【0019】
ここで、システム外損失電力γが0とならない場合には、システム外に何等かのエネルギー損失要因、例えば異物の挟み込みによる加熱などが発生していると判断できるが、測定誤差が含まれている可能性があるので、送電制御手段7は、ステップS7で閾値を用いての判定処理を行う。例えば、システム外損失電力γの時間積分値(外部で消費されたエネルギー値)γtを予め設定した値と比較し、時間積分値γtがその値以下であれば、ステップS8で送電デバイス1から受電デバイス8への送電を継続と判定するが、時間積分値γtが一定値を超えた場合、ステップS9でエネルギー損失要因の発生により送電を停止する必要があると判定し、送電停止信号を送電回路2に与えて送電を停止する。ここでの送電制御手段7での一定値を用いた判定は、上述した方法に限らずその他の方法を用いても良い。
【0020】
なお、ステップS8の送電を継続する処理においては、所定周期で上記ステップS4〜S7の処理が実行される。そして、図2のフローチャートには示していないが、受電デバイス8が、受電電力値送信手段13から送電終了通知を送信し、送電デバイス1の受電電力値受信手段4が送電終了通知を受信すると、送電制御手段7は受電デバイス8への送電を停止させる。しかし、本発明において、受電デバイス8が受電電力値送信手段13から一定間隔で送電希望信号を送信し、送電デバイス1が受電電力値受信手段4により送電希望信号を一定間隔で受信している間は送電を行うように構成してもよい。この場合には、上記ステップS8の処理中に一定間隔以上送電希望信号を受信できなければ、送電制御手段7は、受電デバイス8への送電を停止させる。
【0021】
上述した電力伝送システムによれば、受電電力値取得手段12で取得した受電電力値、入射電力値取得手段5で取得した入射電力値、および反射電力値取得手段6で取得した反射電力値に基づいて算出した損失電力値が予め設定した閾値を超えた場合に送電を停止する制御を行う送電制御手段7とを備えて構成したため、送電デバイス1と受電デバイス8との伝送空間に加熱を生じさせる異物が存在するとき、その種の異物の挟み込みによる加熱などのエネルギー損失が発生した場合の損失電力値から、その他の状況とを区別して検出することができるので、望ましくない状況での送電を停止する制御を行うことが可能となる。また、加熱を生じさせる異物の混入を検出するために温度センサを設けることも考えられるが、温度センサから断熱された位置にこの種の異物が存在した場合、異物混入によるエネルギー損失が発生していても検出することができない。しかし上述の構成によって、このような状況でも確実に検出することができ、安全かつ高効率な電力伝送システムを実現することができる。
【0022】
このような効果を得るために、より具体的な実施の形態による電力伝送システムでは、電気エネルギーを空間での送電に適した波形に変換する送電回路2と、送電回路2から得たエネルギー波形に基づいて空間に電磁界を発生させる一次側アンテナ3とを備えた送電デバイス3と、空間に存在する電磁界から作用を受けエネルギーを取り出す二次側アンテナ9と、二次側アンテナ9でピックアップした電磁エネルギーを使用に適した形式に変換する受電回路10とを備えた受電デバイス8と、前記送電デバイス1と前記受電デバイス8との間で情報を通信する手段とで構成される電力伝送システムにおいて、前記受電デバイス8側における受電電力値を取得する受電電力値取得手段12と、前記送電デバイス1側における入射電力値を取得する入射電力値取得手段5と、前記送電デバイス1側における反射電力値を取得する反射電力値取得手段6と、前記受電電力値取得手段12で取得した受電電力値、前記入射電力値取得手段5で取得した入射電力値、および前記反射電力値取得手段6で取得した反射電力値とに基づいて損失電力を算出すると共に、この算出した損失電力の値が予め設定した値を超えた場合に送電を停止する制御を行う送電制御手段7とを設けて構成すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の電力伝送システムは、図1に示した構成のものに限らず他の構成のものに適用することができる。例えば、上述した電力伝送システムでは、非接触電力伝送を目的としているため、送電デバイス1の受電電力値受信手段4と、受電デバイス8の受電電力値送信手段13との間を無線通信で接続しているが、受電電力値受信手段4と受電電力値送信手段13との間を有線で接続することを妨げない。
【符号の説明】
【0024】
1 送電デバイス
2 送電回路
3 一次側アンテナ
4 受電電力値受信手段
5 入射電力値取得手段
6 反射電力値取得手段
7 送電制御手段
8 受電デバイス
9 二次側アンテナ
10 受電回路
11 機能回路
12 受電電力取得手段
13 受電電力値送信手段
14,15 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを用いて非接触電力伝送を行う送電デバイスと受電デバイスとを備えた電力伝送システムにおいて、前記受電デバイスは、受電電力値を取得する受電電力値取得手段と、前記受電電力値取得手段により取得した受電電力値を前記送電デバイスへ送信する受電電力値送信手段とを備え、前記送電デバイスは、入射電力値を取得する入射電力値取得手段と、前記受電電力値送信手段から送信される受電電力値を受信する受電電力値受信手段と、前記各手段で取得した受電電力値、入射電力値、反射電力値に基づいて損失電力を算出し、その値が一定の値を超えた場合には送電を停止する制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210034(P2012−210034A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73052(P2011−73052)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】