説明

電力変換装置

【課題】少ない素子で変換効率が改善された電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、交流電源に接続される、第1のコンデンサと第1のインダクタとを直列に接続してなる第1のLC回路と、交流電源に、第1のLC回路を介して接続される第1のスイッチと、第1のスイッチに直列に接続される第2のスイッチと、第1のスイッチと第2のスイッチとの直列回路に並列に接続される平滑コンデンサと、第1のスイッチと第2のスイッチとの接続点と負荷との間に接続される、第2のコンデンサと第2のインダクタとを直列に接続してなる第2のLC回路と、コントローラとを備える。コントローラは、交流電源の電圧極性が正のとき、第1のスイッチをパルス駆動するための第1のパルス信号を第1のスイッチに出力し、交流電源の電圧の極性が負のとき第2のスイッチをパルス駆動するための第2のパルス信号を第2のスイッチに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交流電源から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧を直流電圧に変換する方法として、次の2つの方法が一般的に知られている。
第1の方法は、ダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとを用いる。ダイオードブリッジ回路は、交流電源からの交流を全波整流する。平滑コンデンサは、全波整流後の直流を平滑する。
【0003】
この第1の方法は、交流電圧が正または負のいずれの場合においても、常に2つのダイオードの直列回路を電流が流れる。このとき、2つのダイオードでは、それぞれダイオードを流れる電流とダイオードの順方向電圧との積に相当する電力損失が発生する。
【0004】
第2の方法は、第1の方法のダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとの間に力率改善コンバータ(PFC)を介在させる。力率改善コンバータは、ダイオードブリッジ回路で全波整流された直流の電圧を昇圧する。
【0005】
この第2の方法も、全波整流の際に2つのダイオードの直列回路を電流が流れるため、電力損失が発生する。それに加えて、力率改善コンバータを構成する電界効果トランジスタ(FET)とダイオードに交互に電流が流れるため、さらなる損失が生じる。
【0006】
また、力率改善コンバータは、入力電流の波形を正弦波にする必要上、出力電圧を入力電圧よりも高く設定しなければならない。ところが、負荷で必要な電圧は、必ずしも入力電圧より高い電圧であるとは限らない。その場合は、力率改善コンバータの後段に降圧コンバータを接続する。そして、力率改善コンバータで昇圧された電圧を所望の電圧まで降圧する。この降圧の際にも損失が発生する。電力変換装置全体としては、AC-DC変換、DC-DC(昇圧)変換、DC-DC(降圧)変換の3段の構成になり、電力損失はこれらの積となって現れる。例えば、一段あたりの効率0.95とした場合、3段では、0.95×0.95×0.95=0.86となる。つまり、効率95%の優れた変換であっても3段接続では86%まで落ちてしまう。このように、個々の変換効率は良くても、多段にすることで変換効率は著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110869号公報
【特許文献2】特開2008−295248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今、巷では電子機器の省エネルギー化が叫ばれており、その一環として、負荷へ電力を供給する電力変換装置の変換効率向上が求められている。しかしながら、従来の回路構成では、変換効率の改善に限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、電力変換装置は、交流電源に接続される、第1のコンデンサと第1のインダクタとを直列に接続してなる第1のLC回路と、交流電源に、第1のLC回路を介して接続される第1のスイッチと、第1のスイッチに直列に接続される第2のスイッチと、第1のスイッチと第2のスイッチとの直列回路に並列に接続される平滑コンデンサと、第1のスイッチと第2のスイッチとの接続点と負荷との間に接続される、第2のコンデンサと第2のインダクタとを直列に接続してなる第2のLC回路と、コントローラとを備える。コントローラは、交流電源の電圧極性が正のとき、第1のスイッチをパルス駆動するための第1のパルス信号を第1のスイッチに出力し、交流電源の電圧の極性が負のとき第2のスイッチをパルス駆動するための第2のパルス信号を第2のスイッチに出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態である電力変換装置の要部回路を含む全体構成図。
【図2】第1の実施形態の電力変換装置において、交流電源の電圧Vinに対するパルス信号P1,P2の出力タイミングを示す波形図。
【図3】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase1]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図4】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase2]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図5】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase3]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図6】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase4]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図7】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase5]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図8】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase6]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図9】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase7]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図10】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase8]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図11】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase9]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図12】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase10]のときの回路電流IL1,IL2の状態を示す模式図。
【図13】第1の実施形態の電力変換装置において、動作モード[Phase1]〜[Pease5]のときの回路電流IL1,IL2と、第1のスイッチと第2のスイッチとの接続点x1における電圧Vmを示す波形図。
【図14】第1の実施形態の電力変換装置において、第1のスイッチS1がオンしたときの要部の等価回路図。
【図15】第1の実施形態の電力変換装置において、第2のLC回路が有るときと無いときの信号波形図。
【図16】第2の実施形態である電力変換装置の要部回路を含む全体構成図。
【図17】第2の実施形態の電力変換装置において、交流電源の電圧が正極のときの回路電流Iを示す波形図。
【図18】電力変換装置の他の実施形態として、MOS型の電界効果トランジスタをスイッチに代用した場合の回路図。
【図19】電力変換装置の他の実施形態として、平滑コンデンサの両端に第2の負荷を接続した場合の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電力変換装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における電力変換装置100の回路構成図である。電力変換装置100は、交流電源101の一端に、第1のコンデンサC1と第1のインダクタL1とを直列に接続してなる第1のLC回路102を接続する。さらに、前記第1のLC回路102に対して直列に第1のスイッチS1を接続し、この第1のスイッチS1を前記交流電源101の他端に接続する。
【0013】
また、電力変換装置100は、第1のLC回路102と第1のスイッチS1との接続点X1に第2のスイッチS2を接続して、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との直列回路103を形成する。さらに、この直列回路103に対して並列に、平滑コンデンサC3を接続する。そして、第1のスイッチS1と平滑コンデンサC3との接続点X2を、接地電位GNDとする。
【0014】
第1のスイッチS1と第2のスイッチS2は機械的スイッチである。電力変換装置100は、第1のスイッチS1に対しては並列に第1のダイオードD1を接続し、第2のスイッチS2に対しては並列に第2のダイオードD2を接続する。具体的には、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との接続点X1に対し、第1のダイオードD1はカソードを接続し、第2のダイオードD2はアノードを接続する。
【0015】
電力変換装置100は、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との接続点X1に、第2のコンデンサC2と第2のインダクタL2とを直列に接続してなる第2のLC回路104を接続する。そして、この第2のLC回路104と接地端子X2との間に、例えば抵抗体などの負荷105を接続する。
【0016】
電力変換装置100は、交流電源101と第1のLC回路102との間に、第1の端子t1を設ける。そして、この第1の端子t1に電圧検出部106を接続する。電圧検出部106は、前記接地電位GNDに対する第1の端子t1の電圧、つまりは交流電源101の電圧Vin(正または負)を検出する。
【0017】
電力変換装置100は、接地端子X2に対して交流電源101側に、第1の抵抗R1を介して第2の端子t2を設ける。そして、この第2の端子t2に第1の電流検出部107を接続する。第1の抵抗R1は、抵抗値がごく小さいものを使用する。
【0018】
第1のスイッチS1がオン(閉塞)すると、交流電源101、第1のLC回路102、第1のスイッチS1及び第1の抵抗R1を順に結ぶ閉回路が形成される。この閉回路に電流が流れると、第1の抵抗R1には、当該閉回路を流れる電流に比例した微小な電圧が発生する。例えば当該閉回路を正の電流が流れた場合、第2の端子t2には、接地電位GNDに対して負の値の電圧が発生する。第1の電流検出部107は、この第2の端子t2に発生した電圧を電流に変換して出力する。すなわち、第1の電流検出部107は、第1のインダクタL1を流れる第1の電流IL1を検出する。
【0019】
電力変換装置100は、接地端子X2に対して負荷105側に、第2の抵抗R2を介して第3の端子t3を設ける。そして、この第3の端子t3に第2の電流検出部108を接続する。第2の抵抗R2は、抵抗値がごく小さいものを使用する。
【0020】
第1のスイッチS1がオン(閉塞)すると、第1のスイッチS1、第2のLC回路104、負荷105及び第2の抵抗R2を順に結ぶ閉回路が形成される。この閉回路に電流が流れると、第2の抵抗R2には、当該閉回路を流れる電流に比例した微小な電圧が発生する。このときの電圧は、例えば当該閉回路を正の電流が流れた場合、第3の端子t3には、接地電位GNDに対して負の値の電圧が発生する。第2の電流検出部108は、この第3の端子t3に発生した電圧を電流に変換して出力する。すなわち、第2の電流検出部108は、第2のインダクタL2を流れる第2の電流IL2を検出する。
【0021】
電力変換装置100は、コントローラ110を備える。前記電圧検出部106で検出される電圧Vinと、前記第1,第2の電流検出部107,108でそれぞれ検出される第1,第2の電流IL1,IL2は、コントローラ110に入力される。
【0022】
コントローラ110は、極性判定部111と、パルス発生部112と、電流バランス判定部113とを備える。
極性判定部111は、電圧検出部106で検出された交流電源101の電圧Vinから、この電圧Vinの極性が正か負かを判定する。コントローラ110は、極性判定部111での判定結果を示す情報、つまりは電圧Vinの極性が正か負かを示す情報をパルス発生部112に通知する。
【0023】
パルス発生部112は、前記第1のスイッチS1をパルス駆動するための第1のパルス信号P1と、前記第2のスイッチS2をパルス駆動するための第2のパルス信号P2とを生成する。具体的には、図2に示すように、交流電源101の電圧の極性が正のときには第1のパルス信号P1を生成し、負のときには第2のパルス信号P2を生成する。第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2のパルス周期は、交流電源101の周波数より遥かに高い。コントローラ110は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に出力して、第1のスイッチS1を交流電源101の周波数よりも高い周期でスイッチング動作させる。また、コントローラ110は、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に出力して、第2のスイッチS2を交流電源101の周波数よりも高い周期でスイッチング動作させる。
【0024】
電流バランス判定部113は、第1の電流IL1と第2の電流IL2とを比較して、両電流IL1,IL2が等しいか否かを判定する。第1のスイッチS1がオフのとき、電流バランス判定部113で両電流IL1,IL2が等しくなったと判定されると、コントローラ110は、電流バランス状態になったと認識する。そしてコントローラ110は、第1のスイッチS1がオンするように、第1のパルス信号P1を制御する。同様に、第2のスイッチS2がオフのとき、電流バランス判定部113で両電流IL1,IL2が等しくなったと判定されると、コントローラ110は、電流バランス状態になったと認識する。そしてコントローラ110は、第2のスイッチS2がオンするように、第2のパルス信号P2を制御する。
【0025】
次に、電力変換装置100の動作について、図3〜図12を用いて説明する。はじめに、交流電源101の電圧Vinの極性が正のときの動作について、図3〜図7を用いて説明する。交流電源101の電圧Vinの極性が正のとき、第1のパルス信号P1がコントローラ110から出力され、第1のスイッチS1がオン,オフを繰り返す。
【0026】
第1のスイッチS1がオンすると、図3に示すように、交流電源101、第1のLC回路102、第1のスイッチS1及び抵抗R1の閉回路が形成される。その結果、第1のインダクタL1の線形リアクトル作用により、第1のコンデンサC1から第1のスイッチS1を経由して接地電位GNDに至る方向に第1の電流IL1が流れる。また、第1のスイッチS1がオンすると、第1のスイッチS1、抵抗R2、負荷105及び第2のLC回路104の閉回路も形成される。その結果、第2のコンデンサC2から第1のスイッチS1を経由して接地電位GNDに至る方向に第2の電流IL2が流れる。このときの動作モードを[Phase1]と称する。
【0027】
動作モード[Phase1]のとき、第1の電流IL1は、交流電源101の電圧Vinに比例した勾配で直線的に増加する。このような第1の電流IL1の増加に伴い、第2の電流IL2も増加する。
【0028】
次に、第1のスイッチS2がオフすると、第1のインダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き第1の電流IL1を同方向に流し続けるようとする。このため、図4に示すように、第2のダイオードD2を経由して平滑コンデンサC3に第1の電流IL1が流れ込む。同様に、第2の電流IL2も第2のダイオードD2を経由して平滑コンデンサC3に流れる。このときの動作モードを[Phase2]と称する。
【0029】
動作モード[Phase2]のとき、第1の電流IL1は、平滑コンデンサC3と第1のコンデンサC1との電位差に応じた勾配で減少する。同様に、第2の電流IL2は、平滑コンデンサC3と第2のコンデンサC2との電位差に応じた勾配で減少する。
【0030】
一方、第1及び第2電流IL1,IL2が流れ込む平滑コンデンサC3の電位は上昇する。そして、やがて平滑コンデンサC3と第2のコンデンサC2との電位が逆転して、第2の電流IL2が反転する。しかし、この時点では、第1の電流IL1の電流量が多いので、図5に示すように、第1の電流IL1の一部が第2のLC回路104を経由して流れる。このときの動作モードを[Phase3]と称する。
【0031】
動作モード[Phase3]のとき、第2のダイオードD2には第1の電流IL1の残りが流れる。このため、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との接続点X1の電位Vmは、平滑コンデンサC3の電位に等しくなる。
【0032】
動作モード[Phase3]において、第1の電流IL1は減少する。そして、図6に示すように、第2のダイオードD2を経由して平滑コンデンサC3に流れていた一方の電流IL1は止まる。そうすると、第1の電流検出部107で検出される第1の電流IL1と、第2の電流検出部108で検出される第2の電流IL2とは等しくなる。つまり、コントローラ110において、電流バランス状態になったと判定される。このときの動作モードを[Phase4]と称する。
【0033】
動作モード[Phase4]のとき、第2のダイオードD2を経由する電流は流れないので、接続点X1の電位Vmは第1のコンデンサC1の電位と等しくなる。
【0034】
コントローラ110において、電流バランス状態になったと判定されると、第1のスイッチS1が再びオンする。そうすると、第1のLC回路102から第2のLC回路104の方向に流れていた第1の電流IL1は、図8に示すように、全て第1のスイッチS1を経由して流れるようになる。その結果、接続点X1の電位Vmは接地電位GNDと等しくなる。このとき、第2のインダクタL2は、リアクトルエネルギーにより第2の電流IL2を動作モード[Phase4]のときと同じ方向に流し続けるようとする。このため、接地電位GNDから第2のコンデンサC2の電位へ電流をくみ上げる方向に、第2の電流IL2が流れる。このときの動作モードを[Phase5]と称する。
【0035】
その後、第2のコンデンサC2の電位が接地電位GNDよりも上昇すると、第2の電流IL2の方向は逆転する。すなわち、動作モード[Phase1]に戻る。以後、交流電源101の電圧の極性が正の間、電力変換装置100は、動作モード[Phase1]→[Phase2]→[Phase3]→[Phase4]→[Phase5]→[Phase1]のサイクルを繰り返す。
【0036】
次に、交流電源101の電圧の極性が負のときの動作について、図8〜図12を用いて説明する。交流電源101の電圧Vinの極性が負のとき、第2のパルス信号P2がコントローラ110から出力され、第2のスイッチS2がオン,オフを繰り返す。
【0037】
第2のスイッチS2がオンすると、図8に示すように、交流電源101、第1のLC回路102、第2のスイッチS2及び平滑コンデンサC3の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC3の電圧は、交流電圧Vinより高い。したがって、平滑コンデンサC3の充電電圧が第2のスイッチS1及び第1のLC回路102を経由して交流電源101側に戻るように、第1の電流IL1が流れる。また同時に、負荷105を経由して、第2のLC回路104、第2のスイッチS1、平滑コンデンサC3及び抵抗R2の閉回路が形成される。このため、電位の高い平滑コンデンサC3から電位の低い第2のコンデンサC2に向けて第2の電流IL2が流れる。このときの動作モードを[Phase6]と称する。
【0038】
次に、第2のスイッチS2がオフすると、第1のインダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き第1の電流IL1を動作モード[Phase6]のときと同じ方向に流し続けるようとする。このため、図9に示すように、第1のダイオードD1を経由して接地電位GNDから第1のコンデンサC1の電位へ電流をくみ上げる方向に、第1の電流IL1が流れる。同様に、第1のダイオードD1を経由して接地電位GNDから第2のコンデンサC2の電位へ電流をくみ上げる方向に、第2の電流IL2が流れる。このときの動作モードを[Phase7]と称する。
【0039】
次に、第2のコンデンサC2の電位が接地電位GNDよりも上昇すると、第2の電流IL2の方向は逆転する。これにより、図10に示すように、第2の電流IL2は、第1のLC回路102の方向へ流れる。このときの動作モードを[Phase8]と称する。
【0040】
動作モード[Phase8]のとき、接地電位GNDから第1のダイオードD1を介して流れる電流は、動作モード[Phase7]において、接地電位GNDから第2のコンデンサC2の方へ流れていた第2の電流IL2の分だけ減少する。しかし、この時点では、第2の電流IL2よりも第1の電流IL1の方が大きいので、接続点X1の電位Vmは接地電位GNDと等しくなる。
【0041】
その後、第1の電流IL1は減少する。そして、第1の電流IL1が第2の電流IL2と等しくなると、図11に示すように、第1のダイオードD1を経由して流れていた第1の電流IL1は止まる。そうすると、第1の電流検出部107で検出される第1の電流IL1と、第2の電流検出部108で検出される第2の電流IL2とは等しくなる。つまり、コントローラ110において、電流バランス状態になったと判定される。このときの動作モードを[Phase9]と称する。
【0042】
動作モード[Phase9]のとき、第1のダイオードD1を経由する電流は流れないので、接続点X1の電位Vmは第1のコンデンサC1の電位と等しくなる。
【0043】
コントローラ110において、電流バランス状態になったと判定されると、第2のスイッチS2が再びオンする。そうすると、交流電源101、第1のLC回路102、第2のスイッチS2、平滑コンデンサC3及び抵抗R1の閉回路が形成される。その結果、図12に示すように、第1のLC回路102から第2のスイッチS2を経由して平滑コンデンサC3に至る方向に第1の電流IL1が流れる。また、第2のスイッチS2がオンすると、第2のスイッチS2、平滑コンデンサC3、抵抗R2、負荷105及び第2のLC回路104の閉回路も形成される。その結果、第2のコンデンサC2から第2のスイッチS2を経由して平滑コンデンサC3に至る方向に第2の電流IL2も流れる。このときの動作モードを[Phase10]と称する。
【0044】
その後、平滑コンデンサC3の電位が第2のコンデンサC2の電位よりも上昇すると、第2の電流IL2の方向は逆転する。すなわち、動作モード[Phase6]に戻る。以後、交流電源101の電圧の極性が負の間、電力変換装置100は、動作モード[Phase6]→[Phase7]→[Phase8]→[Phase9]→[Phase10]→[Phase6]のサイクルを繰り返す。
【0045】
図13は、交流電源101の電圧の極性が正のときの各動作モード[Phase1],[Phase2],[Phase3],[Phase4],[Phase5]における第1の電流IL1、第2の電流IL2及び接続点X1の電圧Vmの波形図である。同図において、電圧Vmが浮いている状態で電圧が定まらない状態の区間が動作モード[Phase4]に相当する。この区間のとき、第1の電流IL1は、第2の電流IL2と傾きは逆だが略等しい値となる。図13の場合は、第1の電流IL1が略1[A]であり、第2の電流IL2が略−1[A]である。このとき、電流バランス判定部113においては、電流バランス状態と判定される。電流バランス状態になると、第1の電流IL1と第2の電流IL2の勾配が緩やかになる。
【0046】
前述したように、コントローラ110は、交流電源101の電圧の極性が正のときで第1のスイッチS1がオフのとき、電流バランス状態になると、第1のパルス信号P1を出力して第1のスイッチをオンする。同様に、交流電源101の電圧の極性が負のときで第2のスイッチS1がオフのとき、電流バランス状態になると、第2のパルス信号P2を出力して第2のスイッチをオンする。
【0047】
このように、電力変換装置100は、電流バランス状態になるのを待って第1または第2のスイッチS1,S2をオンサイクルに移行させる。こうすることにより、電力変換装置100は、電力損失を低減することができる。その理由について、図14,図15を用いて説明する。
【0048】
電力変換装置100は、第2のLC回路104を備えている。仮に、この第2のLC回路104が備えられていないとすると、交流電源101の電圧の極性が正のとき、動作モードは、第1のスイッチS1がオン状態にあるモード[Phase1]と、第1のスイッチS1がオフ状態にあるモード[Phase2]だけになる。
【0049】
つまり、動作モード[Phase1]で第1のスイッチS1をオンして第1のスイッチS1に第1の電流IL1を流し、次いで、動作モード[Phase2]で第1のスイッチS1をオフして第2のダイオードD2に第1の電流IL1を流し、その後、再び第1のスイッチS1をオンして第1のスイッチS1に第1の電流IL1を流す。そのときの等価回路は、図14に示すように、第2のダイオードD2に対して並列に寄生コンデンサCtが接続された状態に相当する。
【0050】
ここで、第2のダイオードD2は寄生コンデンサCtによるリカバリ特性を有しており、導通状態から遮断状態に移行するまではキャパシタとして作用する。このため、動作モード[Phase2]から動作モード[Phase1]に戻る際、第2のスイッチS2はコンデンサの状態となり、第1のスイッチS1は導通となるので、平滑コンデンサC3から第2のスイッチS2及び第1のスイッチS1を経由して流れる貫通電流が発生する。この貫通電流は、阻害要因がないため、図15の波形Iaに示すように、通常よりも遥かに大きいスパイク電流となる。このスパイク電流によってスイッチングロスが発生し、電力変換装置の電力変換効率が著しく悪化する。
【0051】
これに対し、第2のLC回路104を備えた電力変換装置100は、動作モード[Phase2]の後に[Phase3],[Phase4],[Phase5]と継続する。特に、第1の電流IL1と第2の電流IL2とが略等しい電流バランス状態になるのを判定する動作モード[Phase4]が存在する。電流バランス状態になった時点では、第2のスイッチS2のダイオードリカバリは既に完了している。このため、次の動作モード[Phase5]で第1のスイッチS1がオンしても、図15の波形Ibに示すように、貫通電流は発生しない。したがって、電力変換装置100は、電力損失を大幅に改善できる。また、動作モード[Phase4]の状態では、接続点X1の電位が平滑コンデンサC3の電位よりも低い。このため、電力変換装置100は、スイッチングロスも改善される。
【0052】
このような作用効果は、交流電源101の電圧の極性が負であり、動作モード[Phase6]→[Phase7]→[Phase8]→[Phase9]→[Phase10]→[Phase6]のサイクルを繰り返す場合も同様に奏し得る。
【0053】
[第2の実施形態]
図16は、第2の実施形態における電力変換装置200の回路構成図である。なお、第1の実施形態の電力変換装置100と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0054】
図16と図1とを対比すれば明らかなように、第2の実施形態の電力変換装置200は、第1の実施形態の電力変換装置100に、出力差分検出部201と乗算器202とを追加する。
【0055】
出力差分検出部201は、第2の電流検出部108で検出される電流IL2を入力し、この電流IL2を直流電圧に変換する。この直流電圧は、前記第2のLC回路104に直列に接続される負荷105に印加される電圧である。出力差分検出部201は、この直流電圧をリファレンス電圧Vrefと比較して、電流の増減係数dを生成する。電流の増減係数dは、乗算器202に出力される。
【0056】
乗算器202は、出力差分検出部201で生成された電流の増減係数dを、電圧検出部106で検出される交流電源101の電圧Vinに乗算して、その入力電圧Vinにおける想定電流値eを生成する。想定電流値eは、コントローラ110に出力される。
【0057】
例えば、交流電源101の電圧Vinが、交流100ボルトであると仮定すると、電流の増減係数dは、0〜141ボルトで脈流する電圧とリファレンス電圧Vrefとを比較した結果となる。また、乗算器202の出力である想定電流値eは、電圧Vinの波形に増減係数dを乗算した波形と相似形となる。
【0058】
コントローラ110は、第1の実施形態と同様に、極性判定部111によって判定される交流電源101の電圧の極性が正のとき、第1のパルス信号P1を出力し、負のとき第2のパルス信号P2を出力する。ただし、パルス信号P1,P2をオンからオフに切り替えるタイミングが第1の実施形態と異なる。
【0059】
すなわちコントローラ110は、パルス発生部112にて生成されるパルス信号P1,P2について、端子t2で検出される電流IL1が想定電流値eと等しくなるまでをオン期間とする。一方、パルス信号P1,P2のオフ期間は、第1の実施形態と同様に、電流バランス判定部113において、電流バランス状態であると判定されるまでとする。
【0060】
コントローラ110が上記の如くパルス信号P1,P2を制御することで、電力変換装置200は、入力電圧波形に略等しい入力電流波形を生成することができる。
例えば、図17において、電流バランス区間が短いと仮定すると、平均電流波形Iaveは次の(1)式で近似できる。なお、(1)式において、Ipeakは、パルス信号P1,P2がオンからオフに切り替わる際のピーク電流であり、Iminは、パルス信号P1,P2がオフからオンに切り替わる際の最小電流である。
【0061】
Iave=(Ipeak−Imin) …(1)
この場合において、平均電流波形Iaveが乗算器202から出力される想定電流値eであると仮定すると、コントローラ110は、次の(2)式を満たすピーク電流Ipeakの値でオン区間が終了するように制御する。
【0062】
Iave=(Ipeak−Imin)/2 …(2)
なお、電流バランス区間を長くする場合には、それ相応の近似式を立てればよい。
【0063】
かかる構成の第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様にリカバリー損失を軽減することができる。
【0064】
以上詳述したように、交流電源からの交流を全波整流するダイオードブリッジ回路や、全波整流された直流の電圧を昇圧する力率改善コンバータが必要であった従来の電力変換装置に対して、第1,第2実施形態の電力変換装置100,200は、上記ダイオードブリッジ回路や力率改善コンバータを用いることなく従来と同等かそれ以上の電力変換機能を得られる。したがって、電力変換効率を大幅に向上させることができる。
【0065】
また、従来は、ダイオードブリッジ回路でダイオードが4個、力率改善コンバータでスイッチが1個とダイオードが1個の合計6個のパワー半導体素子が必要であったが、本実施形態によれば、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2の2個で構成することが可能となる。したがって、従来と比較して安価である上、小型軽量な電力変換装置100,200を提供することができる。
【0066】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態の電力変換装置100,200では、スイッチS1,S2を機械式のスイッチとして説明したが、当該スイッチS1,S2は、機械式のスイッチに限定されるものではない。正方向はスイッチとして機能し、逆方向はダイオードとして機能する素子、例えばMOS型の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)をスイッチS1,S2として代用することも可能である。MOS型の電界効果トランジスタはボディダイオードを有するので、ダイオードD1,D2は省略できる。また、例えばトライアックのような双方向で電流の導通及び非導通を制御できるボディダイオードを有しない半導体スイッチを、スイッチS1,S2として代用することも可能である。この場合、ダイオードD1,D2は必要である。
【0067】
図18は、スイッチS1,S2の代わりにMOS型の電界効果トランジスタQ1,Q2を用いた場合の回路図である。第1のLC回路102に、第1の電界効果トランジスタQ1のドレイン端子を接続し、当該第1の電界効果トランジスタQ1のソース端子を交流電源101の他端に接続する。また、第1のLC回路102と第1の電界効果トランジスタQ1のドレイン端子との接続点X1に、第2の電界効果トランジスタQ2のソース端子を接続し、当該第2の電界効果トランジスタQ2のドレイン端子を平滑コンデンサC3に接続する。かかる構成においても、第1または第2の実施形態と同一の動作モードで電力変換装置100,200は動作する。
【0068】
また、前記実施形態では、第2のLC回路104に対して直列に負荷105を接続したが、負荷105の接続箇所は当該部位に限定されるものではない。図19は、平滑コンデンサC3の両端に発生する電圧を利用して、第2の負荷301を駆動する場合である。この場合、第2のLC回路104に対して直列に接続される第1の負荷105は高周波の交流駆動が、第2の負荷301は直流駆動が可能となる。
【0069】
なお、負荷105は、単なる抵抗体に限定されるものではない。例えば、フィラメント付の蛍光管であってもよい。この場合、第2のLC回路104における第2のインダクタL2のリアクトル作用を利用して、蛍光管に安定した高周波電流を流すことができる。また、トランスで絶縁して二次巻線に任意の直流電圧を発生させる電源ユニットを負荷105として接続してもよい。
【0070】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
100,200…電力変換装置、101…交流電源、102…第1のLC回路、104…第2のLC回路、105,301…負荷、110…コントローラ、111…極性判定部、112…パルス発生部、113…電流バランス判定部、201…出力差分検出部、202…乗算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される、第1のコンデンサと第1のインダクタとを直列に接続してなる第1のLC回路と、
前記交流電源に、前記第1のLC回路を介して接続される第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに直列に接続される第2のスイッチと、
前記第1のスイッチと第2のスイッチとの直列回路に並列に接続される平滑コンデンサと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点と負荷との間に接続される、第2のコンデンサと第2のインダクタとを直列に接続してなる第2のLC回路と、
前記交流電源の電圧極性が正のとき、前記第1のスイッチをパルス駆動するための第1のパルス信号を前記第1のスイッチに出力し、前記交流電源の電圧の極性が負のとき前記第2のスイッチをパルス駆動するための第2のパルス信号を前記第2のスイッチに出力するコントローラと、
を具備したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記交流電源の電圧を検出する電圧検出部と、
この電圧検出部で検出された電圧の極性が正か負かを判定する極性判定部、をさらに具備し、
前記コントローラは、前記極性判定部で判定された極性に応じて前記第1のパルス信号または第2のパルス信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1のインダクタを流れる第1の電流を検出する第1の電流検出部と、
前記第2のインダクタを流れる第2の電流を検出する第2の電流検出部と、
前記第1の電流と前記第2の電流とを比較して等しいか否かを判定する電流バランス判定部と、をさらに具備し、
前記コントローラは、前記第1または第2のスイッチをパルス駆動する際のオフサイクルの区間において、前記電流バランス判定部で前記第1の電流と前記第2の電流とが等しいと判定されると次のオンサイクルに移行することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記交流電源の電圧を検出する電圧検出部と、
前記第2の電流検出部で検出される前記第2の電流から前記第2のLC回路に直列に接続される前記負荷に印加される電圧を求め、この電圧とリファレンス電圧とを比較して差分を出力する出力差分検出部と、
この出力差分検出部から出力される差分出力を前記電圧検出部で検出された電圧と乗算する乗算器と、をさらに具備し、
前記コントローラは、前記乗算器の出力値に基づいて前記第1のスイッチまたは前記第2のスイッチのオンサイクルの電流値を規定することを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記平滑コンデンサの両端に第2の負荷を接続することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1及び第2のスイッチは、機械的スイッチまたはボディダイオードを有しない半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列にダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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