説明

電力変換装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電車用架線への電力供給システムなど二組の変動負荷に電力を供給するに適した電力変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の変動負荷に対する系統の安定化技術としては種々のものが知られているが、近年自己消弧形半導体素子を応用した自励式変換装置により負荷の無効電力を補償し系統を安定化する手段が注目を集めており、一例として平成元年電気学会全国大会No.1110系統安定化用100MVA級GTO−SVGの検討などに報告されている。
【0003】従来のこれらの装置は系統の電圧変動が主に負荷の無効電力により発生することから、この無効電力を補償することにより系統の電圧安定化を図ろうとするものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は三相平衡負荷を主な対象としており、この技術を三相電力を変圧器で二組の単相電力に変換し二組の単相負荷に供給するシステムに適用すると、各単相負荷の有効電力が異なっていると三相電力側で相間不平衡を生じるため、無効電力補償のみでは電圧変動を充分に抑制できないという問題があった。
【0005】本発明の目的は有効電力及び無効電力共に独立に変動する二組の系統の安定化を図る電力変換装置を提供することにある。
【0006】本発明の他の目的は単相負荷運転による三相電力の不平衡を補償し、さらに高調波発生量も抑えた電力変換装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は自励式電力変換装置は有効電力と無効電力を独立に制御できることに着目し、二組の電力変換装置間で電力の融通を行い、二組の負荷の電力の平衡を図るようにしたものである。
【0008】さらに無効電力の補償もそれぞれの電力変換装置で行い、高力率の運転をできるようにしたものである。
【0009】また、上記目的は三相側の相間に接続された自励式電力変換装置により、それぞれの電力変換装置間で電力の融通を行い、二組の負荷の電力の平衡を図ることによっても達成できる。
【0010】また、上記他の目的は、上記手段に加え、各自励式電力変換装置に負荷が発生する高調波成分を相殺する高調波発生手段を併せ持たせることにより達成できる。
【0011】
【作用】三相電力は変圧器により二組の単相電力に変換され二組の負荷にそれぞれ供給される。それぞれの負荷の有効電力及び無効電力は負荷の電圧及び電流の計測結果から求められる。それぞれの負荷に並列接続された自励式電力変換装置はPWMインバータなどが用いられるが、自励式であることから有効電力と無効電力を独立に制御できる。この自励式電力変換装置の直流側を共通に接続すれば自励式電力変換装置間で有効電力を融通することができ、同時に無効電力の補償もできるので、電源側からみた無効電力を0にし、さらに二組の系統の有効電力を等しく制御することができるので、系統の安定化を図ることができる。
【0012】上記単相側での作用を三相側に変換すれば、三相側の少なくても二つの相に接続された自励式電力変換装置により、それぞれの電力変換装置間で電力の融通を行い、同様に二組の負荷の電力の平衡を図ることができるので、これによっても系統の安定化を図ることができる。
【0013】また、負荷が発生する高調波を検出し、これを相殺する高調波を各自励式電力変換装置から発生するように各自励式電力変換装置を制御すれば、三相電力の不平衡を補償し、さらに高調波発生量も抑えた良質の負荷システムを提供することができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明電力変換装置を実施例として示した図面を用いて詳細に説明する。
【0015】図1は本発明電力変換装置の一実施例をしめす。図において、1は一次側が三相交流電源ACに接続され二次側が単相二系統の負荷21及び22に接続された変圧器で、スコット結線により三相電力を単相二系統の電力に変換するように構成されている。変圧器1の二次側には各系統毎に自励式電力変換装置31及び32の交流側が接続され、それらの直流側は直流電源としてのコンデンサ4に共通接続されている。51及び52は単相二系統それぞれの電圧を検出する電圧検出器、61及び62は単相二系統それぞれの電流を検出する電流検出器、7は電圧検出器51,52及び電流検出器61,62により検出した電圧,電流及びそれらの位相関係から自励式電力変換装置31及び32に制御指令を与える制御装置である。単相二系統の負荷21及び22としては例えば電車がある。負荷が電車の場合、負荷電力は有効電力及び無効電力共に大きく変動し、かつ二系統の負荷は独立に変化するため、系統のインピーダンス降下によりそれぞれの系統電圧は独立に大きく変動する。自励式電力変換装置31及び32はこの電圧変動を安定化するように制御される。即ち、電圧検出器51,52及び電流検出器61,62により検出された負荷21及び22の電圧,電流及びそれらの位相関係から制御装置7にて負荷21及び22の有効電力P21,P22及び無効電力Q21,Q22を演算し、更にこれらから自励式電力変換装置31及び32の出力無効電力Q11,Q12及び有効電力P11,P12を演算し、自励式電力変換装置31及び32に指令値を与える。制御装置7における演算は次式で行われる。
【0016】
Q11=−Q21 …(1)
Q12=−Q22 …(2)
P11=(P22−P21)/2 …(3)
P12=(P21−P22)/2=−P11 …(4)
ここで、自励式電力変換装置31及び32は自己消弧型半導体素子により構成され、パルス幅変調(PWM)制御などにより出力電力は有効分と無効分とがそれぞれ独立に制御できるようになっている。
【0017】制御装置7の詳細を図2に示す。図において、71及び72は負荷の電圧V1,V2及び電流I1,I2から負荷の有効電力P21,P22及び無効電力Q21,Q22を演算する第1演算部、73は負荷の有効電力P21,P22及び無効電力Q21,Q22から自励式電力変換装置の出力無効電力Q11,Q12及び有効電力P11,P12を演算する第2演算部、74及び75は自励式電力変換装置の出力無効電力Q11,Q12及び有効電力P11,P12から有効電力指令及び無効電力指令を自励式電力変換装置への指令値に変換する変調部である。第2演算部73は、減算器、2分の1係数器及び−1係数器により式(1),(2),(3)及び(4)の演算を実行するように回路構成されている。これによれば自励式電力変換装置31,32の出力と負荷21,22の有効電力及び無効電力の電源側からみた合成はそれぞれ次式となる。
【0018】
Q21+Q11=0 …(5)
Q22+Q12=0 …(6)
P12+P11=P22+P12=(P21+P22)/2 …(7)
即ち、電源側から見た単相二系統の力率はそれぞれ1であり、有効電力は等しくなる。したがって、本実施例によれば有効電力及び無効電力が共に独立に変動する二組の系統の安定化を図る電力変換装置が実現でき、三相電力にも相間不平衡を生じないという効果がある。
【0019】図1の実施例では電圧,電流の検出点を自励式電力変換装置の接続点よりも負荷側としているが、これを電源側に移し、電源側の無効電力が0になり、かつ二系統の有効電力が等しくなるように自励式電力変換装置31及び32を帰還制御しても同様の効果が得られる。
【0020】図3は電圧,電流の検出点を自励式電力変換装置の接続点よりも負荷側とした場合における本発明の他の実施例である。単相側の有効電力及び無効電力はベクトル演算により三相側の各相の有効電力及び無効電力に変換できるので、三相電源の各相に接続した自励式電力変換装置31,32,33により前記実施例と同様に二組の系統の安定化を図る電力変換装置が実現でき、三相電力にも相間不平衡を生じないという効果がある。
【0021】図4は図3の制御装置7の詳細を示す制御ブロック図である。ここで、図2と同一部分には同一符号を用いている。この図では高調波抑制制御部を付加している。即ち、負荷電流I1,I2に含まれる高調波電流は高調波検出回路76及び77で検出され変調部74及び75に入力されるように構成されている。変調部74及び75ではそれぞれの高調波電流の逆位相電流を自励式電力変換装置に重畳して流すように制御される。78はベクトル演算回路である。このように制御装置7を構成することにより、単相負荷運転による三相電力の不平衡を補償し、さらに高調波の発生量も抑えることができるという効果がある。
【0022】図5は電圧,電流の検出点を自励式電力変換装置の接続点よりも負荷側とした場合における本発明の更に他の実施例である。図4では自励式電力変換装置3台を使用することで説明しているが、三相交流においては零相分は打ち消されるので、任意の2台により同一の効果を得ることが可能である。従って、この実施例では3台の自励式電力変換装置のうちの1台は省略してある。
【0023】また、上述の実施例で電圧及び電流の検出は単相負荷側とした場合を示しているが、検出点は三相側としても単相側の有効電力及び無効電力の演算は可能であり同様の効果が得られる。電圧及び電流の検出点を自励式電力変換装置の接続点よりも電源側とし、電源側の無効電力が0になり、かつ二系統の有効電力が等しくなるように自励式電力変換装置を帰還制御しても同様の効果が得られる。
【0024】なお、図1,図3及び図5の実施例で自励式電力変換装置は電圧型を想定して、直流側はコンデンサを接続しているが、自励式電力変換装置を電流型とし直流側はリアクトルとしても同様の効果が得られる。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、二組の電力変換装置間で電力の融通を行い、二組の負荷の電力の平衡が図れるので、二組の系統を安定にできる効果がある。さらに無効電力の補償もそれぞれの電力変換装置で行われるので高力率の運転ができる効果もある。さらに自励式電力変換装置で負荷の高調波を相殺できるので、良質の負荷システムを実現できる効果もある。上記効果は三相側に自励式電力変換装置を設けた構成でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明電力変換装置の実施例を示す単線接続図である。
【図2】図1の制御装置の詳細を示すブロック図である。
【図3】本発明電力変換装置の他の実施例を示す単線接続図である。
【図4】図3の制御装置の詳細を示すブロック図である。
【図5】本発明電力変換装置の更に他の実施例を示す単線接続図である。
【図6】図5の制御装置の詳細を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…変圧器、21,22…負荷、31,32,33…自励式電力変換装置、4…コンデンサ、51,52…電圧検出器、61,62…電流検出器、7…制御装置、71,72…第1演算部、73…第2演算部、74,75…変調部、76,77…高調波検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】三相電力を変圧器を介して二組の単相電力に変換し二組の単相負荷に供給する装置であって、交流側が変圧器の入力側に接続され、直流側が共通電源に接続された三組の自励式静止形電力変換装置と、各単相電力の電圧及び電流を検出する手段と、検出した電圧及び電流から二組の単相負荷間の不平衡を補正するように自励式静止形電力変換装置を制御する制御装置とを具備することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】自励式静止形電力変換装置はそれが並列接続される負荷が発生する高調波を相殺する高調波を発生することを特徴とする請求項記載の電力変換装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3316860号(P3316860)
【登録日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【発行日】平成14年8月19日(2002.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−289137
【出願日】平成3年10月8日(1991.10.8)
【公開番号】特開平5−111164
【公開日】平成5年4月30日(1993.4.30)
【審査請求日】平成10年9月18日(1998.9.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【参考文献】
【文献】特開 平3−157711(JP,A)
【文献】実開 昭60−147952(JP,U)
【文献】特公 昭55−26783(JP,B1)
【文献】特公 昭63−21411(JP,B1)
【文献】特公 昭61−775(JP,B1)