説明

電力安定化システムおよび電力安定化方法

【課題】配電系統の電力を適切に安定化する。
【解決手段】実施形態によれば、単一のマスタ側制御装置、および少なくとも1つのスレーブ側制御装置をもち、マスタ側制御装置は、電力系統の状態に応じて、複数の電池モジュールのうち制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行ない、スレーブ側制御装置に当該スレーブ側制御装置に接続される制御対象の電池モジュールの充電または放電の指示信号を出力し、スレーブ側制御装置は、マスタ側制御装置からの指示信号にしたがって、前記接続される制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池を含む電池モジュールを有する電力安定化システムおよび電力安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力需要はますます増大してきており、また、電力系統も複雑化してきている。このため、電力を安定に送電するための電力安定化システムが必要となり、これまでに様々な装置が考案されているが、電力系統に対する充電または放電を行なうための電池モジュールを応用したものも幾つか考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−65895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した電力安定化システムには、配電系統の交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器、この変換された直流電力を電池モジュールとの間の充放電のために入出力するDC/DC変換器を有するが、システム内で異常や故障が発生した場合には、システム全体の動作が停止してしまうが、この停止を防止するための対処が適切にはなされていないのが現状である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、配電系統の電力を適切に安定化することが可能になる電力安定化システムおよび電力安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電力系統に接続され、交流電力と直流電力間の双方向の変換を行なう第1の電力変換装置と、管理対象の二次電池を有する複数の電池モジュールと、前記第1の電力変換装置と前記電池モジュールの間に接続され、前記第1の電力変換装置からの直流電力を変換して前記電池モジュールの二次電池に充電し、前記電池モジュールに充電された電力を変換して前記第1の電力変換装置に放電する第2の電力変換装置と、前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのそれぞれの充電または放電を制御する制御装置とをもち、前記制御装置は、単一のマスタ側制御装置、および少なくとも1つのスレーブ側制御装置を有し、前記マスタ側制御装置は、前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのうち制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行ない、前記スレーブ側制御装置に当該スレーブ側制御装置に接続される制御対象の電池モジュールの充電または放電の指示信号を出力し、前記スレーブ側制御装置は、
前記マスタ側制御装置からの指示信号にしたがって、前記接続される制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態における電力安定化システムの拡張前の構成例を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における電力安定化システムの拡張後の構成例を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図。
【図5】第2の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャート。
【図6】第3の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図。
【図7】第3の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャート。
【図8】第4の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャート。
【図9】第5の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図。
【図10】第5の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態における電力安定化システムの拡張前の構成例を示すブロック図である。
【0009】
図1に示した電力安定化システムは、建物内の電力系統である配電系統に接続されるシステムであり、システム全体の統括制御を行なう統括制御装置1、AC/DC変換器2、DC/DC変換器3、電池モジュール4、検出装置5を備える。検出装置5は、例えば配電系統の電流センサであったり、EMS(Energy Management System)受信端末であったりする。EMSとは、システムの外部に設けられる電力管理用システムである。
【0010】
統括制御装置1は、管理部11、通信部12を有する。
管理部11は、各電池モジュール4の電池情報に基づいて各電池モジュール4に対する充放電量を制御する負荷配分制御機能を有する。
通信部12は、各電池モジュール4の電池情報をAC/DC変換器2やDC/DC変換器3を介した通信によって取得する。
【0011】
AC/DC変換器2は、双方向インバータ21、制御部22、通信部23、通信変換部24、通信部25を有する。
双方向インバータ21は、配電系統からの交流電力を直流電力に変換してDC/DC変換器3へ出力したり、DC/DC変換器3からの直流電力を交流電力に変換して配電系統に出力したりする。
制御部22は、統括制御装置1からの通信指令に基づいて双方向インバータ21の動作を制御する。
通信部23は、DC/DC変換器3との間での情報の送受信を行なう。通信部25は、統括制御装置1との間での情報の送受信を行なう。通信変換部24は、通信部23により処理する情報と通信部25により処理する情報との間の変換処理を行なう。
【0012】
DC/DC変換器3は、電圧昇降圧部31、制御部32、通信部33を有する。
電圧昇降圧部31は、AC/DC変換器2からの直流電力の電圧変換を行なって電池モジュール4の二次電池に充電したり、この二次電池に蓄えられていた電力の電圧変換を行なってAC/DC変換器2に放電したりする。
制御部32は、統括制御装置1やAC/DC変換器2からの通信指令に基づいて電圧昇降圧部31を制御する。
通信部33は、AC/DC変換器2や電池モジュール4との間での情報の送受信を行なう。
【0013】
電池モジュール4は、二次電池列41、BMU(Battery Management Unit)42を有し、このBMU42は、制御部43、通信部44、管理部45を有する。
二次電池列41は、例えばリチウムイオン、NiMH、鉛などのいずれかの二次電池を直並列に接続したものである。
BMU42の制御部43は、DC/DC変換器3からの通信指令に基づいて二次電池列を制御し、電池の充放電を行なう。通信部44は、DC/DC変換器3との間での情報の送受信を行なう。管理部45は、二次電池列41の電圧、電流、温度、SOC(State Of Charge:充電状態)の値、内部抵抗、充放電積算電流などの電池情報を管理して、二次電池列41の異常や充放電回数の残り寿命の検知を行なう。
【0014】
また、本実施形態では、電池モジュール4は3つ設けられ、DC/DC変換器3は、それぞれの電池モジュール4に対して1つずつ設けられる。具体的には、AC/DC変換器2と1つ目の電池モジュール4の間に1つ目のDC/DC変換器3が設けられ、AC/DC変換器2と2つ目の電池モジュール4の間に2つ目のDC/DC変換器3が設けられ、AC/DC変換器2と3つ目の電池モジュール4の間に3つ目のDC/DC変換器3が設けられる。
【0015】
図2は、第1の実施形態における電力安定化システムの拡張後の構成例を示すブロック図である。
図2に示した拡張後のシステムは、拡張前と比較して、マスタ側の統括制御装置1が1つ備えられ、スレーブ側の統括制御装置1が2つ備えられる。また、AC/DC変換器2は、各DC/DC変換器3に対して1つずつ設けられる。
【0016】
具体的には、マスタ側の統括制御装置1の通信部12が1つ目のAC/DC変換器2の通信部25に接続され、この変換器の通信部23に対して、1つ目のDC/DC変換器3、1つ目の電池モジュールが直列に接続される。
【0017】
また、スレーブ側の1つ目の統括制御装置1の通信部12が2つ目のAC/DC変換器2の通信部25に接続され、この変換器に対して2つ目のDC/DC変換器3、2つ目の電池モジュール4が直列に接続される。
【0018】
また、スレーブ側の2つ目の統括制御装置1の通信部12が3つ目のAC/DC変換器2の通信部25に接続され、この変換器に対して3つ目のDC/DC変換器3、3つ目の電池モジュール4が直列に接続される。
【0019】
また、配電系統は、各AC/DC変換器2の双方向インバータ21に接続され、マスタ側の統括制御装置1の通信部12はスレーブ側の1つ目の統括制御装置1の通信部12にさらに接続され、この通信部12はスレーブ側の2つ目の統括制御装置1の通信部12にさらに接続される。
【0020】
図3は、第1の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、図2に示した拡張後のAC/DC変換器2は電力出力値の情報をマスタ側の統括制御装置1に出力し、各電池モジュール4のBMU42は、二次電池列41の電池情報をマスタ側の統括制御装置1に出力する。マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、このように出力された情報を入力すると、内部メモリに記憶することで設定を行なう(ステップS1)。
【0021】
管理部11は、設定した情報をもとに、拡張後の各AC/DC変換器2の出力値の合計や各電池モジュール4の電池情報で示される充電容量の合計を計算し、各DC/DC変換器3の出力値を計算する(ステップS2,S3)。ここで計算される各DC/DC変換器3の出力値は接続先のAC/DC変換器2の出力値以内となる。そして、管理部11は、各DC/DC変換器3に対し、出力値をステップS3で計算した出力値に変更するための指令信号を出力し、この信号を入力したDC/DC変換器3の制御部32は、当該変換器の出力値の設定変更を行なう(ステップS5)。
【0022】
図1に示したような拡張前の構成では、1つのAC/DC変換器2に対して3つのDC/DC変換器3が接続されており、各DC/DC変換器3の出力値の合計は、この1つのAC/DC変換器2の出力値以内に制限されるので1つのDC/DC変換器3の出力値はAC/DC変換器2の出力値の3分の1となるが、拡張後の構成では、各DC/DC変換器3に対してAC/DC変換器2が1対1で接続されるので、各DC/DC変換器3の出力値を増やすことができる。
【0023】
また、マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、1つ目の電池モジュール4の電池情報を得る場合には、電池情報要求信号を通信部12から出力する。この信号は1つ目のAC/DC変換器2の通信部25、通信変換部24、通信部23、1つ目のDC/DC変換器3の通信部33、1つ目の電池モジュール4の通信部44を介して管理部45に伝達される。すると、管理部45は、当該電池モジュール4内の二次電池列41の電池情報を通信部44から出力する。この信号は、DC/DC変換器3、AC/DC変換器2、マスタ側の統括制御装置1の通信部12を介して管理部11に伝達される。
【0024】
また、マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、2つ目の電池モジュール4の電池情報を得る場合には、電池情報要求信号を通信部12から1つ目のスレーブ側の統括制御装置1に出力する。この信号は、2つ目のAC/DC変換器2、2つ目のDC/DC変換器3、2つ目の電池モジュール4の通信部44を介して管理部45に伝達される。すると、管理部45は、当該電池モジュール4内の二次電池列41の電池情報を通信部44から出力する。この信号は、DC/DC変換器3、AC/DC変換器2、1つ目のスレーブ側の統括制御装置1、マスタ側の統括制御装置1の通信部12を介して管理部11に伝達される。
【0025】
同様に、マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、3つ目の電池モジュール4の電池情報を得る場合には、電池情報要求信号を通信部12から1つ目のスレーブ側の統括制御装置1を介して2つ目のスレーブ側の統括制御装置1に出力する。この信号は3つ目のAC/DC変換器2、3つ目のDC/DC変換器3、3つ目の電池モジュール4の通信部44を介して管理部45に伝達される。すると、管理部45は、当該電池モジュール4内の二次電池列41の電池情報を通信部44から出力する。この信号は、DC/DC変換器3、AC/DC変換器2、2つ目及び1つ目のスレーブ側の統括制御装置1、マスタ側の統括制御装置1の通信部12を介して管理部11に伝達される。
【0026】
マスタ側の統括制御装置1は、各電池モジュール4の電池情報をもとに、配電系統の安定を維持するための充放電対象の電池モジュール4を決定し、直接の接続先である1つ目のAC/DC変換器2、もしくは、決定先の電池モジュール4に対応するスレーブ側の統括制御装置1に対して充放電指令信号を出力する。このように出力された信号が充放電対象の電池モジュール4の制御部43に伝達されることで、当該電池モジュール4内の二次電池列41に対する充電もしくは放電の制御がなされる。
【0027】
また、マスタ側の統括制御装置1からの指令信号は、充放電対象の電池モジュール4に対応するDC/DC変換器3の通信部33を介して制御部32に入力され、制御部32は、この信号をもとに電圧昇降圧部31を制御する。また、この指令信号は、充放電対象の電池モジュール4に対応するAC/DC変換器2の通信部23を介して制御部22に入力され、制御部22は、この信号をもとに双方向インバータ21を制御する。
【0028】
以上のように、第1の実施形態における電力安定化システムでは、マスタ側およびスレーブ側の統括制御装置を設け、マスタ側の統括制御装置1が各電池モジュールの電池情報をもとに、充放電対象の電池モジュールにかかる充放電制御を行なうので、建物内の電力需要の変化に応じて、電力の安定性を適切に維持しつつ、電池モジュールの容量や電力変換器の出力値を拡張することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態における電力安定化システムの構成は図2に示したものと基本的にほぼ同様であるので同一部分の説明は省略する。
図4は、第2の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、図2に示した構成と比較して、表示装置6をさらに備え、マスタ側の統括制御装置1は電池モジュール4の異常情報表示制御のための制御部13を有する。表示装置6は例えば液晶ディスプレイ装置であり、制御部61および表示部62を備える。制御部61は、マスタ側の統括制御装置1の制御部13に接続される。
【0030】
図5は、第2の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、各電池モジュール4の電池情報であるSOCの値や残り寿命の情報を検出し(ステップS21)、この電池情報をもとに、各電池モジュール4のうち故障もしくは充放電回数が寿命に達した電池モジュールがある場合には(ステップS22のYES)、該当の電池モジュールの異常を示す情報を表示するための表示指示信号を通信部12、制御部13を介して表示装置6の制御部61に出力する(ステップS23)。
【0031】
表示装置6の制御部61は表示指示信号を入力すると(ステップS24)、この信号で示される、異常発生元の電池モジュール4の異常を示す情報を表示部62により表示する(ステップS25)。
【0032】
このような構成とすることにより、電力安定化システムの管理者は、いずれかの電池モジュールに異常が発生したことを容易に把握することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、図2に示した構成と比較して、マスタ側の統括制御装置1は、電池モジュールの異常情報送信制御のための制御部13および外部通信部14をさらに備える。
【0034】
図7は、第3の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
マスタ側の統括制御装置1の管理部11は、各電池モジュール4の電池情報であるSOCの値や充放電回数の残り寿命を検出し(ステップS31)、この電池情報をもとに、各電池モジュール4のうち故障もしくは充放電回数が寿命に達した電池モジュールがある場合には(ステップS32のYES)、該当の電池モジュールの異常を示す情報を外部の電力設備監視センタに報知するための外部報知指示信号を通信部12、制御部13、外部通信部14を介して電力設備監視センタに出力する(ステップS33)。
【0035】
出力先の電力設備監視センタの表示制御装置は外部報知指示信号を入力すると、この信号で示される、異常発生元の電池モジュール4の異常を示す情報を表示する。
【0036】
このような構成とすることにより、報知先の管理者は、報知元の電力安定化システムのいずれかの電池モジュールに異常が発生したことを容易に把握することができる。
【0037】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態の電力安定化システムは、電池モジュール4を増設してシステムに組み入れた際に、この電池モジュールの情報通信用の通信プロトコルや電池情報を認識および設定するものである。
図8は、第4の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、増設対象の電池モジュール4をいずれかのDC/DC変換器3に接続した場合(ステップS41)、この電池モジュール4のBMU42の管理部45は、通信プロトコルや電池情報を通信部44から接続先のDC/DC変換器3に出力する(ステップS42)。
【0038】
DC/DC変換器3の制御部32は、出力された通信プロトコルや電池情報を通信部33を介して入力して認識すると、この情報を接続先のAC/DC変換器2などを介してマスタ側の統括制御装置1に出力する(ステップS43,S44,S45)。
【0039】
この統括制御装置1の管理部11は、出力された通信プロトコルや電池情報を通信部12を介して入力すると、この情報を内部メモリに記憶することで設定し、これらの情報をもとに、増設された電池モジュールを含む各電池モジュール4に対する充放電制御を行なう。
【0040】
このような構成とすることにより、電池モジュールを増設した場合でも、この増設された電池モジュールを含む各電池モジュールに対する適切な充放電制御を行なうことができる。
【0041】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態における電力安定化システムの構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、図2に示した構成と比較して、マスタ側およびスレーブ側の統括制御装置1のそれぞれに固有の識別番号(ID)が付与される。
また、本実施形態では、マスタ側の統括制御装置1や1つ目のスレーブ側の統括制御装置1に接続されるAC/DC変換器2に対し、複数のDC/DC変換器3および電池モジュール4の組が接続される。マスタ側の統括制御装置1からの接続先の電池モジュール4は特性の異なる電池モジュール「A」、「B」であり、1つ目のスレーブ側の統括制御装置1からの接続先の電池モジュール4は電池モジュール「A」、「B」と特性の異なる電池モジュール「C」、「D」であり、2つ目のスレーブ側の統括制御装置1からの接続先の電池モジュール4は電池モジュール「A」、「B」、「C」、「D」と特性の異なる電池モジュール「E」である。
【0042】
図10は、第5の実施形態における電力安定化システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、複数の統括制御装置1のそれぞれに対するマスタ側およびスレーブ側の区別の設定を行なうための設定信号が、外部の電力設備監視センタから配電系統に最も近い統括制御装置1に入力される。この統括制御装置1は、入力した信号をもとに、それぞれの統括制御装置1についてのマスタ側およびスレーブ側の設定を行なう(ステップS51)。
【0043】
この設定信号では、IDの番号の最も若い統括制御装置1をマスタ側とし、その他の統括制御装置1をスレーブ側とすることが指示され、IDが「1」である統括制御装置1がマスタ側に設定され、IDが「2」以降である統括制御装置1がスレーブ側に設定される。
【0044】
設定されたいずれかのスレーブ側の統括制御装置1は、マスタ側の統括制御装置1との間で一定時間ごとに動作確認用信号を送信して返信される信号を受信することで、マスタ側の統括制御装置1が故障しているか否かを判断している。スレーブ側の統括制御装置1は、動作確認用信号をマスタ側の統括制御装置1に送信したにも関わらず、所定時間経過後も信号が返信されない場合には、マスタ側の統括制御装置1が故障していることを検出する(ステップS52)。
【0045】
すると、検出を行なったスレーブ側の統括制御装置1は、故障したマスタ側以外の自装置を含むそれぞれの統括制御装置1のうちいずれか1つ、例えばIDの最も若い装置を新たなマスタ側の統括制御装置1に設定することで、マスタ側の統括制御装置の設定変更を行なう(ステップS53)。
【0046】
新たなマスタ側の統括制御装置1の設定の基準は、前述したIDの番号に限らず、接続先のAC/DC変換器2やDC/DC変換器3の出力値の大小、例えば出力値が最も大きい装置であってもよいし、接続先の電池モジュール4の二次電池列41の充放電回数の残り寿命が最も長い統括制御装置であってもよいし、接続先の電池モジュール4の二次電池列41の容量が最も多い統括制御装置であってもよい。
【0047】
これらの各実施形態によれば、配電系統の電力を適切に安定化することが可能になる電力安定化システムを提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…統括制御装置、2…AC/DC変換器、3…DC/DC変換器、4…電池モジュール、5…検出装置、21…双方向インバータ、31…電圧昇降圧部、41…二次電池列、42…BMU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続され、交流電力と直流電力間の双方向の変換を行なう第1の電力変換装置と、
管理対象の二次電池を有する複数の電池モジュールと、
前記第1の電力変換装置と前記電池モジュールの間に接続され、前記第1の電力変換装置からの直流電力を変換して前記電池モジュールの二次電池に充電し、前記電池モジュールに充電された電力を変換して前記第1の電力変換装置に放電する第2の電力変換装置と、
前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのそれぞれの充電または放電を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
単一のマスタ側制御装置、および少なくとも1つのスレーブ側制御装置でなり、
前記マスタ側制御装置は、
前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのうち制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行ない、前記スレーブ側制御装置に当該スレーブ側制御装置に接続される制御対象の電池モジュールの充電または放電の指示信号を出力し、
前記スレーブ側制御装置は、
前記マスタ側制御装置からの指示信号にしたがって、前記接続される制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行なう
ことを特徴とする電力安定化システム。
【請求項2】
電力系統に接続され、交流電力と直流電力間の双方向の変換を行なう第1の電力変換装置、管理対象の二次電池を有する複数の電池モジュールと、前記第1の電力変換装置と前記電池モジュールの間に接続され、前記第1の電力変換装置からの直流電力を変換して前記電池モジュールの二次電池に充電し、前記電池モジュールに充電された電力を変換して前記第1の電力変換装置に放電する第2の電力変換装置、および前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのそれぞれの充電または放電を制御する制御装置を有する電力安定化システムに用いられる電力安定化方法であって、前記制御装置は、単一のマスタ側制御装置、および少なくとも1つのスレーブ側制御装置でなり、
前記電力系統の状態に応じて、前記複数の電池モジュールのうち制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行ない、前記スレーブ側制御装置に当該スレーブ側制御装置に接続される制御対象の電池モジュールの充電または放電の指示信号を出力し、
前記マスタ側制御装置からの指示信号にしたがって、前記接続される制御対象の電池モジュールの二次電池の充電または放電の制御を行なう
ことを特徴とする電力安定化方法。
【請求項3】
前記マスタ側制御装置は、前記制御装置のうち制御対象の電池モジュールの充放電回数の残り寿命が最も長い装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の電力安定化システム。
【請求項4】
前記マスタ側制御装置は、前記制御装置のうち制御対象の電池モジュールの二次電池の容量が最も多い装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の電力安定化システム。
【請求項5】
前記電池モジュールの管理対象の二次電池の充放電が正常に行なえなくなった場合に、当該二次電池の異常を示す情報を表示する表示装置をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の電力安定化システム。
【請求項6】
前記マスタ側制御装置は、
新たな電池モジュールを前記第2の電力変換装置に接続して増設した場合に、当該電池モジュールの二次電池の情報を取得し、この取得した情報をもとに、前記増設した電池モジュールの充放電を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力安定化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−85494(P2012−85494A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231744(P2010−231744)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】