電力用変圧器
【課題】通電騒音を良好に低減するとともに、製造コストや設置費用の増大を良好に防ぐことが可能な電力用変圧器を提供すること。
【解決手段】電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにした。
【解決手段】電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受配電用設備に使用する電力用変圧器に係り、その目的は、電力用変圧器の運転中に発生する騒音を良好に軽減することにある。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器において発生する騒音の主体は、鉄心を構成するけい素鋼板の磁歪に起因する無負荷時の励磁騒音であり、前記励磁騒音の周波数は、電源の周波数が50Hzの場合100Hzの整数倍(100Hz、200Hz、300Hz、…)、電源の周波数が60Hzの場合120Hzの整数倍(120Hz、240Hz、360Hz、…)であることはよく知られている。
【0003】
一方、励磁騒音の他に、変圧器に負荷を接続することにより発生する騒音がある。この騒音は通電騒音と呼ばれ、従来はほとんど問題にならなかったが、励磁騒音の低減にともなって前記通電騒音を無視できない場合もでてきた。変圧器に負荷を接続することにより巻線に電流が流れると漏れ磁束が生じ、巻線の電流(I)と磁場(B)の相互作用により巻線に電磁力(F=I×B)が発生する。この電磁力は、巻線の半径方向と軸方向に発生し、巻線を半径方向と軸方向に振動させるとともに、漏れ磁束の通路にある変圧器タンクや磁気シールド等にも、この電磁力に起因する振動が発生する。前記通電騒音は、前述のように巻線や変圧器タンク等の振動により発生するものである。そして、通電騒音の周波数は、電源の周波数が50Hzの場合は100Hz、電源の周波数が60Hzの場合では120Hzが主となる。
【0004】
従来、変圧器の騒音を低減する場合は、変圧器タンクの側板に吸音材を組み合せた溶接構造用合金型制振鋼板を使用することによって、変圧器中身より発生する騒音・振動を低減するようにしたり(例えば、特許文献1参照)、変圧器タンクの側壁に複数個の補強ステーを設け、この補強ステーに所定のバネ定数を有する薄板を介して防音用の遮音板を取付け、補強ステーから遮音板に伝播する振動を薄板によって低減することにより、タンク側壁から外部に伝播する騒音を抑制したり(例えば、特許文献2参照)、変圧器から放射される騒音(音響)を能動囲壁及び能動パネルを使用して低減するようにしていた(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実願平5−23704号(実開平6−79120号)のCD−ROM
【特許文献2】特開平11−40441号公報
【特許文献3】特表平8−511634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記吸音材や制振鋼板を変圧器タンクの側板の内側や外側に設置して騒音の吸音や遮音を行うようにした場合、運転中の変圧器から発生する励磁騒音はある程度低減することができる反面、通電騒音については低減することが困難であった。前記通電騒音は、例えば、特許文献3に開示されている能動囲壁及び能動パネルを用いることによってある程度低減することができるものの、変圧器の周囲に能動囲壁等を設置しなければならないので、この種変圧器の製造コストが増大するとともに、変圧器だけでなく前記騒音低減用の能動囲壁等を設置するスペースが必要となり、変圧器の設置費用も嵩むという問題があった。
【0007】
本発明は、前記種々の問題点に鑑み、通電騒音を良好に低減するとともに、製造コストや設置費用の増大を良好に防ぐことが可能な電力用変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、送受配電設備に使用される電力用変圧器において、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間、並びに、電力用変圧器のタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6記載の電力用変圧器において、前記空気空間における3辺の長さ寸法は、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項2ないし6記載の電力用変圧器において、前記空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記電力用変圧器において発生する騒音を、能動囲壁等を設置することなく良好に低減することが可能となり、この結果、前記能動囲壁等を設置することによってこの種変圧器の製造コストや設置費用が増大するのを確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と、前記タンク側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側壁に変形防止用の縦補強部材及び横補強部材を取付けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク底板と、前記タンク底板に取付けられるベースと、前記ベースを介して電力用変圧器が設置される設置面とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のようにベースを介して電力用変圧器を設置面に設置する場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンクの一側面に設けたバスダクトとの間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンクの一側面にバスダクトを設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンク側面に設けた放熱器との間で形成される空気空間、前記放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、前記放熱器相互間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記各空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記各空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側面に放熱器を設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンクの一側面に設けたバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と該タンク側面に設けた放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記各空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記各空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側面にバスダクト及び放熱器を設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、空気空間における3辺の長さ寸法を、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、前記数値と一致しない長さ寸法に設定して、電力用変圧器の設計を行うことにより、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたので、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、該空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたこととも相まって、電力用変圧器において発生する騒音をより一層低減することができるとともに、前記電力用変圧器を建屋等によって囲んで騒音を低減させる必要もないため、この種変圧器の設置スペースや設置費用の増大を良好に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。一般に、電力用変圧器において発生する振動(通電騒音)の周波数と、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数とが一致する場合に騒音が増大することがよく知られている。従って、前記騒音を低減するためには、変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺(幅方向、長手方向、高さ方向)の長さ寸法を、共鳴を避けることが可能な長さ寸法に設定すればよい。
【0025】
前記空気空間が両側開空間または両側閉空間の場合、電力用変圧器の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する前記空気空間の長さ寸法dは、次の(1)式によって求められる。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、d:空気空間の長さ寸法
m:1以上の整数
v0:音速
f:通電騒音の周波数
をそれぞれ示す。
【0028】
一方、前記空気空間が一端開空間の場合、電力用変圧器の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する前記空気空間の長さ寸法dは、次の(2)式によって求められる。
【0029】
【数2】
【0030】
ここで、d:空気空間の長さ寸法
m:1以上の整数
v0:音速
f:通電騒音の周波数
をそれぞれ示す。
【0031】
また、空気中における音速v0は、次の(3)式によって求められる。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、t:気温
を示す。
【0034】
そして、前記(1)式及び(2)式に(3)式を代入すると、次の(4)式及び(5)式となる。
【数4】
【0035】
つづいて、前記(4)式,(5)式により、通電騒音の周波数が100Hz、変圧器の使用時における気温が、例えば−20℃〜40℃の場合において、前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求めると、
【0036】
【数5】
【0037】
となる。即ち、両側開空間または両側閉空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が1.59m〜1.78m(以下、1.6m〜1.8mとする)の整数倍の長さ寸法のとき、一端開空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が0.79m〜0.89m(以下、0.7m〜0.9mとする)の奇数倍の長さ寸法のときに、それぞれ共鳴が発生することがわかる。
【0038】
また、前記(4)式,(5)式により、通電騒音の周波数が120Hz、変圧器の使用時における気温が、例えば−20℃〜40℃の場合において、前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求めると、
【0039】
【数6】
【0040】
となる。即ち、両側開空間または両側閉空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が1.33m〜1.48m(以下、1.3m〜1.5mとする)の整数倍の長さ寸法のとき、一端開空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が0.665m〜0.74m(以下、0.6m〜0.8mとする)の奇数倍の長さ寸法のときに、それぞれ共鳴が発生することがわかる。
【0041】
前記のように、電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間において共鳴が発生するのを避け、騒音を低減するためには、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、前記[数5],[数6]における計算結果より求められる長さ寸法と一致しないように設定して、電力用変圧器を設計すればよい。
【0042】
なお、本発明において前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求める際に使用する気温の数値範囲は、JEC−2200(1995)第I編3章3.1節(2)項に「常規使用状態での変圧器の周囲冷却媒体の温度は、冷却媒体が空気の場合、最高で40℃を超えないものとし、最低気温は−20℃(屋外の場合)を下回らないものとする」との記載があることから、これに基いて−20〜40℃の範囲に設定した。
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例について、図1ないし図13を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図2は同じく第1実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図である。
【0044】
図1,2で示すように、電力用変圧器1は、鉄心2及び巻線3からなる変圧器中身4を絶縁油とともにタンク5内へ収容することにより構成されている。前記タンク5の底板5aには、図3で示すように、形鋼等を用いて井桁状に形成した前記底板5aの補強を兼ねるベース6が溶接等により取付けられている。また、前記タンク5の側壁には、高さ方向(図1,2の上下方向)に沿って形鋼等からなる縦補強部材7が、長手方向及び幅方向(図1,2の左右方向)に沿って鋼板等からなる横補強部材8が、それぞれ溶接等により取付けられている。そして、前記ベース6を設置面9に埋設した図示しない埋込ベースにボルト等を用いて固定することにより、前記電力用変圧器1は設置面9上に揺動不能に設置される。なお、図1,2において、10,11はタンク5の上面に所定数設けた1次及び2次ブッシングである。
【0045】
つづいて、前記電力用変圧器1の運転中、即ち、電力用変圧器1に負荷を接続することにより巻線3に電流が流れると、前記巻線3の電流と磁場との相互作用により電磁力が発生し、前記巻線3を半径方向と軸方向に振動させるとともに、タンク5等にも前記電磁力に起因する振動が発生し、これらの振動が電力用変圧器1において発生する通電騒音の要因となる。
【0046】
このとき、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間S1〜S4(図3参照)、並びに、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間S5〜S10(図4参照)において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音が発生することとなる。従って、前記空気空間S1〜S10において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記空気空間S1〜S10における3辺の長さ寸法を設定すればよい。なお、本実施例においては、図3(b),(c)及び図4(b),(c)における上下方向を高さ方向、図3(a)及び図4(a),(b)における左右方向を長手方向、図3(a),図4(a)における上下方向及び図4(c)における左右方向を幅方向と称して説明する。
【0047】
以下、前記空気空間S1〜S10における3辺の長さ寸法を設定する場合について説明する。
(1)空気空間S1の場合
空気空間S1は、図3(a)で示すように、ベース6の幅方向及び長手方向における隅角部の4ヶ所に形成される。前記空気空間S1は、長手方向及び幅方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx1,Lz1は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端がタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly1は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0048】
(2)空気空間S2の場合
空気空間S2は、図3(a)で示すように、ベース6の長手方向における空気空間S1,S1間の4ヶ所に形成される。前記空気空間S2は、長手方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx2,Ly2は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz2は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0049】
(3)空気空間S3の場合
空気空間S3は、図3(a)で示すように、ベース6の幅方向における空気空間S1,S1間の2ヶ所に形成される。前記空気空間S3は、長手方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx3は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間、幅方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly3,Lz3は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0050】
(4)空気空間S4の場合
空気空間S4は、図3(a)で示すように、ベース6のほぼ中央部の2ヶ所に形成される。前記空気空間S4は、長手方向及び幅方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx4,Lz4,Ly4は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0051】
(5)空気空間S5の場合
空気空間S5は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の長手方向及び高さ方向における隅角部の4ヶ所(両側面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S5は、長手方向においては図4(b)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、高さ方向においては図4(b)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁に閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx5,Ly5,Lz5は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0052】
(6)空気空間S6の場合
空気空間S6は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の長手方向における空気空間S5,S5間の8ヶ所(両側面で16ヶ所)に形成される。前記空気空間S6は、長手方向においては図4(b)で示す如く両端を縦補強部材7により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx6は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(b)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly6,Lz6は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0053】
(7)空気空間S7の場合
空気空間S7は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の高さ方向における空気空間S5,S5間の4ヶ所(両側面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S7は、長手方向においては図4(b)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx7,Lz7は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(b)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly7は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0054】
(8)空気空間S8の場合
空気空間S8は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁において周囲を空気空間S5〜S7に囲まれた8ヶ所(両側面で16ヶ所)に形成される。前記空気空間S8は、長手方向においては図4(b)で示す如く両端を縦補強部材7により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図4(b)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx8,Ly8は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz8は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0055】
(9)空気空間S9の場合
空気空間S9は、図4(c)で示すように、タンク5の正面及び背面側に位置する側壁の幅方向における隅角部の4ヶ所(正面及び背面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S9は、長手方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁に閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、高さ方向においては図4(c)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(c)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx9,Ly9,Lz9は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0056】
(10)空気空間S10の場合
空気空間S10は、図4(c)で示すように、タンク5の正面及び背面側に位置する側壁における空気空間S9,S9間の4ヶ所(正面及び背面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S10は、長手方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(c)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx10,Lz10は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(c)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly10は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0057】
以上のように、本発明の第1実施例の電力用変圧器1においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間S1〜S4、並びに、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間S5〜S10のそれぞれの長手方向,高さ方向,幅方向における長さ寸法Lx1〜Lx10,Ly1〜Ly10,Lz1〜Lz10を、前記空気空間S1〜S10において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法となるように設定したので、タンク5の側壁に変形防止用の縦補強部材7及び横補強部材8を設けたり、タンク5の底板5aに取付けたベースを介して電力用変圧器1を設置面9に設置するようにしても、前記電力用変圧器1の運転中に発生する通電騒音を良好に低減することができる。
【0058】
次に、図5ないし図7を参照しながら、本発明の第2実施例について説明する。図5は本発明の第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図6は同じく第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図7は第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図5ないし図7において、第1実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。また、本実施例においては、図5,6における上下方向を高さ方向、図5,7における左右方向を長手方向、図6における左右方向及び図7における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0059】
第2実施例の電力用変圧器21と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の長手方向における一方端側(図5の左側)にバスダクト22を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0060】
第2実施例の電力用変圧器21においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音が発生することとなる。従って、前記各空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記各空気空間における3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0061】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を設定する場合、バスダクト22と対向しないタンク5の側壁(図5の右側及び図6の左右方向)に形成される空気空間については第1実施例と同様に行えばよい。更に、バスダクト22と対向するタンク5の側壁(図5の左側)に形成される空気空間については、高さ方向及び幅方向における長さ寸法の設定は第1実施例と同様に行えばよいが、長手方向においては第1実施例とは異なり、両端がタンク5の側壁とバスダクト22とによって閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0062】
つづいて、タンク5の側壁とバスダクト22の間で形成される空気空間S11は、長手方向においては図5,7で示す如く両端がタンク5の側壁とバスダクト22とにより閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図5,6で示す如く両端がブッシングポケット23と設置面9とにより閉鎖された両端閉空間、幅方向においては図6,7で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx11,Ly11,Lz11は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0063】
このように、第2実施例の電力用変圧器21においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成されるだけでなく、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間S11における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間S11において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記バスダクト22を設けた電力用変圧器21においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0064】
次に、図8ないし図10を参照しながら、本発明の第3実施例について説明する。図8は本発明の第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図9は同じく第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図10は第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図8ないし図10において、第1実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。また、本実施例においては、図8,9における上下方向を高さ方向、図8,10における左右方向を長手方向、図9における左右方向及び図10における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0065】
第3実施例の電力用変圧器31と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の幅方向における両側面(図10の左右方向)に複数の放熱器32を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0066】
第3実施例の電力用変圧器31においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器31の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音を発生することとなる。従って、前記各空気空間における共鳴の発生する周波数が、電力用変圧器31における通電騒音の周波数と一致しないように、前記各空気空間における3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0067】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を設定する場合、放熱器32と対向しないタンク5の側壁(図10の左右方向)に形成される空気空間については第1実施例と同様に行えばよい。更に、放熱器32と対向するタンク5の側壁(図9の左右方向)に形成される空気空間については、長手方向及び高さ方向における長さ寸法の設定は第1実施例と同様に行えばよいが、幅方向においては第1実施例とは異なり、両端がタンク5の側壁と放熱器32とによって閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0068】
つづいて、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間S12は、長手方向及び高さ方向においては図9,10で示す如く両端が開口した両端開空間、幅方向においては図9で示す如く両端がタンク5の側壁と放熱器32とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx12,Ly12.Lz12は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0069】
また、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間S13は、長手方向においては図8で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx13は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。更に、高さ方向においては図9で示す如く一方端が設置面9により閉鎖され、他方端が開口した(放熱器32は幅方向に複数枚のフィンを備えて構成されているので、放熱器32側の高さ方向は開口とみなすことができる)一端開空間、幅方向においては、図9で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly13,Lz13は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0070】
更に、放熱器32相互間で形成される空気空間S14,S15は、長手方向においては図10で示す如く両端が開口した(放熱器32,32により挟まれた状態であるが、前記放熱器32は幅方向に複数枚のフィンを具備して構成されているので、長手方向においては開口とみなすことができる)両端開空間、高さ方向においては図8で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx14,Lx15,Ly14,Ly15は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図10で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、一方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz14,Lz15は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0071】
このように、第3実施例の電力用変圧器31においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材12と横補強部材13とによって形成される空気空間だけでなく、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間S12、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間S13、放熱器32相互間で形成される空気空間S14,S15における3辺の長さ寸法ついても、前記各空気空間S12〜S15において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器31における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記放熱器32を設けた電力用変圧器31においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0072】
次に、図11ないし図13を参照しながら、本発明の第4実施例について説明する。図11は本発明の第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図12は同じく第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図13は第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図11ないし図13において、第1〜第3実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。
【0073】
第4実施例の電力用変圧器41と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の長手方向における一方端側(図11,13の左側)にバスダクト22を設けるとともに、タンク5の幅方向における両側面(図12の左右方向)に複数の放熱器32を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同一であるため、その説明を省略する。また、本実施例においては、図11,12における上下方向を高さ方向、図11,13における左右方向を長手方向、図12における左右方向及び図13における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0074】
第4実施例の電力用変圧器41においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間、更に、バスダクト22と放熱器32との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音を発生することとなる。従って、前記各空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記各空気空間の3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0075】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材7とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1〜第3実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁とバスダクト22との間に形成される空気空間S11における3辺の長さ寸法を設定する場合、長手方向及び高さ方向における長さ寸法の設定は第2実施例と同様に行えばよいが、幅方向においては第2実施例とは異なり、図13で示す如く両端が放熱器32により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz11は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0076】
つづいて、前記バスダクト22と放熱器32との間に形成される空気空間S16は、長手方向及び高さ方向においては図12,13で示す如く両端が開口した両端開空間、幅方向においては図12,13で示す如く両端がバスダクト22と放熱器32とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx16,Ly16,Lz16は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0077】
このように、第4実施例の電力用変圧器41においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材12と横補強部材13とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間だけでなく、バスダクト22と放熱器32との間で形成される空気空間S16における3辺の長さ寸法ついても、前記空気空間S16において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記バスダクト22及び放熱器32を設けた電力用変圧器41においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0078】
なお、強度設計等の都合上、前記第1〜第4実施例で設定した各空気空間S1〜S16の長手方向,高さ方向,幅方向における長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、やむを得ず前記空気空間S1〜S16において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数とが一致する長さ寸法となってしまうことが考えられるが、このような場合には、空気空間S1〜S16に図示しない鋼板等の板材を設置する等して前記空気空間S1〜S16を分割し、幅方向,長手方向,高さ方向における長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16を、前記空気空間S1〜S16において共鳴が発生する周波数と電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法とすればよい。また、前記鋼板等の板材は、溶接、ボルト等による締結、接着剤による接着等の手段によって空気空間S1〜S16に設置するようにすればよい。更に、前記板材としては、鋼板以外の高質ゴム、プラスチック板等を使用するようにしてもよい。
【0079】
また、前記各空気空間S1〜S16における開口部を、鋼板等の板材によって閉鎖するようにしてもよい。この場合、前記各空気空間S1〜S16における3辺の長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、前記空気空間S1〜S16が電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法となっていれば、より一層の騒音低減効果が得られるとともに、仮に前記各空気空間S1〜S16における3辺の長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、前記空気空間S1〜S16が電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する長さ寸法となっている場合でも、前記空気空間S1〜S16の開口部を閉鎖することで良好な騒音低減効果を得ることができる。
【0080】
更に、本発明の実施例においては、電力用変圧器1,21,31,41の運転中に発生する通電騒音を低減する場合について説明したが、励磁騒音に関しても本発明を適用することにより低減することが可能である。
【0081】
また、本発明の実施例においては、タンク5の底板5aに取付けたベース6を介して電力用変圧器1,21,31,41を設置面9に設置するようにした場合について説明したが、前記ベース6を介すことなく電力用変圧器1,21,31,41を直接設置面9に設置するようにした場合においても本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【0082】
更に、本発明の第3,第4実施例においては、タンク5の幅方向における両側面に複数の放熱器32を設けるようにした場合について説明したが、タンク5の幅方向における一方の側面にのみ設けるようにしてもよい。また、前記放熱器32は、幅方向に複数並列状に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図3】(a)〜(c)はタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間と、その長さ寸法を設定する動作を説明するための説明図である。
【図4】(a)〜(c)はタンク側壁と縦補強部材と横補強部材とによって形成される空気空間と、その長さ寸法を設定する動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図7】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【図8】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【図9】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図10】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図11】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図12】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図13】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,21,31,41 電力用変圧器
5 タンク
5a 底板
6 ベース
7 縦補強部材
8 横補強部材
9 設置面
22 バスダクト
23 ブッシングポケット
32 放熱器
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受配電用設備に使用する電力用変圧器に係り、その目的は、電力用変圧器の運転中に発生する騒音を良好に軽減することにある。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器において発生する騒音の主体は、鉄心を構成するけい素鋼板の磁歪に起因する無負荷時の励磁騒音であり、前記励磁騒音の周波数は、電源の周波数が50Hzの場合100Hzの整数倍(100Hz、200Hz、300Hz、…)、電源の周波数が60Hzの場合120Hzの整数倍(120Hz、240Hz、360Hz、…)であることはよく知られている。
【0003】
一方、励磁騒音の他に、変圧器に負荷を接続することにより発生する騒音がある。この騒音は通電騒音と呼ばれ、従来はほとんど問題にならなかったが、励磁騒音の低減にともなって前記通電騒音を無視できない場合もでてきた。変圧器に負荷を接続することにより巻線に電流が流れると漏れ磁束が生じ、巻線の電流(I)と磁場(B)の相互作用により巻線に電磁力(F=I×B)が発生する。この電磁力は、巻線の半径方向と軸方向に発生し、巻線を半径方向と軸方向に振動させるとともに、漏れ磁束の通路にある変圧器タンクや磁気シールド等にも、この電磁力に起因する振動が発生する。前記通電騒音は、前述のように巻線や変圧器タンク等の振動により発生するものである。そして、通電騒音の周波数は、電源の周波数が50Hzの場合は100Hz、電源の周波数が60Hzの場合では120Hzが主となる。
【0004】
従来、変圧器の騒音を低減する場合は、変圧器タンクの側板に吸音材を組み合せた溶接構造用合金型制振鋼板を使用することによって、変圧器中身より発生する騒音・振動を低減するようにしたり(例えば、特許文献1参照)、変圧器タンクの側壁に複数個の補強ステーを設け、この補強ステーに所定のバネ定数を有する薄板を介して防音用の遮音板を取付け、補強ステーから遮音板に伝播する振動を薄板によって低減することにより、タンク側壁から外部に伝播する騒音を抑制したり(例えば、特許文献2参照)、変圧器から放射される騒音(音響)を能動囲壁及び能動パネルを使用して低減するようにしていた(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実願平5−23704号(実開平6−79120号)のCD−ROM
【特許文献2】特開平11−40441号公報
【特許文献3】特表平8−511634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記吸音材や制振鋼板を変圧器タンクの側板の内側や外側に設置して騒音の吸音や遮音を行うようにした場合、運転中の変圧器から発生する励磁騒音はある程度低減することができる反面、通電騒音については低減することが困難であった。前記通電騒音は、例えば、特許文献3に開示されている能動囲壁及び能動パネルを用いることによってある程度低減することができるものの、変圧器の周囲に能動囲壁等を設置しなければならないので、この種変圧器の製造コストが増大するとともに、変圧器だけでなく前記騒音低減用の能動囲壁等を設置するスペースが必要となり、変圧器の設置費用も嵩むという問題があった。
【0007】
本発明は、前記種々の問題点に鑑み、通電騒音を良好に低減するとともに、製造コストや設置費用の増大を良好に防ぐことが可能な電力用変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、送受配電設備に使用される電力用変圧器において、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間、並びに、電力用変圧器のタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2または3記載の電力用変圧器において、前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6記載の電力用変圧器において、前記空気空間における3辺の長さ寸法は、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項2ないし6記載の電力用変圧器において、前記空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記電力用変圧器において発生する騒音を、能動囲壁等を設置することなく良好に低減することが可能となり、この結果、前記能動囲壁等を設置することによってこの種変圧器の製造コストや設置費用が増大するのを確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と、前記タンク側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側壁に変形防止用の縦補強部材及び横補強部材を取付けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク底板と、前記タンク底板に取付けられるベースと、前記ベースを介して電力用変圧器が設置される設置面とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のようにベースを介して電力用変圧器を設置面に設置する場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンクの一側面に設けたバスダクトとの間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンクの一側面にバスダクトを設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンク側面に設けた放熱器との間で形成される空気空間、前記放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、前記放熱器相互間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記各空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記各空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側面に放熱器を設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、電力用変圧器のタンク側壁と該タンクの一側面に設けたバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と該タンク側面に設けた放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法についても、前記各空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたので、電力用変圧器において発生する騒音が前記各空気空間において共鳴し、騒音が増大するのを良好に防ぐことが可能となり、この結果、前記のように電力用変圧器のタンク側面にバスダクト及び放熱器を設けた場合でも、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、空気空間における3辺の長さ寸法を、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、前記数値と一致しない長さ寸法に設定して、電力用変圧器の設計を行うことにより、前記電力用変圧器において発生する騒音を良好に低減することができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたので、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、該空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたこととも相まって、電力用変圧器において発生する騒音をより一層低減することができるとともに、前記電力用変圧器を建屋等によって囲んで騒音を低減させる必要もないため、この種変圧器の設置スペースや設置費用の増大を良好に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。一般に、電力用変圧器において発生する振動(通電騒音)の周波数と、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数とが一致する場合に騒音が増大することがよく知られている。従って、前記騒音を低減するためには、変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺(幅方向、長手方向、高さ方向)の長さ寸法を、共鳴を避けることが可能な長さ寸法に設定すればよい。
【0025】
前記空気空間が両側開空間または両側閉空間の場合、電力用変圧器の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する前記空気空間の長さ寸法dは、次の(1)式によって求められる。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、d:空気空間の長さ寸法
m:1以上の整数
v0:音速
f:通電騒音の周波数
をそれぞれ示す。
【0028】
一方、前記空気空間が一端開空間の場合、電力用変圧器の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する前記空気空間の長さ寸法dは、次の(2)式によって求められる。
【0029】
【数2】
【0030】
ここで、d:空気空間の長さ寸法
m:1以上の整数
v0:音速
f:通電騒音の周波数
をそれぞれ示す。
【0031】
また、空気中における音速v0は、次の(3)式によって求められる。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、t:気温
を示す。
【0034】
そして、前記(1)式及び(2)式に(3)式を代入すると、次の(4)式及び(5)式となる。
【数4】
【0035】
つづいて、前記(4)式,(5)式により、通電騒音の周波数が100Hz、変圧器の使用時における気温が、例えば−20℃〜40℃の場合において、前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求めると、
【0036】
【数5】
【0037】
となる。即ち、両側開空間または両側閉空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が1.59m〜1.78m(以下、1.6m〜1.8mとする)の整数倍の長さ寸法のとき、一端開空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が0.79m〜0.89m(以下、0.7m〜0.9mとする)の奇数倍の長さ寸法のときに、それぞれ共鳴が発生することがわかる。
【0038】
また、前記(4)式,(5)式により、通電騒音の周波数が120Hz、変圧器の使用時における気温が、例えば−20℃〜40℃の場合において、前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求めると、
【0039】
【数6】
【0040】
となる。即ち、両側開空間または両側閉空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が1.33m〜1.48m(以下、1.3m〜1.5mとする)の整数倍の長さ寸法のとき、一端開空間の場合においては、空気空間の長さ寸法が0.665m〜0.74m(以下、0.6m〜0.8mとする)の奇数倍の長さ寸法のときに、それぞれ共鳴が発生することがわかる。
【0041】
前記のように、電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間において共鳴が発生するのを避け、騒音を低減するためには、前記空気空間における3辺の長さ寸法を、前記[数5],[数6]における計算結果より求められる長さ寸法と一致しないように設定して、電力用変圧器を設計すればよい。
【0042】
なお、本発明において前記通電騒音の周波数で共鳴を発生する空気空間の長さ寸法を求める際に使用する気温の数値範囲は、JEC−2200(1995)第I編3章3.1節(2)項に「常規使用状態での変圧器の周囲冷却媒体の温度は、冷却媒体が空気の場合、最高で40℃を超えないものとし、最低気温は−20℃(屋外の場合)を下回らないものとする」との記載があることから、これに基いて−20〜40℃の範囲に設定した。
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例について、図1ないし図13を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図2は同じく第1実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図である。
【0044】
図1,2で示すように、電力用変圧器1は、鉄心2及び巻線3からなる変圧器中身4を絶縁油とともにタンク5内へ収容することにより構成されている。前記タンク5の底板5aには、図3で示すように、形鋼等を用いて井桁状に形成した前記底板5aの補強を兼ねるベース6が溶接等により取付けられている。また、前記タンク5の側壁には、高さ方向(図1,2の上下方向)に沿って形鋼等からなる縦補強部材7が、長手方向及び幅方向(図1,2の左右方向)に沿って鋼板等からなる横補強部材8が、それぞれ溶接等により取付けられている。そして、前記ベース6を設置面9に埋設した図示しない埋込ベースにボルト等を用いて固定することにより、前記電力用変圧器1は設置面9上に揺動不能に設置される。なお、図1,2において、10,11はタンク5の上面に所定数設けた1次及び2次ブッシングである。
【0045】
つづいて、前記電力用変圧器1の運転中、即ち、電力用変圧器1に負荷を接続することにより巻線3に電流が流れると、前記巻線3の電流と磁場との相互作用により電磁力が発生し、前記巻線3を半径方向と軸方向に振動させるとともに、タンク5等にも前記電磁力に起因する振動が発生し、これらの振動が電力用変圧器1において発生する通電騒音の要因となる。
【0046】
このとき、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間S1〜S4(図3参照)、並びに、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間S5〜S10(図4参照)において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音が発生することとなる。従って、前記空気空間S1〜S10において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記空気空間S1〜S10における3辺の長さ寸法を設定すればよい。なお、本実施例においては、図3(b),(c)及び図4(b),(c)における上下方向を高さ方向、図3(a)及び図4(a),(b)における左右方向を長手方向、図3(a),図4(a)における上下方向及び図4(c)における左右方向を幅方向と称して説明する。
【0047】
以下、前記空気空間S1〜S10における3辺の長さ寸法を設定する場合について説明する。
(1)空気空間S1の場合
空気空間S1は、図3(a)で示すように、ベース6の幅方向及び長手方向における隅角部の4ヶ所に形成される。前記空気空間S1は、長手方向及び幅方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx1,Lz1は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端がタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly1は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0048】
(2)空気空間S2の場合
空気空間S2は、図3(a)で示すように、ベース6の長手方向における空気空間S1,S1間の4ヶ所に形成される。前記空気空間S2は、長手方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx2,Ly2は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz2は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0049】
(3)空気空間S3の場合
空気空間S3は、図3(a)で示すように、ベース6の幅方向における空気空間S1,S1間の2ヶ所に形成される。前記空気空間S3は、長手方向においては図3(a)で示す如く一方端がベース6により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx3は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間、幅方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly3,Lz3は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0050】
(4)空気空間S4の場合
空気空間S4は、図3(a)で示すように、ベース6のほぼ中央部の2ヶ所に形成される。前記空気空間S4は、長手方向及び幅方向においては図3(a)で示す如く両端をベース6により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図3(b),(c)で示す如く両端をタンク5の底板5aと設置面9とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx4,Lz4,Ly4は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0051】
(5)空気空間S5の場合
空気空間S5は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の長手方向及び高さ方向における隅角部の4ヶ所(両側面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S5は、長手方向においては図4(b)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、高さ方向においては図4(b)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁に閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx5,Ly5,Lz5は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0052】
(6)空気空間S6の場合
空気空間S6は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の長手方向における空気空間S5,S5間の8ヶ所(両側面で16ヶ所)に形成される。前記空気空間S6は、長手方向においては図4(b)で示す如く両端を縦補強部材7により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx6は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(b)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly6,Lz6は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0053】
(7)空気空間S7の場合
空気空間S7は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁の高さ方向における空気空間S5,S5間の4ヶ所(両側面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S7は、長手方向においては図4(b)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx7,Lz7は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(b)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly7は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0054】
(8)空気空間S8の場合
空気空間S8は、図4(b)で示すように、タンク5の側面側に位置する側壁において周囲を空気空間S5〜S7に囲まれた8ヶ所(両側面で16ヶ所)に形成される。前記空気空間S8は、長手方向においては図4(b)で示す如く両端を縦補強部材7により閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図4(b)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx8,Ly8は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz8は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0055】
(9)空気空間S9の場合
空気空間S9は、図4(c)で示すように、タンク5の正面及び背面側に位置する側壁の幅方向における隅角部の4ヶ所(正面及び背面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S9は、長手方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁に閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、高さ方向においては図4(c)で示す如く一方端が横補強部材8により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(c)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx9,Ly9,Lz9は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0056】
(10)空気空間S10の場合
空気空間S10は、図4(c)で示すように、タンク5の正面及び背面側に位置する側壁における空気空間S9,S9間の4ヶ所(正面及び背面で8ヶ所)に形成される。前記空気空間S10は、長手方向においては図4(a)で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間、幅方向においては図4(c)で示す如く一方端が縦補強部材7により閉鎖され、他方端が開口した一端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx10,Lz10は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、高さ方向においては図4(c)で示す如く両端を横補強部材8により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記高さ方向における長さ寸法Ly10は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器1の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0057】
以上のように、本発明の第1実施例の電力用変圧器1においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間S1〜S4、並びに、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間S5〜S10のそれぞれの長手方向,高さ方向,幅方向における長さ寸法Lx1〜Lx10,Ly1〜Ly10,Lz1〜Lz10を、前記空気空間S1〜S10において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法となるように設定したので、タンク5の側壁に変形防止用の縦補強部材7及び横補強部材8を設けたり、タンク5の底板5aに取付けたベースを介して電力用変圧器1を設置面9に設置するようにしても、前記電力用変圧器1の運転中に発生する通電騒音を良好に低減することができる。
【0058】
次に、図5ないし図7を参照しながら、本発明の第2実施例について説明する。図5は本発明の第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図6は同じく第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図7は第2実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図5ないし図7において、第1実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。また、本実施例においては、図5,6における上下方向を高さ方向、図5,7における左右方向を長手方向、図6における左右方向及び図7における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0059】
第2実施例の電力用変圧器21と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の長手方向における一方端側(図5の左側)にバスダクト22を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0060】
第2実施例の電力用変圧器21においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音が発生することとなる。従って、前記各空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記各空気空間における3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0061】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を設定する場合、バスダクト22と対向しないタンク5の側壁(図5の右側及び図6の左右方向)に形成される空気空間については第1実施例と同様に行えばよい。更に、バスダクト22と対向するタンク5の側壁(図5の左側)に形成される空気空間については、高さ方向及び幅方向における長さ寸法の設定は第1実施例と同様に行えばよいが、長手方向においては第1実施例とは異なり、両端がタンク5の側壁とバスダクト22とによって閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0062】
つづいて、タンク5の側壁とバスダクト22の間で形成される空気空間S11は、長手方向においては図5,7で示す如く両端がタンク5の側壁とバスダクト22とにより閉鎖された両端閉空間、高さ方向においては図5,6で示す如く両端がブッシングポケット23と設置面9とにより閉鎖された両端閉空間、幅方向においては図6,7で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx11,Ly11,Lz11は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器21の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0063】
このように、第2実施例の電力用変圧器21においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成されるだけでなく、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間S11における3辺の長さ寸法についても、前記空気空間S11において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器21における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記バスダクト22を設けた電力用変圧器21においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0064】
次に、図8ないし図10を参照しながら、本発明の第3実施例について説明する。図8は本発明の第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図9は同じく第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図10は第3実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図8ないし図10において、第1実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。また、本実施例においては、図8,9における上下方向を高さ方向、図8,10における左右方向を長手方向、図9における左右方向及び図10における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0065】
第3実施例の電力用変圧器31と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の幅方向における両側面(図10の左右方向)に複数の放熱器32を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0066】
第3実施例の電力用変圧器31においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器31の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音を発生することとなる。従って、前記各空気空間における共鳴の発生する周波数が、電力用変圧器31における通電騒音の周波数と一致しないように、前記各空気空間における3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0067】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間における3辺の長さ寸法を設定する場合、放熱器32と対向しないタンク5の側壁(図10の左右方向)に形成される空気空間については第1実施例と同様に行えばよい。更に、放熱器32と対向するタンク5の側壁(図9の左右方向)に形成される空気空間については、長手方向及び高さ方向における長さ寸法の設定は第1実施例と同様に行えばよいが、幅方向においては第1実施例とは異なり、両端がタンク5の側壁と放熱器32とによって閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0068】
つづいて、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間S12は、長手方向及び高さ方向においては図9,10で示す如く両端が開口した両端開空間、幅方向においては図9で示す如く両端がタンク5の側壁と放熱器32とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx12,Ly12.Lz12は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0069】
また、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間S13は、長手方向においては図8で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記長手方向における長さ寸法Lx13は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。更に、高さ方向においては図9で示す如く一方端が設置面9により閉鎖され、他方端が開口した(放熱器32は幅方向に複数枚のフィンを備えて構成されているので、放熱器32側の高さ方向は開口とみなすことができる)一端開空間、幅方向においては、図9で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、他方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Ly13,Lz13は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0070】
更に、放熱器32相互間で形成される空気空間S14,S15は、長手方向においては図10で示す如く両端が開口した(放熱器32,32により挟まれた状態であるが、前記放熱器32は幅方向に複数枚のフィンを具備して構成されているので、長手方向においては開口とみなすことができる)両端開空間、高さ方向においては図8で示す如く両端が開口した両端開空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx14,Lx15,Ly14,Ly15は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。また、幅方向においては図10で示す如く一方端がタンク5の側壁により閉鎖され、一方端が開口した一方開空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz14,Lz15は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が100Hzの場合には0.7m〜0.9mの奇数倍の長さ寸法と、電力用変圧器31の通電騒音の周波数が120Hzの場合には0.6m〜0.8mの奇数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0071】
このように、第3実施例の電力用変圧器31においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材12と横補強部材13とによって形成される空気空間だけでなく、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間S12、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間S13、放熱器32相互間で形成される空気空間S14,S15における3辺の長さ寸法ついても、前記各空気空間S12〜S15において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器31における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記放熱器32を設けた電力用変圧器31においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0072】
次に、図11ないし図13を参照しながら、本発明の第4実施例について説明する。図11は本発明の第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す側面図、図12は同じく第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す正面図、図13は第4実施例の電力用変圧器を概略的に示す平面図である。なお、図11ないし図13において、第1〜第3実施例と同一部材は同一符号を用いて説明する。
【0073】
第4実施例の電力用変圧器41と第1実施例の電力用変圧器1との相違点は、タンク5の長手方向における一方端側(図11,13の左側)にバスダクト22を設けるとともに、タンク5の幅方向における両側面(図12の左右方向)に複数の放熱器32を設けた点にあり、それ以外の構成については第1実施例と同一であるため、その説明を省略する。また、本実施例においては、図11,12における上下方向を高さ方向、図11,13における左右方向を長手方向、図12における左右方向及び図13における上下方向を幅方向と称して説明する。
【0074】
第4実施例の電力用変圧器41においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材8とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間、更に、バスダクト22と放熱器32との間で形成される空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41の運転中に発生する通電騒音の周波数とが一致していると、大きな騒音を発生することとなる。従って、前記各空気空間において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41における通電騒音の周波数とが一致しないように、前記各空気空間の3辺の長さ寸法を設定すればよい。
【0075】
なお、前記タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材7と横補強部材7とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法の設定は、第1〜第3実施例と同様に行えばよいのでその説明は省略する。また、タンク5の側壁とバスダクト22との間に形成される空気空間S11における3辺の長さ寸法を設定する場合、長手方向及び高さ方向における長さ寸法の設定は第2実施例と同様に行えばよいが、幅方向においては第2実施例とは異なり、図13で示す如く両端が放熱器32により閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記幅方向における長さ寸法Lz11は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定する。
【0076】
つづいて、前記バスダクト22と放熱器32との間に形成される空気空間S16は、長手方向及び高さ方向においては図12,13で示す如く両端が開口した両端開空間、幅方向においては図12,13で示す如く両端がバスダクト22と放熱器32とにより閉鎖された両端閉空間と考えることができるので、前記各方向における長さ寸法Lx16,Ly16,Lz16は、[数5],[数6]における計算結果より、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が100Hzの場合には1.6m〜1.8mの整数倍の長さ寸法と、電力用変圧器41の通電騒音の周波数が120Hzの場合には1.3m〜1.5mの整数倍の長さ寸法と、それぞれ一致しない長さ寸法に設定すればよい。
【0077】
このように、第4実施例の電力用変圧器41においては、タンク5の底板5aとベース6と設置面9とによって形成される空気空間、タンク5の側壁と縦補強部材12と横補強部材13とによって形成される空気空間、タンク5の側壁とバスダクト22との間で形成される空気空間、タンク5の側壁と放熱器32との間で形成される空気空間、放熱器32と設置面9との間で形成される空気空間、放熱器32相互間で形成される空気空間だけでなく、バスダクト22と放熱器32との間で形成される空気空間S16における3辺の長さ寸法ついても、前記空気空間S16において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器41における通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法に設定するようにしたので、前記バスダクト22及び放熱器32を設けた電力用変圧器41においても騒音の発生を良好に低減することができる。
【0078】
なお、強度設計等の都合上、前記第1〜第4実施例で設定した各空気空間S1〜S16の長手方向,高さ方向,幅方向における長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、やむを得ず前記空気空間S1〜S16において共鳴が発生する周波数と、電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数とが一致する長さ寸法となってしまうことが考えられるが、このような場合には、空気空間S1〜S16に図示しない鋼板等の板材を設置する等して前記空気空間S1〜S16を分割し、幅方向,長手方向,高さ方向における長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16を、前記空気空間S1〜S16において共鳴が発生する周波数と電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数とが一致しない長さ寸法とすればよい。また、前記鋼板等の板材は、溶接、ボルト等による締結、接着剤による接着等の手段によって空気空間S1〜S16に設置するようにすればよい。更に、前記板材としては、鋼板以外の高質ゴム、プラスチック板等を使用するようにしてもよい。
【0079】
また、前記各空気空間S1〜S16における開口部を、鋼板等の板材によって閉鎖するようにしてもよい。この場合、前記各空気空間S1〜S16における3辺の長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、前記空気空間S1〜S16が電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法となっていれば、より一層の騒音低減効果が得られるとともに、仮に前記各空気空間S1〜S16における3辺の長さ寸法Lx1〜Lx16,Ly1〜Ly16,Lz1〜Lz16が、前記空気空間S1〜S16が電力用変圧器1,21,31,41の通電騒音の周波数に対して共鳴を発生する長さ寸法となっている場合でも、前記空気空間S1〜S16の開口部を閉鎖することで良好な騒音低減効果を得ることができる。
【0080】
更に、本発明の実施例においては、電力用変圧器1,21,31,41の運転中に発生する通電騒音を低減する場合について説明したが、励磁騒音に関しても本発明を適用することにより低減することが可能である。
【0081】
また、本発明の実施例においては、タンク5の底板5aに取付けたベース6を介して電力用変圧器1,21,31,41を設置面9に設置するようにした場合について説明したが、前記ベース6を介すことなく電力用変圧器1,21,31,41を直接設置面9に設置するようにした場合においても本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【0082】
更に、本発明の第3,第4実施例においては、タンク5の幅方向における両側面に複数の放熱器32を設けるようにした場合について説明したが、タンク5の幅方向における一方の側面にのみ設けるようにしてもよい。また、前記放熱器32は、幅方向に複数並列状に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図3】(a)〜(c)はタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間と、その長さ寸法を設定する動作を説明するための説明図である。
【図4】(a)〜(c)はタンク側壁と縦補強部材と横補強部材とによって形成される空気空間と、その長さ寸法を設定する動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図7】本発明の第2実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【図8】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【図9】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図10】本発明の第3実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図11】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す側面図である。
【図12】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す正面図である。
【図13】本発明の第4実施例の電力用変圧器を示す平面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,21,31,41 電力用変圧器
5 タンク
5a 底板
6 ベース
7 縦補強部材
8 横補強部材
9 設置面
22 バスダクト
23 ブッシングポケット
32 放熱器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受配電設備に使用される電力用変圧器において、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする電力用変圧器。
【請求項2】
前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間であることを特徴とする請求項1記載の電力用変圧器。
【請求項3】
前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間、並びに、電力用変圧器のタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間であることを特徴とする請求項1記載の電力用変圧器。
【請求項4】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項5】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項6】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項7】
前記空気空間における3辺の長さ寸法は、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする請求項1ないし6記載の電力用変圧器。
【請求項8】
前記空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたことを特徴とする請求項1ないし6記載の電力用変圧器。
【請求項1】
送受配電設備に使用される電力用変圧器において、前記電力用変圧器の外装構成部材間及び/または前記外装構成部材と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間における3辺の長さ寸法を、前記空気空間が電力用変圧器の電源周波数の2倍の周波数に対して共鳴を発生しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする電力用変圧器。
【請求項2】
前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間であることを特徴とする請求項1記載の電力用変圧器。
【請求項3】
前記空気空間が、電力用変圧器のタンク側壁と該側壁に設けた縦補強部材及び横補強部材とによって形成される空気空間、並びに、電力用変圧器のタンク底板とベースと設置面とによって形成される空気空間であることを特徴とする請求項1記載の電力用変圧器。
【請求項4】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項5】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項6】
前記空気空間が、更に、電力用変圧器のタンク側壁とバスダクトとの間で形成される空気空間、電力用変圧器のタンク側壁と放熱器との間で形成される空気空間、放熱器と電力用変圧器の設置面との間で形成される空気空間、放熱器相互間で形成される空気空間、バスダクトと放熱器との間で形成される空気空間を含むことを特徴とする請求項2または3記載の電力用変圧器。
【請求項7】
前記空気空間における3辺の長さ寸法は、電力用変圧器の電源周波数が50Hzの場合は0.7mないし0.9mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定し、電源周波数が60Hzの場合は0.6mないし0.8mの整数倍と一致しない長さ寸法に設定するようにしたことを特徴とする請求項1ないし6記載の電力用変圧器。
【請求項8】
前記空気空間の開口部を板材等により閉鎖するようにしたことを特徴とする請求項1ないし6記載の電力用変圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−203088(P2006−203088A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14944(P2005−14944)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000116666)愛知電機株式会社 (93)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000116666)愛知電機株式会社 (93)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】
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