説明

電力用鞘管内充填工法

【課題】 中詰材として中詰用砂を使用し、この中詰用砂を水流によって充填させることにより、施工手間の軽減や施工時間の短縮といった施工性を向上できると共に、十分な充填可能距離及び充填量を得ることができる電力用鞘管内充填工法の提供。
【解決手段】 地中に埋設した鞘管1内に電力管2を配管させると共に、この鞘管内の空隙12に中詰材として中詰用砂Sを充填させるようにした電力用鞘管内充填工法であって、鞘管に勾配を持たせ、その鞘管の上端から水流に乗せて中詰用砂を鞘管内に流入させ、一方、鞘管の下端で水Wを排水させることにより鞘管内の空隙に中詰用砂を充填させていくようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設した鞘管内に電力管を配管させると共に、この鞘管内の空隙に中詰材として中詰用砂を充填させるようにした電力用鞘管内充填工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内部に電力線(送電線や通信ケーブルを含む)を挿入配線させるようにした電力管の布設施工には、推進工法により地中に埋設させたヒューム管を鞘管として使用する電力用鞘管内充填工法が多く採用されている。
この電力用鞘管内充填工法は、鞘管内に電力管を配管させると共に、この鞘管内の空隙に中詰材を充填させ、この中詰材によって電力管を鞘管内で安定よく固定支持させるようにしたもので、その中詰材として砂、セメント、フライアッシュ等を使用することが従来から知られている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−107352号公報
【特許文献2】特開2002−155527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、中詰材として砂(主に圭砂や海砂)を用いた場合、充填距離が短く、密実に充填することが困難なばかりか、狭隘な空間に人が入っていく必要があるため、苦渋作業が強いられるという問題があった。
【0004】
なお、上記特許文献には、中詰材として石粉体を使用し、この石粉体を空気圧送管によって充填させる技術が記載されているが、中詰材として砂を使用し、この砂を水流によって充填させる構成の記載は全くなく、その構成において本発明とは全く異なる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、中詰材として中詰用砂を使用し、この中詰用砂を水流によって充填させることにより、施工手間の軽減や施工時間の短縮といった施工性を向上できると共に、十分な充填可能距離及び充填量を得ることができる電力用鞘管内充填工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)の電力用鞘管内充填工法は、
地中に埋設した鞘管(1)内に電力管(2)を配管させると共に、この鞘管(1)内の空隙(12)に中詰材として中詰用砂(S)を充填させるようにした電力用鞘管内充填工法であって、
鞘管(1)に勾配を持たせ、その鞘管(1)の上端から水流に乗せて中詰用砂(S)を鞘管(10)内に流入させ、一方、鞘管(1)の下端で水(W)を排水させることにより鞘管(1)内の空隙(12)に中詰用砂(S)を充填させていく構成とした。
【0007】
なお、本発明で、「充填」とは、鞘管内の空隙を隙なく密実状態に充填することを含むだけでなく、電力管を覆う状態まで充填していれば、鞘管内の上部に空隙が残っていたとしても、電力管を安定よく固定支持できるもので、このような空隙が残っている場合も本発明で言う「充填」に含むものである。
【0008】
次に、本発明(請求項2)の電力用鞘管内充填工法は、
請求項1記載の電力用鞘管内充填工法において、鞘管(1)内に上端から下端部まで延長して樋状シュート(4)を配設させ、この樋状シュート(4)内に上端から水(W)と中詰用砂(S)を供給させることにより水流に乗せて中詰用砂(S)を鞘管(1)内に流入させる構成とした。
【0009】
また、本発明(請求項3)の電力用鞘管内充填工法は、
請求項1又は2記載の電力用鞘管内充填工法において、鞘管(1)の下端にエジェクター(6)を配設させ、このエジェクター(6)により鞘管(1)の下端で水(W)を排水させる構成とした。
【0010】
また、本発明(請求項4)の電力用鞘管内充填工法は、
既設鞘管(1)に充填された既設中詰用砂(S)を既設鞘管(1)の下端から排出させ、その後、既設鞘管(1)内に新たな電力管(2)を施工配管させ、その後再び既設鞘管(1)の上端から水流に乗せて新たな中詰用砂(S)を既設鞘管(10)内に流入させ、一方、既設鞘管(1)の下端で水(W)を排水させることにより既設鞘管(1)内の空隙(12)に中詰用砂(S)を充填させていく構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明(請求項1)は、中詰材として中詰用砂を用い、この中詰用砂を鞘管の上端から水流に乗せて鞘管内に流入させると共に、鞘管の下端で水を排水させる構成に特徴がある。
このように中詰用砂を水流により鞘管内の空隙に流入させるため、施工手間の軽減や施工時間の短縮といった施工性を向上できると共に、十分な充填可能距離及び充填量を得ることができる。
また、鞘管の下端で水を排水させるため、鞘管内に水が充満することは無く、中詰用砂のみを鞘管内に残して鞘管内の空隙に充填することができる。
なお、中詰用砂は水に濡れた湿潤状態で充填されるため、電力線の発熱を放散させる効果も生じる。
【0012】
なお、中詰材として中詰用砂を用いた場合、砂は熱伝導性が高いため、電力管内に挿入配管した電力線の発熱を放散させることができ、熱がこもるのを防止できる。
また、従来から中詰材として使用されているセメント系中詰材(発泡モルタル、フライアッシュセメント、モルタル、普通コクンクリート等)とは異なり、固化時に発熱を伴わない。
このように中詰材として中詰用砂を用いると、熱の発生に対処できるので、電力管の変形といったトラブルがないし、また、セメント系中詰材では鞘管の内周面や電力管の外周面を傷付けることがあるが、このような傷付けがない。
【0013】
水流に乗せて中詰用砂を鞘管内に流入させるための具体的方法として、鞘管内に上端から下端部まで延長して樋状シュートを配設させ、この樋状シュート内に上端から水と中詰用砂を供給させることにより水流に乗せて中詰用砂を鞘管内に流入させる工法がある(請求項2)。
鞘管の下端から水を排水させるための具体的方法として、鞘管の下端にエジェクターを配設させ、このエジェクターにより鞘管の下端から水を排水させる工法がある(請求項3)。
【0014】
このように樋状シュートを用いることで、中詰用砂を水流に乗せて鞘管内に上端から下端まで流入させることができるし、エジェクターを用いることで鞘管の下端から水だけを確実に排水をさせることができる。
【0015】
この場合、樋状シュート内を流れる水と中詰用砂は、樋状シュートの先端側から溢れ出して鞘管の下端部から中詰用砂が充填していき(一部、水と中詰用砂が樋状シュートの途中で溢れ出すことがある)、以後は鞘管の上端側に向けて次第に中詰用砂が充填していくため、途中でブリージングが発生することがなく、鞘管内に上端から下端までの全長に亘ってスムーズに充填させていくことができる。
【0016】
また、電力線の数や線種を変更する必要が生じたような場合、電力管の入れ替え作業を行う必要があり、このとき、上記したように中詰材として中詰用砂を用いていると、既設鞘管内の電力線数の変更や電力線種の交換に際しての作業が容易になる。
即ち、中詰材が砂であるため、その流動性によって中詰材砂を既設鞘管の下端から容易に排出させることができる。
そして、中詰材砂を排出させた後、既設鞘管内に新たな電力管を施工配管させ、その後は上記した電力用鞘管内充填工法により再び既設鞘管の上端から水流に乗せて新たな中詰用砂を鞘管内に流入させ、一方、既設鞘管の下端で水を排水させることにより既設鞘管内の空隙に中詰用砂を充填させていくことにより、電力管の入れ替え作業を容易に行うことができる(請求項4)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の電力用鞘管内充填工法の施工例を示す全体図、図2は鞘管の内部を示すもので、管路と直交する方向の断面図、図3は鞘管の内部を示すもので、管路と平行方向の断面図、図4は鞘管の下端部を示すもので、管路と平行方向の断面図である。
【0018】
本実施例の電力用鞘管内充填工法は、地上に開口した発進立坑90から到達立坑91までの間に上り勾配(実施例では1/10勾配)でヒューム管を推進工法で埋設させ、このヒューム管を鞘管1として用いている。
【0019】
図2及び図3で示すように、前記鞘管1の内部には、図示省略した電力線(送電線)を内部に挿通配線させる電力管2,2が鞘管1の延長方向に懸架状態で配管されている。
この場合、電力管2,2はその外周の上面及び下面が鞘管1の内部に挿入した支持フレーム3の下腕30及び上腕31により支持される状態で所定の間隔毎に懸架支持されている。
実施例では、2本の電力管2,2を配管しているが、1本の電力管でもよいし、3本以上の電力管でもよく、重量バランスが安定するように支持フレームに懸架支持する。
【0020】
前記鞘管1の内部において、前記電力管2,2の上方で、鞘管1の中心よりも上方に位置して樋状シュート4が前記支持フレーム3によって懸架支持されている。
この樋状シュート4は、金属や合成樹脂を用いて断面略U字状の樋状に形成されたもので、前記鞘管1の内部に上端から下端部まで延長して配設されている。
この場合、樋状シュート4は、その上端部が鞘管1の上端口10から到達立坑91の内部に延出し、その下端が鞘管1の下端口11よりも若干手前になるように配設されている。
【0021】
図4に示すように、前記鞘管1の下端部は、その下端口11がモルタル壁50によって閉鎖されると共に、このモルタル壁50を鞘管1の外部から支持するための鉄蓋51が鞘管1の外周に固定した管口リング52に固定されている。
前記モルタル壁50及び鉄蓋51は、取り外し可能に形成され、電力管2の入れ替え作業を行う際に、このモルタル壁50及び鉄蓋51を取り外して中詰材砂Sを既設鞘管1の下端から排出させることができるようになっている。
なお、図4において、符号92で示すものは発進立坑90の土留矢板であり、図示省略したが到達立坑91にも同様に土留矢板が建て込まれている。
【0022】
前記電力管2,2の下端は前記モルタル壁50及び鉄蓋51を貫通して発進立坑90の内部に延長している。
また、前記鞘管1の下端部には、モルタル壁50及び鉄蓋51を貫通してエジェクター6が配設されている。
このエジェクター6は、ストレーナ60を取り付けた吸水口61を鞘管1内の底部に配置させ、排水口62を発進立坑90の内部に配設させ、図示省略したエアコンプレッサからの高圧空気を管内で噴射させて、この噴射に伴う負圧を利用して吸水口61から水を吸い込み、排水口62から排水させるように形成されている。
なお、前記排水口62には排水を発進立坑90内に導水するための排水ホース63が接続されている。
また、実施例では、吸水口61からの中詰用砂の吸い込みを防止するため、吸水口61を覆うように鞘管1の下端底部にバラス64(粒径40mm程度)を盛り入れている。
【0023】
本実施例の電力用鞘管内充填工法では、中詰用砂Sとして主に上下水道用ろ過砂(その他、鋳物用砂、ゴルフ場用砂、サッカー場や野球場等のフィールド砂等)として使用されている特殊砂を用いている。
この特殊砂の製品規格(商標「キュウケンサンドS・110」西戸崎興産株式会社製)を以下に示す。
有効径・・・・ 1.10mm±0.05
均等係数・・・ 1.4以下
最大径・・・・ 2.40mm以上2.0%以内
1.05mm以下10.0%以内
最小径・・・・ 0.90mm以下2.0%以内
密度(真比重) 2.57〜2.67
洗浄濁度・・・ 20度以下
強熱原料・・・ 0.5%以下
塩酸可溶率・・ 1.0%以下
摩減率・・・・ 1.0%以下
【0024】
この特殊砂は、主に、河砂、丘砂、吹き上げ砂を使用し、これをホッパーに投入して粗ゴミ、木くず、石、粘度等の異物を選別除去したのち、第1トロンメル(回転式篩い機)等を用いて粗目砂をカットし、次に、エーキンス(回転式もみ洗い搬送機)により第2トロンメル(回転式篩い機)に搬送して細目砂をカットする。この粗目砂カットと細目砂カットを1回又は複数回繰り返して所定規格の特殊砂に製造させるようにしている。
このような特殊砂は、異物が除去され、かつ粗目砂及び細目砂がカットされたもので、水流に乗った流動性が非常に優れており、本発明工法に好適に使用することができる。
【0025】
ただ、本発明では、中詰用砂Sとしては前記特殊砂に限らず、通常砂(河砂、海砂、砕石砂等)を使用することも可能であり、これは、中詰用砂を鞘管内に流入させる手段として水流を利用したからこそ可能になるものである。
【0026】
次に、中詰用砂Sの充填方法は、図1に示すように、樋状シュート4の上端部に、供給ホッパー70を介して給水車71から水Wを供給させると共にダンプトラック72から中詰用砂Sを供給させることで、鞘管1の上端から水流に乗せて中詰用砂Sを鞘管1内に流入させ、一方、鞘管1の下端でエジェクター6により水Wを排水させることにより鞘管1内の空隙12に中詰用砂Sを充填させていくものである。
【0027】
この場合、エジェクター6から排水された水Wは、発進立坑90の内部に貯留していくもので、この貯留した水Wを揚水管73を介してポンプアップし、地上の水タンク74内に貯水させる。そして、前記給水により空になった給水車71を水タンク74の位置に移動させ、ここで水タンク74から給水車71に水を補給させて、再び給水場所(到達立坑91)まで移動させる給水車循環方式を採用している。
【0028】
以上のように、実施例の電力用鞘管内充填工法では、中詰材として中詰用砂Sを用い、この中詰用砂Sを水流によって鞘管1の空隙12に充填させる点に特徴がある。
これにより、施工手間の軽減や施工時間の短縮といった施工性を向上できると共に、十分な充填可能距離及び充填量を得ることができる。
【0029】
また、電力線の数や線種を変更する必要が生じたような場合、既設鞘管1の下端部に設けた前記モルタル壁50及び鉄蓋51を取り外して中詰材砂Sを既設鞘管1の下端から排出させる。
このとき、中詰材が砂であるため、その流動性によって中詰材砂Sを既設鞘管1の下端から容易に排出させることができる。
そして、中詰材砂Sを排出させた後は既設鞘管1内に新たな電力管2を施工配管させ、その後、上記した電力用鞘管内充填工法により再び既設鞘管1の上端から水流に乗せて新たな中詰用砂Sを鞘管1内に流入させ、一方、既設鞘管1の下端で水を排水させることにより既設鞘管1内の空隙12に中詰用砂Sを充填させていくことにより、電力管2の入れ替え作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電力用鞘管内充填工法の施工例を示す全体図
【図2】鞘管の内部を示すもので、管路と直交する方向の断面図
【図3】鞘管の内部を示すもので、管路と平行方向の断面図
【図4】鞘管の下端部を示すもので、管路と平行方向の断面図
【符号の説明】
【0031】
1 鞘管
10 上端口
11 下端口
12 空隙
2 電力管
3 支持フレーム
30 下腕
31 上腕
4 樋状シュート
50 モルタル壁
51 鉄蓋
52 管口リング
6 エジェクター
60 ストレーナ
61 吸水口
62 排水口
63 排水ホース
64 バラス
70 供給ホッパー
71 給水車
72 ダンプトラック
73 揚水管
74 水タンク
90 発進立坑
91 到達立坑
92 土留矢板
S 中詰用砂
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設した鞘管(1)内に電力管(2)を配管させると共に、この鞘管(1)内の空隙(12)に中詰材として中詰用砂(S)を充填させるようにした電力用鞘管内充填工法であって、
鞘管(1)に勾配を持たせ、その鞘管(1)の上端から水流に乗せて中詰用砂(S)を鞘管(10)内に流入させ、一方、鞘管(1)の下端で水(W)を排水させることにより鞘管(1)内の空隙(12)に中詰用砂(S)を充填させていくようにした電力用鞘管内充填工法。
【請求項2】
請求項1記載の電力用鞘管内充填工法において、鞘管(1)内に上端から下端部まで延長して樋状シュート(4)を配設させ、この樋状シュート(4)内に上端から水(W)と中詰用砂(S)を供給させることにより水流に乗せて中詰用砂(S)を鞘管(1)内に流入させるようにした電力用鞘管内充填工法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電力用鞘管内充填工法において、鞘管(1)の下端にエジェクター(6)を配設させ、このエジェクター(6)により鞘管(1)の下端で水(W)を排水させるようにした電力用鞘管内充填工法。
【請求項4】
既設鞘管(1)に充填された既設中詰用砂(S)を既設鞘管(1)の下端から排出させ、その後、既設鞘管(1)内に新たな電力管(2)を施工配管させ、その後再び既設鞘管(1)の上端から水流に乗せて新たな中詰用砂(S)を既設鞘管(10)内に流入させ、一方、既設鞘管(1)の下端で水(W)を排水させることにより既設鞘管(1)内の空隙(12)に中詰用砂(S)を充填させていくようにした電力用鞘管内充填工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−124639(P2010−124639A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297683(P2008−297683)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
【Fターム(参考)】