説明

電力配電システム用バッテリおよびこれを用いて直流電圧を供給する方法

【課題】気圧の低い環境においてもアーク放電や短絡を生じないバッテリを提供する。
【解決手段】バッテリ10のエンクロージャ18が、第1のセルアセンブリ20および第2のセルアセンブリ22を収容している。第1のセルアセンブリ20の負極側30は、センタタップ32に電気的に接続されている。第2のセルアセンブリ22の正極側28は、センタタップ32に電気的に接続されている。センタタップ接続点32は、ニュートラル端子12に電気的に接続されている。ニュートラル端子12は接地されており、正端子における正の直流電位は、ニュートラル端子における電位よりも高く、負端子における負の直流電位は、ニュートラル端子における電位よりも低く、バッテリ直流電圧は、ニュートラル端子における電位と正の直流電位との電位差と、ニュートラル端子における電位と負の直流電位との電位差と、のいずれよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを使用するバッテリ・電力配電システムに関し、詳しくは、気圧が変化する環境で用いるバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、広く様々な用途に利用されている。バッテリは、一般に、ハウジング内に配置された複数のセルを備えている。正端子および接地端子が、ハウジングに設けられ、セルに電気的に接続されている。接地端子は、接地電位つまりゼロ電位を提供し、正端子は、接地に対して正の電位を提供する。接地端子と正端子との間の電位差が、所定の用途に用いる所望の電圧を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パッシェンの法則(Paschen’s Law)によると、端子間でアークが生じるのに必要な電圧の大きさは、圧力の低下に伴って低くなる.従って、気圧の低い環境で使用されるバッテリは、アーク放電あるいは短絡を生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電力配電システムに用いるバッテリがセルアセンブリを含み、このセルアセンブリは、バッテリ直流電圧を協働して供給する正端子および負端子を有する。ニュートラルタップが、正端子と負端子との間においてセルアセンブリに電気的に接続され、電圧を正の電位と負の電位とに分けている。正端子における正の直流電位は、ニュートラルタップにおける電位よりも高い。負端子における負の直流電位は、ニュートラルタップにおける電位よりも低い。バッテリ直流電圧は、ニュートラルタップにおける電位と正の直流電位との間の電位差と、ニュートラルタップにおける電位と負の直流電位との間の電位差と、のいずれよりも大きい。
【0005】
開示する電力配電システムは、上記のバッテリを備えている。また、接地されたニュートラルタップを備えている。このバッテリに電気部品が電気的に接続されている。スイッチが、選択的に、正端子および負端子の少なくとも一方をセルアセンブリに電気的に接続するように、開位置と閉位置との間で切換可能となっている。このスイッチにスイッチデバイスが接続されており、コントローラと通信を行う。
【0006】
バッテリを使って直流電圧を供給する方法を開示する。バッテリが、電圧に対応する正端子および負端子を備えている。このバッテリは、接地されたニュートラル端子を提供するように、正端子と負端子との間でセンタタップされる。出力電圧は、正端子と負端子との間の電位差に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】センタタップされたバッテリの概略図。
【図2】図1のセンタタップされたバッテリを用いる電力配電システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、センタタップされたバッテリ10の一例を概略的に示す。バッテリ10は、ニュートラル端子つまり接地端子12と、正端子14と、負端子16と、を備えている。正端子14と負端子16との間の電位差が、所望の直流電圧に対応する。正端子14における電位は、ニュートラル端子つまりニュートラルタップ12における電位よりも高く、負端子16における電位は、ニュートラル端子12における電位よりも低い。
【0009】
一例においては、正端子14および負端子16の各々と、接地との間の電位差は、直接的な正端子と負端子との間の電圧の半分の大きさである。例えば、正端子14と負端子16との間の電圧は、約270V(DC)である。従って、例えば、正端子における電位は135V(DC)であり、負端子における電位は−135V(DC)である。
【0010】
開示するバッテリは、パッシェンの法則によって低い圧力の下で生じ易くなるコロナ放電および/またはアーク放電などを低減させる。バッテリが気圧の低い環境に晒され得る用途としては、例えば、航空機、気球、打上機、宇宙船および類似の地対空乗物の用途がある。
【0011】
図2に、一例としての電力配電システム17におけるバッテリ10を示す。バッテリ10は、符号24で示すように接地されかつ第1および第2のセルアセンブリ20,22を収容しているバッテリエンクロージャ18を備える。この例においては、第1のセルアセンブリ20および第2のセルアセンブリ22の各々は、複数のセル26を含み、これらのセル26の各々は、正極側28および負極側30を有する。第1のセルアセンブリ20の負極側30は、センタタップ接続点32に電気的に接続されている。第2のセルアセンブリ22の正極側28は、センタタップ接続点32に電気的に接続されている。センタタップ接続点32は、ニュートラル端子12に電気的に接続されている。第1のセルアセンブリ20の正極側28は、正端子14の方を向いて、正端子14に電気的に接続されている。第2のセルアセンブリ22の負極側30は、負端子16の方を向いて、負端子16に電気的に接続されている。
【0012】
一例においては、第1のセルアセンブリ20、第2のセルアセンブリ22およびセンタタップ32と、それぞれに対応する正端子14、負端子16およびニュートラル端子12と、の間に、スイッチ38が配置されている。スイッチデバイス40が、スイッチ38と相互接続している。コントローラ42が、スイッチデバイス40と通信する。一例においては、コントローラ42は、スイッチ38を開位置と閉位置との間で切り換えることをスイッチデバイス40に命令するようにプログラムされている。例えば、打上機の用途においては、打上げ過程の初期に、海抜約0mの第1の圧力にある地上において、バッテリ10と接続しているスイッチ38は、閉位置にされる。打上機が大気圏を通過する間に、バッテリ10は、継続的に、負荷に電気的に接続されている。従って、打ち上げ過程において、バッテリが配置された環境44は、打ち上げ前の第1の圧力よりも低い第2の圧力を受ける環境となる。上空の大気圏(例えば、高度80,000〜90,000フィート(約24〜約27km))内の気圧の低い環境においては、海抜0mと比べて気圧が低下するので、バッテリは、一般に、アーク放電を生じ易くなる。
【0013】
一例においては、各スイッチ38と、対応する端子14、16と、の間に、フューズおよび/またはフィルタ46が電気的に接続される。導線48が、バッテリ10と電気部品54とを電気的に相互接続する。一例においては、この導線48は、コネクタ50を含み、このコネクタ50は、端子12,14,16に導線48の端部を固定するための締め具52を有する。
【0014】
電気部品54は、第1の接地56に接地されている。いくつかの用途においては、デジタル信号およびアナログ信号に対して一点接地58を使用することができる。この一点接地58は、第2の接地60に電気的に接続されている。
【0015】
一例においては、電気部品54は、電磁アクチュエータ(EMA)である。他の例においては、電気部品54は、電動ポンプに命令するコントローラを含む電気油圧式アクチュエータ(EHA)である。打上機の用途においては、EMAおよび/またはEHAは、例えば、打上機の飛行経路を制御するために使用される。
【0016】
一実施例を開示したが、当業者であれば、請求項の範囲を逸脱することなく、いくつかの変更がなされ得ることを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0017】
10…バッテリ
12…ニュートラル端子
14…正端子
16…負端子
17…電力配電システム
18…エンクロージャ
20…第1のセルアセンブリ
22…第2のセルアセンブリ
32…センタタップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ直流電圧を協働して供給する正端子および負端子を有するセルアセンブリと、
上記正端子と負端子の間において上記セルアセンブリに電気的に接続されたニュートラルタップと、
を備え、
上記正端子における正の直流電位は、上記ニュートラルタップにおける電位よりも高く、上記負端子における負の直流電位は、上記ニュートラルタップにおける電位よりも低く、上記バッテリ直流電圧は、ニュートラルタップにおける電位と上記正の直流電位との間の電位差と、ニュートラルタップにおける電位と負の直流電位との間の電位差と、のいずれよりも大きいことを特徴とする、電力配電システム用バッテリ。
【請求項2】
上記直流電圧の大きさは、上記正の直流電位と負の直流電位との間の電位差にほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
接地されているように構成されたバッテリエンクロージャを備え、この接地が上記ニュートラルタップに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項4】
上記セルアセンブリは、上記バッテリエンクロージャ内に配置され、上記正端子および負端子は、上記バッテリエンクロージャの外部に配置されることを特徴とする請求項3に記載のバッテリ。
【請求項5】
上記ニュートラル端子は、物理的に上記正端子と負端子との間に配置されることを特徴とする請求項4に記載のバッテリ。
【請求項6】
少なくとも1つのスイッチおよびスイッチデバイスを備え、
上記スイッチは、上記端子のうちの少なくとも1つと、上記セルアセンブリと、の間に電気的に接続され、上記スイッチデバイスは、上記スイッチを開位置と閉位置との間で切り換えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項7】
上記正端子および負端子の少なくとも一方に電気的に接続された少なくとも1つのフューズあるいはフィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項8】
バッテリ直流電圧を協働して供給する正端子および負端子を有するセルアセンブリを含むバッテリと、
上記正端子と負端子との間において上記セルアセンブリに電気的に接続されたニュートラルタップと、
上記バッテリに電気的に接続された電気部品と、
選択的に上記正端子および負端子の少なくとも一方を上記セルアセンブリに電気的に接続するように、開位置と閉位置との間で切換可能なスイッチと、
上記スイッチに接続されたスイッチデバイスであって、上記スイッチを開位置と閉位置との間で切り換えることを該スイッチデバイスに命令するようにプログラムされたコントローラと通信するスイッチデバイスと、
を備え、
上記ニュートラルタップは接地されており、上記正端子における正の直流電位は、上記ニュートラルタップにおける電位よりも高く、上記負端子における負の直流電位は、上記ニュートラルタップにおける電位よりも低く、上記バッテリ直流電圧は、上記ニュートラルタップにおける電位と上記正の直流電位との間の電位差と、上記ニュートラルタップにおける電位と上記負の直流電位との間の電位差と、のいずれよりも大きいことを特徴とする電力配電システム。
【請求項9】
上記バッテリを上記電気部品に電気的に接続する導線を備えていることを特徴とする請求項8に記載のバッテリ。
【請求項10】
上記電気部品は、電気機械アクチュエータおよび電気油圧式アクチュエータの少なくとも一方であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
上記バッテリは、上記ニュートラルタップがない場合に、第2の気圧においてアーク放電を生じ易いことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
上記ニュートラルタップが接地されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
接地されているように構成されたエンクロージャを備え、この接地が上記ニュートラルタップに電気的に接続され、上記エンクロージャおよび上記電気部品が接地されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
バッテリを用いて直流電圧を供給する方法であって、
電圧に対応する正端子および負端子を有するバッテリを提供し、
接地されたニュートラル端子を提供するように、上記正端子と負端子の間において上記バッテリをセンタタップすることを含み、
上記電圧の大きさは、上記正端子と負端子との間の電位差に対応することを特徴とする方法。
【請求項15】
上記バッテリは、第1の圧力と、該第1の圧力よりも低い第2の圧力と、において用いられ、上記バッテリは、センタタップされていない場合に、上記第2の気圧においてアーク放電を生じ易いことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記第2の圧力は、高度約80,000フィート〜約90,000フィート(約24km〜27km)における気圧に対応することを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−24413(P2011−24413A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160209(P2010−160209)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】