説明

電動はさみ

【課題】使用者が意図しない操作が行われてしまうことを防ぎ、使用時の安全性を高めた電動はさみを提案する。
【解決手段】本発明における電動はさみ1は、刃部9を開閉するために、開位置と閉位置とを備えた開閉スイッチ8aに、連動せず刃部9が開閉しない待機状態と、開閉スイッチ8aに連動して刃部9が開閉する通常運転状態とを取り得、本体への電源供給を開始/停止するために、開始位置と停止位置とを備えたメインスイッチ6を開始位置にすることで待機状態となり、開閉スイッチ8aを所定時間閉位置にした後、通常運転状態に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃部を開閉させることで、枝等を切断することができる電動はさみに関し、特に開閉スイッチへの操作に連動して刃部を開閉させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に知られている電動はさみは、1枚の可動刃と1枚の固定刃からなる刃部を備え、可動刃を作動するトリガースイッチとを備え、トリガースイッチのON/OFF操作により枝等を切断するのに用いられる。この電動はさみは、作業者が片手で操作可能な大きさであり、本体を握ったときに指で操作できる位置にトリガースイッチが配されており、トリガースイッチを指で引くことにより刃部が閉じ、トリガースイッチから指を放すことで刃部が開くようになっている。
【0003】
こうした電動はさみには、メインスイッチをONしてもすぐに刃部の開閉がトリガースイッチと連動しないように安全対策が施されている。この点、特許文献1記載の電動はさみに、メインスイッチをONにして電源供給がなされた後、トリガースイッチを1回ON/OFFする起動処理により、トリガースイッチと連動して刃部が開くようになり、使用可能な状態としている。しかしながら、使用者は、メインスイッチをONにした後、電動はさみを持つときに不用意にトリガースイッチに指をかけてしまって、意図しないまま起動処理が行われて、使用可能な状態にしてしまったり、電動はさみを落下させてしまって、意図しないまま起動処理が行われて、使用可能な状態にしてしまったりすることがあり、万全な安全対策とはいえなかった。
【0004】
また、こうした電動はさみは、メインスイッチをOFFにした後に刃部が開いたままにならないように、トリガースイッチをOFFにして刃部を閉じてからメインスイッチをOFFにするように使用されている。この点、特許文献1記載の電動はさみは、メインスイッチをOFFにするだけで電源供給が終了する前に、自動的に刃部が閉じる終了処理を行うようにして利便性を向上させている。しかしながら、使用者は、何かの拍子にメインスイッチをOFFにしてしまって、意図しないまま終了処理が行われて、使用不可な状態にしてしまうことがあったり、トリガースイッチをOFFにしていたとしても、メインスイッチをOFFにすることにより終了処理が行われ、自動的に刃部が閉じてしまったりすることがあったりして、安全とはいえなかった。
【特許文献1】特開2005−52384号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとしている課題は、使用者が意図しない操作が行われてしまうことを防ぎ、使用時の安全性を高めた電動はさみを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、少なくとも1枚が開閉する複数の刃を備えた刃部と、該刃部を開閉するために、開位置と閉位置とを備えた開閉スイッチと、本体への電源供給を開始/停止するために、開始位置と停止位置とを備えたメインスイッチとからなる電動はさみにおいて、前記開閉スイッチに連動せず前記刃部が開閉しない待機状態と、前記開閉スイッチに連動して前記刃部が開閉する通常運転状態とを取り得、前記メインスイッチを開始位置にすることで前記待機状態となり、前記開閉スイッチを所定時間閉位置にした後、前記通常運転状態に移行することを特徴とする電動はさみを提案する。
【0007】
また、少なくとも1枚が開閉する複数の刃を備えた刃部と、刃部を開閉するために、開位置と閉位置とを備えた開閉スイッチとを備えた電動はさみにおいて、開閉スイッチを閉位置にすることにより刃部が閉じ、開閉スイッチを開位置にすることにより刃部が開き、開閉スイッチに連動せず刃部が開閉しない待機状態と、開閉スイッチに連動して刃部が開閉する通常運転状態とを取り得、通常運転状態のとき、開閉スイッチを所定時間閉位置にした後、刃部が閉じたまま待機状態に移行することを特徴とする電動はさみを提案する。
【0008】
さらに、アーチ状に開閉スイッチを囲うガード体と、開放位置にすることで開閉スイッチの操作が可能になり、固定位置にすることで開閉スイッチの操作が不可になるロックスイッチとを備え、ロックスイッチをガード体で囲われた領域の外に配置した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、電動はさみの状態を待機状態から通常運転状態に移行させるには、開閉スイッチを所定時間閉位置にし続ける必要があり、引用文献1記載の電動はさみのように、メインスイッチをONにして電源供給がなされた後、トリガースイッチを1回ON/OFFするだけで瞬時に起動処理が完了しないので、使用者は、メインスイッチをONにした後、電動はさみを持つときに不用意にトリガースイッチに指をかけてしまって、意図しないまま起動処理が行われて、使用可能な状態にしてしまったり、電動はさみを落下させてしまって、意図しないまま起動処理が行われて、使用可能な状態にしてしまったりすることを防いで、誤って刃部を閉じて指等を切断してしまうことをなくし、起動時の安全対策を万全なものにすることができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、電動はさみの状態を通常運転状態から待機状態に移行させるには、開閉スイッチを所定時間閉位置にし続ける必要があり、引用文献1記載の電動はさみのように、使用者は、何かの拍子にメインスイッチをOFFにしてしまって、意図しないまま刃部を閉じてしまって、使用不可な状態にしてしまうことを防いで、誤って刃部を閉じて指等を切断してしまうことをなくし、電動はさみの使用をより安全なものにすることができる。さらに、開閉スイッチを閉位置にして刃部を閉じてから、電動はさみは待機状態になるので、引用文献1記載の電動はさみのように、メインスイッチをOFFにすることにより終了処理が行われ、トリガースイッチをOFFにしていたとしても、自動的に刃部が閉じることを防いで、誤って指等を切断してしまうことをなくし、電動はさみの使用をより安全なものにすることができる。
【0011】
さらに、請求項3記載の発明によれば、ガード体が開閉スイッチをアーチ状に囲っているので、引用文献1記載の電動はさみのように、使用者は、メインスイッチがONにした後、電動はさみを落下させてしまったとしても、トリガースイッチが意図しないままONになることはない。一方、ロックスイッチがガード体の外に配置されているので、ガード体で囲われた領域の内に何かが挟まったとしても、ロックスイッチが意図しないまま開放位置になることはない。以上により、意図しないまま開閉スイッチが閉位置になり、ロックスイッチが開放位置になることを防いで、誤って刃部を閉じて指等を切断してしまうことをなくし、電動はさみの使用をより安全なものにすることができる。
【実施例】
【0012】
以後、本発明の実施形態を図1に従って説明する。電動はさみ1の主な構成要素は、はさみ本体2と制御ボックス3とである。はさみ本体2と制御ボックス3とははさみ本体ケーブル4によって接続されている。このはさみ本体ケーブル4により、制御ボックス3は、電力をはさみ本体2に供給し、はさみ本体2から送られてくる情報を基に、はさみ本体2を制御する。制御ボックス3からはさみ本体ケーブル4とは別にメインスイッチケーブル5が伸びているが、このメインスイッチケーブル5の先にはメインスイッチ6が取り付けられている。電動はさみ1は、このメインスイッチ6を開始位置にすることにより電源供給がなされ起動し、終了位置にすることにより終了する。使用者は、電動はさみ1を使用するとき、はさみ本体2を右手で持ち、メインスイッチ6を左手で持ち、制御ボックス3を専用のベストに入れて背負い、作業することになる。以後、はさみ本体2および制御ボックス3について詳細に説明する。
【0013】
まず、はさみ本体2について詳細に説明する。使用者がグリップ7を手で掴み、操作部8に指を置き、刃部9を前方に向けた状態で、はさみ本体2は使用される。結果として、はさみ本体ケーブル4は使用者の後方へ伸びる形になる。以後、この使用状況を基に、操作部8がある方向が下で、刃部9がある方向が前であるものとして、はさみ本体2の各部について詳しく説明する。
【0014】
最初に、はさみ本体2の操作部8であるが、8aは開閉スイッチたるトリガースイッチであり、開位置と閉位置とを備え、これを引いて閉位置にすることで刃部9が閉じて枝を切断し、トリガースイッチ8aを放して開位置にすることにより刃部9が開く。トリガースイッチ8aの下方をアーチ状に囲っている8bは、ガード体であり、はさみ本体2を誤って落下させる等の原因で、トリガースイッチ8aが押されてしまうことを防いでいる。トリガースイッチ8aの後方にある8cはトリガースイッチ8aの機械的ロックを行うロックスイッチであり、固定位置と開放位置とを備え、これを押して開放位置にしない限り、トリガースイッチ8aを引いて閉位置にすることができないようになっている。なお、ロックスイッチ8cはガード体8bで囲われた領域の外に配置されているが、これはトリガースイッチ8aとロックスイッチ8cとが勝手に同時押しされることを防ぐためである。電動はさみ1の使用時には、ガード体8bの内に人差し指をくぐらせ、トリガースイッチ8aを人差し指で押さえ、ロックスイッチ8cを中指で押さえ、それぞれを操作することになる。
【0015】
続いて、はさみ本体2の刃部9であるが、刃部9は上刃9aと下受け9bの2枚の刃からなる。これらの間に枝を挟み、上刃9aが上下方向に揺動することにより、枝が切断される。この仕組みをはさみ本体2の内部構造を示す図2に従って説明する。10はモータであり、これが回転駆動することでボールねじ11のねじ軸11aが回転し、これによりボールねじ11のナット部11bが前後移動する。そして、このナット部11bの前後移動がリンク12により連結した上刃9aの腕部9cに伝わる。この結果、上刃9aの腕部9cが前後方向に揺動することで、支点部9dを支点にして上刃9aが上下方向に揺動するのである。上刃9aの全開/全閉の判別は、はさみ本体2内の磁気センサー13、14がナット部11bに取り付けられた磁石11cを検出することで行われる。
【0016】
刃部9を閉じるときには、磁石11cが磁気センサー13に検出されるまでモータ10を正転させ、ナット部11bを後方に移動させる。そして、磁石11cが磁気センサー13に検出されたときにモータ10にブレーキをかけて停止させる。これにより、刃部9の開度が全閉となる。一方、刃部9を開くときには、磁石11cが磁気センサー14に検出されるまでモータ10を逆転させ、ナット部11bを前方に移動させる。そして、磁石11cが磁気センサー14に検出されたときにモータ10にブレーキをかけて停止させる。これにより、刃部9の開度が全開となる。
【0017】
はさみ本体2の詳細な説明を終え、次に制御ボックス3について詳細に説明する。図1には使用者によって背負われた制御ボックス3が、使用者の後から正面視して描かれている。制御ボックス3の上部には制御基板3aが搭載されており、これはトリガースイッチ8aの入力信号や、磁気センサー13,14の検出信号を受け取り、これらに基づいてモータ10を制御する信号をはさみ本体2に送り返すことで、刃部9の開閉を制御する。制御基板3aには、電動はさみ1の状態変化を使用者に知らせるブザーが取り付けられている。一方、制御ボックス3の下部には蓄電池3bが搭載されており、この蓄電池3bの種類はニッケル水素電池である。なお、前に説明した制御基板3aは蓄電池3bの残存容量検出、充電制御等も行う。従って、電力は蓄電池3bから供給されるので、商用電源から電力供給を受ける必要はなく、使用時に電源ケーブルを引き回さなくてもすむ。
【0018】
このように構成される電動はさみ1の使用方法について、以後説明する。本発明の電動はさみ1は、待機状態と通常運転状態との2つの状態を取り得る。待機状態のときには、トリガースイッチ8aに連動せず刃部9が開閉しない。一方、通常運転状態のときには、トリガースイッチ8aに連動して刃部9が開閉する。なお、使用者は、制御ボックス3を専用のベストに入れてこれを背負い、右手ではさみ本体2を持ち、左手でメインスイッチ6を持っているものとする。
【0019】
まず、電動はさみ1の起動処理について図3に従って説明する。このとき、刃部9の開度は全閉であるものとする。使用者が左手に持ったメインスイッチ6を押して開始位置にして(S1)電動はさみ1を起動すると、制御ボックス3に内蔵されたブザーからショートブザー音が鳴る。これは使用者に電動はさみ1が起動したことを知らせるためである。使用者は、右手の中指でロックスイッチ8cを押さえ開放位置にしたまま、右手の人差し指でトリガースイッチ8aを連続して引き、閉位置にし続ける。こうして所定時間、例えば1秒程度、つまり、少なくとも使用者が意図的に起動動作を行ったことを判別するには十分な時間が経過した(S2)後、ロングブザー音が鳴る。これは使用者に電動はさみ1が待機状態から通常運転状態に移行したことを知らせるためである。そして、使用者がトリガースイッチ8aを放し開位置にする(S3)と、トリガースイッチ8aに連動して刃部9が開閉するようになり(S4)、刃部の開度は全閉(S5)なので刃部9は開き(S6)、やがて刃部9の開度は全開となる。これ以後、はさみ本体2で枝を切断することができるようになる。
【0020】
次に、電動はさみ1の終了処理について図4に従って説明する。使用者は、右手の中指でロックスイッチ8cを押さえ開放位置にしたまま、右手の人差し指でトリガースイッチ8aを連続して引き、閉位置にし続ける。このとき、トリガースイッチ8aは引かれ閉位置にされたままなので、当然刃部9の開度は全閉である(S7)。こうして所定時間、例えば5秒程度、つまり、枝を切断するのにかかる時間よりも十分長い時間が経過した(S8)後、ショートブザー音が鳴る。これは使用者に電動はさみ1が通常運転状態から待機状態に移行したことを知らせるためである。これ以後、トリガースイッチ8aに連動せず刃部9が開閉しないようになる(S9)。そして、使用者はメインスイッチ6を終了位置にして(S10)電動はさみ1を終了させる。
【0021】
ところで、使用者が前述の終了処理のようにトリガースイッチ8aを所定時間連続して引き、閉位置にし続けないで、通常運転状態のままメインスイッチ6を終了位置にして電動はさみ1を終了してしまうと、刃部9の開度は全開のままである。このときの電動はさみ1の起動処理におけるはさみ本体2の挙動は前述した起動処理のものと異なるので、これについて図3に従って説明する。メインスイッチ6を開始位置にして(S1)電動はさみ1が起動するところまでは前述した起動処理とは一緒である。使用者が右手の中指でロックスイッチ8cを押さえ開放位置にしたまま、トリガースイッチ8aを引いて閉位置にいしたまま1秒程度経過した(S2)後、ショートブザー音が鳴る。このとき、使用者がトリガースイッチ8aを引いて閉位置にしているにもかかわらず、刃部9の開度は全開のままである。この後、使用者がトリガースイッチ8aを一旦放し開位置にする(S3)ことで、電動はさみ1が待機状態から通常運転状態に移行し、トリガースイッチ8aに連動して刃部9が開閉するようになり(S4)、これ以後、はさみ本体2で枝を切断することができるようになる。使用者が再びトリガースイッチ8aを引いて閉位置にしたときには、これと同時に刃部9は閉じ、やがて刃部9の開度は全閉となる。なお、刃部9の開度が中程度時の起動処理は、刃部9の開度が全開時の起動処理と同じである。
【0022】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明の具体的な実施形態は、前述した実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があったとしても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電動はさみ1の各構成要素を示す説明図である。
【図2】はさみ本体2の内部構造を示す説明図である。
【図3】電動はさみ1の起動処理を示すフローチャート図である。
【図4】電動はさみ1の終了処理を示すフローチャート図である。
【0024】
1 電動はさみ
2 はさみ本体
3 制御ボックス
3a 制御基板
3b 蓄電池
4 はさみ本体ケーブル
5 メインスイッチケーブル
6 メインスイッチ
7 グリップ
8 操作部
8a 開閉スイッチたるトリガースイッチ
8b ガード体
8c ロックスイッチ
9 刃部
9a 上刃
9b 下受け
9c 腕部
9d 支点部
10 モータ
11 ボールねじ
11a ねじ軸
11b ナット部
11c 磁石
12 リンク
13 磁気センサー
14 磁気センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚が開閉する複数の刃を備えた刃部と、該刃部を開閉するために、開位置と閉位置とを備えた開閉スイッチと、本体への電源供給を開始/停止するために、開始位置と停止位置とを備えたメインスイッチとからなる電動はさみにおいて、
前記開閉スイッチに連動せず前記刃部が開閉しない待機状態と、前記開閉スイッチに連動して前記刃部が開閉する通常運転状態とを取り得、前記メインスイッチを開始位置にすることで前記待機状態となり、前記開閉スイッチを所定時間閉位置にした後、前記通常運転状態に移行することを特徴とする電動はさみ。
【請求項2】
少なくとも1枚が開閉する複数の刃を備えた刃部と、該刃部を開閉するために、開位置と閉位置とを備えた開閉スイッチとを備えた電動はさみにおいて、
前記開閉スイッチを閉位置にすることにより前記刃部が閉じ、前記開閉スイッチを開位置にすることにより前記刃部が開き、前記開閉スイッチに連動せず前記刃部が開閉しない待機状態と、前記開閉スイッチに連動して前記刃部が開閉する通常運転状態とを取り得、該通常運転状態のとき、前記開閉スイッチを所定時間閉位置にした後、前記刃部が閉じたまま前記待機状態に移行することを特徴とする電動はさみ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動はさみにおいて、
アーチ状に前記開閉スイッチを囲うガード体と、開放位置にすることで前記開閉スイッチの操作が可能になり、固定位置にすることで前記開閉スイッチの操作が不可になるロックスイッチとを備え、該ロックスイッチを前記ガード体で囲われた領域の外に配置したことを特徴とする電動はさみ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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