説明

電動アシスト自転車の補助駆動装置

【課題】 坂道など以外の場所では電動駆動機構を切り離し可能にした電動アシスト自転車の補助駆動装置を提供する。
【解決手段】 駆動ギア8(8a)の出力軸30に嵌挿され、電動モータ2の回転軸と減速歯車10を介して回転する主歯車4と、主歯車4の表面に一端が軸支され、他端には外側に突出した爪部23が形成されたクリック17と、主歯車4と同軸の駆動ギア8(8a)の出力軸30に固着し、爪部23が係合する内歯46を有する内装輪7と、爪部23を外側へ揺動し、内装輪7に設けられた内歯46に係合させる摩擦素子29とを備え、電動モータ2による主歯車4の回転に伴い摩擦素子29によりクリック17を外側に揺動させて爪部23を内装輪7の内歯46に係合させて内装輪7を回転させ、内装輪7と同軸上の駆動ギア8(8a)を回転させることにより駆動ギア8(8a)に連結された自転車の駆動輪を回転させるようにして構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動機構を備えた電動アシスト自転車の補助駆動装置に関し、特に、自転車の足踏みペダルによる通常の走行時に電動駆動機構による負荷を低減できる電動アシスト自転車の補助駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動アシスト自転車は、車体重量が重い上に、バッテリーも大きな容量のものが必要とされていた。そのため、自転車全体の重量が増すと共に、電動駆動機構を切った状態で通常走行する場合にも電動駆動機構と車輪が連結されているためペダルを踏むトルクが増え、電動式ではない通常のペダル式自転車のように平坦な道を軽快に走ることができなかった。そのため、従来の電動アシスト自転車における通常走行時にも軽快に走るように改善されたものがいくつか提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−150982号公報第1頁
【特許文献2】特開平8−299570号公報第1頁
【0004】
例えば、特許文献1は、前後の車輪の傾斜度合を検出して電動関係を遮断するようにしたもので、平坦な道では電動駆動機構が作動しないものである。
【0005】
尚、特許文献2は、本願出願人が先に提案した電動駆動補助装置に関するもので、通常の自転車に電動補助装置を取り付けるものであるが、この電動補助装置では平坦な道においてペダルを踏み込んで走行しているときに電動駆動機構が接続されているので、負荷が掛かり、軽快に走行することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、平坦な道において通常の走行を行う場合に電動駆動機構による負荷を軽減し、通常の自転車と同様なペダル操作で軽快に走行することが可能な電動アシスト自転車の補助駆動装置を提供するものである。
すなわち、本発明は、電動駆動機構を駆動したときのみ電動駆動機構と車輪がつながり、電動駆動機構を停止したときは車輪の回転が電動駆動機構に伝わらず、さらに、速度が増して車輪の回転が電動駆動機構の駆動ギアの回転を上回ると車輪との連結を解除するようにした電動アシスト自転車の補助駆動装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、発進の際に電動駆動機構の動力が車輪に直に伝わることによって生じる発進時の衝撃を軽減することが可能な電動アシスト自転車の補助駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、足踏みペダルによって駆動輪を駆動すると共に、クラッチを介在させた電動モータによって駆動ギアを回転し、駆動ギアに連結された駆動輪を駆動する電動アシスト自転車の補助駆動装置において、駆動ギアの出力軸に嵌挿され、電動モータの回転軸と減速歯車を介して回転する主歯車と、主歯車の表面に一端が軸支され、他端には外側に突出した爪部が形成されたクリックと、主歯車と同軸の駆動ギアの出力軸に固着し、クリックの爪部が係合する内歯を有する内装輪と、クリックの爪部を外側へ揺動し、内装輪に設けられた内歯に係合させる摩擦素子とを備え、電動モータによる主歯車の回転に伴い摩擦素子によりクリックを外側に揺動させてクリックの爪部を内装輪の内歯に係合させて内装輪を回転させ、内装輪と同軸上の駆動ギアを回転させることにより駆動ギアに連結された駆動輪を回転させるように構成されてなることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、駆動輪のスポークに着脱可能に取り付けたリング状ギアに電動モータの駆動ギアを噛合させたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、クリックの爪部側の近傍に可動可能に取り付けられたリンクを備え、リンクは他端が摩擦素子と一体に回転するリンク輪に取り付けられ、摩擦素子の差動によってクリックの爪部を外側に揺動させ、クリックの爪部を内装輪の内歯に係合させることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、クリックは主歯車に複数個を対称位置にしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、駆動輪のスポークにリング状ギアを取り付け、一方、駆動輪のスポークまたは枠体に電動モータを内蔵した電動駆動機構を取り付け、電動駆動機構の電動モータの回転軸にクラッチを介して連結した駆動ギアをリング状ギアに噛み合わせて電動モータの回転をリング状ギアに伝達して駆動輪を回転させる電動駆動機構の駆動ギア内にスプリングまたはゴムを備えた緩衝機構を組み込み、発進時の急激な出力を緩和しつつ駆動輪に動力を伝達するようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、駆動輪のスポークにリング状ギアを取り付け、一方、駆動輪のスポークまたは枠体に電動モータを内蔵した電動駆動機構を取り付け、電動駆動機構の電動モータの回転軸に設けた駆動ギアをリング状ギアに噛み合わせて電動モータの回転をリング状ギアに伝達して駆動輪を回転させる電動駆動機構の駆動輪の出力軸に磁性体リングを組み込み、磁性体リングを内装輪に連結したことを特徴とする。
【0014】
上記のように、本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置は、電動駆動機構と自転車の駆動輪との間に新規なクラッチ機構を介在させた構成を備えており、電動駆動機構の電動モータを回転させたときにのみクラッチがつながり、電動モータを止めているときは、駆動輪と連結している駆動ギアを左右どちらに回転しても電動モータに伝わらない。しかも、自転車の走行速度が増して駆動輪の回転が電動モータに連結している駆動ギアの回転数を上回ったときはクラッチが空転して駆動輪への連結が解除されるので電動モータが抵抗となって急ブレーキがかかることがない。
【0015】
また、本発明係る電動アシスト自転車の補助駆動装置は、リング状ギアを自転車の駆動輪のスポークに取り付け、一方、枠体(フレーム)に取り付けた電動駆動機構の出力となる駆動ギアを組み込んで駆動輪を回す方式において、電動駆動機構にスプリングまたはゴムなどを利用した緩衝部材が組み込まれており発進時における動力の伝達による衝撃を軽減する。
【0016】
さらに、本発明の電動アシスト自転車の補助駆動装置は、発進時や坂道での走行時のような駆動輪の回転が遅いときのみに電動駆動機構による駆動力を自転車の駆動輪に伝達して電動による走行可能とし、一方、平坦な道での通常の高速走行の場合は駆動輪と電動駆動機構との連結を解除してペダルの踏み込みだけで走行が可能である。
【0017】
本発明の電動アシスト自転車の駆動補助装置は、通常の平坦な道での走行時に電動駆動機構と自転車の駆動輪との連結を遮断してあるので、充電器などのバッテリー容量を小さく、小型にすることができる。従って全体の重量も軽量となり、ペダル走行時の摩擦抵抗を減少させ、電動駆動機構を使用しないときにも軽快に走行することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置によれば、発進時にはスイッチをオンにして電動駆動機構を駆動輪に連結し、通常の平坦な道を走行中においてはハンドルなどに配置された電動駆動機構のスイッチをオフにして動作を停止させても電動駆動機構と自転車の駆動輪との連結が遮断されているので電動アシスト自転車の重量感を感じさせず、通常の自転車と同じく軽快に走行することができるという効果がある。
【0019】
また、本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置によれば、主歯車に内装しているクラッチは、例えば駆動ギアが毎分1回転程度の低速度回転においても確実にクラッチが連結され、主歯車の回転が増加しないとクラッチが連結されない遠心力利用の従来のクラッチと異なり急発進する心配がないという効果がある。
【0020】
また、本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置によれば、自転車を高速に走行中に電動モータのスイッチをオンにしても内装輪の内歯がクリックの爪を押し下げながら追い越すようにして回転するのでクラッチが連結されることがないから電動駆動機構の負荷を軽減して軽快に走行することができるという効果がある。従って、クラッチが連結されないから電動駆動機構の電動モータの回転力は駆動ギアに伝わることがなく、電動モータの低回転による急ブレーキが起こることがないので自転車の走行中に危険を及ぼすことはない。
【0021】
また、本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置によれば、主歯車の出力軸と駆動ギアの間に緩衝機構を組み込んだことにより、発進時に電動駆動機構によるスポークや歯車への衝撃を弱めることができ、その部分の破損を防ぐことができる。さらに、発進時に駆動ギアが跳ね上がることも防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の第1の実施形態における要部分解斜視図である。
【図2】リンクとクリック部分を示す平面断面図である。
【図3】図1の補助駆動装置の側面断面図である。
【図4】図1の補助駆動装置の要部説明図である。
【図5】衝撃吸収機構を示す要部分解斜視図である。
【図6】本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の第2の実施形態における要部分解斜視図である。
【図7】図6の補助駆動装置の断面図である。
【図8】本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置を自転車に取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係わる電動アシスト自転車の補助駆動装置の1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の一実施形態における要部分解斜視図、図2は図1の補助駆動装置の断面図、図3は図1の補助駆動装置の側面図、図4は図1の補助駆動装置の主歯車と内装輪との要部説明図、図5は本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の第2の実施形態における要部分解斜視図、図6は本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の第3の実施形態における要部分解斜視図、図7は図6の補助駆動装置の断面図、図8は本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置を自転車に取り付けた状態を示す説明図である。
【0024】
本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置1は、概略として、駆動輪である自転車50の後輪51のハブとリムとを結合するスポーク38にリムと同心円状に取り付けられたリング状ギア39と、自転車50のフレームに取り付け可能に形成された電動駆動機構を備えて構成されている。電動駆動機構はバッテリー53によって駆動される電動モータ2を内蔵し、電動モータ2の駆動力によってリング状ギア39を回転させるように構成されている。電動駆動機構は自転車50のフレームに着脱自在に取り付け可能とされると共に、リング状ギア39も自転車50の後輪51に着脱自在に取り付け可能とされている。
【0025】
電動駆動機構は、概略として、電動モータ2と、減速歯車10と、クラッチ機構を内装した主歯車4と、リング状ギア39を回転させる駆動ギア8がケーシング5内に配置されて構成されている。電動モータ2を駆動するバッテリー53は自転車50のフレームの適当な箇所に着脱自在に取り付けられる。尚、バッテリー53は充電式の蓄電池や乾電池を用いることができる。そして、電動モータ2を駆動するためのスイッチは自転車50の図示しないハンドルの操作しやすい適当な位置に取り付けられる。
【0026】
電動モータ2は、モーターケース2aに内装されており、電動モータ2の電動モータピニオン11がケーシング5内に位置するようにしてケーシング5の外側に取り付けられている。ケーシング5は、ケーシング6と組み合わされて内部機構を覆蓋する。ケーシング5、6は、金属製若しくはABS等の合成樹脂などによって形成することができる。電動モータピニオン11には減速歯車10が噛み合わされるようにして配置されていると共に、減速歯車10のピニオン3と噛み合うようにしてクラッチを内装した主歯車4が配置されている。
【0027】
具体的には、図1に示すように、ケーシング5の内側表面の所定位置には筒状の軸24が形成されており、軸24にはボールベアリング22が外嵌され、そして、ボールベアリング22を介して主歯車4がケーシング5に取り付けられている。主歯車4はその外周縁部にピニオン3と噛み合う凹凸のギア溝が設けられると共に、主歯車4の本体部分には凹部が形成されている。そして、この凹部の表面には周縁部の内側壁面近傍の2ヶ所にそれぞれクリック17、17が対称位置に揺動可能に軸支されている。クリック17は、やや湾曲した棒状の部材であり、先端側である開放端近傍には孔部17aが穿設されていると共に、孔部17aの近傍には爪部23が形成されている。また、クリック17の開放端側とは反対の後端側にはピン17bが形成されており、ケーシング5の表面に形成された取付孔17cに挿入することによって取付孔17cを中心として揺動可能な状態でケーシング5に取り付けられるようになっている。
【0028】
また、軸24には、リング状の摩擦パイプ25が圧入され、摩擦パイプ25の外側にはさらにリング状の摩擦素子26が嵌装されている。摩擦素子26は外周面に沿って引張コイルバネ26aが配置されており、引張コイルバネ26aは、摩擦素子26の開口部の大きさを狭める方向に力が作用している。これにより、摩擦素子26は摩擦パイプ25を押え付けるようにして取り付けられる。また、摩擦素子26の上面側には溝27が等間隔で2箇所に設けられており、後述するリンク輪20の下部に設けられた突起部28を溝27に嵌めこむことによって両者を一体化して共に回転するようになっている。
【0029】
リンク輪20は、リング状の環状部材であり、リンク輪20の外縁部には対称の位置に外側へ突出するようにして2箇所に取付部20aが形成され、取付部20aにはそれぞれ貫通孔20bが穿設されている。一方、リンク21は、クリック17と連結される板状部材であり、一端側にはクリック17の孔部17aと連結される第一のピン21aが設けられると共に、他端側にはリンク輪20の取付部20aに穿設された貫通孔20bと連結される第二のピン21bが設けられている。そして、リンク21とクリック17を可動可能に連結した状態でその上部からクリック止め円盤14によって蓋がされる。クリック止め円盤14は中心部に円形の空間部を備えた円盤状の部材であり、表面の4ヶ所にネジ孔14aが穿設されている。この4つのネジ孔14aにネジ14bを挿通してケーシング5に設けられたネジ止め孔17dにネジ止めされる。
【0030】
ケーシング5に固定されたクリック止め円盤14を覆うようにして内装輪7が主歯車4の凹部に配置されている。内装輪7は、凹状部を備えた円盤状の部材であり、内装輪7の周壁の内側にはクリック17の爪部23を外側に広げたときのみに引っ掛かる内歯46が2ヶ所に対称な位置に形成されている。内歯46は、なだらかな傾斜面と急な傾斜面を備えて形成されており、主歯車4の回転速度と内装輪7の回転速度の差によって、爪部23が内歯46と係合したり、係合することなく内歯46のなだらかな傾斜面が爪部23を追い越すようにして回転するようになっている。また、内装輪7の中心部には軸孔7aが設けられており、この軸孔7aに出力軸30が挿通されて固定された状態で内装輪7がケーシング5に配置されている。そして出力軸30は軸24に内嵌されたボールベアリング33と、内装輪7の中心軸7aの上部側に配置されたボールベアリング32によってケーシング5とケーシング6に軸受けされて取り付けられている。尚、本実施形態においてはリンク21とクリック17及び内歯46はそれぞれ2箇所に設けているが、これを3箇所以上、例えば、4箇所に配置することもできる。
【0031】
出力軸30のケーシング6側は、ケーシング6から外に突出するような長さを有して形成されると共に、ケーシング6から突出した部分には後述する駆動ギア8を固定するキー34が挿入されるキー溝31が軸方向に沿って形成されている。
【0032】
駆動ギア8は、周囲にギア溝8aが形成されたリング状の歯車部材であり、その回転中心には出力軸30に装着される軸孔42が設けられており、軸孔42の側面にはキー34が挿入されるキー溝35が出力軸30の挿入方向に沿って形成されている。これにより駆動ギア8は出力軸30に固定されるようになっている。そして、減速歯車10を介してモータ2の駆動力によって主歯車4を回転させると主歯車4に取り付けられたクリック21の爪部23が内装輪7の内歯46と噛み合って内装輪7を回転させる。内装輪7は出力軸30に固定されているので、内装輪7の回転は出力軸30を回転させ、出力軸30に固定された駆動ギア8を回転させる。そして、駆動ギア8はリング状ギア39を回転させて自転車50の駆動輪51の回転をアシストすることになる。
【0033】
一方、モータ2の駆動力が伝達される際の衝撃を緩和するために緩衝機構を設けることができる。すなわち、図2に示す緩衝機構は、駆動ギア8の代わりに緩衝スプリング9を備えた緩衝ギア8aにバネ座40を備えた緩衝円盤41を介在させることによって構成されている。緩衝ギア8aは、駆動ギア8の本体部分に円周方向に沿って3ヶ所に開口部であるバネガイド43を穿設し、このバネガイド43内にバネ部材からなる緩衝スプリング9を配置して構成されている。ここで、緩衝スプリングの代わりにゴムなどの弾性部材を用いることもできる。そして、緩衝ギア8aは、緩衝円盤41を介して出力軸30に装着される。尚、緩衝ギア8aを用いる場合には、緩衝ギア8aの軸孔42にはキー溝を設けることなく緩衝ギア8aは出力軸30に対して自由に回転可能となるようにして取り付ける。
【0034】
緩衝円盤41は、円盤状の部材の中心に軸穴45が穿設された軸47を備えて形成され、軸孔45の内側面には軸方向に沿ってキー溝37が設けられている。そして、キー溝37にキー34が挿入されるようになっている。また、緩衝円盤41には緩衝ギア8aのバネガイド43に対応するようにして3ヶ所にバネ座40が立設されており、バネ座40は緩衝ギア8aのバネガイド43内に挿入されて緩衝スプリング9の端部を支持するようにして配置される。さらに、緩衝円盤41は、軸47を緩衝ギア8aの軸孔42に挿入すると共に、軸47から緩衝ギア8aが外れないように止め輪44によって固定している。そして、キー溝31にキー34を挿入してワッシャ36bと止め輪36aで緩衝ギア8aを固定している。
【0035】
これにより、モータ2をスタートさせて内装輪7が回転し、それによって出力軸30が回転を開始するとそれと同時に緩衝円盤41も回転をはじめるが、緩衝円盤41のバネ座40が緩衝スプリング9を圧縮して一時的に吸収することとなる。そのため、駆動力が瞬間的にダイレクトに伝達されないのでモータ2の起動時の衝撃を弱めることができる。
【0036】
一方、図6に示す第2の実施形態は、摩擦素子26を磁石などの強磁性体で形成したものであり、上部に溝27を設けた強磁性体によってリング状に形成された摩擦素子26と、鉄などの強磁性体を用いて形成された摩擦パイプ25による構成としたものである。摩擦パイプ25の下部にフランジ48を設けてそこに磁石などの強磁性体によって形成した摩擦素子26を吸着させ、一時的に摩擦パイプ25に固定する。そして、溝27にはリンク輪20の下部に設けられた突起部28を嵌め込むことによって両者を一体化して共に回転することができるようにしている。尚、出力軸30に嵌挿する筒状の軸24と主歯車4との間にはボールベアリング33、22を介在させて摩擦パイプ25を配置すると共に、リンク輪20にリンク21を軸支して、リンク21とクリック17とを連結した状態でクリック止め円盤14を配置し、出力軸30に駆動ギア8のキー溝35にキー34が連結し、ワッシャ36bを介して止め輪36を設けている点は上述した第1の実施形態と同様である。
【0037】
次に、上述した本発明に係る電動アシスト自転車の補助駆動装置の好ましい実施形態の作動について説明する。
まず、ハンドルの手元に配置されたスイッチをオンにして電動モータ2を駆動させると電動モータ2の電動モータピニオン11に噛み合わされた減速歯車10を介して主歯車4が回転する。主歯車4が回転すると主歯車4に取り付けられたクリック17も同時に回転する。クリック17はリンク輪20に一端が取り付けられたリンク21と連結されおり、リンク輪20は摩擦素子26と一体化されているので主歯車4に軸支されているクリック17が回転するとリンク輪20も回転する。リンク輪20は摩擦素子26と一体とされているのでリンク輪20と共に摩擦素子26も回転する。リンク輪20が回転するとクリック21とリンク21の連結部がクリック21の回転に押されるようにしてクリック17の爪部23が外側方向に付勢される。そして、クリック21の爪部23が内装輪7の内歯46に噛み合ってクラッチがつながった状態となり内装輪7を回転させて軸30を回転させる。軸30には駆動ギア8がキー34によって固定されているので駆動ギア8が回転して自転車50の駆動輪(後輪51)を回転させる。すなわち、モータ2の駆動力が駆動輪(後輪51)に伝達される。この力によって自転車のペダルをこぐ力がアシストされることになる。尚、リンク輪20の摩擦素子26を第2の実施形態に示した強磁性体のものを使用した場合も同様の動作が行われる。
【0038】
ここで、自転車50が所定のスピードで高速進行している場合にモータ2のスイッチをオンにした場合には、内装輪7の内歯46がクリック21の爪23を押し下げながら追い越すようにして回転することになるのでクリック21の爪部23は内装輪7の内歯46に噛み合うことがない。つまり、クラッチはつながらない。したがって、モータ2の駆動力が抵抗となって急ブレーキがかかり自転車50の走行に危険が及ぶという心配がない。
【0039】
次に、緩衝ギア8aと緩衝円盤41による緩衝機構を組み込んだ補助駆動装置の動作について説明する。まず、出力軸30には緩衝ギア8aが回転自在に嵌装されると共に緩衝円盤41が固着されており、緩衝円盤41はバネ座40が緩衝ギア8aのバネガイド43内に配置された緩衝スプリング9の端部を支持するようにして配置されている。したがって、モータ2のスイッチをオンにしてモータ2を駆動させると上述した動作によってその動力が緩衝円盤41へ伝えられる。緩衝円盤41が回転をはじめると緩衝円盤41のバネ座40が緩衝スプリング9を圧縮して動力の伝達を一時的に吸収することとなるので駆動力がダイレクトに伝達されずモータ2の起動時の衝撃が弱められることになる。また、緩衝機構を設けることで、スポーク38や緩衝ギア8a等の歯車へ加わる衝撃を弱めることにもなるので当該箇所の破損を防ぐことができると共に、発進時に緩衝ギア8aが跳ね上がるようなことも防止できる。
【0040】
以上のように、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 補助駆動装置
2 電動モータ
3 ピニオン
4 主歯車
5 ケーシング
6 ケーシング
7 内装輪
8 駆動ギア
8a 緩衝ギア
9 緩衝スプリング
10 減速歯車
11 電動モータピニオン
14 クリック止円盤
15 リンク作動輪
17 クリック
20 リンク輪
21 リンク
22 ボールベアリング
23 爪部
24 筒状の軸
25 摩擦パイプ
26 摩擦素子(磁石)
27 溝
28 突起
29 摩擦素子
30 出力軸
31 キー溝
32、33 ボールベアリング
34 キー
35 キー溝
36 止輪
37 溝
38 スポーク
39 リング状ギア
40 バネ座
41 緩衝円盤
42 軸穴
43 バネガイド
44 止輪
45 軸穴
46 内歯
47 軸
48 フランジ
50 自転車
51 後輪
53 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足踏みペダルによって駆動輪を駆動すると共に、クラッチを介在させた電動モータによって駆動ギアを回転し、該駆動ギアに連結された前記駆動輪を駆動する電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記駆動ギアの出力軸に嵌挿され、前記電動モータの回転軸と減速歯車を介して回転する主歯車と、
前記主歯車の表面に一端が軸支され、他端には外側に突出した爪部が形成されたクリックと、
前記主歯車と同軸の前記駆動ギアの出力軸に固着し、前記クリックの爪部が係合する内歯を有する内装輪と、
前記クリックの爪部を外側へ揺動し、前記内装輪に設けられた内歯に係合させる摩擦素子と、
を備え、
前記電動モータによる前記主歯車の回転に伴い前記摩擦素子により前記クリックを外側に揺動させて前記クリックの爪部を内装輪の内歯に係合させて内装輪を回転させ、前記内装輪と同軸上の前記駆動ギアを回転させることにより当該駆動ギアに連結された前記駆動輪を回転させるように構成されてなることを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記駆動輪のスポークに着脱可能に取り付けたリング状ギアに前記電動モータの前記駆動ギアを噛合させたことを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記クリックの爪部側の近傍に可動可能に取り付けられたリンクを備え、前記リンクは他端が前記摩擦素子と一体に回転するリンク輪に取り付けられ、前記摩擦素子の差動によって前記クリックの爪部を外側に揺動させ、前記クリックの爪部を前記内装輪の内歯に係合させることを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記クリックは前記主歯車に複数個を対称位置にしたことを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記駆動輪のスポークにリング状ギアを取り付け、一方、前記駆動輪のスポークまたは枠体に前記電動モータを内蔵した電動駆動機構を取り付け、該電動駆動機構の電動モータの回転軸にクラッチを介して連結した駆動ギアを前記リング状ギアに噛み合わせて前記電動モータの回転を前記リング状ギアに伝達して前記駆動輪を回転させる電動駆動機構の前記駆動ギア内にスプリングまたはゴムを備えた緩衝機構を組み込み、発進時の急激な出力を緩和しつつ前記駆動輪に動力を伝達するようにしたことを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車の補助駆動装置において、
前記駆動輪のスポークにリング状ギアを取り付け、一方、前記駆動輪のスポークまたは枠体に前記電動モータを内蔵した電動駆動機構を取り付け、該電動駆動機構の電動モータの回転軸に設けた駆動ギアを前記リング状ギアに噛み合わせて電動モータの回転をリング状ギアに伝達して駆動輪を回転させる電動駆動機構の前記駆動輪の出力軸に磁性体リングを組み込み、当該磁性体リングを前記内装輪に連結したことを特徴とする電動アシスト自転車の補助駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−131752(P2011−131752A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293585(P2009−293585)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(592020253)
【出願人】(303041928)