説明

電動アシスト自転車及び自転車の車体フレームに取り付け可能な電動アシスト自転車用ユニット

【課題】電動アシスト自転車に使用される補助動力機構の簡素化を図ると共に、自転車車体フレームへの取り付けを容易にする。
【解決手段】電動力により踏力を補助して走行可能な電動アシスト自転車は、踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケット2と、電動力を出力軸37aから出力する電動モーター37と、出力軸37aにギア機構40を介して連結されたアシストギア30と、アシストギア30をスプロケット2に同軸に連結するピン123と、を備える。これらの構成要素は、共通ベース50上に配列され、車体フレームに着脱自在の1つのユニット11を構成する。ピン123のヘッド部には弾性部材127が覆われている。スプロケット2ピンとの係合領域に設けられている。かくして、アシストギア30に提供された電動力は、ピン123及び弾性部材127を介してスプロケット2に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動力により踏力を補助して走行可能な電動アシスト自転車、並びに、自転車の車体フレームに取り付け可能な電動アシスト自転車用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動力により踏力を補助して走行可能な電動アシスト自転車には、踏力及び電動力の合力機構が設けられている。このような合力機構の一例として、特開2002−362468号公報に記載された合力機構を備えた電動アシスト自転車が開発された。この電動アシスト自転車は、同公報の図3に示されるように、踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケット2と、スプロケット2と共に同軸で回転可能なアシストギア30と、所定条件下で踏力に応じた電動力を出力する駆動ユニットと、出力された電動力により回転される動力スプロケット33と、アシストギア30及び動力スプロケット33の間に張設されたアシストチェーン32と、を備えて構成されている。この技術は、合力機構の設置自由度が大幅に拡大し、専用フレームの必要性が事実上無くなるという利点を有していた。
【特許文献1】特開2002−362468号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術による合力機構では、踏力センサーの主要部分と補助駆動ユニットとが別々の構造ユニットになっており、機構の簡素化並びに車体フレームへの取り付けの容易さという点で改良の余地が残っていた。本発明は、この点に鑑みてなされたもので、電動アシスト自転車に使用される補助動力機構の簡素化を図ると共に、自転車車体フレームへのその取り付けを容易にすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、電動力により踏力を補助して走行可能な電動アシスト自転車において、踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケットと、電動力を出力軸から出力する電動力出力手段と、電動力出力手段の出力軸にギア機構を介して連結されたアシストギアと、アシストギアをスプロケットに同軸に連結する連結手段と、を備えて構成したものである。好ましくは、アシストギア、連結手段及びスプロケットの動力伝達経路上に介在された弾性部材を備える。例えば、弾性部材は、スプロケット及びアシストギアの少なくともいずれかとピンとの係合領域に設けられている。連結手段の一例は、アシストギア及びスプロケットを厚さ方向に貫通して取り付けたピンである。好ましくは、アシストギアは、スプロケットから独立にベアリングを介して回転可能に支持されている。
【0005】
本発明によれば、電動力出力手段が所定条件下で踏力に応じた電動力を出力すると、該電動力はギア機構を介してアシストギアに伝達され、該アシストギアを回転させる。アシストギアに伝達された電動力は、ピン等の連結手段及び弾性手段を介してスプロケットに伝達される。スプロケットは踏力及び電動力の合力を駆動輪に伝達する。
【0006】
ギア機構の好ましい例は、電動力出力手段の出力軸に連動する第1のギアと、該第1のギアと噛み合う、減速用の第2のギアと、該第2のギアに同軸に連結され、アシストギアと噛み合う第3のギアと、を備える。
【0007】
このように本発明では、アシストギアからスプロケットまでピンを介して動力伝達を行うようにしたので、部品点数を少なくして機構を簡単にでき、更には、車体フレームへの取り付けを容易にする構造を容易に実現可能となる。また、アシストギア、連結手段及びスプロケットの動力伝達経路上に弾性部材を介在させているため、非常に円滑な動力伝達を実現することができる。
【0008】
本発明の別の好ましい形態では、電動力出力手段及びギア機構は、共通ベース上に固定され、スプロケット及びアシストギアは、共通ベースに回転可能に取り付けられている。この形態によれば、電動力出力手段と合力機構とを1つのユニットに組み込むことが可能となり、車体フレームへの取り付けを容易にすることができる。また、共通ベースを加工することにより、任意形式の車体フレームに、当該ユニットを自在に取り付けることができる。
【0009】
好ましくは、電動力出力手段とギア機構の少なくとも一部とが、ハウジング内に収容され、該ハウジングは、共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されている。
【0010】
また、本発明の他の形態に係る電動アシスト自転車は、踏力の適用により回転するドライブシャフトを更に備え、該ドライブシャフトは、共通ベース上に回転可能に軸支されている。本形態では、ドライブシャフトは、シャフトハウジングに収容され、該シャフトハウジングは、共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されているのが好ましい。この場合、電動アシスト自転車の車体フレームには、シャフトハウジングが貫通されるシャフト孔を有するのが好ましい。即ち、シャフトハウジングは、電動アシスト自転車に形成されたシャフト孔を貫通可能に形成されている。これにより、シャフト孔にシャフトハウジングを挿入することで、電動力出力手段と合力機構との一体ユニットの車体フレームへの着脱がきわめて容易となる。
【0011】
更に、本発明の別の形態に係る電動アシスト自転車では、スプロケットが、ドライブシャフトに一方向クラッチを介して取り付けられ、一方向クラッチは、ドライブシャフトに適用された踏力の一方向の回転のみをスプロケットに伝達する。この形態において、電動アシスト自転車は、踏力に応じて変化する一方向クラッチの物理量を検出する検出手段と、少なくとも検出手段により検出された物理量に基づいて電動力を制御する制御手段と、を備えるのが更に好ましい。これによって、電動力出力手段及び合力機構のみならず、踏力検出手段をも全体として簡単な機構で一体ユニット内に組み込むことが可能となる。
【0012】
一方、アシストギアは、ベアリングを介して共通ベースに回転可能に取り付けられているのが好ましい。これにより、電動力を安定してスプロケットに伝達することができる。
本発明の別の態様は、自転車の車体フレームに取り付け可能な電動アシスト自転車用のユニットに関する。このユニットは、少なくとも、踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケットと、踏力を補助するための電動力を出力軸から出力する電動力出力手段と、電動力出力手段の出力軸にギア機構を介して連結されたアシストギアと、アシストギアをスプロケットに同軸に連結する連結手段と、
を共通ベース上に配列してなる。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、以下で説明される本発明の好ましい実施例を参酌することによって、より明瞭に理解されよう。
【実施例】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
図1には、本発明の第1実施例に係る電動アシスト自転車1の概略が示されている。同図に示すように、この電動アシスト自転車1の主要な骨格部分は、通常の自転車と同様に、金属管製の車体フレーム3から構成され、該車体フレーム3には、前輪20、後輪22、ハンドル16、及びサドル18などが周知の態様で取り付けられている。
【0015】
また、車体フレーム3の中央下部には、ドライブシャフト4が回転自在に軸支され、その左右両端部には、クランク棒6L、6Rを介してペダル8L、8Rが各々取り付けられている。このドライブシャフト4には、車体の前進方向に相当するR方向の回転のみを伝達するための一方向クラッチ(後述する図3(b)の99)を介して、スプロケット2が同軸に取り付けられている。このスプロケット2と、後輪22の中央部に設けられた後輪動力機構10との間には無端回動のチェーン12が張設されている。
【0016】
本実施例の電動アシスト自転車1は、少なくとも車体走行速度及び踏力から決定されたアシスト比率(補助動力/踏力)で踏力をアシストする制御を行う。本実施例では、電動アシスト自転車の制御と、電動力と踏力との合力動作とは、補助動力機構であるユニット11により実行される。
【0017】
電動アシスト自転車1の制御系の概略が図2に示されている。本実施例に係る電動アシスト自転車1の制御系は、該自転車全体の電子的処理を一括して制御する1個のマイクロコンピュータ14と、PWM制御可能な電動モーター37と、マイクロコンピュータ14に直接接続され、その制御信号の電力を増幅する増幅回路15と、該増幅回路15に接続され電動モーター37に電源供給するバッテリー17と、を含む。
【0018】
マイクロコンピュータ14には、少なくとも走行速度を演算するための回転速度信号、及び、踏力を演算するための歪みゲージ信号1、2が入力される。これらの入力信号を発生する手段については後述する。マイクロコンピュータ14は、これらの入力信号から走行速度及び踏力を演算し、所定のアルゴリズムに基づいてアシスト比率を決定する電子的処理を行う。次に、マイクロコンピュータ14は、決定されたアシスト比率に対応する補助動力を発生させるよう電動モーター37を指令するため、該補助動力に応じたPWM指令を順次出力する。
【0019】
次に、電動アシスト自転車1における補助動力機構としてのユニット11を図3(a)、(b)を用いて説明する。
図3(a)及び(b)に示すユニット11は、スプロケット2に同軸に連結されたアシストギア30と、電動力を出力する電動モーター37と、該電動モーターの出力軸37aからアシストギア30までギアを介して電動力を伝達するためのギア機構40と、を備える。従って、電動モーター37が回転されると、そのトルクがギア機構40を介してアシストギア30に提供され、該アシストギア30に対し固定された、踏力により回転されるスプロケット2に直ちに伝達される。かくして、補助動力及び踏力の合力が達成される。
【0020】
ギア機構40は、電動モーター37の出力軸37aに連動する第1のギア38と、該第1のギア38と噛み合う、減速用の第2のギア42と、該第2のギア42に同軸に連結され、アシストギア30と噛み合う第3のギア45と、を備える。
【0021】
なお、電動モーター37からアシストギア30への補助動力の伝達経路の途中には、一方向にだけ動力を伝達する、いわゆる一方向クラッチ(図示せず)が設けられている。この一方向クラッチは、電動モーター37からの補助動力をアシストギア30に伝達するが、その逆方向、即ちアシストギア30から電動モーター37へはトルクを伝達しないように構成・接続される。電動モーター37が回転していないときは、図示しない上記一方向クラッチにより、モーターの回転負荷はアシストギア30に伝達されることがなく、軽快な運転が可能となる。
【0022】
スプロケット2と、アシストギア30と、電動モーター37と、ギア機構40と、は共通ベース50上に取り付けられている。また、電動モーター37及びギア機構40全体は、共通ベース50に対して動かないように固定されている。更に、電動モーター37、並びに、ギア機構40のうち第1のギア38及び第2のギア42は、駆動ハウジング13により覆われている。この駆動ハウジング13は、共通ベース50に連結され若しくは該共通ベース50と一体に成形されている。
【0023】
スプロケット2は、ドライブシャフト4に一方向クラッチ99を介して共通ベース50上に回転可能に取り付けられている。一方向クラッチ99は、後述するようにドライブシャフト4に適用された前進方向の回転のみをスプロケット2に伝達する。ドライブシャフト4は、シャフトハウジング52内で、回転可能に軸支され、該シャフトハウジング52は、車体フレームに形成されたシャフト孔80内に挿入された状態で該車体フレームに固定されている。シャフトハウジング52は、共通ベース50に連結され若しくは一体成形されている。
【0024】
スプロケット2とアシストギア30とは、ピン123(図3(a)の例では、120度間隔で3箇所)を介して同軸に連結されている。これによって、アシストギア30に伝達された電動力は、ピン123を介してスプロケット2に伝達する。ピン123は、図3(b)に示されるように、アシストギア30及びスプロケット2を厚さ方向に貫通して取り付けられている。図3(b)の例では、ピン123の脚部は、アシストギア30の孔部に挿入、固定されており、ピン123のヘッド部は、スプロケット2に形成された孔を貫通しており、抜け防止のためピン123の先端は、該孔の直径より大きい直径を有している。
【0025】
また、ゴム等の弾性部材127が、ピン123のヘッド部及び軸部の周囲に設けられている。即ち、弾性部材は、スプロケット2とピン123との間の係合領域に設けられている。これにより、アシストギア30やスプロケット2のガタ揺れ等を吸収し、アシストギア30とスプロケット2との間の動力伝達を非常に円滑にすることができる。
【0026】
なお、スプロケット2とアシストギア30と間の連結手段は、図示のピンに限定されるものではない。例えば、ボルトでもよく、或いはピン123の脚部が、アシストギア30に一体形成されていてもよい。また、弾性部材127は、アシストギア30、ピン123及びスプロケット2の任意の動力伝達経路上に設けられていてもよい。例えば、アシストギア30とピン123との間の係合領域等に単独で又は追加的に設けられてもよい。
【0027】
また、アシストギア30は、スプロケット2とは独立にベアリング70を介して共通ベース50に回転可能に取り付けられている。これにより、アシストギア30からスプロケット2へのより安定した動力伝達が可能となる。
【0028】
以上のように、本実施例では、スプロケット2と、アシストギア30と、電動モーター37と、ギア機構40と、ドライブシャフト4とを共通ベース50上に取り付け、更に、図2に示す制御系の回路及び後述する踏力センサーを各々駆動ハウジング13及び一方向クラッチ99内部に取り付けることにより、電動アシストに必要となる全ての構成要素を組み込んだ1つのユニット11を構成することが可能となる。それにより、補助動力機構全体の簡素化を達成できると共に、ユニット11の車体フレームへの取り付けを容易にすることができる。なお、共通ベースを適宜加工することにより、任意形式の車体フレームに、当該ユニット11を取り付けることができることが理解されよう。
【0029】
本発明の一実施例に係るユニット11を自転車フレームに取り付ける手順を図4を用いて説明する。図4(a)には、ユニット11を自転車フレームに取り付けたときの右側から見た斜視図、図4(b)には、図4(a)に示すユニット11の拡大図、図4(f)は、ユニット11を自転車フレームに取り付けたときの左側から見た斜視図が示されている。
【0030】
先ず、図4(c)に示すように、シャフト孔80の一方の端部から、ユニット11のドライブシャフト4(シャフトハウジング52により覆われている)を矢印の方向に沿って挿入する。次に、図4(d)に示すように、シャフト孔80の反対側の端部からドライブシャフト4及びシャフトハウジング52の先端が突出するまでユニット11を挿入し、その突出先端に、取り付け金具82及び締め金具84を取り付ける。更に、両端部にボルト螺合用孔が形成された隆起部をユニット11に設け、ボルト孔が各々形成され、平行に延在する一対のタブを車体フレームに設けておき、図4(b)の工程で、該隆起部を該一対のタブの間にボルト孔が整列された状態で配置するようにしてもよい。
【0031】
最後に、図4(c)に示すように、締め金具84をドライブシャフト4及びシャフトハウジング52の先端部に締め付けてこれらを固定すると共に、締め金具84により同時に締め付けられる取り付け金具82の先端部をユニット11の外側にボルト止めする。また、一対のタブ内に配置された隆起部のボルト螺合孔に両端部からボルトを締め付ける。以上のように、確実且つ簡単にユニット11を車体フレームに取り付けることができる。
(踏力検出機構)
マイクロコンピュータ14に入力される歪みゲージ信号1、2を出力する踏力検出機構を図3乃至図7を用いて説明する。本実施例に係る踏力検出機構は、踏力に応じた一方向クラッチ99の変形によって変化する歪みを検出する。
【0032】
図3(b)に示すように、スプロケット2は、一方向クラッチ99を介してドライブシャフト4に軸支される。この一方向クラッチ99は、図5に示すように、駒部100及び歯部112を備える。
【0033】
駒部100では、3つのラチェット駒102が周方向に沿って等角度毎にその第2の係合面110に配置されている。このラチェット駒102は剛体でできており、第2の係合面110の略径方向に沿った軸の回りに回動可能とされている。ラチェット駒102は、ラチェット駒102に力が作用していないとき、その長さ方向が第2の係合面110に対して所定の角度をなす(図6の平衡方向160)ように駒立ち上げスプリング104によって付勢されている。図6に示すように、ラチェット駒102が平衡方向160から上昇方向a又は下降方向bに偏倚するとき、駒立ち上げスプリング104は、その偏倚を平衡方向160に戻すようにラチェット駒102に僅かな弾性力を及ぼす。
【0034】
また、駒部100の中央部には、ドライブシャフト4を受け入れるための駒部ボア106が形成され、この駒部ボア106は、駒部100の裏面101から突出した円筒部103も貫通している。裏面101には、円筒部103の外周囲に円状溝155(図3(b))が形成され、該円状溝155の中には、多数の鋼球152が回転自在に嵌め込まれている。これによって、裏面101には、軸方向の荷重受け兼滑り軸受け用のベアリングが形成される。
【0035】
皿バネ124が、その中心孔127に円筒部103を通して駒部100の裏面101に当接される。このとき、皿バネ124は、駒部100からの圧力に弾力で対抗する方向に鋼球152即ち荷重受けベアリングを介して裏面101に滑動可能に接する。皿バネ124の表面には、180度の位置関係で対向する2個所に、歪みゲージ126が設置される。これらの歪みゲージ126は、リード線128を介してマイクロコンピュータ14に電気的に接続される。更に好ましくは、3個以上の歪みゲージを皿バネ124に設置してもよい。このとき、複数の歪みゲージを、皿バネ124の表面上で夫々が回転対称の位置となるように設置するのが好ましい。
【0036】
皿バネ124は、椀状の支持器130の内底部132に収められる。支持器130には、ドライブシャフト4を貫通させるための支持ボア133及び後面から突出する支持円筒部134が形成される。支持円筒部134の外周表面には、ねじが切ってあり、これを車体取り付け部145のねじ切り内壁に螺合することによって、支持器130が車体に固定される。この支持円筒部134の内壁には、軸方向及び径方向の両荷重対応のベアリング138が係合され(図3(b)参照)、ベアリング138は、ドライブシャフト4に形成されたストッパー斜面144によって係止される。同様に、ドライブシャフト4の反対側にもベアリング139(図4(b)参照)が取り付けられるので、ドライブシャフト4は車体に対して回転自在となる。
【0037】
駒部ボア106の内壁には、軸方向5に延びる第1の回転防止用溝108が4個所に形成されている。駒部ボア106の内壁と摺接するドライブシャフト4の外壁部分にも、第1の回転防止用溝108と対面するように軸方向5に延びる第2の回転防止用溝140が4個所に形成されている。図7(a)に示すように、第1の回転防止用溝108及びこれに対面する第2の回転防止用溝140は、軸方向に沿って延びる円柱溝を形成し、各々の円柱溝の中には、これを埋めるように多数の鋼球150が収容される。これによって、駒部100は、軸方向5に沿って摩擦抵抗最小で移動できると共に、ドライブシャフト4に対する相対回転が防止される。これは、一種のボールスプラインであるが、他の形式のボールスプライン、例えば無端回動のボールスプラインなどを、このような摺動可能な回転防止手段として適用することができる。
【0038】
また、駒部100のドライブシャフト4への取り付け方法として、図7(a)のボールスプライン以外の手段を用いることも可能である。例えば、図7(b)に示すように、軸方向に延びる突起部140aをドライブシャフト4に設け、該突起部140aを収容する第3の回転防止用溝108aを駒部100に形成する、いわゆるキースプライン形式も回転防止手段として適用可能である。なお、図7(b)において、突起部140aを駒部100側に、第3の回転防止用溝108aをドライブシャフト4側に設けてもよい。更に、図7(c)に示すように、軸方向に延びる第4の回転防止用溝108b及びこれに対面する第5の回転防止用溝140bを駒部100及びドライブシャフト4に夫々設け、これらの溝が形成する直方体状の溝の中にキープレートを収容する、いわゆるキー溝形式も回転防止手段として適用可能である。
【0039】
歯部112の第1の係合面121には、ラチェット駒102と係合するための複数のラチェット歯114が形成されている。ラチェット歯114は、歯部の周方向に沿って互い違いに周期的に形成された、第1の係合面121に対してより急な斜面118と、より緩やかな斜面116と、から構成される。
【0040】
歯部112は、その第1の係合面121を駒部100の第2の係合面110に対面させるようにドライブシャフト4にカラー111を介して摺接可能に軸支される。このとき、ラチェット駒102とラチェット歯112とが係合される(図6)。即ち、ドライブシャフト4は、ラチェット駒102とラチェット歯112との係合部分を介してのみ歯部112と作動的に連結される。カラー111を介して歯部ボア120を通過したドライブシャフト4の端部142には、歯部112が軸方向外側にずれないようワッシャー122が嵌合される(図3(b))。歯部112には、スプロケット2がピン123(図3(b))を介して動かないように取り付けられ、更に、ドライブシャフト4の先端にはペダル軸146が取り付けられる。かくして、車体前進方向のペダル踏力による回転のみをスプロケット2に伝達するようにドライブシャフト4とスプロケット2とを連結するラチェットギアが完成する。
【0041】
好ましくは、オフセット用バネ136が、ドライブシャフト4のストッパー斜面144と、駒部100の裏面101との間に介在されるのがよい。このオフセット用バネ136は、ペダル踏力が所定値以下の場合(例えば事実上ゼロに近い場合)、裏面101に収容された鋼球152と皿バネ124との間にクリアランスを生じさせるように駒部100を軸方向に偏倚させる。
【0042】
次に、本踏力検出機構の作用を説明する。
搭乗者がペダル8R、8L(図1)にペダル踏力を与え、ドライブシャフト4を車体前進方向に回転させると、この回転力は、ドライブシャフト4に対し回転不可能且つ摺動可能に軸支された駒部100に伝達される。このとき、図6に示すように、ラチェット駒102は、駒部100からペダル踏力に対応する力Fdを与えられので、その先端部は歯部112のラチェット歯のより急な斜面118に当接し、この力をラチェット歯に伝達しようとする。ラチェット歯部112は、スプロケット2に連結されているので、ラチェット駒102の先端部は、駆動のための負荷による力Fpをより急な斜面118から受ける。その両端部から互いに反対向きの力Fp及びFdを与えられたラチェット駒102は、a方向に回転して立ち上がる。このとき駒部100は、ラチェット駒102の立ち上がりによって軸方向内側に移動し、駒部100と支持器130との間に介在する皿バネ124を押し込む。皿バネ124は、これに対抗して弾性力Frを駒部100に作用する。この力Frと、駒部100を軸方向に移動させるペダル踏力を反映した力とは短時間で釣り合う。かくして、皿バネ124の応力歪み、駒部100と歯部112との間のクリアランス、ラチェット駒102の第2の係合面110に対する角度、駒部100の車体フレームに対する位置及び皿バネ124が押し込まれる圧力などはペダル踏力を反映する物理量となる。従って、これらのうち少なくとも1つを検出することによって踏力Tを推定することが可能となる。
【0043】
本実施例では、一例として皿バネ124の応力歪みを検出する。マイクロコンピュータ14は、皿バネ124に設けられた2つの歪みゲージ126からの信号を少なくとも加算演算する(平均演算を含む)。このように複数箇所の応力歪み量を平均化して計測することによって、同じ踏力でも出力変化を大きくとれ且つノイズ成分を平滑化することができるので、SN比を改善し、踏力推定精度を更に向上させることができる。この効果は、歪みゲージの個数が増えるほど大きくなる。
【0044】
また、ペダル踏力が所定値以下の場合などでは、オフセット用バネ136は、駒部100の裏面101と皿バネ124との間にクリアランスを生じさせているため、鋼球152が皿バネ124に頻繁に衝突することが少なくなる。これによって、歪みゲージ信号のノイズ成分が軽減して、踏力検出及び電動アシスト制御の安定性を向上させることができる。
【0045】
次に、マイクロコンピュータ14は、少なくとも演算された踏力Tに基づいて印加すべきアシスト用の補助動力Teを演算し、該補助動力で回転駆動するように電動モーター37を指令する制御信号を演算出力する。好ましくは、マイクロコンピュータ14は、回転速度センサー220により検出された回転速度信号を車速に変換し、踏力T及び車速の両方に基づいて適切な補助動力Teを決定し、該補助動力Teを発生させるよう電動モーター37を制御する。
【0046】
本実施例の踏力検出機構には以下のような更に優れた効果がある。
(1) 一方向クラッチと踏力検出機構とを一つの機構で実現したので、部品点数の削減化が図られ、小型、軽量化及び低コストを達成できる。
(2) 踏力を検出する部分に、受け荷重ユニットと荷重検出センサーとを一体化した皿バネを用い、2つの機能を1ユニットで実現したので、上記効果に加えて更に小型、軽量化及び低コストを達成できる。
(3) 上記項目(1)及び(2)に示したように踏力検出機構の小型、軽量化及び簡素化をより高いレベルで達成したので、通常の自転車であっても踏力検出機構を取り付ける可能性が更に広がった。
(4) 上記項目(1)及び(2)で示した理由により、従来機構に比べて荷重の伝達ロスが少なくなり、制御の応答性のよいアシストフィーリングを実現できる。
(5) 上記項目(1)及び(2)で示した理由により、従来機構(コイルバネ使用)に比べ、ペダルに無駄な動き(センサーが感知するまで)が無くなり、ペダルを踏み込んだときのフィーリングは、従来機構は踏み込み時に弾力感があったのに対し、本実施例では、通常の自転車のフィーリングと同様になった。
【0047】
なお、一方向クラッチ99の駒及び歯のいずれか一方をスプロケットに取り付け、他方をドライブシャフトに取り付けるかは、任意好適に変更可能である。例えば駒部100をスプロケット側に取り付け、歯部112をドライブシャフト4に摺動可能且つ回転不可能に取り付け、歯部112によって皿バネ124を押し込めるようにしてもよい。
【0048】
また、上記例では、皿バネの応力歪みを踏力に関連する物理量として検出したが、本発明は、これに限定されず、一方向クラッチ99の踏力に応じた変形によって変化する任意の物理量を検出することができる。例えば、ラチェット駒の傾き、ラチェット駒部及びラチェット歯部の相対間隔、ラチェット駒部及びラチェット歯部のいずれかの車体に対する位置、並びに、皿バネを押す圧力などを、踏力を反映する物理量として選択することができる。
【0049】
更に、一方向クラッチ99の変形に対抗して配置される弾性体も任意好適に種類及びその形状を変更可能である。皿バネやコイルバネ以外に例えばゴム弾性体などを用いることもできる。また、応力歪みを検出する手段として、歪みゲージを例にしたが、応力歪みに関連した物理量を検出できれば、これに限定されるものではない。
【0050】
以上が本発明の実施例であるが、本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において任意好適に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明に係る電動アシスト自転車の概略図である。
【図2】図2は、本発明の電動アシスト自転車の制御系を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係る、電動アシスト自転車に取り付けられるユニットを示す図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係るユニットを自転車フレームに取り付ける手順を説明するための概略図であって、(a)は、当該ユニットを自転車フレームに取り付けたときの右側から見た斜視図、(b)は、図4(a)に示すユニットの拡大図、(c)は、当該ユニットを自転車フレームに取り付ける前の斜視図、(d)は、当該ユニットの一部を自転車フレームに挿入したときの斜視図、(e)は、当該ユニットを自転車フレームに固定したときの斜視図、及び、(f)は、当該ユニットを自転車フレームに取り付けたときの左側から見た斜視図である。
【図5】図5は、図3に示された一方向クラッチの分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明の電動アシスト自転車の踏力検出の原理を説明するため一方向クラッチ(ラチェットギア)の歯及び駒の嵌合状態を示す図である。
【図7】図7は、ドライブシャフトに対する駒部の相対回転を防止する回転防止手段の例を示す図であり、(a)はボールスプライン、(b)はスプラインキー、(c)はキー溝の概略構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電動アシスト自転車
2 スプロケット
4 ドライブシャフト
11 ユニット
12 チェーン
13 駆動ハウジング
14 マイクロコンピュータ
15 増幅回路
17 バッテリー
22 駆動輪(後輪)
30 アシストギア
37 電動モーター
37a 電動モーターの出力軸
38 第1のギア
40 ギア機構
42 第2のギア
45 第3のギア
50 共通ベース
52 シャフトハウジング
70 ベアリング
80 シャフト孔
99 一方向クラッチ
100 駒部
102 ラチェット駒
112 歯部
114 ラチェット歯
123 ピン
124 皿バネ
126 歪みゲージ
127 弾性部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動力により踏力を補助して走行可能な電動アシスト自転車であって、
踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケットと、
前記電動力を出力軸から出力する電動力出力手段と、
前記電動力出力手段の出力軸にギア機構を介して連結されたアシストギアと、
前記アシストギアを前記スプロケットに同軸に連結する連結手段と、
を備える、電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記アシストギア、前記連結手段及び前記スプロケットの動力伝達経路上に介在された弾性部材を備える、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記連結手段は、前記アシストギア及び前記スプロケットを厚さ方向に貫通して取り付けたピンである、請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記スプロケット及び前記アシストギアの少なくともいずれかと前記ピンとの係合領域に設けられている、請求項3に記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
前記アシストギアは、前記スプロケットから独立にベアリングを介して回転可能に支持されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項6】
前記ギア機構は、
前記電動力出力手段の出力軸に連動する第1のギアと、
前記第1のギアと噛み合う、減速用の第2のギアと、
前記第2のギアに同軸に連結され、前記アシストギアと噛み合う第3のギアと、
を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記電動力出力手段及び前記ギア機構は、共通ベース上に固定され、
前記スプロケット及び前記アシストギアは、前記共通ベースに回転可能に取り付けられている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項8】
前記電動力出力手段と前記ギア機構の少なくとも一部とが、ハウジング内に収容され、該ハウジングは、前記共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されている、請求項7に記載の電動アシスト自転車。
【請求項9】
前記踏力の適用により回転するドライブシャフトを更に備え、
前記ドライブシャフトは、前記共通ベース上に回転可能に軸支されている、請求項7又は8に記載の電動アシスト自転車。
【請求項10】
前記ドライブシャフトは、シャフトハウジングに収容され、該シャフトハウジングは、前記共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されている、請求項9に記載の電動アシスト自転車。
【請求項11】
前記シャフトハウジングが貫通されるシャフト孔を有する、請求項10に記載の電動アシスト自転車。
【請求項12】
前記スプロケットは、前記ドライブシャフトに一方向クラッチを介して取り付けられ、前記一方向クラッチは、前記ドライブシャフトに適用された踏力の一方向の回転のみを前記スプロケットに伝達する、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項13】
前記踏力に応じて変化する前記一方向クラッチの物理量を検出する検出手段と、
少なくとも前記検出手段により検出された物理量に基づいて前記電動力を制御する制御手段と、
を備える、請求項12に記載の電動アシスト自転車。
【請求項14】
自転車車体フレームに取り付け可能な電動アシスト自転車用ユニットであって、少なくとも、
踏力を駆動輪に伝達するため回転可能なスプロケットと、
踏力を補助するための電動力を出力軸から出力する電動力出力手段と、
前記電動力出力手段の出力軸にギア機構を介して連結されたアシストギアと、
前記アシストギアを前記スプロケットに同軸に連結する連結手段と、
を共通ベース上に配列してなる、前記ユニット。
【請求項15】
前記アシストギア、前記連結手段及び前記スプロケットの動力伝達経路上に介在された弾性部材を備える、請求項14に記載のユニット。
【請求項16】
前記連結手段は、前記アシストギア及び前記スプロケットを厚さ方向に貫通して取り付けたピンである、請求項14又は15に記載のユニット。
【請求項17】
前記弾性部材は、前記スプロケット及び前記アシストギアの少なくともいずれかと前記ピンとの係合領域に設けられている、請求項16に記載のユニット。
【請求項18】
前記アシストギアは、前記スプロケットから独立にベアリングを介して回転可能に支持されている、請求項14乃至17のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項19】
前記ギア機構は、
前記電動力出力手段の出力軸に連動する第1のギアと、
前記第1のギアと噛み合う、減速用の第2のギアと、
前記第2のギアに同軸に連結され、前記アシストギアと噛み合う第3のギアと、
を備える、請求項14乃至18のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項20】
前記電動力出力手段及び前記ギア機構は、共通ベース上に固定され、
前記スプロケット及び前記アシストギアは、前記共通ベースに回転可能に取り付けられている、請求項14乃至19のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項21】
前記電動力出力手段と前記ギア機構の少なくとも一部とが、ハウジング内に収容され、該ハウジングは、前記共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されている、請求項20に記載のユニット。
【請求項22】
前記踏力の適用により回転するドライブシャフトを更に備え、
前記ドライブシャフトは、前記共通ベース上に回転可能に軸支されている、請求項20又は21に記載のユニット。
【請求項23】
前記ドライブシャフトは、シャフトハウジングに収容され、該シャフトハウジングは、前記共通ベースに連結され若しくは該共通ベースと一体に成形されている、請求項22に記載のユニット。
【請求項24】
前記シャフトハウジングが貫通されるシャフト孔を有する、請求項23に記載のユニット。
【請求項25】
前記スプロケットは、前記ドライブシャフトに一方向クラッチを介して取り付けられ、前記一方向クラッチは、前記ドライブシャフトに適用された踏力の一方向の回転のみを前記スプロケットに伝達する、請求項22乃至24のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項26】
前記踏力に応じて変化する前記一方向クラッチの物理量を検出する検出手段と、
少なくとも前記検出手段により検出された物理量に基づいて前記電動力を制御する制御手段と、
を備える、請求項25に記載のユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−91159(P2007−91159A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286502(P2005−286502)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)