説明

電動アシスト自転車

【課題】 効率を高めることができるとともに、構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができる電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】 電動アシスト自転車1は、ペダル4に入力された力を回転動力に変換し、クランク軸5に出力するペダル機構3と、駆動輪2と、ステータ23と第1ロータ22と第2ロータ24の間で、回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴って、回転磁界、第2および第1のロータ24,22が、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転するように構成された回転機20と、を備えており、第1および第2のロータ22,24が、クランク軸5および駆動輪2にそれぞれ連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシスト用の回転機を備える電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動アシスト自転車として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この電動アシスト自転車では、運転者の踏み込み力(以下「踏力」という)を回転動力に変換するペダル機構と、アシスト用の回転機がいずれも、差動装置を介して駆動輪に連結されている。具体的には、この差動装置は、歯数が互いに等しい第1サイドギヤおよび第2サイドギヤと、これらの第1および第2のサイドギヤに噛み合うピニオンギヤを回転自在に支持する回転自在のデフケースを有している。第1および第2のサイドギヤは、ペダル機構および回転機にそれぞれ連結されており、デフケースは駆動輪に連結されている。以上の構成の従来の電動アシスト自転車では、回転機によるアシスト中、ペダル機構を介して第1サイドギヤに伝達された踏力と、第2サイドギヤに伝達された回転機の動力が合成された後、デフケースを介して駆動輪に伝達される。
【0003】
上述したように、従来の電動アシスト自転車では、回転機によるアシスト中、ペダル機構からの踏力と回転機の動力が、差動装置を介して駆動輪に伝達されるため、差動装置における機械的な歯車の噛み合いやフリクションによる動力の伝達ロスによって、電動アシスト自転車の効率が低くなってしまう。また、複数の歯車や軸を組み合わせた複雑な機構を有する差動装置を用いなければならないため、電動アシスト自転車の構成が非常に複雑になることに加え、サイズや重量も大きくなってしまう。
【0004】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、効率を高めることができるとともに、構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができる電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】特開平7−300090号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る電動アシスト自転車1、1A〜1Gは、ペダル4およびクランク軸5を有し、ペダル4に入力された力を回転動力に変換し、クランク軸5に出力するペダル機構3と、駆動輪(実施形態における(以下、本項において同じ)後輪2)と、回転磁界を発生させるための不動のステータ23と、磁石で構成され、ステータ23に対向するように設けられた第1ロータ22と、軟磁性体で構成され、ステータ23と第1ロータ22の間に設けられた第2ロータ24とを有し、ステータ23と第1ロータ22と第2ロータ24の間で、回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴って、回転磁界、第2および第1のロータ24,22が、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転するように構成され、第1ロータ22がクランク軸5に連結されるとともに、第2ロータ24が駆動輪に連結された回転機20と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この電動アシスト自転車によれば、回転機では、ステータ、第1および第2のロータの間で、ステータにおける回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介して、エネルギが入出力されるとともに、このエネルギの入出力に伴い、回転磁界、第2および第1のロータは、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転する。このような回転磁界、第1および第2のロータの三者間のリニアな速度関係は、遊星歯車装置のサンギヤおよびリングギヤの一方、他方、およびプラネタリギヤを支持するキャリアの回転速度の関係に相当する。このため、エネルギの入出力の関係において、ステータはサンギヤおよびリングギヤの一方に、第1ロータは他方に、第2ロータはキャリアに、それぞれ相当する。
【0008】
上記のような動力の入出力関係にある第1および第2のロータが、ペダル機構のクランク軸および駆動輪にそれぞれ連結されている。このため、ステータに電力を供給するとともに、ペダルおよびクランク軸を介して第1ロータに力(以下、「踏力」という)を入力すると、ステータに供給された電力が動力に変換され(以下、この動力を「電力変換動力」という)、磁気回路を介して第2ロータに伝達されるのに伴い、第1ロータに入力された踏力も、磁気回路を介して第2ロータに伝達され、さらに、駆動輪に伝達される。このように、クランク軸からの踏力と、ステータからの電力変換動力を合成した状態で駆動輪に伝達できるので、回転機によって踏力をアシストすることができる。
【0009】
また、上述したように、回転機によるアシスト中、駆動輪への踏力および電力変換動力の伝達がいずれも、磁気回路を介した非接触による、いわゆる磁気パスによって行われるので、その伝達効率は、前述した従来の電動アシスト自転車のように差動装置を介して行う場合よりも高い。さらに、回転機が動力源と遊星歯車装置を組み合わせた機能を有するため、踏力および電力変換動力を合成するとともに、駆動輪に伝達するための遊星歯車装置すなわち差動装置が不要になる。以上により、差動装置を用いる前述した従来の場合と比較して、電動アシスト自転車の効率を高めることができるとともに、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができる。
【0010】
また、上述したように、ステータ、第1および第2のロータの間におけるエネルギの入出力中、回転磁界、第2および第1のロータは、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転する。このため、例えば、アシスト中、回転磁界の回転速度を制御することによって、第2ロータが連結された駆動輪の回転速度を、第1ロータが連結されたクランク軸に対して、変速装置を用いずにかつ無段階に、上昇および低下させることができる。
【0011】
さらに、上述したステータ、第1および第2のロータの間のエネルギの入出力関係から、例えば、ステータにおいて相間短絡を行うとともに、踏力を第1ロータに入力することによって、回転磁界の回転速度がほぼ値0(ステータにおいて磁界が発生しているものの、回転はほとんどしていない状態)に制御され、それにより、この踏力(動力)を、磁気回路を介して第2ロータにすべて伝達でき、さらに、駆動輪に伝達することができる。このように、ステータに電力を供給することなく、すなわち、回転機によるアシストを行うことなく、踏力のみによって駆動輪を駆動することができる。以下、踏力のみを動力源として用いた電動アシスト自転車の走行を「ペダル走行」という。また、上述したように、ペダル走行中にも、アシスト中と同様、駆動輪への踏力の伝達が、磁気回路を介した磁気パスによって行われるので、電動アシスト自転車の効率を高めることができる。さらに、ペダル走行中、回転磁界の回転速度がほぼ値0に制御されるので、回転磁界の発生に伴って第2ロータに作用する回転抵抗が極めて小さく、したがって、電動アシスト自転車の効率をさらに高めることができる。
【0012】
また、電動アシスト自転車の空走状態で、すなわち、クランク軸に踏力が入力されておらず、電動アシスト自転車が惰性で走行している状態で、第2ロータが回転しているときに、例えば、ステータに電力を供給し、それに伴って発生する回転磁界を第2ロータの回転方向に回転させるとともに、回転磁界の回転速度を制御する。これにより、クランク軸が連結された第1ロータの回転速度を値0に制御できるとともに、回転磁界による回転抵抗と、第1ロータおよびペダル機構のフリクションが、第2ロータを介して駆動輪に作用するのを防止できる。したがって、空走中、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、空走による走行距離を延ばすことができる。これにより、通常、電動アシスト自転車に設けられているクランク軸と駆動輪の間を接続・遮断するワンウェイクラッチが不要になり、それにより、電動アシスト自転車の構成のさらなる単純化、小型化および軽量化と、コストの削減を図ることができる。以下、上述した回転磁界による回転抵抗および第1ロータなどのフリクションが第2ロータに作用するのを防止するための回転機の制御を「ゼロトルク制御」という。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電動アシスト自転車1A、1Bにおいて、第2ロータ24と駆動輪の間を接続・遮断するクラッチ(第1ワンウェイクラッチC1)をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2ロータと駆動輪の間が、クラッチによって接続・遮断される。このため、例えば、電動アシスト自転車の空走中、クラッチにより、第2ロータと駆動輪の間を遮断することによって、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、ペダル機構のフリクションや、ステータで発生する回転磁界による回転抵抗、第1ロータのフリクションが駆動輪に作用するのを完全に防止できるので、空走による走行距離を延ばすことができる。また、この場合、請求項1の作用で述べたゼロトルク制御が不要になり、それにより、例えば、ステータに蓄電装置の電力を供給することによってアシストを行う場合には、ゼロトルク制御が不要になる分、この蓄電装置の電力を確保でき、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電動アシスト自転車1A、1Bにおいて、クラッチは、駆動輪側(出力部C1b)の回転速度が第2ロータ24側(入力部C1a)の回転速度よりも高いときに、第2ロータ24と駆動輪の間を遮断するワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチC1)であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ワンウェイクラッチによって、第2ロータと駆動輪の間が、ワンウェイクラッチの駆動輪側の回転速度が第2ロータ側の回転速度よりも高いときには遮断され、それ以外のときには接続される。空走中、踏力がクランク軸に入力されないことと、回転磁界による回転抵抗や第1ロータのフリクションが第2ロータに作用することによって、第2ロータの回転速度が低下し、それに伴い、ワンウェイクラッチの駆動輪側の回転速度が、第2ロータ側の回転速度よりも高くなるので、上述したワンウェイクラッチによって、第2ロータと駆動輪の間が遮断される。このように、請求項2の電動アシスト自転車と同様、空走中、第2ロータと駆動輪の間を遮断できるので、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、空走による走行距離を延ばすことができる。
【0017】
また、ペダル走行中およびアシスト中、請求項1の作用で述べたように、駆動輪は、第2ロータから動力が伝達されることによって初めて駆動されるので、ワンウェイクラッチの駆動輪側の回転速度は、第2ロータ側の回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中およびアシスト中、ワンウェイクラッチによって、第2ロータと駆動輪の間が接続状態に保持されるので、ペダル走行中には踏力を、アシスト中には踏力およびステータからの電力変換動力の双方を、駆動輪に伝達することができる。
【0018】
さらに、ワンウェイクラッチは、油圧式などのクラッチと異なり、その作動を制御するためのアクチェータなどを必要としないので、油圧式などのクラッチを用いた場合と比較して、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができるとともに、電動アシスト自転車のコストを削減することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の電動アシスト自転車1B,1Eにおいて、クランク軸5および第1ロータ22を含む第1動力伝達系と、第2ロータ24および駆動輪を含む第2動力伝達系との間を接続・遮断するクラッチ(第2ワンウェイクラッチC2、第4ワンウェイクラッチC4)をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、クランク軸および第1ロータを含む第1動力伝達系と、第2ロータおよび駆動輪を含む第2動力伝達系の間が、クラッチによって接続・遮断される。このため、例えば、ステータの故障によって、ステータ、第1および第2のロータの間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、第1動力伝達系と第2動力伝達系の間すなわちクランク軸と駆動輪の間をクラッチにより接続することによって、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。また、第1動力伝達系と第2動力伝達系の間をクラッチにより接続することによって、請求項1の作用で述べたステータの相間短絡を行うことなく、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の電動アシスト自転車1B,1Eにおいて、クラッチは、第2ロータ24の回転速度(第2ロータ回転速度VR2)が第1ロータ22の回転速度(第1ロータ回転速度VR1)よりも高いときに、第1ロータ22と第2ロータ24の間を遮断するワンウェイクラッチ(第2ワンウェイクラッチC2、第4ワンウェイクラッチC4)であることを特徴とする。
【0022】
ペダル走行中、請求項1の作用で述べたように、駆動輪に連結された第2ロータは、クランク軸が連結された第1ロータから踏力が伝達されることによって初めて駆動される。このため、ペダル走行中、第2ロータの回転速度は、第1ロータの回転速度よりも高くはならない。上記の構成によれば、駆動輪が連結された第2ロータの回転速度がクランク軸が連結された第1ロータの回転速度よりも高くならない限り、ワンウェイクラッチによって、第1ロータと第2ロータの間が接続状態に保持されるので、ペダル走行中、クランク軸に入力された踏力を、第1ロータ、ワンウェイクラッチおよび第2ロータを介して、駆動輪に伝達することができる。したがって、請求項4の電動アシスト自転車と同様、ステータの故障により磁気回路が形成されなくなった場合でも、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。また、請求項1の作用で述べたステータの相間短絡を行うことなく、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0023】
さらに、この場合、ワンウェイクラッチによって、第2ロータの回転速度が第1ロータの回転速度よりも高くなったときに、第1ロータと第2ロータの間が遮断される。したがって、請求項1の作用で述べたように、アシスト中、回転磁界の回転速度の制御によって、第2ロータが連結された駆動輪の回転速度を、第1ロータが連結されたクランク軸に対して、変速装置を用いずに無段階に上昇させる場合に、そのような駆動輪の増速を支障なく行うことができる。
【0024】
また、クラッチとしてワンウェイクラッチを用いるので、請求項3の電動アシスト自転車と同様、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図れるとともに、電動アシスト自転車のコストを削減することができる。
【0025】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の電動アシスト自転車1D、1Eにおいて、クランク軸5と第1ロータ22の間を接続・遮断する第1クラッチ(第3ワンウェイクラッチC3)をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、クランク軸と第1ロータの間が、クラッチによって接続・遮断される。このため、空走中、クラッチにより、クランク軸と第1ロータの間を遮断することによって、クランク軸と、第1ロータに磁気回路を介して連結された第2ロータおよび駆動輪との間を遮断でき、したがって、クランク軸を停止状態に保持できる。また、例えば、回転機において、請求項1の作用で述べた電力変換動力と第1ロータに入力された動力との合成比が1:1のときには、空走中、前述したゼロトルク制御において、回転磁界の回転速度を第2ロータの回転速度と同じに制御することによって、回転磁界による回転抵抗および第1ロータのフリクションが駆動輪に作用するのを防止できる。一方、空走中、請求項1の作用で述べたように、クランク軸および第1ロータを互いに接続した状態でゼロトルク制御を行う場合において、クランク軸を停止状態に保持するには、回転磁界の回転速度を第1ロータの回転速度が値0になるように制御しなければならず、その結果、回転磁界の回転速度は、駆動輪が連結された第2ロータの回転速度よりも高くなるので、ゼロトルク制御用にステータに供給される電力は大きくなる。
【0027】
上記の構成によれば、ゼロトルク制御中、クラッチによりクランク軸と第1ロータの間を遮断することによって、回転磁界の回転速度を第2ロータの回転速度と同じに制御することが可能になり、それにより、回転磁界による回転抵抗および第1ロータのフリクションが駆動輪に作用するのを防止できるとともに、上述したようにクランク軸と第1ロータを接続状態に保持する場合と比較して、ゼロトルク制御用の電力を低減することができる。また、このゼロトルク制御用の電力の低減によって、例えば、ステータに蓄電装置の電力を供給することによってアシストを行う場合には、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0028】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の電動アシスト自転車1D、1Eにおいて、第1クラッチは、第1ロータ22側(出力部C3b)の回転速度がクランク軸5側(入力部C3a)の回転速度よりも高いときに、クランク軸5と第1ロータ22の間を遮断する第1ワンウェイクラッチ(第3ワンウェイクラッチC3)であることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高いときには遮断され、それ以外のときには接続される。空走中、第1ロータが慣性によって回転している状態で、クランク軸を停止状態に保持すれば、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高くなるので、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が遮断される。したがって、請求項6の電動アシスト自転車と同様、空走中、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、ゼロトルク制御用の電力を低減することができる。
【0030】
また、ペダル走行中およびアシスト中、請求項1の作用で述べたように、第1ロータは、クランク軸から動力が伝達されることによって初めて駆動されるので、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度は、クランク軸側の回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中およびアシスト中、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が接続状態に保持されるので、ペダル走行中およびアシスト中、踏力を駆動輪に伝達することができる。
【0031】
さらに、第1クラッチとして第1ワンウェイクラッチを用いるので、請求項3の電動アシスト自転車と同様、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図れるとともに、電動アシスト自転車のコストを削減することができる。
【0032】
請求項8に係る発明は、請求項6または7に記載の電動アシスト自転車1Eにおいて、第1ロータ22と、第2ロータ24および駆動輪を含む動力伝達系との間を接続・遮断する第2クラッチ(第4ワンウェイクラッチC4)と、充電および放電可能に構成され、ステータ23に接続された蓄電装置(バッテリ33)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0033】
請求項1の作用で述べたように、回転機では、エネルギの入出力の関係において、ステータはサンギヤおよびリングギヤの一方に、第1ロータは他方に、第2ロータはキャリアに、それぞれ相当する。したがって、第2ロータに動力を入力するとともに、ステータにおいて発電を行うと、第2ロータに入力された動力(エネルギ)は、磁気回路を介して、ステータと第1ロータに分配される。このため、第2ロータの動力をステータに電力として伝達するには、第1ロータが第2ロータの回転方向に回転するのを妨げる負荷トルクを第1ロータに作用させる必要がある。
【0034】
上述した構成によれば、第2クラッチによって、第1ロータと、第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系との間が、接続・遮断されるとともに、充電・放電可能に構成された蓄電装置がステータに接続されている。このため、例えば、空走中、駆動輪の動力を用いて、回転機において発電し、発電した電力を蓄電装置に充電することができる。具体的には、空走中、第2クラッチにより、第1ロータと、第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系との間を接続することによって、両ロータが一体となって駆動輪とともに回転するので、上述した負荷トルクを第1ロータに作用させる必要がなく、駆動輪から第2および第1のロータに伝達された動力を、ステータに電力として適切に伝達することができる。このように、空走中、駆動輪の動力を用いて、ステータにおいて発電することができ、ひいては、発電した電力を蓄電装置に充電できるとともに、充電した電力をアシストに用いることによって、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0035】
また、前述した第1クラッチを備える場合には、空走中における発電時、第1クラッチにより、クランク軸と第1ロータの間を遮断することによって、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、ペダル機構によるフリクションが第1ロータを介して第2ロータに作用するのを防止でき、したがって、より大きな電力を蓄電装置に充電することができる。
【0036】
さらに、前述した第1ワンウェイクラッチを備える場合にも、空走中、請求項7の作用で述べたように、クランク軸と第1ロータの間が遮断されるので、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、ペダル機構によるフリクションが第1ロータを介して第2ロータに作用するのを防止でき、したがって、より大きな電力を蓄電装置に充電することができる。
【0037】
また、例えば、ステータの故障によって、ステータ、第1および第2のロータの間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、第1ロータと動力伝達系の間すなわちクランク軸と駆動輪の間を第2クラッチにより接続することによって、請求項4の電動アシスト自転車と同様、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。さらに、第1ロータと動力伝達系の間を第2クラッチにより接続することによって、請求項1の作用で述べたステータの相間短絡を行うことなく、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0038】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の電動アシスト自転車1Eにおいて、第2クラッチは、第2ロータ24の回転速度(第2ロータ回転速度VR2)が第1ロータ22の回転速度(第1ロータ回転速度VR1)よりも高いときに、第1ロータ22と第2ロータ24の間を遮断する第2ワンウェイクラッチ(第4ワンウェイクラッチC4)であることを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、第2ワンウェイクラッチによって、第1ロータと第2ロータの間が、第2ロータの回転速度が第1ロータよりも高いときに遮断され、それ以外のときに接続される。前述したステータ、第1および第2のロータの間のエネルギの入出力関係から、請求項8の作用で述べた空走中における発電の実行に伴い、第1ロータを第2ロータの回転方向に回転させるトルクが第1ロータに作用し、その結果、第1ロータの回転速度が上昇するようになる。この場合、上昇した第1ロータの回転速度が第2ロータの回転速度と等しくなると、その後、発電に伴って第2ロータの回転方向に回転させるトルクが第1ロータに作用している限り、第1ロータと第2ロータの間が第2ワンウェイクラッチによって接続され、両ロータが一体になる。したがって、請求項8の電動アシスト自転車と同様、空走中、駆動輪の動力を用いて、ステータにおいて発電することができ、ひいては、発電した電力を蓄電装置に充電できるとともに、充電した電力をアシストに用いることによって、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0040】
また、ペダル走行中、請求項5の作用で述べたように、第2ロータは第1ロータから踏力が伝達されることによって初めて駆動されることから、第2ロータの回転速度は、第1ロータの回転速度よりも高くはならないので、第2ワンウェイクラッチによって、第1ロータと第2ロータの間は接続状態に保持される。したがって、請求項8の電動アシスト自転車と同様、例えば、ステータの故障によって、ステータ、第1および第2のロータの間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、クランク軸に入力された踏力を、第1ロータ、第2ワンウェイクラッチおよび第2ロータを介して、駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。同じ理由により、請求項1の作用で述べたステータの相間短絡を行うことなく、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0041】
さらに、アシスト中、請求項1の作用で述べたように、回転磁界の回転速度の制御によって、第2ロータが連結された駆動輪の回転速度を、第1ロータが連結されたクランク軸に対して、変速装置を用いずに無段階に上昇させる場合に、第2ワンウェイクラッチによって、第1ロータと第2ロータの間が遮断されるので、そのような駆動輪の増速を支障なく行うことができる。
【0042】
また、第2クラッチとして、第2ワンウェイクラッチを用いるので、請求項3の電動アシスト自転車と同様、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図れるとともに、電動アシスト自転車のコストを削減することができる。
【0043】
請求項10に係る発明は、請求項1に記載の電動アシスト自転車1F,1Gにおいて、第1ロータ22側(出力部C3b)の回転速度がクランク軸5側(入力部C3a)の回転速度よりも高いときに、クランク軸5と第1ロータ22の間を遮断する第1ワンウェイクラッチ(第3ワンウェイクラッチC3)と、クランク軸5と、第2ロータ24および駆動輪を含む動力伝達系との間に設けられ、動力伝達系側(出力部C4b)の回転速度が、クランク軸5側(入力部C4a)の回転速度よりも高いときに、クランク軸と動力伝達系の間を遮断する第2ワンウェイクラッチ(第4ワンウェイクラッチC4)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高いときには遮断され、それ以外のときには接続される。また、第2ワンウェイクラッチによって、クランク軸と、第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系との間が、第2ワンウェイクラッチの動力伝達系側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高いときには遮断され、それ以外のときには接続される。
【0045】
ペダル走行中、第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系は、踏力が入力されることによって初めて駆動されるので、第2ワンウェイクラッチの動力伝達系側の回転速度は、クランク軸側の回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中、第2ワンウェイクラッチによって、クランク軸と駆動輪を含む動力伝達系との間が接続状態に保持されるので、クランク軸に入力された踏力を、第2ワンウェイクラッチおよび第2ロータを介して、駆動輪に伝達することができる。したがって、請求項4の電動アシスト自転車と同様、ステータの故障により磁気回路が形成されなくなった場合でも、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。また、請求項1の作用で述べたステータの相間短絡を行うことなく、クランク軸に入力された踏力を駆動輪に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0046】
さらに、ペダル走行中、前述したステータ、第1および第2のロータの間のエネルギの入出力関係から、第2ロータが駆動輪とともに回転するのに伴って発生した回転磁界による回転抵抗は、第1ロータを第2ロータの回転方向に回転させるように第1ロータに作用するとともに、第2ロータおよび駆動輪に負荷として作用する。さらに、第2ロータには、第1ロータのフリクションが負荷として作用する。これらの回転磁界による回転抵抗と第1ロータのフリクションは、前述した所定の共線関係に基づく所定の合成比で合成された後、第2ロータに伝達される。また、第1ロータのフリクションに対する回転磁界による回転抵抗の比が上記の所定の合成比よりも大きい場合において、第1および第2のロータを接続状態に保持すると、そのように大きな回転磁界による回転抵抗がすべて第2ロータに作用し、その結果、ペダル走行中における電動アシスト自転車の効率が低下する。
【0047】
上記の構成によれば、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高いときに遮断される。上述したように、回転磁界による回転抵抗は、第1ロータを第2ロータの回転方向に回転させるように第1ロータに作用するので、それに伴って、第1ロータの回転速度は、クランク軸に連結された第2ロータの回転速度よりも高くなる。その結果、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高くなることによって、クランク軸と第1ロータの間が遮断され、それに伴って、クランク軸に連結された第2ロータと第1ロータの間も遮断される。これにより、上述したように第1および第2のロータを接続状態に保持した場合と異なり、回転磁界による回転抵抗の一部のみを、第1および第2のロータに作用させ、回転磁界による回転抵抗が第2ロータにすべて作用することがないので、ペダル走行中における電動アシスト自転車の効率を高めることができる。
【0048】
また、アシスト中、前述したステータ、第1および第2のロータの間のエネルギの入出力関係から、ステータからのトルクは、第1ロータを第2ロータの回転方向とは逆方向に回転させるように、第1ロータに作用する。これにより、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高くなることはなく、その結果、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が接続状態に保持されるので、第1ロータに踏力が入力される。したがって、請求項1の電動アシスト自転車と同様、クランク軸からの踏力と、ステータからの電力変換動力を合成した状態で駆動輪に伝達できるので、回転機によって踏力をアシストすることができる。この場合にも、請求項1の電動アシスト自転車と同様、電動アシスト自転車の効率を高めることができるとともに、電動アシスト自転車の構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができる。
【0049】
さらに、アシスト中、請求項1の作用で述べたように、回転磁界の回転速度の制御によって、駆動輪の回転速度をクランク軸に対して、変速装置を用いずに無段階に上昇させる場合に、第2ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系との間が遮断されるので、そのような駆動輪の増速を支障なく行うことができる。
【0050】
また、空走中、第1ロータが慣性により回転している状態で、クランク軸を停止状態に保持すれば、第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高くなるので、第1ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第1ロータの間が遮断される。また、第2ワンウェイクラッチの動力伝達系側の回転速度がクランク軸側の回転速度よりも高くなるので、第2ワンウェイクラッチによって、クランク軸と第2ロータおよび駆動輪を含む動力伝達系との間が遮断される。このように、空走中、クランク軸と駆動輪の間が遮断されるので、クランク軸を停止状態に保持できるとともに、クランク軸と第1ロータの間が遮断されるので、請求項6の電動アシスト自転車と同様、クランク軸と第1ロータを接続状態に保持する場合と比較して、ゼロトルク制御用の電力を低減することができる。
【0051】
請求項11に係る発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の電動アシスト自転車1A〜1Gにおいて、第2ロータ24は、動力を増速して伝達する増速機構6を用いることなく、駆動輪に連結されていることを特徴とする。
【0052】
第2ロータを、増速機構を介して駆動輪に連結した場合には、この増速機構による増速によって、第2ロータから駆動輪に伝達されるトルクが小さくなり、その分、クランク軸から第1および第2のロータに伝達されるトルクが大きくなるので、回転機に必要とされるトルクは大きくなる。これに対し、上述した構成によれば、第2ロータが、増速機構を用いることなく、駆動輪に連結されているので、この連結を増速機構を用いて行った場合と比較して、クランク軸から第1および第2のロータに伝達されるトルクが小さくなり、回転機に必要とされるトルクが小さくなることによって、回転機の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による電動アシスト自転車1を概略的に示している。この電動アシスト自転車1は、二輪式のものであり、図1に示すように、後輪2(駆動輪)、ペダル機構3、増速機構6、変速装置10、および回転機20を備えている。なお、図1は、主として本発明の特徴部分を示しており、電動アシスト自転車1が、前輪、ハンドル、サドルおよびブレーキと、これらの前輪などが設けられたフレーム(いずれも図示せず)をさらに備えることは、もちろんである。これらの要素は、従来のものと同様であり、その詳細な説明については省略する。
【0054】
後輪2は、フレームの後端部に、車軸1aや軸受け(図示せず)を介して取り付けられており、それにより、水平方向に延びる軸線を中心として回転自在である。
【0055】
ペダル機構3は、運転者の足の踏み込み力(以下「踏力」という)を回転動力に変換するものであり、ペダル4およびクランク軸5を有している。クランク軸5は、水平方向に延びる軸状のクランクジャーナル5aと、このクランクジャーナル5aの両端部に固定され、クランクジャーナル5aに直交するクランクアーム5b,5bによって構成されている。クランクジャーナル5aは、フレームの中央の下端部に取り付けられた軸受け(図示せず)に支持されており、それにより、クランク軸5は、水平方向に延びる軸線を中心として回転自在である。各クランクアーム5bには、クランクジャーナル5aと逆側の端部に、ペダル4が取り付けられている。ペダル4は、クランクアーム5bに直交しており、クランクアーム5bに対して、水平方向に延びる軸線を中心として回転自在である。以上の構成により、ペダル機構3では、ペダル4に運転者の踏力が入力されると、この踏力は、クランク軸5に伝達されるとともに、回転動力に変換された状態で、クランクジャーナル5aに出力される。
【0056】
回転機20は、運転者の踏力をアシストするためのものであり、フレームの中央の下端部に、ペダル機構3と一体に設けられている。図1および図2に示すように、回転機20は、フレームと一体のケースCAと、このケースCAに回転自在に支持された回転軸21と、第1ロータ22と、第1ロータ22に対向するように配置されたステータ23と、両者22,23の間に所定の間隔を存した状態で設けられ、回転軸21に連結された第2ロータ24とを備えている。第1ロータ22、第2ロータ24およびステータ23は、径方向に、内側からこの順で並んでいる。以下、図2の左側を「左」、右側を「右」として説明する。
【0057】
第1ロータ22は、2n個の永久磁石22aを有しており、これらの永久磁石22aは、上述したペダル機構3のクランクジャーナル5aの周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んだ状態で、リング状の固定部22bの外周面に取り付けられている。また、各永久磁石22aは、クランクジャーナル5aの軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に直交する断面がほぼ扇形状になっており、軸線方向に若干延びている。上記の固定部22bは、軟磁性体、例えば鉄で構成されており、その内周面が、円板状のフランジ22cの外周面に取り付けられている。このフランジ22cは、クランクジャーナル5aに一体に同心状に設けられている。以上の構成により、永久磁石22aは、クランクジャーナル5aと一体に回転自在であり、換言すれば、第1ロータ22は、クランク軸5と一体に回転自在である。
【0058】
また、図3に示すように、クランクジャーナル5aを中心として、周方向に隣り合う各2つの永久磁石22aがなす中心角は、所定角度θである。また、永久磁石22aの極性は、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。以下、永久磁石22aの左側および右側の磁極をそれぞれ、「第1磁極」および「第2磁極」という。
【0059】
ステータ23は、回転磁界を発生させるものであり、周方向に等間隔で並んだ3n個の電機子23aを有している。各電機子23aは、鉄芯23bと、鉄芯23bに巻回されたコイル23cなどで構成されている。鉄芯23bは、軸線方向に直交する断面がほぼ扇形状になっており、軸線方向に永久磁石22aとほぼ同じ長さを有している。鉄芯23bの内周面の軸線方向の中央部には、周方向に延びる溝23dが形成されている。3n個のコイル23cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している(図3参照)。また、電機子23aは、ケースCAに、リング状の固定部23eを介して取り付けられており、移動不能になっている。以上のような電機子23aおよび永久磁石22aの数と配置から、ある1つの電機子23aの中心が、永久磁石22aの中心と周方向に一致したときには、その電機子23aに対して2つおきの電機子23aの中心と、その永久磁石22aに対して1つおきの永久磁石22aの中心とが、周方向に一致する。
【0060】
さらに、電機子23aは、パワードライブユニット(以下「PDU」という)32を介してECU31とバッテリ33に接続されている。このECU31は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、このPDU32は、インバータなどの電気回路で構成されている。このバッテリ33は、充電および放電可能に構成されている。また、電機子23aは、バッテリ33から電力が供給されたとき、または、後述するように発電したときに、鉄芯23bの左右の端部に、互いに異なる極性の磁極がそれぞれ発生するように構成されている。さらに、これらの磁極の発生に伴って、第1ロータ22の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間に、第1および第2の回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯23bの左右の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1電機子磁極」および「第2電機子磁極」という。また、これらの第1および第2の電機子磁極の数はそれぞれ、永久磁石22aの磁極の数と同じ、すなわち2nである。
【0061】
第2ロータ24は、複数の第1コア24aおよび第2コア24bを有している。第1および第2のコア24a,24bはそれぞれ、周方向に等間隔で並んでおり、両者24a,24bの数はいずれも、永久磁石22aと同じ、すなわち2nに設定されている。各第1コア24aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に直交する断面がほぼ扇形状になっており、軸線方向に永久磁石22aのほぼ半分の長さで延びている。各第2コア24bは、第1コア24aと同様、複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に直交する断面がほぼ扇形状になっており、軸線方向に永久磁石22aのほぼ半分の長さで延びている。
【0062】
また、軸線方向において、第1コア24aは、第1ロータ22の左側(第1磁極側)の部分とステータ23の左側(第1電機子磁極側)の部分との間に配置され、第2コア24bは、第1ロータ22の右側(第2磁極側)の部分とステータ23の右側(第2電機子磁極側)の部分との間に配置されている。さらに、第2コア24bは、第1コア24aに対して周方向に互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア24aの中心に対して、前述した所定角度θの1/2、ずれている。
【0063】
また、第1および第2のコア24a,24bは、ドーナツ板状のフランジ24cの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部24d,24eをそれぞれ介して取り付けられている。フランジ24cは、前述した回転軸21に一体に同心状に設けられている。この構成により、第1および第2のコア24a,24bは、回転軸21と一体に回転自在である。また、回転軸21は、中空に形成されており、その内側には、クランクジャーナル5aが同心状に回転自在に嵌合している。
【0064】
以上の構成の回転機20では、図3に示すように、第1および第2の回転磁界の発生中、各第1電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と異なるときには、各第2電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と同じになる。また、各第1磁極と各第1電機子磁極の間に、各第1コア24aが位置しているときには、各第2コア24bが、周方向に隣り合う各2組の第2電機子磁極および第2磁極の間に位置する。さらに、図示しないが、第1および第2の回転磁界の発生中、各第2電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と異なるときには、各第1電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と同じになる。また、各第2磁極と各第2電機子磁極の間に、各第2コア24bが位置しているときには、各第1コア24aが、周方向に隣り合う各2組の第1電機子磁極および第1磁極の間に位置する。
【0065】
また、回転機20は、2部材で回転動力を入出力するとともに、1部材で電力を入出力する遊星歯車装置とみなすことができる。以下、この点に関し、回転機20の動作に基づいて説明する。上述した図3では、展開図として示したために、電機子23aおよび固定部23eが2つに分かれているように示されているものの、これらは実際には1つのものであるので、図3の構成を、それと等価のものとして図4のように示すことができる。このため、以下、回転機20の動作を、永久磁石22a、電機子23a、第1および第2のコア24a,24bが、図4に示すように配置されているものとして説明する。
【0066】
また、この動作説明を、説明の便宜上、第1および第2の回転磁界の動きを、それと等価の、永久磁石22aと同数の2n個の仮想の永久磁石(以下「仮想磁石」という)VMの物理的な動きに置き換えて説明するものとする。また、仮想磁石VMの左側(第1磁極側)および右側(第2磁極側)の磁極をそれぞれ、第1および第2の電機子磁極として、第1ロータ22の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間にそれぞれ発生する回転磁界を、第1および第2の回転磁界として、説明するものとする。さらに、以下、永久磁石22aの左側の部分および右側の部分をそれぞれ、「第1磁石部」および「第2磁石部」という。
【0067】
まず、回転機20の動作として、第1ロータ22を回転不能にした状態で、電機子23aへの電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
【0068】
図5(a)に示すように、各第1コア24aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア24bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を、同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
【0069】
第1コア24aは、前述したように配置されているので、第1磁極および第1電機子磁極によって磁化されるとともに、第1磁極、第1コア24aおよび第1電機子磁極の間に、磁力線(以下「第1磁力線」という)G1が発生する。同様に、第2コア24bは、前述したように配置されているので、第2電機子磁極および第2磁極によって磁化されるとともに、第2電機子磁極、第2コア24bおよび第2磁極の間に、磁力線(以下「第2磁力線」という)G2が発生する。
【0070】
図5(a)に示す状態では、第1磁力線G1は、第1磁極、第1コア24aおよび第1電機子磁極を結ぶように発生し、第2磁力線G2は、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極と両者の間に位置する第2コア24bを結ぶように、また、周方向に隣り合う各2つの第2磁極と両者の間に位置する第2コア24bを結ぶように発生する。その結果、この状態では、図7(a)に示すような磁気回路が構成される。この状態では、第1磁力線G1が直線状であることにより、第1コア24aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。また、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極と第2コア24bの間の2つの第2磁力線G2の曲がり度合いおよび総磁束量が互いに等しく、同様に、周方向に隣り合う各2つの第2磁極と第2コア24bの間の2つの第2磁力線G2の曲がり度合いおよび総磁束量も、互いに等しく、バランスしている。このため、第2コア24bにも、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
【0071】
そして、仮想磁石VMが図5(a)に示す位置から図5(b)に示す位置に回転すると、第2電機子磁極、第2コア24bおよび第2磁極を結ぶような第2磁力線G2が発生するとともに、第1コア24aと第1電機子磁極の間の第1磁力線G1が、曲がった状態になる。また、これに伴い、第1および第2の磁力線G1,G2によって、図7(b)に示すような磁気回路が構成される。
【0072】
この状態では、第1磁力線G1の曲がり度合いは小さいものの、その総磁束量が多いため、比較的強い磁力が第1コア24aに作用する。これにより、第1コア24aは、仮想磁石VMの回転方向、すなわち第1および第2の回転磁界の回転方向(以下、「磁界回転方向」という)に、比較的大きな駆動力で駆動され、その結果、第2ロータ24が磁界回転方向に回転する。また、第2磁力線G2の曲がり度合いは大きいものの、その総磁束量が少ないため、比較的弱い磁力が第2コア24bに作用し、それにより、第2コア24bは、磁界回転方向に比較的小さな駆動力で駆動され、その結果、第2ロータ24が磁界回転方向に回転する。
【0073】
次いで、仮想磁石VMが、図5(b)に示す位置から、図5(c),(d)および図6(a),(b)に示す位置に順に回転すると、第1および第2のコア24a,24bはそれぞれ、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力によって磁界回転方向に駆動され、その結果、第2ロータ24が磁界回転方向に回転する。その間、第1コア24aに作用する磁力は、第1磁力線G1の曲がり度合いが大きくなるものの、その総磁束量が少なくなることによって、徐々に弱くなり、第1コア24aを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に小さくなる。また、第2コア24bに作用する磁力は、第2磁力線G2の曲がり度合いが小さくなるものの、その総磁束量が多くなることによって、徐々に強くなり、第2コア24bを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に大きくなる。
【0074】
そして、仮想磁石VMが図6(b)に示す位置から図6(c)に示す位置に回転する間、第2磁力線G2が曲がった状態になるとともに、その総磁束量が最多に近い状態になり、その結果、最強の磁力が第2コア24bに作用し、第2コア24bに作用する駆動力が最大になる。その後、図6(c)に示すように、仮想磁石VMが第1および第2の磁石部に対向する位置に移動すると、互いに対向する第1電機子磁極および第1磁極が互いに同一極性になり、第1コア24aが、周方向に隣り合う2組の同一極性の第1電機子磁極および第1磁極の間に位置するようになる。この状態では、第1磁力線G1の曲がり度合いが大きいものの、その総磁束量が少ないことによって、第1コア24aには、磁界回転方向に回転させるような磁力が作用しない。また、互いに対向する第2電機子磁極および第2磁極が互いに異なる極性になる。
【0075】
この状態から、仮想磁石VMがさらに回転すると、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力によって、第1および第2のコア24a,24bが磁界回転方向に駆動され、第2ロータ24が磁界回転方向に回転する。その際、仮想磁石VMが図5(a)に示す位置まで回転する間、以上とは逆に、第1コア24aに作用する磁力は、第1磁力線G1の曲がり度合が小さくなるものの、その総磁束量が多くなることによって強くなり、第1コア24aに作用する駆動力が大きくなる。逆に、第2コア24bに作用する磁力は、第2磁力線G2の曲がり度合が大きくなるものの、その総磁束量が少なくなることによって弱くなり、第2コア24bに作用する駆動力が小さくなる。
【0076】
以上のように、仮想磁石VMの回転、すなわち第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1および第2のコア24a,24bにそれぞれ作用する駆動力が、交互に大きくなったり、小さくなったりする状態を繰り返しながら、第2ロータ24が磁界回転方向に回転する。この場合、第1および第2のコア24a,24bを介して伝達されるトルクをT24a,T24bとすると、第2ロータ24に伝達されるトルク(以下「第2ロータ伝達トルク」という)TR2と、これら2つのトルクT24a,T24bとの関係は、概ね図8に示すものになる。同図に示すように、2つのトルクT24a,T24bは、同じ周期でほぼ正弦波状に変化するとともに、位相が半周期分、互いにずれている。また、第2ロータ24には第1および第2のコア24a,24bが連結されているため、第2ロータ伝達トルクTR2は、上記のように変化する2つのトルクT24a,T24bを足し合わせたものとなり、ほぼ一定になる。
【0077】
また、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力の作用によって、第1コア24aが、第1磁力線G1で結ばれた第1磁極と第1電機子磁極の中間に位置し、かつ、第2コア24bが、第2磁力線G2で結ばれた第2磁極と第2電機子磁極の中間に位置した状態を保ちながら、第2ロータ24が回転する。このため、第1および第2の回転磁界の回転速度(以下「磁界回転速度」という)V0と、第1ロータ22の回転速度(以下「第1ロータ回転速度」という)VR1と、第2ロータ24の回転速度(以下「第2ロータ回転速度」という)VR2との間には一般に、次式(1)が成立する。
VR2=(V0+VR1)/2 ……(1)
また、この式(1)を変形すると、次式(2)が得られる。
V0−VR2=VR2−VR1 ……(2)
これらの式(1)および(2)から明らかなように、第2ロータ回転速度VR2は、磁界回転速度V0と第1ロータ回転速度VR1との平均速度に等しく、換言すれば、磁界回転速度V0と第2ロータ回転速度VR2との差は、第2ロータ回転速度VR2と第1ロータ回転速度VR1との差に等しい。このように、磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2は、共線関係にある。
【0078】
したがって、上述した第1ロータ回転速度VR1が値0のときには、VR2=V0/2が成立し、このときの磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2の関係は、例えば、図9(a)のように示される。
【0079】
また、この場合、第2ロータ回転速度VR2が、磁界回転速度V0の1/2に減速されるので、第2ロータ伝達トルクTR2は、ステータ23への供給電力および磁界回転速度V0と等価のトルクを駆動用等価トルクTSEとすると、この駆動用等価トルクTSEの2倍になる。すなわち、次式(3)が成立する。
TR2=TSE・2 ……(3)
以上のように、第1ロータ22を回転不能にした状態でステータ23に電力を供給した場合には、この電力はすべて、第2ロータ24に動力として伝達される。
【0080】
次に、第2ロータ24を回転不能にした状態で、電機子23aへの電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
【0081】
この場合にも、図11(a)に示すように、各第1コア24aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア24bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。この状態では、前述した図7(a)に示すような磁気回路が構成される。
【0082】
そして、仮想磁石VMが、図11(a)に示す位置から図11(b)に示す位置に回転すると、第1コア24aと第1電機子磁極の間の第1磁力線G1が曲がった状態になるのに伴い、第2電機子磁極が第2コア24bに近づくことによって、第2電機子磁極、第2コア24bおよび第2磁極を結ぶような第2磁力線G2が発生する。その結果、前述した図7(b)に示すような磁気回路が構成される。
【0083】
この状態では、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1の総磁束量は多いものの、この第1磁力線G1がまっすぐであるため、第1コア24aに対して第1磁石部を回転させるような磁力が発生しない。また、第2磁極およびこれと異なる極性の第2電機子磁極の間の距離が比較的長いことにより、第2コア24bと第2磁極の間の第2磁力線G2の総磁束量は比較的少ないものの、その曲がり度合いが大きいことによって、第2磁石部に、これを第2コア24bに近づけるような磁力が作用する。これにより、永久磁石22aは、仮想磁石VMの回転方向、すなわち磁界回転方向と逆方向(図11の上方)に駆動され、図11(c)に示す位置に向かって回転する。これに伴い、第1ロータ22が磁界回転方向と逆方向に回転する。
【0084】
そして、永久磁石22aが図11(b)に示す位置から図11(c)に示す位置に向かって回転する間、仮想磁石VMは、図11(d)に示す位置に向かって回転する。以上のように、第2磁石部が第2コア24bに近づくことにより、第2コア24bと第2磁極の間の第2磁力線G2の曲がり度合いは小さくなるものの、仮想磁石VMが第2コア24bにさらに近づくのに伴い、第2磁力線G2の総磁束量は多くなる。その結果、この場合にも、第2磁石部に、これを第2コア24b側に近づけるような磁力が作用し、それにより、永久磁石22aが、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
【0085】
また、永久磁石22aが磁界回転方向と逆方向に回転するのに伴い、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1が曲がることによって、第1磁石部に、これを第1コア24aに近づけるような磁力が作用する。しかし、この状態では、第1磁力線G1による磁力は、第1磁力線G1の曲がり度合いが第2磁力線G2よりも小さいことによって、上述した第2磁力線G2による磁力よりも弱い。その結果、両磁力の差分に相当する磁力によって、永久磁石22aが、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
【0086】
そして、図11(d)に示すように、第1磁極と第1コア24aの間の距離と、第2コア24bと第2磁極の間の距離が互いにほぼ等しくなったときには、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1の総磁束量および曲がり度合いが、第2コア24bと第2磁極の間の第2磁力線G2の総磁束量および曲がり度合いとそれぞれほぼ等しくなる。その結果、これらの第1および第2の磁力線G1,G2による磁力が互いにほぼ釣り合うことによって、永久磁石22aが一時的に駆動されない状態になる。
【0087】
この状態から、仮想磁石VMが図12(a)に示す位置まで回転すると、第1磁力線G1の発生状態が変化し、図12(b)に示すような磁気回路が構成される。それにより、第1磁力線G1による磁力が、第1磁石部を第1コア24aに近づけるようにほとんど作用しなくなるので、永久磁石22aは、第2磁力線G2による磁力によって、図12(c)に示す位置まで、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
【0088】
そして、図12(c)に示す位置から、仮想磁石VMが若干、回転すると、以上とは逆に、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1による磁力が、第1磁石部に、これを第1コア24aに近づけるように作用し、それにより、永久磁石22aが、磁界回転方向と逆方向に駆動され、第1ロータ22が磁界回転方向と逆方向に回転する。そして、仮想磁石VMがさらに回転すると、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1による磁力と第2コア24bと第2磁極の間の第2磁力線G2による磁力との差分に相当する磁力によって、永久磁石22aが、磁界回転方向と逆方向に駆動される。その後、第2磁力線G2による磁力が、第2磁石部を第2コア24bに近づけるようにほとんど作用しなくなると、第1磁力線G1による磁力によって、永久磁石22aが磁界回転方向と逆方向に駆動される。
【0089】
以上のように、第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1磁極と第1コア24aの間の第1磁力線G1による磁力と、第2コア24bと第2磁極の間の第2磁力線G2による磁力と、これらの磁力の差分に相当する磁力とが、永久磁石22aに、すなわち第1ロータ22に交互に作用し、それにより、第1ロータ22が磁界回転方向と逆方向に回転する。また、そのように磁力すなわち駆動力が第1ロータ22に交互に作用することによって、第1ロータ22に伝達されるトルク(以下「第1ロータ伝達トルク」という)TR1は、ほぼ一定になる。
【0090】
また、このときの磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2の関係は、式(1)において、VR2=0とすることにより、VR1=−V0で表され、例えば、図9(b)のように示される。このように、第1ロータ22は、第1および第2の回転磁界と同じ速度で逆方向に回転する。さらに、この場合、第1ロータ伝達トルクTR1は、駆動用等価トルクTSEと等しくなり、次式(4)が成立する。
TR1=TSE ……(4)
【0091】
また、磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2がいずれも値0でない場合、例えば、第1ロータ22を動力により回転させた状態で、第1および第2の回転磁界を発生させた場合には、磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2の間に、前述した一般式(1)がそのまま成立し、三者間の速度関係は、例えば、図10(a)のように示される。この場合、第1ロータ伝達トルクTR1と駆動用等価トルクTSEが、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力すなわち磁気回路を介して、合成され、第2ロータ24に伝達される。すなわち、次式(5)が成立する。
TR2=TSE+TR1 ……(5)
ただし、この場合、前記式(2)に示すように、磁界回転速度V0と第2ロータ回転速度VR2との差、および第2ロータ回転速度VR2と第1ロータ回転速度VR1との差が、互いに等しいため、駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1のトルク合成比は、1:1である。したがって、ステータ23への電力の供給に伴い、ステータ23から第2ロータ24に伝達される動力(以下「電力変換動力」という)と、第1ロータ22から第2ロータ24に伝達される動力との合成比は、磁界回転速度V0と第1ロータ回転速度VR1との比に等しい。
【0092】
さらに、第2ロータ24を動力により回転させるとともに、ステータ23の三相コイル23cを、相間短絡により互いに接続した場合には、第2ロータ24の回転に伴って発生する第1および第2の回転磁界の磁界回転速度V0がほぼ値0になり、その結果、第2ロータ24に入力された動力(エネルギ)は、ステータ23には伝達されず、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力すなわち磁気回路を介して、第1ロータ22にすべて伝達される。同様に、第1ロータ22を動力により回転させるとともに、磁界回転速度V0を値0に制御した場合には、第1ロータ22に入力された動力(エネルギ)は、ステータ23には伝達されず、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力を介して第2ロータ24にすべて伝達される。
【0093】
また、このときの磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2の関係は、式(1)において、V0=0とすることによって、VR1=2・VR2で表され、例えば、図10(b)のように示される。また、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間に、次式(6)が成立する。
TR1=TR2/2 ……(6)
【0094】
さらに、回転機20では、ステータ23への電力供給が行われていない場合でも、電機子23aに対して、第1ロータ22への動力の入力により永久磁石22aが回転したり、第2ロータ24への動力の入力により第1および第2のコア24a,24bが回転したときには、電機子23aにおいて、誘導起電力が発生し、発電が行われる。この発電に伴って、第1および第2の回転磁界が発生した場合にも、前記式(1)および(2)が成立するとともに、前記式(3)〜(5)で表されるようなトルクの関係が成立する。
【0095】
このため、例えば、第2ロータ24に動力を入力するとともに、この動力の一部を用いてステータ23で発電を行った場合において、第1ロータ22、第2ロータ24、第1および第2の回転磁界の回転方向が互いに同じであるときには、ステータ23で発電される電力および磁界回転速度V0と等価のトルクを発電用等価トルクTGEとすると、この発電用等価トルクTGEと、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2との間に、次式(7)が成立する。
TR2=TGE+TR1 ……(7)
この場合、この式(7)から明らかなように、第2ロータ伝達トルクTR2が分割され、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力を介して、発電用等価トルクTGEおよび第1ロータ伝達トルクTR1として出力される。また、前記式(2)に示すように、磁界回転速度V0と第2ロータ回転速度VR2との差、および第2ロータ回転速度VR2と第1ロータ回転速度VR1との差が、互いに等しいため、この場合のトルク分配比は1:1である。したがって、エネルギ(電力・動力)の分配比は、磁界回転速度V0と第1ロータ回転速度VR1との比に等しい。
【0096】
上述したステータ23、第1および第2のロータ22,24の間における式(1)や図9などで表されるような回転速度の関係、および、式(3)〜(7)で表されるようなトルクの関係は、遊星歯車装置のサンギヤおよびリングギヤの一方、他方、およびプラネタリギヤを支持するキャリアの回転速度の関係およびトルクの関係に、それぞれ相当する。さらに、そのような回転速度およびトルクの関係が、ステータ23への電力供給時だけでなく、発電時にも同様に得られることから、回転機20は、2部材で回転動力を入出力するとともに、1部材で電力を入出力する遊星歯車装置とみなすことができる。また、上述したように、この場合のステータ23、第1および第2のロータ22,24の間でのエネルギの入出力は、遊星歯車装置と異なり、歯車ではなく、第1および第2の磁力線G1,G2による磁力、すなわち、磁気回路を介した非接触による、いわゆる磁気パスによって行われる。
【0097】
また、ステータ23に対する第1および第2のロータ22,24の回転角度位置はそれぞれ、第1角度位置センサ41および第2角度位置センサ42によって検出され、それらの検出信号は、ECU31に出力される。ECU31は、これらの検出信号に基づき、PDU32を制御することによって、ステータ23に供給される電力と、ステータ23で発電される電力と、これらの電力供給および発電に伴って発生した第1および第2の回転磁界の磁界回転速度V0などを制御する。また、ECU31は、検出された第1および第2のロータ22,24の回転角度位置に基づき、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2をそれぞれ算出する。
【0098】
前述した増速機構6は、第1スプロケット7および第2スプロケット8と、これらの第1および第2のスプロケット7,8に巻きかけられたチェーン9を有している。第1スプロケット7の歯数は、第2スプロケット8よりも大きく、それにより、第1スプロケット7に入力された動力は、増速された状態で第2スプロケット8に伝達される。また、第1スプロケット7は、回転機20の回転軸21に同心状に固定されており、それにより、回転軸21と一体に回転自在である。
【0099】
変速装置10は、遊星歯車装置などで構成された、いわゆる内装式のものであり、入力軸10aおよび出力軸10bを有するとともに、3つの変速段を有している。入力軸10aに入力された動力は、これらの3つの変速段の1つの変速比で変速された後、出力軸10bに出力される。これらの入力軸10aおよび出力軸10bはそれぞれ、第2スプロケット8および後輪2に同心状に固定されており、それにより、第2スプロケット8および後輪2と一体に回転自在である。また、変速装置10の変速段は、運転者によるレバー(図示せず)の操作に応じて切り換えられるとともに、ギヤ位置センサ43によって検出され、その検出信号はECU31に出力される。
【0100】
以上の構成により、回転機20の第2ロータ24は、回転軸21、増速機構6および変速装置10を介して、後輪2に連結されている。また、前述したように、第1ロータ22は、ペダル機構3のクランク軸5に直結されている。
【0101】
次に、電動アシスト自転車1の動作について説明する。まず、回転機20によるアシストを行わずに、ペダル4に入力された運転者の踏力のみを動力源として、電動アシスト自転車1を走行させる場合の動作について説明する。以下、このような電動アシスト自転車1の走行を、「ペダル走行」という。
【0102】
ペダル走行中、ステータ23の三相コイル23cは、相間短絡により互いに接続される。これにより、クランク軸5で回転動力に変換された状態で第1ロータ22に入力された運転者の踏力は、図10(b)や式(6)を用いて説明したように、磁気回路を介して第2ロータ24にすべて伝達される。第2ロータ24に伝達された動力は、増速機構6および変速装置10を介して、後輪2に伝達され、その結果、自転車が走行する。
【0103】
次に、回転機20によるアシスト中の動作について説明する。アシスト中には、ステータ23にバッテリ33の電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を第2ロータ24の回転方向に回転させる。これにより、回転動力として第1ロータ22に伝達された運転者の踏力は、式(5)を用いて説明したように、ステータ23に供給された電力を動力に変換した電力変換動力と合成された後、第2ロータ24に伝達され、さらに、後輪2に伝達される。
【0104】
このアシスト中、図13に中抜きの矢印で示すように、第1ロータ回転速度VR1に対して、磁界回転速度V0を低下させることによって、第2ロータ回転速度VR2を無段階に低下させることができ、ひいては、第1ロータ22が直結されたクランク軸5に対して、第2ロータ24が連結された後輪2の回転速度を無段階に低下させることができる。逆に、第1ロータ回転速度VR1に対して、磁界回転速度V0を上昇させることによって、第2ロータ回転速度VR2を無段階に上昇させることができ、ひいては、クランク軸5に対して、後輪2の回転速度を無段階に上昇させることができる。
【0105】
また、式(5)を用いて説明したように、ステータ23からの駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1とのトルク合成比は、1:1である。さらに、前述したように、ステータ23、第1および第2のロータ22,24の間には、遊星歯車装置と同様のエネルギの入出力関係が成立する。これらのことから、第1ロータ22に一定の踏力が入力されていると仮定した場合において、この踏力よりも大きな駆動用等価トルクTSEが発生するように、ステータ23に電力を供給したときには、第1ロータ回転速度VR1が低下する。一方、踏力よりも小さな駆動用等価トルクTSEが発生するように、ステータ23に電力を供給したときには、第1ロータ回転速度VR1が上昇する。このため、アシスト中、ステータ23に供給される電力は、第1ロータ回転速度VR1がそのときの値に保持されるように制御される。これにより、駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1とのトルク合成比を、1:1に制御することができる。このように、駆動用等価トルクTSEの制御を、第1ロータ伝達トルクTR1が既知でなくても行えるので、それを検出するためのトルクセンサは不要である。
【0106】
次に、電動アシスト自転車1の空走時、すなわち、ペダル機構3に踏力が入力されておらず、クランク軸5が回転していない状態で、電動アシスト自転車1が惰性で走行しているときの動作について説明する。空走中には、ステータ23に電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を第2ロータ24の回転方向に回転させる。さらに、そのときの第2ロータ回転速度VR2に対して、磁界回転速度V0を、第1ロータ回転速度VR1が値0になるように制御する。この場合の磁界回転速度V0、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2の三者の関係は、前述した図9と同じなる。この場合、第1および第2の回転磁界による回転抵抗や、第1ロータ22およびペダル機構3のフリクションが第2ロータ24を介して後輪2に作用するのを防止するために、ステータ23には、これらの回転抵抗やフリクションに相当する電力が供給される。以下、空走中に上述したように行われる、第1および第2の回転磁界による回転抵抗や第1ロータ22のフリクションが第2ロータ24に作用するのを防止するための回転機20の制御を「ゼロトルク制御」という。
【0107】
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2のロータ22,24が、クランク軸5および後輪2にそれぞれ連結されているので、回転機20によって運転者の踏力をアシストすることができる。また、第1および第2のロータ22,24とクランク軸5および後輪2の間の連結が、踏力および電力変換動力を合成するための差動装置を用いることなく行われており、アシスト中、後輪2への踏力および電力変換動力の伝達がいずれも、磁気回路を介した非接触による、いわゆる磁気パスによって行われる。したがって、前述した差動装置を用いる従来の場合と比較して、電動アシスト自転車1の効率を高めることができるとともに、電動アシスト自転車1の構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができる。さらに、図13を用いて説明したように、後輪2の回転速度をクランク軸5に対して、変速装置10を用いずにかつ無段階に、上昇および低下させることができる。
【0108】
また、ペダル走行中、ステータ23において相間短絡を行うことによって、第1ロータ22に入力された踏力が、磁気回路を介して第2ロータ24にすべて伝達され、さらに、後輪2に伝達される。このように、回転機20に電力を供給することなく、踏力のみによって後輪2を駆動することができる。さらに、ペダル走行中にも、アシスト中と同様、後輪2への踏力の伝達が、磁気回路を介した磁気パスによって行われるので、電動アシスト自転車1の効率を高めることができる。また、ペダル走行中、磁界回転速度V0がほぼ値0に制御されるので、第1および第2の回転磁界の発生に伴って第2ロータ24に作用する回転抵抗が極めて小さく、したがって、電動アシスト自転車1の効率をさらに高めることができる。
【0109】
さらに、空走中、第1ロータ回転速度VR1が値0になるように磁界回転速度V0を制御するので、クランク軸5を停止状態に保持できるとともに、ゼロトルク制御を行うので、空走による走行距離を延ばすことができる。また、電動アシスト自転車1では、クランク軸5と後輪2の間を接続・遮断するワンウェイクラッチが省略されており、したがって、電動アシスト自転車1の構成のさらなる単純化、小型化および軽量化と、コストの削減を図ることができる。
【0110】
また、クランク軸5に第1ロータ22が直結されていることから、第1ロータ回転速度VR1はクランク軸5の回転速度と等しいので、クランク軸5の回転速度を検出するためのセンサが不要になる。さらに、第2ロータ24が、増速機構6および変速装置10を介して後輪2に連結されていることから、第2ロータ回転速度VR2と、増速機構6の所定の増速比と、ギヤ位置センサ43で検出された変速装置10の変速段に応じて、後輪2の回転速度を算出できるので、後輪2の回転速度を検出するためのセンサが不要になる。また、回転機20が電動アシスト自転車1の中央の下端部に設けられ、ペダル機構3と一体に設けられているので、電動アシスト自転車1の良好な重量バランスを得ることができる。
【0111】
次に、図14を参照しながら、本発明の第2実施形態による電動アシスト自転車1Aについて説明する。この電動アシスト自転車1Aは、第1実施形態と比較して、第1ワンウェイクラッチC1をさらに備える点のみが異なっている。図14において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。このことは、後述する他の実施形態についても同様である。なお、本実施形態では、第1ワンウェイクラッチC1が、請求項2の発明におけるクラッチおよび請求項3の発明におけるワンウェイクラッチに相当する。
【0112】
この第1ワンウェイクラッチC1は、変速装置10の出力軸10bに直結された入力部C1aと、後輪2に直結された出力部C1bを有しており、電動アシスト自転車1Aの走行中、出力軸10bと後輪2の間、すなわち第2ロータ24と後輪2の間を、出力部C1bの回転速度が入力部C1aの回転速度よりも高いときには遮断し、それ以外のときには接続する。
【0113】
この電動アシスト自転車1Aでは、ペダル走行中およびアシスト中の動作が、第1実施形態と同様にして行われる。これにより、ペダル走行中およびアシスト中、運転者の踏力が、第1および第2のロータ22,24を介して、変速装置10の出力軸10bに伝達される。この場合、後輪2は、踏力が伝達されることによって初めて駆動されるので、後輪2が連結された第1ワンウェイクラッチC1の出力部C1bの回転速度は、出力軸10bが連結された入力部C1aの回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中およびアシスト中、第1ワンウェイクラッチC1によって、出力軸10bと後輪2の間が接続状態に保持されるので、出力軸10bに伝達された動力は、後輪2に伝達される。
【0114】
空走中の動作は、第1実施形態と異なっている。具体的には、空走中、踏力がクランク軸5に入力されないことと、第1および第2の回転磁界による回転抵抗や第1ロータ22のフリクションなどが、第1ワンウェイクラッチC1の入力部C1aに作用することによって、入力部C1aの回転速度が低下し、それに伴い、後輪2とともに回転する出力部C1bの回転速度が、入力部C1aの回転速度よりも高くなる。その結果、空走中、第1ワンウェイクラッチC1によって、出力軸10bと後輪2の間、すなわち、ペダル機構3、回転機20、増速機構6および変速装置10と、後輪2との間が遮断される。
【0115】
これにより、本実施形態によれば、空走中、クランク軸5を停止状態に保持できるとともに、ペダル機構3、回転機20、増速機構6および変速装置10のフリクションが後輪2に作用するのを完全に防止できるので、空走による走行距離を延ばすことができる。また、第1実施形態と異なり、前述したゼロトルク制御は行われず、その分、バッテリ33の電力を確保でき、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0116】
さらに、油圧式などのクラッチではなく、第1ワンウェイクラッチC1を用いるので、油圧式などのクラッチを用いた場合と比較して、電動アシスト自転車1Aの構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができるとともに、電動アシスト自転車1Aのコストを削減することができる。
【0117】
なお、本実施形態では、第2ロータ24と後輪2の間を遮断するための第1ワンウェイクラッチC1が設けられているので、ワンウェイクラッチの省略による構成の単純化やコストの削減などを図れるという効果は得られないものの、その他の第1実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Aの高効率化などの効果については、同様に得ることができる。
【0118】
また、本実施形態では、第1ワンウェイクラッチC1を変速装置10の出力軸10bと後輪2の間に設けているが、第2ロータ24と後輪2の間を接続・遮断できるのであれば、他の適当な位置、例えば、第2スプロケット8と変速装置10の入力軸10aとの間や、第2ロータ24と回転軸21の間、回転軸21と第1スプロケット7の間に設けてもよい。
【0119】
次に、図15を参照しながら、本発明の第3実施形態による電動アシスト自転車1Bについて説明する。この電動アシスト自転車1Bは、第2実施形態と比較して、第2ワンウェイクラッチC2とトルクセンサ44をさらに備える点のみが異なっている。第2ワンウェイクラッチC2は、第1ロータ22に直結された入力部C2aと、第2ロータ24に直結された出力部C2bを有しており、電動アシスト自転車1Bの走行中、出力部C2bの回転速度すなわち第2ロータ回転速度VR2が、入力部C2aの回転速度すなわち第1ロータ回転速度VR1よりも高いときには、第1ロータ22と第2ロータ24の間を遮断し、それ以外のときには接続する。トルクセンサ44は、第1ロータ伝達トルクTR1を検出し、その検出信号をECU31に出力する。
【0120】
なお、本実施形態では、第2ワンウェイクラッチC2が、請求項4の発明におけるクラッチおよび請求項5の発明におけるワンウェイクラッチに相当する。また、本実施形態では、クランク軸5および第1ロータ22が、請求項4の発明における第1動力伝達系に相当し、第2ロータ24、増速機構6、変速装置10、および後輪2が、請求項4の発明における第2動力伝達系に相当する。
【0121】
この電動アシスト自転車1Bでは、ペダル走行中およびアシスト中における動作のみが第2実施形態と異なっており、空走中の動作については、第2実施形態と同様にして行われる。まず、ペダル走行中の動作について説明する。すなわち、ペダル走行中、第2ロータ24は、第1ロータ22から運転者の踏力が伝達されることによって初めて駆動されることから、第2ロータ回転速度VR2は、第1ロータ回転速度VR1よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中、第2ワンウェイクラッチC2によって、第1および第2のロータ22、24の間が接続状態に保持されるので、第1ロータ22に伝達された踏力は、第2ロータ24に伝達され、さらに、変速装置10の出力軸10bに伝達される。また、第2実施形態と同様、第1ワンウェイクラッチC1によって、出力軸10bと後輪2の間が接続状態に保持され、それにより、出力軸10bに伝達された動力は、後輪2に伝達される。このため、本実施形態では、ペダル走行中、第1および第2の実施形態と異なり、ステータ23において相間短絡は行われない。
【0122】
また、アシスト中にも、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くならない限り、第2ワンウェイクラッチC2によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持される。このように第1および第2のロータ22,24が一体である場合、第1ロータ22に伝達された踏力と比較して、ステータ23からの駆動用等価トルクTSEが小さくても、第1実施形態で述べたように第1ロータ回転速度VR1は上昇しない。このため、本実施形態では、アシスト中、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くないために、第1および第2のロータ22,24の間が接続されている状態では、トルクセンサ44で検出した第1ロータ伝達トルクTR1に基づき、ステータ23に供給する電力を制御し、それにより、駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1との比が、1:1に制御される。
【0123】
以上のように、本実施形態によれば、ペダル走行中、第2ワンウェイクラッチC2によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持される。したがって、例えばステータ23の故障によって、ステータ23、第1および第2のロータ22,24の間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、運転者の踏力を、第1および第2のロータ22,24を介して後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。同じ理由により、第1実施形態で述べたステータ23の相間短絡を行うことなく、踏力を後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0124】
また、第2ワンウェイクラッチC2によって、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くなったときに、第1ロータ22と第2ロータ24の間が遮断される。したがって、図13を用いて説明したように、アシスト中、後輪2の回転速度をクランク軸5に対して、変速装置10を用いずに無段階に上昇させる場合に、そのような後輪2の増速を支障なく行うことができる。
【0125】
さらに、油圧式などのクラッチではなく、第2ワンウェイクラッチC2を用いるので、油圧式などのクラッチを用いた場合と比較して、電動アシスト自転車1Bの構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができるとともに、電動アシスト自転車1Bのコストを削減することができる。
【0126】
なお、本実施形態では、ペダル走行中、第2ワンウェイクラッチC2によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持されるので、第1および第2のロータ22,24の回転に伴って発生する第1および第2の回転磁界による回転抵抗が、第2ロータ24を介して後輪2に作用する。その分、ペダル走行中、第1および第2の実施形態と比較して、電動アシスト自転車1Bの効率が低下する。この場合、この回転抵抗分の電力をステータ23に供給し、それにより発生する第1および第2の回転磁界を第2ロータ24の回転方向に回転させるとともに、磁界回転速度V0を第2ロータ回転速度VR2と等しくなるように制御することによって、第1および第2の回転磁界による回転抵抗が後輪2に作用することがなくなり、電動アシスト自転車1Bの高い効率を確保できる。また、本実施形態によれば、図13を用いて説明したアシスト中における後輪2の減速制御は行えないものの、その他の第2実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Bの高効率化などの効果については、同様に得ることができる。
【0127】
なお、本実施形態では、第2ワンウェイクラッチC2を、第1ロータ22と第2ロータ24の間に設けているが、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高いときに、第1および第2のロータ22,24の間を遮断できるのであれば、他の適当な位置に設けてもよい。例えば、クランク軸5と、第2ロータ24、回転軸21および第1スプロケット7の1つとの間や、第1ロータ22と、回転軸21および第1スプロケット7の一方との間に設けてもよい。
【0128】
また、本実施形態において、第1ワンウェイクラッチC1を省略してもよく、その場合には、第2ワンウェイクラッチC2を、互いに連結されたクランク軸5および第1ロータ22を含む動力伝達系と、互いに連結された第2ロータ24、回転軸21、増速機構6、変速装置10および後輪2を含む動力伝達系との間を接続・遮断することが可能な任意の位置に設けてもよい。さらに、この場合において、クランク軸5と後輪2の間を連結する経路を増速機構6および変速装置10と並列に設けるとともに、この経路に第2ワンウェイクラッチC2を設け、クランク軸5と後輪2の間を接続・遮断することも、本発明の範囲内である。
【0129】
次に、図16を参照しながら、本発明の第4実施形態による電動アシスト自転車1Cについて説明する。この電動アシスト自転車1Cは、第1実施形態と比較して、後輪2、ペダル機構3および回転機20の間の連結関係が主に異なっている。具体的には、ペダル機構3のクランク軸5には、第1実施形態と異なり、第1ロータ22が直結されておらず、増速機構6の第1スプロケット7が直結されている。また、回転機20は、第1実施形態と異なり、電動アシスト自転車1Cのフレームの中央の下端部には設けられておらず、フレームの後端部に設けられている。さらに、変速装置10の出力軸10bには、第1実施形態と異なり、後輪2が直結されておらず、第1ロータ22が直結されている。また、回転機20の回転軸21は、第1スプロケット7ではなく、後輪2に直結されている。以上のように、第1ロータ22は、第1実施形態と異なり、変速装置10および増速機構6を介して、クランク軸5に連結されており、第2ロータ24は、第1実施形態と異なり、増速機構6および変速装置10を介さずに、後輪2に直結されている。
【0130】
以上の構成の電動アシスト自転車1Cでは、ペダル走行中、アシスト中および空走中における動作が、第1実施形態と同様にして行われる。これにより、ペダル走行中およびアシスト中、クランク軸5に伝達された踏力は、増速機構6、変速装置10、第1および第2のロータ22,24を介して、後輪2に伝達される。
【0131】
以上により、本実施形態によれば、第1実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Cの高効率化などの効果を、同様に得ることができる。また、第2ロータ24が、増速機構6を用いることなく、後輪2に直結されているので、第2ロータ24と後輪2の間に増速機構6を連結した第1実施形態の場合と比較して、クランク軸5から第1および第2のロータ22,24に伝達されるトルクが小さくなり、回転機20に必要とされるトルクが小さくなることによって、回転機20の小型化を図ることができる。
【0132】
さらに、第2ロータ24が後輪2に直結されていることから、第2ロータ回転速度VR2が後輪2の回転速度に等しいので、後輪2の回転速度を検出するためのセンサが不要になる。また、クランク軸5が、増速機構6および変速装置10を介して第1ロータ22に連結されているので、増速機構6の所定の増速比と、検出された変速装置10の変速段と、第1ロータ回転速度VR1に基づき、クランク軸5の回転速度を算出することができ、したがって、クランク軸5の回転速度を検出するためのセンサが不要になる。
【0133】
次に、図17を参照しながら、本発明の第5実施形態による電動アシスト自転車1Dについて説明する。この電動アシスト自転車1Dは、第4実施形態と比較して、第3ワンウェイクラッチC3をさらに備える点のみが異なっている。この第3ワンウェイクラッチC3は、変速装置10の出力軸10bに直結された入力部C3aと、第1ロータ22に直結された出力部C3bを有しており、出力軸10bと第1ロータ22の間、すなわち、クランク軸5と第1ロータ22の間を、出力部C3bの回転速度が入力部C3aの回転速度よりも高いときには遮断し、それ以外のときには接続する。なお、本実施形態では、第3ワンウェイクラッチC3が、請求項6の発明における第1クラッチおよび請求項7の発明における第1ワンウェイクラッチに相当する。
【0134】
以上の構成の電動アシスト自転車1Dでは、ペダル走行中およびアシスト中の動作が、第1および第4の実施形態と同様にして行われる。これにより、ペダル走行中およびアシスト中、運転者の踏力が、増速機構6を介して変速装置10の出力軸10bに伝達される。この場合、第1および第2のロータ22,24と後輪2は、踏力が伝達されることによって初めて駆動されるので、第1ロータ22が連結された第3ワンウェイクラッチC3の出力部C3bの回転速度は、出力軸10bが連結された入力部C3aの回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中およびアシスト中、第3ワンウェイクラッチC3によって、出力軸10bと第1ロータ22の間が接続状態に保持されるので、出力軸10bに伝達された動力は、第1ロータ22に伝達され、さらに、第2ロータ24を介して後輪2に伝達される。
【0135】
空走中の動作、特に、ゼロトルク制御は、第1および第4の実施形態と異なっている。具体的には、空走中、第1ロータ22が慣性により回転している状態で、クランク軸5を停止状態に保持すると、クランク軸5に連結された出力軸10bも停止状態に保持され、それに伴い、第3ワンウェイクラッチC3の出力部C3bの回転速度は、入力部C3aの回転速度よりも高くなる。その結果、第3ワンウェイクラッチC3によって、クランク軸5と第1ロータ22の間が遮断され、ひいては、クランク軸5と、第1ロータ22に磁気回路を介して連結された第2ロータ24および後輪2との間が遮断される。また、このようにクランク軸5と第1ロータ22の間が遮断されることと、前述したようにステータ23からの電力変換動力と第1ロータ22からの動力との合成比が1:1であることから、ゼロトルク制御中、磁界回転速度V0は、第1および第4の実施形態と異なり、第2ロータ回転速度VR2と同じに制御される。なお、ゼロトルク制御中、ステータ23に、第1および第2の回転磁界による回転抵抗と第1ロータ22のフリクションに相当する電力が供給されることは、第1および第4の実施形態と同様である。
【0136】
以上のように、本実施形態によれば、空走中、第3ワンウェイクラッチC3によって、クランク軸5と第1ロータ22の間が遮断され、ひいては、クランク軸5と後輪2の間が遮断されるので、クランク軸5を停止状態に保持することができる。また、第1および第4の実施形態と同様、ゼロトルク制御によって、第1および第2の回転磁界による回転抵抗と第1ロータ22のフリクションが、第2ロータ22を介して後輪2に作用するのを防止できる。さらに、このゼロトルク制御中、磁界回転速度V0を第2ロータ回転速度VR2と同じに制御するので、磁界回転速度V0が第2ロータ回転速度VR2よりも高く制御される第1および第4の実施形態と比較して、ゼロトルク制御用の電力を低減でき、したがって、バッテリ33の電力を確保でき、ひいては、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、油圧式などのクラッチではなく、第3ワンウェイクラッチC3を用いるので、油圧式などのクラッチを用いた場合と比較して、電動アシスト自転車1Dの構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができるとともに、電動アシスト自転車1Dのコストを削減することができる。
【0138】
なお、本実施形態では、第3ワンウェイクラッチC3が設けられているので、ワンウェイクラッチの省略による構成の単純化やコストの削減などを図れるという効果は得られないものの、その他の第4実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Dの高効率化などの効果については、同様に得ることができる。
【0139】
また、本実施形態では、第3ワンウェイクラッチC3を変速装置10の出力軸10bと第1ロータ22の間に設けているが、クランク軸5と第1ロータ22の間を接続・遮断できるのであれば、他の適当な位置、例えば、クランク軸5と第1スプロケット7の間や、第2スプロケット8と入力軸10aの間に設けてもよい。
【0140】
次に、図18を参照しながら、本発明の第6実施形態による電動アシスト自転車1Eについて説明する。この電動アシスト自転車1Eは、第5実施形態と比較して、第4ワンウェイクラッチC4と、第3実施形態のトルクセンサ44と、電流電圧センサ45をさらに備える点のみが異なっている。第4ワンウェイクラッチC4は、第1ロータ22に直結された入力部C4aと、第2ロータ24に直結された出力部C4bを有しており、出力部C4bの回転速度すなわち第2ロータ回転速度VR2が、入力部C4aの回転速度すなわち第1ロータ回転速度VR1よりも高いときには、第1ロータ22と第2ロータ24の間を遮断し、それ以外のときには接続する。
【0141】
なお、本実施形態では、第4ワンウェイクラッチC4が、請求項4および5の発明におけるクラッチおよびワンウェイクラッチ、ならびに、請求項8および9の発明における第2クラッチおよび第2ワンウェイクラッチに相当する。また、クランク軸5、増速機構6、変速装置10、および第1ロータ22が、請求項4の発明における第1動力伝達系に相当し、第2ロータ24および後輪2が、請求項4の発明における第2動力伝達系に相当する。
【0142】
電流電圧センサ45は、バッテリ33に入出力される電流・電圧値を検出し、その検出信号をECU31に出力する。ECU31は、この検出信号に基づいて、バッテリ33の充電状態SOCを算出する。
【0143】
この電動アシスト自転車1Eでは、ペダル走行中の動作が次のようにして行われる。すなわち、第5実施形態と同様、ペダル走行中、第3ワンウェイクラッチC3が接続状態に保持され、それにより、運転者の踏力は第1ロータ22に伝達される。また、互いに直結された第2ロータ24および後輪2は、第1ロータ22から動力が伝達されることによって初めて駆動されることから、第2ロータ回転速度VR2は、第1ロータ回転速度VR1よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中、第4ワンウェイクラッチC4によって、第1および第2のロータ22、24の間が接続状態に保持されるので、第1ロータ22に伝達された動力は、第2ロータ24に伝達され、さらに、後輪2に伝達される。このため、本実施形態では、ペダル走行中、第1実施形態と異なり、ステータ23において相間短絡は行われない。
【0144】
また、アシスト中にも、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くならない限り、第4ワンウェイクラッチC4によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持される。このため、本実施形態では、第3実施形態と同様、アシスト中、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くなく、第1および第2のロータ22,24の間が接続されている状態では、検出された第1ロータ伝達トルクTR1に基づき、ステータ23に供給する電力を制御し、それにより、駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1との比が、1:1に制御される。
【0145】
さらに、空走中、充電状態SOCが所定値よりも大きく、バッテリ33の電力が十分に残っているときには、空走中の動作は、第5実施形態と同様にして行われる。また、空走中、充電状態SOCが所定値よりも小さく、バッテリ33の電力が十分に残っていないときには、後輪2の動力を用いて、ステータ23において発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ33に充電する。
【0146】
この発電に伴い、前述したステータ23、第1および第2のロータ22,24の間のエネルギの入出力関係から、第1ロータ22を第2ロータ24の回転方向に作用させるトルクが第1ロータ22に作用し、その結果、第1ロータ回転速度VR1が上昇する。この場合、上昇した第1ロータ回転速度VR1が第2ロータ回転速度VR2と等しくなると、その後、発電に伴って第2ロータ24の回転方向に回転させるトルクが第1ロータ22に作用している限り、第1および第2のロータ22,24の間が第4ワンウェイクラッチC4によって接続され、両ロータ22,24が一体になる。したがって、後輪2から第1および第2のロータ22,24に伝達された動力を、ステータ23に電力として適切に伝達できる。また、第5実施形態と同様、空走中、第3ワンウェイクラッチC3によって、クランク軸5と第1ロータ22の間が遮断されるので、上述した発電は、クランク軸5と第1ロータ22の間を遮断した状態で行われる。
【0147】
以上のように、本実施形態によれば、ペダル走行中、第4ワンウェイクラッチC4によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持される。したがって、例えばステータ23の故障によって、ステータ23、第1および第2のロータ22,24の間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、第3実施形態と同様、運転者の踏力を、第1および第2のロータ22,24を介して後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。同じ理由により、第1実施形態で述べたステータ23の相間短絡を行うことなく、踏力を後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0148】
また、第4ワンウェイクラッチC4によって、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高くなったときに、クランク軸5に連結された第1ロータ22と、後輪2に連結された第2ロータ24との間が遮断される。したがって、第3実施形態と同様、図13を用いて説明したように、アシスト中、後輪2の回転速度をクランク軸5に対して、変速装置10を用いずに無段階に上昇させる場合に、そのような後輪2の増速を支障なく行うことができる。
【0149】
さらに、空走中、後輪2の動力を用いて、ステータ23において発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ33に充電するので、アシストによる走行距離を延ばすことができる。また、この発電を、第3ワンウェイクラッチC3によって、クランク軸5と第1ロータ22の間を遮断した状態で行えるので、ペダル機構3によるフリクションが第1ロータ22を介して第2ロータ24に作用するのを防止でき、したがって、より大きな電力をバッテリに33に充電することができる。
【0150】
さらに、油圧式などのクラッチではなく、第4ワンウェイクラッチC4を用いるので、油圧式などのクラッチを用いた場合と比較して、電動アシスト自転車1Eの構成の単純化、小型化および軽量化を図ることができるとともに、電動アシスト自転車1Eのコストを削減することができる。
【0151】
なお、本実施形態では、ペダル走行中、第4ワンウェイクラッチC4によって、第1および第2のロータ22,24の間が接続状態に保持されるので、第1および第2のロータ22,24の回転に伴って発生する第1および第2の回転磁界による回転抵抗が、第2ロータ24を介して後輪2に作用する。その分、ペダル走行中、第4および第5の実施形態と比較して、電動アシスト自転車1Bの効率が低下する。この場合、第3実施形態と同様、この回転抵抗分の電力をステータ23に供給し、それにより発生する第1および第2の回転磁界を第2ロータ24の回転方向に回転させるとともに、磁界回転速度V0を第2ロータ回転速度VR2と等しくなるように制御することによって、第1および第2の回転磁界による回転抵抗が作用することがなくなり、電動アシスト自転車1Eの高い効率を確保できる。また、本実施形態によれば、図13を用いて説明したアシスト中における後輪2の減速制御は行えないものの、その他の第5実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Eの高効率化などの効果については、同様に得ることができる。
【0152】
なお、本実施形態では、第4ワンウェイクラッチC4を、第1ロータ22と第2ロータ24の間に設けているが、第2ロータ回転速度VR2が第1ロータ回転速度VR1よりも高いときに、第1および第2のロータ22,24の間を遮断できるのであれば、他の適当な位置、例えば、第1ロータ22と、回転軸21および後輪2の一方との間に設けてもよい。また、本実施形態において、第3ワンウェイクラッチC3を省略してもよく、その場合には、第4ワンウェイクラッチC4を、互いに連結されたクランク軸5、増速機構6、変速装置10および第1ロータ22を含む動力伝達系と、互いに連結された第2ロータ24および後輪2を含む動力伝達系との間を接続・遮断するように設けてもよい。この場合において、クランク軸5と後輪2の間を連結する経路を増速機構6および変速装置10と並列に設けるとともに、この経路に第4ワンウェイクラッチC4を設け、クランク軸5と後輪2の間を接続・遮断することも、本発明の範囲内である。
【0153】
次に、本発明の第7実施形態による電動アシスト自転車1Fについて説明する。この電動アシスト自転車1Fでは、第6実施形態と異なり、第4ワンウェイクラッチC4の入力部C4aは、第1ロータ22ではなく、変速装置10の出力軸10bに直結されている。また、第4ワンウェイクラッチC4の出力部C4bは、後輪2に直結されており、すなわち、後輪2を介して第2ロータ24に連結されている。第4ワンウェイクラッチC4は、出力部C4bの回転速度が入力部C4aの回転速度よりも高いときには、出力軸10bと後輪2の間、すなわちクランク軸5と、後輪2および第2ロータ24との間を遮断し、それ以外のときには接続する。その他の要素の連結関係については、第6実施形態と同様である。
【0154】
なお、本実施形態では、第3ワンウェイクラッチC3が、請求項10の発明における第1ワンウェイクラッチに相当し、第4ワンウェイクラッチC4が、請求項10の発明における第2ワンウェイクラッチに相当する。また、第2ロータ24および後輪2が、請求項10の発明における動力伝達系に相当する。
【0155】
以上の構成の電動アシスト自転車1Fでは、ペダル走行中の動作が次のようにして行われる。すなわち、ペダル走行中、第2ロータ24および後輪2は、運転者の踏力が伝達されることによって初めて駆動されることから、第2ロータ24および後輪2に連結された第4ワンウェイクラッチC4の出力部C4bの回転速度は、変速装置10の出力軸10bに連結された入力部C4bの回転速度よりも高くはならない。したがって、ペダル走行中、第4ワンウェイクラッチC4によって、出力軸10bと、第2ロータ24および後輪2との間が接続状態に保持されるので、クランク軸5に伝達された踏力は、増速機構6、変速装置10および第4ワンウェイクラッチC4を介して、後輪2に伝達される。このため、本実施形態では、ペダル走行中、第1実施形態などと異なり、ステータ23において相間短絡は行われない。
【0156】
また、ペダル走行中、前述したステータ23、第1および第2のロータ22,24の間のエネルギの入出力関係から、第2ロータ24が後輪2とともに回転するのに伴って発生した第1および第2の回転磁界による回転抵抗が、第1ロータ22を第2ロータ24の回転方向に回転させるように第1ロータ22に作用するとともに、第2ロータ24および後輪2に負荷として作用する。さらに、第2ロータ24には、第1ロータ22のフリクションが負荷として作用する。これらの第1および第2の回転磁界による回転抵抗と第1ロータ22のフリクションは、前述したステータ23、第1および第2のロータ22,24の間のエネルギの入出力関係から、1:1の合成比で合成された後、第2ロータ24に伝達される。
【0157】
また、回転機10では、その構成上、第1ロータ22のフリクションよりも第1および第2の回転磁界による回転抵抗の方が大きくなっている。このため、上記のように作用する第1および第2の回転磁界による回転抵抗によって、第1ロータ回転速度VR1は、第2ロータ回転速度VR2、すなわち、第2ロータ24が連結された変速装置10の出力軸10bの回転速度よりも高くなる。それに伴い、第1ロータ22が連結された第3ワンウェイクラッチC3の出力部C3bの回転速度が、出力軸10bが連結された入力部C3aの回転速度よりも高くなる。その結果、第3ワンウェイクラッチC3によって、出力軸10bと第1ロータ22の間が遮断され、それに伴い、出力軸10bに連結された第2ロータ24と第1ロータ22との間も遮断される。
【0158】
さらに、アシスト中、前述したステータ23、第1および第2のロータ22,24の間のエネルギの入出力関係から、ステータ23からのトルクは、第1ロータ22を第2ロータ24の回転方向と逆方向に回転させるように第1ロータ22に作用する。これにより、第3ワンウェイクラッチC3の出力部C3bの回転速度が入力部C3aの回転速度よりも高くはならないので、第3ワンウェイクラッチC3によって、出力軸10bと第1ロータ22の間、すなわちクランク軸5と第1ロータ22の間が接続状態に保持され、その結果、第1ロータ22に運転者の踏力が伝達される。したがって、この場合にも、第1実施形態などと同様、クランク軸5からの踏力と、ステータ23からの電力変換動力は、磁気回路を介して合成された後、後輪2に伝達される。
【0159】
また、上述したように、出力部C3bの回転速度すなわち第1ロータ回転速度VR1が、入力部C3aの回転速度すなわち出力軸10bの回転速度よりも高くならない限り、出力軸10bと第1ロータ22の間が接続される。さらに、出力部C4bの回転速度すなわち第2ロータ回転速度VR2が、入力部C4aの回転速度すなわち出力軸10bの回転速度よりも高くならない限り、出力軸10bと第2ロータ24の間が接続される。以上から、アシスト中、第1および第2のロータ回転速度VR1,VR2が互いに等しいときには、第1および第2のロータ22,24の間が、出力軸10b、第3および第4のワンウェイクラッチC3,C4を介して、接続状態に保持される。このため、本実施形態では、アシスト中、第1および第2のロータ回転速度VR1,2が互いに等しく、第1および第2のロータ22,24の間が接続されている状態では、第3実施形態と同様、トルクセンサ44で検出した第1ロータ伝達トルクTR1に基づき、ステータ23に供給する電力を制御し、それにより、駆動用等価トルクTSEと第1ロータ伝達トルクTR1との比が、1:1に制御される。
【0160】
さらに、第5および6の実施形態と同様、空走中、第1ロータ22が慣性により回転している状態で、クランク軸5を停止状態に保持すると、第3ワンウェイクラッチC3によって、変速装置10の出力軸10bと第1ロータ22の間が遮断され、ひいては、クランク軸5と、第1ロータ22に磁気回路を介して連結された第2ロータ24および後輪2との間が遮断される。また、第4ワンウェイクラッチC4の出力部C4bの回転速度が入力部C4aの回転速度よりも高くなるので、第4ワンウェイクラッチC4によって、出力軸10bと第2ロータ24および後輪2の間、すなわち、クランク軸5と、第2ロータおよび後輪2との間が遮断される。また、ゼロトルク制御が第5実施形態と同様にして行われる。すなわち、ステータ23に、第1および第2の回転磁界による回転抵抗と第1ロータ22のフリクションに相当する電力を供給するとともに、磁界回転速度V0を、第2ロータ回転速度VR2と同じに制御する。
【0161】
以上のように、本実施形態によれば、ペダル走行中、第4ワンウェイクラッチC4によって、クランク軸5と、第2ロータ24および後輪2との間が接続状態に保持される。したがって、例えばステータ23の故障によって、ステータ23、第1および第2のロータ22,24の間で磁気回路が形成されなくなった場合でも、第3実施形態と同様、運転者の踏力を後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。同じ理由により、第1実施形態で述べたステータ23の相間短絡を行うことなく、踏力を後輪2に伝達でき、ペダル走行を行うことができる。
【0162】
また、ペダル走行中、第3ワンウェイクラッチC3によって、第2ロータ24と第1ロータ22との間が遮断される。したがって、第1および第2のロータ22,24を接続状態に保持した場合、すなわち第6実施形態の場合と異なり、第1および第2の回転磁界による回転抵抗の一部のみを、第1および第2のロータ22,24に作用させ、第1および第2の回転磁界による回転抵抗が第2ロータ24にすべて作用することがないので、ペダル走行中における電動アシスト自転車1Fの効率を高めることができる。
【0163】
さらに、第4ワンウェイクラッチC4によって、第2ロータ回転速度VR2がクランク軸5に連結された出力軸10bの回転速度よりも高いときには、クランク軸5と、第2ロータ22および後輪2との間が遮断される。したがって、アシスト中、図13を用いて説明したように、磁界回転速度V0の制御によって、後輪2の回転速度を、クランク軸5に対して、変速装置10を用いずに無段階に上昇させる場合に、第6実施形態と同様、そのような後輪2の増速を支障なく行うことができる。
【0164】
また、空走中、第3および第4のワンウェイクラッチC3,C4によって、クランク軸5と後輪2の間が遮断されるので、第1実施形態などと同様、クランク軸5を停止状態に保持することができる。さらに、空走中、クランク軸5と第1ロータ22の間が遮断されるとともに、ゼロトルク制御が第5実施形態と同様にして行われる。これにより、第5実施形態と同様、第1および第4の実施形態と比較して、ゼロトルク制御用の電力を低減できるので、バッテリ33の電力を確保でき、アシストによる走行距離を延ばすことができる。
【0165】
なお、本実施形態では、空走中、後輪2の動力を用いたバッテリ33の充電が行われず、したがって、それに起因するアシストによる走行距離の延長効果は得られないものの、その他の第6実施形態の効果、すなわち、電動アシスト自転車1Fの高効率化などの効果については、同様に得ることができる。
【0166】
なお、本実施形態では、第4ワンウェイクラッチC4の出力部C4bを、後輪2に直結しているが、第2ロータ24に直結し、クランク軸5と、第2ロータ24および後輪2との間を、第4ワンウェイクラッチC4により接続・遮断してもよい。また、本実施形態では、第3ワンウェイクラッチC3を出力軸10bと第1ロータ22の間に、第4ワンウェイクラッチC4を出力軸10bと後輪2の間に、それぞれ設けているが、例えば、両ワンウェイクラッチC3,C4を次のようにして設けてもよい。すなわち、クランク軸5と第1ロータ22の間を連結する第1経路と、クランク軸5と、第2ロータ24および後輪2との間を連結する第2経路とを、並列に設けるとともに、これらの第1および第2の経路に、第3および第4のワンウェイクラッチC3,C4を設けてもよい。この場合、第1および第2の経路を、複数の歯車と軸の組み合わせや、スプロケットとチェーンの組み合わせ、ベルトとプーリの組み合わせなど、任意の機構によって構成してもよいことは、もちろんである。
【0167】
次に、本発明の第8実施形態による電動アシスト自転車1Gについて説明する。この電動アシスト自転車1Gでは、第7実施形態と異なり、第3ワンウェイクラッチC3の入力部C3aは、変速装置10の出力軸10bではなく、入力軸10aに直結されており、出力部C3bは、第7実施形態と同様、第1ロータ22に直結されている。第3ワンウェイクラッチC3は、出力部C3bの回転速度が、入力部C3aの回転速度よりも高いときには、入力軸10aと第1ロータ22の間を遮断し、それ以外のときには接続する。その他の要素の連結関係については、第7実施形態と同様である。
【0168】
以上の構成の電動アシスト自転車1Gでは、ペダル走行中、アシスト中および空走中の動作が、第7実施形態と同様にして行われる。以上により、本実施形態によれば、第7実施形態の効果を同様に得ることができる。
【0169】
なお、本実施形態では、第4ワンウェイクラッチC4の出力部C4bを、後輪2に直結しているが、第2ロータ24に直結し、クランク軸5と、第2ロータ24および後輪2との間を、第4ワンウェイクラッチC4により接続・遮断してもよい。
【0170】
なお、本発明は、これまでに説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態におけるペダル機構3は、踏力が入力されるタイプのものであるが、運転者の腕の力が入力されるタイプのものでもよい。また、本実施形態では、第1および第2のコア24a,24bを、鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。さらに、本実施形態は、第2ロータ回転速度VR2と第1ロータ回転速度VR1との差(以下「第2・第1ロータ速度差」という)と、磁界回転速度V0と第2ロータ回転速度VR2との差(以下「磁界・第2ロータ速度差」という)が等しい回転機20に本発明を適用した例であるが、本発明は、これに限らず、第2・第1ロータ速度差と磁界・第2ロータ速度差が1:nである回転機に適用してもよい。また、本実施形態では、本発明における蓄電装置はバッテリ33であるが、キャパシタでもよい。
【0171】
さらに、本実施形態における第1〜第4のワンウェイクラッチC1〜C4に代えて、油圧式や電磁式のクラッチを用いてもよい。この場合、第6実施形態において、第3および第4のワンウェイクラッチC3,C4に代えて、油圧式や電磁式のクラッチを用いたときには、例えば、回転機20のみを動力源として、電動アシスト自転車1Eを走行させることができる。また、第2および第3の実施形態では、第2ロータ24と後輪2の間の連結を、増速機構6を用いて行っているが、第4〜第8の実施形態と同様、増速機構6を用いることなく行ってもよい。さらに、増速機構6は、本実施形態に例示したチェーン式のものではなく、ベルト式やシャフト式のものでもよい。また、本実施形態では、本発明における駆動輪は後輪2であるが、前輪でもよい。
【0172】
さらに、本実施形態は、変速装置10付の電動アシスト自転車1,1A〜1Gに本発明を適用した例であるが、本発明はこれに限らず、変速装置が設けられていない電動アシスト自転車に適用可能である。その場合には、電動アシスト自転車の効率をさらに高めることができる。また、本発明を、本実施形態の二輪式の電動アシスト自転車1,1A〜1Gではなく、1つ、または、3つ以上の車輪を有する電動アシスト自転車に適用してもよいことは、もちろんである。さらに、本実施形態では、回転機20を制御する制御装置を、ECU31およびPDU32で構成しているが、マイクロコンピュータと電気回路の組み合わせで構成してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】第1実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である。
【図2】回転機の拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線の位置で周方向に沿って破断した断面の一部を、第1および第2の回転磁界の発生時について示す展開図である。
【図4】図3の展開図の構成と機能的に同じ構成を示す図である。
【図5】第1ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合の回転機の動作を説明するための図である。
【図6】図5の続きの動作を説明するための図である。
【図7】回転機の動作中に構成される磁気回路を示す図である。
【図8】第1ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合に第2ロータに伝達されるトルクの一例を模式的に示す図である。
【図9】磁界回転速度、第1および第2のロータ回転速度の関係の一例を、(a)第1ロータを回転不能にした場合について、(b)第2ロータを回転不能にした場合について、それぞれ示す共線図である。
【図10】磁界回転速度、第1および第2のロータ回転速度の関係の一例を、(a)第1および第2のロータがいずれも回転している場合、(b)磁界回転速度が値0の場合について、それぞれ示す共線図である。
【図11】第2ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合の回転機の動作を説明するための図である。
【図12】図11の続きの動作を説明するための図である。
【図13】図1の電動アシスト自転車におけるアシスト中の変速動作を説明するための図である。
【図14】第2実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である。
【図15】第3実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である。
【図16】第4実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である。
【図17】第5実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である
【図18】第6実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である
【図19】第7実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である
【図20】第8実施形態による電動アシスト自転車を概略的に示す図である
【符号の説明】
【0174】
1 電動アシスト自転車
1A 電動アシスト自転車
1B 電動アシスト自転車
1C 電動アシスト自転車
1D 電動アシスト自転車
1E 電動アシスト自転車
1F 電動アシスト自転車
1G 電動アシスト自転車
2 後輪(駆動輪)
3 ペダル機構
4 ペダル
5 クランク軸
6 増速機構
20 回転機
22 第1ロータ
23 ステータ
24 第2ロータ
33 バッテリ(蓄電装置)
C1 第1ワンウェイクラッチ(クラッチ、ワンウェイクラッチ)
C1a 入力部(ワンウェイクラッチの第2ロータ側)
C1b 出力部(ワンウェイクラッチの駆動輪側)
C2 第2ワンウェイクラッチ(クラッチ、ワンウェイクラッチ)
C3 第3ワンウェイクラッチ(第1クラッチ、第1ワンウェイクラッチ)
C3a 入力部(第1ワンウェイクラッチのクランク軸側)
C3b 出力部(第1ワンウェイクラッチの第1ロータ側)
C4 第4ワンウェイクラッチ(クラッチ、ワンウェイクラッチ、第2クラッチ、第2
ワンウェイクラッチ)
C4a 入力部(第2ワンウェイクラッチのクランク軸側)
C4b 出力部(第2ワンウェイクラッチの動力伝達系側)
VR1 第1ロータ回転速度
VR2 第2ロータ回転速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルおよびクランク軸を有し、前記ペダルに入力された力を回転動力に変換し、前記クランク軸に出力するペダル機構と、
駆動輪と、
回転磁界を発生させるための不動のステータと、磁石で構成され、前記ステータに対向するように設けられた第1ロータと、軟磁性体で構成され、前記ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータとを有し、前記ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記回転磁界、前記第2および第1のロータが、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転するように構成され、前記第1ロータが前記クランク軸に連結されるとともに、前記第2ロータが前記駆動輪に連結された回転機と、
を備えることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記第2ロータと前記駆動輪の間を接続・遮断するクラッチをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記クラッチは、前記駆動輪側の回転速度が前記第2ロータ側の回転速度よりも高いときに、前記第2ロータと前記駆動輪の間を遮断するワンウェイクラッチであることを特徴とする、請求項2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
前記クランク軸および前記第1ロータを含む第1動力伝達系と、前記第2ロータおよび前記駆動輪を含む第2動力伝達系との間を接続・遮断するクラッチをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
前記クラッチは、前記第2ロータの回転速度が前記第1ロータの回転速度よりも高いときに、前記第1ロータと前記第2ロータの間を遮断するワンウェイクラッチであることを特徴とする、請求項4に記載の電動アシスト自転車。
【請求項6】
前記クランク軸と前記第1ロータの間を接続・遮断する第1クラッチをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記第1クラッチは、前記第1ロータ側の回転速度が前記クランク軸側の回転速度よりも高いときに、前記クランク軸と前記第1ロータの間を遮断する第1ワンウェイクラッチであることを特徴とする、請求項6に記載の電動アシスト自転車。
【請求項8】
前記第1ロータと、前記第2ロータおよび前記駆動輪を含む動力伝達系との間を接続・遮断する第2クラッチと、
充電および放電可能に構成され、前記ステータに接続された蓄電装置と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項6または7に記載の電動アシスト自転車。
【請求項9】
前記第2クラッチは、前記第2ロータの回転速度が前記第1ロータの回転速度よりも高いときに、前記第1ロータと前記第2ロータの間を遮断する第2ワンウェイクラッチであることを特徴とする、請求項8に記載の電動アシスト自転車。
【請求項10】
前記第1ロータ側の回転速度が前記クランク軸側の回転速度よりも高いときに、前記クランク軸と前記第1ロータの間を遮断する第1ワンウェイクラッチと、
前記クランク軸と、前記第2ロータおよび前記駆動輪を含む動力伝達系との間に設けられ、当該動力伝達系側の回転速度が前記クランク軸側の回転速度よりも高いときに、前記クランク軸と前記動力伝達系の間を遮断する第2ワンウェイクラッチと、をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項11】
前記第2ロータは、動力を増速して伝達する増速機構を用いることなく、前記駆動輪に連結されていることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載の電動アシスト自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−119953(P2009−119953A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294120(P2007−294120)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)