説明

電動アシスト自転車

【課題】従来の電動アシスト自転車に比べて電池ホルダーの取付位置を下げることが可能な電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】電動アシスト自転車1は、電池41を電源として駆動されるモータ40によりペダル23を踏み込む力をアシストする。フレーム10のシートチューブ12と後輪20の間の空間が電池配置空間とされ、シートチューブ12の背面には電池41を収納した電池ケース42を支持する上部電池ホルダー60と下部電池ホルダー61が取り付けられる。シートチューブ12の下端から後方に延び出すチェーンステー22は、最初は後下がりの傾斜で、途中から後下がりの度合いが緩和または後上がりとなる屈曲形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
電池駆動のモータでペダルを踏み込む力をアシストする電動アシスト自転車は、重い荷物を載せていたり、坂道を登ったりするときに楽であることから、それを選択して購入する消費者が多くなっている。特許文献1に電動アシスト自転車の例を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231493号公報(国際特許分類:B62M23/02、B62J11/00)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動アシスト自転車では、フレームのシートチューブと後輪の間の空間を電池配置空間として利用することが多い。シートチューブの背面には電池を収納した電池ケースを支持する電池ホルダーが取り付けられる。
上記構成の電動アシスト自転車で問題なのは、シートチューブ自体は水平に対し70°前後の角度をなすよう後方に傾斜しているのに対し、チェーンステーはシートチューブからほぼ水平に延び出していることである。このため、シートチューブとチェーンステーは70°から80°と、鋭角をなす形で交わることになる。電池ホルダーはシートチューブから直角に突き出すため、その先端がチェーンステーにつかえないようにするためには、電池ホルダーを少し上寄りに取り付けねばならない。電池ホルダーとそれが支持する電池ケースの位置が上がればサドルを下げにくくなり、低身長の人には乗りにくいものとなる。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従来の電動アシスト自転車に比べて電池ホルダーの取付位置を下げることが可能な電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によれば、電動アシスト自転車は、電池駆動のモータでペダル踏力をアシストするものであって、フレームのシートチューブと後輪の間の空間が電池配置空間とされ、前記シートチューブの背面には前記電池を収納した電池ケースの少なくとも下端を支持する電池ホルダーが取り付けられるとともに、前記シートチューブの下端から後方に延び出すチェーンステーは、最初は後下がりの傾斜で、途中から後下がりの度合いが緩和または後上がりとなる屈曲形状を有する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記チェーンステーは、前記シートチューブから、当該シートチューブと直角をなす形で延び出す。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、チェーンステーがシートチューブから後下がりの傾斜をもって延び出すため、電池ケースの少なくとも下端を支持する電池ホルダーは、先端がチェーンステーにつかえないので、シートチューブにおける取付位置を下げることができる。このため、電池ケースの位置が下がり、電動アシスト機能を備えない一般の自転車と同様に、サドルの高さを下げて低身長の人に乗りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動アシスト自転車の側面図である。
【図2】前記電動アシスト自転車の部分拡大図である。
【図3】前記電動アシスト自転車のブロック構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電動アシスト自転車の側面図である。
【図5】本発明を実施しない電動アシスト自転車の側面図である。
【図6】電動アシスト自転車のキャリア部の側面図である。
【図7】図6のキャリアの上面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】図8に相当する従来のキャリアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1から図3に基づき本発明の第1実施形態に係る電動アシスト自転車の構造を説明する。
電動アシスト自転車1のフレーム10は、前端のヘッドチューブ11と、搭乗者の騎乗位置に配置されるシートチューブ12をダウンチューブ13で連結した構造を有する。シートチューブ12には上端にサドル14を有するシートポスト15が上下位置調整可能に挿入される。ヘッドチューブ11はハンドル16のハンドルステム17を回転自在に保持する。
前輪18は、ハンドルステム17に回転不能に連結するフロントフォーク19に支持される。後輪20は、シートチューブ12の上端から後方に延び出すシートステー21と、シートチューブ12の下端から後方に延び出すチェーンステー22によって支持される。
シートステー21とチェーンステー22はそれぞれ左右一対設けられ、後輪20を挟むリアフォーク23を形成する。
シートチューブ12、ダウンチューブ13、及びチェーンステー22は一種の管継手であるハンガーラグ24に接続され、溶接される。ハンガーラグ24はペダル25を備えたクランク26を回転自在に支持する。クランク26の回転力はチェーン27により後輪20に伝達される。
前輪18に対しては、そのリムに制動をかける前ブレーキ28が設けられる。前ブレーキ28はフロントフォーク19に支持されている。後輪20に対しては、そのハブに対し制動をかける後ブレーキ(図示せず)が設けられる。
フロントフォーク19とハンドルステム17には前かご29が取り付けられる。前かご29の下にはヘッドランプ30が取り付けられている。リアフォーク23にはキャリア31とスタンド32が取り付けられる。
電動アシスト自転車1の要であるモータ40(図3参照)は、前輪18のハブの中にダイレクトドライブ方式のものが組み込まれている。モータ40に電力を供給する電池41は、シートチューブ12の背面に着脱可能に取り付けられる電池ケース42に収納されている。電池41は充電可能な二次電池である。電動アシスト自転車1の制御を司る制御装置50には、ハンドル16に取り付けられた手元操作部51より操作指示が伝えられる。
制御装置50の主要構成要素はマイクロコンピュータ52である。制御装置50はインバータ53を介してモータ40を制御する。モータ40は、ペダル25を踏んでいるときは前輪18を駆動する力を発生し、前進する電動アシスト自転車1の持つ慣性により前輪18が回っているときは回生制動を行うものであり、回生制動時に発生する電力は電池41の補助充電に利用される。
制御装置50にはトルクセンサ54からペダル踏力に関する情報が伝えられる。トルクセンサ54はクランク26の設置箇所に設けられている。
手元操作部51には、電動アシスト走行を選択する電源スイッチや、電動アシスト走行の際の走行モードを選択するモードスイッチ、ヘッドランプ30の点灯/消灯を選択するヘッドランプスイッチなどが配置されている。
ヘッドチューブ11とハンドルステム17の間にはハンドル切れ角検出装置55が配置される。ハンドル切れ角検出装置55が、ハンドル16の切れ角が所定の大きさになったことを検出すると、制御装置50はモータ40によるアシスト力を弱める。これにより、ハンドル16が大きく切られているところへ強力なアシスト力が加わってハンドルコントロールが難しくなり、転倒や暴走を招くといった事態を防ぐことができる。ハンドル16を切れ角大の状態から切れ角小の状態に戻せば元のアシスト力に復帰する。
本発明の特徴とする点は、チェーンステー22の形状にある。シートチューブ12の下端から後方に延び出すチェーンステー22は、最初は後下がりの傾斜で、途中から後下がりの度合いが緩和または後上がりとなる屈曲形状を有する。実施形態では、チェーンステー22はシートチューブ12と直角をなす形で延び出し、後輪20の少し手前で屈曲して、それ以後の部分はやや後上がりの傾斜となっている。チェーンステー22の前部の後下がり区間の長さは、後述する電池ホルダーの前後幅以上の長さに設定する。
シートチューブ12と後輪20の間の空間が電池配置空間とされており、ここに電池ケース42が配置される。電池ケース42は、シートチューブ12の背面に取り付けられた電池ホルダーによって支持される。実施形態では、電池ホルダーは上部電池ホルダー60と下部電池ホルダー61によって構成される。下部電池ホルダー61は電池ケース42の下端を受ける鋼板製の部品であって、シートチューブ12に溶接で固定される。図2に示す通り、下部電池ホルダー61には電池ケース42に電気的に接続する接続端子を有するコネクター62が取り付けられている。上部電池ホルダー60には電池ケース42を取り外せないようにロックするキー部63が設けられている。
上部電池ホルダー60と下部電池ホルダー61はそれぞれシートチューブ12に対し直角をなす形で取り付けられるが、前述の通り、チェーンステー22もシートチューブ12と直角をなす形で延び出しているため、下部電池ホルダー61をぎりぎりまでチェーンステー22に寄せても、下部電池ホルダー61の先端がチェーンステー22につかえない。このため、下部電池ホルダー61と、電池ケース42のサイズから下部電池ホルダー61に対する距離が自動的に定まる上部電池ホルダー60の位置を引き下げることができ、シートチューブ12に対するシートステー21の接続位置と、シートチューブ12の上端の高さそのものも引き下げることができる。その結果、サドル14の下限位置が下がり、電動アシスト機能を備えない一般の自転車と同様に、サドル14の高さを下げて低身長の人に乗りやすくすることができる。
本発明の実施にあたっては、チェーンステー22の製造工程に曲げ工程を追加するだけでよく、コストをかけずにサドル下限位置引き下げという目的を達成することができる。
本発明の利点は、図5に示す、本発明を実施していない電動アシスト自転車と比較すれば明白である。図5の電動アシスト自転車101(構成要素の符号は、本発明の実施形態の説明に用いた符号をそのまま使用する)では、チェーンステー22は屈曲しておらず直線状であり、シートチューブ12に対し鋭角をなしている。このため、下部電池ホルダー61の先端がチェーンステー22につかえてしまい、下部電池ホルダー61の取付位置を下げることができない。下部電池ホルダー61の取付位置が下がらなければ上部電池ホルダー60の取付位置も下がらず、シートチューブ12に対するシートステー21の接続位置と、シートチューブ12の上端の高さそのものも下がらない。その結果、サドル14の下限位置が下がらず、低身長の人には乗りにくいものになる。
本発明の第2実施形態を図4に示す。第1実施形態の電動アシスト自転車1では、チェーンステー22がシートチューブ12と直角をなす形で延び出していたが、第2実施形態の電動アシスト自転車1では、チェーンステー22はシートチューブ12に対し少しだけ鋭角をなす形で延び出している。このため、下部電池ホルダー61の先端がチェーンステー22に当たるので、その箇所を溶接する。このように下部電池ホルダー61を、シートチューブ12とチェーンステー22を橋渡しする形で両者に溶接することにより、下部電池ホルダー61の取り付けが堅牢化する上、フレーム10の剛性も向上する。
キャリア31は従来のキャリアに比べ構造が改善されている。それを図6から図8に基づき説明する。
キャリア31は鉄・アルミニウム・ステンレススチール等の金属からなり、次の部材を組み合わせて構成される。その部材とは、内フレーム70、外フレーム71、前ビーム72、後ビーム73、及びステー74である。
内フレーム70はコ字形の部材であって、そのコの字は前方に向かって開いており、前端部分は外フレーム71の下をくぐって前方に突き出す。その部分はシートステー21にボルト75で連結される連結部76となる。
外フレーム71は内フレーム70を囲む平面形状が隅丸長方形の部材であり、長手方向は電動アシスト自転車1の前後方向に一致している。外フレーム71の後寄りの箇所の下面には左右一対の紐掛け77が溶接固定されている。
前ビーム72と後ビーム73は電動アシスト自転車1の前後方向と直交する棒状の部材であって、互いに間隔を置く形で、それぞれ内フレーム70と外フレーム71に下からあてがわれ、内フレーム70と外フレーム71の両方に対し溶接される。この溶接により、キャリア31が形作られることになる。
前ビーム72の両端は下方に折れ曲がり、紐掛け78となっている。後ビーム73の両端も下方に折れ曲がるが、ここにはステー74がリベット79で連結されている。ステー74はリベット79を中心として回動でき、先端は後輪20のハブ軸に、スタンド31及びリアフェンダー80と共にナット81で固定される。
キャリア31の特徴とするところは、内フレーム70の材料として中実の丸棒を採用した上で、外フレーム71の材料として、内フレーム70の丸棒と外径の等しい円形断面のパイプを採用した点にある。このようにすることにより、図8に示す通り内フレーム70と外フレーム71の上面の高さが揃い、荷物を安定して載せられることになる。
自転車のキャリアは、JIS規格やBAA(BICYCLE ASSOCIATION (JAPAN) APPROVED)基準で定められている、荷重や変形量に関する強度基準に適合していなければならない。強度的に重要な役割を果たすのは、ステー74はもちろんであるが、連結部76が形成された内フレーム70であり、そのために内フレーム70は中実の丸棒で形成されている。
他方外フレーム71には、内フレーム70ほどの強度は要求されないので、図9に示す従来のキャリア131では、外フレーム71の材料として、内フレーム70よりも外径の小さい中実の丸棒が採用されていた。図9に示す通り、内フレーム70と外フレーム71の上面間に高さの違いZが生じることにより、キャリア31の上面が面一にならず、底の平らな荷物には内フレーム70だけが当たることになり、支持が不安定であった。
そこで、上述の通り、外フレーム71の材料として、内フレーム70の丸棒と外径の等しい円形断面のパイプを採用した。パイプとしては、従来の中実丸棒以上の強度のものを用いる。このようにすることにより、キャリア31の強度を落とすことなく、キャリア31の天面全体を面一にして、荷物の支持を安定させることができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は電動アシスト自転車に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0010】
1 電動アシスト自転車
10 フレーム
11 ヘッドチューブ
12 シートチューブ
16 ハンドル
17 ハンドルステム
18 前輪
20 後輪
22 チェーンステー
40 モータ
41 電池
42 電池ケース
60 上部電池ホルダー
61 下部電池ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池駆動のモータでペダル踏力をアシストする電動アシスト自転車において、
フレームのシートチューブと後輪の間の空間が電池配置空間とされ、前記シートチューブの背面には前記電池を収納した電池ケースの少なくとも下端を支持する電池ホルダーが取り付けられるとともに、前記シートチューブの下端から後方に延び出すチェーンステーは、最初は後下がりの傾斜で、途中から後下がりの度合いが緩和または後上がりとなる屈曲形状を有することを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記チェーンステーは、前記シートチューブから、当該シートチューブと直角をなす形で延び出すことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30691(P2012−30691A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171803(P2010−171803)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)