説明

電動ステアリングロック装置

【課題】磁石の脱落を確実に防いでロック部材の位置を常に正確に検出することができる電動ステアリングロック装置を提供すること。
【解決手段】ロック部材6と、該ロック部材6を作動させる電動モータ14と、該電動モータ14の出力軸の回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構と、ロック部材6に固定された磁石11と、該磁石11に対向配置されて磁石11の磁力を検出可能なホール素子(磁気検出素子)17,18が設けられた基板16と、ロック部材6、電動モータ、磁石11及び基板16を収納するハウジング2と、を備えた電動ステアリングロック装置1において、ロック部材6(アーム7A)に、基板16に対して直交する側が開口して磁石11を収納する磁石収納部7dを設けるとともに、該磁石収納部7dの開口部に対向して磁石11の磁石収納部7dからの脱落を阻止する磁石保持部2Dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置を備えるものがある。この電動ステアリングロック装置は、例えばエンジン作動状態でドライバがエンジンスタートスイッチをOFF操作すると、これを検知して電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させてステアリングシャフトに係合させることによってステアリングホイールの回動をロックし、エンジン停止状態でドライバがエンジンスタートスイッチをON操作すると、これを検知して電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させて該ロック部材のステアリングシャフトへの係合を解除し、ステアリングホイールをアンロックしてステアリング操作を可能とするものである。
【0003】
ところで、斯かる電動ステアリングロック装置においてステアリングホイールのロック/アンロックを電動で行うためには、ロック部材がロック位置又はアンロック位置にあるか否かを検知して電動モータを駆動制御する必要があり、そのためにロックバーの位置検知機構が設けられている。この位置検知機構としては、例えばロック部材に磁石を取り付け、ロック位置とアンロック位置に対応する箇所にホール素子等の磁気検出素子をそれぞれ配置し、これらの磁気検出素子によって磁石の磁力を検知することによってロック部材がロック位置にあるかアンロック位置にあるかを検知するものが使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロック部材であるロックバーを支持するロックストッパに磁石を設けるとともに、ロックストッパに対向して配置された基板のロック/アンロックに対応する位置にホール素子をそれぞれ設け、これらのホール素子によってロックバーがロック位置にあるかアンロック位置にあるかを磁気的に検知する構成が開示されている。そして、ロックストッパに磁石を固定する構造として、磁石の脱落方向とは反対側にロックバー等の金属部品を配置し、磁石をそれ自体の磁力によって金属部品に吸着させることによって該磁石をロックストッパに固定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−049908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において提案された構成では、磁石をそれ自体の磁力によって金属部品に吸着させることによって該磁石をロックストッパに固定する方式が採用されているため、車両走行時の大きな振動によって磁石がロックストッパから脱落する可能性がある。又、この構成では、磁石を吸着する金属部品に磁石の磁界が引っ張られて影響を受け、ホール素子によるロック/アンロック位置の検出精度が低下する可能性もある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、磁石の脱落を確実に防いでロック部材の位置を常に正確に検出することができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動モータと、
該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構と、
前記ロック部材に固定された磁石と、
該磁石に対向配置されて前記磁石の磁力を検出可能な磁気検出素子が設けられた基板と、
前記ロック部材、前記電動モータ、前記磁石及び前記基板を収納するハウジングと、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材に、前記基板に対して直交する側が開口して前記磁石を収納する磁石収納部を設けるとともに、該磁石収納部の開口部に対向して前記磁石の磁石収納部からの脱落を阻止する磁石保持部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記磁石保持部を前記ハウジングに設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ロック部材に設けられた磁石収納部の開口部に対向して磁石保持部を設けたため、車両走行時の大きな振動によっても磁石の磁石収納部からの脱落が確実に防がれる。又、ロック部材には基板に対して直交する側が開口する磁石収納部を設けたため、この磁石収納部に収納された磁石と基板との対向距離は車両走行時の大きな振動によっても常に一定に保たれ、ロック部材の位置(ロック/アンロック位置)を常に正確に検出することができ、この検出に基づいて電動モータを駆動制御してステアリングホイールの回動を常に確実にロック/アンロックすることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、磁石の磁石収納部からの脱落を阻止する磁石保持部をハウジングに設けたため、磁石をロック部材の磁石収納部内に固定するための専用の部品が不要となり、部品点数の削減と構造の簡素化、製造コストの低減等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る電動ステアリングロック装置のケースの底面図である。
【図5】本発明に係る電動ステアリングロック装置のケースを底面側から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る電動ステアリングロック装置のカバー組付前の状態をリッドを取り外して示す底面図である。
【図7】本発明に係る電動ステアリングロック装置のカバー組付後の状態をリッドを取り外して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図、図2は同電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す縦断面図、図3は同電動ステアリングロック装置の分解斜視図、図4はケースの底面図、図5は同ケースを底面側から見た斜視図、図6は電動ステアリングロック装置のカバー組付前の状態をリッドを取り外して示す底面図、図7は同電動ステアリングロック装置のカバー組付後の状態をリッドを取り外して示す底面図である。
【0015】
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって不図示のステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回動をロック/アンロックするものであって、そのハウジング2は、非磁性体である金属製(例えば、マグネシウム合金)のケース3と該ケース3の下面開口部を覆う金属製のリッド4によって構成されている。
【0016】
上記ケース3は矩形ボックス状に成形されており、その上部には円弧状の凹部3aが形成されており、この凹部3aには不図示のコラムチューブが嵌め込まれ、このコラムチューブはケース3に結着される不図示の円弧状のブラケットによってケース3に固定される。尚、図示しないが、コラムチューブ内には前記ステアリングシャフトが挿通しており、該ステアリングシャフトの上端にはステアリングホイールが結着され、ステアリングシャフトの下端はステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回動操作すれば、その回転はステアリングシャフトを経てステアリングギヤボックスに伝達され、操舵機構が駆動されて前輪が転舵されて所要の操舵がなされる。
【0017】
又、図3に示すように、ケース3の側部には矩形のコネクタ配設部3bが開口しており、このコネクタ配設部3bが形成された側面以外の他の3つの側面にはピン5が圧入される円孔状のピン孔3c(図3には2つのみ図示)が形成されている。
【0018】
他方、前記リッド4は矩形平板状に成形されており、その内面(上面)には3つのブロック状のピン留め部4Aと3つの円柱状のカバー押さえ部4B及び有底筒状のギヤ保持筒部4Cが一体に立設されている。ここで、3つのピン留め部4Aはケース3の前記ピン孔3cの位置に対応する箇所に形成されており、これらには前記ピン5が圧入される円孔状のピン挿通孔4a(図3には1つのみ図示)が形成されている。
【0019】
而して、リッド4は、図1及び図2に示すように、ケース3の下面開口部を下方から覆うようにケース3の下端部内周に嵌め込まれ、ケース3の側部に形成された3つの前記ピン孔3c(図3参照)に挿通するピン5を該リッド4に立設された3つのピン留め部4Aに形成されたピン挿通孔4aに圧入することによってケース3に固定される。
【0020】
ところで、ハウジング2には、図4及び図5に示すように、ロック部材収納部2Aと基板収納部2Bが形成されており、これらのロック部材収納部2Aと基板収納部2Bとは上下方向に延びる細長い連通部2Cによって互いに連通している。
【0021】
図1及び図2に示すように、上記ロック部材収納部2Aにはロック部材6が収納されており、このロック部材6は、下端部外周に雄ネジ部7aが刻設された略円筒状で非磁性体である金属製のドライバ7と、該ドライバ7内に上下動可能に収容されたプレート状のロックボルト8とで構成されている。ここで、ロックボルト8には上下方向に長い長孔8aが形成されており、ロックボルト8は長孔8aに横方向に挿通するピン9によってドライバ7に連結されている。尚、ピン9は、ドライバ7に横方向に貫設されたピン挿通孔7bに圧入によって挿通保持されている。
【0022】
そして、ロックボルト8は、ケース3に形成された矩形の挿通孔3d内に上下動可能に嵌合しており、これとドライバ7の隔壁7c間に縮装されたスプリング10によって常時上方に付勢され、通常はロックボルト8の長孔8aの下部がピン9に係合することによって該ロックボルト8はドライバ7と共に上下動する。
【0023】
又、ドライバ7の上部外周の相対向する箇所には水平に延びるアーム7Aと上下方向に長い回り止め部7Bが一体に形成されており、アーム7Aは、ハウジング2(ケース3)に形成された前記連通部2C(図4及び図5参照)に上下動可能に収容され、回り止め部7Bは、ケース3に形成された係合溝3e(図1及び図2参照)に係合してドライバ7の回転を阻止する。
【0024】
而して、本実施の形態では、アーム7Aの先端部には、図1、図2及び図6に示すように、後述の基板16に対して直交する一方の側(図6の下側)が開口する横断面矩形の磁石収納部7dが横方向(図1及び図2の紙面垂直方向)に形成されている。磁石収納部7dの内形は、四角柱状の磁石11の外形よりも僅かに大きく形成されており、磁石11が磁石収納部7d内に嵌入されると、該磁石11はガタツキなく磁石収納部7d内に保持される。この磁石収納部7dには四角柱状の磁石11が圧入によって収納されている。そして、図4〜図6に示すように、ハウジング2(ケース3)には、アーム7Aに形成された磁石収納部7dの開口部に前記磁石11の磁石収納部7dからの脱落を阻止する磁石保持部2Dが形成されている。尚、磁石保持部2Dは連通部2Cの一方側の壁によって構成されている。
【0025】
更に、図1及び図2に示すように、ハウジング2内に形成された前記ロック部材収納部2Aには円筒状のギヤ部材12が回転可能に収容されており、該ギヤ部材12の下部外周はリッド4の内面(上面)に立設された前記ギヤ保持筒部4Cによって回転可能に保持されている。そして、このギヤ部材12の下部外周にはウォームギヤ12aが形成され、内周には雌ネジ部12bが形成されている。
【0026】
上記ギヤ部材12の内部には前記ドライバ7の下部が挿入されており、このドライバ7の下部外周に形成された前記雄ネジ部7aは、ギヤ部材12の内周に形成された前記雌ネジ部12bが噛合している。そして、リッド4のギヤ保持筒部4Cの中心部に形成された円柱状のスプリング受け4bとドライバ7の隔壁7cの間にはスプリング13が縮装されており、ロック部材6(ドライバ7とロックボルト8)はスプリング13によって常時上方に付勢されている。
【0027】
又、図6に示すように、ハウジング2内には電動モータ14が横置き状態で収納されており、この電動モータ14の出力軸14aには小径のウォーム15が形成されている。このウォーム15は、ハウジング2に形成された前記ロック部材収納部2A内に収納され、ギヤ部材12の外周に形成された前記ウォームギヤ12aに噛合している。ここで、ウォーム15とウォームギヤ12aは、電動モータ14の出力軸14aの回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構を構成している。尚、図6に示すように、電動モータ14の出力軸14aの自由端は、ケース3に形成された軸受凹部3fによって回転可能に支持されている。
【0028】
一方、図1、図2、図6及び図7に示すように、ハウジング2に形成された前記基板収納部2Bには基板16が収納されており、この基板16は、ケース3の内面の相対向する箇所に形成された基板保持溝3g(図4及び図5参照)にその両端縁を差し込むことによって、その内面がロック部材6の作動方向と平行となるようにケース3に固定保持されている。
【0029】
ここで、図3に示すように、基板16の内面上下のロック及びアンロック位置に対応する位置には磁気検出素子である第1及び第2のホール素子17,18が設けられている。又、基板16にはコネクタ19が取り付けられており、このコネクタ19には、車体に内蔵された不図示のECUから延びる不図示のコネクタが接続され、第1及び第2のホール素子17,18はECUに電気的に接続されている。尚、コネクタ19には上下2つのモータ給電端子20が突設されており、これらのモータ接続端子20は前記電動モータ14に接続され、電動モータ14には不図示のバッテリからモータ接続端子20を経て電力が供給される。又、図6及び図7に示すように、コネクタ19は、ケース3の側部に形成された前記コネクタ配設部3bに組み込まれている。
【0030】
ところで、本実施の形態では、ハウジング2に形成された前記ロック部材収納部2Aと前記基板収納部2Bとを連通させる連通部2Cは、ドライバ7のアーム7Aに取り付けられた前記磁石11と基板収納部2Bに収納された前記基板16との対向空間を形成している。そして、図1及び図2に示すように、ウォーム15と基板16との間には樹脂製のカバー21が配設されており、このカバー21によって連通部2Cの一部が閉塞されている。
【0031】
ここで、カバー21は、図3に示すように、水平なベース部21Aと該ベース部21Aから垂直に起立する垂直部21Bとで構成されており、ベース部21Aには前記ギヤ部材12との干渉を避けるための円弧状の切欠き21aが形成されるとともに、前記電動モータ14の出力軸14aの端部を押さえるための凸部21bが一体に形成されている。
【0032】
而して、カバー21は、垂直部21Bの両側端縁が図4に示すケース3に相対向して形成された一対のカバー挿入溝3hに嵌め込まれ、ベース部21Aがリッド4に形成された前記カバー押さえ部4B上に載置されることによって、図1及び図2に示すようにウォーム15とと基板16との間に配設され、ウォーム15に塗布されたグリースが電動モータ14の作動時に基板16及びリッド4側へ飛び散るのを防ぐ役割を果たす。
【0033】
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の動作(ロック/アンロック動作)を図1及び図2に基づいて説明する。
【0034】
不図示のエンジンが停止している状態では、図1に示すように、ロック部材6のロックボルト8は上限のロック位置にあって、その上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dから凹部3aに突出して不図示のステアリングシャフトに係合して該ステアリングシャフトの回動をロックしており、このロック状態においては不図示のステアリングホイールを回動操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。尚、このとき、アーム7Aに収容された磁石11は、基板16に設けられた上方の第1のホール素子17の近傍に位置している。
【0035】
上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチをON操作すると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してアンロック信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1の基板16に設けられた制御部は、電動モータ14に給電してこれを起動する。
【0036】
上述のように電動モータ14が起動されると、その出力軸14aの回転はウォーム15とウォームギヤ12aによって減速されつつ方向が直角に変換されてギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が回転されるため、該ギヤ部材12の内周に刻設された雌ネジ部12bに螺合する雄ネジ部7aが形成されたドライバ7がスプリング13の付勢力に抗して下動する。このようにドライバ7が下動すると、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が下動する。
【0037】
而して、上述のようにロックボルト8が下動して図2に示すように下限のアンロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dの内部に退避するため、ロックボルト8のステアリングシャフトへの係合が解除され、ステアリングシャフトのロックが解除されてアンロック状態となり、運転者によるステアリングホイールの回動操作が可能となる。
【0038】
又、ドライバ7のアーム7Aが下動すると、その先端部に収容された磁石11が図2に示すように基板16の下方の第2のホール素子18に近づき、該第2のホール素子18によって磁石11の磁力が検出される。これによってロックボルト8がアンロック位置に移動したことが検出され、基板16の制御部が電動モータ14の駆動を停止するとともに、車体側のECUにアンロック完了信号を送信するため、図2に示すアンロック状態が維持され、車両の走行が可能となる。
【0039】
そして、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してロック信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1の基板16に設けられた制御部は、電動モータ14に通電して該電動モータ14の出力軸14aを逆転させる。
【0040】
上述のように電動モータ14の出力軸14aが逆転されると、その回転はウォーム15とウォームギヤ12aを経てギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が逆転されるためにドライバ7が上動し、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が上動する。
【0041】
而して、上述のようにロックボルト8が上動して図1に示すように上限のロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dから凹部3aに突出するため、ロックボルト8がステアリングシャフトに係合し、ステアリングシャフトの回動がロックされてステアリングホイールの回動操作が不可能となる。尚、ロックボルト8のステアリングシャフトの係合溝への係合が良好に行われない場合には、該ロックボルト8に形成された長孔8a内をピン9が相対移動することができる範囲でロックボルト8がスプリング10の付勢力に抗して下動するため、ロックボルト8に過大な負荷が作用することがない。
【0042】
又、ドライバ7のアーム7Aが上動すると、その先端部に収容された磁石11が図1に示すように基板16の上方の第1のホール素子17に近づき、該第1のホール素子17によって磁石の磁力11が検出される。これによってロックボルト8がロック位置に移動したことが検出され、基板16の制御部が電動モータ14の駆動を停止するとともに、車体側のECUにロック完了信号を送信するため、図1に示すロック状態が維持され、これによって車両の盗難が防がれる。尚、本実施の形態では、第1及び第2のホール素子17,18をロック位置及びアンロック位置において磁石11と対向する位置に設けず、これらのロック位置及びアンロック位置から多少外れた位置に配置したが、これは両ホール素子17,18を所定距離以上離すことによって、磁石11がロック位置又はアンロック位置に達した際に両ホール素子17,18が磁石11の磁力を同時に検出するという不具合の発生を防ぐためである。
【0043】
而して、本発明に係る電動ステアリングロック装置1によれば、ロック部材6(アーム部7A)に、基板16に対して直交する側が開口して磁石11を収納する磁石収納部7dを設けるとともに、該磁石収納部7dの開口部に対向して磁石11の磁石収納部7dからの脱落を阻止する磁石保持部2Dをハウジンング2(ケース3)に設けたため、車両走行時の大きな振動によっても磁石11の磁石収納部7dからの脱落が確実に防がれる。
【0044】
又、ロック部材6(アーム7A)には基板16に対して直交する側が開口する磁石収納部7dを設けたため、磁石11が基板16に対して近づく方向(図1の左側)、或いは基板16から遠ざかる方向(図1の右側)にズレることを防ぐことができる。磁石11の位置ズレがホール素子17,18の磁気検出に及ぼす影響は、磁石11が基板16に対して対向方向(図1の左右方向)に移動した場合に比べて、基板16に対して直交方向に移動した場合の方が少ない。従って、磁石収納部7dの開口部を基板16に対して直交する側に設けることによって、この磁石収納部7dに収納された磁石11と基板16との対向距離は車両走行時の大きな振動によっても常に一定に保たれ、ロック部材6の位置(ロック/アンロック位置)を常に正確に検出することができ、この検出に基づいて電動モータ14を駆動制御してステアリングホイールの回動を常に確実にロック/アンロックすることができる。
【0045】
更に、本実施の形態では、磁石11の磁石収納部7dからの脱落を阻止する磁石保持部2Dをハウジング2(ケース3)に設けたため、磁石11をロック部材6(アーム7A)の磁石収納部7d内に固定するための専用の部品が不要となり、部品点数の削減と構造の簡素化、製造コストの低減等を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電動ステアリングロック装置
2 ハウジング
2A ハウジングのロック部材収納部
2B ハウジングの基板収納部
2C ハウジングの連通部
2D ハウジングの磁石保持部
3 ケース
3a ケースの凹部
3b ケースのコネクタ配設部
3c ケースのピン孔
3d ケースのロックボルト挿通孔
3e ケースの係合溝
3f ケースの軸受凹部
3g ケースの基板保持溝
3h ケースのカバー挿入溝
4 リッド
4A リッドのピン留め部
4B リッドのカバー押さえ部
4C リッドのギヤ保持筒部
4a リッドのピン挿通孔
4b リッドのスプリング受け
5 ピン
6 ロック部材
7 ドライバ
7A ドライバのアーム
7B ドライバの回り止め部
7a ドライバの雄ネジ部
7b ドライバのピン挿通孔
7c ドライバの隔壁
7d アームの磁石収納部
8 ロックボルト
8a ロックボルトの長孔
9 ピン
10 スプリング
11 磁石
12 ギヤ部材
12a ウォームギヤ
12b ギヤ部材の雌ネジ部
13 スプリング
14 電動モータ
14a 電動モータの出力軸
15 ウォーム
16 基板
17,18 ホール素子(磁気検知素子)
19 コネクタ
20 モータ給電端子
21 カバー
21A カバーのベース部
21B カバーの垂直部
21a カバーの切欠き
21b カバーの凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動モータと、
該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構と、
前記ロック部材に固定された磁石と、
該磁石に対向配置されて前記磁石の磁力を検出可能な磁気検出素子が設けられた基板と、
前記ロック部材、前記電動モータ、前記磁石及び前記基板を収納するハウジングと、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材に、前記基板に対して直交する側が開口して前記磁石を収納する磁石収納部を設けるとともに、該磁石収納部の開口部に対向して前記磁石の磁石収納部からの脱落を阻止する磁石保持部を設けたことを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記磁石保持部を前記ハウジングに設けたことを特徴とする請求項1記載の電動ステアリングロック装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−11788(P2012−11788A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147064(P2010−147064)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)