説明

電動ステアリングロック装置

【課題】ロック部材のアンロック位置での誤検知を防いで車両走行中のステアリングホイールのアンロック状態を確実に保障することができる電動ステアリングロック装置を提供すること。
【解決手段】ロック部材(ロックボルト)8と、該ロック部材6を作動させる電動モータ14と、該電動モータ14の出力軸の回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構と、ロック部材(可動部材)6に固定された磁石11と、該磁石11の磁力を検出するホール素子(磁気検出素子)17〜19と、該ホール素子17〜19の検出結果に応じて電動モータ14を制御するマイコン(制御手段)20と、を備えた電動ステアリングロック装置1において、前記ロック部材6(磁石11)がアンロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる第1のホール素子18と、OFF状態からON状態に切り替わる第2のホール素子19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置を備えたものがある。この電動ステアリングロック装置は、車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、該ロック部材を作動させる電動モータと、該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構を備えている。
【0003】
斯かる電動ステアリングロック装置は、エンジン作動状態で運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作すると、これを検知した電動ステアリングロック装置の上位ユニットは、エンジンを停止させ、安全が確認されたことを条件に電動ステアリングロック装置に対してロック要求を行う。電動ステアリングロック装置は、このロック要求を受けると、電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させてステアリングシャフトに係合させることによってステアリングホイールの回動をロックする。一方、エンジン停止状態でドライバがエンジンスタートスイッチをON操作すると、これを検知した上位ユニットは、電動ステアリングロック装置に対してアンロック要求を行う。電動ステアリングロック装置は、このアンロック要求を受けると、電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させて該ロック部材のステアリングシャフトへの係合を解除し、ステアリングホイールをアンロックしてステアリング操作を可能とするものである。
【0004】
而して、斯かる電動ステアリングロック装置においてステアリングホイールのロック/アンロックを電動で行うためには、ロック部材がロック位置にあるかアンロック位置にあるかを検知して電動モータを駆動制御する必要があり、そのためにロック部材の位置検知機構が設けられている。この位置検知機構としては、例えばロック部材等の可動部材に磁石を取り付け、ロック位置とアンロック位置に対応する箇所にホール素子等の磁気検知素子をそれぞれ配置し、これらの磁気検知素子によって磁石の磁力を検知することによってロック部材がロック位置にあるかアンロック位置にあるかを検知するものが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、電動ステアリングロック装置においては、車両の走行中にステアリングホイールの回動がロックしないようロック部材が確実にアンロック位置にあることが保障されねばならない。その対策の1つとして、アンロック側の位置に複数の磁気検出素子を配置する方法があり、この方法によれば1つの磁気検出素子が故障しているか否かを他の磁気検出素子の出力によって確認することができるため、ロック部材の位置の誤検知を防ぐことができ、磁気検出精度が高められる。このことを図9に基づいて具体的に説明する。
【0006】
図9は位置検出素子であるホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図であり、ロック(LOCK)位置近傍には1つのホール素子(LOCK_SW)117が配置され、アンロック(UNLOCK)位置近傍には2つのホール素子(UNLOCK_SW#1,#2)118,119が配置されている。
【0007】
ロック位置近傍に配された1つのホール素子117は、不図示のロック部材に設けられた磁石111の中心が図示の検知範囲Δ1に位置するとOFF状態からON状態に切り替わり、これによってロック部材がロック位置に移動したことが検知される。
【0008】
これに対して磁石111の中心が図示の検知範囲Δ2に位置すると、アンロック位置近傍に配置された2つのホール素子118,119は共にOFF状態からON状態に切り替わり、これによってロック部材がアンロック位置に移動したことが検知される。従って、2つのホール素子118,119のうちの一方が故障しているか否かを他方の出力によって確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−049908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図9に示した従来の構成では、ロック部材が移動しているときに強電磁場が発生すると、ロック部材がアンロック位置にないにも拘らず、アンロック側の2つのホール素子118,119が共にOFF状態からON状態に切り替わり、ロック部材がアンロック位置に移動したものと誤検知され、ロック部材が途中で停止し、ステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動される危険性がある。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ロック部材のアンロック位置での誤検知を防いで車両走行中のステアリングホイールのアンロック状態を確実に保障することができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動モータと、
該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構と、
可動部材に固定された磁石と、
前記ロック位置とアンロック位置に対応する位置にそれぞれ配置されて前記磁石の磁力を検出する磁気検出素子と、
該磁気検出素子の検出結果に応じて前記電動モータを制御する制御手段と、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材がアンロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる第1の磁気検出素子と、OFF状態からON状態に切り替わる第2の磁気検出素子を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1の磁気検出素子を、前記ロック部材がロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる位置に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、ロック部材がアンロック位置に移動したときに第1の磁気検出素子はON状態からOFF状態に切り替わり、第2の磁気検出素子は逆にOFF状態からON状態に切り替わるとロック部材がアンロック位置に移動したものと判断するようにしたため、ロック部材の移動中に強電磁場が発生しても、第1及び第2の磁気検出素子が2つとも不意に反転して切り替わることがない。即ち、ロック部材がロック位置からアンロック位置に向けて移動中に強電磁場が発生し、第1及び第2の磁気検出素子が共にON状態となっても、制御手段は、この状態をロック部材がアンロック位置に移動したものとは判断せず、電動モータの駆動を維持する。従って、ロック部材がアンロック位置にないにも拘らず、ロック部材がアンロック位置に移動したものと誤検知されることがなく、ロック部材が途中で停止してステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動されてしまう危険性を回避することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、第1の磁気検出素子を、ロック部材がロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる位置に配置したため、該第1の磁気検出素子はロック部材のロック位置も検知する機能を果たし、ロック部材のロック位置を検知するための専用の磁気検出素子が不要となり、部品点数を削減して構造の単純化とコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のバネ部材の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のバネ部材の作用を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のシステム構成図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図である。
【図9】従来の電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図、図2は同電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す縦断面図、図3は同電動ステアリングロック装置の分解斜視図、図4はバネ部材の斜視図、図5は同バネ部材の作用を説明する図、図6は電動ステアリングロック装置のシステム構成図、図7はホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図である。
【0019】
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって不図示のステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回動をロック/アンロックするものであって、そのハウジング2は、非磁性体の金属(例えば、マグネシウム合金)で構成されたケース3と該ケース3の下面開口部を覆う金属製のリッド4によって構成されている。
【0020】
上記ケース3は矩形ボックス状に成形されており、その上部には円弧状の凹部3aが形成され、この凹部3aには不図示のコラムチューブが嵌め込まれ、このコラムチューブはケース3に結着される不図示の円弧状のブラケットによってケース3に固定される。尚、図示しないが、コラムチューブ内には前記ステアリングシャフトが挿通しており、該ステアリングシャフトの上端にはステアリングホイールが結着され、ステアリングシャフトの下端はステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回動操作すれば、その回転はステアリングシャフトを経てステアリングギヤボックスに伝達され、操舵機構が駆動されて左右一対の前輪が転舵されて所要の操舵がなされる。
【0021】
又、図3に示すように、ケース3の側部には矩形のコネクタ配設部3bが開口しており、このコネクタ配設部3bが形成された側面以外の他の3つの側面にはピン5が圧入される円孔状のピン孔3c(図3には2つのみ図示)が形成されている。
【0022】
他方、前記リッド4は矩形平板状に成形されており、その内面(上面)には3つのブロック状のピン留め部4Aと3つの円柱状のカバー押さえ部4B及び有底筒状のギヤ保持筒部4Cが一体に立設されている。ここで、3つのピン留め部4Aはケース3の前記ピン孔3cの位置に対応する箇所に形成されており、これらには前記ピン5が圧入される円孔状のピン挿通孔4a(図3には1つのみ図示)が形成されている。
【0023】
而して、リッド4は、図1及び図2に示すように、ケース3の下面開口部を下方から覆うようにケース3の下端部内周に嵌め込まれ、ケース3の側部に形成された3つの前記ピン孔3c(図3参照)に挿通するピン5を該リッド4に立設された3つのピン留め部4Aに形成されたピン挿通孔4aに圧入することによってケース3に固定される。
【0024】
ところで、ハウジング2には、図1及び図2に示すように、ロック部材収納部2Aと基板収納部2Bが形成されており、これらのロック部材収納部2Aと基板収納部2Bとは上下方向に延びる細長い連通部2Cによって互いに連通している。
【0025】
又、図1及び図2に示すように、上記ロック部材収納部2Aにはロック部材6が収納されており、このロック部材6は、下端部外周に雄ネジ部7aが刻設された略円筒状のドライバ7と、該ドライバ7内に上下動可能に収容されたプレート状のロックボルト8とで構成されている。ここで、ロックボルト8には上下方向に長い長孔8aが形成されており、ロックボルト8は長孔8aに横方向に挿通するピン9によってドライバ7に連結されている。尚、ピン9は、ドライバ7に横方向に貫設されたピン挿通孔7bに圧入によって挿通保持されている。
【0026】
そして、ロックボルト8は、ケース3に形成された矩形の挿通孔3d内に上下動可能に嵌合しており、これとドライバ7の隔壁間7cに縮装されたスプリング10によって常時上方に付勢され、通常はロックボルト8の長孔8aの下部がピン9に係合することによって該ロックボルト8はドライバ7と共に上下動する。
【0027】
又、ドライバ7の上部外周の相対向する箇所には水平に延びる係合部としてのアーム7Aと上下方向に長い回り止め部7Bが一体に形成されており、アーム7Aは、ハウジング2(ケース3)に形成された前記連通部2Cに上下動可能に収容され、回り止め部7Bは、ケース3に形成された係合溝3eに係合してドライバ7の回転を阻止する。そして、アーム7Aの先端部には横断面矩形の磁石収納部7dが形成されており、この磁石収納部7dには四角柱状の磁石11が圧入によって収納されている。
【0028】
更に、図1及び図2に示すように、ハウジング2内に形成された前記ロック部材収納部2Aには円筒状のギヤ部材12が回転可能に収容されており、該ギヤ部材12の下部外周はリッド4の内面(上面)に立設された前記ギヤ保持筒部4Cによって回転可能に保持されている。そして、このギヤ部材12の下部外周にはウォームギヤ12aが形成され、内周には雌ネジ部12bが形成されている。
【0029】
上記ギヤ部材12の内部には前記ドライバ7の下部が挿入されており、このドライバ7の下部外周に形成された前記雄ネジ部7aは、ギヤ部材12の内周に形成された前記雌ネジ部12bが噛合している。そして、リッド4のギヤ保持筒部4Cの中心部に形成された円柱状のスプリング受け4bとドライバ7の隔壁7cの間にはスプリング13が縮装されており、ロック部材6(ドライバ7とロックボルト8)はスプリング13によって常時上方に付勢されている。
【0030】
又、図1及び図2に示すように、ハウジング2に形成された前記ロック部材収納部2Aには電動モータ14が横置き状態で収納されており、この電動モータ14の出力軸14aには小径のウォーム15が形成され、このウォーム15はギヤ部材12の外周に形成された前記ウォームギヤ12aに噛合している。ここで、ウォーム15とウォームギヤ12aは、電動モータ14の出力軸14aの回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構を構成している。
【0031】
一方、図1及び図2に示すように、ハウジング2に形成された前記基板収納部2Bには、その内面がロック部材6の作動方向と平行となるように基板16が収納されており、この基板16の内面上下のロック位置とアンロック位置に対応する位置には磁気検出素子である1つのホール素子(LOCK_SW)17と2つの第1及び第2のホール素子(UNLOCK_SW#1,#2)18,19がそれぞれ設けられており、これらのホール素子17〜19と前記磁石11によって作動位置検出機構が構成され、この作動位置検出機構によって後述のようにロック部材6(ロックボルト8)の位置(ロック/アンロック位置)が検出される。
【0032】
ここで、上記作動位置検出機構を含む電動ステアリングロック装置1のシステム構成を図6に基づいて以下に説明する。
【0033】
前記ホール素子17〜19は、電動モータ14を駆動制御する制御手段であるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称する)20に電気的に接続されており、マイコン20は、通信インターフェイス(通信I/F)21及び車両の通信ライン22を経て車両に搭載された不図示のECUに電気的に接続されている。尚、図3に示すように、基板16には通信インターフェイス21の機能を果たすコネクタ23が取り付けられており、このコネクタ23には、前記マイコン20(図6参照)から延びる不図示の電気的接続線が接続され、ホール素子17〜19は上述のようにマイコン20に電気的に接続されている。
【0034】
ここで、図7に示すように、ロック(LOCK)位置近傍には1つのホール素子(LOCK_SW)17が配置され、アンロック(UNLOCK)位置近傍には2つのホール素子(UNLOCK_SW#1,#2)18,19が配置されている。
【0035】
ロック位置近傍に配された1つのホール素子17は、ロック部材6(アーム7A)に設けられた磁石11の中心が図示の検知範囲Δ1に位置するとOFF状態からON状態に切り替わり、これによってロックボルト8がロック位置に移動したことがマイコン20によって判断される。
【0036】
これに対して磁石11の中心が図示の検知範囲Δ2に位置すると、アンロック位置近傍に配置された一方のホール素子18はON状態からOFF状態に切り替わり、他方のホール素子19は逆にOFF状態からON状態に切り替わり、これによってロックボルト8がアンロック位置に移動したことがマイコン20によって判断される。
【0037】
又、図6に示すように、車両に搭載されたバッテリ24には前記電動モータ(M)14がロックリレー25とアンロックリレー26を介して電気的に接続されており、ロックリレー25とアンロックリレー26はマイコン20から送信されるロック信号とアンロック信号によってそれぞれ駆動される。ここで、図3に示すように、前記コネクタ23には上下2つのモータ給電端子27が突設されており、これらのモータ接続端子27は電動モータ14に接続されている。
【0038】
ところで、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、ハウジング2に形成された前記ロック部材収納部2Aと前記基板収納部2Bとを連通させる連通部2Cは、ドライバ7のアーム7Aに取り付けられた前記磁石11と基板収納部2Bに収納された前記基板16との対向空間を形成している。そして、ロック部材6と基板16との間の位置(アーム7Aの磁石収納部7dの開口部に対向して磁石11の磁石収納部7dからの脱落を阻止する位置)には樹脂製のカバー28が配設されており、このカバー28によって連通部2Cが閉塞されるとともに、磁石11の磁石収納部7dからの脱落が阻止されている。
【0039】
ここで、カバー28は、図3に示すように、水平なベース部28Aと該ベース部28Aから垂直に起立する遮蔽部28Bとで構成されており、ベース部28Aには前記ギヤ部材12との干渉を避けるための円弧状の切欠き28aが形成されるとともに、前記電動モータ14の出力軸14aの端部を押さえるための凸部28bが一体に形成されている。
【0040】
又、カバー28の遮蔽部28Bには、前記ドライバ7の水平なアーム7Aの上下動を許容する袋状の凹部28cが形成されており、この凹部28c内にアーム7Aの先端部及び該アーム7Aの磁石収納部7dに収納された磁石11が挿入されている。
【0041】
而して、カバー28は、遮蔽部28Bの両側端縁がケース3に相対向して形成された不図示の一対のカバー挿入溝に嵌め込まれ、ベース部28Aがリッド4に形成された前記カバー押さえ部4B上に載置されることによって、図1及び図2に示すようにロック部材6と基板16との間に配設されている。
【0042】
ところで、本実施の形態では、カバー28の凹部28c内にはバネ部材29が嵌合保持されている。このバネ部材29は、ステンレス等の非磁性材料によって構成され、図4に示すように、上方が開口する二股状(略U字状)に成形され、その高さ方向中間部には内方に向かって対向する山形の一対の係合凸部29aが形成されている。ここで、一対の係合凸部29aの間隔はドライバ7に形成された前記アーム7Aの幅寸法よりも小さく設定されている。
【0043】
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の動作(ロック/アンロック動作)について説明する。
【0044】
不図示のエンジンが停止している状態では、図1に示すように、ロック部材6のロックボルト8は上限のロック位置にあって、その上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dから凹部3aに突出して不図示のステアリングシャフトに係合している。この状態では、ステアリングシャフトの回動がロックしており、このロック状態においては不図示のステアリングホイールを回動操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。尚、このとき、アーム7Aに収容された磁石11は、基板16に設けられたホール素子17の近傍に位置しており、ホール素子17はON状態にあり、パソコン20はロックボルト8がロック位置にあることを認識している。
【0045】
上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチをON操作すると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してアンロック要求信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1のマイコン20は、アンロックリレー26に対してアンロック信号を出力する。すると、図6に示すアンロックリレー26は破線にて示す位置に切り替わり、ロックリレー25は実線位置にあるため、バッテリ24からの電流は図6に実線にて示す経路を流れて電動モータ14が起動される。
【0046】
上述のように電動モータ14が起動されると、その出力軸14aの回転はウォーム15とウォームギヤ12aによって減速されつつ方向が直角に変換されてギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が回転されるため、該ギヤ部材12の内周に刻設された雌ネジ部12bに螺合する雄ネジ部7aが形成されたドライバ7がスプリング13の付勢力に抗して下動する。このようにドライバ7が下動すると、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が下動する。
【0047】
上述のようにドライバ7のアーム7Aが下動する際、該アーム7Aがバネ部材29の係合突起22aに係合するためにアーム7Aにはその下動を規制する力が作用するが、この規制力(拘束力)は電動モータ14によってアーム7Aに付加される作動力よりも小さいため、アーム7Aは、バネ部材29をその係合凸部29aを押し開くように弾性変形させ、係合凸部29aを乗り越えて図5に実線にて示す位置から鎖線位置へと移動することができる。
【0048】
而して、上述のようにドライバ7のアーム7Aが下動してロックボルト8が図2に示すように下限のアンロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dの内部に退避するため、ロックボルト8のステアリングシャフトへの係合が解除され、ステアリングシャフトのロックが解除されてアンロック状態となり、運転者によるステアリングホイールの回動操作が可能となる。このとき、ドライバ7のアーム7Aに設けられた磁石11の中心が図7に示す検知範囲Δ2に達すると、前述のようにアンロック位置近傍に設けられた一方のホール素子18はON状態からOFF状態に切り替わり、他方のホール素子19は逆にOFF状態からON状態に切り替わるため、マイコン20は、ロックボルト8がアンロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止するとともに、図6に示す通信I/F21及び通信ライン22を介して車体側のECUにアンロック完了信号を送信する。この結果、図2に示すアンロック状態が維持され、車両の走行が可能となる。
【0049】
而して、図2に示すように、ロック部材6がアンロック位置にある状態においては、ドライバ7のアーム7Aがバネ部材29の係合凸部29aに係合するためにロック部材6のロック位置への移動が阻止され、バネ部材29を設けるだけの簡単な構成でロック部材6をアンロック位置に保持することができ、アンロック位置にあるロック部材6のロックボルト8が車両の走行時の振動等によって不意にロック位置へと移動してステアリングがロックするという不具合の発生が確実に防がれ、車両に高い安全性が確保される。
【0050】
そして、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してロック要求信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1のパソコン20は、ロック信号を出力して図6に示すロックリレー25を破線位置に切り替え、アンロックリレー26は実線位置にあるため、バッテリ24からの電流は図6に破線にて示す経路を流れて電動モータ14が逆転起動されてその出力軸14aが逆転される。
【0051】
上述のように電動モータ14の出力軸14aが逆転されると、その回転はウォーム15とウォームギヤ12aを経てギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が逆転されるためにドライバ7が上動し、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が上動する。
【0052】
上述のようにドライバ7のアーム7Aが上動する際、該アーム7Aがバネ部材29の係合突起29aに係合するためにアーム7Aにはその上動を規制する力が作用するが、この規制力(拘束力)は電動モータ14によってアーム7Aに付加される作動力よりも小さい(作動力の方が規制力よりも大きい)ため、アーム7Aは、バネ部材29をその係合凸部29aがアーム7Aとの係合が解除される位置まで弾性変形させ、係合凸部29aを乗り越えて図5に鎖線にて示す位置から実線位置へと移動することができる。
【0053】
而して、上述のようにドライバ7のアーム7Aが上動して磁石11の中心が図7に示す検知範囲Δ1に達すると、ロック位置近傍に設けられたホール素子17はOFF状態からON状態に切り替わるため、マイコン20はロックボルト8がロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止するとともに、図6に示す通信I/F21と通信ライン22を介して車体側のECUにロック完了信号を送信する。この結果、図1に示すようにロックボルト8の上端部がケース3の凹部3aから突出して不図示のステアリングシャフトに係合するため、ステアリングシャフトの回動がロックされるロック状態となり、駐車時における車両の盗難が防がれる。尚、ロックボルト8のステアリングシャフトの係合溝への係合が良好に行われない場合には、該ロックボルト8に形成された長孔8a内をピン9が相対移動することができる範囲でロックボルト8がスプリング10の付勢力に抗して下動するため、ロックボルト8に過大な負荷が作用することがない。
【0054】
次に、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に移動中に強電磁場が発生した場合の動作について説明する。
【0055】
ロックボルト8がロック位置からアンロック位置へ向けて作動している間、第1のホール素子18はON状態、第2のホール素子19はOFF状態となっている。このとき、仮に強電磁場が発生した場合、第1のホール素子18はON状態が維持され、第2のホール素子19はOFF状態からON状態に切り替わる。しかし、マイコン20は、各ホール素子18,19が共にON状態のときにはアンロック検出しないため、そのまま電動モータ14の駆動が維持される。従って、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に作動中に強電磁場が発生した場合でも、ロックボルト8の位置が誤検知されてしまうことがなく、ロックボルト8がアンロック位置に至っていないにも拘らず、誤って電動モータ14の駆動が停止されてしまうことがない。
【0056】
そして、ロックボルタ8がアンロック位置に至るまでに強電磁場がの発生がなくなもと、第1のホーネ素子18はON状態、第2のホール素子19はOFF状態に戻り、更に、ロックボルト8の磁石11の中心が図7に示す検知範囲Δ2に達すると、第1のホール素子18はON状態からOFF状態に切り替わるため、マイコン20は、ロックボルト8がアンロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止する。これにより、ロックボルト8は確実にアンロック位置まで移動する。
【0057】
又、ロックボルト8の磁石11の中心が図7に示す検知範囲Δ2に達してもなお、強電磁場が発生し続けている場合には、各ホール素子18,19は共にON状態となっており、電動モータ14の駆動が停止されることはなく、ロックボルト8は更にアンロック側に向けて移動する。そして、マイコン20は、これに内蔵されたタイマーによって電動モータ14の駆動開始から所定時間(ロックボルト8がロック位置からアンロック位置まで移動するのに必要十分な時間)が経過すると、電動モータ14の駆動を停止するよう構成しているため、ロックボルト8がアンロック位置に移動した後、電動モータ14の駆動が停止される。従って、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に向けて移動中に強電磁場が発生した場合でも、ロックボルト8を確実にアンロック位置まで移動させることができる。
【0058】
而して、本発明に係る電動ステアリングロック装置1によれば、ロックボルト8がアンロック位置に移動したときに第1のホール素子18はON状態からOFF状態に切り替わり、第2のホール素子19は逆にOFF状態からON状態に切り替わるとマイコン20はロックボルト8がアンロック位置に移動したものと判断するようにしたため、ロックボルト8の移動中に強電磁場が発生しても、第1及び第2のホール素子18,19が2つとも不意に反転して切り替わることがない。即ち、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に向けて移動中に強電磁場が発生し、第1及び第2里ホール素子18,19が共にON状態となっても、マイコン20は、この状態をロックボルト8がアンロック位置に移動したものとは判断せず、電動モータ14の駆動を維持する。従って、ロックボルト8がアンロック位置にないにも拘らず、ロックボルト8がアンロック位置に移動したものと誤検知されることがなく、ロックボルト8が途中で停止してステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動されてしまう危険性を回避することができる。
【0059】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図8に基づいて説明する。
【0060】
図8は本実施の形態に係る電動ステアリングロック装置におけるホール素子によるロックボルトの位置検知を説明する図であって、本発明に係る電動ステアリングロック装置の基本構成は前記実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置1のそれと同じであるため、これについての再度の説明は省略し、以下の説明では実施の形態1において使用した符号をそのまま使用する。
【0061】
本実施の形態は、図8に示すように、第1のホール素子18を、前記ロックボルト8がロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる位置に配置したことを特徴とする。
【0062】
従って、本実施の形態では、ロックボルト8がアンロック位置からロック位置に移動し、ロックボルト8と共に移動する磁石11の中心が図8に示す検知範囲Δ1に達して第1のホール素子18がON状態からOFF状態に切り替わるとロックボルト8がロック位置に移動したものと判断することができる。
【0063】
又、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に向かって移動し、磁石11の中心が図8に示す検知範囲Δ1から外れると第1のホール素子18はOFF状態からON状態に切り替わり、その後、磁石11の中心が図8に示す検知範囲Δ2へと移動すると第2のホール素子19がOFF状態からON状態に切り替わると電動モータ14を停止する。そして、その後、ロックボルト8と磁石11が惰性で移動し、第1のホール素子18がON状態からOFF状態に切り替わるとロックボルト8がアンロック位置に移動したものと判断する。或いは、第2のホール素子19がOFF状態からON状態に切り替わった後、第1のホール素子18がON状態からOFF状態に切り替わった時点でロックボルト8がアンロック位置に移動したものとして電動モータ14を停止するようにしても良い。
【0064】
上述のように、第2のホール素子19がOFF状態からON状態に切り替わった後に第1のホール素子18がON状態からOFF状態に切り替わることを条件としてロックボルト8がアンロック位置に移動したものと判断するようにしたため、ロックボルト8の移動中に強電磁場が発生したために第1及び第2のホール素子18,19が共にON状態となった場合であっても、ロックボルト8がアンロック位置に移動したものと誤検知されることがない。このため、ロックボルト8がアンロック位置にないにも拘らず、ロックボルト8がアンロック位置に移動したものと判断されることがなく、ロックボルト8が途中で停止してステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動されてしまう危険性を回避することができる。又、第1のホール素子18と第2のホール素子19との切り替わりのタイミングをずらしているため、各ホール素子18,19が切り替わるタイミングを監視することによって、これらが正常に切り替わったことを確認することができ、故障の検出も可能となる。
【0065】
而して、本実施の形態では、第1のホール素子18を、ロックボルト8がロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる位置に配置したため、該第1のホール素子18はロックボルト8のロック位置も検知する機能を果たし、ロックボルト8のロック位置を検知するための専用の磁気検出素子(実施の形態1におけるホール素子17)が不要となり、部品点数を削減して構造の単純化とコストダウンを図ることができるという効果が得られる。
【0066】
尚、実施の形態1においては、ロックボルト8がアンロック位置に移動したときに、第1のホール素子18と第2のホール素子19とがほぼ同時に切り替わるよう構成しているが、これらの第1のホール素子18と第2のホール素子19とが切り替わるタイミングを、例えば、実施の形態2のようにずらして設けるようにしても良い。このように構成すれば、各ホール素子18,19が切り替わるタイミングを監視することによって、各ホール素子18,19が正常に切り替わったこと確認することができ、故障の検出も可能となる。又、各実施の形態1,2において、ロック検出用のホール素子及びアンロック検出用のホール素子を更に追加設定して構成しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 電動ステアリングロック装置
2 ハウジング
2A ハウジングのロック部材収納部
2B ハウジングの基板収納部
2C ハウジングの連通部
3 ケース
3a ケースの凹部
3b ケースのコネクタ配設部
3c ケースのピン孔
3d ケースのロックボルト挿通孔
3e ケースの係合溝
3f ケースの軸受凹部
3g ケースの基板保持溝
3h ケースのカバー挿入溝
4 リッド
4A リッドのピン留め部
4B リッドのカバー押さえ部
4C リッドのギヤ保持筒部
4a リッドのピン挿通孔
4b リッドのスプリング受け
5 ピン
6 ロック部材(可動部材)
7 ドライバ
7A ドライバのアーム
7B ドライバの回り止め部
7a ドライバの雄ネジ部
7b ドライバのピン挿通孔
7c ドライバの隔壁
7d アームの磁石収納部
8 ロックボルト
8a ロックボルトの長孔
9 ピン
10 スプリング
11 磁石
12 ギヤ部材
12a ウォームギヤ
12b ギヤ部材の雌ネジ部
13 スプリング
14 電動モータ
14a 電動モータの出力軸
15 ウォーム
16 基板
17〜19 ホール素子(磁気検出素子)
20 マイコン(制御手段)
21 通信/IF
22 車両の通信ライン
23 コネクタ
24 バッテリ
25 ロックリレー
26 アンロックリレー
27 モータ給電端子
28 カバー
28A カバーのベース部
28B カバーの遮蔽部
28a カバーの切欠き
28b カバーの凸部
28c カバーの凹部
29 バネ部材
29a バネ部材の係合凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動モータと、
該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構と、
可動部材に固定された磁石と、
前記ロック位置とアンロック位置に対応する位置にそれぞれ配置されて前記磁石の磁力を検出する磁気検出素子と、
該磁気検出素子の検出結果に応じて前記電動モータを制御する制御手段と、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材がアンロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる第1の磁気検出素子と、OFF状態からON状態に切り替わる第2の磁気検出素子を設けたことを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記第1の磁気検出素子を、前記ロック部材がロック位置に移動したときにON状態からOFF状態に切り替わる位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の電動ステアリングロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−25269(P2012−25269A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165737(P2010−165737)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)