説明

電動ステアリングロック装置

【課題】故障に対する安全性を向上する。
【解決手段】電動モータ15と、電動モータ15によりロック部材13をロック作動またはアンロック作動させるモータ駆動制御部31と、モータ駆動制御部31にアンロック作動信号とロック作動信号とを出力する下位マイコン27とを備えた電動ステアリングロック装置10において、モータ駆動制御部31と電動モータ15とを導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する第1切換部34と、電動モータ15に所定電圧を印加するチェック用電源36と、チェック用電源36と電動モータ15とを導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続するスイッチ部37と、電動モータ15の内部抵抗に応じた電圧を出力する第1診断部41と、第1診断部41から入力された電圧によって電動モータ15の故障を判定するモータ故障判定手段(下位マイコン27)とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電動ステアリングロック装置は、ステアリングシャフトに対して係脱するロック部材と、このロック部材を作動させるためのモータと、このモータヘの通電および極性を切り換えるモータ駆動制御部と、このモータ駆動制御部およびモータを介してロック部材をロック作動またはアンロック作動させるマイコンとを備えている。そして、エンジンの作動中にはアンロック状態を維持し、ステアリングの操舵を可能とする一方、エンジンの停止中にはロック状態を維持し、ステアリングの操舵を不可能とする。
【0003】
しかし、電動ステアリングロック装置は、モータ駆動制御部がオン作動した状態で故障し、走行中にロック部材がロック作動するとステアリングの操舵が不可能になるため、大きな事故に繋がる可能性がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、電源からモータヘの給電経路上にスイッチを設け、このスイッチによって車両の走行中にモータに電力が供給されないように構成している。これにより、仮にモータ駆動制御部がオン故障した場合でも、走行中に誤ってロック部材がステアリングシャフトに係合することを防止している。
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動ステアリングロック装置では、ロック部材を作動させるモータ自体が故障した場合に対処できない。そして、このモータ故障の状態では、電動ステアリングロック装置が作動不可能となるため、ステアリングシャフトのロックを解除できない。
【0006】
このモータ故障による不具合を防止するためには、定期的にモータの故障の有無をチェックする必要がある。例えば、モータの駆動前にモータが作動しない程度の電流を流し、モータの内部抵抗値を確認することによって故障の有無をチェックすることが考えられる。しかし、特許文献1に記載の電動ステアリングロック装置では、モータの両電極は両方とも電源側または接地側に接続することでモータを停止状態としている。そのため、この状態でモータに故障チェック用の電流を流すことは難しく、モータの故障をチェックできい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−63354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、故障に対する安全性を向上できる電動ステアリングロック装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の電動ステアリングロック装置は、車両のステアリングシャフトに係脱するロック部材を作動させるモータと、メイン電源から前記モータに供給される駆動電流の極性の切り換えおよび遮断を行ない、前記モータにより前記ロック部材をロック作動またはアンロック作動させるモータ駆動制御部と、前記モータ駆動制御部に、前記モータをアンロック作動させるアンロック作動信号と、前記ロック部材をロック作動させるロック作動信号とを選択的に出力するマイコンと、を備えた電動ステアリングロック装置において、前記モータ駆動制御部から前記モータヘの電源供給経路の一方側を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する第1切換部と、前記第1切換部と前記モータとの間に接続され、前記モータに所定電圧を印加するチェック用電源と、前記チェック用電源から前記モータに供給されるチェック電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続するスイッチ部と、前記チェック用電源から前記モータまでの経路上に接続され、前記モータの内部抵抗に応じた電圧を出力する第1診断部と、前記第1診断部から入力された電圧によって前記モータの故障を判定するモータ故障判定手段と、を備える構成としている。
【0010】
この電動ステアリングロック装置は、モータ駆動制御部とモータとの間に第1切換部を設けているため、電動ステアリングロック装置が非作動状態のときにモータに流れる電流を遮断することができる。そのため、例えばモータ駆動制御部がオン故障してモータに意図しない電力が供給される状態となっても、第1切換部によってモータヘの通電を阻止できる。よって、不意にモータが回転してロック部材がロック作動してしまうことを防止できる。
【0011】
また、モータ駆動制御によってモータの両電極が接地されている状態において、チェック用電源から流れる電流がモータとは反対側のモータ駆動制御部に流れることを、第1切換部によって阻止できる。そのため、モータにチェック電流を確実に流すことができる。これにより、第1診断部によってモータの故障を検出することが可能となり、故障に対する安全性を向上できる。さらに、メイン電源の遮断および接続と、チェック用電源の遮断とを共通の第1切換部によって行なうことができるため、部品点数を削減することもできる。
【0012】
この電動ステアリングロック装置では、前記モータ駆動制御部から前記モータヘの電源供給経路の他方側に接続され、その接続点の電圧を出力する第2診断部と、前記第1診断部および前記第2診断部から出力される電圧の変化を検出して、前記モータ駆動制御部の故障を判断するモータ駆動制御部故障判定手段と、を更に備えることが好ましい。このようにモータ駆動制御部の故障を検出できるようにしているため、故障に対する安全性を更に向上できる。また、第1診断部を、モータおよびモータ駆動制御部の故障検出に兼用しているため、部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
また、前記メイン電源から前記モータ駆動制御部への電源供給経路上に電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する第2切換部と、前記第2切換部と前記モータ駆動制御部との間に接続され、その接続点の電圧を出力する第3診断部と、前記第3診断部から入力された電圧によって前記第2切換部の故障を判定する切換部故障判定手段と、を更に備えることが好ましい。このようにすれば、第1および第2切換部とモータ駆動制御部の3つが同時に故障しない限り、メイン電源からモータヘ不意に通電されることを防止できる。また、第2切換部の故障を第3診断部を介して検出できるため、故障に対する安全性を更に向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動ステアリングロック装置では、第1切換部によって非作動時にモータに流れる電流を遮断できるため、走行中にモータが不意に回転してロック部材がロック作動することを防止できる。また、第1切換部によってチェック用電源からの電流がモータ駆動制御部に流れることを阻止できるため、モータにチェック電流を確実に流し、第1診断部によってモータの故障を検出できる。よって、故障に対する安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の電動ロック装置の制御回路を示す回路図である。
【図2】(A)は非作動状態を示す要部回路図、(B)はアンロック作動状態を示す要部回路図、(C)はロック作動状態を示す要部回路図である。
【図3】第2および第3診断部の構成を示す回路図である。
【図4】図1の各診断部の出力状態と故障箇所との関係を示す図表である。
【図5】電動ロック装置を示し、(A)は断面図、(B)はケースを外した状態の平面図である。
【図6】上位マイコンおよび下位マイコンによるアンロック処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の続きのフローチャートである。
【図8】アンロック処理でのモータ故障判定処理を示すフローチャートである。
【図9】上位マイコンおよび下位マイコンによるロック処理を示すフローチャートである。
【図10】図9の続きのフローチャートである。
【図11】第2実施形態の電動ロック装置の制御回路を示す回路図である。
【図12】図11の要部を示す回路図である。
【図13】電動ロック装置の制御回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る車両の電動ステアリングロック装置(以下「ロック装置」と略する。)10の制御回路を示す。このロック装置10は、制御手段として1個のマイコン(以下「下位マイコン」と称する。)27が実装され、この下位マイコン27が、車両に搭載された上位ユニットの制御手段であるマイコン(以下「上位マイコン」と称する。)1の制御信号に従って、アンロック作動およびロック作動を実行するものである。そして、本実施形態では、ロック装置10に第1から第3の診断部41,45,47を設けることにより、ロック装置10の故障を検出可能とするものである。
【0018】
上位マイコン1は、通信ライン2によりロック装置10と接続されている。この通信ライン2は、ロック装置10をアンロック作動およびロック作動させるための信号、および、作動結果を送受信するための通信線2aを含む。また、上位マイコン1には、メイン電源であるバッテリ3とロック装置10とを、導通可能に接続するとともに導通不可能に遮断する信号を出力する一対の電源制御線4a,4bが接続されている。さらに、上位マイコン1には、エンジンを始動および停止するためのプッシュスイッチ式のイグニッションスイッチ5と、エンジンを始動させるためのスタータ6とが接続されている。そして、イグニッションスイッチ5の操作を検出すると、エンジンが作動していない場合に、ロック装置10をアンロック作動させる信号を出力し、アンロック状態になるとスタータ6を介してエンジンを始動させる。一方、エンジンが作動している場合には、エンジンを停止し、ロック装置10をロック作動させる信号を出力する。
【0019】
ロック装置10は、図5(A),(B)に示すように、図示しないステアリングの回動操作に伴って回動するステアリングシャフト7の周囲に配設される。そして、ロック部材13をアンロック作動することによりステアリングシャフト7を介してステアリングを操舵可能とし、ロック部材13をロック作動することによりステアリングを操舵不可能とする。なお、ステアリングシャフト7には、取付位置に係合凹部8が周方向に所定間隔をもって設けられている。
【0020】
このロック装置10は、一端開口のケース11およびカバー12を有するケーシングを備えている。ケーシングの内部には、係合凹部8に係合するロック部材13と、ロック部材13を進退移動させるための電動モータ15と、電動モータ15の駆動力をロック部材13に伝達するためのアクチュエータと、ロック部材13の作動位置検出手段であるマイクロスイッチ25A〜25Cとが収容されている。
【0021】
ロック部材13は、ケース11の挿通孔に挿通可能な四角柱形状のもので、その上端には、ステアリングシャフト7の係合凹部8に係脱される係合凸部14が設けられている。このロック部材13は、ケース11から進出して係合凸部14が係合凹部8に係合するロック位置、および、後退して係合凸部14がケース11内に没入したアンロック位置の間を進退可能に配設されている。
【0022】
電動モータ15は、ロック部材13を移動させるための駆動源であり、その出力軸にはウォーム16が配設されている。この電動モータ15は、ロック部材13を後退させる正転作動と、ロック部材13を進出させる逆転作動とが可能なものが使用される。この正転および逆転は、一対の接続端子に通電する駆動電流の極性の切り換えにより行われる。
【0023】
アクチュエータは、ロック部材13に連結したカム部材17と、カム部材17を内部に進退可能に配設する回転ギア20と、これらの間に配設されるカムフォロワ24とを備えている。
【0024】
カム部材17は略円筒状をなし、その外周部には、螺旋状をなすように旋回する略半円形状に窪む一対のカム溝18,18が径方向に対向するように設けられている。また、このカム部材17の内部には、ロック部材13を進出方向に付勢するスプリング19が配設されている。このスプリング19は、ロック部材13をロック作動し、係合凸部14が係合凹部8に一致しない場合に、ロック部材13を進出方向に付勢し、係合凸部14と係合凹部8が一致すると進出させて係合させる。
【0025】
回転ギア20は、軸心にカム部材17を収容する収容空間を備えた円筒状のものである。この回転ギア20は、ケース11とカバー12との間に挟み込むようにして、軸方向に移動することなく、周方向に回転可能に保持されている。回転ギア20の外周面には、ウォーム16と噛み合うウォームホイール部21が設けられている。また、回転ギア20の内周面下部には、略半円形状に窪む一対の縦溝22が径方向に対向するように設けられている。さらに、回転ギア20の外周部上側には、マイクロスイッチ25A〜25Cをオンオフさせて、ロック部材13の作動位置を検出するためのスイッチカム部23が設けられている。
【0026】
カムフォロワ24は、球状のスチールボールからなり、回転ギア20の縦溝22に配設され、縦溝22から突出した部分がカム部材17のカム溝18に嵌められる。そして、回転ギア20が回動されると、縦溝22が周方向に回転されることにより、カムフォロワ24がカム部材17のカム溝18に沿って摺動してロック部材13を進退させる。
【0027】
マイクロスイッチ25A〜25Cは、回転ギア20のスイッチカム部23の中間部分に位置するようにケース11およびカバー12の内部に配設した制御基板26に実装されている。これらマイクロスイッチ25A〜25Cは、スイッチカム部23が検出レバーを押圧することによりオンされる常開スイッチである。マイクロスイッチ25A〜25Cは、ロック部材13と連動する回転ギア20の回転位置を検出することで、間接的にロック部材13の作動位置を検出するものである。そして、回転ギア20がアンロック位置まで回転すると、回転ギア20のスイッチカム部23がマイクロスイッチ25A、25Bの検出レバーを押圧してマイクロスイッチ25A、25Bがオンとなる。また、回転ギア20がロック位置まで回転すると、回転ギア20のスイッチカム部23がマイクロスイッチ25Cの検出レバーを押圧してマイクロスイッチ25Cがオンとなる。すなわち、第1のマイクロスイッチ25Aは、回転ギア20およびカム部材17を介してロック部材13がアンロック位置に移動しているか否かを検出する。第2のマイクロスイッチ25Bは、同様にロック部材13がアンロック位置に移動しているか否かを検出する。第3のマイクロスイッチ25Cは、ロック部材13がロック位置に移動しているか否かを検出する。即ち、3個のマイクロスイッチ25A〜25Cのうち、2個のマイクロスイッチ25A,25Bで、アンロック位置に移動しているか否かを検出する構成としている。これは、自動車の走行に係る安全を第1に考えると、ロック部材13がアンロック位置に移動している状態が最も安全であるため、いずれかのマイクロスイッチ25A,25Bが故障しても、確実にアンロック側を検出するためである。なお、作動位置検出手段はマイクロスイッチ25A〜25Cに限られず、ロック部材13に磁石を配設し、その磁力をホール素子によって検出する構成としてもよい。
【0028】
図1に示すように、このロック装置10は、上位マイコン1によってバッテリ3からの電力が導通可能な接続状態と導通不可能な遮断状態に切り換えられる。そして、バッテリ3との接続状態では、制御基板26に実装された下位マイコン27によって電動モータ15が制御される。
【0029】
制御基板26には、上位マイコン1に接続するためのコネクタ28が実装されている。このコネクタ28は、相手方コネクタが接続されることにより、上位マイコン1に接続された電源制御線4a,4bおよび通信線2aと導通可能に接続する。この制御基板26には、電動モータ15、マイクロスイッチ25A〜25Cおよび下位マイコン27の他に、定電圧回路29、通信インターフェイス30およびモータ駆動制御部31が実装されている。そして、本実施形態では、第1,第2切換部34,46、第1〜第3診断部41,45,47およびスイッチ部37を更に実装し、故障に対する安全性を向上できるようにしている。
【0030】
定電圧回路29は、信号入力部が電源制御線4aに接続され、電力入力部がバッテリ3に接続され、電力出力部が下位マイコン27に接続されている。そして、上位マイコン1から起動信号が入力されると、バッテリ3から供給された12Vの電力を5Vの電力に変換して、下位マイコン27に供給するものである。
【0031】
通信インターフェイス30は、第1信号入出力部が通信線2aに接続され、第2信号入出力部が下位マイコン27に接続されている。そして、上位マイコン1と下位マイコン27とを、相互に通信可能に接続するものである。
【0032】
モータ駆動制御部31は、バッテリ3と電動モータ15とを、導通可能に接続するとともに導通不可能に遮断するアンロックリレー32およびロックリレー33を備えている。アンロックリレー32の信号入力部およびロックリレー33の信号入力部は、それぞれ下位マイコン27に接続されている。アンロックリレー32の共通接続端子は、電動モータ15の一対の接続端子のうち一方に接続され、ロックリレー33の共通接続端子は、電動モータ15の他方の接続端子に接続されている。アンロックリレー32の常閉端子およびロックリレー33の常閉端子は、それぞれ接地されている。アンロックリレー32の常開端子およびロックリレー33の常開端子は、それぞれバッテリ3に第2切換部46を介して接続されている。そして、下位マイコン27からアンロック作動信号およびロック作動信号のいずれも入力されていない状態では、図2(A)に示すように、両リレー32,33が接地状態を維持することにより、電動モータ15への通電が遮断される。また、下位マイコン27からアンロック作動信号が入力されると、図2(B)に示すように、アンロックリレー32の接続位置を切り換えることにより、第1切換部34および第2切換部46がオン状態(導通状態)であることを条件に、電動モータ15の一方の接続端子側から電力が供給され、電動モータ15を正転させてアンロック作動させる。さらに、下位マイコン27からロック作動信号が入力されると、図2(C)に示すように、ロックリレー33の接続位置を切り換えることにより、第1切換部34および第2切換部46がオン状態(導通状態)であることを条件に、電動モータ15の他方の接続端子側から電力が供給され、電動モータ15を逆転させてロック作動させる。
【0033】
図1および図2に示すように、第1切換部34は、モータ駆動制御部31から電動モータヘの電源供給経路の一方側を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続するものである。この第1切換部34は常開リレーからなり、一方の接続端子がモータ駆動制御部31のロックリレー33の共通端子に接続され、他方の接続端子が電動モータ15に接続されるように、電源供給経路に介設されている。また、第1切換部34は、AND回路35を介して各マイコン1,27からオン信号が入力されることにより、その入力時のみ閉(接続)状態となる。AND回路35は、出力部が第1切換部34に接続され、第1入力部が下位マイコン27に接続され、第2入力部が電源制御線4bに接続されている。そして、第1切換部34の開閉を、下位マイコン27からの信号と上位マイコン1からの信号とでAND判定とすることで、下位マイコン27の誤動作によって第1切換部34が接続状態となることを防止している。
【0034】
スイッチ部37は、電動モータ15が故障しているか否かを判定する際に作動されるもので、チェック用電源36から電動モータ15への電源供給経路上に介設されている。チェック用電源36は、第1切換部34と電動モータ15との間に接続され、電動モータ15が作動しない5Vの電圧を印加するものである。スイッチ部37は、信号入力部が下位マイコン27に接続され、チェック用電源36から電動モータ15に供給されるチェック電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続するものである。スイッチ部37は、信号入力部に下位マイコン27からオン信号が入力されることにより、その入力時のみ閉(接続)状態となる。ここで、チェック用電源36から電動モータ15へのチェック電流の通電は、第1切換部34が接続状態である場合には、電動モータ15の側ではなくロックリレー33を介して接地側へ流れる。よって、電動モータ15の故障を判定する際には、第1切換部34を開放して電動モータ15の側へチェック電流が流れるように構成する。
【0035】
なお、スイッチ部37は、第1および第2抵抗38,39とトランジスタ40とを備えている。第1抵抗38は、一端が下位マイコン27に接続され、他端がトランジスタ40のベース電極に接続されている。第2抵抗39は、一端が第1抵抗38とトランジスタ40のベース電極との間に接続され、他端がチェック用電源36とトランジスタ40のエミッタ電極との間に接続されている。そして、トランジスタ40のコレクタ電極は、第1診断部41を介して第1切換部34と電動モータ15との間に接続されている。
【0036】
第1診断部41は、チェック用電源36から電動モータ15までの経路上に接続され、電動モータ15の内部抵抗に応じた電圧を下位マイコン27に出力することにより、下位マイコン27が電動モータ15の故障の有無を判定するものである。この第1診断部41は、第1〜第3の抵抗42〜44を備えている。第1抵抗42は、一端がスイッチ部37のトランジスタ40のエミッタ電極に接続され、他端が第2抵抗43の一端に接続されている。第2抵抗43の他端は接地されている。第3抵抗44は、一端が第1,第2抵抗42,43の間に接続され、他端が下位マイコン27のADポートに接続されている。第1、第2抵抗42,43の接続点は、電動モータ15と第1切換部34との間に接続されている。そして、第3抵抗44を介して第1,第2抵抗42,43との接続点の電位を下位マイコン27に出力する。
【0037】
第2診断部45は、モータ駆動制御部31から電動モータヘの電源供給経路の他方側に接続され、その接続点の電圧を下位マイコン27に出力することにより、下位マイコン27がモータ駆動制御部31の故障を判定するものである。この第2診断部45は、入力電圧を所定割合で低下させて出力する降圧回路からなり、その入力部がモータ駆動制御部31のアンロックリレー32と電動モータ15との間に接続され、出力部が下位マイコン27のADポートに接続されている。この第2診断部45は、図3に示すように、第1〜第3抵抗50,51,52と、ツェナダイオード53と、コンデンサ54とを備えている。第1抵抗50は、一端が電源供給経路に接続され、他端が第2抵抗51の一端に接続されている。第2抵抗51は、その他端が下位マイコン27のADポートに接続されている。第3抵抗52は、一端が第1抵抗50と第2抵抗51との間に接続され、他端が接地されている。ツェナダイオード54は、一端が第1抵抗50と第2抵抗51との間に接続され、他端が接地されている。コンデンサ54は、一端が第2抵抗51と下位マイコン27のADポートとの間に接続され、他端が接地されている。そして、第1抵抗50の一端にバッテリ3の12Vの電圧が印加されると、第1,第3抵抗50,52およびツェナダイオード53によって構成される定電圧回路によって電圧を5V程度に降圧し、下位マイコン27のADポートに出力する。
【0038】
第2切換部46は、バッテリ3からモータ駆動制御部31への電源供給経路上に介設されている。具体的には、第2切換部46はリレーからなり、一端がバッテリ3に接続され、他端がモータ駆動制御部31のアンロックリレー32およびロックリレー33に接続されている。そして、2つの信号入力部の一方側には、上位マイコン1に接続された電源制御線4aが接続され、他方側には下位マイコン27が接続され、上位マイコン1および下位マイコン27の信号に従ってバッテリ34からの電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する。この第2切換部46を設けることにより、第1切換部34、第2切換部46およびモータ駆動制御部31の全てが同時に故障しない限り、電動モータ15が勝手に作動することはない。
【0039】
第3診断部47は、入力電圧を所定割合で低下させて出力する降圧回路からなり、入力部が第2切換部46とモータ駆動制御部31との間に接続され、出力部が下位マイコン27のADポートに接続されている。そして、入力部との接続点の電圧を下位マイコン27に出力することにより、下位マイコン27が第2切換部46の故障を判定するものである。なお、第3診断部47の具体的な構造は、図3に示す第2診断部45の構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
下位マイコン27は、内蔵した記憶手段であるROM(図示せず)に記憶されたプログラムに従って動作される。そして、上位マイコン1から入力された制御信号に従って、モータ駆動制御部31のアンロックリレー32またはロックリレー33に作動信号を出力する。また、マイクロスイッチ25A〜25Cからの入力に従ってロック部材13の作動位置を判断し、アンロック位置またはロック位置に移動すると、その状態を上位マイコン1に出力するものである。
【0041】
また、本実施形態の下位マイコン27は、第1診断部41から入力された電圧によって電動モータ15の故障を判定するモータ故障判定手段の役割をなす。さらに、第1診断部41および第2診断部45から入力された電圧の変化により、モータ駆動制御部31の故障を判断するモータ駆動制御部故障判定手段の役割をなす。さらにまた、第3診断部47から入力された電圧によって第2切換部46の故障を判定する切換部故障判定手段の役割をなす。
【0042】
さらに、本実施形態の各マイコン1,27は、電源制御線4aと電源確認線48によって接続されている。そして、電源制御線4aの入力を監視することで、定電圧回路29の故障と同時に第2切換部46へのオン出力を出力可能かどうかを判断する構成としている。即ち、電源制御線4aを通して上位マイコン1から入力がない状態で、下位マイコン27に電源が供給された場合、定電圧回路29の故障と判断する。また、電源制御線4aを通して上位マイコン1から入力があり、かつ、通信線2aおよび通信IF30を介して上位マイコン1から制御信号(アンロック作動信号、ロック作動信号)が入力された場合には、下位マイコン27は、上位マイコン1からの制御信号が正常なものであると判断し、第2切換部46へオン信号を出力して第2切換部46を導通させる構成としている。
【0043】
具体的には、図4に示すように、アンロック作動時およびロック作動時には、第1診断部41からの入力電圧を検出することにより、第1切換部34の故障の有無を判定できる。また、第3診断部47からの入力電圧を検出することにより、第2切換部46の故障の有無を判定できる。アンロック作動時には、第1および第2診断部41,45の入力電圧を検出することにより、アンロックリレー32の故障の有無を判定できる。ロック作動時には、第1および第2診断部41,45の入力電圧を検出することにより、ロックリレー33の故障の有無を判定できる。モータ故障判定時には、第1診断部41からの入力電圧を検出することにより、電動モータ15のオープン故障の有無を判定できる。また、更に第3診断部47からの入力電圧を検出することにより、第2切換部46のオン故障、電動モータ15のショート故障、および、第1切換部34のオン故障を判断できる。
【0044】
次に、車両に搭載した上位マイコン1を含む本発明のロック装置10の下位マイコン27による制御について、具体的に説明する。なお、図6,6および図9,9のフローチャートでは、それぞれ独立して動作する上位マイコン1および下位マイコン27の関係が解るように並列に記載し、電源制御線4a,4bおよび通信線2aによる制御信号の送信を破線で記載している。
【0045】
アンロック処理では、図6に示すように、車両の上位マイコン1が、まず、ステップS1−1で、イグニッションスイッチ5が始動操作されるまで待機している。そして、イグニッションスイッチ5の始動操作を検出すると、ステップS1−2で、上位マイコン1は、電源制御線4aを介して定電圧回路29、および、第2切換部46を導通状態とするオン信号と、電源確認線48を介して下位マイコン27へ出力される確認信号と、電源制御線4bを介してAND回路35を導通状態とするオン信号とを出力する。ステップS1−3で、通信線2aを通して下位マイコン27に対してアンロック作動信号を出力する。
【0046】
一方、ロック装置10の下位マイコン27は、定電圧回路29から電力が供給されることにより、リセット状態から起動する。そして、起動した下位マイコン27は、まず、ステップS2−1で、定電圧回路故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−2で、定電圧回路29が故障していないと判定した場合にはステップS2−3に進む。また、定電圧回路29が故障していると判定した場合にはS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0047】
ステップS2−3では、上位マイコン1からアンロック作動信号を受信するまで待機する。そして、アンロック作動信号を受信すると、ステップS2−4で、後述するモータ故障判定処理を実行する。その後、ステップS2−5で、電動モータ15が故障していないと判定した場合にはステップS2−6に進む。また、電動モータ15が故障していると判定した場合にはS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。なお、ステップS2−3でアンロック作動信号を受信すると、電源確認線48を介して上位マイコン1から確認信号が入力されているかどうかを確認するステップを追加することが好ましい。この場合、確認信号が入力されていると、受信したアンロック作動信号が正常なものであると判断して次のステップS2−4に進み、確認信号が入力されていないと、受信したアンロック作動信号が正常でないものと判断してステップS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0048】
ステップS2−6では、AND回路35へオン信号を出力することにより、第1切換部34を接続(クローズ)状態とした後、ステップS2−7で、第1切換部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−8で、第1切換部34が故障していないと判定した場合にはステップS2−9に進む。また、第1切換部34が故障していると判定した場合にはS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0049】
なお、第1切換部故障判定処理では、ステップS2−4のモータ故障判定処理からスイッチ部37はオン状態を維持している。そして、チェック用電源36からの電流は、電動モータ15の側ではなく、第1切換部34からロックリレー33を介して接地側へと流れる。したがって、第1診断部41から入力される電圧(L<M<H)は、MからLに変化する。そのため、下位マイコン27は、第1診断部41から入力される電圧がMからLに変化した場合には、第1切換部34が正常に作動していると判断し、それ以外は故障と判断する。なお、第1切換部故障判定処理が終了すると、下位マイコン27は、スイッチ部37をすみやかにオフ状態としてチェック用電源36から電動モータ15へのチェック電圧の印加を停止する。
【0050】
ステップS2−9では、第2切換部46へオン信号を出力することにより、第2切換部46を接続状態とした後、ステップS2−10で、第2切換部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−11で、第2切換部46が故障していないと判定した場合にはステップS2−12に進む。また、第2切換部46が故障していると判定した場合にはS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0051】
なお、第2切換部故障判定処理では、第2切換部46をオンすると第3診断部47から入力される電圧がLからHに変化する。そのため、下位マイコン27は、この第3診断部47から入力される電圧がLからHに変化した場合には、第2切換部46が正常に作動していると判断し、以外は故障と判断する。
【0052】
次に、下位マイコン27は、図7に示すように、ステップS2−12で、モータ駆動制御部31に対してアンロック作動信号を出力した後、ステップS2−13で、モータ駆動制御部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−14で、モータ駆動制御部31が故障していないと判定した場合にはステップS2−16に進む。また、モータ駆動制御部31が故障していると判定した場合にはステップS2−15に進み、アンロック作動信号の出力を停止した後、S2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0053】
なお、モータ駆動制御部31にアンロック作動信号が出力されると、アンロックリレー32が図2(B)に示すように切り換えられ、電動モータ15がバッテリ3に接続される。そして、電動モータ15が正転駆動することにより、ロック部材13がロック位置からアンロック位置へと移動する。モータ駆動制御部故障判定処理では、第1診断部41から入力される電圧がL、第2診断部45から入力される電圧がHである場合には、アンロックリレー32が正常に作動していると判断し、以外は故障と判断する。
【0054】
ステップS2−16では、マイクロスイッチ25A〜25Cによってロック部材13がアンロック位置へ移動したことを検知するまで待機する。そして、ロック部材13がアンロック位置へ移動するとステップS2−17に進み、アンロック作動信号の出力を停止する。
【0055】
ついで、下位マイコン27は、ステップS2−18で、AND回路35へのオン信号の出力を停止して第1切換部34を遮断(オープン)状態とした後、ステップS2−19で、第2切換部46へのオン信号の出力を停止して第2切換部46を遮断状態とする。その後、ステップS2−20で、再びモータ故障判定処理を実行する。このモータ故障判定処理後、下位マイコン27は、スイッチ部37をすみやかにオフ状態としてチェック用電源36から電動モータ15へのチェック電圧の印加を停止する。そして、ステップS2−21で、電動モータ15が故障していないと判定した場合にはステップS2−22に進み、アンロック完了信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。また、電動モータ15が故障していると判定した場合にはS2−23に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してアンロック処理を終了する。
【0056】
一方、ステップS1−3でアンロック作動信号を出力した上位マイコン1は、ステップS1−4で、下位マイコン27からアンロック完了信号を受信したか否かを検出する。そして、アンロック完了信号を受信していない場合にはステップS1−5に進み、受信した場合にはステップS1−7に進む。
【0057】
ステップS1−5では、下位マイコン27から故障信号を受信したか否かを検出する。そして、故障信号を受信していない場合にはステップS1−4に戻る。また、受信した場合にはステップS1−6に進み、ロック装置異常処理を実行してステップS1−7に進む。
【0058】
ステップS1−7では、電源制御線4a,4bを通した定電圧回路29へのオン信号の出力を停止してロック装置10への通電を停止した後、ステップS1−8で、エンジン始動処理を実行してアンロック処理を終了する。
【0059】
なお、ステップS1−6のロック装置異常処理では、修理要求信号を出力し、ユーザ(運転者)に故障している状態を報知する。また、下位マイコン27から受信する複数の故障信号のうち、アンロック処理およびロック処理には影響がない第1切換弁のオン故障を除き、ステップS1−8でのエンジン始動処理を実行しないようにする。即ち、第1切換弁34がオン故障している場合のみ、エンジン始動処理を実行するが、第1切換弁34がオン故障しているとモータ故障判定処理が実行できないため、この場合にも修理要求信号を出力してユーザに故障している状態を報知する。
【0060】
次に、下位マイコン27によるステップS2−4,20のモータ故障判定処理について具体的に説明する。
【0061】
まず、このモータ故障判定処理を実行する前の初期状態では、モータ駆動制御部31のアンロックリレー32およびロックリレー33、第1切換部34、第2切換部46およびスイッチ部37は、全てオフ状態となっている。
【0062】
そして、モータ故障判定処理では、下位マイコン27は、図8に示すように、まず、ステップS10で、スイッチ部37をオン状態としてチェック用電源36から電動モータ15へチェック電圧を印加可能とする。ここで、スイッチ部37がオン状態になると、チェック用電源36からの電流は、第1抵抗42から第2抵抗43および電動モータ15、アンロックリレー32を介して接地側に流れる。そして、各要素が正常であれば、第1診断部41からは、第1抵抗42の抵抗R1、第2抵抗43の抵抗R2および電動モータ15の内部抵抗Rmによって分圧された電圧(M)が出力される。そのため、ステップS11で、第1診断部41からの入力を確認する。そして、ステップS12で、入力電圧が所定電圧(M)である場合には、電動モータ正常であると判断してリターンする。また、入力電圧がMでない場合には、電動モータ15、第1切換部34および第2切換部46のいずれかが故障していると判断してステップS13に進む。
【0063】
電動モータ15がオープン故障している場合には、アンロックリレー32には電流が流れず、第1診断部41から出力される電圧はHとなり、他の故障である場合には電圧はLとなる。そのため、ステップS13では、第1診断部41からの入力電圧がHであるか否かを検出する。そして、入力電圧がHである場合には、電動モータ15がオープン故障であると判断し、ステップS14で対応する故障信号をセットしてリターンする。また、入力電圧がHでない場合(=入力電圧L)にはステップS15に進む。
【0064】
ステップS15では、第3診断部47からの入力電圧を確認した後、ステップS16で、第2切換部46がオフ状態になっているか否かを確認する。そして、ステップS17で、第3診断部47からの入力電圧がHである場合には、第2切換部46がオン故障であると判断し、ステップS18で、対応する故障信号をセットしてリターンする。また、入力電圧がHでない場合(=入力電圧L)にはステップS19に進む。
【0065】
ステップS19では、第2切換部46が正常であることを確認したうえで、アンロック作動信号を出力する。そして、ステップS20で、第3診断部47からの入力がLからHになった否かを検出する。そして、L→Hになった場合には、電動モータ15がショート故障であると判断し、ステップS21で、対応する故障信号をセットしてリターンする。また、入力電圧がLのままである場合には、第1切換部34がオン故障であると判断し、ステップS22で、対応する故障信号をセットしてリターンする。なお、下位マイコン27から出力されるアンロック作動信号は、第3診断部47からの入力を計測後にすみやかに停止される。
【0066】
次に、ロック処理では、図9に示すように、上位マイコン1が、まず、ステップS1−10で、イグニッションスイッチ5が停止操作されるまで待機している。そして、イグニッションスイッチ5の停止操作を検出すると、ステップS1−11で、エンジン停止処理を行った後、ステップS1−12で、上位マイコン1は、電源制御線4aを介して定電圧回路29および第2切換部46を導通状態とするオン信号と、電源確認線48を介して下位マイコン27へ出力される確認信号と、電源制御線4bを介してAND回路35を導通状態とするオン信号とを出力する。その後、ステップS1−13で、通信線2aを通して下位マイコン27に対してロック作動信号を出力する。
【0067】
一方、ロック装置10の下位マイコン27は、定電圧回路29から電力が供給されることにより、リセット状態から起動する。そして、起動した下位マイコン27は、まず、ステップS2−30で、ステップS2−1と同様の定電圧回路故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−31で、定電圧回路29が故障していないと判定した場合にはステップS2−32に進む。また、定電圧回路29が故障していると判定した場合にはS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0068】
ステップS2−32では、上位マイコン1からロック作動信号を受信するまで待機する。そして、ロック作動信号を受信すると、ステップS2−33で、モータ故障判定処理を実行する。その後、ステップS2−34で、電動モータ15が故障していないと判定した場合にはステップS2−35に進む。また、電動モータ15が故障していると判定した場合にはS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。なお、ステップS2−32でロック作動信号を受信すると、アンロック処理と同様に、電源確認線48を介して上位マイコン1から確認信号が入力されているかどうかを確認するステップを追加することが好ましい。この場合、確認信号が入力されていると、受信したロック作動信号が正常なものであると判断して次のステップS2−33に進み、確認信号が入力されていないと、受信したロック作動信号が正常でないものと判断してステップS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0069】
ステップS2−35では、AND回路35へオン信号を出力することにより、第1切換部34を接続状態とした後、ステップS2−36で、ステップS2−7と同様の第1切換部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−37で、第1切換部34が故障していないと判定した場合にはステップS2−38に進む。また、第1切換部34が故障していると判定した場合にはS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0070】
ステップS2−38では、第2切換部46へオン信号を出力することにより、第2切換部46を接続状態とした後、ステップS2−39で、ステップS2−10と同様の第2切換部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−40で、第2切換部46が故障していないと判定した場合にはステップS2−41に進む。また、第2切換部46が故障していると判定した場合にはS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0071】
次に、下位マイコン27は、図10に示すように、ステップS2−41で、モータ駆動制御部31に対してロック作動信号を出力した後、ステップS2−42で、モータ駆動制御部故障判定処理を実行する。そして、ステップS2−43で、モータ駆動制御部31が故障していないと判定した場合にはステップS2−45に進む。また、モータ駆動制御部31が故障していると判定した場合にはステップS2−44に進み、ロック作動信号の出力を停止した後、S2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0072】
なお、モータ駆動制御部31にロック作動信号が出力されると、ロックリレー33が図2(C)に示すように切り換えられ、電動モータ15がバッテリ3に接続される。そして、電動モータ15が逆転駆動することにより、ロック部材13がアンロック位置からロック位置へと移動する。モータ駆動制御部故障判定処理では、第1診断部41から入力される電圧がH、第2診断部45から入力される電圧がLである場合には、ロックリレー33が正常に作動していると判断し、以外は故障と判断する。
【0073】
ステップS2−45では、マイクロスイッチ25A〜25Cによってロック部材13がロック位置へ移動したことを検知するまで待機する。そして、ロック部材13がロック位置へ移動するとステップS2−46に進み、ロック作動信号の出力を停止する。
【0074】
ついで、下位マイコン27は、ステップS2−47で、AND回路35へのオン信号の出力を停止して第1切換部34を遮断状態とした後、ステップS2−48で、第2切換部46へのオン信号の出力を停止して第2切換部46を遮断状態とする。その後、ステップS2−49で、再びモータ故障判定処理を実行する。このモータ故障判定処理後、下位マイコン27は、スイッチ部37をすみやかにオフ状態としてチェック用電源36から電動モータ15へのチェック電圧の印加を停止する。そして、ステップS2−50で、電動モータ15が故障していないと判定した場合にはステップS2−51に進み、ロック完了信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。また、電動モータ15が故障していると判定した場合にはS2−52に進み、対応する故障信号を上位マイコン1へ出力してロック処理を終了する。
【0075】
一方、ステップS1−13でロック作動信号を出力した上位マイコン1は、ステップS1−14で、下位マイコン27からロック完了信号を受信したか否かを検出する。そして、ロック完了信号を受信していない場合にはステップS1−15に進み、受信した場合にはステップS1−17に進む。
【0076】
ステップS1−15では、下位マイコン27から故障信号を受信したか否かを検出する。そして、故障信号を受信していない場合にはステップS1−14に戻る。また、受信した場合にはステップS1−16に進み、ステップS1−6と同様のロック装置異常処理を実行してステップS1−17に進む。
【0077】
ステップS1−17では、電源制御線4a,4bを通した定電圧回路29へのオン信号の出力を停止してロック装置10への通電を停止してロック処理を終了する。
【0078】
なお、下位マイコン27によるステップS2−33,49のモータ故障判定処理は、図8に示すアンロック処理時のモータ故障判定処理と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
このように、本発明のロック装置10は、モータ駆動制御部31と電動モータ15との間に第1切換部34を設けているため、非作動状態のときに電動モータ15に流れる電流を遮断することができる。そのため、例えばモータ駆動制御部31がオン故障して電動モータ15に意図しない電力が供給される状態となっても、第1切換部34によって電動モータヘの通電を阻止できる。よって、不意に電動モータ15が回転してロック部材13がロック作動してしまうことを防止できる。
【0080】
また、電動モータ駆動制御によって電動モータ15の両電極が接地されている状態において、チェック用電源36から流れる電流が電動モータ15とは反対側のモータ駆動制御部31に流れることを、第1切換部34によって阻止できる。そのため、電動モータ15にチェック電流を確実に流すことができる。これにより、第1診断部41によって電動モータ15の故障を検出することが可能となり、故障に対する安全性を向上できる。さらに、バッテリ3との遮断および接続と、チェック用電源36との遮断および接続を、共通の第1切換部34によって行なうことができるため、部品点数を削減することもできる。
【0081】
しかも、モータ駆動制御部31から電動モータヘの電源供給経路上に更に第2診断部45を設け、第1および第2診断部41,45からの入力電圧の変化によって、モータ駆動制御部31の故障を検出できるようにしているため、故障に対する安全性を更に向上できる。また、第1診断部41を、電動モータ15およびモータ駆動制御部31の故障検出に兼用しているため、部品点数の増加を抑制できる。
【0082】
さらに、バッテリ3とモータ駆動制御部31との接続状態を切り換える第2切換部46を設けるとともに、第2切換部46とモータ駆動制御部31との間の接続点の電圧を出力する第3診断部47を設けている。そのため、第1および第2切換部34,46とモータ駆動制御部31の3つが同時に故障しない限り、バッテリ3から電動モータヘ不意に通電されることを防止できる。また、第2切換部46の故障を第3診断部47を介して検出できるため、故障に対する安全性を更に向上できる。
【0083】
図11および図12は、第2実施形態のロック装置10の制御回路を示す。この第2実施形態では、第1実施形態の第2切換部46と第3診断部47を設けない構成とした点で、第1実施形態と相違する。
【0084】
この第2実施形態のロック装置10は、第1実施形態と同様に、図6および図7に示すアンロック処理、および、図9および図10に示すロック処理が実行される。そして、モータ故障判定処理では、図4およびステップS15〜S22に示す第2切換部46の故障判定は勿論、電動モータ15のショート故障や第1切換部34のオン故障などの細かい故障内容を判定できない点でのみ相違し、その他の点では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0085】
なお、本発明の電動ステアリングロック装置は、実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、第2実施形態のロック装置10において、第2診断部45を更に設けない構成としてもよい。即ち、第1切換部34、チェック用電源36、スイッチ部37および第1診断部41だけを設ける構成としてもよい。このようにしても、少なくとも非作動状態に電動モータ15の意図しない作動を防止できるとともに、電動モータ15の故障の有無を判断できる。
【0087】
また、前記実施形態では、第1切換部34を電動モータ15とモータ駆動制御部31のロックリレー33との間に設けるように構成したが、図13に示すように、第1切換部34を電動モータ15とモータ駆動制御部31のアンロックリレー32との間に設けるようにしてもよい。この場合、チェック用電源36をモータ15と第1切換部34との間に設けるとともに、第2診断部45を電動モータ15とモータ駆動制御部31のロックリレー33との間に設けるようにすればよい。そして、電動モータ15の故障判定処理時には、アンロックリレー32の代わりにロックリレー33を作動させることで、電動モータ15の詳細な故障判断を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1…上位マイコン
2…通信ライン
2a…通信線
3…バッテリ(メイン電源)
4a,4b…電源制御線
7…ステアリングシャフト
8…係合凹部
10…ロック装置
13…ロック部材
14…係合凸部
15…電動モータ
27…下位マイコン
29…定電圧回路
30…通信インターフェイス
31…モータ駆動制御部
34…第1切換部
35…AND回路
36…チェック用電源
37…スイッチ部
41…第1診断部
45…第2診断部
46…第2切換部
47…第3診断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトに係脱するロック部材を作動させるモータと、
メイン電源から前記モータに供給される駆動電流の極性の切り換えおよび遮断を行ない、前記モータにより前記ロック部材をロック作動またはアンロック作動させるモータ駆動制御部と、
前記モータ駆動制御部に、前記モータをアンロック作動させるアンロック作動信号と、前記ロック部材をロック作動させるロック作動信号とを選択的に出力するマイコンと、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記モータ駆動制御部から前記モータヘの電源供給経路の一方側を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する第1切換部と、
前記第1切換部と前記モータとの間に接続され、前記モータに所定電圧を印加するチェック用電源と、
前記チェック用電源から前記モータに供給されるチェック電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続するスイッチ部と、
前記チェック用電源から前記モータまでの経路上に接続され、前記モータの内部抵抗に応じた電圧を出力する第1診断部と、
前記第1診断部から入力された電圧によって前記モータの故障を判定するモータ故障判定手段と、
を備えることを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記モータ駆動制御部から前記モータヘの電源供給経路の他方側に接続され、その接続点の電圧を出力する第2診断部と、
前記第1診断部および前記第2診断部から出力される電圧の変化を検出して、前記モータ駆動制御部の故障を判断するモータ駆動制御部故障判定手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項3】
前記メイン電源から前記モータ駆動制御部への電源供給経路上に電流を導通不可能に遮断するとともに導通可能に接続する第2切換部と、
前記第2切換部と前記モータ駆動制御部との間に接続され、その接続点の電圧を出力する第3診断部と、
前記第3診断部から入力された電圧によって前記第2切換部の故障を判定する切換部故障判定手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動ステアリングロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−86699(P2012−86699A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235781(P2010−235781)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)