説明

電動バルブアクチュエータ

【課題】電装品の収納ケース内にヒータを配置して、昼間や夏季に過度の加熱状態を招くことなく、寒冷時における結露の発生を有効に防止する。
【解決手段】収納ケース1内に、ヒータ13と、このヒータ13への通電を自力制御によりオンオフして収納ケース1内を一定温度以上に昇温せず且つ結露を生じない温度域に保つサーモスタット14とを配置し、ヒータ13を常時作動させた場合の収納ケース1内における激しい昇温状態を回避するようにしたので、逆にヒータ13に十分な容量を与えて寒冷時における内部加熱の実効を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石油コンビナートや発電プラント、ビル空調設備等の配管部に特に好適に用いられる屋外使用可能な電動バルブアクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】石油コンビナートや発電プラント、ビル空調設備等の配管部に用いられる電動バルブアクチュエータは、一般に屋外で使用される。このため、電動モータを制御するための電装品の収納ケースは、防水防塵性が要求され、密閉構造となっている事が多い。しかし、屋外は昼夜や季節変化を通じて温度格差が激しいため、収納ケース内部は結露しやすい状況にあり、放置すれば電装品の故障や誤動作により重大な事故に発展する恐れがある。そこで、こうした構造の電動バルブアクチュエータの電装品収納ケースにはヒータが取り付けられ、常時ヒータに通電し、ケース内部を暖めることにより結露防止を行っているのが通例である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した構成においては、ヒータは常時作動しているため、昼間や夏季の外気温の高い時には、温度が過度に上昇して、電装品やケースに損傷を与える恐れがある。このため、ヒータの容量決定は、最大昇温時に準拠して行わなければならないという制約がある。しかし、このようにすると、夜間などに外気温が急激に低下するなどした場合に、ヒータの容量不足でケース温度の低下が防げず、結露を生ずる場合がある。すなわち、外気温の寒暖の温度差が大きかったり、急激に温度差が生じた場合には、ヒータを常時作動させるという対策のみでは結露を確実に防止する手立てとしては不十分である。
【0004】本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、外気温の変化が激しい場所に配置されても、電装品の収納ケース内に結露が発生することを確実に防止できるようにした電動バルブアクチュエータを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる目的を達成するために、バルブ駆動用の電動モータを備えるとともに、この電動モータの制御に必要な電装品を密閉性の収納ケース内に収容してなるものにおいて、前記収納ケース内に、該収納ケース内を加熱するヒータと、このヒータへの通電を自力制御によりオンオフして該収納ケース内を一定温度以上に昇温せず且つ結露を生じない温度域に保つスイッチング素子とを設けたことを特徴とする。
【0006】このような構成のものであれば、収納ケース内が結露を生じ易い温度域に近付けばスイッチング素子によってヒータが作動し、収納ケース内がある程度高い温度になればスイッチング素子によりヒータの作動が停止されるので、外気温が高い時に収納ケース内を更に加熱するということがなく、このような高い外気温を基準にしてヒータ容量を設定する必要性がない。このため、この電動バルブアクチュエータが昼間や夏季に外気温が激しく上昇する場所に配置されても、ヒータに必要十分な容量を確保して寒冷時における結露の発生を確実に防止することができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る電動バルブアクチュエータの全体断面図であり、図2は電気系統を示す回路図である。図1において、電動バルブアクチュエータを構成する多くの要素部品は、密閉性の収納ケース1内に組み込まれており、この収納ケース1は、主として駆動系の要素部品を収容する第1の収納部2と、制御系の要素部品を収容する第2の収納部3とに区成されている。第1の収納部2には、図示しない弁軸に接続されたセンターコラム4と、このセンターコラム4に動力を付与する電動モータ5と、この電動モータ5の出力を前記センターコラム4に伝えて図示しない弁軸を紙面に垂直な方向へ駆動するウオーム減速機6と、過負荷状態や過剰変位等を検出するリミットスイッチ機構7とが組み込まれている。
【0008】一方、第2の収納部3には、前記電動モータ5を制御するために、トランス8、電磁開閉弁9、プリントボード10等の要素部品が支持板10aに支持されて配設されているとともに、これらの要素部品が絶縁とシールを兼ねるターミナルブロック11の配線導入口11aを介して外部配線に接続されている。結線の概略は図2に示すとおりで、外部の三相電源12は電磁開閉弁9を通って電動モータ5に接続され、前記電磁開閉弁9においてバルブの駆動方向が反転可能とされている。三相電源12からはトランス8を介して制御用電源がとられ、その電力がプリントボード10に供給されている。このプリントボード10は、電動モータ5に対してインターロックや遠隔制御を可能にするために必要な回路を含んでいるほか、前述したリミッチスイッチ機構7からの位置リミット信号やトルクリミット信号が入力されて、このプリントボード10から前記電磁開閉弁9に向けて開閉信号が発せられるようになっている。
【0009】このような構成において、本実施例は、前記収納ケース1内に、該収納ケース1内を加熱するヒータ13と、このヒータ13への通電を自力制御によりオンオフするスイッチング素子たるサーモスタット14とを設けている。ヒータ13は、前記三相電源12とトランス8との間の結線部に挿入されているもので、場所的には、収納ケース1の内部において空間的余裕があり、周囲に発熱体が少なく、且つ空間を有効に加熱し得る部位、例えば支持板10a上や第1、第2の収納部2、3間を連絡するフランジ内壁部1a等が選定される。この実施例のヒータ13には、例えば収納ケース1の内部温度を5°C以下から40°C以上にまで昇温させる能力を有したものが使用されている。一方、サーモスタット14は、前記三相電源12とトランス8との間の結線部においてヒータ13に直列に挿入されているもので、場所的には、収納ケース1内において真っ先に結露を生じ易い部位、例えば収納ケース1の底板の内壁1b等が選定されている。この実施例のサーモスタット14には、5°C以下でONになり、40°C以上でOFFになるスイッチング特性を有したものが使用されている。
【0010】このような構成のものであれば、外気温が低下し、それにつれて収納ケース1の内壁1bの温度が5°C以下に降温したときには、サーモスタット14がONとなってヒータ13が作動し、これにより収納ケース1内が加熱され始める。一方、収納ケース1の内壁1bの温度が40°C以上に昇温するような状況が生じた場合には、サーモスタット14がOFFとなり、ヒータ13の作動が停止されることとなる。このため、この電動バルブアクチュエータを外気温の変化が激しい場所に配置した場合、昼間や夏季に外気温が上昇しても収納ケース1の内部温度は少なくとも外気温を大巾に越えて上昇するようなことがなく、ヒータ13の過度の加熱による焼損事故等を確実に防止することができる。しかも、外気温が例えば氷点下にまで下がったような場合には、ヒータ13により十分な加熱がされて収納ケース1内を結露を生じない温度域に保つので、結露による事故、例えば、電磁開閉弁9やリミットスイッチ機構7を構成するマイクロスイッチ等の接点導通によるバルブの暴走、酸化による誤動作を始め、トランス8のショート等を確実に防止し、電動バルブアクチュエータの信頼性、ひいてはこの電動バルブアクチュエータが適用されるプラントシステム全体の安全性を確実に向上させることができるという優れた効果が奏されるものとなる。
【0011】なお、各部の具体的な構成は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0012】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。すなわち、本発明の電動バルブアクチュエータは、電動モータ制御用の電装品を一体に有する屋外使用可能な電動バルブアクチュエータにおいて、電装品の収納ケース内に発生する結露を防止するためのヒータと、設定した温度でこのヒータを自動でオンオフ可能なサーモスタットを備えて、収納ケース内が結露を生じる温度域になった時のみ、サーモスタットによりヒータを自動的に作動させるようにしたものである。このため、ヒータに十分な容量のものを使用しても、外気温が高い時にヒータが作動して収納ケース内の温度が更に過度に上昇するという不具合がなく、温度変化に起因した結露発生の防止とヒータを用いることによるによる焼損事故の防止とを有効に両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す全体斜視図。
【図2】同実施例の電気系統を示すブロック図。
【符号の説明】
1…収納ケース
5…電動モータ
13…ヒータ
14…スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】バルブ駆動用の電動モータを備えるとともに、この電動モータの制御に必要な電装品を密閉性の収納ケース内に収容してなるものにおいて、前記収納ケース内に、該収納ケース内を加熱するヒータと、このヒータへの通電を自力制御によりオンオフして該収納ケース内を一定温度以上に昇温せず且つ結露を生じない温度域に保つスイッチング素子とを設けたことを特徴とする電動バルブアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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