説明

電動パワーステアリング装置

【課題】製造工数を削減することができ、しかも組み立てが容易な電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】この電動パワーステアリング装置は、車両のラック軸11が内部に挿通されてモータの駆動に基づき回転する筒状のモータ軸21と、係合部43を介してモータ軸21に連結されるボールねじナット40とを備える。そして、モータの駆動力をモータ軸21及びボールねじナット40を介してラック軸11に伝達することにより、車両の操舵系の操作を補助するアシスト力をラック軸11に付与する。ここでは、ボールねじナット40の外周面に段差部45を形成する。また、ボールねじナット40がモータ軸21に対して矢印a2で示す方向に相対移動可能な距離が「C+D」に規制されるように、第3ハウジング3cの端部3dをボールベアリング51に対向配置する。また、ボールねじナット40の係合部43の長さSを「C+D」よりも長く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のラック軸にアシスト力を付与することにより車両の操舵系の操作を補助する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動パワーステアリング装置としては、例えば特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置がある。図9に、この特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置の構造を示す。なお、この電動パワーステアリング装置が搭載される車両では、運転者によるステアリングホイールの操作に連動して図中のラック軸90がその軸方向(矢印a1,a2で示す方向)に往復動することにより車両の操舵輪の舵角、すなわち車両の進行方向が変更されるようになっている。
【0003】
図9に示すように、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置は、内部にラック軸90が挿通されるとともに図示しないモータの駆動に基づき図中の軸線mを中心に回転する筒状のモータ軸100と、ラック軸90の外面に形成されたねじ溝91に螺着されるボールねじナット110とを備えている。このボールねじナット110の右端部には、モータ軸100の内部に挿入される係合部111が設けられており、この係合部111の外面に形成された雄ねじ部がモータ軸100の内面に形成された雌ねじ部に螺入することによって、ボールねじナット110がモータ軸100に係合、連結されている。この電動パワーステアリング装置では、モータの駆動に伴うモータ軸100の回転運動がボールねじナット110を介してラック軸90の軸方向への直線運動に変換されることで、ラック軸90にアシスト力が付与されるようになっている。
【0004】
ところで、こうした構造からなる電動パワーステアリング装置では、例えば車両の転舵輪が縁石に衝突したときにラック軸90に過大な衝撃荷重が作用すると、その衝撃荷重がラック軸90からボールねじナット110に伝達されて、ボールねじナット110の係合部111とモータ軸100との締結部分に緩みが発生する懸念がある。そして、この締結構造の緩みに起因して、モータの駆動力をラック軸90に伝達することができなくなると、ラック軸90にアシスト力を付与することができなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置では、モータ軸100の外周に締結固定されたフランジ部材120の薄板部121を折り曲げ加工してボールねじナット110のフランジ部112にかしめることで、モータ軸100に対するボールねじナット110の相対回転を規制するようにしている。これにより、ラック軸90に衝撃荷重が作用した場合であっても、モータ軸100とボールねじナット110との連結状態が維持されるため、ラック軸90にアシスト力を付与することができ、ひいてはドライバビリティを維持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−51387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした構造からなる電動パワーステアリング装置では、その製造に際して、フランジ部材120の薄板部121をボールねじナット110のフランジ部112にかしめる工程が必要となる。そしてこのことが、電動パワーステアリング装置を製造する上での工数の増加を招き、ひいては生産コストの増大を招く要因となっている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ラック軸に衝撃荷重が作用した場合であってもドライバビリティを維持することが可能な構造をとりながら、製造工数を削減することができ、しかも組み立てが容易な電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のラック軸が内部に挿通されてモータの駆動に基づき回転する筒状のモータ軸と、同モータ軸に係合される係合部を有して前記モータ軸の回転運動を前記ラック軸の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構とを備え、前記モータの駆動力を前記モータ軸及び前記運動変換機構を介して前記ラック軸に伝達することにより、車両の操舵系の操作を補助するアシスト力を前記ラック軸に付与する電動パワーステアリング装置において、前記運動変換機構が前記モータ軸に対して前記係合部の係合が解除される方向へ相対移動可能な距離を所定距離に規制する規制部材を備え、前記係合部の長さが、前記所定距離よりも長く設定されてなることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、運動変換機構の係合部とモータ軸との間に緩みなどが生じて運動変換機構がモータ軸に対して係合部の係合が解除される方向に所定距離だけ移動すると、それ以上の運動変換機構の移動が規制部材によって規制される。ここで、運動変換機構がモータ軸に対して相対移動可能な所定距離よりも運動変換機構の係合部を長く設定することとすれば、運動変換機構がモータ軸に対して所定距離だけ相対移動したとしても、運動変換機構の係合部がモータ軸の内部から脱落することはない。これにより、仮にラック軸に衝撃荷重が作用した場合であっても、運動変換機構とモータ軸との連結状態を維持することができるため、モータ軸からラック軸にアシスト力を付与することができる。よって、ドライバビリティを維持することが可能となる。また、運動変換機構とモータ軸との間にかしめ構造が不要となるため、電動パワーステアリング装置の製造工数を低減することができるようになる。さらに、運動変換機構がモータ軸に対して所定距離だけ相対移動することが可能な構造とすることで、運動変換機構と規制部材との間に隙間を設けることができるため、その隙間の部分で電動パワーステアリング装置の構成部品の組み付け誤差を吸収することができる。このため、電動パワーステアリング装置の組み立てが容易となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、前記運動変換機構の外周に配置される軸受を更に備えるとともに、同軸受は、前記運動変換機構と一体的に移動可能に設けられ、前記規制部材は、前記軸受と前記係合部の係合が解除される方向に所定の間隙を隔てて対向配置される部材により構成されることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、運動変換機構がモータ軸に対して係合部の係合が解除される方向に移動すると、同運動変換機構と一体となって軸受が移動する。そして、軸受が規制部材に接触してその移動が規制されると、運動変換機構の移動も規制される。これにより、特に運動変換機構の外周に軸受が配置されるといった構造を採用している電動パワーステアリング装置では、軸受の近傍に設けられた部材を規制部材として利用することで、運動変換機構の移動を容易に規制することができる。よって、運動変換機構の移動規制構造を容易に実現することができるようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、前記軸受は、前記運動変換機構が挿通される内輪と同内輪の外周に配置される外輪とを有する転がり軸受であり、前記規制部材は、同転がり軸受が前記係合部の係合が解除される方向に移動した際に前記外輪にのみ当接するように設けられてなることを要旨とする。
【0014】
同構成によるように、運動変換機構の軸受が転がり軸受である場合には、その外輪にのみ接触するように規制部材を設けることが有効である。これにより、転がり軸受に規制部材が接触したとしても、転がり軸受の内輪の動きが阻害されることがないため、運動変換機構は通常通り動作することが可能である。よって、ラック軸の軸方向の動きが適切に維持されるため、ドライバビリティをより的確に維持することができるようになる。
【0015】
そして、請求項2又は3に記載の電動パワーステアリング装置にあっては、請求項4に記載の発明によるように、前記運動変換機構の外面に、同運動変換機構が前記モータ軸に対して前記係合部の係合が解除される方向に相対移動した際に前記軸受に接触してこれを前記係合部の係合が解除される方向に押圧する段差部を形成する、といった構成を採用することが有効である。これにより、運動変換機構の外面に段差部を形成するといった極めて簡素な構造により運動変換機構及び軸受を一体的に移動させることができるため、運動変換機構の移動規制構造を容易に実現することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記係合部には、前記モータ軸に形成されたねじ部に螺入されるねじ部と、前記モータ軸が嵌合されるインロー部とが形成されるとともに、前記運動変換機構が、前記係合部のねじ部と前記モータ軸のねじ部との締結構造を通じて前記モータ軸に連結されるものであって、前記係合部の長さが、同係合部の前記ねじ部の長さと前記インロー部の長さとを加算した長さに設定されてなることを要旨とする。
【0017】
電動パワーステアリング装置には、運動変換機構の係合部にねじ部とインロー部とが形成されるとともに、この係合部のねじ部とモータ軸に形成されたねじ部との締結構造を通じてモータ軸に運動変換機構を係合、連結するようにしたものがある。このような電動パワーステアリング装置にあっては、上記構成によるように、係合部の長さをねじ部の長さとインロー部の長さとを加算した長さに設定することとすれば、モータ軸からの運動変換機構の脱落を回避することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記規制部材は、前記ラック軸を覆うようにして設けられるハウジングであることを要旨とする。
【0019】
同構成によるように、規制部材として、ラック軸を覆うようにして設けられるハウジングを用いることとすれば、新たに規制部材を設ける必要がないため、コストの低減を図ることができるようになる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記モータ軸に固定して設けられて同モータ軸を回動可能に支持するモータ軸用軸受と、前記モータ軸の外周を覆うハウジングに固定されて前記モータ軸用軸受の前記軸方向への移動を規制する軸受用規制部材と、同軸受用規制部材と前記軸方向に所定の隙間を隔てて配置されて前記モータ軸の回転を検出する回転センサとを更に備え、前記軸受用規制部材と前記回転センサとの間に形成された隙間の幅が、前記所定距離よりも長く設定されてなることを要旨とする。
【0021】
電動パワーステアリング装置には、モータ軸に固定して設けられて同モータ軸を回動可能に支持するモータ軸用軸受と、モータ軸の外周を覆うハウジングに固定されてモータ軸用軸受の軸方向への移動を規制する軸受用規制部材と、同軸受用規制部材と軸方向に所定の隙間を隔てて配置されてモータ軸の回転を検出する回転センサとを備えたものがある。こうした構造からなる電動パワーステアリング装置では、ラック軸に軸方向の衝撃荷重が作用すると、その荷重が運動変換機構、モータ軸、モータ軸用軸受、及び軸受用規制部材の順に伝達されて、ハウジングにおいて、軸受用規制部材が固定されている部分が破断してしまうおそれがある。この場合、軸受用規制部材がハウジングに対して相対移動可能となるため、軸受用規制部材が回転センサに接触して、同センサが破損するおそれがある。この点、上記構成によれば、ラック軸や運動変換機構などがハウジングに対して相対移動すると、上記規制部材により運動変換機構の移動が規制されるため、それに伴ってモータ軸、モータ軸用軸受、及び軸受用規制部材の移動が規制される。よって、軸受用規制部材が回転センサに接触するような状況を回避することができ、回転センサの破損を未然に防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる電動パワーステアリング装置によれば、ラック軸に衝撃荷重が作用した場合であってもドライバビリティを維持することが可能な構造をとりながら、製造工数を削減することができ、しかも組み立てが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる電動パワーステアリング装置の一実施形態についてその断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態の電動パワーステアリング装置についてそのボールねじナット周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図3】(a),(b)は、同実施形態のパワーステアリング装置についてモータ軸へのボールねじナットの組み付け方法を示す断面図。
【図4】同実施形態の電動パワーステアリング装置についてその動作例を示す断面図。
【図5】(a)は、本発明にかかる電動パワーステアリング装置の他の例についてその断面構造を示す断面図。(b)は、同他の例の電動パワーステアリング装置についてそのボールねじナット周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図6】(a)は、本発明にかかる電動パワーステアリング装置の他の例についてその断面構造を示す断面図。(b)は、同他の例の電動パワーステアリング装置についてそのボールねじナット周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図7】(a)は、本発明にかかる電動パワーステアリング装置の他の例についてその断面構造を示す断面図。(b)は、同他の例の電動パワーステアリング装置についてそのボールねじナット周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図8】本発明にかかる電動パワーステアリング装置の他の例についてそのボールねじナット周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図9】従来の電動パワーステアリング装置についてその断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる電動パワーステアリング装置の一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、この電動パワーステアリング装置は、運転者によるステアリングホイールの操舵に基づいて車両の操舵輪の舵角を変化させるステアリング機構1と、運転者の操舵を補助するアシスト機構2とによって構成されている。そして、電動パワーステアリング装置は、これらステアリング機構1及びアシスト機構2をハウジング3により覆うことで、それらを外部環境から保護する構造をなしている。
【0025】
このうち、ハウジング3は、アシスト機構2の外周を覆う第1ハウジング3aの一方の端部にオーリングOr1を介して第2ハウジング3bが装着されるとともに、第1ハウジング3aの他方の端部にオーリングOr2を介して第3ハウジング3cが装着される構造をなしている。このように、ハウジング3を3つの部分からなる分割体として構成することにより、その設計や組み付けに際しての自由度、並びに利便性が高められている。
【0026】
また、ステアリング機構1は、第2ハウジング3bの内部に収容されてステアリングホイールの操舵に連動して回転するピニオン軸10と、ハウジング3に挿通されてピニオン軸10に噛合されるラック軸11とを備えている。このうち、ラック軸11は、第2ハウジング3bに設けられたラックガイド12によって軸方向(矢印a1,a2で示す方向)に往復動可能に支持されている。また、ラック軸11の両端には、タイロッド(図示略)を介して車両の操舵輪(図示略)が連結されている。このステアリング機構1では、ピニオン軸10の回転に基づいてラック軸11が軸方向に往復動することにより、車両の操舵輪の舵角が変更される。
【0027】
一方、アシスト機構2は、駆動源としてのモータ20と、同モータ20の回転を検出する回転センサ30と、モータ20の回転運動をラック軸11の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構としてのボールねじナット40とを備えている。
【0028】
モータ20は、外面にマグネット22が固着された筒状のモータ軸21と、通電可能なコイル23を有してモータ軸21の外周を取り囲むステータ24とから構成されている。このうち、ステータ24は、第1ハウジング3aの内面に固定されている。また、モータ軸21の矢印a1で示す方向の端部は、モータ軸用軸受としての複列ベアリング50によって回転可能に支持されている。そして、モータ軸21の内部にラック軸11が挿通されることにより、モータ軸21とラック軸11とが同一の軸線m上に配置されている。このモータ20は、ステータ24に供給される電力に応じた電磁力をマグネット22に作用させることにより、モータ軸21を軸線mを中心に回転させる。
【0029】
なお、モータ20への給電は、第1ハウジング3aの右端部に設けられた給電コネクタ25を介して行われる。また、複列ベアリング50の内輪50aは、モータ軸21の外面に形成された段差部21aと、モータ軸21の端部の外周に螺着されたナット26とによって挟持されており、同内輪50aはナット26の締め付けを通じてモータ軸21に固定されている。また、複列ベアリング50の外輪50bは、第2ハウジング3bの外面に形成された段差部3eと、同第2ハウジング3bの内面に螺着されたセンターナット52とによって挟持されており、同外輪50bはセンターナット52の締め付けを通じてハウジング3に固定されている。そして、これらナット26及びセンターナット52による締結構造を通じて複列ベアリング50の位置が固定されている。このように、本実施形態では、複列ベアリング50の矢印a2で示す方向への移動を規制する軸受用規制部材がセンターナット52となっている。
【0030】
一方、回転センサ30は、センターナット52とモータ20との間に位置するかたちで第1ハウジング3aに固定して設けられている。なお、図中に拡大して示すように、回転センサ30とセンターナット52との間には幅Eの隙間が形成されている。この回転センサ30は、モータ軸21に対向するかたちで配置されたセンシング部31を有しており、同センシング部31を通じてモータ軸21の回転角度を検出する。また、回転センサ30は、第1ハウジング3aの上面から突出するように設けられたコネクタ部32を備えている。そして、このコネクタ部32を介して回転センサ30への給電、並びにセンシング部31を通じて検出された回転角度に応じた電気信号の出力が行われる。なお、回転センサ30の出力信号は、電動パワーステアリング装置の駆動を統括的に司る制御装置(図示略)に取り込まれている。そして、この制御装置が、回転センサ30を通じて検出されるモータ軸21の回転角度に基づいてモータ20への給電を制御することで、モータ20の駆動が制御される。
【0031】
また、ボールねじナット40は、その周辺の拡大構造を図2に示すように、ラック軸11において外面にねじ溝11aが形成された部分に外嵌されている。このボールねじナット40の内面には、ラック軸11のねじ溝11aに対応するねじ溝41が形成されており、これらのねじ溝11a,41により形成される螺旋状の転動路L1内に複数のボール42が収容されている。また、ボールねじナット40には、ねじ溝41内の二箇所を短絡する環流路L2が形成されている。これにより、ボールねじナット40がラック軸11に対して相対回転すると、ボール42が転動路L1及び環流路L2内を転動しながら循環する。ボールねじナット40では、こうしたボール42の転動を通じてラック軸11に軸方向の力を作用させる。また、ボールねじナット40には、モータ軸21の矢印a2で示す方向の開口端21bからその内部に挿入される係合部(挿入部)43が形成されている。この係合部43には、モータ軸21の開口端21bから矢印a1で示す方向にずれた部分の内面に形成された雌ねじ穴21cに螺入される雄ねじ部43aと、同モータ軸21の開口端21bの内面に嵌合されるインロー部43bとが形成されている。そして、係合部43の雄ねじ部43aとモータ軸21の雌ねじ穴21cとの締結構造を通じて、モータ軸21にボールねじナット40が係合、連結されている。なお、雄ねじ部43aの軸方向の長さは「A」に設定されるとともに、インロー部43bの軸方向の長さは「B」に設定されている。すなわち、係合部43の長さ(より詳細にはその軸方向の長さ)Sは「A+B」に設定されている。
【0032】
ところで、こうした電動パワーステアリング装置では、その製造工程においてモータ軸21にボールねじナット40を組み付ける際、まず、モータ軸21を適宜の治具などにより固定した上で、ナットランナーによりボールねじナット40を回転させ、これをモータ軸21に仮締めする。その後、工具を用いてボールねじナット40に締結軸力を付与してモータ軸21にボールねじナット40を本締めすることで、ボールねじナット40をモータ軸21に組み付ける。しかしながら、このような組み付け方法の場合、ナットランナーの運用コストが発生するため、このことが電動パワーステアリング装置の製造コストの増加を招く一つの要因となっている。
【0033】
そこで、本実施形態では、モータ軸21にボールねじナット40を組み付ける方法として図3に示すような方法を採用することとしている。
図3(a)に示すように、本実施形態では、ボールねじナット40の係合部43が形成された面と軸方向反対側の端面に切り欠き44を予め形成しておく。そして、モータ軸21にボールねじナット40を組み付ける際には、まず、係合部43を上方に向けた状態でボールねじナット40を固定治具80の上面に載置する。この際、ボールねじナット40に形成された切り欠き44に、固定治具80の上面に形成された爪部81を挿入する。これにより、ボールねじナット40は、軸線nを中心とする回転が規制された状態で固定される。
【0034】
その後、第1ハウジング3aとモータ20とが一体となったモータアッシーAmをボールねじナット40の上方から近づけ、図3(b)に示すように、モータ軸21の雌ねじ穴21cの端部にボールねじナット40の雄ねじ部43aを接触させる。そして、その状態でモータ20への通電を行ってモータ軸21を軸線nを中心に回転させることにより、モータ軸21の雌ねじ穴21cにボールねじナット40の雄ねじ部43aを締結する。この際、モータ軸21の雌ねじ穴21cに係合部43の雄ねじ部43aを締結するための最終的な締結軸力は、モータ軸21の回転による慣性力を利用して発生させる。なおこのとき、係合部43のインロー部43bがモータ軸21の開口端21bの内面に嵌合することにより、モータ軸21の中心軸とボールねじナット40の中心軸とが合わせられるようになっている。
【0035】
このような組み付け方法によれば、ナットランナーを用いることなくモータ軸21にボールねじナット40を組み付けることができるため、ナットランナーの運用コストを削減することができる。よって、電動パワーステアリング装置の製造コストを低減することができる。
【0036】
一方、先の図2に示すように、ボールねじナット40の外周には、第1ハウジング3aの内面にオーリングOr3を介して組み付けられたボールベアリング(深溝ベアリング)51が配置されている。このボールベアリング51は、ボールねじナット40の外面に形成された段差部45との間に幅Cの隙間を隔てて配置されている。また、ボールベアリング51と矢印a2で示す方向に幅Dの間隙を隔てて第3ハウジング3cの端部3dが配置されている。このように、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間、並びにボールベアリング51と第3ハウジング3cとの間に隙間をそれぞれ設けることとすれば、その隙間の部分で電動パワーステアリング装置の構成部品の組み付け誤差を吸収することができる。したがって、電動パワーステアリング装置の組み立てが容易となる。また、第3ハウジング3cの端部3dの内径は、ボールベアリング51の外輪51aの内径と略同一の長さに設定されている。これにより、ボールベアリング51が第3ハウジング3cの端部3dに当接する位置まで移動したときに、ボールベアリング51の外輪51aにのみ第3ハウジング3cの端部3dが接触するようになっている。
【0037】
さらに、本実施形態では、ボールねじナット40の係合部43の長さSが、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間の幅C、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の幅Dを加算した長さ「C+D」よりも長く設定されている。また、先の図1に示した回転センサ30とセンターナット52との間の隙間の幅Eも、「C+D」よりも長く設定されている。
【0038】
次に、先の図1及び図2、並びに図4を参照して、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の作用について説明する。
例えば車両の操舵輪が縁石に衝突したときに図1に示すラック軸11に過大な衝撃荷重が作用して、ボールねじナット40の係合部43とモータ軸21との締結部分に緩みが生じたとする。この衝撃荷重が想定されるよりも過大なものである場合、ボールねじナット40がモータ軸21に対して相対回転することが可能となるため、ボールねじナット40がモータ軸21に対して矢印a2で示す方向に、すなわち係合部43の係合が解除される方向に相対移動する場合がある。この場合、図2に示すように、ボールねじナット40が矢印a2で示す方向に移動すると、ボールねじナット40の段差部45によってボールベアリング51が矢印a2で示す方向に押圧される。そして、図4に示すように、ボールベアリング51が第3ハウジング3cの端部3dに当接すると、それ以上のボールベアリング51の移動が規制される。したがって、ボールねじナット40がモータ軸21に対して相対移動可能な距離は、先の図2に示したボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間の幅C、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の幅Dを加算した長さ「C+D」となる。ここで、本実施形態では、ボールねじナット40の係合部43の長さSが「C+D」よりも長く設定されているため、図中に示すようにモータ軸21の内部からボールねじナット40の係合部43が脱落することがない。これにより、仮にラック軸11に衝撃荷重が作用した場合であっても、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができるため、モータ軸21からラック軸11にアシスト力を付与することができる。よって、ドライバビリティを維持することが可能となる。また、ボールねじナット40とモータ軸21との間にかしめ構造を設ける必要がないため、パワーステアリング装置の製造工数を低減することもできる。
【0039】
なお、モータ軸21の内部にボールねじナット40の係合部43が挿入された状態を維持することができれば、モータ20の駆動に伴ってモータ軸21が軸線mを中心に回転及び反転を繰り返すと、モータ軸21の回転力によってボールねじナット40の係合部43がモータ軸21に自然に締結される。このため、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態をより的確に維持することができる。また、本実施形態では、ボールねじナット40が矢印a2で示す方向に移動したときに、ボールベアリング51の外輪51aにのみ第3ハウジング3cの端部3dが当接する。これにより、ボールベアリング51の内輪51bの動きが阻害されることはないため、ボールねじナット40は通常通り回転可能である。よって、ラック軸11の軸方向の動きが適切に維持されるため、ドライバビリティをより的確に維持することができる。
【0040】
ところで、車両の操舵輪が縁石に衝突したときに、図1に示すラック軸11に矢印a2で示す方向の衝撃荷重が作用することもある。この場合、ラック軸11に作用した衝撃荷重がボールねじナット40、モータ軸21、複列ベアリング50、及びセンターナット52の順に伝達すると、拡大図に示すように、第2ハウジング3bのオーリングOr1が挿入されている溝3fからその内面に向けて亀裂が発生し、図中の二点鎖線Pの部分で破断してしまうおそれがある。この場合、センターナット52がハウジング3に対して矢印a2で示す方向に相対移動可能となるため、センターナット52が回転センサ30に接触して、同センサ30が破損するおそれがある。
【0041】
この点、本実施形態では、上述のように、回転センサ30とセンターナット52との間の隙間の幅Eを、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間の幅C、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の幅Dを加算した長さ「C+D」よりも長く設定するようにしている。これにより、ラック軸11やボールねじナット40がハウジング3に対して矢印a2で示す方向に相対移動すると、ボールベアリング51が第3ハウジング3cの端部3dに接触するため、それに伴ってボールねじナット40、モータ軸21、複列ベアリング50、及びセンターナット52の矢印a2で示す方向の移動が規制される。よって、センターナット52が回転センサ30に接触するような状況を回避することができ、回転センサ30の破損を未然に防止することができる。
【0042】
一方、先の図9に例示した電動パワーステアリング装置のように、モータ軸とボールねじナットとがフランジ部材を介したかしめ構造を通じて固定されているような場合、モータ軸とボールねじナットとを分解するためには、まずは、ボールねじナットの外周に配置されたボールベアリングを取り外す必要がある。ところが、ボールベアリングの周囲には工具を挿入するスペースが存在しないため、ボールベアリングを破壊しなければならない。そして、ボールベアリングを破壊した後、フランジ部材を外し、最後にモータ軸とボールねじナットとを相対回転させ、モータ軸とボールねじナットとを分解する。このように、従来のパワーステアリング装置では、その分解に際してボールベアリングを破壊しなければならないため、作業が繁雑なものとなっていた。また、こうした分解作業を行った場合、ボールベアリング及びフランジ部材の再利用が不可能となるといった点でも改善の余地を残すものとなっていた。
【0043】
この点、本実施形態では、第1ハウジング3aから第3ハウジング3cを取り外した後、モータ軸21とボールねじナット40とを相対回転させて、モータ軸21とボールねじナット40とを分解すれば、第1ハウジング3aの右端部3gからボールねじナット40を抜き取ることができる。またこのとき、ボールベアリング51を、第1ハウジング3aの右端部3gから、破壊することなく取り外すことができる。よって、全ての部品が再利用可能であるとともに、分解を容易に行うことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ボールねじナット40がモータ軸21に対して軸方向に相対移動可能な距離が「C+D」に規制されるように、第3ハウジング3cの端部3dをボールベアリング51に対向配置することとした。そして、ボールねじナット40の係合部43の長さSを、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間の幅C、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の幅Dを加算した長さ「C+D」よりも長く設定することとした。これにより、仮にラック軸11に衝撃荷重が作用した場合であっても、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができるため、ドライバビリティを維持することができるようになる。また、ボールねじナット40とモータ軸21との間にかしめ構造が不要となるため、電動パワーステアリング装置の製造工数を低減することができるようになる。さらに、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の部分で電動パワーステアリング装置の構成部品の組み付け誤差を吸収することができるため、その組み立てが容易となる。
【0045】
(2)ボールベアリング51が軸方向に移動した際に、ボールベアリング51の外輪51aにのみ第3ハウジング3cの端部3dを接触させることとした。これにより、ラック軸11の軸方向の動きが適切に維持されるため、ドライバビリティをより的確に維持することができる。
【0046】
(3)ボールねじナット40の外面には、同ボールねじナット40がモータ軸21に対して軸方向に相対移動した際にボールベアリング51に接触してこれを軸方向に押圧する段差部45を形成することとした。これにより、ボールねじナット40の外面に段差部45を形成するといった極めて簡素な構造によりボールねじナット40及びボールベアリング51を一体的に移動させることができるため、ボールねじナット40の移動を規制するための構造を容易に実現することができるようになる。
【0047】
(4)ボールねじナット40の移動を規制する規制部材として、第3ハウジング3cを利用することとした。これにより、新たな規制部材を設ける必要がないため、コストの低減を図ることができるようになる。
【0048】
(5)センターナット52と回転センサ30との間に形成された隙間の幅Eを、ボールねじナット40の段差部45とボールベアリング51との間の隙間の幅C、及び第3ハウジング3cとボールベアリング51との間の隙間の幅Dを加算した長さ「C+D」よりも長く設定することとした。これにより、ラック軸11に過大な衝撃荷重が作用した場合であっても、センターナット52が回転センサ30に接触するような状況を回避することができるため、回転センサ30の破損を未然に防止することができるようになる。
【0049】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・ボールねじナット40の係合部43の長さS、雄ねじ部43aの長さA、及びインロー部43bの長さBは適宜変更可能である。また、各隙間の幅C〜Eも適宜変更可能である。要は、ボールねじナット40の係合部43の長さSが「C+D」よりも長ければよい。また、センターナット52と回転センサ30との間に形成された隙間の幅Eが「C+D」よりも長ければよい。
【0050】
・上記実施形態では、ボールねじナット40の係合部43とモータ軸21との連結を、ねじによる締結によって行うこととした。これに代えて、図5(a)に示すように、ボールねじナット40の係合部43とモータ軸21の開口端21bの内面との間に板ばね(トレランスリング)60を介在させ、同板ばね60のテンションによってそれらを係合、連結させてもよい。なおこの場合、ボールねじナット40の周辺の拡大構造を図5(b)に示すように、係合部43の長さは図中の長さSとなる。
【0051】
・上記実施形態では、ボールねじナット40の外周にボールベアリング51を配置することとした。これに代えて、図6(a)に示すように、ボールねじナット40と第1ハウジング3aとの間にブッシュ53を介在させてもよい。ところで、ブッシュ53を用いる場合、ボールねじナット40の矢印a2で示す方向の移動に伴ってブッシュ53が第3ハウジング3cの端部3dに接触すると、それらが面接触する。このため、ブッシュ53と第3ハウジング3cとの間に摩擦力が発生して、ボールねじナット40の回転、並びにラック軸11の軸方向の動きが阻害されるおそれがある。そこで、例えば第3ハウジング3cのブッシュ53が当接する面に低摩擦シート(低μシート)などを貼り付けることが有効である。これにより、ブッシュ53と第3ハウジング3cとの間に発生する摩擦力を低減することができるため、ボールねじナット40及びラック軸11の動きが阻害され難くなり、ひいてはドライバビリティを適切に維持することができるようになる。なおこの場合、ボールねじナット40の周辺の拡大構造を図6(b)に示すように、ボールねじナット40の係合部43の長さSを図中の「F+G」よりも長く設定すれば、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができる。なお、「F」はボールねじナット40の段差部45とブッシュ53との間の隙間の幅を示している。また「G」は第3ハウジング3cとブッシュ53との間の隙間の幅を示している。
【0052】
・上記実施形態では、ボールベアリング51の矢印a2で示す方向の移動を規制する部材として第3ハウジング3cを利用することとした。これに代えて、図7(a)に示すように、第1ハウジング3aにおいて、ボールベアリング51と第3ハウジング3cとの間に位置する内面部分に、リング状の規制部材70を締結し、同規制部材70によってボールベアリング51の矢印a2で示す方向の移動を規制してもよい。なおこの場合、ボールねじナット40の周辺の拡大構造を図7(b)に示すように、規制部材70の内径をボールベアリング51の外輪51aの内径と略同一に設定することが有効である。これにより、規制部材70はボールベアリング51の外輪51aにのみ接触可能であるため、上記実施形態と同様にラック軸11の軸方向の動きを適切に維持することができる。またこの場合、規制部材70とボールベアリング51との間の隙間の幅を「H」とするとき、ボールねじナット40の係合部43の長さSを図中の「C+H」よりも長く設定すれば、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができる。さらに、規制部材70と第3ハウジング3cとの間の隙間の幅を「J」とするとき、ボールねじナット40の係合部43の長さSを図中の「C+H+J」よりも長く設定すれば、万一規制部材70が緩んだとしても、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができる。
【0053】
・上記実施形態では、ボールねじナット40及びボールベアリング51を一体的に移動させるべく、ボールねじナット40の外面に段差部45を形成することとしたが、ボールねじナット40及びボールベアリング51を一体的に移動させることのできる構造であれば、適宜の構造を採用することができる。
【0054】
・第3ハウジング3cの端部3dがボールベアリング51の内輪51bに接触可能であってもよい。なおこの場合、第3ハウジング3cの端部3dにおいて、ボールベアリング51が接触する側の端面に低摩擦シートなどを貼り付けることが有効である。これにより、ボールベアリング51が第3ハウジング3cの端部3dに接触したときにそれらの間に発生する摩擦力を低減することができるため、ボールねじナット40及びラック軸11の動きが阻害され難くなり、ひいてはドライバビリティを適切に維持することができるようになる。
【0055】
・上記実施形態では、ボールベアリング51の軸方向の移動を第3ハウジング3cにより規制することによってボールねじナット40の軸方向の移動を規制することとした。これに代えて、図8に示すように、ボールベアリング51を備えていない電動パワーステアリング装置にあっては、第3ハウジング3cの内面に、ボールねじナット40の矢印a2で示す方向の端面に対向するように段差部3hを設け、同段差部3hによってボールねじナット40の軸方向の移動を規制してもよい。なおこの場合、ボールねじナット40の係合部43の長さSを、ボールねじナット40と第3ハウジング3cの段差部3hとの間の隙間の幅Iよりも長く設定すれば、ボールねじナット40とモータ軸21との連結状態を維持することができる。
【0056】
・上記実施形態では、ボールねじナット40の外周にボールベアリング51を配置することとしたが、同ボールベアリング51に代えて、例えばころ軸受けなど、適宜の転がり軸受けを配置してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、モータ軸21の内部にボールねじナット40の係合部43を挿入し、モータ軸21の雌ねじ部にボールねじナット40の雄ねじ部43aを螺入することで、モータ軸21にボールねじナット40を締結する構造を採用することとした。これに代えて、例えばボールねじナット40の係合部43の内部に雌ねじ部を形成するとともに、同雌ねじ部に螺入される雄ねじ部をモータ軸21に形成する。そして、ボールねじナット40の係合部43の内部にモータ軸21を挿入し、ボールねじナット40の雌ねじ部にモータ軸21の雄ねじ部を螺入することで、モータ軸21にボールねじナット40を締結する構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
Am…モータアッシー、L1…転動路、L2…環流路、Or1〜Or3…オーリング、1…ステアリング機構、2…アシスト機構、3…ハウジング、3a…第1ハウジング、3b…第2ハウジング、3c…第3ハウジング、3d…端部、3e…段差部、3f…溝、3g…右端部、3h…段差部、10…ピニオン軸、11…ラック軸、11a…ねじ溝、12…ラックガイド、20…モータ、21,100…モータ軸、21a…段差部、21b…端部、21b…開口端、21c…雌ねじ穴、22…マグネット、23…コイル、24…ステータ、25…給電コネクタ、26…ナット、30…回転センサ、31…センシング部、32…コネクタ部、40,110…ボールねじナット、41…ねじ溝、42…ボール、43,110…係合部、43a…雄ねじ部、43b…インロー部、44…切り欠き、45…段差部、50…複列ベアリング、50a…内輪、50b…外輪、51…ボールベアリング、51a…外輪、51b…内輪、52…センターナット、53…ブッシュ、60…板ばね、70…規制部材、80…固定治具、81…爪部、90…ラック軸、91…ねじ溝、112…フランジ部、120…フランジ部材、121…薄板部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラック軸が内部に挿通されてモータの駆動に基づき回転する筒状のモータ軸と、同モータ軸に係合される係合部を有して前記モータ軸の回転運動を前記ラック軸の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構とを備え、前記モータの駆動力を前記モータ軸及び前記運動変換機構を介して前記ラック軸に伝達することにより、車両の操舵系の操作を補助するアシスト力を前記ラック軸に付与する電動パワーステアリング装置において、
前記運動変換機構が前記モータ軸に対して前記係合部の係合が解除される方向へ相対移動可能な距離を所定距離に規制する規制部材を備え、前記係合部の長さが、前記所定距離よりも長く設定されてなる
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記運動変換機構の外周に配置される軸受を更に備えるとともに、同軸受は、前記運動変換機構と一体的に移動可能に設けられ、前記規制部材は、前記軸受と前記係合部の係合が解除される方向に所定の間隙を隔てて対向配置される部材により構成される
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記軸受は、前記運動変換機構が挿通される内輪と同内輪の外周に配置される外輪とを有する転がり軸受であり、
前記規制部材は、同転がり軸受が前記係合部の係合が解除される方向に移動した際に前記外輪にのみ当接するように設けられてなる
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記運動変換機構の外面には、同運動変換機構が前記モータ軸に対して前記係合部の係合が解除される方向に相対移動した際に前記軸受に接触してこれを前記係合部の係合が解除される方向に押圧する段差部が形成されている
請求項2又は3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記係合部には、前記モータ軸に形成されたねじ部に螺入されるねじ部と、前記モータ軸が嵌合されるインロー部とが形成されるとともに、
前記運動変換機構が、前記係合部のねじ部と前記モータ軸のねじ部との締結構造を通じて前記モータ軸に連結されるものであって、
前記係合部の長さが、同係合部の前記ねじ部の長さと前記インロー部の長さとを加算した長さに設定されてなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記規制部材は、前記ラック軸を覆うようにして設けられるハウジングである
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記モータ軸に固定して設けられて同モータ軸を回動可能に支持するモータ軸用軸受と、前記モータ軸の外周を覆うハウジングに固定されて前記モータ軸用軸受の前記軸方向への移動を規制する軸受用規制部材と、同軸受用規制部材と前記軸方向に所定の隙間を隔てて配置されて前記モータ軸の回転を検出する回転センサとを更に備え、
前記軸受用規制部材と前記回転センサとの間に形成された隙間の幅が、前記所定距離よりも長く設定されてなる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75546(P2013−75546A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214995(P2011−214995)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】