説明

電動モータ用制御装置

【課題】車両の制動距離を短くすることに貢献する構成を備える電動モータ用制御装置を提供する。
【解決手段】走行動力源としての電動モータ20と、電動モータ20を駆動するための複数の駆動系統30,40とを備える電動車両1のための電動モータ用制御装置50は、電動モータ20を回転させるために用いられている駆動系統の数を系統使用数として、少なくとも1つの駆動系統を用いて電動モータ20を回転させているとき、かつ電動モータ20を停止するための所定の停止条件が成立しているとき、系統使用数よりも多い数の駆動系統を用いて電動モータ20にブレーキトルクを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行動力源としての電動モータと、この電動モータを駆動するための複数の駆動系統とを制御する車両のための電動モータ用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルモビリティ等の電動車両は、走行動力源として電動モータと、この電動モータを駆動するための1または複数の駆動系統とを有する。複数の駆動系統により制御される電動モータの一例としては、特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1の電動モータは、自動変速機のレンジ切換機構に使用されるスイッチトリラクタンスモータであり、2系統の駆動コイルを備える。各駆動コイルは、別個のモータドライバにより駆動される。そして、2系統のうちの一方の系統に異常が発生しているとき、異常が発生していない他方の系統で電動モータを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−198448号公報(第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行動力源として電動モータを有する車両においては、車両の制動距離を短くすることが可能な構成が採用されていることが望まれている。一方、特許文献1には、電動モータの回転を停止するときにどのようにブレーキトルクを発生させるかについては特に開示されていない。このため、上記の要求に応じるための参考技術とはならない。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の制動距離を短くすることに貢献する構成を備える電動モータ用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、「走行動力源としての電動モータと、この電動モータを駆動するための複数の駆動系統とを備える車両のための電動モータ用制御装置において、前記電動モータを回転させるために用いられている駆動系統の数を系統使用数として、少なくとも1つの駆動系統を用いて前記電動モータを回転させているとき、かつ前記電動モータを停止するための所定の停止条件が成立しているとき、前記系統使用数よりも多い数の駆動系統を用いて前記電動モータにブレーキトルクを発生させる」ことを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、系統使用数よりも多くの駆動系統を用いて電動モータにブレーキトルクを発生させるため、ブレーキトルクを発生させるための制御として、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統の数と系統使用数とを同数に設定した制御しか含まない構成と比較して、より大きなブレーキトルクで電動モータの回転を停止させることが可能になる。すなわち、車両の制動距離を短くすることができる。このように、本発明によれば、車両の制動距離を短くすることに貢献する構成を備える電動モータ用制御装置を提供することができる。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、「請求項1に記載の電動モータ用制御装置において、異常が発生している駆動系統を異常駆動系統として、前記所定の停止条件が成立しているとき、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統に前記異常駆動系統を含める」ことを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統に異常駆動系統を含めない構成と比較して、ブレーキトルクを発生させるために用いる駆動系統の候補の数が多くなる。
【0011】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、「請求項1または2に記載の電動モータ用制御装置において、異常が発生している駆動系統を異常駆動系統として、駆動系統により前記電動モータを駆動するための所定の駆動条件が成立しているとき、前記異常駆動系統以外の駆動系統を用いて前記電動モータを回転させる」ことを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、電動モータを回転させるための駆動系統に異常駆動系統を含める構成と比較して、電動モータの回転が安定する。このため、駆動系統に異常が発生しているときに電動モータの回転が不安定となることが抑制される。
【0013】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、「請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、前記所定の停止条件が成立しているか否かが前記車両の走行状態に応じて変化する」ことを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、系統使用数よりも多い数の駆動系統を用いて電動モータにブレーキトルクを発生させる制御が車両の走行状態に応じて行なわれる。このため、車両の走行状態に見合う適切なブレーキトルクが得られる。
【0015】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、「請求項4に記載の電動モータ用制御装置において、前記所定の停止条件には、前記車両の走行速度が所定の走行速度以下であることが含まれる」ことを要旨とする。
【0016】
車両の走行速度が所定の走行速度以下のとき、電動モータのブレーキトルクの発生にともない車両の搭乗者が覚える減速感が小さい。このため、上記発明によれば車両が緩やかに減速している感覚を搭乗者に付与することができる。
【0017】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、「請求項4または5に記載の電動モータ用制御装置において、前記所定の停止条件には、前記車両の減速方向の加速度が所定の加速度以上であることが含まれる」ことを要旨とする。
【0018】
車両の搭乗者が車両の走行を停止させるとき、車両の減速方向の加速度が所定の加速度以上となる。このため、上記発明によれば車両の搭乗者の意図に応じて適切に車両を減速させることができる。
【0019】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、「請求項1〜6のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、前記複数の駆動系統は、前記電動モータのコイルへの電力供給状態を切り替えるスイッチング素子を備え、前記電動モータのロータの1回転期間において前記スイッチング素子を継続してオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる」ことを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、電動モータにブレーキトルクを発生させるための制御として、ロータの1回転期間においてスイッチング素子のオンおよびオフを繰り返す制御を行なう構成と比較して、より大きなブレーキトルクを発生させることができる。
【0021】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、「請求項1〜7のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、前記複数の駆動系統は、前記電動モータのコイルへの電力供給状態を切り替える複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子の全部をオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる」ことを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、電動モータにブレーキトルクを発生させるための制御として、複数のスイッチング素子の一部のみの状態をオンに設定する制御を行なう構成と比較して、より大きなブレーキトルクを発生させることができる。
【0023】
(9)第9の手段は、請求項9に記載の発明すなわち、「請求項1〜8のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、前記電動モータのロータの回転角を検出する回転角センサに異常が生じている状態を駆動系統の異常とする」ことを要旨とする。
【0024】
(10)第10の手段は、請求項10に記載の発明すなわち「請求項1〜9のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、少なくとも1つの相への通電が不可能な駆動系統を相異常駆動系統として、この相異常駆動系統の通電制御を停止する」ことを要旨とする。
【0025】
相異常駆動系統は、電動モータにブレーキトルクを発生させることができないため、ブレーキトルクを発生させる必要があるときの相異常駆動系統に対する制御は不要に演算負荷を増大させるものとなる。この発明によれば、相異常駆動系統に対する通電制御が停止されるため、演算負荷の増大が抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、車両の制動距離を短くすることに貢献する構成を備える電動モータ用制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の電動車両について、(a)はその全体の背面構造を模式的に示す背面図、(b)はその全体の左側面構造を模式的に示す側面図。
【図2】同実施形態の電動車両について、その駆動装置の構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の電動車両について、その電動モータ用制御装置により実行される「車両走行制御」の手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態の電動車両について、その電動モータ用制御装置により実行される「駆動トルク発生制御」の手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態の電動車両について、その電動モータ用制御装置により実行される「ブレーキトルク発生制御」の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、電動車両1の構成について説明する。
電動車両1は、1人乗車用の車両本体10を備えるパーソナルモビリティである。車両本体10の直上には、搭乗者が乗る搭乗面11が設けられている。さらに、車両本体10には、搭乗者による操作が可能なハンドル12が、搭乗面11から上方に突出させて設けられている。
【0029】
ハンドル12は、搭乗者が電動車両1に対して加速および減速を指示するためのマンマシンインタフェースである。ハンドル12は車両本体10に対して前方および後方に揺動する。搭乗者がハンドル12を前方に揺動させる操作を行うことによって加速指示が入力される。また、搭乗者がハンドル12を後方に揺動させる操作を行うことによって減速指示が入力される。
【0030】
また、電動車両1は、バッテリからの供給される電力により回転する電動モータ20と、電動モータ20の回転速度を減じて出力する減速機2と、減速機2を介して電動モータ20の回転が伝達される車輪3と、駆動装置4とを備えている。
【0031】
同軸二輪車である電動車両1の車両本体10には、同一の軸を回転中心とする2つの車輪3が左方および右方に間隔を空けて設けられている。減速機2および電動モータ20は2つずつ設けられている。左側および右側の車輪3の各々は別個の電動モータ20により回転させられる。
【0032】
電動モータ20は、電動車両1の走行動力源として各車輪3に設けられている。電動モータ20はブラシレスDCモータである。2つの電動モータ20は、それぞれ、同電動モータ20に設けられる第1駆動系統30および第2駆動系統40を制御する駆動装置4により駆動される。
【0033】
図2を参照して、駆動装置4および電動モータ20の構成について詳しく説明する。
駆動装置4は、1つの電動モータ20を駆動可能な2つの駆動系統30,40と、左側および右側の車輪3に対応して設けられた2つの電動モータ20を制御するための電動モータ用制御装置50(以下「制御装置50」)とを備えている。
【0034】
駆動系統30,40の各々は、1つの電動モータ20を駆動する。左側および右側の車輪3を回転させる2つの電動モータ20に対応して、駆動系統30,40が2つずつ設けられている。すなわち、駆動装置4は、左側の電動モータ20に対応する駆動系統30,40と、右側の電動モータ20に対応する駆動系統30,40とを備えている。以下の説明においては、一方の電動モータ20に対応する駆動系統30,40について説明するが、他方の電動モータ20に対応する駆動系統30,40も同様に構成されているため、その説明を省略する。
【0035】
第1駆動系統30は、制御装置50から入力される制御信号に基づいて電動モータ20を駆動する第1駆動回路31と、電動モータ20の回転角を検出する第1回転角センサ32とを備えている。第1駆動回路31には、電動モータ20を構成する複数の相への通電を制御するスイッチング素子が設けられている。第1駆動回路31は、第1回転角センサ32により検出された回転角に基づいて同スイッチング素子のオンおよびオフを切り替えることにより、電動モータ20に供給する電流の大きさおよび向きを変化させる。
【0036】
第2駆動系統40は、制御装置50から入力される制御信号に基づいて電動モータ20を駆動する第2駆動回路41と、電動モータ20の回転角を検出する第2回転角センサ42とを備えている。第2駆動回路41には、電動モータ20を構成する複数の相への通電を制御するスイッチング素子が設けられている。第2駆動回路41は、第2回転角センサ42により検出された回転角に基づいて同スイッチング素子のオンおよびオフを切り替えることにより、電動モータ20に供給する電流の大きさおよび向きを変化させる。
【0037】
制御装置50は、搭乗者によるハンドル12の操作量および電動車両1の走行状態に基づいて電動車両1の走行を制御するための車両走行制御を行うECU(Electronic Control Unit)を有する。また、車両走行制御において、電動車両1を加速するための駆動トルク発生制御と、電動車両1を減速するためのブレーキトルク発生制御を行う。制御装置50には、ハンドル12の操作量を検出することにより搭乗者の姿勢を検出する姿勢センサ51と、車輪3の回転速度を検出することにより電動車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ52と、電動車両1の加速度を検出する加速度センサ53とが接続されている。
【0038】
電動モータ20は、減速機2を介して車輪3に接続されるロータ21と、ロータ21を回転させるための回転磁界を発生させるステータ22とを備えている。ロータ21は永久磁石型のインナーロータである。第1回転角センサ32は、ステータ22に対して相対回転するロータ21の回転角を、電動モータ20の回転角として検出する。また、第2回転角センサ42も同様に、ロータ21の回転角を電動モータ20の回転角として検出する。
【0039】
ステータ22は第1電磁石界磁23と第2電磁石界磁24とを有する。第1電磁石界磁23は、U相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルを有する。第2電磁石界磁24も、U相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルを有する。第1電磁石界磁23および第2電磁石界磁24の3相のコイルは、ステータ22の鉄芯を構成するステータコアに巻かれている。
【0040】
第1電磁石界磁23の3相のコイルには、第1駆動回路31により電流が印加される。各相への通電および通電停止の切り替えは第1駆動回路31のスイッチング素子により行われる。また、第2電磁石界磁24を構成する各相のコイルには、第2駆動回路41により電流が印加される。各相への通電および通電停止の切り替えは第2駆動回路41のスイッチング素子により行われる。
【0041】
上記構成の駆動装置4においては、第1回転角センサ32および第2回転角センサ42がともに正常であって電動モータ20の回転角を検出することができるとき、第1駆動系統30および第2駆動系統40のいずれも、電動モータ20を駆動させることができる。また、第1回転角センサ32および第2回転角センサ42のいずれかが電動モータ20の回転角を検出することができないとき、電動モータ20の回転角を検出することができる第1駆動系統30または第2駆動系統40により、電動モータ20を駆動させることができる。
【0042】
制御装置50の制御の内容について説明する。
制御装置50は、第1駆動系統30および第2駆動系統40に異常が生じていないとき、車両の走行状態等に応じて第1駆動系統30および第2駆動系統40の少なくとも一方により電動モータ20を駆動する。また、第1駆動系統30に異常が生じているとき、第2駆動系統40により電動モータ20を駆動する。また、第2駆動系統40に異常が生じているとき、第1駆動系統30により電動モータ20を駆動する。
【0043】
図3を参照して、制御装置50が実行する「車両走行制御」について説明する。なお同制御は、制御装置50により電動車両1の走行中に繰り返し実行される。制御装置50は、以下のように各ステップの処理を行なう。
【0044】
ステップS1で、姿勢センサ51から入力される電気信号に基づいて搭乗者によるハンドル12のアクセル操作量(加速操作量)が所定量以上か否かを判定する。アクセル操作量は、ハンドル12が所定の基準位置から前方へ揺動した量である。ステップS1においてアクセル操作量が所定量以上と判定したとき、ステップS10で駆動トルク発生制御を実行する。
【0045】
一方、ステップS1においてアクセル操作量が所定量未満と判定したとき、ステップS2で、姿勢センサ51から入力される電気信号に基づいて搭乗者によるハンドル12のブレーキ操作量(制動操作量)が所定量以上か否かを判定する。ブレーキ操作量は、ハンドル12が所定の基準位置から後方へ揺動した量である。ステップS2においてブレーキ操作量が所定量以上と判定したとき、ステップS20でブレーキトルク発生制御を実行する。
【0046】
図4を参照して、制御装置50が実行する「駆動トルク発生制御」について説明する。駆動トルクは、電動モータ20を回転させるためのトルクである。制御装置50は、以下のように各ステップの処理を行なう。
【0047】
ステップS11で、姿勢センサ51および車速センサ52から入力される電気信号に基づいて、2系統駆動が要求されたか否かを判定する。2系統駆動は、第1駆動系統30および第2駆動系統40で電動モータ20を駆動することをいう。ステップS11では、例えば、姿勢センサ51により検出されたアクセル操作量と車速センサ52により検出された車速とに基づいて、アクセル操作量に応じて設定されている目標速度域よりも車速が小さいか否かを判定する。車速が目標速度域よりも小さい場合には2系統駆動が要求されたと判定する。一方、車速が目標速度域にある場合には、2系統駆動が要求されていないと判定する。
【0048】
ステップS11において2系統駆動が要求されたと判定したとき、ステップS12で、2つの駆動系統30,40が正常か否かを判定する。すなわち、ステップS12では、駆動回路31,41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能か否かを判定するととともに、回転角センサ32,42による電動モータ20の回転角の検出が可能か否かを判定する。駆動回路31,41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能か否かの判定は、例えば、そのスイッチング素子に接続された回路に流れる電流を検出することにより行うことができる。また、回転角センサ32,42による電動モータ20の回転角の検出が可能か否かの判定は、回転角センサ32,42により検出される回転角の変化態様に基づいて行うことができる。第1駆動回路31のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が不可能なとき、または第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が不可能なとき、2つの駆動系統30,40が正常でないと判定する。さらに、第1回転角センサ32による電動モータ20の回転角の検出が不可能なとき、または第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が不可能なとき、2つの駆動系統30,40が正常でないと判定する。すなわち、第1駆動回路31および第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第1回転角センサ32および第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、2つの駆動系統30,40が正常と判定する。
【0049】
ステップS12において2つの駆動系統30,40が正常と判定したとき、ステップS13で、2つの駆動系統30,40のアクセル制御を行う。アクセル制御は、2つの駆動系統30,40で電動モータ20の回転を加速させる制御である。すなわち、ステップS13においては、2つの駆動系統30,40で電磁石界磁23,24に回転磁界を発生させることによって、ロータ21に駆動トルクを付与して電動モータ20を回転させる。
【0050】
一方、ステップS11において2系統駆動が要求されていないと判定したとき、またはステップS12において2つの駆動系統30,40が正常でないと判定したとき、ステップS14で、2つの駆動系統30,40に異常が発生しているか否かを判定する。ステップS14においては、第1駆動回路31のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第1回転角センサ32による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、1つの駆動系統30が正常、すなわち2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定する。また、第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、1つの駆動系統40が正常、すなわち2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定する。
【0051】
ステップS14において2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定したとき、ステップS15で、電動モータ20の各相への通電制御が可能、かつ電動モータ20の回転角の検出が可能な1つの駆動系統、すなわち、第1駆動系統30または第2駆動系統40のアクセル制御を行う。すなわち、ステップS15においては、第1駆動系統30または第2駆動系統40で電磁石界磁23,24に回転磁界を発生させることによって、ロータ21に駆動トルクを付与して電動モータ20を回転させる。
【0052】
一方、ステップS14において2つの駆動系統30,40に異常が発生していると判定したとき、ステップS16で、2つの駆動系統30,40の通電停止制御を行う。通電停止制御は、バッテリから電動モータ20への通電を遮断する制御である。
【0053】
以上のようにロータ21に駆動トルクが付与されることにより電動モータ20が回転して、電動車両1が前方に走行する。なお、駆動トルク発生制御が実行されないときであっても、電動モータ20の回転時においてブレーキトルク発生制御が実行されるまでの間は、電動モータ20の回転が急に停止しないための駆動トルクがロータ21に付与されている。
【0054】
図5を参照して、制御装置50が実行する「ブレーキトルク発生制御」について説明する。ブレーキトルクは、電動モータ20の回転を停止させるためのトルクである。制御装置50は、以下のように各ステップの処理を行なう。
【0055】
ステップS21で、車速センサ52から入力される電気信号に基づいて車速が所定の速度以下か否かを判定する。ステップS21において判定基準となる所定の速度は、ブレーキトルクを発生させたときに電動車両1の搭乗者が覚える減速感が小さい速度である。
【0056】
ステップS21において車速が所定の速度以下と判定したとき、ステップS22で、加速度センサ53から入力される電気信号に基づいて、電動車両1の減速方向の加速度、すなわち後方への加速度が所定の加速度以上か否かを判定する。ステップS22において判定基準となる所定の加速度は、搭乗者による電動車両1の停止要求が明確と判定される加速度である。
【0057】
ステップS21において車速が所定の速度以下と判定し、かつステップS22において後方への加速度が所定の加速度以上と判定したとき、ステップS23で、駆動系統30,40のうちのいずれか1つの駆動系統に異常が発生しているか否かを判定する。すなわち、ステップS23では、ステップS12と同様に、電動モータ20の各相への通電制御が可能か否かを判定するとともに、電動モータ20の回転角の検出が可能か否かを判定する。第1駆動回路31のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が不可能なとき、または第1回転角センサ32による電動モータ20の回転角の検出が不可能なとき、1つの駆動系統である第1駆動系統30に異常が発生していると判定する。また、第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が不可能なとき、または第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が不可能なとき、1つの駆動系統である第2駆動系統40に異常が発生していると判定する。
【0058】
ステップS23において駆動系統30,40のうちのいずれか1つの駆動系統に異常が発生していると判定したとき、ステップS24で、2つの駆動系統30,40に異常が発生しているか否かを判定する。第1駆動回路31および第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第1回転角センサ32第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、2つの駆動系統30,40に異常が発生していると判定する。すなわち、第1駆動回路31のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第1回転角センサ32による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、第1駆動系統30が正常、すなわち2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定する。また、第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、かつ第2回転角センサ42による電動モータ20の回転角の検出が可能なとき、第2駆動系統40が正常、すなわち2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定する。
【0059】
さらに、ステップS24において2つの駆動系統30,40に異常が発生していないと判定したとき、ステップS25で、駆動回路31,41のスイッチング素子に異常が発生しているか否かを判定する。すなわち、第1駆動回路31のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が不可能なとき、または第2駆動回路41のスイッチング素子による電動モータ20の各相への通電制御が可能なとき、スイッチング素子に異常が発生していると判定する。
【0060】
そして、ステップS25においてスイッチング素子に異常が発生していないと判定したとき、ステップS26で、ステップS24において異常が発生していると判定された駆動系統を異常駆動系統として、この異常駆動系統の間欠モータロック制御を行う。このとき、ステップS24において異常が発生していると判定された駆動系統は、電動モータ20回転角の検出が不可能と判定されている。同時に、ステップS24において異常が発生していないと判定された正常な駆動系統の回生制御を行う。
【0061】
間欠モータロック制御は、電動モータ20の3相への電力供給状態を切り替えるスイッチング素子の全てを同時にオンに維持することと、電動モータ20の3相への電力供給状態を切り替える複数のスイッチング素子の全てを同時にオフに維持することを繰り返す制御である。スイッチング素子のオン状態は、電動モータ20のロータ21の1回転期間において断続的すなわち間欠的に維持される。また、回生制御は、電動モータ20への電力供給を停止して、惰性で回転するロータ21によって発生する電力をバッテリに蓄電する制御である。すなわち、ステップS26においては、2つの駆動系統30,40で電動モータ20の回転を妨げることによって、ロータ21にブレーキトルクを付与して電動モータ20の回転を減速させる。
【0062】
一方、ステップS25においてスイッチング素子に異常が発生していると判定したとき、ステップS27で、ステップS24において異常が発生していると判定された駆動系統を相異常駆動系統として、この相異常駆動系統の通電停止制御を行う。同時に、制御装置が、ステップS24において異常が発生していないと判定された正常な駆動系統の回生制御を行う。通電停止制御は、電動モータ20の3相への通電を遮断する制御である。すなわち、ステップS27においては、回生制御が行われる駆動系統30,40の一方で電動モータ20の回転を妨げることによって、ロータ21にブレーキトルクを付与して電動モータ20の回転を減速させる。
【0063】
また、ステップS24において2つの駆動系統30,40に異常が発生していると判定したとき、ステップS28で、ステップS24において異常が発生していると判定された駆動系統30,40を異常駆動系統として、この異常駆動系統のモータロック制御を行う。モータロック制御は、電動モータ20のロータ21の1回転期間において、電動モータ20の3相への電力供給状態を切り替えるスイッチング素子の全てを同時にオンに維持する制御である。すなわち、ステップS28においては、駆動系統30,40の双方で電動モータ20の回転を妨げることによって、ロータ21にブレーキトルクを付与して電動モータ20の回転を減速させる。
【0064】
また、ステップS23において駆動系統30,40のうちのいずれか1つの駆動系統に異常が発生していないと判定したとき、ステップS29で、ステップS23において異常が発生していないと判定された正常な2つの駆動系統30,40の回生制御を行う。
【0065】
また、ステップS21において車速が所定の速度以下でないと判定したとき、またはステップS22において後方への加速度が所定の加速度以上でないと判定したとき、ステップS30で、駆動系統30,40のうちのいずれか1つの駆動系統の回生制御を行う。なお、このステップ30で、2つの駆動系統30,40の回生制御を行ってもよい。
【0066】
駆動装置4の動作について説明する。
車速が所定の速度以下、かつ後方への加速度が所定の加速度以上であることを停止条件として、この停止条件が成立したとき、ステップS26,S28,S29において電動モータ20にブレーキトルクが発生する。
【0067】
駆動系統30,40に異常が発生しているか否かに応じて、以下のようにしてブレーキトルクが発生する。
(A−1)第1駆動系統30が異常駆動系統、かつ第2駆動系統40に異常が発生していないとき、ステップS26で第1駆動系統30の間欠モータロック制御を行うとともに第2駆動系統40の回生制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。
(A−2)第2駆動系統40が異常駆動系統、かつ第1駆動系統30に異常が発生していないとき、ステップS26で第2駆動系統40の間欠モータロック制御を行うとともに第1駆動系統30の回生制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。
(B−1)第1駆動系統30が相異常駆動系統、かつ第2駆動系統40に異常が発生していないとき、ステップS27で第2駆動系統40の回生制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。なお、このとき、第1駆動系統30の通電停止制御が行われるため、第1駆動系統30はブレーキトルクの発生に寄与しない。
(B−2)第2駆動系統40が相異常駆動系統、かつ第1駆動系統30に異常が発生していないとき、ステップS27で第1駆動系統30の回生制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。なお、このとき、第2駆動系統40の通電停止制御が行われるため、第2駆動系統40はブレーキトルクの発生に寄与しない。
(C)駆動系統30,40の双方に異常が発生しているとき、ステップS28で駆動系統30,40のモータロック制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。
(D)駆動系統30,40の双方に異常が発生していないとき、ステップS29で駆動系統30,40の回生制御を行うことによりブレーキトルクが発生する。
【0068】
上記(A−1)および(A−2)および(C)および(D)においては、2つの駆動系統30,40によりブレーキトルクが発生する。したがって、第1駆動系統30および第2駆動系統40の一方、すなわち1つの駆動系統により電動モータ20を回転させている場合にブレーキトルク発生制御が行われたとき、2つの駆動系統30,40によりブレーキトルクが発生する。すなわち、電動モータ20を回転させるために用いられている駆動系統の数を系統使用数Aとし、電動モータ20の回転を停止させるために用いられる駆動系統の数を系統使用数Bとしたとき、系統使用数Bは系統使用数Aよりも多い。
【0069】
(実施形態の効果)
本実施形態の電動車両1によれば以下の効果が得られる。
(1)制御装置50は、少なくとも1つの駆動系統(例えば第1駆動系統30)を用いて電動モータ20を回転させているとき、かつ電動モータ20を停止するための所定の停止条件が成立しているとき、系統使用数Aよりも多い数の駆動系統を用いて電動モータ20にブレーキトルクを発生させる。このため、ブレーキトルクを発生させるための制御として、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統の数と系統使用数Aとを同数に設定した制御しか含まない構成と比較して、より大きなブレーキトルクで電動モータ20の回転を停止させることが可能になる。すなわち、電動車両1の制動距離を短くすることができる。このように、本発明によれば、電動車両1の制動距離を短くすることに貢献する構成を備える電動モータ用制御装置を提供することができる。
【0070】
(2)制御装置50は、異常が発生している駆動系統を異常駆動系統として、上記停止条件が成立しているとき、ステップS26〜S28で、異常駆動系統を、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統に含める。このような構成によれば、異常駆動系統を含む2つの駆動系統30,40によりブレーキトルクを発生させるため、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統に異常駆動系統を含めない構成と比較して、ブレーキトルクを発生させるために用いる駆動系統の候補の数が多くなる。
【0071】
(3)制御装置50は、駆動系統により電動モータ20を駆動するための所定の駆動条件が成立しているとき、異常駆動系統以外の駆動系統を用いて電動モータ20を回転させる。このような構成によれば、電動モータ20を回転させるための駆動系統に異常駆動系統を含める構成と比較して、電動モータ20の回転が安定する。このため、駆動系統30,40に異常が発生しているときに電動モータ20の回転が不安定となることが抑制される。
【0072】
(4)上記停止条件が成立しているか否かが電動車両1の走行状態に応じて変化する。このような構成によれば、系統使用数よりも多い数の駆動系統を用いて電動モータ20にブレーキトルクを発生させる制御が電動車両1の走行状態に応じて行なわれる。このため、電動車両1の走行状態に見合う適切なブレーキトルクが得られる。
【0073】
(5)上記停止条件には、電動車両1の走行速度が所定の走行速度以下であることが含まれる。電動車両1の走行速度が所定の走行速度以下のとき、電動モータ20のブレーキトルクの発生にともない電動車両1の搭乗者が覚える減速感が小さい。このため、上記発明によれば電動車両1が緩やかに減速している感覚を搭乗者に付与することができる。
【0074】
(6)上記停止条件には、電動車両1の減速方向の加速度が所定の加速度以上であることが含まれる。電動車両1の搭乗者が電動車両1の走行を停止させるとき、電動車両1の減速方向の加速度が所定の加速度以上となる。このため、上記発明によれば電動車両1の搭乗者の意図に応じて適切に電動車両1を減速させることができる。
【0075】
(7)複数の駆動系統30,40は、電動モータ20のコイルへの電力供給状態を切り替えるスイッチング素子を備え、制御装置50は、ステップS28で、電動モータ20のロータ21の1回転期間においてスイッチング素子を継続してオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる。このような構成によれば、電動モータ20にブレーキトルクを発生させるための制御として、ロータ21の1回転期間においてスイッチング素子のオンおよびオフを繰り返す制御を行なう構成と比較して、より大きなブレーキトルクを発生させることができる。
【0076】
(8)制御装置50は、複数のスイッチング素子の全部をオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる。この発明によれば、電動モータ20にブレーキトルクを発生させるための制御として、複数のスイッチング素子の一部のみの状態をオンに設定する制御を行なう構成と比較して、より大きなブレーキトルクを発生させることができる。
【0077】
(9)制御装置50は、少なくとも1つの相への通電が不可能な駆動系統を相異常駆動系統として、この相異常駆動系統の通電制御を停止する。相異常駆動系統は、電動モータ20にブレーキトルクを発生させることができないため、ブレーキトルクを発生させる必要があるときの相異常駆動系統に対する制御は不要に演算負荷を増大させるものとなる。よって、この発明によれば、相異常駆動系統に対する通電制御が停止されるため、演算負荷の増大が抑制される。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を組み合わせて実施することもできる。
【0079】
・上記実施形態(図5)では、電動車両1の走行速度が所定の走行速度以下、かつ同電動車両1の減速方向の加速度が所定の加速度以上の状態を停止条件が成立している状態としているが、電動車両1の走行速度が所定の走行速度以下の状態を停止条件が成立している状態とすることもできる。
【0080】
・上記実施形態(図5)では、電動車両1の走行速度が所定の走行速度以下、かつ同電動車両1の減速方向の加速度が所定の加速度以上の状態を停止条件が成立している状態としているが、電動車両1の減速方向の加速度が所定の加速度以上の状態を停止条件が成立している状態とすることもできる。
【0081】
・上記実施形態(図5)では、停止条件が成立しているか否かが電動車両1の走行速度および加速度に応じて変化するが、車速および加速度以外の電動車両1の走行状態に応じて停止条件が成立しているか否かを変化させることもできる。
【0082】
・上記実施形態(図5)のブレーキトルク発生制御を変更することもできる。例えば、上記実施形態のステップS26では異常駆動系統の間欠モータロック制御を行っているが、これに代えてモータロック制御を行うこともできる。また、上記実施形態のステップS28では異常駆動系統のモータロック制御を行っているが、これに代えて間欠モータロック制御を行うこともできる。
【0083】
・上記実施形態(図2)では、電動モータ20はブラシレスDCモータであるが、ブラシレスDCモータ以外の電動モータを使用することもできる。また、永久磁石型以外のロータ(例えば巻線型またはかご型のロータ)を使用することもできる。
【0084】
・上記実施形態(図2)では、第1駆動回路31により電流が供給される第1電磁石界磁23と第2駆動回路41により電流が供給される第2電磁石界磁24は異なるものであるが、同じ電磁石界磁に第1駆動回路31および第2駆動回路41が電流を供給する構成を採用することもできる。
【0085】
・上記実施形態(図2)では、1つの電動モータ20に対して2つの駆動系統30,40が設けられる構成であるが、1つの電動モータ20に対して3つ以上の駆動系統を設けることもできる。
【0086】
・上記実施形態(図1)では、電動車両1は、2つの車輪3を備えるパーソナルモビリティであるが、1つの車輪または3つ以上の車輪を備えるパーソナルモビリティに本発明を適用することもできる。また、各車輪を回転させる電動モータは、それぞれ同じ構成でなくてもよい。
【0087】
・上記実施形態(図1)では、電動車両1は、搭乗者が1人のパーソナルモビリティであるが、その他の電動車両である電気自動車またはハイブリッド車両に本発明を適用することもできる。また、乗用車に限られず、例えば無線等による外部からの操作に基づいて走行する荷物運搬用の電動車両に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1…電動車両(車両)、2…減速機、3…車輪、4…駆動機構、10…車両本体、11…搭乗面、12…ハンドル、20…電動モータ、21…ロータ、22…ステータ、23…第1電磁石界磁、24…第2電磁石界磁、30…第1駆動系統、31…第1駆動回路、32…第1回転角センサ、40…第2駆動系統、41…第2駆動回路、42…第2回転角センサ、50…電動モータ用制御装置、51…姿勢センサ、52…車速センサ、53…加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動力源としての電動モータと、この電動モータを駆動するための複数の駆動系統とを備える車両のための電動モータ用制御装置において、
前記電動モータを回転させるために用いられている駆動系統の数を系統使用数として、少なくとも1つの駆動系統を用いて前記電動モータを回転させているとき、かつ前記電動モータを停止するための所定の停止条件が成立しているとき、前記系統使用数よりも多い数の駆動系統を用いて前記電動モータにブレーキトルクを発生させる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動モータ用制御装置において、
異常が発生している駆動系統を異常駆動系統として、前記所定の停止条件が成立しているとき、ブレーキトルクを発生させるための駆動系統に前記異常駆動系統を含める
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動モータ用制御装置において、
異常が発生している駆動系統を異常駆動系統として、駆動系統により前記電動モータを駆動するための所定の駆動条件が成立しているとき、前記異常駆動系統以外の駆動系統を用いて前記電動モータを回転させる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、
前記所定の停止条件が成立しているか否かが前記車両の走行状態に応じて変化する
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動モータ用制御装置において、
前記所定の停止条件には、前記車両の走行速度が所定の走行速度以下であることが含まれる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動モータ用制御装置において、
前記所定の停止条件には、前記車両の減速方向の加速度が所定の加速度以上であることが含まれる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、
前記複数の駆動系統は、前記電動モータのコイルへの電力供給状態を切り替えるスイッチング素子を備え、前記電動モータのロータの1回転期間において前記スイッチング素子を継続してオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、
前記複数の駆動系統は、前記電動モータのコイルへの電力供給状態を切り替える複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子の全部をオンに維持することによりブレーキトルクを発生させる
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、
前記電動モータのロータの回転角を検出する回転角センサに異常が生じている状態を駆動系統の異常とする
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電動モータ用制御装置において、
少なくとも1つの相への通電が不可能な駆動系統を相異常駆動系統として、この相異常駆動系統の通電制御を停止する
ことを特徴とする電動モータ用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17249(P2013−17249A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146427(P2011−146427)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】