説明

電動巻上機の操作装置、電動巻上機

【課題】可動部を小さくでき小型化が可能で、スイッチ部分を密閉構造にできる電動巻上機の操作装置、及び電動巻上機を提供すること。
【解決手段】巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置であって、巻上下用チェーン5の下端と荷重吊下用のフック7の間に係合させた筒体6の外周部を囲むように可撓性材料からなる操作部8を設け、該操作部8の内部に円板状の共通可動電極板を配置し、該共通電極板の上下に対向して筒体6に固定された円板状の上部固定電極板と下部固定電極板を配置し、操作部8の外周部を上方又は下方に押圧することにより該操作部8が変形すると共に、共通可動電極板が変位して上部固定電極板又は下部固定電極板に接触することにより、巻上信号又は巻下信号を出力するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動チェーンブロックや電動ロープホイスト等の電動巻上機の巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置、及び該操作装置を用いた電動巻上機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような電動巻上機において、作業者が自分で重量物を持ち上げる感覚で操作できるようにしたものとして特許文献1に開示された電動チェーンブロックがある。この電動チェーンブロックは、巻上下用チェーンの下端と荷重吊下用フックとの間に係合された筒体の外周に嵌合し上下に所定量摺動する筒状のグリップを設け、このグリップの上下動とグリップの移動量を検出して、巻上下用電動機を巻上方向又は巻下方向に運転すると共に、グリップの移動量に応じた速度で運転している。
【特許文献1】特公平2−41516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の電動チェーンブロックは、作業者が自分で重量物を持ち上げる感覚で操作できるという点では優れているが、グリップの移動量を検出するためにグリップの上下動に連動してスリット部材を動かす構成を採用しているため、グリップ自体及び該グリップを摺動させるために筒体の長さ寸法が大きくなる。また、グリップ部分と内部の可動部(スリット)を連動させるための機構が必要となり、密閉性が保たれないためスイッチ部分に粉塵等の異物が侵入し故障や誤動作の原因となる問題がある。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、可動部を小さくでき小型化が可能で、スイッチ部分を密閉構造にできる電動巻上機の操作装置、及び電動巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置であって、巻上下用ロープ又はチェーンの下端と荷重吊下用治具の間に係合させた筒体の外周部を囲むように可撓性材料からなる操作部を設け、該操作部の内部に円板状の共通可動電極板を配置し、該共通電極板の上下に対向して筒体に固定された円板状の上部固定電極板と下部固定電極板を配置し、操作部の外周部を上方又は下方に押圧することにより該操作部が変形すると共に、共通可動電極板が変位して上部固定電極板又は下部固定電極板に接触することにより、巻上信号又は巻下信号を出力するように構成したことを特徴とする。
【0006】
電動巻上機の操作装置を上記構成とすることにより、筒体の外周部を囲むように設けた可撓性材料からなる操作部の外周部を上方又は下方に押圧するだけで、電動巻上機の巻上運転又は巻下運転ができるから、操作部に上下方向に摺動する摺動部がなく、操作装置の上下長さ寸法を小さくできる。また、操作部の内部に円板状の共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板を配置した構成であるから、操作部の外周部のどの位置を上方又は下方に押圧しても、巻上運転又は巻下運転ができるから操作性がよい。また、可撓性材料からなる操作部の内部に共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板から構成されるスイッチ部を配置するから、操作部の内部を気密構造とすることが容易で、スイッチ部に粉塵等の異物が侵入しないようにすることができる。
【0007】
また、本発明は、上記電動巻上機の操作装置において、筒体の操作部の下方に把持部を設け、該把持部を親指を除く他の指で把持し、操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことを特徴とする。
【0008】
上記のように筒体の操作部の下方に設けた把持部を親指を除く他の指で把持し、操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことにより、片手で安定した状態で電動巻上機の巻上下運転を実施することができる。
【0009】
また、本発明は、上記電動巻上機の操作装置において、操作部はその内部が密閉構造となっていることを特徴とする。
【0010】
上記のように操作部はその内部が密閉構造となっているので、該内部に配置されている共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板からなるスイッチ部に粉塵等の異物が侵入するおそれがない。
【0011】
また、本発明は、巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置であって、巻上下用ロープ又はチェーンの下端と荷重吊下用治具の間に係合させた筒体の外周部を囲むように可撓性材料からなる操作部を設け、該操作部の内部に円板状の共通可動電極板を配置し、該共通電極板の上下に対向して筒体に固定された円板状の上部電極板と下部電極板を配置し、上部電極板の共通可動電極板の反対側に筒体に固定された円板状の感圧電極体を設けると共に、下部電極板の共通可動電極板の反対側に筒体に固定された円板状の感圧電極体を設け、操作部の外周部を上方又は下方に押圧することにより該操作部が変形すると共に、共通可動電極板が変位して上部電極板又は下部電極板に接触することにより、巻上信号又は巻下信号を出力すると共に、感圧電極体から操作部の外周部を上方又は下方に押圧する押圧力に応じた大きさの巻上速度信号又は巻下速度信号を出力するように構成したことを特徴とする。
【0012】
電動巻上機の操作装置を上記構成とすることにより、筒体の外周部を囲むように設けた可撓性材料からなる操作部の外周部を上方又は下方に押圧するだけで、電動巻上機の巻上運転又は巻下運転ができるから、操作装置の上下長さ寸法を小さくできる。また、操作部の内部に円板状の共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板を配置した構成であるから、操作部の外周部のどの位置を上方又は下方に押圧しても、巻上運転又は巻下運転、及びその速度を設定できるから操作性がよい。また、可撓性材料からなる操作部の内部に共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板から構成されるスイッチ部を配置するから、操作部の内部を気密構造とすることが容易で、スイッチ部に粉塵等の異物が侵入しないようにすることができる。
【0013】
また、本発明は上記電動巻上機の操作装置において、筒体の前記操作部の下方に把持部を設け、該把持部を親指を除く他の指で把持し、操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことを特徴とする。
【0014】
上記のように筒体の操作部の下方に設けた把持部を親指を除く他の指で把持し、操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことにより、片手で安定した状態で電動巻上機の巻上下運転、及び速度設定を実施することができる。
【0015】
また、本発明は、上記電動巻上機の操作装置において、操作部はその内部が密閉構造となっていることを特徴とする。
【0016】
上記のように操作部は、その内部が密閉構造となっているので、該内部に配置されている共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板からなるスイッチ部に粉塵等の異物が侵入するおそれがない。
【0017】
また、本発明は、電動巻上機の巻上下用電動機の巻上及び巻上制御を行う制御装置と、該制御装置に巻上信号及び巻下信号を出力する操作装置を備えた電動巻上機であって、操作装置に、上記本発明に係る操作装置を用いたことを特徴とする。
【0018】
上記ように電動巻上機の操作装置に本発明に係る操作装置を用いることにより、小型で操作性のよい操作装置の操作により、巻上下運転を実施できる電動巻上機を提供することができる。
【0019】
また、本発明は、電動巻上機の巻上下用電動機の巻上及び巻上制御を行う制御装置と、該制御装置に巻上信号及び巻下信号を出力する操作装置を備えた電動巻上機であって、操作装置に、本願発明に係る操作装置を用い、制御装置は操作装置から巻上速度信号及び巻下速度信号に応じた速度で前記電動巻上機を制御することを特徴とする。
【0020】
上記ように電動巻上機の操作装置に本発明に係る操作装置を用い、制御装置は操作装置から巻上速度信号及び巻下速度信号に応じた速度で前記電動巻上機を制御するので、小型で操作性のよい操作装置の操作により、巻上下運転を実施及びその速度設定を実施できる電動巻上機を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、操作装置の可動部、即ち操作部を最小限にできるので、操作装置の上下方向の寸法を小さくでき、その分電動巻上機の巻上下運転におけるデットスペースを小さくできる。操作部の内部を密閉構造とすることにより、共通可動電極板、上部固定電極板、下部固定電極板からなるスイッチ部に粉塵等の異物が侵入することによる、故障や誤動作を防ぐことができる。また、操作装置の操作部の外周部のどの位置を上下方向に押圧しても、巻上下運転できるから、操作性に優れたものとなる。また、把持部を把持したまま親指で上下操作ができるので、この点でも操作性に優れたものとなる。
【0022】
また、感圧電極体を設け操作部の外周部を上方又は下方に押圧する押圧力に応じた大きさの巻上速度信号又は巻下速度信号を出力するようにしたことにより、巻上下操作と同じ操作でその速度も設定でき、操作性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る操作装置を備えた電動チェーンブロックの全体外観構成を示す図である。本電動チェーンブロックは、電動機1、各種電装品を収納した電装品収納部2、電動チェーンブロックを天井等の構造物に吊り下げるためのフック3、螺旋状に巻かれたケーブル4、チェーン5、荷重を吊り下げるための荷重吊下用治具としてのフック7、チェーン5の下端とフック7の間に係合する(チェーン5の下端とフック7を結合する)筒体6を備えている。この筒体6の所定位置の外周部に設けた後に詳述する操作部8と、該操作部8の下部に設けた把持部9とを備えた操作装置10を備えている。なお、筒体6はここでは円筒体となっているが、多角形筒体であってもよい。
【0024】
上記構成の操作装置10において、操作部8は後に詳述するように可撓性を有するカバー体で覆われた構成で、図2に示すように、把持部9を親指を除く他の指で把持し、親指で操作部8の外周部を上方に押圧(押上げ)することにより、制御部(後に詳述)に巻上信号を出力するようになっている。また、図3に示すように、把持部9を把持し、親指で操作部8の外周部を下方に押圧(押下げ)することにより、制御部に巻下信号を出力するようになっている。また、上記操作部8の外周部を上下方向に押圧する押圧力に応じた速度信号も制御部に出力するようになっている。
【0025】
図4は、上記操作装置10の操作部8の内部構造を示す断面図である。図示するように、操作部8は、内部にスイッチ部11が配置され、該スイッチ部11を包み込むようにカバー体12が覆っている。カバー体12は絶縁材で弾力性を有する可撓性材料(例えばゴム材、プラスチック等)で構成され、図4(b)、(c)に示すように、その外周部を親指Aで上方又は下方に押圧すると図示するように変形するが、親指Aを離すと、図3(a)に示すように元の形状に戻るようになって復元力を有する構成となっている。なお、図示は省略しているが、筒体6は操作部8及び把持部9を貫通して配置されている。スイッチ部11は、円板状の共通可動電極板13と円板状の上部固定電極板14と円板状の下部固定電極板15からなり、共通可動電極板13はカバー体12の上下方向中央に配置され、上部固定電極板14及び下部固定電極板15はそれぞれ共通可動電極板13の上下に所定の間隙を設けて配置されている。
【0026】
図5は、スイッチ部11の詳細を示す図で、スイッチ部11には上記のように上下方向中央に円板状の共通可動電極板13が配置され、その上下に所定の間隙を設けて円板状の上部固定電極板14、下部固定電極板15が配置されている。そして上部固定電極板14の共通可動電極板13の反対側に円板状の感圧電極体16が配置され、下部固定電極板15の共通可動電極板13の反対側に円板状の感圧電極体16が配置されている。上部固定電極板14は感圧電極体16を介して筒体6の外周部に固定され、下部固定電極板15は感圧電極体16を介して筒体6の外周部に固定されている。
【0027】
感圧電極体16は感圧ゴム20の両側に電極板17、18を配置した構成であり、該感圧体16、16には上部固定電極板14と下部固定電極板15の間にそれぞれ絶縁板19、19を介在させて取り付けられている。また、上部固定電極板14の共通可動電極板13に対向する面には環状の突条からなる接点部14aが設けられ、下部固定電極板15の共通可動電極板13に対向する面には環状の突条からなる接点部15aが設けられている。なお、この接点部は共通可動電極板13の上下面、即ち共通可動電極板13の上部固定電極板14及び下部固定電極板15に対向する面に設けてもよい。上記筒体6は上下の両感圧電極体16、16、上部固定電極板14、下部固定電極板15、及び共通可動電極板13を貫通しており、筒体6と共通可動電極板13、絶縁板19及び感圧電極体16の間には間隙がある。この間隙によって共通可動電極板13が傾動し、且つ該共通可動電極板13で感圧ゴムが押圧され変形する。また、上下感圧電極体16、16の電極板17、17は筒体6に固定されている。
【0028】
共通可動電極板13の外周部はカバー体12の内周部に固定(図ではインサート固定)されており、常時はカバー体12の復元力により、上部固定電極板14の接点部14a及び下部固定電極板15の接点部15aと共通可動電極板13は、図4(a)に示すように所定の間隙を設けて離間した状態となっている。この状態で操作部8のカバー体12の外周部を図4(b)に示すように親指Aで上方に押圧すると共通可動電極板13が変位し、上部固定電極板14の接点部14aに接触すると、巻上信号が制御部に出力される。また、図4(a)の状態から操作部8のカバー体12の外周部を図4(c)に示すように親指Aで下方に押圧すると共通可動電極板13が変位し、下部固定電極板15の接点部15aに接触すると、巻下信号が制御部に出力される。
【0029】
感圧電極体16の感圧ゴム20は図6(a)に示すように、絶縁ゴム材20bの中に導電粒子20aが分散された感圧ゴムである。この感圧ゴム20は、無加圧時は図6(a)に示すように導電粒子20aどうしは互いに離間して絶縁体となっているが、加圧されると図6(b)に示すように、導電粒子20aどうしが接触し、導電経路Peが形成されるようになっている。そして加圧の圧力と抵抗値の関係は図6(c)に示すようになる。即ち、圧力に応じて抵抗値が変化する。
【0030】
上記のように図4(a)の状態から操作部8のカバー体12の外周部を図4(b)、(c)に示すように上方、下方に押圧すると共通可動電極板13が変位し、上部固定電極板14の接点部14a、下部固定電極板15の接点部15aに接触し、上記のように巻上信号、巻下信号が出力される。これと同時にその押圧力が上部固定電極板14、下部固定電極板15を介して上下の感圧電極体16の感圧ゴム20に加わり、その抵抗値が変化する。この押圧力に応じた抵抗値の変化を利用し、巻上速度、巻下速度を示すの速度信号を制御装置に出力する。
【0031】
図7は、上記操作部8を備えた電動チェーンブロックのシステム構成を示す図である。図示するように、電動チェーンブロックは巻上下用電動機(誘導電動機)31(図1の電動機1)、インバータ32、制御装置33を備えている。制御装置33には操作部8から巻上信号SU、巻下信号SD、速度信号SVが入力されるようになっている。即ち、操作部8のカバー体12の外周部を図4(b)に示すように、上方に押圧すると、共通可動電極板13が上部固定電極板14の接点部14aに接触し、上部固定電極板14から巻上信号SUが制御装置33に出力され、操作部8のカバー体12の外周部を図4(c)に示すように、下方に押圧すると、共通可動電極板13が下部固定電極板15の接点部15aに接触し、下部固定電極板15の接点部15aから巻下信号SDが制御装置33に出力される。また、操作部8のカバー体12を押圧する押圧力の大きさにより、感圧ゴム20の抵抗値Rが変化し、上下の感圧電極体16、16の電極板17、17からそれぞれ抵抗値Rに応じた速度信号SVが制御装置33に出力される。
【0032】
上記システム構成の電動チェーンブロックにおいて、操作部8のカバー体12の外周部を図4(b)に示すように上方に押圧して、巻上信号SUとその押圧力に応じた速度信号SVが制御装置33に入力されると、制御装置33は電磁開閉器34を動作させその接点34aを閉じると共に、制御装置33からインバータ32に巻上指令信号S1と、速度信号SVに応じた速度指令信号S3をインバータ32に出力する。これによりインバータ32から巻上下用電動機31に巻上相順で速度指令信号S3に応じた周波数の電力が供給され、巻上下用電動機31は巻上方向に速度指令信号S3で設定された速度で回転する。操作部8のカバー体12の外周部を図4(c)に示すように下方に押圧して、巻上信号SDとその押圧力に応じた速度信号SVが制御装置33に入力されると、電磁開閉器34を動作させその接点34aを閉じると共に、制御装置33からインバータ32に巻下指令信号S2と、速度信号SVに応じた速度指令信号S3がインバータ32に出力される。これによりインバータ32から巻上下用電動機31に巻下相順で速度指令信号S3に応じた周波数の電力が供給され、巻上下用電動機31は巻下方向に速度指令信号S3で設定された速度で回転する。
【0033】
なお、35は巻上下用電動機31を拘束する機械式ブレーキであり、インバータ32の出力のV相に接続されたダイオードタック39の直流電流が通電すると機械式ブレーキ35は開放され、電磁開閉器34の接点34aが閉じて該直流電流が遮断されると、機械式ブレーキ35が作動し制動力が作用する。なお、電磁開閉器34の動作、不動作は制御装置33により行われ、インバータ32へ巻上指令信号S1、巻下指令信号S2を出力すると同時に電磁開閉器34を動作させその接点34aを閉じて機械式ブレーキ35を開放し、巻上指令信号S1、巻下指令信号S2を停止すると同時に電磁開閉器34を不動作としその接点34aを閉じ機械式ブレーキ35が作動し制動力が作用するようになっている。また、38はインバータ32に接続された荷重巻下時の巻上下用電動機31の回生電流を通電し、熱に変換する制動抵抗器である。また、36はフック7が所定の上限位置に達したら開放して巻上下用電動機31を停止するための上限スイッチ、37はフック7が所定の下限値に達したら開放して巻上下用電動機31を停止するための下限スイッチである。
【0034】
上記のように、電動チェーンブロックの操作装置10は、筒体6の所定位置の外周部に操作部8、該操作部8の下部に把持部9を設けているので、操作者は把持部9を親指を除く他の指で把持し、親指で操作部8を上方向又は下方向に押圧するだけの簡単な操作で、電動チェーンブロックを巻上方向又は巻下方向に運転すること、即ち、荷重を吊下げたフック7を自分の手で上下する感覚で巻上巻下運転を行うことができる。操作部8は筒体6の所定位置に固定され、上下にスライドする構成でないから、その分上下方向の寸法を小さくできる。即ち、上下方向のデットスペースを少なくすることが可能となる。
【0035】
また、操作部8はその内部のスイッチ部11をカバー体12で覆う構造としているので、スイッチ部11が配置されている内部を密閉構造とすることができ、操作部8のカバー体12内に粉塵等の異物が侵入し、スイッチ部11の共通可動電極板13の上部固定電極板14及び下部固定電極板15の間に、該異物が侵入し、故障や誤動作が発生することを防止できる。また、操作装置10の操作部8のカバー体12、その内部のスイッチ部11を構成する共通可動電極板13、上部固定電極板14、下部固定電極板15は、円形状で同心に配置されているので、カバー体12をその外周部のどの位置を上方向又は下方向に押しても同じように共通可動電極板13を変位させることができるようになっている。即ち、把持部9をどの方向から把持して操作部8を操作しても同じようにスイッチ部11を動作させることができるから、操作装置10は極めて操作性のよいものとなる。
いる。
【0036】
上記実施形態例では、操作装置10の操作部8のカバー体12の外周部を上方又は下方に押圧することにより、巻上又は巻下信号SU、SDと速度信号SVを出力する場合を示したが、電動チェーンブロックが一定の速度で巻上下運転するものであれば、速度信号SVを出力する必要がないから、上下に配置した感圧電極体16、16が必要なくなる。この場合は、操作部8のスイッチ部11は、共通可動電極板13の上下にそれぞれ上部固定電極板14、下部固定電極板15を配置しただけの簡単な構成でよい。
【0037】
なお、上記実施形態例では、電動巻上機として電動チェーンブロックを例に説明したが、電動巻上機はこれに限定されるものではなく、例えば電動ロープホイストでもよい。また、上記実施形態例では、荷重吊下用治具として荷重吊下用のフックを用いる例を示したが、荷重を吊り下げる治具であれば、フックに限定されない。
【0038】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電動チェーンブロックの全体外観構成を示す図である。
【図2】本発明に係る電動巻上機の操作装置の巻上操作例を示す図である。
【図3】本発明に係る電動巻上機の操作装置の巻下操作例を示す図である。
【図4】本発明に係る電動巻上機の操作装置の操作部の内部構造を示す図である。
【図5】本発明に係る電動巻上機の操作装置のスイッチ部の構成を示す図である。
【図6】感圧ゴムの原理と特性を示す図である。
【図7】本発明に係る電動チェーンブロックのシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 電動機
2 電装品収納部
3 フック
4 ケーブル
5 チェーン
6 筒体
7 フック
8 操作部
9 把持部
10 操作装置
11 スイッチ部
12 カバー体
13 共通可動電極板
14 上部固定電極板
15 下部固定電極板
16 感圧電極体
17 電極板
18 電極板
19 絶縁板
20 感圧ゴム
31 巻上下用電動機
32 インバータ
33 制御装置
34 電磁開閉器
35 機械式ブレーキ
36 上限スイッチ
37 下限スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置であって、
巻上下用ロープ又はチェーンの下端と荷重吊下用治具の間に係合させた筒体の外周部を囲むように可撓性材料からなる操作部を設け、該操作部の内部に円板状の共通可動電極板を配置し、該共通電極板の上下に対向して前記筒体に固定された円板状の上部固定電極板と下部固定電極板を配置し、
前記操作部の外周部を上方又は下方に押圧することにより該操作部が変形すると共に、前記共通可動電極板が変位して上部固定電極板又は下部固定電極板に接触することにより、前記巻上信号又は巻下信号を出力するように構成したことを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動巻上機の操作装置において、
前記筒体の前記操作部の下方に把持部を設け、該把持部を親指を除く他の指で把持し、前記操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動巻上機の操作装置において、
前記操作部はその内部が密閉構造となっていることを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項4】
巻上信号及び巻下信号を出力する電動巻上機の操作装置であって、
巻上下用ロープ又はチェーンの下端と荷重吊下用治具の間に係合させた筒体の外周部を囲むように可撓性材料からなる操作部を設け、該操作部の内部に円板状の共通可動電極板を配置し、該共通電極板の上下に対向して前記筒体に固定された円板状の上部電極板と下部電極板を配置し、
前記上部電極板の前記共通可動電極板の反対側に前記筒体に固定された円板状の感圧電極体を設けると共に、前記下部電極板の前記共通可動電極板の反対側に前記筒体に固定された円板状の感圧電極体を設け、
前記操作部の外周部を上方又は下方に押圧することにより該操作部が変形すると共に、前記共通可動電極板が変位して上部電極板又は下部電極板に接触することにより、前記巻上信号又は巻下信号を出力すると共に、前記感圧電極体から前記操作部の外周部を上方又は下方に押圧する押圧力に応じた大きさの巻上速度信号又は巻下速度信号を出力するように構成したことを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動巻上機の操作装置において、
前記筒体の前記操作部の下方に把持部を設け、該把持部を親指を除く他の指で把持し、前記操作部を親指で上方又は下方に押圧して変形させることができる構成としたことを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電動巻上機の操作装置において、
前記操作部のその内部が密閉構造となっていることを特徴とする電動巻上機の操作装置。
【請求項7】
電動巻上機の巻上下用電動機の巻上及び巻上制御を行う制御装置と、該制御装置に巻上信号及び巻下信号を出力する操作装置を備えた電動巻上機であって、
前記操作装置に、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操作装置を用いたことを特徴とする電動巻上機。
【請求項8】
電動巻上機の巻上下用電動機の巻上及び巻上制御を行う制御装置と、該制御装置に巻上信号及び巻下信号を出力する操作装置を備えた電動巻上機であって、
前記操作装置に、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の操作装置を用い、前記制御装置は前記操作装置から巻上速度信号及び巻下速度信号に応じた速度で前記電動巻上機を制御することを特徴とする電動巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−184745(P2009−184745A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23099(P2008−23099)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)