説明

電動式ベルトローダ

【課題】ベルトコンベアの荷役動作及び走行を電動で行うことができ、メンテナンス性に優れた機器レイアウトを実現した電動式ベルトローダを提供する。
【解決手段】動輪用モータ4を駆動源として電気走行するベルトローダXにおいて、機器配置スペースを、左サイド領域7Lと中央領域7Cと右サイド領域7Rとに分けて、荷役用モータ2により駆動するベルトコンベア3の搭載位置とは反対側のサイド領域である左サイド領域7Lにバッテリ8を配置し、右サイド領域7Rに作動油タンク9と油圧ユニット10と電気ユニット11とを配置し、中央領域7Cに荷役用モータ2と油圧ポンプ12とを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港の駐機場で用いられるベルトローダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手荷物やバラ積み貨物などを航空機の貨物室(バルク室)へ積み込む作業(荷積み)や貨物室から積み下ろす作業(荷下ろし)に用いる車両として自走式ベルトコンベアであるベルトローダが知られている。ベルトローダは、貨物室のカーゴドアの位置に合わせて高さや傾斜角度を調整できるベルトコンベアを搭載しており、従来は走行やベルトコンベアによる荷役動作をエンジンの動力で行うタイプが主流である(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】シンフォニアテクノロジー株式会社発行「会社案内 響いてこそ技術シンフォニアテクノロジー」2010年4月発行,第7頁「大型搬送システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境保護という観点からすれば、エンジン式よりも電動式のベルトローダにすることが望ましい。しかしながら、走行やベルトコンベアの昇降移動を電動で行えるようにするためには比較的重量物である大型のバッテリが必要となり、このようなバッテリをベルトローダとして必須の他の機器とともに限られた搭載スペースに配置することになるため、メンテナンス性をも考慮した適切なレイアウトが望まれる。
【0005】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ベルトコンベアの荷役動作及び走行を電動で行うことができ、メンテナンス性に優れた機器レイアウトを採用した電動式ベルトローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、車両本体と、車両本体のうち左右何れか一方のサイドに寄った位置に搭載されて高さ調整可能なベルトコンベアとを備え、車両本体内に機器配置スペースを形成した電動式ベルトローダに関するものである。そして、本発明の電動式ベルトローダは、機器配置スペースを、少なくとも左サイド領域、中央領域及び右サイド領域に分けて、左サイド領域又は右サイド領域のうちベルトコンベアの搭載位置とは反対側のサイド領域に配置したバッテリと、左サイド領域又は右サイド領域の何れか一方に配置した作動油タンクと、作動油タンクと同じサイド領域に配置した油圧ユニット及び電気ユニットと、中央領域に配置した荷役用モータ及び油圧ポンプとを備えていることを特徴としている。
【0007】
ここで、ベルトコンベアが車両本体のうち左サイドに寄った位置に搭載している場合にはバッテリを右サイド領域に配置し、ベルトコンベアを車両本体のうち右サイドに寄った位置に搭載している場合にはバッテリを左サイド領域に配置すればよい。また、「高さ調整可能なベルトコンベア」には、昇降動作可能なベルトコンベアはもちろんのこと、先端(前端)側を昇降させて傾斜角度を調整可能(起伏動作可能な)なベルトコンベアも含まれる。
【0008】
このように、本発明では電動式ベルトコンベアを搭載したベルトローダを実現するために不可欠なバッテリをベルトコンベアとは反対側に配置することにより、車両全体として重量バランスがとれた状態を常時確保できるようにしている。しかも、バッテリは日常点検が必要な機器であるため、このようなバッテリを何れかのサイド領域に配置することより、バッテリへのアクセスも容易になり、メンテナンス作業をスムーズに行うことが可能である。さらに、本発明に係る電動式ベルトローダは、日常的又は稼働毎に点検が必要な機器である作動油タンク、油圧ユニット及び電気ユニットを機器配置スペースのうち何れか一方のサイド領域に配置しているため、これら各機器を機器配置スペースの中央領域に配置した態様と比較して、これら各機器へのアクセスが容易になり、メンテナンス作業を効率良く行うことができる。さらに、作動油タンク、油圧ユニット及び電気ユニットを互いに近く配置すれば、作動油タンクと油圧ユニットを接続する油圧配管や、電気ユニットと油圧ユニットを接続する電気配線を短くすることができる。一方で、日常的な点検は要求されず、定期的な点検で十分な荷役用モータ及び油圧ポンプを機器配置スペースの中央領域に配置することによって、限られた機器配置スペースを有効に活用することができる。
【0009】
特に、本発明の電動式ベルトローダにおいて、中央領域に配置する油圧ポンプを、何れか一方のサイド領域に配置する作動油タンクの近傍に配置すれば、油圧ポンプと作動油タンクとを接続する配管を短くすることができる。
【0010】
また、作動油タンクを配置したサイド領域に緊急操作用のハンドポンプを配置した電動式ベルトローダであれば、作動油タンクとハンドポンプとの油圧配管を短くすることができるとともに、ハンドポンプの日常点検も容易に行うことができ、作動油タンクと同じサイド領域に配置した油圧ユニットとハンドポンプの操作が要求される緊急時において油圧ユニット及びハンドポンプをスムーズ且つ迅速に操作することができ、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0011】
本発明の電動式ベルトローダでは、前輪又は後輪のうち何れか一方を動輪として設定し、動輪用モータを機器配置スペースに配置することにより、電動で走行するベルトローダを実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルトコンベアの荷役動作及び走行を電動で行うことができ、メンテナンス性に優れた機器レイアウトを実現した電動式ベルトローダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の係る電動式ベルトローダの側面図。
【図2】図1のA方向矢視図。
【図3】図1のB方向矢視図。
【図4】同実施形態に係る電動式ベルトローダのベルトコンベアを省略した図3対応図。
【図5】図1の後輪近傍領域の拡大図。
【図6】図実施形態における動輪用モータとカバーとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係るベルトローダXは、図1〜図3に示すように、車両本体1と、車両本体1に搭載され荷役用モータ2によって荷役動作を行うベルトコンベア3とを備え、動輪用モータ4によって電動走行可能な電動式の空港用地上支援車両である。ここで、荷役動作としては、ベルトコンベア3を構成するコンベアフレームの前後の昇降(起伏)動作、ベルトコンベア3を構成するコンベアベルトの前後回転動作、車両本体1に取り付けられるスタビライザを構成するスタビライザシリンダの昇降動作等を挙げることができる。そして、荷役モータ2により回転される油圧ポンプ12から発生された圧油によってベルトコンベア3やスタビライザの荷役動作を実現している。
【0016】
本実施形態の電動式ベルトローダXは、車両本体(車体フレーム)1のうち前輪5側に寄った位置にハンドル6を設け、車両本体1のうち左右何れか一方(本実施形態では進行方向に沿った右側)に寄った位置にベルトコンベア3を搭載している。ベルトコンベア3は、スライド可能な手摺部31や、伸縮可能なフード部32を有する周知のものを適用することができる。なお、図1には先端部を上昇させた傾斜姿勢にあるベルトコンベア3や、前方へスライド移動した手摺部31や前方へ伸びたフード部32を2点鎖線で示す。このような手摺部31のスライド移動や、フード部32の伸縮動作も荷役動作である。
【0017】
そして、この車両本体1の内部空間を機器配置スペース7として活用している。本実施形態では、図3及び図4(図4はベルトコンベア3を省略した図3に対応する図であり、機器のレイアウトを模式的に示す図である)に示すように、機器配置スペース7を、左サイド領域7L、中央領域7C、右サイド領域7Rに分けている。本実施形態では、機器配置スペース7を、前後方向に沿って後輪14側の領域である後方領域7Bとその他のメイン領域7Mとに分けている。なお、各領域7L,7C,7R,7B,7Mは例えば仕切壁などの仕切材によって完全に仕切られている空間である必要はなく、本実施形態ではフレームによって各領域同士の境界を形成している。
【0018】
そして、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、機器配置スペース7に、バッテリ8と、作動油タンク9と、作動油タンク9に接続される油圧ユニット10と、バッテリ8に電気的に接続される電気ユニット(コントロールユニット)11と、荷役動作の動力源である荷役用モータ2と、荷役用モータ2によって作動する油圧ポンプ12と、緊急操作用のハンドポンプ13と、動輪の動力源である動輪用モータ4とを配置している。
【0019】
具体的には、機器配置スペース7のうち、ベルトコンベア3を搭載した左右何れか一方のサイド(本実施形態では進行方向に沿った右側)とは反対側のサイドスペース(本実施形態では左サイド領域7L)にバッテリ8を配置している。
【0020】
また、本実施形態では、機器配置スペース7の右サイド領域7Rに、作動油タンク9、油圧ユニット10及び電気ユニット11をベルトローダXの進行方向(前後方向)に並べて配置している。これら作動油タンク9、油圧ユニット10及び電気ユニット11を相互に近い位置に並べることによって、バッテリ8が電気的に接続されている電気ユニット11と油圧ユニット10とを接続する電気配線や、作動油タンク9と油圧ユニット10とを接続する油圧配管を短くすることができる。さらに、本実施形態では、この機器配置スペース7の右サイド領域7Rに、緊急操作用のハンドポンプ(非常用ポンプ)13を、作動油タンク9、油圧ユニット10及び電気ユニット11と共にベルトローダXの進行方向(前後方向)に並べて配置している。本実施形態のベルトローダXでは、油圧ユニット10を挟む位置に作動油タンク9及びハンドポンプ13を配置し、油圧ユニット10と作動油タンク9とを接続する配管、及び油圧ユニット10とハンドポンプ13とを接続する配管をそれぞれ短く設定できるようにしている。
【0021】
また、機器配置スペース7の中央領域7Cに、荷役用モータ2及び油圧ポンプ12を配置している。そして本実施形態では、油圧ポンプ12を作動油タンク9の近くに配置して、油圧ポンプ12と作動油タンク9とを接続する配管を短く設定できるようにしている。荷役用モータ2には電気ユニット11が電気的に接続されている。
【0022】
本実施形態の電動式ベルトローダXは、前輪を遊輪に設定するとともに、後輪14を動輪に設定し、動輪用モータ4を機器配置スペース7のうち後方領域7Bに配置している。左右一対の後輪14にはそれぞれ減速機41と一体の動輪用モータ4を接続している。本実施形態では、図5及び図6に示すように、カバー15によって各動輪用モータ4が外部へ露出しないように構成して防滴(雨や雪)対策を施している。各動輪用モータ4には電気ユニット11が電気的に接続されている。
【0023】
このような構成を有する電動式ベルトローダXでは、バッテリ8の電力を電気ユニット11を介して動輪用モータ4や荷役用モータ2に供給して、動輪用モータ4により動輪である後輪14を駆動させて電動走行することができるとともに、荷役用モータ2により回転される油圧ポンプ12から発生された圧油によって、ベルトコンベア3を航空機の貨物室のカーゴドアの位置に合わせて昇降移動(起伏)させて傾斜角度を調整したり、ベルトコンベア3を回転駆動させるなど、適宜の荷役動作を行うことができる。
【0024】
そして、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、機器配置スペース7を、少なくとも左サイド領域7L、中央領域7C及び右サイド領域7Rに分けて、左サイド領域7L又は右サイド領域7Rのうちベルトコンベア3の搭載位置とは反対側のサイド領域(図示例では左サイド領域7L)にバッテリ8を配置し、左サイド領域7L又は右サイド領域7Rの何れか一方(図示例では右サイド領域7R)に作動油タンク9、油圧ユニット10及び電気ユニット11を配置し、さらに中央領域7Cに荷役用モータ2及び油圧ポンプ12を配置している
【0025】
このように、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、従来のエンジン駆動式から電動式へと変更して環境面に優れたものになり、大容量のバッテリ8をベルトコンベア3の搭載位置とは反対側であるサイド領域(図示例では左サイド領域7L)に配置することにより、車両全体として良好な重量バランスを確保することができる。しかも、バッテリ8は日常的または稼働毎に点検が必要な機器であるため、このようなバッテリ8を何れかのサイド領域(図示例では左サイド領域7L)に配置することより、バッテリ8へのアクセスも容易になり、メンテナンス作業をスムーズに行うことができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、日常的に点検が必要な機器である作動油タンク9、油圧ユニット10及び電気ユニット11を機器配置スペース7のうち何れか一方のサイド領域(図示例では右サイド領域7R)に配置しているため、これら各機器を機器配置スペース7の中央領域7Cに配置した態様と比較して、これら各機器へのアクセスが容易になり、メンテナンス作業や交換作業を効率良く行うことができる。一方で、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、日常的な点検は要求されず、定期的な点検で足りる荷役用モータ2及び油圧ポンプ12を機器配置スペース7の中央領域7Cに配置しているため、限られた機器配置スペース7を有効に活用することができる。
【0027】
特に、本実施形態の電動式ベルトローダXでは、中央領域7Cに配置する油圧ポンプ12を作動油タンク9の近くに配置しているため、油圧ポンプ12と作動油タンク9とを接続する配管を短くすることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る電動式ベルトローダXは、作動油タンク9を配置したサイド領域(図示例では右サイド領域7L)に緊急操作用のハンドポンプ13を配置しているため、作動油タンク9とハンドポンプ13との油圧配管を短くすることができるとともに、ハンドポンプ13の日常点検も容易に行うことができる。さらに、作動油タンク9及び油圧ユニット10を配置したサイド領域(図示例では右サイド領域7L)に緊急操作用のハンドポンプ13を配置した本実施形態の電動式ベルトローダXは、油圧ユニット10及びハンドポンプ13の操作が要求される緊急時において油圧ユニット10及びハンドポンプ13をスムーズ且つ迅速に操作することができ、作業時間の短縮化を有効に図ることができる。つまり、本実施形態の電動式ベルトローダXは、ハンドポンプ13のメンテナンス性及び操作性の向上を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、バッテリはベルトコンベアと反対側の位置に配置するようにすればよく、ベルトコンベアが左サイドに寄った位置に搭載している場合にはバッテリを右サイド領域に配置することによって重量バランスがとれた状態を確保することができる。
【0030】
また、バッテリを配置したサイド領域にスペースの余裕があれば、このサイド領域に電気ユニットを配置しても構わない。この場合、バッテリと電気ユニットとを接続する配線を短くすることができる。さらに、バッテリを配置したサイド領域にスペースの余裕があれば、このサイド領域に、油圧ユニットや作動油タンクあるいはハンドポンプを配置してもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、前輪5を遊輪に設定するとともに、後輪14を動輪に設定した態様を例示したが、後輪を遊輪に設定するとともに、前輪を動輪に設定したベルトローダであってもよく、その場合には、前輪に動輪用モータを接続し、動輪用モータを機器配置スペースのうち前方領域に配置すればよい。なお、前輪または後輪の何れを動輪に設定するかについては、ハンドルの位置が特に影響を及ぼすことはない。つまり、前輪または後輪のうちハンドルに近い方の車輪を動輪に設定することも可能である。
【0032】
また、ベルトコンベアの手摺部が、スライド移動に代えて、又は加えて、伸縮動作可能であったり、可倒(起伏)動作可能なものであってもよい。あるいは、固定式の手摺部であっても構わない。
【0033】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…車両本体
2…荷役用モータ
3…ベルトコンベア
4…動輪用モータ
7…機器配置スペース
7L…左サイド領域
7C…中央領域
7R…右サイド領域
8…バッテリ
9…作動油タンク
10…油圧ユニット
11…電気ユニット
12…油圧ポンプ
13…ハンドポンプ
14…動輪(後輪)
X…電動式ベルトローダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、前記車両本体のうち左右何れか一方のサイドに寄った位置に搭載されて高さ調整可能なベルトコンベアとを備え、前記車両本体内に機器配置スペースを形成した電動走行可能なベルトローダであり、
前記機器配置スペースは、少なくとも左サイド領域、中央領域及び右サイド領域に分かれており、
前記左サイド領域又は前記右サイド領域のうち前記ベルトコンベアの搭載位置とは反対側のサイド領域に配置したバッテリと、
前記左サイド領域又は前記右サイド領域の何れか一方に配置した作動油タンクと、
前記作動油タンクと同じサイド領域に配置した油圧ユニット及び電気ユニットと、
前記中央領域に配置した荷役用モータ及び油圧ポンプとを備えていることを特徴とする電動式ベルトローダ。
【請求項2】
前記油圧ポンプを前記作動油タンクの近くに配置している請求項1に記載の電動式ベルトローダ。
【請求項3】
前記作動油タンクを配置した何れか一方のサイド領域に緊急操作用のハンドポンプを配置している請求項1又は2に記載の電動式ベルトローダ。
【請求項4】
前輪又は後輪のうち何れか一方を動輪に設定し、前記機器配置スペースに動輪用モータを配置している請求項1乃至3の何れかに記載の電動式ベルトローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240812(P2012−240812A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114386(P2011−114386)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)