説明

電動式射出成形機

【課題】装置フレームから可塑化装置及び射出装置を搭載した射出ユニットベースを取り外すことができ、取り外した状態で樹脂のパージ動作が可能な電動式射出成形機を提供する。
【解決手段】第1制御装置31を備えた装置フレーム1に対して着脱自在に、少なくとも可塑化装置14と射出装置27とからなる射出ユニット54が搭載されるとともに可塑化装置14及び射出装置27と第1制御装置31とを電気的に接続可能な射出ユニットベース3を設け、更に、第2制御装置を備えて装置フレーム1から取り外した射出ユニットベース3を設置する載置面を有し、可塑化装置14及び射出装置27と第2制御装置とを電気的に接続可能であり、射出ユニット54について次の使用に備えるための準備作業を行う準備ステーションを設け、該準備ステーションの載置面に設置された射出ユニットのノズルの芯出しを行うノズルタッチプレートを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱溶融樹脂を金型のキャビティに射出して成形品を成形する電動式射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式射出成形機において、例えば特開平9−267352号公報に示すように、メンテナンス作業後、可塑化装置及び射出装置を元の成形作業位置に戻して金型との芯合せが容易にできるようにしたものが知られている。これは、可塑化装置、射出装置及びこれらを駆動する駆動装置を旋回プレートに搭載し、この旋回プレートを装置フレームに対して旋回ピンで旋回可能に支持したものである。
【0003】
従って、可塑化装置、射出装置及びこれらを駆動する駆動装置のメンテナンス作業時には旋回プレートを旋回ピンを支点として水平面内で旋回して可塑化装置、射出装置及びこれらを駆動する駆動装置を装置フレームの側方に移動できるようにしたものである。
【0004】
また、射出成形時の生産ロット替え、樹脂替え、材料の色替え作業を行なう場合、可塑化装置のシリンダ内に残留した溶融樹脂をパージ操作等によって完全に排出させ、新しいロットのものに入れ替えるための段取り作業が必要となる。また、樹脂によってその溶融温度に差があるため、溶融温度の変更による待ち時間も発生し、生産効率を向上する上で問題となる。
【0005】
そこで、従来、可塑化装置と射出装置とからなる射出ユニットを着脱自在に構成したものが知られている。これは、図3に示すように構成されている。すなわち、装置フレーム1にはリニアガイド2によって射出ユニットベース3が前後方向にスライド自在に設けられている。
【0006】
射出ユニットベース3にはノズルタッチ用のボールスクリュー4が前後方向に貫通して設けられ、この両端部は装置フレーム1に設けられた軸受5a,5bによって支持されている。ボールスクリュー4の後端部はモータ6の回転軸に直結され、ボールスクリュー4の中途部にはナット7が螺合されている。ナット7は緩衝部材8を介して射出ユニットベース3に連結され、ボールスクリュー4の回転によって射出ユニットベース3が金型34に対して進退するようになっている。
【0007】
射出ユニットベース3の上部にはユニット支持台9が設けられ、このユニット支持台9は旋回ピン10によって射出ユニットベース3に対して旋回自在に、かつ着脱自在に設けられている。
【0008】
ユニット支持台9の前部には先端部にノズル11を有するシリンダ12が固定され、このシリンダ12の基端部にはホッパ13が設けられている。ノズル11にはノズルヒータ11aが設けられ、シリンダ12の周壁にはバンドヒータ12aが装着され、可塑化装置14を構成している。
【0009】
ユニット支持台9の後部には複数本のガイドロッド15が設けられ、このガイドロッド15には可動盤16及び固定盤17が支持されている。可動盤16には前記シリンダ12内に挿入された射出用のボールスクリュー18が設けられている。
【0010】
このボールスクリュー18の中途部には第1の従動プーリ19が設けられ、この従動プーリ19はベルト20を介して計量サーボモータ21の第1の駆動プーリ22と連動している。ボールスクリュー18の後端部には第2の従動プーリ23が設けられ、この第2の従動プーリ23はベルト24を介して射出サーボモータ25の第2の駆動プーリ26と連動し、射出装置27が構成されている。
【0011】
前記ノズルヒータ11a,バンドヒータ12aは電気配線28を介して中継用端子箱29に接続され、この中継用端子箱29は電気配線30を介して装置フレーム1に設けられた制御装置31に電気的に接続されている。また、電装機器としての計量サーボモータ21及び射出サーボモータ25も電気配線32,33を介して前記制御装置31に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−267352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した従来の電動式射出成形機によれば、射出成形時の生産ロット替え、樹脂替え、材料の色替え作業を行なう場合、可塑化装置14及び射出装置27を射出ユニットベース3から取り外すことができる。
【0014】
しかしながら、可塑化装置14及び射出装置27を射出ユニットベース3から取り外した場合、可塑化装置14及び射出装置27を支持するベースに、ノズルの芯出し位置を調節するノズルタッチプレートに相当するものがないために、ノズルの芯出し位置を事前に調節することができなかった。
【0015】
また、可塑化装置14のみを取り外した場合、シリンダ12内に残留した溶融樹脂をパージするにしても、取り外した可塑化装置14単体ではその作業ができないので、可塑化装置14を取り外す前または取り外した後にパージ操作を行なう必要性がある。
【0016】
また、可塑化装置14のシリンダ12が高温に加熱された状態でのシリンダ12の取り付け、取り外し作業は、その取り扱いが困難で、作業性が悪いという事情がある。
【0017】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、射出成形時の生産ロット替え、樹脂替え、材料の色替え作業が効率的に行え、また可塑化装置及び射出装置を装置フレームから取り外した状態でも、シリンダ内の溶融樹脂のパージを行なうことができる電動式射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の電動式射出成形機は、第1制御装置を備えた装置フレームと、少なくとも可塑化装置と射出装置とからなる射出ユニットが搭載され、前記装置フレームに対して着脱自在に設けられ、前記可塑化装置及び射出装置と前記第1制御装置とを電気的に接続可能な射出ユニットベースと、第2制御装置を備え、前記装置フレームから取り外した前記射出ユニットベースを設置する載置面を有し、前記可塑化装置及び射出装置と前記第2制御装置とを電気的に接続可能であり、射出ユニットについて次の使用に備えるための準備作業を行う準備ステーションと、前記準備ステーションに設けられ、該準備ステーションの載置面に設置された射出ユニットのノズルの芯出しを行うノズルタッチプレートと、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、射出成形時の生産ロット替え、樹脂替え、材料の色替え作業の際に、装置フレームから可塑化装置及び射出装置を搭載した射出ユニットベースを取り外すことができ、取り外した状態で樹脂のパージ操作等の作業が可能となる。従って、作業性の向上を図り、作業を迅速に進めることができる。
【0020】
また、装置フレームから可塑化装置及び射出装置を搭載した射出ユニットベースを取り外し、準備ステーションに搭載することにより、別ポジションの準備ステーション上で樹脂パージ操作及び次生産の試運転等の準備を進めることができ、作業の段取りが容易となる。
【0021】
さらに、準備ステーションに、搭載された射出ユニットのノズルの芯出しを行うノズルタッチプレートを設けることにより、射出ユニットのノズルをノズルタッチプレートのノズルタッチに当接してノズルの芯出し位置を調節することができる。しかも、準備ステーションの載置面において射出ユニットベースを前後方向に移動調節することができるため、成形機の大型、小型に拘らず、ノズルの芯出し位置を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す電動式射出成形機の側面図。
【図2】この発明の第2の実施形態を示し、射出ユニットベースを準備ステーションに搭載した状態の側面図。
【図3】従来の電動式射出成形機の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、第1の実施形態を示し、図3に示した従来の電動式射出成形機と同一構成部分は同一番号を付して説明する。
【0024】
装置フレーム1の上面の一部には、鉛直方向にピン嵌合孔45が穿設され、このピン嵌合孔45には射出ユニットベース3に突設された旋回ピン46が嵌合されている。従って、射出ユニットベース3は装置フレーム1に対して旋回ピン46を支点として水平面内で旋回自在であるとともに、装置フレーム1に対して着脱自在である。
【0025】
射出ユニットベース3の上面には、リニアガイド2によって移動ブロック47a,47bが射出ユニットベース3の前後方向にスライド自在に設けられている。移動ブロック47a,47bは複数本のロッド48によって連結されている。さらに、移動ブロック47a,47bにはノズルタッチ用のボールスクリュー4が前後方向に貫通して設けられ、この両端部は射出ユニットベース3に設けられた軸受5a,5bによって支持されている。ボールスクリュー4の後端部はモータ6の回転軸に直結され、ボールスクリュー4の中途部にはナット7が螺合されている。ナット7は緩衝部材8を介して移動ブロック47aに連結され、ボールスクリュー4の回転によって移動ブロック47a,47bが金型34に対して進退するようになっている。
【0026】
移動ブロック47aの前部には先端部にノズル11を有するシリンダ12が固定され、このシリンダ12の基端部にはホッパ13が設けられている。ノズル11にはノズルヒータ11aが設けられ、シリンダ12の周壁にはバンドヒータ12aが装着され、可塑化装置14を構成している。
【0027】
移動ブロック47aの後部にはロッド48によって可動盤16が支持されている。可動盤16には前記シリンダ12内に挿入された射出用のボールスクリュー18が設けられている。
【0028】
このボールスクリュー18の中途部には第1の従動プーリ19が設けられ、この従動プーリ19はベルト20を介して計量サーボモータ21の第1の駆動プーリ22と連動している。ボールスクリュー18の後端部には第2の従動プーリ23が設けられ、この第2の従動プーリ23はベルト24を介して射出サーボモータ25の第2の駆動プーリ26と連動しており、射出装置27が構成されている。そして、前記可塑化装置14と射出装置27とで射出ユニット54が構成され、この射出ユニット54が前記射出ユニットベース3に搭載されている。
【0029】
装置フレーム1にはレセプタボックス49が設けられ、このレセプタボックス49は電気配線50を介して制御装置31に接続されている。レセプタボックス49には複数のコネクタ受け部51が設けられている。
【0030】
一方、前記ノズルヒータ11a,バンドヒータ12aは電気配線28を介して中継用端子箱29に接続され、この中継用端子箱29はコネクタ52aを有する電気配線52が接続されている。また、計量サーボモータ21及び射出サーボモータ25もコネクタ53a,54aを有する電気配線53,54Aが接続されている。そして、これらコネクタ52a,53a,54aはレセプタボックス49のコネクタ受け部51に着脱可能に接続されている。なお、コネクタ52a,53a,54aとレセプタボックス49のコネクタ受け部51との接続は手動差込でも、オートコネクタ方式でもよい。
【0031】
前述のように構成された電動式射出成形機によれば、可塑化装置14及び射出装置27の保守点検、修理の際には、装置フレーム1と射出ユニットベース3との結合を解除することにより、射出ユニットベース3を、旋回ピン46を支点として水平面内で側方へ旋回することができる。
【0032】
また、射出成形時の生産ロット替え、樹脂替え、材料の色替え作業の際には、まず、コネクタ52a,53a,54aをレセプタボックス49のコネクタ受け部51から取り外す。次に、装置フレーム1から可塑化装置14及び射出装置27を搭載した射出ユニットベース3を取り外すことができる。
【0033】
射出ユニットベース3を装置フレーム1から取り外した状態であっても、可塑化装置14と射出装置27とからなる射出ユニット54は、射出ユニットベース3に搭載されて一体的であるため、コネクタ52a,53a,54aを制御装置31に接続し、可塑化装置14及び射出装置27を駆動してシリンダ12内に残留している溶融樹脂をパージさせることができる。
【0034】
従って、シリンダ12の温度が経過するのを待ってパージ操作を行う必要はなく、作業性の向上を図り、作業を迅速に進めることができる。
【0035】
図2は、第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。
【0036】
ボックス形状の準備ステーション55は、可塑化装置14及び射出装置27を備えた射出ユニットベース3を前後方向及び左右方向に移動可能に搭載可能な載置面56が設けられている。準備ステーション55は装置ベース1とは別体で、制御装置31とは別の制御装置57が設けられている。
【0037】
さらに、準備ステーション55の側壁には複数のコネクタ受け部58が設けられ、バンドヒータ12aと中継用端子箱29を介して接続するコネクタ52a、計量サーボモータ21及び射出サーボモータ25と接続するコネクタ53a,54aが接続可能となっている。
【0038】
また、準備ステーション55の載置面56には前方に水平に突出する突出プレート60が設けられ、この突出プレート60の前端部には鉛直方向に突出するノズルタッチプレート61が設けられている。このノズルタッチプレート61には金型34のノズルタッチ面と同一形状のダミーのノズルタッチ62が設けられている。
【0039】
従って、装置フレーム1から可塑化装置14及び射出装置27を搭載した射出ユニットベース3を取り外し、準備ステーション55の載置面56に前後方向及び左右方向に移動可能に搭載する。そして、コネクタ52a,53a,54aをコネクタ受け部58に接続することにより、準備ステーション55上で樹脂パージ操作及び次生産の試運転等の準備を進めることができる。
【0040】
さらに、準備ステーション55の載置面56に可塑化装置14及び射出装置27を搭載した射出ユニットベース3を載置した状態において、可塑化装置14のシリンダ12に設けられたノズル11をノズルタッチプレート61のノズルタッチ62に当接することにより、ノズル11の芯出し位置を調節することができる。しかも、準備ステーション55の載置面56において可塑化装置14及び射出装置27を搭載した射出ユニットベース3を前後方向に移動調節することができるため、成形機の大型、小型に拘らず、ノズル11をノズルタッチプレート61のノズルタッチ62に当接することにより、ノズル11の芯出し位置を調節することができる。
【0041】
(付記)前記の説明によれば、次のような事項が得られる。
【0042】
1.装置フレームと、少なくとも可塑化装置と射出装置とからなる射出ユニットが搭載され、前記装置フレームに対して着脱自在に設けた射出ユニットベースとを具備したことを特徴とする電動式射出成形機。
【0043】
2.前記装置フレーム側に制御装置を設けるとともに、前記射出ユニット側に各電装機器を設け、前記制御装置と前記各電装機器とをコネクタによって着脱可能に接続した電気配線によって電気的に接続したことを特徴とする第1項に記載の電動式射出成形機。
【0044】
3.装置フレームと、少なくとも可塑化装置と射出装置とからなる射出ユニットが搭載され、前記装置フレームに対して着脱自在に設けた射出ユニットベースと、制御装置を備え前記装置フレームから取り外した前記射出ユニットベースを搭載し、前記可塑化装置及び射出装置と電気的に接続可能な準備ステーションとを具備したことを特徴とする電動式射出成形機。
【0045】
4.前記準備ステーションは、搭載された射出ユニットのノズルの芯出しを行うノズルタッチプレートを有していることを特徴とする請求項3記載の電動式射出成形機。
【符号の説明】
【0046】
1…装置フレーム
3…射出ユニットベース
14…可塑化装置
27…射出装置
34…金型
54…射出ユニット
55…準備ステーション
60…突出プレート
61…ノズルタッチプレート
62…ノズルタッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御装置を備えた装置フレームと、
少なくとも可塑化装置と射出装置とからなる射出ユニットが搭載され、前記装置フレームに対して着脱自在に設けられ、前記可塑化装置及び射出装置と前記第1制御装置とを電気的に接続可能な射出ユニットベースと、
第2制御装置を備え、前記装置フレームから取り外した前記射出ユニットベースを設置する載置面を有し、前記可塑化装置及び射出装置と前記第2制御装置とを電気的に接続可能であり、射出ユニットについて次の使用に備えるための準備作業を行う準備ステーションと、
前記準備ステーションに設けられ、該準備ステーションの載置面に設置された射出ユニットのノズルの芯出しを行うノズルタッチプレートと、
を具備したことを特徴とする電動式射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−51351(P2011−51351A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249878(P2010−249878)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2001−232034(P2001−232034)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】