説明

電動機

【課題】コイルの巻き数を増加できる電動機を提供する。
【解決手段】本発明は、回転軸を備えた回転子3と、回転子と軸方向に対向するように配置された固定子4とをケース5内に備えた電動機において、固定子は、ケースに固定されるヨーク12と、コイルが巻回される複数のティース11とを備え、各ティースは、回転軸方向から見て略扇形に形成され、扇形の一対の側辺の延長線の交点が回転軸の中心とティースとの間に位置する電動機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低速高トルクの要求に対応する電動機として、回転軸方向に固定子と回転子とが対向して配置される軸方向空隙型電動機がある(特許文献1の図2参照)。この軸方向空隙型電動機は、コイルをティースに巻回した固定子と、このコイルに回転軸方向に対向して配置され、複数の永久磁石を周方向に配置した回転子とからなる。コイルに電流を流すと回転磁界が発生し、これに伴い固定子と回転子との間に生じる磁気的な吸引力および反発力によって、回転子が回転するものである。
【特許文献1】特開2000−253635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この軸方向空隙型電動機のコアは、軸方向から見て四角形に形成されている。このような四角形のコアにコイルを巻回する場合、コイルの巻き数は、軸中心に近い側の隅部に巻回されるコイルにより左右される。つまり、隅部と隣接する他のコアのコイルの隅部との距離でコイルの巻き数が決定される。
【0004】
しかしながら、その場合でも、コアの外周側の隅部間のスペースには、コイルを巻回することができるスペースが残っている。この点で、上記従来技術による軸方向空隙型電動機は、スペースの利用効率が高いとは言えない。
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、コイルを巻回するためのスペース効率を向上させた電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転軸を備えた回転子と、前記回転子と軸方向に対向するように配置された固定子とをケース内に備えた電動機において、前記固定子は、前記ケースに固定されるヨークと、前記コイルが巻回される複数のティースとを備え、前記各ティースは、前記回転軸方向から見て略扇形に形成され、扇形の一対の側辺の延長線の交点が前記回転軸の中心と前記ティースとの間に位置するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、このようなティース形状としたので、ティース間のコイルを巻回するスペースを増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の軸方向空隙型電動機1の断面図である。
【0009】
軸方向空隙型電動機1は、回転軸2を備えた回転子3と、回転軸2と軸方向に所定の空隙をもって対向するように設けられた一対の固定子4とからなり、これらをケース5内に収納して構成される。
【0010】
回転軸2は、ケース5の円筒形の支持壁5a、5bに支持された軸受6、7を介して回転自由にケース5に支持される。回転軸2の一端は、ケース5から突出し、不図示の被回転部材に結合する。回転軸2の他端に臨んで支持壁5aの内側に回転軸2の回転速度を検出するセンサ8が設置される。
【0011】
回転子3は、円盤状に形成され、回転軸2の外周面に固定され、ケース5内の軸方向略中央に配置される。回転子3には、不図示の永久磁石が周方向に等間隔に配置され、この永久磁石に対面するように固定子4のティース11が配置される。
【0012】
固定子4は、ケース5に固定されるコア13と、コア13に配置された複数のコイル10とから形成される。コア13は、絶縁材を介してコイル10が巻回される複数のティース11と、このティース11をケース5に固定する環状のヨーク12とからなり、回転子3に軸方向両側から臨んで配置される。
【0013】
コア13の各ティース11は、ヨーク12から回転子3に向かって突出し、回転子3と軸方向に所定の隙間を持って対峙する。
【0014】
図2を参照すると、各ティース11は、周方向に所定間隔で配置され、各ティース11には、コイル10が不図示の絶縁材を介して巻回される。コイル10がティース11に巻回された状態でモールド樹脂によりコア13とコイル10とが一体的に成形される。モールド成形後、ケース5の内面に形成された軸方向に開口する環状溝15、16に環状のヨーク12の外内周面を嵌合させる。なお、コア13を周方向に分割することも可能である。
【0015】
回転子3と固定子4とを内装するケース5は、有底円筒形状の本体部5cと本体部5cの開口部を閉止する蓋部5dとから構成される。蓋部5dには、回転軸2が貫通する貫通孔14が形成される。本体部5cの底面と蓋部5dの内周面には、ヨーク12が嵌合する環状溝15、16が形成される。
【0016】
このような構成により、コイル10はティース11の外周に沿って巻回されるため、コイル10がティース11に巻回される長さは、ティース11の外周の形状と隣接するティース11の間の距離とに依存する。
【0017】
例えば、回転軸方向から見たティース11の形状が従来技術のように四角形である場合には、隣接するティース11の内側の隅部の間の距離でコイル10の巻き数が決定される。このような場合に、外側の隅部側にはコイル10が巻回できるスペースが残るという課題がある。
【0018】
このような課題を解決するために本発明は、回転軸方向から見たティース11の形状を略扇状に形成し、扇の要(中心)を回転軸方向に位置させ、その中心は回転軸2の中心よりティース11に近い側に位置することとした。
【0019】
以下、図2を参照して、ティース11の詳細な形状を説明する。
【0020】
ティース11の外形形状は、前述の通り、回転軸方向から見て、略扇状に形成されており、ティース11は、回転軸2の中心を通るティース11の中心線C1に対して傾斜する側面20a、側面20bを備え、側面20aと側面20bとは中心線C1に対して対称をなす。側面20aと側面20bのそれぞれの延長線は、中心線C1上で交差し、その交点P1は、回転軸2の中心よりティース11に近い側に位置する。好ましくは、側面20a、側面20bは、隣接する2つのティース11の中心線C1、中心線C2のなす角の二等分線Lと平行に形成される(その場合の交点をP0で示す)。
【0021】
次に作用を説明する。
【0022】
本発明の軸方向空隙型電動機1は、例えば、ケース5を固定し、回転子3に固定される回転軸2を被回転部材に接続した状態で固定子4のコイル10に通電される。固定子4のコイル10に通電されると、回転磁界が発生し、これに伴い固定子4と回転子3との間の磁気的な吸引力および反発力によって、回転子3を所定方向に回転させる。この回転により回転子3に接続する回転軸2が回転する。
【0023】
コイル10が巻回されるティース11は、軸方向から見て略扇状に形成され、ティース11の中心線C1に対して傾斜する一対の側面20a、20bを備え、側面20a、20bのそれぞれの延長線が中心線C1上で交差し、その交点P1は、回転軸2の中心よりティース11に近い側に位置する。このような構成により、従来の形状に比してティース11はコイル10を巻回するスペースを増加し、巻回されるコイル10の長さを延長させることができ、または、長さを同じとする場合にはコア13を小型化することができる。
【0024】
さらに、側面20a、側面20bを隣接するティース11の中心線C1、中心線C2のなす角の二等分線Lと平行に形成することで、隣接するティース11の相対する側面に巻回されるコイル10が互いに平行に巻回され、コイル10を最も効率よくティース11に巻回することができる。
【0025】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の軸方向空隙型電動機1の構成を説明する断面図である。
【図2】図1の断面A−Aの断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 軸方向空隙型電動機
2 回転軸
3 回転子
4 固定子
5 ケース
10 コイル
11 ティース
12 ヨーク
13 コア
20a 側面
20b 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備えた回転子と、
前記回転子と軸方向に対向するように配置された固定子とをケース内に備えた電動機において、
前記固定子は、前記ケースに固定されるヨークと、前記コイルが巻回される複数のティースとを備え、
前記各ティースは、前記回転軸方向から見て略扇形に形成され、扇形の一対の側辺の延長線の交点が前記回転軸の中心と前記ティースとの間に位置することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記一対の側辺は、前記回転軸の中心を通る前記ティースの中心線に対称に位置し、前記側辺の延長線は、前記ティースの中心線上で交差することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記一対の側辺は、隣接する2つの前記ティースの中心線のなす角の二等分線と平行に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−159666(P2009−159666A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332095(P2007−332095)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)