説明

電動機

【課題】偏芯許容構造を備えた電動機を提供する。
【解決手段】本発明は、回転軸2を備えた回転子3と、前記回転子と軸方向に対峙するように配置された固定子4と、前記回転子と前記固定子とを内装し、その内面に前記固定子を固定するケース5とを備えた電動機において、前記ケースの内面と前記回転子との間に前記固定子の中心線に直交する方向の前記回転子の偏芯を許容するフリーベアリング7を設けたことを特徴とする電動機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、特に回転軸の偏芯許容構造を備えた電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低速高トルクが要求される電動機に対応する電動機として、回転軸方向に固定子と回転子とが対向して配置される軸方向空隙型電動機がある。従来の軸方向空隙型電動機は、コイルが巻回される固定子と、このコイルに回転軸方向に対向して配置され、複数対の永久磁石が周方向起磁力形に配置される回転子とからなり、固定子コイルに電流を流して回転磁界を発生させ、これに伴い固定子と回転子との間の磁気的な吸引力および反発力によって、回転子を回転させる(特許文献1、2参照のこと)。
【特許文献1】特開2002−153028号公報
【特許文献2】特開平11‐187635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら従来の軸方向空隙型電動機では、固定子の中心線と回転子の中心線とを同軸として構成され、たとえば回転子に接続する被回転部材の回転中心線も回転子の中心線と同一にする必要が生じる。しかし、組み立て精度等を考慮するとバラツキを除去することができない。この中心線のズレ(偏芯)を許容するために、従来はオルダムカップリングを回転子と被回転部材間に設置することが行われていた。このため、オルダムカップリングの設定に伴い、コストアップや重量増加という課題が生じる。
【0004】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、偏芯許容構造を備えた電動機においてコストや重量の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転軸を備えた回転子と、前記回転子と軸方向に対峙するように配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを内装し、その内面に前記固定子を固定するケースとを備えた電動機において、前記ケースの内面と前記回転子との間に前記固定子の中心線に直交する方向の前記回転子の偏芯を許容するフリーベアリングを設けている。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、回転子とケースとの間にフリーベアリングを備えたので、このフリーベアリングにより回転子の中心線と固定子の中心線との偏芯を許容し、従来、偏芯を許容するため設けていたオルダムカップリングを廃止することができ、コストの上昇や重量の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の軸方向空隙型電動機1の構成を示す断面図である。
【0008】
本実施形態において、軸方向空隙型電動機1は、回転軸2を備えた回転子3と、回転軸2の軸方向に所定の間隙をもって回転子3と対峙する一対の固定子4とを、ケース5内に収納し、構成される。
【0009】
回転子3には、軸方向に延びる回転軸2が固定され、回転子3は、軸方向に直交する平面を備えた円板状のフランジ11と、このフランジ11の外周に固定された複数の永久磁石12とを備える。各永久磁石12は、周方向に等間隔に配置される。
【0010】
固定子4は、ケース5に固定されるヨーク部8と、ヨーク部8から回転子3側に突出し、周方向に所定間隔で設けられる複数のティース部9と、ティース部9に巻回されるコイル10とから構成される。ヨーク部8は、ティース部9をケース5に固定するとともに、ティース部9の磁束を周方向に回して別のティース部9へ流す役割を果す。各ティース部9に巻回されたコイル10は、回転軸2の軸方向に回転子3の各永久磁石12と対峙する。またコイル10は、図示しない絶縁体を介してティース部9に巻回され、ティース部9から絶縁される。
【0011】
ケース5は、回転子3と固定子4とを内部に収納し、有底円筒形状の本体部5aと本体部5aの開口部を閉止する蓋部5bとから構成される。蓋部5bには、回転軸2が貫通する貫通孔5cを形成する。回転子3の永久磁石12と軸方向にて対峙する固定子4の各ヨーク部8が、ケース5の本体部5aの底部5dと蓋部5bとにそれぞれ固定される。回転子3と固定子4は、軸方向の間隙14が所定値となるように設置される。
【0012】
ケース5の貫通孔5cは、回転軸2の外径に対して所定量だけ大きく形成される。回転子3の、固定子4の中心線に直交する方向(以下、軸直角方向という)のケース5との相対的な変位量(偏芯量)は、貫通孔5cの内径と回転軸2の外径との差によって規定される。
【0013】
次に、回転子3の軸直角方向の相対変位を許容する構成について説明する。
【0014】
回転軸2に固定されたフランジ11の外径は、ケース5の蓋部5bの貫通孔5cの内径より大きく形成される。具体的には、フランジ11の外径は、回転軸2がケース5の軸直角方向に対して最大量だけ偏芯しても常に貫通孔5cより大きくなるように設定される。
【0015】
ケース5の本体部5aの底部5dと蓋部5bにはそれぞれフリーベアリング7が設置され、フリーベアリング7の複数のボール7aがフランジ11の平面11a、11bに両側から接する。
【0016】
図2から図4を参照すると、フリーベアリング7は、環状に形成し、固定子4の中心線と同軸に配置される。フリーベアリング7は、フランジ11の表裏をなす平面11a、11bと平行に形成された面7aを備え、ケース5に固定するベース7bと、面7aに形成した半球状の複数の凹部7eに収装された複数のボール7cと、凹部7eとボール7cとの間に介在して、ボール7cをフランジ11に対して転動可能に支持する支持部材7dとから構成される。支持部材7dは、樹脂軸受や小径の複数のボールで構成される。
【0017】
図2に示すように、ボール7cは、周方向に一定間隔で配置されており(α1=α2)、フリーベアリング7のベース7bの内径D1は、貫通孔5cよりできるだけ大きく設定し、外径D2と内径D1との差D2−D1はできるだけ小さく設定し、かつボール7cの直径は大きく設定する。
【0018】
このような構成により、回転子3のフランジ11は一対のフリーベアリング7により軸方向から挟持され、フリーベアリング7のボール7cが回転子3の固定子4に対する軸直角方向への変位時に転動し、回転子3の固定子4に対する相対変位を可能とする。
【0019】
なお、固定子4側にフリーベアリング7を配置する構成を説明したが、回転子3側にフリーベアリングを配置することも可能である。
【0020】
次に作用を説明する。
【0021】
本発明の軸方向空隙型電動機は、例えば、ケース5を図示しない支持部材に固定し、回転子3が固定される回転軸2を不図示の被回転部材に接続した状態で固定子4のコイル10に通電することで運転が行われる。固定子4のコイル10に通電すると、回転磁界が発生し、これに伴い固定子4と回転子3との間の磁気的な吸引力および反発力によって、回転子3が所定方向に回転する。この回転により回転軸2も回転する。
【0022】
本発明では、ケース5と回転子3との間にフリーベアリング7を備えたので、容易な構成で回転子3が固定子4の中心線に直交する方向の変位を許容することができる。これにより偏芯機能を有しながら、コスト上昇や重量の増加を抑制することができる。
【0023】
フリーベアリング7のベース7bの内径D1は、貫通孔5cよりできるだけ大きく設定し、外径D2と内径D1との差D2−D1はできるだけ小さく設定したので回転子3の固定子4に対する偏芯量を大きく設定することができる。また、ボール7cの直径は大きく設定したので、ボール7cの面圧を低減でき、ボール7cに作用する軸方向の押圧力に抗して、回転子3の許容回転数を向上することができる。
【0024】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の軸方向空隙型電動機1の構成を説明する断面図である。
【図2】フリーベアリングの構成図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 軸方向空隙型電動機
2 回転軸
3 回転子
4 固定子
5 ケース
5a 本体部
5b 蓋部
5c 貫通孔
7 フリーベアリング
8 ヨーク部
9 ティース部
10 コイル
11 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備えた回転子と、
前記回転子と軸方向に対峙するように配置された固定子と、
前記回転子と前記固定子とを内装し、その内面に前記固定子を固定するケースとを備えた電動機において、
前記ケースの内面と前記回転子との間に前記固定子の中心線に直交する方向の前記回転子の偏芯を許容するフリーベアリングを設けたことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記ケースは、前記回転軸が貫通する貫通孔を備え、
この貫通孔と前記回転軸の径差により前記回転子の前記偏芯量を規定することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記フリーベアリングは、前記回転子または前記固定子のいずれかと転接するボールと、このボールを転動可能に支持する環状のベース材を備え、
前記ベース材は、その内径が前記貫通孔の径より大きく設定され、前記ボールは、周方向に等間隔で設置することを特徴とする請求項2に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−159667(P2009−159667A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332110(P2007−332110)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)