説明

電動機

【課題】
電動機の巻線の冷却効果を向上し、運転時の音、振動等を低減し、磁極位置検出素子の誤感知を低減した電動機を提供する。
【解決手段】
固定子1の内径で回転自在に回転する、永久磁石6を備えた回転子2を有し、
前記固定子1の歯部には絶縁部材4を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機であって、
前記絶縁部材4の内径樹脂壁4aには、前記回転子2に備えた永久磁石6の磁極位置を検出する磁極位置検出素子9(9U、9V、9W)からなる磁極位置検出器を備えた回路基板5の少なくとも一部が係り止めされ、前記絶縁部材4の内径樹脂壁4aより固定子内径側に前記回路基板5が飛び出していることを特徴とする電動機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定子の歯部に絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機の回路基板取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子の内径で回転自在に回転する、永久磁石を備えた回転子の磁極位置を検知する場合、回転子の磁極位置を検知する磁極位置検出素子からなる磁極位置検出器を備えた回路基板を電動機のいずれかに取り付けなければならない。例えば、回路基板の取り付け構造として、特許文献1(特開2000−41371号)に示した様な構造がある。
【0003】
特許文献1には、回転子の外周に取り付けた永久磁石の磁極位置を検知するための磁極位置検出素子からなる磁極位置検出器を備えた回路基板を、固定子と巻線を絶縁するために取り付けた絶縁部材の第1外径樹脂壁と第2外径樹脂壁に、回路基板の固定子周方向に位置する両端部の外周縁側を固定した電動機が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−41371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様な電動機の構造は、回路基板の取り付けの容易性等から、回路基板を絶縁部材の外径樹脂壁に係り止めし、固定子の歯部に絶縁部材を介して巻き付けた巻線のコイルエンド部を覆うように固定されている。しかしながら、電動機を連続運転する場合、電動機の固定子に巻き付けた巻線が高温になり電動機性能が低下してしまう。また、電動機の巻線が高温に成りすぎると絶縁が破壊され巻線同士が短絡し焼損事故となってしまう。そこで、回転子を回転駆動する回転軸に電動機の冷却用ファン等が取り付けられている。この冷却用ファン等により電動機の巻線の上部から風を送り巻線を冷却する方法が取られているが、巻線のコイルエンド部を回路基板が覆っているため、その効果は低減してしまう。
【0006】
また、電動機の固定子の歯部に装着させ絶縁部材と、インバータ回路を制御するための磁極位置検出器等を備えた回路基板が確実に固定されていない場合、絶縁部材と回路基板との間にガタ付きが生じ音、振動等が発生してしまう。
【0007】
また、絶縁部材に回路基板が確実に固定されていない場合、回路基板の固定位置がずれることにより、回路基板に備えた磁極位置検出素子の検出位置がずれ誤感知する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
固定子の内径の中心を回転軸の軸中心として、前記回転軸には永久磁石を備えた回転子を嵌着し、前記固定子の歯部には絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機において、
前記絶縁部材は、前記固定子の外径側で回転軸方向に平行に伸びる外径樹脂壁と、前記固定子の内径側で回転軸方向に平行に伸びる内径樹脂壁を備え、外径樹脂壁と内径樹脂壁を繋ぎ巻線を巻き付ける巻線胴部を有し、
前記絶縁部材の内径樹脂壁には、前記回転子に備えた永久磁石の磁極位置を検出する磁極位置検出素子からなる磁極位置検出器を備えた回路基板の少なくとも一部が係り止めされ、前記絶縁部材の内径樹脂壁より固定子内径側に前記回路基板が飛び出ている電動機とする。
【0009】
また、前記回路基板は、前記絶縁部材の少なくとも内径樹脂壁と係止めした状態で、前記回路基板から固定子外径方向に伸びた少なくとも1つの架橋部分により外径樹脂壁に係止めした電動機とする。
【0010】
また、前記回路基板に備えた磁極位置検出素子は、前記回路基板から回転軸方向に平行に伸びて、前記絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた前記固定子の歯部間に配置させた電動機とする。
【0011】
また、前記固定子のスロット数が12スロットであり、前記回転子の磁極を10極とした電動機とする。
【0012】
尚、前記電動機を駆動源に用いた空気圧縮機とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動機は、固定子の歯部に絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式の電動機であって、絶縁部材が固定子の外径側で回転軸方向に平行に伸びる外径樹脂壁と、固定子の内径側で回転軸方向に平行に伸びる内径樹脂壁を備え、外径樹脂壁と内径樹脂壁を繋ぎ巻線を巻き付ける巻線胴部を有した電動機において、磁極位置検出素子からなる磁極位置検出器を備えた回路基板を電動機の絶縁部材の内径樹脂壁に少なくとも一部を係り止めし、固定子の巻線上端部を極力回路基板で覆わない様に、絶縁部材の内径樹脂壁より固定子内径側に回路基板を飛び出して固定することにより、例えば、回転子の回転駆動する回転軸の延長上に取り付けた冷却用ファンにより電動機の固定子に巻き付けた巻線を確実に冷却することができる。
【0014】
尚、本実施形態では、回路基板が固定子の歯部に絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた歯部間の隙間を塞ぐことが無いようにしているので効果的に巻線間を冷却することができる。従って、特に固定子の歯部に巻線を巻くために(巻線を巻き付けるための巻線機のノズルが通過するために)歯部間に隙間を設ける集中巻き方式の電動機に用いることにより、よりよい効果を得ることができる。
【0015】
また、前記回路基板は、絶縁部材の少なくとも内径樹脂壁と係止めした状態で、回路基板から固定子外径方向に伸びた少なくとも1つの架橋部分により外径樹脂壁に係止めした電動機とすることにより、確実に回路基板を絶縁部材に固定することができ、電動機運転時の振動、騒音等を低減することができる。
【0016】
この場合の架橋部分は、固定子の歯部に絶縁部材を介して巻き付けた巻線間の隙間を塞ぐことが無いように配置している。これにより回転軸に取り付けた冷却用ファン等により固定子の歯部に巻き付けた巻線間の冷却効果を損なうことなく回路基板を固定することができる。
【0017】
また、回路基板を絶縁部材に確実に固定することができるので、回路基板に備えた磁極位置検出素子の位置検出が振動等によりずれることが無いので電動機の位置検出の信頼性を向上することができる。
【0018】
尚、固定子の歯部に絶縁部材を介して直接巻き付けた巻線の上端部で、前記絶縁部材の内径樹脂壁、外径樹脂壁に係り止めした回路基板に備えた磁極位置検出素子は、前記回路基板から回転軸方向に平行に伸びて、絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた固定子の歯部間に配置することにより、回転子の磁極間の磁束漏れによる磁束波形の誤感知を低減でき検出精度の低下を防ぐことができる。
【0019】
特に、固定子のスロット数が12スロットであり、回転子の磁極を10極とした電動機、また、前記電動機を駆動源とする空気圧縮機に用いることにより優れた効果を得ることができる。
【0020】
従って、本発明の回路基板の取り付け構造とすることにより固定子の巻線の冷却効果を向上することができ、電動機運転時の過負荷における巻線の温度上昇による性能低下を防ぎ、また、回路基板の確実な固定が可能になることにより音、振動等の発生を防ぎ、磁極位置検出素子のずれや誤感知を低減でき検出精度を向上させた電動機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の電動機をフレームに実装した縦断面図。
【図2】図1の電動機の図(図1の電動機は、図2に示したA−A’断面図)
【図3】本実施形態の回路基板図。
【図4】本実施形態の回路基板の磁極位置検出素子の詳細図。
【図5】回転子の磁束部分図
【図6】本実施形態の結線図を説明する図。
【図7】本実施形態の結線図を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の電動機をフレーム110に実装した縦断面図である。図1には、フレーム110の内径側に隙間バメ、焼きバメ、圧入等で固定した固定子1と、回転子2の回転子軸孔20に回転軸21が隙間バメ、焼きバメ、圧入等により嵌着し、固定子1の内径側に配置されている。回転軸21は、一方をフレーム110の軸受部22aで、他方をブラケット120の軸受部22bで固定し、固定子1の内径の中心を回転軸21の軸中心として固定子1の内径側で回転自在に駆動されている。尚、ブラケット120はフレーム110と通しボルト140等で固定子1の貫通孔10を介して一体に固定されている。
【0023】
図1の実施形態では、回転子2が嵌着された回転軸21には、固定子1の巻線3を冷却するための冷却用ファン130等が取り付けられている。
【0024】
図1(及び図4の詳細図を参照)の固定子1は、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻線3を巻き付けた集中巻き方式の固定子である。固定子1の絶縁部材4は、固定子1の外径側で回転軸方向と平行に、固定子鉄心側とは逆方向に伸びた外径樹脂壁4bを設け、固定子1の内径側には外径樹脂壁4bと同様に固定子鉄心とは逆方向に伸びた内径樹脂壁4aが設けられ、外径樹脂壁4bと内径樹脂壁4aを繋ぐ、巻線3を巻き付ける巻線胴部4cが設けられている。
【0025】
尚、絶縁部材4の材質としては、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が用いられている。また、樹脂強度を考慮した場合、前記した材質とガラス繊維(ファイバー)混合し含有させることにより樹脂強度を増すことができる。
【0026】
また、回転子2は、回転軸孔20の中心を中心として周方向に交互に異極となる様に回転子内部の磁石収容孔7に永久磁石6を挿入配置させ、回転軸孔20に平行となる様に永久磁石収容孔7に永久磁石6を挿入配置させた永久磁石埋め込み型の永久磁石型回転子である。実施形態の回転子2に用いる永久磁石6は、フェライト磁石、希土類磁石等、磁石材には限定されないが、実施形態では希土類磁石を用いている。
【0027】
図2には、図1で示したフレーム110に取り付けた電動機を上から見た図である。実施形態の電動機の固定子1には、図1及び図2に示している様に固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻線3を巻き付けた集中巻き方式の電動機の固定子端面から飛び出た巻線3のコイルエンド上部に絶縁部材4の内径樹脂壁4aより固定子内径側に飛び出して回路基板5を固定している。この回路基板5には、固定子1の内径で回転自在に回転する、永久磁石6を備えた回転子2の磁極位置を検出する磁極位置検出素子9からなる磁極位置検出器等を備えている。
【0028】
この回路基板5は、固定子1に装着した絶縁部材4の内径樹脂壁4aの上端部に係り止めするための爪部4dが設けられ、回路基板5の外周側縁部55の少なくとも一部が係止めする構造となっている。この回路基板5を係り止めする構造は、内径樹脂壁4aの上端部に係り止め爪部4dを設けて固定する構造に限定するものではない。例えば、内径樹脂壁4aに突部の出っ張りを設け、回路基板5に設けた孔に嵌め合わせてもよく、また、内径樹脂壁4aに設けた孔と、回路基板5に設けた孔を重ね合わせネジ等により固定してもよい。回路基板5が容易に内径樹脂壁4aに係り止めできる構造であればよい。
【0029】
図1及び図2に示した実施形態の回路基板5の固定構造は、回路基板5を固定子内径から外径方向に略スライドすることにより、絶縁部材4の内径樹脂壁4aの上端部の爪部4dに係り止めして固定している。本実施形態では内径樹脂壁4aの固定子内径側に向かい鍵状に固定子内径側に飛び出した爪部4dにより、回路基板5の外周側縁部55に設けた凹部溝5bの少なくとも一部に係止めする構造となっている。これにより、容易に回路基板5を絶縁部材4の内径樹脂壁4aの上端部に係り止めしている。
【0030】
より詳しくは、内径樹脂壁4aから上端に伸びて、内径樹脂壁4aの上端部から固定子内径側に向かい鍵状に固定子内径側に飛び出した係り止め爪部4dとなっており、この係り止め爪部4dにより、回路基板5が固定子内径側からスライドした際、回路基板5の外周側縁部55の少なくとも一部に設けた凹部溝5b(図3参照)と勘合し係り止めされている。
【0031】
尚、本実施形態における電動機の冷却方法は図1に示した様に、フレーム110に固定された電動機の上部から、回転軸21に取り付けられた冷却用ファン130によりブラケット120に設けられた孔120aから冷却風が送り込まれ電動機の固定子1に巻き付けた巻線3を冷却する方法が取られている。
【0032】
本実施形態では、図2に示した様に回路基板5が絶縁部材4の内径樹脂壁4aより内径側、つまり、回路基板5が固定子1の歯部に巻き付けた巻線3を覆うことなく、固定子1に取り付けた絶縁部材4の内径樹脂壁4aより内径側に飛び出して配置することにより、固定子1の歯部に巻き付けた巻線3の冷却効果を高め固定子1に巻き付けた巻線3が高温に成ることなく、温度上昇するのを緩和することができる。
【0033】
また、図1、図2及び図3に示した回路基板5に示しているように回路基板5の固定を確実に行うために回路基板5の外周側縁部55からは、固定子1の外径方向に伸びる架橋部50を設けている。この場合の回路基板5から固定子1の外径部に伸びる架橋部50は、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻線を巻き付けた巻線3のコイルエンド上部に回路基板5の架橋部50がくるように配置している。
【0034】
言い換えれば、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻線を巻き付けた巻線3と、隣り合う歯部に同様に巻き付けた巻線3との間の隙間を塞ぐことなく、回転軸の上部方向から見て巻線3との間の隙間が確認できるように設けられている。これにより、電動機上部の回転軸21に取り付けた冷却用ファン130により、電動機の固定子1の歯部に巻き付けた巻線間の隙間に冷却風を流通させることが可能となり冷却効果を上げることができる。
【0035】
また、図4に示した図1の電動機に取り付けた回路基板5の磁極位置検出素子9の詳細図(図1の一点鎖線部分の詳細図)からもわかる様に、本実施形態における回路基板5には磁極位置検出素子9からなる磁極位置検出器を備えている。磁極位置検出素子9は、回路基板5を固定子1に取り付けた状態で回路基板5から固定子端面側へ略直角に回転軸方向と平行に伸びて、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻き付けた巻線3の歯部間に配置することにより回転子2に埋め込んだ永久磁石6の磁極を確実に検出することができる。
【0036】
これは磁極位置検出素子9を前記の如く配置することで、固定子1の内径側で回転駆動する回転子2の磁極位置の検出を確実に行うことができ、永久磁石6が埋め込まれた回転子2の磁極が切り変わる際の磁束漏れによる誤感知を低減でき、歪の少ない磁束波形の信号を得ることができ、確実な電動機制御をすることができる。
【0037】
この場合の回転子2の磁極位置を検出する磁極位置検出素子9の配置は、固定子1の隣り合う歯部に巻き付けられた巻線3の歯部間に、回転軸方向と平行で、固定子1の端面近傍に配置されている。尚、回転子2の積厚が固定子1の積厚より高い場合は、回転子側面の磁極間で磁極位置検出素子9により検出をおこなっても良い。
【0038】
尚、本実施形態のように、回転子2の磁石収容孔7に永久磁石6を埋め込まれた永久磁石型回転子の場合は、特に磁極位置を検出することが難しくなる。磁石収容孔7の永久磁石6が埋め込まれている部分と磁石収容孔7内の空隙部分と回転子2の鉄心部分の僅かなブリッジ部分(継鉄部分)2a(図5参照)により磁極が切り替わることによる磁束漏れが発生し誤感知を引き起こしてしまう。
【0039】
この現象は、回転子2の磁石収容孔7に埋め込まれた永久磁石6の磁力が強い希土類を用いた場合、回転子2の側面と対向配置させることにより顕著に表れる。従って、磁極位置検出素子9の配置が回転子2に近づけすぎない様に配置させることが好ましい。従って、この場合、固定子1の隣り合う歯部に巻き付けられた巻線3の歯部間に、回転軸方向と平行で固定子1の端面近傍に配置させることが好ましい。
【0040】
また、固定子1の端面近傍とは、固定子1の隣り合う歯部に巻き付けられた巻線3の歯部間で、回転子2の回転軸方向と平行に、回転子端面と、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して巻き付けた巻線3の巻線高さまでの間に、磁極位置検出素子9の感知部分が有ることが望ましい。尚、磁極位置検出素子9が離れすぎると磁極位置を検出することができなくなる。
【0041】
図5には、本実施形態の回転子2の磁石収容孔7に永久磁石6を挿入配置させた永久磁石埋め込み型の永久磁石型回転子の模式的な展開図を示している。図5は隣り合う磁極が異極となるように磁石収容孔7に埋め込まれた永久磁石6の磁極間部を、回転子2の表面から得られる表面磁束を測定した磁束波形の一部を表示している。二点鎖線は前述したような磁束漏れを誤感知した場合の磁束波形を示しており、実線は磁極位置検出素子9を本実施形態の位置に配置させた場合を示している。図5に示したように、磁束の歪が小さくなり磁極位置検出素子9による誤感知を極力低減することが可能となる。
【0042】
尚、磁極位置検出素子9は、回路基板5を固定子1の絶縁部材4に取り付けた状態で、回路基板5から略直角に固定子1の端面方向に伸ばし、固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻線3を巻き付けた歯部間に配置することは、固定子1の歯部と歯部の隙間に配置することや、固定子1の歯部に巻き付けられた巻線間に配置することを含み、固定子1の歯部に巻線3を巻き付けた巻線間の固定子1の端面近傍に配置することを含んでいる。
【0043】
また、回路基板5の磁極位置検出素子9は、U相用の9U、V相用の9V、W相用の9Wとして3つ設けられ、固定子1の歯部に巻き付けた巻線の歯部間に固定子内径側に面して配置されている。例えば、図7に示した結線図の場合、通常スロットNO.3、NO.7、NO.11の間に磁極位置検出素子9を機械角で120°ピッチの等間隔に固定子1の歯部に巻き付けた巻線3のコイルエンド部全周に渡り回路基板を配置することになるが、本実施形態の場合、何れか1つの磁極位置検出素子9が感知した極性を反転させることにより、他の2つの磁極位置検出素子9が配置されている間に配置させることができる。図7の場合では、例えば、スロットNO.11をスロットNO.5に配置させることができる。
【0044】
これにより、磁極位置検出素子9の配置は機械角で60°ピッチの配置となり、回路基板を固定子1の歯部に巻き付けた巻線3のコイルエンド部全周に渡り配置しなくても良くなり、図2に示した様に一箇所にまとめて配置することができる。従って、回路基板5で固定子1の歯部に巻き付けた巻線3の冷却効果を上げるとともに、回路基板5を小さくすることによりコストを低減することもできる。
【0045】
尚、本実施形態の固定子1の歯部に直接巻き付けた巻線3は、3相2Y結線されている。図2の電動機の図及び図6、図7の結線図に示した様に、本実施形態の固定子1のスロットは12個、回転子2の磁極が10極を有する永久磁石埋め込み型回転子である。本実施形態の他に、例えば、固定子1のスロットが9個、回転子2の磁極が8極や、固定子1のスロットが3個、回転子2の磁極が2極または4極等においても可能である。
【0046】
本実施形態の固定子1の歯部に絶縁部材4を介して直接巻き付けた巻線3の巻き回方向は、同相の隣り合う歯部において、逆向きに巻線3を巻き付けている。
本実施形態では、図6及び図7に示している様にU相のUaの巻線3は、スロットNO.1から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.2で巻き終わり、隣りのスロットNO.3に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.2で巻き終わる。更に、続けてW相のWaの巻線3としてスロットNO.4から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.5で巻き終わり、隣りのスロットNO.4に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.3で巻き終わった後、スロットNO.2とスロットNO.4とを繋ぐ巻線3を切断し、U相のUaの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続し、W相のWaの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続する。
【0047】
V相のVaの巻線3は、スロットNO.5から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.6で巻き終わり、隣りのスロットNO.7に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.6で巻き終わる。更に、続けてU相のUbの巻線3としてスロットNO.8から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.9で巻き終わり、隣りのスロットNO.8に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.7で巻き終わった後、スロットNO.6とスロットNO.8とを繋ぐ巻線3を切断し、V相のVaの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続し、U相のUbの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続する。
【0048】
W相のWbの巻線3は、スロットNO.9から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.10で巻き終わり、隣りのスロットNO.11に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.10で巻き終わる。更に、続けてV相のVbの巻線3としてスロットNO.12から巻き始め図中に示した矢印方向に巻き回し、スロットNO.1で巻き終わり、隣りのスロットNO.12に渡り、図中に示した矢印方向に巻き回しスロットNO.11で巻き終わった後、スロットNO.10とスロットNO.12とを繋ぐ巻線3を切断し、W相のWbの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続し、V相のVbの巻き始めを電源側とし、巻き終わりを中性点側に接続する。尚、図7の図中に示した矢印方向は巻線に流れる電流の向きを示すものではなく巻線3の巻き回方向を示している。また、本実施形態の巻線方法を限定するものではなく、同相の隣り合う歯部において、巻線3の巻き回方向が逆向きとなっていれば良い。
【0049】
従って、特に固定子1のスロット数が12スロットで、回転子2の磁極が10極を有する電動機であって、同相の隣り合う歯部の巻線3の巻き回方向が逆向きである電動機においては、本実施形態のように回路基板5を配置させ、回路基板5には本実施形態の様に磁極位置検出素子9を配置することにより、電動機運転時の過負荷における巻線の温度上昇による性能低下を防ぎ、また、回路基板5を確実に固定することにより音、振動等の発生を防ぐとともに、磁極位置検出素子9に歪の少ない磁束波形の信号を得ることができ、回転子2の磁極が切り変わる際の磁束漏れによる誤感知を低減でき、確実な電動機の制御運転が可能となる。
【0050】
また、この様な電動機を駆動源とする空気圧縮機に用いることにより、電動機運転時の過負荷における巻線の温度上昇による性能低下を防ぎ、また、回路基板5を確実に固定することにより音、振動等の発生を防ぎ、磁極位置検出素子9の誤感知を低減でき検出精度を向上させた電動機とすることができる。また、回転軸に取り付けられた冷却用ファン等の冷却風による回路基板5のバタつきも低減することができるので、風圧による音、振動も低減することができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・・固定子
2・・・・回転子
2a・・・ブリッジ部分(継鉄部分)
3・・・・巻線
4・・・・絶縁部材
4a・・・内径樹脂壁
4b・・・外径樹脂壁
4c・・・胴部
4d・・・爪部
5・・・・回路基板
5a・・・係り止め部
5b・・・凹部
55・・・外周側縁部
6・・・・永久磁石
7・・・・磁石収容孔
9、9U、9V、9W・・・・磁極位置検出素子
10・・・貫通孔
20・・・軸孔
21・・・回転軸
22a、22b・・・軸受部
50・・・架橋部
110・・フレーム
120・・ブラケット
120a・・ブラッケトの孔
130・・冷却用ファン
140・・ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子の内径の中心を回転軸の軸中心として、前記回転軸には永久磁石を備えた回転子を嵌着し、前記固定子の歯部には絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機において、
前記絶縁部材は、前記固定子の外径側で回転軸方向に平行に伸びる外径樹脂壁と、前記固定子の内径側で回転軸方向に平行に伸びる内径樹脂壁を備え、外径樹脂壁と内径樹脂壁を繋ぎ巻線を巻き付ける巻線胴部を有し、
前記絶縁部材の内径樹脂壁には、前記回転子に備えた永久磁石の磁極位置を検出する磁極位置検出素子からなる磁極位置検出器を備えた回路基板の少なくとも一部が係り止めされ、前記絶縁部材の内径樹脂壁より固定子内径側に前記回路基板が飛び出していることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記回路基板は、前記絶縁部材の少なくとも内径樹脂壁と係止めした状態で、前記回路基板から固定子外径方向に伸びた少なくとも1つの架橋部分により外径樹脂壁に係止めしたことを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記回路基板に備えた磁極位置検出素子は、前記回路基板から回転軸方向に平行に伸びて、前記絶縁部材を介して直接巻線を巻き付けた前記固定子の歯部間に配置させたことを特徴とする請求項1項または請求項2項記載の電動機。
【請求項4】
前記固定子のスロット数が12スロットであり、前記回転子の磁極を10極としたことを特徴とした請求項3項記載の電動機。
【請求項5】
前記電動機を駆動源に用いた請求項1及至請求項4項いずれかに記載の空気圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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