説明

電動歯ブラシ

【課題】使用者が手で握る部分の振動を抑制しつつ、振動エネルギーの損失の抑制を図った電動歯ブラシを提供する。
【解決手段】モータ305を含む各種部品を搭載する、内ケース本体303とモータホルダ304からなる内ケースと、内ケースが内部に収納されると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケース301と、軸心からずれた位置に重心が設けられ、モータ305による駆動力によって回転する、軸本体306と偏心部材307とから構成される偏心軸と、偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部202に伝える振動伝達部品100と、を備えた電動歯ブラシ10において、振動伝達部品100は、外ケース301の内壁面に複数個所で点接触することにより、外ケース301に対して位置決めされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に振動源を設け、振動源からの振動をブラシ部に伝えるように構成された電動歯ブラシが知られている。このような電動歯ブラシにおいては、歯磨きの効果を発揮させ、かつ使用者自身が歯を磨いているという実感が十分得られるようにするために、ブラシ部を十分に振動させる必要がある。一方、歯磨き時に使用者が握る部分の振動が大き過ぎると、使用者が不快に感じる場合もあるため、当該部分はあまり振動しないほうが望ましい。
【0003】
そこで、ブラシ部については十分に振動させて、使用者が手で握る部分についてはあまり振動させないようにさせるために、先端にブラシ部が設けられている部品の反対側の端部の辺りに振動を吸収する防振部材を設けることも考えられる。しかしながら、防振部材により振動を吸収させることは、振動源により発生された振動エネルギーの一部が失われることになるため、エネルギー効率上は望ましいことではない。
【0004】
このように、ブラシ部を十分に振動させつつ、使用者が手で握る部分の振動を抑制させ、かつ振動エネルギーの損失を抑制することは技術的な困難性を伴うものである。
【0005】
また、偏心軸の軸受をブラシ部の近くに設けておくことで、ブラシ部を振動させる技術が知られているが(特許文献3)、このような技術においては、摺動抵抗の増大や、動作音や振動の増大といった問題を抱えている。
【0006】
なお、関連する技術としては、特許文献1,2に開示されたものがある。
【特許文献1】特公平6−34796号公報
【特許文献2】特開平8−117258号公報
【特許文献3】特開平10−192054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、使用者が手で握る部分の振動を抑制しつつ、振動エネルギーの損失の抑制を図った電動歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の電動歯ブラシは、
駆動源を含む各種部品を搭載する内ケースと、
該内ケースが内部に収納されると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケースと、
軸心からずれた位置に重心が設けられ、前記駆動源による駆動力によって回転する偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記外ケースの内壁面に複数個所で点接触することにより、該外ケースに対して位置決めされることを特徴とする。
【0010】
ここで、部材同士を点接触させる場合において、完全な点で接触させることは物理的に不可能であり、現実的には微小な面積の面で接触する。従って、本発明における「点接触」には、微小面積の面接触も含む。
【0011】
本発明によれば、振動伝達部品は、外ケースの内壁面に複数個所で点接触することにより、外ケースに対して位置決めされる構成である。そのため、振動伝達部品の振動が外ケースに伝わることを抑制できる。従って、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケースが振動してしまうことを抑制できる。また、振動伝達部品の動きは、外ケースによって、あまり制限されない。従って、振動伝達部品を、外ケースにあまり拘束されることなく自由に振動させることができる。これに伴い、振動エネルギーの損失を抑制することができる。
【0012】
また、前記振動伝達部品は、
前記偏心軸の軸受が設けられる硬質材からなるステムと、
該ステムに対して接触しないように設けられ、かつ前記内ケースに固定される硬質材からなるホルダと、
前記ステムとホルダとの間に挟み込まれるように介在する介在部、及び前記外ケースの内壁面に点接触する複数の突起部を有する弾性部材と、
を備えるとよい。
【0013】
このように構成すれば、振動伝達部品は、外ケースの内壁面に対して、弾性的に点接触するので、振動伝達部品の動きが外ケースによって制限されてしまうことを、より確実に防止できる。また、ステムとホルダとの間には弾性部材の介在部が介在するので、ステムの振動がホルダに伝わることを抑制できる。従って、ステムの振動がホルダを通じて内ケースに伝わることを抑制できる。また、内ケースに固定されるホルダは硬質材からなるため、振動伝達部品を内ケースに対してより確実に固定させることができる。さらに、偏心軸の軸受が設けられるステムは硬質材からなるので、偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝えるという振動伝達部品本来の機能も十分に発揮される。
【0014】
前記弾性部材はエラストマーを素材とする成形品であり、
前記振動伝達部品は、前記ステムとホルダをインサート部品として、インサート成形により一体成形されたものであるとよい。
【0015】
こうすることで、振動伝達部品を1部品として扱うことができ、かつステムと弾性部材との間、及び弾性部材とホルダとの間のシール性を十分に発揮させることができる。
【0016】
また、前記ステムと弾性部材との間、及び弾性部材とホルダとの間に、それぞれ回り止め構造を有するとよい。
【0017】
これにより、各部材同士が回転方向にずれてしまうことを防止できる。
【0018】
前記振動伝達部品は、
前記偏心軸の軸受が設けられる硬質材からなるステムと、
前記内ケースに固定されると共に、前記外ケースの内壁面に点接触する複数の突起部を有する弾性材からなるホルダと、
を備えることも好適である。
【0019】
このような構成を採用した場合においても、振動伝達部品は、外ケースの内壁面に対して、弾性的に点接触するので、振動伝達部品の動きが外ケースによって制限されてしまう
ことを、より確実に防止できる。また、ステムの振動が内ケースに伝わることを抑制できる。さらに、偏心軸の軸受が設けられるステムは硬質材からなるので、偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝えるという振動伝達部品本来の機能も十分に発揮される。
【0020】
前記外ケースと前記振動伝達部品との間の隙間を封止するシールリングが設けられているとよい。
【0021】
これにより、外ケースと振動伝達部品の間から水などが内部に浸入してしまうことを防止できる。
【0022】
また、前記ステムの内部の先端部分には、前記偏心軸と軸受との摺動部分に供給する潤滑剤を溜めておく空間領域が設けられているとよい。
【0023】
このように、空間領域に潤滑剤を溜めておけば、偏心軸と軸受との摺動部分に、潤滑剤を長期に亘って介在させておくことができるので、偏心軸と軸受との摺動状態を、長期に亘って安定させることができる。これにより、各部分の振動状態を長期に亘り安定させることが可能となる。また、これらのことから、摺動抵抗の増大を抑制することができ、異音の発生を抑制すると共に、振動の増大を抑制することもできる。
【0024】
前記空間領域は前記軸受よりも先端側に位置し、前記偏心軸の先端は、前記軸受よりも前記空間領域側に突き出ているとよい。
【0025】
これにより、偏心軸の先端が、潤滑剤に触れた状態となり、積極的に、潤滑剤を偏心軸と軸受との摺動部分に導くことが可能となる。
【0026】
また、前記振動伝達部品に装着される筒状部、及び該筒状部の先端に設けられるブラシ部を有し、かつ前記振動伝達部品に対して着脱自在に構成されるブラシ部品を備え、
該ブラシ部品が前記振動伝達部品に装着された状態では、前記筒状部における一方の端部付近と他方の端部付近が前記ステムに対して接触し、中間の部分では、前記筒状部の内壁面と前記ステムの外壁面との間に隙間が形成されるとよい。
【0027】
これにより、振動伝達部品からブラシ部品に対して、振動が直接的に伝達される箇所を限られた部分(つまり接触部分)にすることができ、極力、ブラシ部に対する振動伝達の効率を高めると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達を抑制することができる。
【0028】
前記筒状部と前記ステムとの接触は、周方向に対する複数個所での点接触、または周方向に対する複数個所での線接触であるとよい。
【0029】
これにより、より一層、振動伝達部品からブラシ部品に対して、振動が直接的に伝達される箇所を限られた部分にすることができる。
【0030】
ここで、「点接触」については、上記の通り、本発明においては、微小面積の面接触も含む。また、部材同士を線接触で接触させる場合においても、完全な線で接触させることは物理的に不可能であり、現実的には微小な面積の面で接触する。従って、本発明における「線接触」には、点接触の場合と同様に、微小面積の面接触も含む。
【0031】
また、本発明の電動歯ブラシは、
軸心からずれた位置に重心が設けられた偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記偏心軸の軸受が設けられるステムを備えており、
該ステムの内部の先端部分には、前記偏心軸と軸受との摺動部分に供給する潤滑剤を溜めておく空間領域が設けられていることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、空間領域に潤滑剤を溜めておくことで、偏心軸と軸受との摺動部分に、潤滑剤を長期に亘って介在させておくことができるので、偏心軸と軸受との摺動状態を、長期に亘って安定させることができる。これにより、各部分の振動状態を長期に亘り安定させることが可能となる。また、これらのことから、摺動抵抗の増大を抑制することができ、異音の発生を抑制すると共に、振動の増大を抑制することもできる。
【0033】
前記空間領域は前記軸受よりも先端側に位置し、前記偏心軸の先端は、前記軸受よりも前記空間領域側に突き出ているとよい。
【0034】
これにより、偏心軸の先端が、潤滑剤に触れた状態となり、積極的に、潤滑剤を偏心軸と軸受との摺動部分に導くことが可能となる。
【0035】
また、本発明の電動歯ブラシは、
軸心からずれた位置に重心が設けられた偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
該振動伝達部品に装着される筒状部、及び該筒状部の先端に設けられるブラシ部を有し、かつ前記振動伝達部品に対して着脱自在に構成されるブラシ部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記偏心軸の軸受が設けられるステムを備えており、
前記ブラシ部品が前記振動伝達部品に装着された状態では、前記筒状部における一方の端部付近と他方の端部付近が前記ステムに対して接触し、中間の部分では、前記筒状部の内壁面と前記ステムの外壁面との間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、振動伝達部品からブラシ部品に対して、振動が直接的に伝達される箇所を限られた部分(つまり接触部分)にすることができ、極力、ブラシ部に対する振動伝達の効率を高めると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達を抑制することができる。
【0037】
前記筒状部と前記ステムとの接触は、周方向に対する複数個所での点接触、または周方向に対する複数個所での線接触であるとよい。
【0038】
これにより、より一層、振動伝達部品からブラシ部品に対して、振動が直接的に伝達される箇所を限られた部分にすることができる。
【0039】
また、前記偏心軸は、軸本体と該軸本体よりもブラシ部側に設けられる偏心部材とから構成されており、
前記軸本体は、
前記偏心部材に接続される第1軸部材と、
第1軸部材に対して前記偏心部材とは反対側に接続され、かつ第1軸部材よりも柔軟性の高い第2軸部材と、
を備えるとよい。
【0040】
これにより、偏心部材により発生する振動を、第2軸部材によって吸収することができるので、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達をより一層抑制することができ
る。
【0041】
第2軸部材の中央部分には、その外径が第1軸部材の外径よりも小さな小径部分を有するとよい。
【0042】
これにより、偏心部材側から歯磨き時に使用者が手で握る部分側への振動の伝達をより一層抑制することができる。
【0043】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、使用者が手で握る部分の振動を抑制しつつ、振動エネルギーの損失の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0046】
(実施例1)
図1〜図10を参照して、本発明の実施例1に係る電動歯ブラシについて説明する。
【0047】
<電動歯ブラシの概略構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係る電動歯ブラシの概略構成を説明する。図1は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシの外観斜視図である。図2は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおいて、キャップとブラシ部品を取り外した状態を示す斜視図である。
【0048】
本実施例に係る電動歯ブラシ10は、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケース301と、外ケース301の先端側に設けられるブラシ部品200と、外ケース301の後端側に設けられるキャップ302とを備えている。
【0049】
外ケース301は、筒状の部材により構成されており、その内部には、各種部品を搭載する内ケースが収納される。また、外ケース301には、電源をオンまたはオフに切り替えるためのスイッチボタンSが設けられている。
【0050】
そして、この外ケース301の先端側からは、ブラシ部品200に振動を伝えるための振動伝達部品100が、外ケース301の内部から外部に向かって突き出るように設けられている。ブラシ部品200は、この振動伝達部品100を覆うように振動伝達部品100に装着される。このブラシ部品200は、振動伝達部品100に装着される筒状部201と、この筒状部201の先端に設けられるブラシ部202とを備えている。また、ブラシ部品200は消耗部品であり、適時、新品のものに交換することができるように、振動伝達部品100に対して着脱自在に構成されている。
【0051】
また、外ケース301の後端側からは、内ケースを構成する内ケース本体303の一部が外ケース301の内部から外部に向かって飛び出すように設けられる。これにより、キャップ302を外すことによって内ケース本体303の一部が開放され、電池Dを交換することができる。
【0052】
<電動歯ブラシの内部構成>
特に図3〜図6を参照して、本発明の実施例1に係る電動歯ブラシ10の内部構成について説明する。図3は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシを分解した斜視図である。図4は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシの断面図である。なお、図4は電動歯ブラシの中心軸を通るように切断した断面図(長手方向の断面図)である。図5は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおける内ケースと振動伝達部品との固定構造を示す斜視図である。図6は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおける振動伝達部品と内ケースに搭載される一部の部品について更に分解した斜視図である。
【0053】
外ケース301の内部には、内ケース本体303とモータホルダ304からなる内ケースが収納される。この内ケースには、駆動源となるモータ305やモータ305に電気を供給するための電源となる電池Dが搭載される。また、内ケース本体303には、電源をオンまたはオフに切り替えるためのスイッチ303aが設けられている。上記の外ケース301に設けられたスイッチボタンSが押されることによって、この内ケース本体303に設けられたスイッチ303aが押されるように構成されている。
【0054】
また、モータ305はモータホルダ304にビスBによって固定され、このモータホルダ304は、図5に示すようにビスBによって内ケース本体303に固定される。そして、モータホルダ304に固定されるモータ305の軸に対して、軸本体306と偏心部材307とから構成される偏心軸が同軸的に固定される。この偏心軸の先端(より具体的には偏心部材307の先端)は、振動伝達部品100の内部に設けられる軸受400に回転自在な状態で支持される。なお、偏心軸と軸受400との間には微小なクリアランスが設けられる。
【0055】
モータホルダ304には、複数の係止突起304aが備えられており、振動伝達部品100には、これらの係止突起304aに係止される複数の貫通孔121が設けられている。これら複数の係止突起304aが複数の貫通孔121にそれぞれ係止されることによって、振動伝達部品100は内ケースを構成するモータホルダ304に固定される。
【0056】
このように、振動伝達部品100は、内ケース本体303とモータホルダ304からなる内ケースに固定される(図3参照)。そして、振動伝達部品100を内ケースに固定させた状態で、外ケース301の後端側の開口部から、内ケースに固定された振動伝達部品100を差し込み、振動伝達部品100を外ケース301の先端側の開口部から突き出すようにして、これら振動伝達部品100及び内ケースを外ケース301に装着させる。
【0057】
ここで、振動伝達部品100にはシールリングS2が装着されており、振動伝達部品100が外ケース301内に装着されると、シールリングS2は、外ケース301の開口端部付近の内周面に密着する。これにより、外ケース301と振動伝達部品100との間の隙間が封止され、これらの間から水などが浸入してしまうことを防止できる。
【0058】
また、外ケース301の後端の外周面にはオネジ301aが設けられ、キャップ302の開口端部内周にはメネジ302aが設けられている。これらオネジ301aとメネジ302aとの螺合によって、キャップ302は外ケース301に固定される。そして、外ケース301の外周面であって、キャップ302の先端部に相当する付近にはシールリングS1が装着されている。これにより、キャップ302を外ケース301に固定すると、キャップ302の先端がシールリングS1に密着する。これにより、外ケース301とキャップ302との間の隙間は封止され、これらの間から水などが内部に浸入してしまうことを防止できる。
【0059】
<振動伝達部品>
特に図7〜図10を参照して、本発明の実施例1に係る振動伝達部品100について、更に詳しく説明する。図7は本発明の実施例1に係る振動伝達部品の平面図である。図8は本発明の実施例1に係る振動伝達部品の断面図である。なお、図8は図7のAA断面図である。図9は本発明の実施例1に係る振動伝達部品を先端側から見た斜視図である。図10は本発明の実施例1に係る振動伝達部品を後端側から見た斜視図である。
【0060】
本実施例に係る振動伝達部品100は、硬質材(例えば樹脂材)からなるステム110と、ステム110に対して接触しないように設けられる硬質材(例えば樹脂材)からなるホルダ120と、エラストマーを素材とする弾性部材130とから構成される。そして、本実施例に係る振動伝達部品100においては、弾性部材130は金型によって成形される成形品であり、ステム110とホルダ120をインサート部品として、インサート成形により一体成形されたものである。
【0061】
ステム110は先端が閉じた筒状の部材であり、筒の内部の先端に、軸受400を固定する固定部111が設けられている。また、ステム110の開口端部付近の外壁面には、複数の突起112が設けられている。これらの突起112によって、弾性部材130が回転方向にずれてしまうことを防止することができる。
【0062】
更に、ステム110の外壁面には、ブラシ部品200を固定するための嵌合突起113も設けられている。一方、ブラシ部品200における筒状部201の内壁面には、この嵌合突起113が嵌合するL字形状の溝203(図4参照)が設けられている。このような構成により、嵌合突起113が筒状部201の溝203に沿うように、筒状部201を軸方向に嵌めてから少しだけ回転させることによって、ブラシ部品200をステム110に固定することができる。
【0063】
ホルダ120は、その内径がステム110の外径よりも大きな筒状部材である。そして、ホルダ120の後端付近には、上記のように、モータホルダ304に設けられた複数の係止突起304aにそれぞれ係止される複数の貫通孔121が設けられている。
【0064】
弾性部材130は、ステム110とホルダ120との間に挟みこまれるように介在する介在部132と、ホルダ120に設けられた複数の貫通孔122からそれぞれ突出するように設けられた複数(本実施例では3個)の突起部131とを備えている。また、弾性部材130における介在部132とホルダ120との密着部分における軸に垂直な方向の形状は、非円形(本実施例では、円に対して、3箇所直線で切断した形状(図10参照))となっている。これにより、弾性部材130がホルダ120に対して回転方向にずれてしまうことを防止することができる。
【0065】
以上のように構成される振動伝達部品100を、外ケース301内に装着させると、振動伝達部品100のうち弾性部材130に設けられた複数の突起部131のみが外ケース301の内壁面に点接触(微小面積の面接触)により接触する。これにより、振動伝達部品100は、外ケース301に対して、複数個所の点接触のみによって位置決めされる。本実施例では、上記の通り突起部131は3個設けられており、3点接触により位置決めされる。
【0066】
<電動歯ブラシの動作説明>
上記のように構成された電動歯ブラシ10の動作について説明する。スイッチボタンSにより電源をオンにすると、モータ305の軸が回転し、この軸に固定された偏心軸(軸本体306と偏心部材307とから構成される)が回転する。偏心部材307は、その重心が軸心からずれた位置に設けられている。そのため、仮に、偏心軸の先端を軸受400によって支持させていない状態で偏心軸を回転させると、偏心部材307は、偏心部材3
07自体が回転しながら、軸心の回りに旋回するように運動する。これにより、軸受400によって偏心軸を支持させた状態で偏心軸を回転させると、偏心軸の先端付近の外壁面が軸受400の内壁面に対して短時間に多数回の衝突を繰り返すような動作を行わせることができる。
【0067】
このような動作を行わせることで、軸受400を介して、軸受400が固定されたステム110を振動させることができる。そして、このステム110を振動させることにより、その振動をステム110に固定されたブラシ部品200に伝えることができる。従って、ブラシ部品200の振動により、ブラシ部202が振動するため、ブラシ部202を歯に当てることで歯を磨くことができる。
【0068】
<本実施例の優れた点>
以上のように、本実施例に係る電動歯ブラシ10によれば、振動伝達部品100は、外ケース301の内壁面に複数個所(本実施例では3箇所)で点接触することにより、外ケース301に対して位置決めされる構成である。
【0069】
そのため、振動伝達部品100の振動が外ケース301に伝わることを抑制できる。これにより、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケース301が振動してしまうことを抑制できる。従って、歯磨き時に使用者が不快に感じてしまうことを抑制できる。
【0070】
また、振動伝達部品100は外ケース301に対して複数個所の点接触により位置決めされるだけなので、振動伝達部品100の動きは、外ケース301によって、あまり制限されない。そのため、振動伝達部品100を、外ケース301にあまり拘束されることなく自由に振動させることができる。これに伴い、振動エネルギーの損失を抑制することができる。従って、少ない電力で、効率良く、振動伝達部品100及びこれに固定されたブラシ部品200を大きく振動させることできる。
【0071】
また、本実施例においては、振動伝達部品100は、上記の通り、硬質材からなるステム110と、同じく硬質材からなるホルダ120と、エラストマーからなる弾性部材130とから構成される。
【0072】
そして、弾性部材130に設けられた複数の突起部131が外ケース301の内壁面に点接触する構成である。従って、振動伝達部品100は、外ケース301の内壁面に対して、弾性的に点接触するので、振動伝達部品100の動きが外ケース301によって制限されてしまうことを、より確実に防止できる。
【0073】
また、ステム110とホルダ120との間には弾性部材130の介在部132が介在するので、ステム110の振動がホルダ120に伝わることを抑制できる。従って、ステム110の振動がホルダ120を通じて内ケース(より具体的には、ホルダ120からモータホルダ304を通じて内ケース本体303)に伝わり、その振動が更に外ケース301に伝わることを抑制できる。
【0074】
ここで、ステム110とホルダ120との間に介在部132を介在させることで、ステム110の振動がホルダ120に伝わることを抑制できる理由の一つとして、弾性部材130による振動エネルギーの吸収を挙げることができる。ただし、本実施例においては、外ケース301及び内ケースによって振動伝達部品100を支持しつつも、振動伝達部品100が可及的に自由に振動できるように構成したことに特徴がある。つまり、振動エネルギーを吸収することによって外ケース301に対して振動が伝わらないようにするのではなく、振動伝達部品100を自由に振動させることによって外ケース301に対して振動が伝わらないような構成を採用している。そのため、介在部132による振動エネルギ
ーの吸収量を大きくする必要はない。従って、介在部132による振動エネルギーの吸収量は、エネルギー損失が問題にならない程度に小さく設定すればよい。
【0075】
ここで、上記の通り、ブラシ部品200をステム110に取り付ける場合(取り外す場合も同様)には、ブラシ部品200を回転させる動作が伴うため、ステム110に回転力が加わる場合がある。しかし、本実施例においては、内ケースに固定されるホルダ120は硬質材からなるため、振動伝達部品100を内ケースに対してより確実に固定させることができ、ステム110に回転力が加わっても、振動伝達部品100のホルダ120が内ケースから外れてしまうことを抑制できる。より具体的には、モータホルダ304に設けられた係止突起304aがホルダ120に設けられた貫通孔121から外れてしまうことを抑制できる。
【0076】
さらに、偏心軸の軸受400が設けられるステム110は硬質材からなるので、偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部202に伝えるという振動伝達部品本来の機能も十分に発揮される。
【0077】
また、本実施例においては、弾性部材130はエラストマーを素材とする成形品であり、振動伝達部品100は、ステム110とホルダ120をインサート部品として、インサート成形により一体成形されたものである。
【0078】
従って、振動伝達部品100を1部品として扱うことができ、取扱性に優れ、電動歯ブラシ10を組み立てる際の組立作業性にも優れる。また、ステム110と弾性部材130との間、及び弾性部材130とホルダ120との間のシール性に優れ、別途、シール部材を装着したり、これらの部材同士を接着剤により接着させたりする必要もない。
【0079】
そして、本実施例においては、上記の通り、ステム110の開口端部付近の外壁面に、複数の突起112を設けることによって、弾性部材130がステム110に対して回転方向にずれてしまうことを防止している。また、ホルダ120と弾性部材130における介在部132との密着部分における軸に垂直な方向の形状を非円形にすることによって、弾性部材130がホルダ120に対して回転方向にずれてしまうことも防止している。
【0080】
このように本実施例では、ステム110と弾性部材130との間、及び弾性部材130とホルダ120との間に、それぞれ回り止め構造を有するようにしている。
【0081】
このような回り止め構造を採用したことにより、上記の通り、ブラシ部品200をステム110に取り付けたり取り外したりする場合に、ステム110に回転力が加わる場合があるが、そのような場合でも、各部材同士が回転方向にずれてしまうことを防止できる。従って、これらの部材間のシール性が損なわれてしまうことを抑制できる。
【0082】
(実施例2)
図11には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、ホルダと内ケースとの固定をより確実にするために、ホルダを硬質材により構成する場合について説明した。しかしながら、ステムに回転力が加わることがないように構成されているような場合など、ホルダの内ケースに対する固定力をそれほど高くする必要がない場合もある。そこで、本実施例では、ホルダの部分についてもエラストマーにより構成する場合の例を示す。なお、振動伝達部品以外の構成および作用については実施例1と同一なので、その説明は省略する。
【0083】
図11は本発明の実施例2に係る振動伝達部品の断面図である。なお、図11における断面は、上記実施例1において示した図8と同じ位置の断面を示している。
【0084】
本実施例に係る振動伝達部品100aは、硬質材(例えば樹脂材)からなるステム110と、エラストマーを素材とするホルダ140とから構成される。そして、本実施例に係る振動伝達部品100aにおいては、ホルダ140は金型によって成形される成形品であり、ステム110をインサート部品として、インサート成形により一体成形されたものである。
【0085】
ステム110の構成に関しては、上記実施例1と同一であるので、その説明は省略する。本実施例においては、上記実施例1におけるホルダ120に相当する部分と、弾性部材130に相当する部分とを一体的にしてホルダ140を構成したものである。そして、このホルダ140に、複数の突起部141を設けている。これらの突起部141は、上記実施例1における弾性部材130に備えられた突起部131と同一の機能を発揮するものである。また、ホルダ140の後端付近には、複数の貫通孔142を設けている。これら複数の貫通孔142は、モータホルダ304に設けられた係止突起304aに係止されるものであることについても実施例1の場合と同様である。
【0086】
以上のように、本実施例に係る振動伝達部品100aを採用した場合においても、ホルダの内ケースに対する固定力が実施例1よりも劣ることを除いては、実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0087】
(実施例3)
図12には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1及び実施例2では、振動伝達部品を、外ケースの内壁面に対して弾性的に点接触させ、かつ、ステムと内ケースとの間にエラストマーを素材とする部材を介在させるように構成する場合について説明した。しかしながら、振動伝達部品を、外ケースの内壁面に対して点接触により接触させさえすれば、点接触させる部分が硬質なものであっても、振動伝達部品をある程度自由に振動させることができ、外ケースへの振動の伝達もある程度防ぐことができる。また、内ケースに対して伝わる振動はそれほど問題にならないこともある。そこで、本実施例では、振動伝達部品が硬質材により構成された単一の部材により構成される場合の例を示す。なお、振動伝達部品以外の構成および作用については実施例1と同一なので、その説明は省略する。
【0088】
図12は本発明の実施例3に係る振動伝達部品の断面図である。なお、図12における断面は、上記実施例1において示した図8と同じ位置の断面を示している。
【0089】
本実施例に係る振動伝達部品100bは、硬質材(例えば樹脂材)からなる単一の部材により構成されている。この振動伝達部品100bは、上記実施例1におけるステム110に相当する部分と、ホルダ120に相当する部分と、弾性部材130に相当する部分とを、硬質材によって一体的に構成したものである。従って、本実施例に係る振動伝達部品100bも、上記各実施例の場合と同様に、各実施例におけるステムに相当するステム部150を備えている。そして、このステム部150の内部の先端には、軸受400を固定するための固定部151が設けられている。また、ホルダに相当する位置には、複数の突起部152及び複数の貫通孔153が設けられている。突起部152は上記実施例1における弾性部材130に備えられた突起部と同様の機能を発揮するものである。また、貫通孔153はモータホルダ304に設けられた係止突起304aに係止されるものである。
【0090】
以上のように、本実施例に係る振動伝達部品100bを採用した場合においても、振動の伝達抑制能力が実施例1の場合よりも劣るものの、基本的には実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、振動伝達部品100bが単一の部材によって構成されるため、実施例1の場合よりも構成を簡易的にすることができるとい
う利点がある。
【0091】
(実施例4)
図13には、本発明の実施例4が示されている。本実施例では、偏心軸の先端に形成されている空間領域を、潤滑剤としての潤滑油を溜めておくための油溜りとして利用する場合の例を説明する。なお、これまで説明した各実施例において同一の構成部分については同一の符号を付して、適宜、その説明は省略する。
【0092】
図13は本発明の実施例4に係る電動歯ブラシの模式的断面図の一部である。なお、図13中、丸で囲った図は、軸受の付近を拡大した図である。
【0093】
実施例1で説明したように、振動伝達部品100を構成するステム110の内部の先端付近に、軸受400が設けられている。そして、軸本体306と偏心部材307とから構成される偏心軸の先端(より具体的には偏心部材307の先端)は、この軸受400に回転自在な状態で支持される。
【0094】
ここで、ステム110の内部の先端部分であって、偏心軸よりも先端側には、空間領域115が形成されている。なお、この空間領域115が形成されていることに関しては、これまで参照した図からも明らかなように、上記各実施例の場合も同様である。
【0095】
そして、本実施例では、この空間領域115を、潤滑油Oを溜めておくための油溜りとして利用する構成を採用した。すなわち、偏心軸と軸受400との摺動部分Xには、潤滑剤として、潤滑油Oを介在させている。しかしながら、経時的な使用によって、潤滑油Oは徐々に減ってしまうため、摺動抵抗が増加してしまい、動作音が大きくなり、振動が増大してしまうなど、品質の低下を招いてしまう。そこで、上記の通り、空間領域115に潤滑油Oを溜めておくことで、随時、摺動部分Xに潤滑油を供給できるようにした。
【0096】
これにより、摺動部分Xに、潤滑油Oを長期に亘って介在させておくことができるので、偏心軸と軸受400との摺動状態を、長期に亘って安定させることができる。従って、各部分の振動状態を長期に亘り安定させることが可能となる。また、これらのことから、摺動抵抗の増大を抑制することができ、異音(動作音)の発生を抑制すると共に、振動の増大を抑制することもできる。また、消費電流を低減できる効果もある。
【0097】
また、本実施例では、偏心軸の先端307aが、軸受400よりも空間領域115側に突き出るように構成している。これにより、偏心軸の先端307aの辺りは、潤滑油Oに触れた状態となるため、積極的に、潤滑油Oを偏心軸と軸受400との摺動部分Xに導く(引き込む)ことが可能となる。従って、摺動部分Xへの潤滑油Oの供給を、安定的に行わせることができる。
【0098】
なお、ステム110の内部の先端付近に、軸受400を別部材として設けた理由は、耐摩耗性を高めるためである。すなわち、ステム110に適した素材(例えばPOM)では、十分な耐磨耗性を得られないことがあるため、本実施例では、耐磨耗性に優れた素材を用いた軸受400を設けている。軸受400の素材としては、含油樹脂や含油メタルなどを好適に適用できる。また、別部材として軸受400を設けることによって、円芯度を高め易いという効果もある。
【0099】
(実施例5)
図14〜図18には、本発明の実施例5が示されている。本実施例では、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達を、より一層抑制するための構成を説明する。ここで、本実施例に示す構成は、これまで参照した図にも殆ど示されているように、上記の各実
施例でも採用している構成であるが、本実施例では、より詳しく説明する。なお、これまで説明した各実施例において同一の構成部分については同一の符号を付して、適宜、その説明は省略する。
【0100】
図14は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシの模式的断面図の一部である。図15は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシのブラシ部品の辺りの一部透視斜視図である。図16は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシのブラシ部品の辺りの一部透視側面図である。図17は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシにおけるブラシ部品の一部破断斜視図である。なお、図17における破断面は、図16中のAA断面に相当する。図18は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシにおけるブラシ部品とステムとの接触状態を説明する図である。なお、図18中のブラシ部品の断面図は図16中のAA断面に相当する。
【0101】
実施例1で説明したように、ブラシ部品200は、振動伝達部品100を覆うように振動伝達部品100に装着される。そして、既に説明しているように、このブラシ部品200は、振動伝達部品100に装着される筒状部201と、この筒状部201の先端に設けられるブラシ部202とを備えている。また、ブラシ部品200は消耗部品であり、適時、新品のものに交換することができるように、振動伝達部品100に対して着脱自在に構成されている。
【0102】
そして、ブラシ部品200が振動伝達部品100に装着された状態では、筒状部201における先端付近Fと後端付近Rがステム110に対して接触し、中間の部分では、筒状部201の内壁面とステム110の外壁面との間に隙間Cが形成される。
【0103】
また、筒状部201とステム110との接触している部分においては、これらの接触が、周方向に対して複数の箇所で点接触(または線接触)となるようにしている。勿論、「点接触」または「線接触」といっても、完全な点や線で接触させることは物理的に不可能であり、現実的には微小な面積の面で接触する。従って、実際上は、できる限り微小な面で接触させることを意味する。
【0104】
以下、接触状態について、より具体的に説明する。図17及び図18には、筒状部201の先端付近Fであって、筒状部201とステム110とが接触する領域における筒状部201の断面を示している。
【0105】
本実施例では、筒状部201の先端付近Fにおける内壁面には、3箇所に平面部201aが設けられている。これにより、筒状部201の内壁面における軸に垂直な断面形状は、多くの部分が円形となるように設計されているが、先端付近Fにおいては、円の一部(3箇所)が直線状となる。
【0106】
一方、ステム110の外壁面は、先端に向かうにつれて径が小さくなるようなテーパ面で構成されており、軸に垂直な断面形状はどこの部分においても円形となっている。なお、図18中、点線で示す110Xは、ステム110の外壁面の表面の位置を示している。
【0107】
以上のような構成により、筒状部201の先端付近Fにおいては、ステム110は、図18に示すように、筒状部201の内壁面のうち3箇所の平面部201aに対してのみ接触する。従って、筒状部201の先端付近Fにおいては、筒状部201とステム110とは、周方向に対して3箇所で、点接触または線接触するように構成されている。
【0108】
また、筒状部201の後端付近Rにおいては、筒状部201とステム110は、実施例1で説明した筒状部201に設けられたL字形状の溝203とステム110に設けられた嵌合突起113の部分のみで、点接触または線接触するように構成されている。なお、L
字形状の溝203及び嵌合突起113は、周方向に対してそれぞれ2箇所設けられている。
【0109】
従って、筒状部201の後端付近Rにおいては、筒状部201とステム110とは、周方向に対して2箇所で、点接触または線接触するように構成されている。
【0110】
以上のように、本実施例によれば、振動伝達部品100からブラシ部品200に対して、振動が直接的に伝達される箇所を限られた部分(つまり接触部分)にすることができ、極力、ブラシ部202に対する振動伝達の効率を高めると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達を抑制することができる。
【0111】
特に、本実施例では、振動を発生させる要因である偏心軸の軸受400の付近(ブラシ部202が設けられている先端の付近)で、筒状部201とステム110が接触するようにしているので、ブラシ部202に対して、極めて効率的に振動を伝達させることができる。これにより、後端側への振動の伝達を抑制することができ、歯磨き時に使用者が手で握る部分への振動の伝達を効果的に抑制することができる。ここで、筒状部201とステム110とを先端付近Fと後端付近Rの2箇所のみで接触させて、中間の部分では、これらが接触しないように隙間Cを形成させるようにしたことによって、ブラシ部202に対する振動伝達の効率を高めることができる理由について、更に詳細に説明する。振動伝達の面だけで考えれば、ブラシ部202に近い、偏心部材307の付近(先端付近F)でのみ、筒状部201とステム110とを接触させた状態で、ブラシ部品200が振動伝達部品100に保持されるようにするのが理想的である。しかしながら、筒状部201とステム110との接触部分を先端付近Fのみにすると、ブラシ部品200を保持する保持力が十分に得られず、ユーザが歯を磨いている最中に、ブラシ部品200が振動伝達部品100から外れてしまう虞がある。そこで、使用中にブラシ部品200が外れてしまうことがないように、ブラシ部品200を振動伝達部品100に安定的に保持させるために、上記の通り、筒状部201とステム110とを先端付近Fと後端付近Rの2箇所で接触させた状態で、ブラシ部品200を保持するようにしている。一方、仮に、上記の隙間Cをなくすなど、筒状部201とステム110とを大きな面積で接触させた場合には、ステム110側の振動が筒状部201全体に亘って伝わってしまうため、ブラシ部202付近への振動伝達の効率が低下してしまう。先端付近Fと後端付近Rの2箇所で接触させている理由は、以上の通りである。
【0112】
また、本実施例では、偏心軸の軸本体306が、偏心部材307に接続される第1軸部材308と、第1軸部材308に対して偏心部材307とは反対側に接続され、かつ第1軸部材308よりも柔軟性の高い第2軸部材309とから構成されている。ここで、第2軸部材309は、その一端側に、第1軸部材308の先端部を嵌め込む第1嵌め込み部309aが備えられ、その他端側に、駆動源であるモータ側の軸の先端を嵌め込む第2嵌め込み部309bが備えられている。また、第1嵌め込み部309aと第2嵌め込み部309bとの間には、第1軸部材308の外径よりも小さな小径部分309cが備えられている。第1軸部材308に使用する材料は、例えば偏心部材307と同じ材質であって良い。例えば真鍮やタングステンのような比重の高い金属が挙げられる。また、偏心部材307とは別の樹脂で構成されても良い。例えばポリカーボネート(PC(polycarbonate))等の前記比重の高い金属ほど硬くない材質を用いることも好適である。一方、第2軸部材309の材料としてはTPE(thermoplastic elastomer)等で代表されるエラストマーが好適である。そして、第1軸部材308を樹脂で構成し、第2軸部材307をエラストマーで構成する場合、一体成形で製造効率を上げて作ることができる。
【0113】
このように、偏心軸を構成する軸本体306のモータ側を、柔軟性の高い第2軸部材3
09によって構成したことにより、第2軸部材309によって、振動を吸収することができる。これにより、偏心部材307の部分で発生する振動が、偏心軸を通して後端側に伝達される過程で、第2軸部材309の部分で振動を吸収することができる。従って、偏心部材307側から偏心軸を通じて、歯磨き時に使用者が手で握る部分側への振動の伝達を抑制することができる。ここで、小径部分309cの軸方向の長さや直径を調整することによって、振動の伝達量(振動吸収量)を調整(最適化)することができる。また、軸本体306の一部を柔軟性の高い第2軸部材309により構成したことで、振動吸収効果の他にも次のような効果がある。すなわち、本実施例に係る電動歯ブラシ10を使用する場合、ユーザは、ブラシ部202の先端を歯に押し当てるようにして歯を磨く。そのため、ユーザによっては、ブラシ部202を、歯に対して必要以上に強い力で押し当てることが想定される。その場合、偏心軸は、力が作用する作用点から離れた位置(モータの出力軸の辺り)を支点として、屈曲した状態で、かつ偏心による振動を伴いながら回転することになる。そのため、屈曲した部分(支点の部分)に負担がかかり、経時的な劣化によって破損が生じ易く寿命を短くする原因となってしまう。そこで、本実施例では、偏心軸のうち、モータ側の軸の先端に近い部分を、柔軟性の高い第2軸部材309により構成することによって、偏心軸が屈曲する場合には、第2軸部材309の部分(特に小径部分309c)で屈曲するようにし、屈曲した状態で使用された場合でも、経時的に劣化しにくい(破損し難い)ようにした。なお、この小径部分309cは振動を効果的に吸収できる部分でもある。
【0114】
なお、上記の通り、筒状部201とステム110とは、先端付近Fと後端付近Rでのみ接触させて、中間部分では隙間Cを設けている構成、及び、偏心軸の軸本体306が、第1軸部材308とこの第1軸部材308よりも柔軟性の高い第2軸部材309とを備えている構成については、上記各実施例でも採用している。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシの外観斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおいて、キャップとブラシ部品を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシを分解した斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシの断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおける内ケースと振動伝達部品との固定構造を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の実施例1に係る電動歯ブラシにおける振動伝達部品と内ケースに搭載される一部の部品について更に分解した斜視図である。
【図7】図7は本発明の実施例1に係る振動伝達部品の平面図である。
【図8】図8は本発明の実施例1に係る振動伝達部品の断面図である。
【図9】図9は本発明の実施例1に係る振動伝達部品を先端側から見た斜視図である。
【図10】図10は本発明の実施例1に係る振動伝達部品を後端側から見た斜視図である。
【図11】図11は本発明の実施例2に係る振動伝達部品の断面図である。
【図12】図12は本発明の実施例3に係る振動伝達部品の断面図である。
【図13】図13は本発明の実施例4に係る電動歯ブラシの模式的断面図の一部である。
【図14】図14は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシの模式的断面図の一部である。
【図15】図15は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシのブラシ部品の辺りの一部透視斜視図である。
【図16】図16は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシのブラシ部品の辺りの一部透視側面図である。
【図17】図17は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシにおけるブラシ部品の一部破断斜視図である。
【図18】図18は本発明の実施例5に係る電動歯ブラシにおけるブラシ部品とステムとの接触状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0116】
10 電動歯ブラシ
100,100a,100b 振動伝達部品
110 ステム
111 固定部
112 突起
113 嵌合突起
115 空間領域
120 ホルダ
121 貫通孔
122 貫通孔
130 弾性部材
131 突起部
132 介在部
140 ホルダ
141 突起部
142 貫通孔
150 ステム部
151 固定部
152 突起部
153 貫通孔
200 ブラシ部品
201 筒状部
201a 平面部
202 ブラシ部
203 溝
301 外ケース
301a オネジ
302 キャップ
302a メネジ
303 内ケース本体
303a スイッチ
304 モータホルダ
304a 係止突起
305 モータ
306 軸本体
307 偏心部材
307a (偏心軸の)先端
308 第1軸部材
309 第2軸部材
309a 第1嵌め込み部
309b 第2嵌め込み部
309c 小径部分
400 軸受
B ビス
C 隙間
D 電池
F 先端付近
O 潤滑油
R 後端付近
S スイッチボタン
S1 シールリング
S2 シールリング
X 摺動部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を含む各種部品を搭載する内ケースと、
該内ケースが内部に収納されると共に、歯磨き時に使用者が手で握る部分となる外ケースと、
軸心からずれた位置に重心が設けられ、前記駆動源による駆動力によって回転する偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記外ケースの内壁面に複数個所で点接触することにより、該外ケースに対して位置決めされることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記振動伝達部品は、
前記偏心軸の軸受が設けられる硬質材からなるステムと、
該ステムに対して接触しないように設けられ、かつ前記内ケースに固定される硬質材からなるホルダと、
前記ステムとホルダとの間に挟み込まれるように介在する介在部、及び前記外ケースの内壁面に点接触する複数の突起部を有する弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記弾性部材はエラストマーを素材とする成形品であり、
前記振動伝達部品は、前記ステムとホルダをインサート部品として、インサート成形により一体成形されたものであることを特徴とする請求項2に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記ステムと弾性部材との間、及び弾性部材とホルダとの間に、それぞれ回り止め構造を有することを特徴とする請求項2または3に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記振動伝達部品は、
前記偏心軸の軸受が設けられる硬質材からなるステムと、
前記内ケースに固定されると共に、前記外ケースの内壁面に点接触する複数の突起部を有する弾性材からなるホルダと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記外ケースと前記振動伝達部品との間の隙間を封止するシールリングが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
前記ステムの内部の先端部分には、前記偏心軸と軸受との摺動部分に供給する潤滑剤を溜めておく空間領域が設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載の電動歯ブラシ。
【請求項8】
前記空間領域は前記軸受よりも先端側に位置し、
前記偏心軸の先端は、前記軸受よりも前記空間領域側に突き出ていることを特徴とする請求項7に記載の電動歯ブラシ。
【請求項9】
前記振動伝達部品に装着される筒状部、及び該筒状部の先端に設けられるブラシ部を有し、かつ前記振動伝達部品に対して着脱自在に構成されるブラシ部品を備え、
該ブラシ部品が前記振動伝達部品に装着された状態では、前記筒状部における一方の端部付近と他方の端部付近が前記ステムに対して接触し、中間の部分では、前記筒状部の内壁面と前記ステムの外壁面との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一つに記載の電動歯ブラシ。
【請求項10】
前記筒状部と前記ステムとの接触は、周方向に対する複数個所での点接触、または周方向に対する複数個所での線接触であることを特徴とする請求項9に記載の電動歯ブラシ。
【請求項11】
軸心からずれた位置に重心が設けられた偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記偏心軸の軸受が設けられるステムを備えており、
該ステムの内部の先端部分には、前記偏心軸と軸受との摺動部分に供給する潤滑剤を溜めておく空間領域が設けられていることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項12】
前記空間領域は前記軸受よりも先端側に位置し、
前記偏心軸の先端は、前記軸受よりも前記空間領域側に突き出ていることを特徴とする請求項11に記載の電動歯ブラシ。
【請求項13】
軸心からずれた位置に重心が設けられた偏心軸と、
該偏心軸の回転に伴って発生する振動をブラシ部に伝える振動伝達部品と、
該振動伝達部品に装着される筒状部、及び該筒状部の先端に設けられるブラシ部を有し、かつ前記振動伝達部品に対して着脱自在に構成されるブラシ部品と、
を備えた電動歯ブラシにおいて、
前記振動伝達部品は、前記偏心軸の軸受が設けられるステムを備えており、
前記ブラシ部品が前記振動伝達部品に装着された状態では、前記筒状部における一方の端部付近と他方の端部付近が前記ステムに対して接触し、中間の部分では、前記筒状部の内壁面と前記ステムの外壁面との間に隙間が形成されることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項14】
前記筒状部と前記ステムとの接触は、周方向に対する複数個所での点接触、または周方向に対する複数個所での線接触であることを特徴とする請求項13に記載の電動歯ブラシ。
【請求項15】
前記偏心軸は、軸本体と該軸本体よりもブラシ部側に設けられる偏心部材とから構成されており、
前記軸本体は、
前記偏心部材に接続される第1軸部材と、
第1軸部材に対して前記偏心部材とは反対側に接続され、かつ第1軸部材よりも柔軟性の高い第2軸部材と、
を備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の電動歯ブラシ。
【請求項16】
第2軸部材の中央部分には、その外径が第1軸部材の外径よりも小さな小径部分を有することを特徴とする請求項15に記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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