説明

電動自転車の駆動装置および電動自転車

【課題】部品点数を減らすことができ、出力軸の軽量化を促進することが可能な電動自転車の駆動装置を提供する。
【解決手段】出力輪体19が出力軸23の一端部に設けられて駆動力伝達体11に歯合し、出力軸23の他端部がブッシュ31に挿入され、出力軸23は他端部が開放された中空部29を内部に有し、ブッシュ31と電動駆動機3の回転駆動軸22とが歯車機構40を介して連動連結され、ブッシュ31は、出力軸23の他端部が挿入される筒状の本体部32と、本体部32に設けられた受け部33とを有し、且つ、第2の軸受36によって回転自在に支持され、受け部33は、一方向46において出力軸23の他端部に受けられると共に、他方向47において第2の軸受36に受けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏力による人力駆動力に、電動駆動機によって付与される補助駆動力を加えた駆動力で走行する電動自転車の駆動装置および電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動自転車としては、例えば図10,図11に示すように、人力駆動力としての踏力が加えられるペダル101と、ペダル101を踏み込むことで回転する前部スプロケット102と、後車輪(図示省略)に設けられた後部スプロケット(図示省略)と、前部スプロケット102と後部スプロケットとの間に巻回された無端状のチェン104と、チェン104に補助駆動力を付与する駆動装置105とを有するものがある。
【0003】
駆動装置105は、チェン104に歯合する出力スプロケット106と、この出力スプロケット106を回転駆動させるモータ107とを有している。出力スプロケット106は出力軸108の一端部に設けられ、出力軸108の他端部は円筒状のブッシュ109に挿入されている。出力軸108は、ブッシュ109に挿入される第1の軸部110と、第1の軸部110の他端に形成され且つ第1の軸部110より小径の第2の軸部111とを有している。
【0004】
出力軸108は第1および第2のベアリング114,115により回転自在に支持されている。このうち、第2のベアリング115は、第2の軸部111に外嵌され、車体フレーム(図示省略)に固定されたケース117内に取り付けられている。
【0005】
第1の軸部110の外周面とブッシュ109の内周面との間には一方向クラッチ118が設けられている。ブッシュ109には出力歯車119が外嵌されて一体に取り付けられている。モータ107の回転駆動軸120の先端部には駆動歯車部121が形成され、この駆動歯車部121に出力歯車119が歯合している。尚、出力歯車119と駆動歯車部121とにはそれぞれヘリカルギアが用いられている。
【0006】
また、出力軸108には、ブッシュ109に作用する他端部から一端部への一方向122のスラスト荷重F1を受ける円環状のスラストワッシャ123および止め輪124が外嵌されているとともに、上記スラスト荷重F1とは反対方向である他方向125のスラスト荷重F2を受ける円環状のスラストワッシャ126が外嵌されている。
【0007】
これによると、利用者がペダル101に踏力を作用させることにより、前部スプロケット102が回転し、チェン104が一方向へ回動する。この際、ペダル101からの踏力が検出され、この検出された踏力に応じた出力トルクでモータ107の回転駆動軸120が回転することにより、出力歯車119と共にブッシュ109が回転し、この回転が一方向クラッチ118を介して出力軸108に伝えられ、出力軸108と共に出力スプロケット106が一方向へ回転する。これにより、人力駆動力に補助駆動力を加えた総合駆動力がチェン104に付与され、チェン104を介して後車輪が回転駆動する。
【0008】
この際、回転している出力歯車119に一方向122のスラスト荷重F1(実線矢印参照)が発生することがあるため、ブッシュ109にも一方向122のスラスト荷重F1が作用し、このスラスト荷重F1はスラストワッシャ123および止め輪124によって受けられる。
【0009】
また、下り坂等において、ペダル101に踏力を作用させているが、検出された踏力が閾値よりも小さいと、モータ107が停止する。この場合、ペダル101からの踏力により、前部スプロケット102が回転し、チェン104が一方向へ回動し、出力スプロケット106と共に出力軸108が回転するが、この回転は、原則的に、一方向クラッチ118により遮断されてブッシュ109側に伝達されない。
【0010】
しかしながら、実際には、出力軸108と一方向クラッチ118との摩擦によって、出力軸108の回転力の一部が一方向クラッチ118を介してブッシュ109側に伝達されてしまうことがある。この場合、ブッシュ109と共に出力歯車119と回転駆動軸120とが僅かに回転し、出力歯車119に他方向125のスラスト荷重F2(点線矢印参照)が発生し、ブッシュ109にも他方向125のスラスト荷重F2が作用することがあるが、このスラスト荷重F2はスラストワッシャ126によって受けられる。
【0011】
また、出力軸108の一端部はケース117の外部へ露出しているため、出力軸108の表面は防錆処理の一種である黒染処理が施されている。この黒染処理とは、出力軸108を化成ソーダ水溶液に浸漬し、煮沸して、表面に酸化鉄の薄膜を生成する処理である。
【0012】
尚、上記のような電動自転車の駆動装置105については、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−341774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら上記の従来形式では、下記のような問題点がある。
一方向122のスラスト荷重F1を受けるスラストワッシャ123および止め輪124と、他方向125のスラスト荷重F2を受けるスラストワッシャ126とが必要であり、このため、駆動装置105の部品点数が増える。
【0015】
また、出力軸108の軽量化が困難である。例えば、図12に示すように、軽量化のために出力軸108に中空部130を形成することが考えられるが、出力軸108の一端部から孔あけ加工を行って、出力軸108の一端部が開放された中空部130を形成した場合、中空部130の開口端がカバー131の外部へ露出するため、中空部130の奥まで全て黒染処理する必要があり、黒染処理し難い。また、出力スプロケット106が回転している際、出力軸108の一端部における出力スプロケット106の取付部分に、応力が集中する傾向がある。これに対して、出力スプロケット106の取付部分における出力軸108の肉厚Tが薄くなるため、この部分の強度が不足する虞があり、中空部130の直径Dを大きくすることは困難である。
【0016】
また、反対に、出力軸108の他端部から孔あけ加工を行って、出力軸108の他端部が開放された中空部130を形成した場合、中空部130の直径Dを第1の軸部110よりも小径の第2の軸部111の直径dよりさらに小さくしなければならない。このようなことから、中空部130の直径Dを大きくすることは困難であり、出力軸108の軽量化は困難である。
【0017】
特に、法規等で規定されているアシスト率(人力駆動力に対する補助駆動力の比率)が引上げられた場合、モータ107から出力される補助駆動力が増大するので、一方向クラッチ118は補助駆動力に対して十分な強度を有していなければならず、このため、大型の一方向クラッチ118を使用する必要が生じる。この場合、一方向クラッチ118が大型化するのに応じて、出力軸108の径も太くなるため、益々、出力軸108の軽量化が困難になる。
【0018】
本発明は、部品点数を減らすことができ、出力軸の軽量化を促進することが可能な電動自転車の駆動装置および電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本第1発明は、踏力を車輪に伝達して車輪を回転させる駆動力伝達体に歯合する出力輪体と、この出力輪体を回転駆動させて駆動力伝達体に補助駆動力を付与する電動駆動機とを有する電動自転車の駆動装置であって、
出力輪体は出力軸の一端部に設けられ、
出力軸は、一端部を外方へ突出した状態でブッシュに挿入され、且つ、第1の軸受によって回転自在に支持され、
ブッシュ又は出力軸が第2の軸受によって回転自在に支持され、
出力軸は内部に中空部を有し、
出力軸とブッシュとの間に一方向クラッチが設けられ、
ブッシュと電動駆動機の回転駆動軸とが歯車機構を介して連動連結され、
ブッシュは、出力軸が挿入される筒状の本体部と、本体部に設けられた受け部とを有し、
受け部は、出力軸の他端部から一端部への一方向において出力軸に受けられると共に、出力軸の一端部から他端部への他方向において第2の軸受に受けられるものである。
【0020】
これによると、一方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、一方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して出力軸で受けられる。反対に、他方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、他方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して第2の軸受で受けられる。
【0021】
これにより、スラストワッシャや止め輪等のスラスト荷重を受けるための専用部品を不要にすることが可能となり、駆動装置の部品点数を減らすことができる。
本第2発明における電動自転車の駆動装置は、ブッシュが第2の軸受によって回転自在に支持され、
ブッシュの受け部は、本体部の他端部を閉じ、且つ、軸心方向において出力軸の他端部と第2の軸受との間にあり、
出力軸の中空部は出力軸の他端部に開放されているものである。
【0022】
これによると、出力軸の中空部の開口端はブッシュによって覆われているため、中空部の開口端が外部へ露出せず、したがって、中空部内を防錆処理(例えば黒染処理)する必要はなく、出力軸の外側表面のみを防錆処理すればよい。このため、出力軸の防錆処理が容易である。
【0023】
また、中空部は出力軸の他端部に開放されているため、出力輪体の取付部分における出力軸の肉厚を十分に確保できる。これにより、容易に中空部の径を大きくすることが可能であり、出力軸の軽量化を促進することができる。
【0024】
本第3発明における電動自転車の駆動装置は、ブッシュの受け部に、軸心方向における外方へ突出する軸部が設けられ、
軸部は本体部より小径であり、
第2の軸受はブッシュの軸部を回転自在に支持しているものである。
【0025】
これによると、第2の軸受を小型軽量化することができる。
本第4発明における電動自転車の駆動装置は、出力軸は、一端部が第1の軸受によって回転自在に支持されていると共に、他端部が第2の軸受によって回転自在に支持されているものである。
【0026】
これによると、出力軸は第1および第2の軸受によって回転自在に支持されるので、出力軸の軸心が径方向に振れるのを確実に防止することができる。
本第5発明における電動自転車の駆動装置は、ブッシュは、第2の軸受に外嵌され、第2の軸受によって回転自在に支持されているものである。
【0027】
本第6発明における電動自転車の駆動装置は、出力軸の他端部から一端部への一方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、一方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して出力軸で受けられ、
出力軸の一端部から他端部への他方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、他方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して第2の軸受で受けられるものである。
【0028】
これによると、スラストワッシャや止め輪等のスラスト荷重を受けるための専用部品を不要にすることが可能となり、駆動装置の部品点数を減らすことができる。
本第7発明における電動自転車の駆動装置は、出力軸は、第1の軸受が外嵌される第1の出力軸部と、第1の出力軸部よりも大径の第2の出力軸部とを有し、
第2の出力軸部がブッシュの本体部に挿入され、
一方向クラッチは出力軸の第2の出力軸部の外周面とブッシュの本体部の内周面との間に設けられているものである。
【0029】
これによると、法規の改正等でアシスト率が引上げられ、これに対応して大型の一方向クラッチを使用するために、第2の出力軸部を第1の出力軸部よりも大径にした場合であっても、出力軸の軽量化を促進することができる。
【0030】
本第8発明は、上記第1発明から第7発明のいずれか1項に記載の駆動装置を備えたことを特徴とする電動自転車である。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によると、電動自転車の駆動装置の部品点数を減らすことができ、また、出力軸の軽量化を促進することが可能である。特に、法規の改正等でアシスト率が引上げられ、これに対応して、大型の一方向クラッチを使用するために、出力軸の径を太くした場合であっても、出力軸の軽量化を促進することができる。これにより、アシスト率の改正等に十分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における電動自転車の側面図
【図2】同、電動自転車の駆動装置の横断面図
【図3】同、駆動装置の拡大横断面図
【図4】同、駆動装置の出力軸とブッシュと出力歯車との分解断面図
【図5】本発明の実施の形態2における電動自転車の駆動装置の拡大横断面図
【図6】同、駆動装置の出力軸の分解断面図
【図7】同、駆動装置のブッシュの断面図
【図8】本発明の実施の形態3における電動自転車の駆動装置の拡大横断面図
【図9】同、駆動装置のブッシュの断面図
【図10】従来の電動自転車の駆動装置の横断面図
【図11】同、駆動装置の拡大横断面図
【図12】従来の別の駆動装置の拡大横断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、図1,図2に示すように、1は電動自転車であり、ペダル2を踏み込む踏力による人力駆動力に、モータ3(電動駆動機の一例)によって付与される補助駆動力を加えた駆動力で走行する。電動自転車1は、車体フレーム6と、前車輪(図示省略)と、後車輪8と、ペダル2と、前部スプロケット9と、後部スプロケット10と、前部および後部スプロケット9,10間に巻回され且つ踏力を後車輪8に伝達して後車輪8を回転させる無端状のチェン11(駆動力伝達体の一例)と、チェン11に補助駆動力を付与する駆動装置14とを有している。
【0034】
ペダル2はクランク15を介してクランク軸16の両端部に設けられている。クランク軸16には、一方向クラッチ17を介して、回転軸18が外嵌されている。前部スプロケット9は回転軸18に一体に外嵌されている。
【0035】
駆動装置14は、チェン11に下方から歯合する出力スプロケット19(出力輪体の一例)と、出力スプロケット19を回転駆動させるモータ3と、ケース21とを有している。モータ3は回転駆動軸22を有している。
【0036】
図3,図4に示すように、出力スプロケット19は出力軸23の一端部に設けられている。出力軸23は、その軸心23aが回転駆動軸22の軸心22aと平行になるように、第1の軸受25(ベアリング)によって回転自在に支持されている。また、出力軸23は、第1の軸受25が外嵌され且つ出力スプロケット19が設けられた第1の出力軸部27と、第1の出力軸部27の他端側に形成され且つ第1の出力軸部27よりも大径の第2の出力軸部28とを有し、さらに、他端部が開放された中空部29を内部に有している。尚、出力軸23は、熱処理(焼入れ)が施されており、また、外側表面が防錆処理(例えば黒染処理等)されている。
【0037】
第1の軸受25は出力軸23の第1の出力軸部27と第2の出力軸部28との段差部に面している。出力軸23の第2の出力軸部28はブッシュ31に挿入されており、第1の出力軸部27はブッシュ31から外方へ突出している。ブッシュ31は、第2の出力軸部28が挿入される円筒形状の本体部32と、本体部32の他端部に設けられた円板形状の受け部33と、受け部33に設けられ且つ軸心方向における他端外方へ突出する円形状の軸部34と、本体部32の外周面から受け部33の外周面に縮径する段差部35とを有している。
【0038】
尚、本体部32の他端部は受け部33によって閉じられている。また、軸部34は、本体部32よりも小径であり、且つ、出力軸23の第1の出力軸部27よりも小径である。また、段差部35は全周にわたり形成されている。
【0039】
ブッシュ31は、軸部34に外嵌された第2の軸受36(ベアリング)によって、回転自在に支持されている。第2の軸受36は第1の軸受25よりも小型である。ブッシュ31の受け部33は、軸心方向において、出力軸23の他端部と第2の軸受36との間に挟まれるようにして設けられ、これにより、出力軸23の他端部から一端部への一方向46において出力軸23の他端部に受けられると共に、出力軸23の一端部から他端部への他方向47において第2の軸受36に受けられる。
【0040】
出力軸23の第2の出力軸部28の外周面とブッシュ31の本体部32の内周面との間には、一方向クラッチ37と、円環形状の複数の含油軸受38とが設けられている。尚、含油軸受38は、ラジアル荷重を受けるものであり、軸心方向において一方向クラッチ37の両側方に配置されている。
【0041】
ブッシュ31とモータ3の回転駆動軸22とは歯車機構40を介して連動連結されている。歯車機構40は、ブッシュ31に外嵌された円環形状の出力歯車41と、回転駆動軸22に形成された駆動歯車部42とを有している。ブッシュ31は出力歯車41に圧入されており、ブッシュ31の本体部32と出力歯車41とは、互いに噛み合う複数の凹凸部からなるスプライン嵌合部43を介して、周方向に係合している。このスプライン嵌合部43により、出力歯車41とブッシュ31とが一体に回転する。
【0042】
出力歯車41は、他端部の内周面全周に、径方向における内側へ突出する鍔部44を有している。鍔部44は、一方向46において、ブッシュ31の段差部35に係合している。尚、出力歯車41と駆動歯車部42とは、互いに歯合しており、それぞれヘリカルギア(ハスバ歯車)からなる。また、ブッシュ31の材質には例えばアルミ合金等の金属等が用いられ、出力歯車41の材料には例えば樹脂等が用いられている。
【0043】
駆動装置14を構成する各部品のうち、出力軸23の一端部はケース21の外方へ突出しており、出力スプロケット19はケース21の外部に位置している。また、それ以外の部品はケース21内に収納されている。また、第1および第2の軸受25,36はケース21内に保持されている。
【0044】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1,図2に示すように、利用者がペダル2に踏力を作用させることにより、クランク軸16が回転し、この回転が一方向クラッチ17と回転軸18とを介して前部スプロケット9に伝わり、前部スプロケット9が回転してチェン11が一方向へ回動する。
【0045】
この際、ペダル2からの踏力が検出され、この検出された踏力に応じた出力トルクでモータ3の回転駆動軸22が回転することにより、出力歯車41と共にブッシュ31が回転し、この回転が一方向クラッチ37を介して出力軸23に伝えられ、出力軸23と共に出力スプロケット19が一方向へ回転する。これにより、人力駆動力に補助駆動力を加えた総合駆動力がチェン11に付与され、チェン11と後部スプロケット10とを介して後車輪8が回転駆動する。
【0046】
図3に示すように、互いに歯合する出力歯車41と駆動歯車部42とがヘリカルギアであるため、モータ3の回転駆動軸22が回転駆動して出力軸23が回転している際に発生する騒音が低下する。尚、この際、出力歯車41に一方向46のスラスト荷重F1(実線矢印参照)が発生し、このスラスト荷重F1は鍔部44を介してブッシュ31の段差部35で受けられるため、ブッシュ31にもスラスト荷重F1が作用するが、上記スラスト荷重F1はブッシュ31の受け部33を介して出力軸23の他端部で受けられる。
【0047】
また、下り坂等において、ペダル2に踏力を作用させているが、検出された踏力が閾値よりも小さいと、モータ3が停止する。この場合、ペダル2からの踏力により、前部スプロケット9が回転し、チェン11が一方向へ回動し、出力スプロケット19と共に出力軸23が回転するが、この回転は、原則的に、一方向クラッチ37により遮断されてブッシュ31側に伝達されない。
【0048】
しかしながら、実際には、出力軸23と一方向クラッチ37との摩擦によって、出力軸23の回転力の一部が一方向クラッチ37を介してブッシュ31側に伝達されてしまうことがある。この場合、ブッシュ31と共に出力歯車41と回転駆動軸22とが僅かに回転し、一方向46とは反対方向である他方向47のスラスト荷重F2(点線矢印参照)が出力歯車41に発生し、ブッシュ31にもスラスト荷重F2が作用することがあるが、このスラスト荷重F2はブッシュ31の受け部33を介して第2の軸受36で受けられる。
【0049】
これにより、スラストワッシャや止め輪等のスラスト荷重F1,F2を受けるための専用部品を不要にすることが可能となり、駆動装置14の部品点数を減らすことができる。
また、出力軸23の中空部29の開口端はケース21内においてブッシュ31により覆われているため、中空部29の開口端がケース21の外部へ露出せず、したがって、中空部29内を防錆処理(例えば黒染処理)する必要はなく、出力軸23の外側表面のみを防錆処理すればよい。このため、出力軸23の防錆処理が容易である。
【0050】
また、中空部29は出力軸23の他端部に開放されているため、出力スプロケット19の取付部分における出力軸23の肉厚を十分に確保できる。これにより、容易に中空部29の径を大きくすることが可能であり、出力軸23の軽量化を促進することができる。
【0051】
さらに、法規の改正等でアシスト率が引上げられ、これに対応して大型の一方向クラッチ37を使用するために、出力軸23の第2の出力軸部28を第1の出力軸部27よりも大径にした場合であっても、十分に出力軸23の軽量化を促進することができる。
【0052】
(実施の形態2)
先述した実施の形態1では、図3に示すように出力軸23は第1の軸受25によって回転自在に支持されているが、実施の形態2では、図5に示すように、出力軸23は、一端部が第1の軸受25によって回転自在に支持されていると共に、他端部が第2の軸受36によって回転自在に支持されている。
【0053】
出力軸23は、一端部側に形成された第1の出力軸部27と、他端部側に形成された第3の出力軸部51と、これら両出力軸部27,51間に形成された第2の出力軸部28とを有している。第1の出力軸部27には、第1の軸受25が外嵌され且つ出力スプロケット19が設けられている。第2の出力軸部28は第1の出力軸部27よりも大径である。また、第3の出力軸部51は第1の出力軸部27よりも小径であり、第3の出力軸部51には第2の軸受36が外嵌されている。
【0054】
また、図6に示すように、出力軸23は、第1および第2の出力軸部27,28を有する一方の軸体52と、第3の出力軸部51を有する他方の軸体53とに二分割され、他方の軸体53は、一方の軸体52の中空部29に差し込まれて、一方の軸体52に圧入若しくはスプライン嵌合等で係合されて一体化されている。尚、中空部29の他端部は他方の軸体53によって閉塞されている。
【0055】
図7に示すように、ブッシュ31は、第2の出力軸部28が挿入される円筒形状の本体部32と、本体部32の他端部に全周にわたって設けられた受け部33と、本体部32の外周面から受け部33の外周面に縮径する段差部35とを有している。受け部33は本体部32から径方向内向きに突出する円環形状の部材である。
【0056】
受け部33は、出力軸23の第2の出力軸部28の他端面と第2の軸受36の外輪との間に挟まれており、一方向46において第2の出力軸部28の他端面に受けられると共に、他方向47において第2の軸受36の外輪に受けられる。
【0057】
以下、上記構成における作用を説明する。
出力軸23は第1および第2の軸受25,36によって回転自在に支持されているので、出力軸23の軸心23aが径方向に振れるのを確実に防止することができる。
【0058】
ブッシュ31に一方向46のスラスト荷重F1が作用すると、上記スラスト荷重F1はブッシュ31の受け部33を介して出力軸23の第2の出力軸部28の他端面で受けられる。また、ブッシュ31に他方向47のスラスト荷重F2が作用すると、上記スラスト荷重F2はブッシュ31の受け部33を介して第2の軸受36の外輪で受けられる。これにより、スラストワッシャや止め輪等のスラスト荷重F1,F2を受けるための専用部品を不要にすることが可能となり、駆動装置14の部品点数を減らすことができる。
【0059】
また、出力軸23の一方の軸体52に形成されている中空部29の開口端は他方の軸体53により閉塞されているため、中空部29の開口端がケース21の外部へ露出せず、したがって、中空部29内を防錆処理する必要はなく、出力軸23の外側表面のみを防錆処理すればよい。このため、出力軸23の防錆処理が容易である。
【0060】
また、図6に示すように、一方の軸体52の中空部29は一方の軸体52の他端部に開放されているため、出力スプロケット19の取付部分における一方の軸体52の肉厚を十分に確保できる。これにより、容易に中空部29の径を大きくすることが可能であり、出力軸23の軽量化を促進することができる。
【0061】
さらに、法規の改正等でアシスト率が引上げられ、これに対応して大型の一方向クラッチ37を使用するために、出力軸23の第2の出力軸部28を第1の出力軸部27よりも大径にした場合であっても、十分に出力軸23の軽量化を促進することができる。
【0062】
(実施の形態3)
実施の形態3では、図8に示すように、ブッシュ31は、第2の軸受36に外嵌され、第2の軸受36によって回転自在に支持されている。
【0063】
図9に示すように、ブッシュ31は、第2の出力軸部28が挿入される円筒形状の本体部32と、本体部32の他端部内周面に全周にわたって設けられた受け部33と、本体部32の外周面に形成された段差部35とを有している。受け部33は本体部32の内周面から径方向内向きに突出する円環形状の部材である。
【0064】
受け部33は、出力軸23の他端面と第2の軸受36の外輪との間に挟まれており、一方向46において出力軸23の他端面に受けられると共に、他方向47において第2の軸受36の外輪に受けられる。尚、第2の軸受36は、ケース21内に形成された固定軸部55に外嵌されて保持されている。
【0065】
以下、上記構成における作用を説明する。
ブッシュ31に一方向46のスラスト荷重F1が作用すると、上記スラスト荷重F1はブッシュ31の受け部33を介して出力軸23の他端面で受けられる。また、ブッシュ31に他方向47のスラスト荷重F2が作用すると、上記スラスト荷重F2はブッシュ31の受け部33を介して第2の軸受36の外輪で受けられる。これにより、スラストワッシャや止め輪等のスラスト荷重F1,F2を受けるための専用部品を不要にすることが可能となり、駆動装置14の部品点数を減らすことができる。
【0066】
上記各実施の形態では、出力歯車41と駆動歯車部42とにヘリカルギア(ハスバ歯車)を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、平歯車等であってもよい。
上記各実施の形態では、出力軸23の第1の出力軸部27の外径と第2の出力軸部28の外径とが異なっているが、同径であってもよい。
【0067】
上記各実施の形態では、ブッシュ31を出力歯車41に圧入しているが、ブッシュ31と出力歯車41とをインサート成型して一体化してもよい。
上記各実施の形態では、歯車機構40は出力歯車41と駆動歯車部42とを有しているが、出力歯車41と駆動歯車部42との間に中間歯車を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の駆動装置は電動自転車に最適であるが、電動式のオートバイ(自動二輪車)等に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 電動自転車
3 モータ(電動駆動機)
8 後車輪
11 チェン(駆動力伝達体)
14 駆動装置
19 出力スプロケット(出力輪体)
22 回転駆動軸
23 出力軸
25,36 第1,第2の軸受
27,28 第1,第2の出力軸部
29 中空部
31 ブッシュ
32 本体部
33 底部
34 軸部
37 一方向クラッチ
40 歯車機構
F1,F2 スラスト荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏力を車輪に伝達して車輪を回転させる駆動力伝達体に歯合する出力輪体と、この出力輪体を回転駆動させて駆動力伝達体に補助駆動力を付与する電動駆動機とを有する電動自転車の駆動装置であって、
出力輪体は出力軸の一端部に設けられ、
出力軸は、一端部を外方へ突出した状態でブッシュに挿入され、且つ、第1の軸受によって回転自在に支持され、
ブッシュ又は出力軸が第2の軸受によって回転自在に支持され、
出力軸は内部に中空部を有し、
出力軸とブッシュとの間に一方向クラッチが設けられ、
ブッシュと電動駆動機の回転駆動軸とが歯車機構を介して連動連結され、
ブッシュは、出力軸が挿入される筒状の本体部と、本体部に設けられた受け部とを有し、
受け部は、出力軸の他端部から一端部への一方向において出力軸に受けられると共に、出力軸の一端部から他端部への他方向において第2の軸受に受けられることを特徴とする電動自転車の駆動装置。
【請求項2】
ブッシュが第2の軸受によって回転自在に支持され、
ブッシュの受け部は、本体部の他端部を閉じ、且つ、軸心方向において出力軸の他端部と第2の軸受との間にあり、
出力軸の中空部は出力軸の他端部に開放されていることを特徴とする請求項1記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項3】
ブッシュの受け部に、軸心方向における外方へ突出する軸部が設けられ、
軸部は本体部より小径であり、
第2の軸受はブッシュの軸部を回転自在に支持していることを特徴とする請求項2記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項4】
出力軸は、一端部が第1の軸受によって回転自在に支持されていると共に、他端部が第2の軸受によって回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項5】
ブッシュは、第2の軸受に外嵌され、第2の軸受によって回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項6】
出力軸の他端部から一端部への一方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、一方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して出力軸で受けられ、
出力軸の一端部から他端部への他方向のスラスト荷重がブッシュに作用した場合、他方向のスラスト荷重はブッシュの受け部を介して第2の軸受で受けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項7】
出力軸は、第1の軸受が外嵌される第1の出力軸部と、第1の出力軸部よりも大径の第2の出力軸部とを有し、
第2の出力軸部がブッシュの本体部に挿入され、
一方向クラッチは出力軸の第2の出力軸部の外周面とブッシュの本体部の内周面との間に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動自転車の駆動装置。
【請求項8】
上記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置を備えたことを特徴とする電動自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−250580(P2012−250580A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122992(P2011−122992)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)