説明

電動車両

【課題】電動モータの駆動と連動することで運転者の感覚に合った振動や音等を出すことができる電動車両を提供する。
【解決手段】車体フレーム12に揺動可能に軸支されたスイングアーム17の車体後方側に電動モータMを配置し、該電動モータMの駆動力を後輪WRに伝達して走行する電動車両1において、電動モータMから後輪WRへの駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて振動を発生する振動発生手段56を具備する。振動発生手段56を、回転時の回転バランスが崩れるようにその一部分に錘55が埋設された一対の歯車対51b,52bで構成する。また、同様の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて所定の音を発生する音発生手段60を備える。音発生手段60は、回転体としての第3減速歯車52bに取り付けられたカム54に当接して往復運動する伝達手段61によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に係り、特に、車載バッテリから供給される電力で動力源としてのモータを駆動して走行する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータを動力源とする電動車両に関しては、内燃機関を動力源とするエンジン車両のような振動や音が生じないため、乗員が車両の状態を体感的に把握することが難しいという課題が認識されており、これを補うための種々の方法が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ハンドルグリップの内部で回転する偏心錘によってハンドルグリップに振動を発生させる振動発生装置と、車体に取り付けられたスピーカーによってエンジン音を模した報知音を鳴らす報音装置とを備えた電動車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2894157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ハンドルグリップ部における擬似的な振動およびスピーカーで再生される擬似的な音が得られるのみであり、動力源の駆動と連動して生じる実際の振動や音が得られるものではない。したがって、これらの振動や音は運転者の感覚に近いものとはいえず、車両の状態を体感的に把握することは依然として難しいという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、電動モータの駆動と連動することで運転者の感覚に合った振動や音等を出すことができる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、車体フレーム(12)に揺動可能に軸支されたスイングアーム(17)の車体後方側に電動モータ(M)を配置し、該電動モータ(M)の駆動力を後輪(WR)に伝達して走行する電動車両(1)において、前記電動モータ(M)から前記後輪(WR)への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて振動を発生する振動発生手段(56)を具備する点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記振動発生手段(56)は、回転時の回転バランスが崩れるようにした回転体(51b,52b)で構成されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記回転体(51b,52b)は、その一部分に錘(55)が埋設された歯車対である点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記振動発生手段(56)は、前記電動モータ(M)の1回転中に複数回回転する点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記電動モータ(M)から後輪(WR)への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて所定の音を発生させる音発生手段(60,70,80,90)を備える点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記音発生手段(60,70,80,90)は、前記回転体(52b)に取り付けられたカム(54)に当接して往復運動する伝達手段(61)によって駆動される点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記カム(54)には、その外周部に形成された所定のカム山(54a)と対向する位置に、前記カム(54)の回転バランスを取るための錘(54b)が設けられている点に第7の特徴がある。
【0014】
また、前記振動発生手段(56)および前記音発生手段(60,70,80,90)は、前記後輪(WR)の車軸(51a)から取り出した駆動力によって駆動するように構成されている点に第8の特徴がある。
【0015】
また、前記振動発生手段(56)の一部および前記振動発生手段(60,70,80,90)は、前記スイングアーム(17)に対して着脱可能に構成されている点に第9の特徴がある。
【0016】
さらに、前記音発生手段(60)は、車体側面視で前記後輪(WR)の車軸(51a)の後方の位置で前記スイングアーム(17)の内部に配設されている点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
第1の特徴によれば、電動モータから後輪への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて振動を発生する振動発生手段を具備するので、電動モータの駆動力を利用すると共に、電動モータの回転数に応じた振動を発生させることができる。これにより、運転者の感覚に合った振動が得られ、この振動によって車両の状態を体感的に把握しやすくなる。
【0018】
第2の特徴によれば、振動発生手段は、回転時の回転バランスが崩れるようにした回転体で構成されているので、簡単な構成で電動モータの回転数に応じた振動を得ることができる。
【0019】
第3の特徴によれば、回転体は、その一部分に錘が埋設された歯車対であるので、錘の設定により振動の度合を容易に調整することができる。また、歯車対の双方の回転バランス変化を合成することで、一定の振動ではなく脈動変化する振動を得ることができる。
【0020】
第4の特徴によれば、振動発生手段は、電動モータの1回転中に複数回回転するので、より振幅の小さな振動を容易に得ることができる(例えば、電動モータにより駆動される後輪車軸の1回転中に2回の振動)。また、脈動感のある振動を得ることができる。
【0021】
第5の特徴によれば、電動モータから後輪への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて所定の音を発生させる音発生手段を備えるので、振動発生手段による振動に加え、音発生手段により電動モータの回転数に応じた音を発生させることができる。これにより、運転者の感覚に合った振動および音が得られることとなり、さらに車両の状態を体感的に把握しやすくなる。
【0022】
第6の特徴によれば、音発生手段は、回転体に取り付けられたカムに当接して往復運動する伝達手段によって駆動されるので、カムの形状を変更することで、発生する音を調整することが容易となる。
【0023】
第7の特徴によれば、カムには、その外周部に形成された所定のカム山と対向する位置に、カムの回転バランスを取るための錘が設けられているので、カムの重量による回転バランスの崩れに起因する振動の発生を抑えて、振動発生手段による意図的な振動に影響を与えないようにすることができる。
【0024】
第8の特徴によれば、振動発生手段および音発生手段は、後輪の車軸から取り出した駆動力によって駆動するように構成されているので、振動発生手段および音発生手段を後輪の車軸の近傍に配設することが容易となる。これにより、電動モータからの駆動力伝達経路を短くすると共に、スイングアームの後端周囲のデッドスペースを利用して振動発生手段および音発生手段を配設することが容易となる。
【0025】
第9の特徴によれば、振動発生手段の一部および振動発生手段は、スイングアームに対して着脱可能に構成されているので、振動発生手段および音発生手段をオプション部品として設定し、取り付けるか否かを任意に選択することが容易となる。
【0026】
第10の特徴によれば、音発生手段は、車体側面視で後輪の車軸の後方の位置でスイングアームの内部に配設されているので、スイングアーム後端部周囲のデッドスペースを有効活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動車両の側面図である。
【図2】スイングアームの側面図である。
【図3】スイングアームに収納されている減速機構等の構成を示す分解斜視図である。
【図4】振動発生手段の構造説明図である。
【図5】カムと伝達手段との関係を示す構造説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る音発生手段の一実施形態を示す構造説明図である。
【図7】本発明の変形例に係る音発生手段の構造説明図である。
【図8】本発明の第2変形例に係る音発生手段の構造説明図である。
【図9】本発明の第3変形例に係る音発生手段の構造説明図である。
【図10】振動発生手段および音発生手段を備えたモータサイクル型の電動二輪車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動車両1の側面図である。電動車両1は、低床フロア15を有するスクータ型の電動二輪車であり、スイングアーム17に内設された電動モータMの回転駆動力で後輪WRを駆動するように構成されている。電動モータMに電力を供給する高電圧バッテリ16は、シート22の下部等に設けられた充電口(不図示)に外部電源を接続することで充電できる。
【0029】
メインフレーム(車体フレーム)12の前方側端部には、ステアリングステム3を回転自在に軸支するヘッドパイプ2が結合されている。ステアリングステム3の上部には操向ハンドル5が取り付けられ、一方の下部には、左右一対のフロントフォーク4が取り付けられている。フロントフォーク4の下端部には、前輪WFが回転自在に軸支されている。
【0030】
メインフレーム12の下方には、左右一対のロアフレーム13が連結されており、この左右のロアフレーム13に挟まれるように高電圧バッテリ16が配設されている。ロアフレーム13は、その後方側で車体上方に屈曲してリヤフレーム14に連結されている。
【0031】
ロアフレーム13の後部には、スイングアームピボット21を有するピボットプレート23が取り付けられている。スイングアームピボット21には、車体左側のアームのみで後輪WRを支持する片持ち式のスイングアーム17が揺動自在に軸支されている。
【0032】
スイングアーム17の後部には、後輪WRが車軸51aによって回転自在に軸支されている。後輪WRは、金属製のホイールWR1にゴムタイヤを係合して構成されている。スイングアーム17の後端部は、リヤショックユニット28によってリヤフレーム14に吊り下げられている。スイングアーム17の下面にはセンタースタンド18が取り付けられ、ピボットプレート23にはサイドスタンド20が取り付けられている。
【0033】
スイングアーム17の車体前方側の位置には、高電圧バッテリ16から供給される直流電流を、交流電流に変換して電動モータMへ供給するモータドライバ(PDU)19が配設されている。電動モータMの後方側には、電動モータMの出力軸の回転数を所定の割合で減速して車軸51aに伝達するための減速機構が配設されている。
【0034】
操向ハンドル5の車幅方向中央部分は、ハンドルカバー6で覆われている。ヘッドパイプ2は、車体前方側のフロントカウル8および車体後方側のフロアカバー9で覆われている。フロントカウル8の前方側にはキャリア7が配設され、キャリア7の下方には、車体前方への延出部分の先端に前照灯10が支持されている。前照灯10の下方には、前輪WFの泥よけとしてのフロントフェンダ11が取り付けられている。
【0035】
高電圧バッテリ16の上部に形成された低床フロア15の車体後方には、車体左右に連続して形成されたサイドカバー24が配設されている。サイドカバー24の上部には、車体前方側のヒンジによって開閉するシート22が取り付けられている。サイドカバー24の後方には、リヤフレーム14の外方を覆うシートカウル24aが配設されている。シートカウル24aの後端部には尾灯装置27が取り付けられており、シート22の後方には荷台26が固定されている。スイングアーム17の上面には、後輪WRの泥よけとしてのリヤフェンダ25が取り付けられている。
【0036】
図2は、スイングアーム17の側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この図は、電動モータM等の主要部品を支持している伝動ケース40から、その車幅方向左側に取り付けられているスイングアームカバー(不図示)を取り外した状態を示している。伝動ケース40の外周部でスイングアームカバーとの接触面には、複数のボルト締結孔39が形成されている。伝動ケース40の前端部には、ピボット軸を通す貫通孔21aが形成されている。モータドライバ19は、スイングアーム17の上面側に開口部を有する収納スペースに収納されている。また、モータドライバ19は、この収納スペースに収められて、貫通孔21a寄りの車体前方側の位置に配設されている。
【0037】
電動モータMは、車体側面視で後輪WRの投影領域と重なる、すなわち、オーバーラップするようにスイングアーム17内に配設されている。モータドライバ19と電動モータMとの間には、電源供給ラインとしての、U相配線33、V相配線34およびW相配線35が配索されている。3本の配線は、端子30,31,32によってモータドライバ19に接続される一方、伝動ケース40に取り付けられた案内板38によって内壁側に寄せられている。
【0038】
電動モータMは、伝動ケース40に固定されたステータ42と、モータ駆動軸48に固定されたロータ43(図3参照)とからなるアウタロータ式とされる。モータ駆動軸48の外周部には、電動モータMの回転速度センサ41が配設されている。前記した案内板38には、回転速度センサ41のコネクタ37が支持されている。また、電動モータMの車体後方側には車速センサ29が配設されており、該車速センサ29の配線45も案内板38の車幅方向右側を通るように構成されている。
【0039】
伝動ケース40の下部には、センタースタンド18(図1参照)の取付孔36が設けられており、伝動ケース40の後端部には、リヤショックユニット28の下端部を揺動自在に軸支する下側支持孔46が形成されている。
【0040】
本実施形態に係るスイングアーム17は、内燃機関(エンジン)の振動に似た疑似振動を発生する振動発生手段56と、エンジンの音に似た疑似音を発生する音発生手段60とを備えている。振動発生手段56は、減速機構を構成する歯車を含む1つの歯車対からなる。また、音発生手段60は、スイングアーム17の後部で複数の歯車対からなる減速機構の上方に配設されており、減速機構から取り出した動力により駆動される。
【0041】
電動モータMの回転駆動力は、出力軸48から、減速機構としての第1減速歯車49、第2減速歯車50および第3減速歯車51bを介することで所定の割合で減速されて、車軸51aに伝達される。そして、第3減速歯車51bには、該第3減速歯車51bと同形状の従動歯車52bが歯合しており、この従動歯車52bの上方に音発生手段60が配設されている。従動歯車52bと音発生手段60との間には、駆動力の伝達手段61が配設されている。従動歯車52bおよび音発生手段60は、伝動ケース40の後部で上方に突出するように形成された収納ケース40aに収納されている。
【0042】
図3は、スイングアーム17に収納されている減速機構等の構成を示す分解斜視図である。前記したように、アウタロータ式の電動モータMは、伝動ケース40に固定されるステータ42と、出力軸48に回転不能に接続されるロータ43とからなる。出力軸48の一端部の外周には、ロータ43が嵌合するスプライン48aが形成されており、一方の他端部には、第1減速歯車49に歯合するギヤ48bが形成されている。
【0043】
第1減速歯車49の貫通孔に形成されたスプライン49aには、第2減速歯車50の軸部分に形成されたスプライン50aが嵌合する。また、第2減速歯車50に形成されたギヤ50bは、駆動側振動発生ユニット51の第3減速歯車51bと歯合する。
【0044】
第3減速歯車51bは、車軸51aの車幅方向左寄りの位置にスプライン嵌合で固定されて駆動側振動発生ユニット51の一部を構成する。車軸51aの他端側には、ホイールWR1に形成されたスプライン51eに係合するスプライン51cと、ホイールWR1を固定するナット(不図示)が螺合するネジ山51dとが形成されている。
【0045】
一方、第3減速歯車51bに歯合する従動歯車52bは、その回転軸52aの車幅方向左寄りの位置にスプライン嵌合で固定されている。従動歯車52bは、回転軸52aに固定されて従動歯車52bと一体に回転するカム54と併せて、従動側振動発生ユニット52を構成する。
【0046】
従動側振動発生ユニット52の車体上方側の位置には、略直方体に形成される音発生装置60が配設されている。音発生装置60の下面からは、その下端部が前記カム54に常時接触する円柱状の伝達手段61が突出している。音発生手段60は、伝達手段61の往復動によって所定の音を発するように構成されている。そして、伝達手段61は、カム54と一体に回転する従動歯車52bの回転速度に応じた速さで往復運動するので、音発生手段60から発せられる音も、電動モータMの回転速度に応じて変化することとなる。
【0047】
音発生手段60は、車体側面視で後輪WRの車軸51aの後方の位置でスイングアーム17の内部に配設されているので、スイングアーム17の後端部の周囲に形成されるデッドスペースを有効活用すると共に、電動モータMから音発生手段60までの駆動力の伝達経路を短くすることができる。
【0048】
図4は、振動発生手段56の構造説明図である。前記したように、本実施形態に係る振動発生手段56は、駆動側振動発生ユニット51に含まれる第3減速歯車51bと、従動側振動発生ユニット52に含まれる従動歯車52bとからなる。所定の振動を発生する回転体としての第3減速歯車51bおよび従動歯車52bには、歯車の回転重量バランスを積極的に崩すための錘55がそれぞれ埋設されている。本実施形態では、一方の錘55が図示上方に来た場合に、他方の錘55も同じ位置に来るように設定されている。
【0049】
この構成によれば、単に電動モータMの回転に伴って図示上下方向に指向する振動が得られるばかりでなく、2つの錘55によって回転バランス変化を合成して大きな振動を得ることができる。なお、錘55の埋設位置を変えることによって、振動の指向方向を変化させる構成としてもよい。さらに、振動発生手段56が、電動モータMの1回転中に複数回回転するように構成すると、より振幅の小さな振動を容易に得ることが可能となる。
【0050】
図5は、カム54と伝達手段61との関係を示す構造説明図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。その端部に回転自在のローラ62が取り付けられた伝達手段61は、スイングアーム17に取り付けられた支持ケース64に対して、図示上下方向に摺動可能に支持されている。一方、カム54は、支持ケース64の所定位置に配置されて回転し、カム山54aの形状に合わせて伝達手段61を上下動させる。また、伝達手段61の上端部には、接続子63が取り付けられている。カム山54aの形状は、種々の変形が可能であり、これにより、発生する音を調整することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、カム54の外周部に形成された所定のカム山54aと対向する位置に、カム54全体の回転バランスを取るための錘54bが設けられている。これにより、カム54の回転によって振動が発生することを抑え、振動発生手段56による意図的な振動に影響を与えないようにすることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、振動発生手段56を構成する従動側振動発生ユニット52および音発生手段60が、スイングアーム17に対して着脱自在に構成されている。これにより、振動発生手段56および音発生手段60を、標準車に対するオプション部品として設定することが可能となり、必要に応じて後付けすることが可能となる。なお、従動側振動発生ユニット52および音発生手段60を備えない場合は、駆動側振動発生ユニット51の第3減速歯車51bの錘55を取り外すことができる。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に係る音発生手段60の一実施形態を示す構造説明図である。本実施形態では、音発生手段60のハウジング66の内部に、揺動軸68を中心に揺動自在に軸支された打棒69が設けられている。打棒69の上部には、膜状の皮67が張られており、伝達手段61が上下往復動すると、これに伴って打棒69が皮67を叩いて音を出す。この「太鼓仕様」の音発生手段60によれば、電動モータMの回転に伴って、太鼓を連続的に叩くような音を発することができる。なお、ハウジング66の上面には、音を拡散させる通気孔65が形成されている。このような音発生手段60によれば、スピーカー等による発音とは異なり、音に伴って振動も積極的に発生させて鼓動感を得ることが可能となり、乗員の体感効果をより高めることができる。
【0054】
図7は、本発明の変形例に係る音発生手段70の構造説明図である。本変形例では、音発生手段70のハウジング71の内部に、上下に離間した2枚の膜76,77およびこの膜76,77に支持されると共に凸凹形状(ギザギザ形状)を有する被擦過部材75が設けられている。一方、伝達手段61には、凸部を有する演奏棒74が取り付けられており、伝達手段61が上下往復動すると、被擦過部材75の凸凹形状と演奏棒74の凸部とがこすれ合って音を出す。この「ギロ仕様」の音発生手段70によれば、電動モータMの回転に伴って、ギロ(中をくりぬいた瓢箪の外皮に刻みを入れ、棒でこすって音を出す打楽器)を連続的に鳴らすような音を発することができる。なお、ハウジング71の上面には、演奏棒74の貫通孔73および通気口72が形成されている。
【0055】
図8は、本発明の第2変形例に係る音発生手段80の構造説明図である。本変形例では、音発生手段80のハウジング81の内部に、上下に離間した2枚の膜87,88および所定の張力で張った弦86が設けられている。一方、伝達手段61には、爪85を有する演奏棒84が取り付けられており、伝達手段61が上下往復動すると、爪85が弦86を弾いて音を出す。この「ギター仕様」の音発生手段80によれば、電動モータMの回転に伴って、ギター等の弦楽器を連続的に鳴らすような音を発することができる。ハウジング81の上面には、演奏棒84の貫通孔83および通気口82が形成されている。
【0056】
図9は、本発明の第3変形例に係る音発生手段90の構造説明図である。本変形例では、音発生手段90のハウジング91の内部をシリンダとして、この内周を摺動するエアピストン94が伝達手段に取り付けられている。また、ハウジング91の上面に設けられた通気口92には、閉方向に付勢されると共に図示上方に開くことができる薄板状のリードバルブ93が設けられている。伝達手段61が上下往復動すると、エアピストン94が上下して通気口92からの空気の出入が行われ、この際にバルブ93と通気口92との間隙においてびびり音を発生させる。この「リードバルブ音仕様」の音発生手段90によれば、摩擦により消耗する部品を最小限に抑えて所定のびびり音を発生することができる。
【0057】
図10は、振動発生手段および音発生手段を備えた電動二輪車100の側面図である。本発明に係る振動発生手段および音発生手段は、前記したようなスクータ型の電動二輪車車両に限られず種々の車両に適用できる。電動二輪車100は、車体フレーム101に固定された電動モータ120の回転動力を、減速機構150を介して後輪WRに伝達して走行するモータサイクル型の電動二輪車である。
【0058】
車体フレーム101の前端部に固定されたヘッドパイプ104には、前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク105が操舵可能に取り付けられている。フロントフォーク105の上部には、操向ハンドル106が固定されている。車体フレーム101は、主に、ヘッドパイプ104から車体後方に延びるアッパーチューブ102と、ヘッドパイプ104から下方に延びて電動モータ120を懸架するダウンパイプ103と、アッパーチューブ102の後部に連結されて車体下部でダウンパイプ103と連結されるセンターフレーム123とからなり、車体フレーム101の後部には、後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム110が揺動可能に取り付けられている。スイングアーム110は、リヤクッション109によって車体に吊り下げられている。
【0059】
乗員が着座するシート108の前方には、涙滴形のカバーで覆われると共に、アッパーチューブ102を上方から跨ぐ形状のバッテリ107が配設されている。バッテリ107の下方で、ダウンパイプ103の上部には、バッテリ107からの供給電力で駆動する電動モータ120が取り付けられている。電動モータ120の回転動力は、その出力軸121に固定された減速歯車122を介して複数の歯車対を含む減速機構150に伝達される。減速機構150に伝達された回転動力は、スイングアーム11の内部に配設されたドライブシャフト(不図示)を介して後輪WRに伝達される。
【0060】
減速機構150の内部には、前記減速歯車122と歯合して回転する振動発生手段130が配設されている。振動発生手段130は、前記した実施形態と同様に、減速機構を構成する歯車を含む1つの歯車対で構成することができる。また、減速機構150の上部には、音発生手段140が配設されている。この音発生手段140も、前記した実施形態と同様に、振動発生手段130から伝達される動力で駆動すると共に、例えば、打棒で膜状の皮を叩いて音を出す「太鼓仕様」とすることでエンジン音に似た音および振動を得るように構成することができる。
【0061】
上記した構成によれば、振動発生手段130および音発生手段140によって生じる振動を、減速機構150に連結される電動モータ120からダウンパイプ103またはセンターフレーム123を介して、操向ハンドル106やシート108に伝達することができる。また、減速機構130もダウンパイプ103に取り付けられているため、減速機構130からダウンパイプ103またはセンターフレーム123を介して振動を伝達させることもできる。
【0062】
なお、振動発生手段130は、電動モータ120とスイングアーム110との間における駆動力伝達経路上の任意の位置に配設することができる。例えば、振動発生手段130は、上記したように減速機構150の内部に収納したり、また、電動モータ120と減速機構150の間に配設してもよい。さらに、電動モータ120と減速機構との間の駆動力伝達は、ギヤ機構のほか、チェーンやベルト等を用いて行うこともできる。減速機構150から後輪WRに回転動力を伝達する手段には、前記したドライブシャフトのほか、チェーンやベルト等を用いてもよい。
【0063】
上記したように、本発明に係る電動車両によれば、電動モータから後輪への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて振動を発生する振動発生手段および音を発生する音発生手段を備えたので、電動モータの駆動力を利用して、電動モータの回転数に応じた任意の振動および音を発生させることができる。これにより、運転者の感覚に合った振動および音が得られることとなり、電動モータの駆動力で走行する電動車両においても車両の状態を体感的に把握しやすくなる。
【0064】
なお、スイングアーム、減速機構、電動モータ、振動発生手段および音発生手段の構造や配置等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る振動発生手段および音発生手段は、電動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種電動車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…電動車両、2…ヘッドパイプ、12…メインフレーム、13…高電圧バッテリ、17…スイングアーム、19…モータドライバ、21…スイングアームピボット、23…ピボットプレート、48…出力軸、42…ステータ、43…ロータ、51…駆動側振動発生ユニット、51b…第3減速歯車、52…従動側振動発生ユニット、52b…従動歯車、55…錘、54…カム、54a…カム山、56…振動発生手段、60,70,80,90…音発生手段、61…伝達手段、64…支持ケース、65…通気口、66…ハウジング、67…皮、69…打棒、M…電動モータ、WR…後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(12)に揺動可能に軸支されたスイングアーム(17)の車体後方側に電動モータ(M)を配置し、該電動モータ(M)の駆動力を後輪(WR)に伝達して走行する電動車両(1)において、
前記電動モータ(M)から前記後輪(WR)への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて振動を発生する振動発生手段(56)を具備することを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記振動発生手段(56)は、回転時の回転バランスが崩れるようにした回転体(51b,52b)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記回転体(51b,52b)は、その一部分に錘(55)が埋設された歯車対であることを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記振動発生手段(56)は、前記電動モータ(M)の1回転中に複数回回転することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動車両。
【請求項5】
前記電動モータ(M)から後輪(WR)への駆動力の伝達経路上に、この伝達される駆動力に応じて所定の音を発生させる音発生手段(60,70,80,90)を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動車両。
【請求項6】
前記音発生手段(60,70,80,90)は、前記回転体(52b)に取り付けられたカム(54)に当接して往復運動する伝達手段(61)によって駆動されることを特徴とする請求項5に記載の電動車両。
【請求項7】
前記カム(54)には、その外周部に形成された所定のカム山(54a)と対向する位置に、前記カム(54)の回転バランスを取るための錘(54b)が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電動車両。
【請求項8】
前記振動発生手段(56)および前記音発生手段(60,70,80,90)は、前記後輪(WR)の車軸(51a)から取り出した駆動力によって駆動するように構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の電動車両。
【請求項9】
前記振動発生手段(56)の一部および前記振動発生手段(60,70,80,90)は、前記スイングアーム(17)に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の電動車両。
【請求項10】
前記音発生手段(60)は、車体側面視で前記後輪(WR)の車軸(51a)の後方の位置で前記スイングアーム(17)の内部に配設されていることを特徴とすると請求項6ないし9のいずれかに記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62004(P2012−62004A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209479(P2010−209479)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)