説明

電動駆動式起震車

【課題】 振動装置の構造を簡素として、製造及び維持管理が容易な起震車を提供することを目的としたものである。
【解決手段】 自動車の荷台上に振動ハウスを搭載し、この振動ハウスに対する振動装置5を荷台と振動ハウス間に設置してなる起震車である。振動装置5は、振動ハウスを上下に振動させる為の上下振動発生機構7と、振動ハウスを前後に振動させる為の前後振動発生機構8と、振動ハウスを左右に振動させる為の左右振動発生機構9とを一つのフレーム6上に設置して構成され、振動発生機構7、8、9が、自動車の動力取り出し軸で駆動される発電機の出力電力が給電される電動モータ14、25、32を動力源としている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、地震を模擬体験できるようにした電動駆動式起震車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、地震を模擬体験して、実際の地震の際に落ち着いて対処できるようにすることを目的に種々の起震車が開発されている。この種の起震車は、一般に、自動車の荷台上に振動ハウスを搭載し、この振動ハウスに対する振動装置を荷台と振動ハウス間に設置して構成されている(例えば、実公平6−7975号公報参照)。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
このような、地震を模擬体験できるようにした起震車においては、振動ハウスの振動の態様が様々な地震に対応できるようにしていたので、振動装置の構造が複雑になりがちで、製造及び維持管理(メンテナンス)に困難を来す問題点があった。
【0004】
本考案は斯かる問題点に鑑みてなされたもので、振動装置の構造を簡素として、製造及び維持管理が容易な起震車を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成する本考案は、自動車の荷台上に振動ハウスを搭載し、この振動ハウスに対する振動装置を荷台と振動ハウス間に設置してなる起震車において、前記振動装置は、振動ハウスを上下に振動させる為の上下振動発生機構と、振動ハウスを前後に振動させる為の前後振動発生機構と、振動ハウスを左右に振動させる為の左右振動発生機構とを一つのフレーム上に設置して構成され、各振動発生機構が、前記自動車の動力取り出し軸で駆動される発電機の出力電力が給電される電動モータを動力源としていることを特徴とする電動駆動式起震車である。
【0006】
【作用】
本考案の起震車によれば、電動モータで駆動される上下、前後及び左右の振動発生機構で振動装置が構成され、しかも全ての振動発生機構が一つのフレーム上に設置されているので、全体の構造が単純化され、製造及び維持管理を簡単にすることが可能となる。電動モータに給電される電圧、電流を制御することによって電動モータの回転速度を制御することが可能で、回転速度の変化によって、各振動発生機構の振動の加速度を調整することができるので、震度を変化させることも容易にできる。
【0007】
【実施例】
以下、本考案の実施例を添付の図を参照して説明する。
【0008】
図1は実施例の電動駆動式起震車1の外観を表したもので、自動車2の荷台3の上に振動ハウス4が搭載され、荷台3と振動ハウス4の床の間に、振動ハウス4に対する振動装置5が設置されているものである。振動装置5は、図2に示したように、荷台3上に設置された、外形方形の一つのフレーム6を介して構成されており、フレーム6に取り付けられた、振動ハウス4を上下方向に振動させる為の上下振動発生機構7と、振動ハウス4を前後方向に振動させる為の前後振動発生機構8と、振動ハウス4を左右に振動させる為の左右振動発生機構9とによって構成されている。
【0009】
上下振動発生機構7は、図3に示した偏心カム10をフレーム6の四隅に備えている。一対の偏心カム10毎に、フレーム6の側縁と略平行にそれぞれ設置された回転軸11に固定されている。回転軸11が、ギヤボックス12を介して、回転軸11間に設置した伝達軸13に連結され、伝達軸13に電動モータ14の動力がベルト15を介して伝達されるように構成してある。それぞれの偏心カム10の外側には、ベアリング16が嵌装され、ベアリング16の外周に、固定フランジ17a、17bを介してナイロン車輪18が取り付けられている(図3)
。フレーム6上に振動ハウス4を搭載すると、前記ナイロン車輪18が、振動ハウス4の床下面4aに取り付けたスライド板19と対向して当接するようにしてある。即ち、偏心カム10が回転すると、ナイロン車輪18が上下方向に振動し、ナイロン車輪18の上下方向の振動がスライド板19を介して振動ハウス4に伝えられるようにしてある。偏心カム10の偏心量を例えば10mmとして、振動ハウス4を24mmの振幅で上下方向に振動させることができる。
【0010】
前後振動発生機構8は、フレーム6の前方の側縁と略平行に設置した回転軸20の両端にそれぞれ減速機21を連結し、各減速機21から上向きに突出している出力軸22に、図4に示したように、偏心カム23を取り付け、この偏心カム23を、振動ハウス4の床下面4aから互いに平行に対向させて垂下させたガイド板24間に嵌装させて構成されている。回転軸20は、フレーム6に設置した電動モータ25とベルト26で連結されて、電動モータ25の動力によって回転するようにしてある。前記ガイド板24は、フレーム6の左右方向に沿って設置されているもので、偏心カム23を電動モータ25の動力で回転させると、振動ハウス4側を前後の方向で振動させることができるようになっている。偏心カム23の偏心量を例えば30mmとして、振動ハウス4を60mmの振幅で前後方向に振動させることができる。ガイド板24は、上下振動発生機構7による振動ハウス4の上下方向の振動の振幅距離よりも十分に長くしてあり、振動ハウス4が上下の方向で振動する時に、偏心カム23がガイド板24間から外れないようにしてある。また、ガイド板24をフレーム6の左右方向に沿って平行に対向させて設置することによって、次ぎに説明する左右振動発生機構9による振動ハウス4の左右方向の振動が、ガイド板24によって拘束を受けないようになっている。
【0011】
左右振動発生機構9は、前記前後振動発生機構8と類似の構成で、偏心カム27と嵌装するガイド板28の設置の方向を、フレーム6の前後の方向としたものである。偏心カム27は、フレーム6に前後の方向に沿って設置した回転軸29の両端にそれぞれ減速機30を設け、減速機30の上向きの出力軸31に取り付けてある。回転軸29は、その側方に設置した電動モータ32とベルト33を介して連結されている。このガイド板28も前記と同様に、振動ハウス4の上下方向の振動によって偏心カム27が外れない十分の長さを有している。また、前記前後振動発生機構8による振動ハウス4の前後方向の振動に拘束を与えないように、ガイド板28を前後の方向に沿って平行に設置し、偏心カム27が前後方向には自由に移動ができるようにしてある。この偏心カム27も前記と同様で、偏心量を例えば30mmとして、振動ハウス4を60mmの振幅で左右方向に振動させることができる。
【0012】
前後振動発生機構8におけるガイド板24が、上下振動発生機構7及び左右振動発生機構9の動作に拘束を与えないこと、また、左右振動発生機構9におけるガイド板28が、上下振動発生機構7及び前後振動発生機構8の動作に拘束を与えないことは前記の通りであり、更に、上下振動発生機構7におけるナイロン車輪18とスライド板19の当接構造は、ナイロン車輪18が前後、左右の方向には自由に移動できることから、前後振動発生機構8及び左右振動発生機構9の動作に拘束を与えない構造となっているものである。即ち、各振動発生機構は他の振動発生機構の構造によって拘束を受けることなく、自由に動作ができる構造となっているのである。
【0013】
前記各振動発生機構7、8、9のそれぞれの電動モータ14、25、32は、自動車2の動力取り出し軸に連結された発電機(図示していない)の出力電力が給電されるようにしてある。それぞれの電動モータに給電される電圧と電流を独立に制御することによって、電動モータ14、25、32の回転速度を個別に制御し、上下、前後及び左右の方向の振動の加速度を調整し、種々の振動態様を実現することができる。振動ハウス4を上下、前後及び左右の3方向で振動させるほか、電動モータ14のみを運転して振動ハウス4を上下方向のみで振動させるなど、単独の電動モータを運転して振動ハウス4を1方向で振動させたり、三つの電動モータのうち何れか二つの電動モータを運転して、振動ハウス4を2方向で振動させるなどの態様も可能である。
【0014】
振動装置5は、一つのフレーム6を介して構成した比較的簡単な構造であるので、フレーム6上に電動モータ14、25、32と、これら電動モータの動力を受ける回転軸や偏心輪等を設置することで、振動装置5を容易に組み立てることができる。しかも、組み立てた振動装置5を自動車2の荷台3上に設置し、その上に振動ハウス4を搭載することで起震車1を完成することができるので、起震車1の製造も容易とすることができる。また、振動装置5の維持管理も、振動ハウス4を荷台3から取り除くだけで、全ての電動モータ14、25、32及び回転軸、偏心輪などを露出させることができ、調整や、油脂類の供給などを簡単に行うことができる。
【0015】
【考案の効果】
本考案によれば、一つのフレーム上に上下、前後及び左右の振動発生機構を設置して振動装置を構成したので、製造及び維持管理の簡単な起震車を提供できる効果がある。また、各振動発生機構は電動モータを動力源とし、自動車の動力取り出し軸で駆動される発電機から給電するようにしたので、各振動発生機構の電動モータに給電する電圧、電流を制御することで振動の加速度を変化させることができ、振動の態様を簡単に制御することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の実施例の起震車の外観図である。
【図2】 同じく実施例の振動装置の平面図である。
【図3】 同じく実施例の上下振動発生機構の一部拡大断面図である。
【図4】 同じく実施例の前後振動発生機構の一部拡大側面図である。
【符号の説明】
1 電動駆動式起震車
2 自動車
3 荷台
4 振動ハウス
5 振動装置
6 フレーム
7 上下振動発生機構
8 前後振動発生機構
9 左右振動発生機構
10、23、27 偏心カム
11、20、29 回転軸
12 ギヤボックス
13 伝達軸
14、25、32 電動モータ
15、26、33 ベルト
16 ベアリング
17a、17b 固定フランジ
18 ナイロン車輪
19 スライド板
21、30 減速機
22、31 出力軸
24、28 ガイド板

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 自動車2の荷台3上に振動ハウス4を搭載し、この振動ハウス4に対する振動装置5を荷台3と振動ハウス4間に設置してなる起震車1において、前記振動装置5は、振動ハウス4を上下に振動させる為の上下振動発生機構7と、振動ハウス4を前後に振動させる為の前後振動発生機構8と、振動ハウス4を左右に振動させる為の左右振動発生機構9とを一つのフレーム6上に設置して構成され、各振動発生機構7、8、9が、前記自動車2の動力取り出し軸で駆動される発電機の出力電力が給電される電動モータ14、25、32を動力源としていることを特徴とする電動駆動式起震車。
【請求項2】 上下振動発生機構7と、前後振動発生機構8と、左右振動発生機構9が、互いに他の振動発生機構から拘束を受けることなく振動ハウス4に振動を与えられることができる構造としてある請求項1に記載の電動駆動式起震車。
【請求項3】 上下振動発生機構7は振動ハウス4の床下面4aに設置したスライド板19に当接するナイロン車輪18を備えていると共に、前後振動発生機構8は振動ハウス4の床下面4aに左右の方向に沿って互いに対向して設置したガイド板24間に嵌装する偏心カム23を備え、左右振動発生機構9は振動ハウス4の床下面4aに前後の方向に沿って互いに対向して設置したガイド板28間に嵌装する偏心カム27を備えている請求項2に記載の電動駆動式起震車。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3043495号
【登録日】平成9年(1997)9月3日
【発行日】平成9年(1997)11月18日
【考案の名称】電動駆動式起震車
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−4580
【出願日】平成9年(1997)5月16日
【出願人】(000192888)神奈川ポンプ株式会社 (1)