説明

電圧制御装置及び変電設備

【課題】計器用変成器の負担変化により発生する電圧誤差を補正して、正確なタップ制御を行う。
【解決手段】上位線路11の電圧を可変させる第一変圧器13と、下位線路15の電圧を降圧する第二変圧器19と、を備えた変電設備に設置され、第二変圧器の二次側電圧に基づいて第一変圧器の変圧比を制御する電圧制御装置50であって、第二変圧器の二次側電圧VLを測定する電圧測定手段と、二次側電流ILを測定する電流測定手段と、二次側電流に基づいて算出した第二変圧器の定格負担に対する負担率と該負担率において生ずる第二変圧器の出力電圧の誤差特性とから、誤差を補正する負担補正係数を算出する負担補正係数算出手段55と、を備え、二次側電圧を補正二次側電圧値により補正して二次側電圧値となるように、第一変圧器を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所又は変電所に設置された変圧器の二次側電圧の調整を行う電圧制御装置に関し、特に、計器用変成器を介して間接的に測定された電圧に含まれる誤差を補正することにより、精度の高い電圧調整を行うことが可能な電圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所又は変電所の母線電圧は定格電圧が数万〜数十万Vと非常に高く、母線に直接電圧計等の電気計器類や保護継電器等の制御回路を接続して動作させることはできない。そのため、計器用変成器(PT又はPD)によって母線電圧を十分に降圧させて、電気計器類を接続している。
上位線路の電圧を下位線路(母線)に対応した電圧に変える負荷時タップ切換変圧器の制御を行う制御機器類についても同様であり、制御機器類は計器用変成器の二次側に接続され、計器用変成器の二次側電圧に基づいて負荷時タップ切換変圧器の変圧比を変更している。つまり、計器用変成器の二次側電圧を測定することにより間接的に下位線路の電圧を測定し、この測定値に基づいて変圧器をタップ制御している。
【0003】
ここで、従来のタップ制御方法について図4を用いて具体的に説明する。図4は、従来のタップ制御に関わる変電設備部分を模式的に示した回路図である。
図示する変電設備は、主線路111の電圧を降圧するタップ切換変圧器(変圧器113)と、変圧器113の二次側に接続された母線115と、母線115が一次側に接続され、二次側が計器用線121に接続された計器用変成器119と、計器用線121内に配置されて、変圧器113の変圧比を制御する電圧制御装置150と、を備えている。
母線115は、甲母線115aと乙母線115bとからなる二重母線であり、甲母線115aと乙母線115bは母線連絡遮断器117にて連絡されている。また、甲母線115aと乙母線115bの夫々に甲側計器用変成器119a、乙側計器用変成器119bが設けられている。つまり、甲母線115aの電圧は甲側計器用変成器119aによって降圧され、乙母線115bの電圧は乙側計器用変成器119bによって降圧される。
図中、変圧器113の二次側は甲母線115aと接続されている。電圧制御装置150は、計器用変成器119の二次側に設置されており、甲側計器用変成器119a又は乙側計器用変成器119bの二次側の端子電圧を測定することにより端子電圧が所定の電圧となるように、変圧器113をタップ制御する。しかし、従来のタップ制御方式では、負担変化により生じた誤差を正確に補正することはできなかった。
変圧器のタップ制御を行うに当たり、電圧制御装置150によって測定される計器用変成器119の二次側電圧の測定値には誤差が含まれており、この誤差を適切に補正して正確なタップ制御を行うことが重要である。
【0004】
例えば特許文献1には、ボリューム抵抗を用いた電圧調整手段を備えた電圧補正機能付トランスジューサが記載されている。この発明では、計器用変成器の二次側から制御ケーブルを経由して電圧制御装置に導入される電圧が電圧降下を伴ったものであるので、この電圧降下分をボリューム抵抗により補正する。具体的には、ディジタル表示器に表示される補正後の電圧を確認しながらボリューム抵抗を用いて電圧調整を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−052941公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明は、制御ケーブルによる電圧降下分を予め想定した上で手動にて電圧調整を行う発明である。従って、計器用変成器の負担変化により発生する電圧の出力誤差に関しては、一切考慮されておらず、このような電圧変化分を調整することができないという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、計器用変成器の負担変化により発生する電圧誤差を補正して、正確なタップ制御を自動的に行うことのできる電圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続された下位線路と、該下位線路の電圧を降圧する第二変圧器と、を備えた変電設備に設置され、前記第二変圧器の二次側電圧を測定する電圧測定手段を備え、該電圧測定手段により測定した二次側電圧に基づいて前記第一変圧器の変圧比を制御する電圧制御装置であって、前記第二変圧器の二次側電流を測定する電流測定手段と、該電流測定手段により測定された二次側電流に基づいて算出した前記第二変圧器の定格負担に対する負担率と、該負担率において生ずる前記第二変圧器の出力電圧の誤差特性と、から、前記第二変圧器の出力電圧の誤差を補正する負担補正係数を算出する負担補正係数算出手段と、を備え、前記電圧測定手段により測定された二次側電圧を補正二次側電圧値により補正して二次側電圧値となるように、前記第一変圧器を制御する電圧制御装置を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記負担補正係数は、前記電圧測定手段により測定された二次側電圧値と、前記第二変圧器の出力誤差がないとした場合に出力される真の電圧値との比であり、前記補正二次側電圧値は、前記測定された二次側電圧値に前記負担補正係数を乗じたものである請求項1記載の電圧制御装置を特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記第一変圧器が負荷時タップ切換変圧器であり、前記第二変圧器が計器用変成器である請求項1又は2記載の電圧制御装置を特徴とする。
請求項1乃至3の発明では、第二変圧器の二次側電圧と二次側電流の双方に基づいて第一変圧器の制御を行う。つまり、二次側電流から第二変圧器の負担率とこの負担率において生ずる第二変圧器の出力誤差を求め、出力誤差を補正した補正二次側電圧を目標値として第一変圧器の制御を行う。
【0008】
請求項4に記載の発明は、上位線路と、該上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続された下位線路と、該下位線路の電圧を降圧する第二変圧器と、請求項1乃至3の何れか一項記載の電圧制御装置と、を備えた変電設備を特徴とする。
請求項4の発明では、変電設備における第一変圧器の制御において、第二変圧器の出力誤差を補正した補正二次側電圧を目標値として第一変圧器の制御を行うので、第一変圧器の電圧調整精度が向上する。
【0009】
請求項5に記載の発明は、上位線路と、該上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続されるとともに互いに遮断器により連絡された複数の下位線路と、該複数の下位線路の夫々に対応して設置されて該各下位線路の電圧を降圧する複数の第二変圧器と、請求項1乃至3の何れか一項記載の電圧制御装置と、前記複数の下位線路から前記第一変圧器と接続する一の下位線路を選択するとともに、該一の下位線路と対応する前記第二変成器の二次側電圧と二次側電流とを前記電圧制御装置に取り込むように選択する選択手段と、を備えた変電設備を特徴とする。
請求項5の発明では、第一変圧器を制御する基準となる電圧を出力する計器用変成器が選択手段により変更される複数母線構成の変電設備に関し、特に負担量が異なる計器用変成器に切り替わった場合に、計器用変成器の負担量変化に基づく出力誤差による制御変動を低減し、正確な電圧制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第二変圧器の負担量を第二変圧器の二次側電流から算出し、負担量によって変化する第二変圧器の誤差特性から、誤差を補正した補正二次側電圧値を求め、この電圧値を目標として第一変圧器を制御するので、第一変圧器の電圧調整精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る変電設備のタップ制御に関わる部分を模式的に示した回路図である。
【図2】計器用変成器の二次側負担の切換回路の模式図である。
【図3】計器用変成器の負担と計器用変成器から出力される電圧の誤差との関係をグラフで示した図である。
【図4】従来のタップ制御に関わる変電設備部分を模式的に示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る変電設備のタップ制御に関わる部分を模式的に示した回路図である。本発明は、母線電圧を出力する変圧器のタップ制御を行う際に、計器用変成器の二次側電圧及び二次側電流の値を測定し、二次側電流値から計器用変成器の電圧の誤差を求め、この誤差を補正した電圧値(補正二次側電圧値)に基づいてタップ制御を行う点に特徴がある。
図1に示す変電設備は、主線路11(上位線路)の電圧を降圧する負荷時タップ切換変圧器(変圧器13:第一変圧器)と、変圧器13の二次側に接続された母線15(下位線路)と、母線15の電圧を電気計器等に対応する電圧に降下させる計器用変成器19(PT又はPD:第二変圧器)と、計器用変成器19の二次側である計器用線21内に設置されて、計器用変成器19の二次側電圧値と二次側電流値とに基づいて変圧器13の変圧比を制御するタップ制御信号59を出力する電圧制御装置50と、を備えている。
ここで、主線路とは、母線15の上位に位置する電力系統の意味である。例えば、図示する母線15が二次母線であり、主線路11が一次母線であってもよい。もちろん、主線路11が複数母線構成の一次母線であってもよい。
【0013】
変圧器13は、停電を伴うことなくタップを切り替えることにより母線15の電圧を変更することのできる変圧器である。
母線15は、甲母線15aと乙母線15bとからなる二重母線であり、甲母線15aと乙母線15bは母線連絡遮断器17にて連絡されている。また、甲母線15aと乙母線15bとの間には一次側ラインスイッチ(一次側LS31、選択手段)が設置されており、一次側LS31のオン−オフによって、変圧器13の二次側が甲母線15aと接続されるか、乙母線15bと接続されるかが決定される。
【0014】
計器用変成器19は、甲母線15aと乙母線15bの夫々に設けられている。つまり、甲側計器用変成器19aの一次側には甲母線15aが接続され、二次側には甲側計器用線21aが接続されている。乙側計器用変成器19bの一次側には乙母線15bが接続され、二次側には乙側計器用線21bが接続されている。すなわち、甲母線15aの電圧は甲側計器用変成器19aによって降圧され、乙母線15bの電圧は乙側計器用変成器19bによって降圧される。なお、甲母線15aと乙母線15bの電圧は、それぞれ対応する計器用変成器19の二次側の端子間から間接的に取り出される。
計器用変成器19の二次側である計器用線21は、甲母線15aに対応する甲側計器用線21aと、乙母線15bに対応する乙側計器用線21bとから構成され、甲側計器用線21aと乙側計器用線21bとの間には、複数の二次側ラインスイッチ(二次側LS41〜45)が設置されている。そして、電圧制御装置50と、保護装置や電気計器等の負荷(負担)は、二次側LS41〜45を介して甲側計器用線21a又は乙側計器用線21bの一方と接続される。
【0015】
電圧制御装置50は、計器用変成器19の二次側の端子電圧(二次側電圧、VL)を測定する電圧測定手段51と、計器用変成器19の二次側に流れる電流(二次側電流、IL)を測定する電流測定手段52と、各種演算を行う演算手段53と、演算に必要な情報を記憶保持する記憶手段54と、電圧制御装置50に対して各種の設定を入力する入力手段57と、電圧制御装置50の設定状態や動作状態等を表示する表示手段58と、を備えている。
演算手段53は、CPU(Central Processing Unit)から構成され、電流測定手段52によって測定された二次側電流に基づいて計器用変成器19の定格負担に対する負担率を求め、この負担率において生ずる計器用変成器19の出力電圧の誤差特性から負担補正係数を算出する負担補正係数算出手段55と、負担補正係数と電圧測定手段51によって測定された二次側電圧とから補正二次側電圧値(目標電圧値)を求める補正電圧値算出手段56と、を備えている。そして、二次側電圧が補正二次側電圧値と一致するように変圧比を変更するよう、変圧器13に対してタップ制御信号59を出力する。
【0016】
記憶手段54は、計器用変成器の定格負担に対する負担率とこの負担率において生ずる計器用変成器19の出力電圧の誤差特性との関係をテーブル又は計算式等の状態にて記憶している。また、負担補正係数及び補正二次側電圧値を算出するために必要な計算式を保持している。
入力手段57は、入力ボタンやタッチパネル等、電圧制御装置50の設定に必要な入力をすることができる手段であればよい。そして、入力手段57からは、例えば計器用変成器19と電圧制御装置50とを結ぶ制御ケーブルの電圧降下分等、予め想定される電圧降下値を、変圧器13を制御するために必要な情報として入力することができる。
また、入力手段57から入力した情報は表示手段58により目視確認することができる。
電圧制御装置50としては、例えば、従来用いられている電圧計又は90リレー(積分形電圧調整継電器)に、計器用変成器の出力誤差及び外部から入力された電圧降下分の調整値に基づいて補正電圧値を算出する機能を付加した構成とすることができる。
【0017】
ここで、一次側LSと二次側LSの動作について図2を用いて説明する。図2は、計器用変成器の二次側負担の切換回路の模式図である。
甲母線15aと乙母線15bとの間には、複数の一次側ラインスイッチ(一次側LS31〜34)が設置されている。また、甲側計器用線21aと乙側計器用線21bとの間には、複数の二次側ラインスイッチ(二次側LS41〜45)が設置されている。二次側LS41、42の下流側には電圧制御装置50が接続され、二次側LS43〜45の下流側には電力系統を保護する保護装置61〜6が接続されている。
図中、一次側LS31と二次側LS41、42(選択手段)とが連動して動作し、各一次側LS32〜34と各二次側LS43〜45とが連動して動作する。つまり、二次側LSは、対応する一次側LSが動作した側(甲側又は乙側)に対応して甲側又は乙側へ切り替わるように、PT自動切替盤(不図示)にて制御されている。
これら二次側LSの切り替えにより、甲側計器用線21a又は乙側計器用線21bに接続される保護装置の量が変化し、計器用線21に流れる電流IL(二次側電流=負担)が変化する。
例えば、図2において甲側計器用線21aには1つの保護装置63が接続された状態であり、甲側計器用線21aには1[A]の電流ILが流れている。一方、乙側計器用線21bには2つの保護装置61、62が接続された状態であり、乙側計器用線21bには5[A]の電流ILが流れている。
このように、保護装置の接続数によって計器用変成器19の負担が変化する。
【0018】
本発明の電圧制御方法について図3に基づいて詳細に説明する。図3は、計器用変成器の負担と計器用変成器から出力される電圧の誤差との関係を示したグラフ図である。なお、この誤差特性は一例であり、これに限定されるものではない。
グラフ中、横軸が計器用変成器の二次定格負担に対する実際の負担率(%)を示し、縦軸が計器用変成器の二次側に出力される電圧の誤差(%)を示している。図示する誤差特性は、負担率40%のときに二次側電圧の出力誤差が0%となるように設計された計器用変成器のものである。負担率が40%より小さいときにはプラスの誤差を有し、電圧がやや大きく出力される。逆に、負担率が40%より大きいときにはマイナスの誤差を有し、電圧がやや小さく出力される。
【0019】
ここで、通常、計器用変成器19の二次側電圧が一定(例えば100[V])となるように、変圧器13がタップ制御されているので、本発明においては、二次側電圧の誤差を算出するときに考慮する負担として二次側電流のみを考える。
<ケース1>
例えば、計器用変成器19の二次定格負担が(100[V],5[A])=500[VA]であって、電圧測定手段51により二次側電圧が100[V]と測定され、電流測定手段52により二次側電流が1[A]と測定されている場合について考える。
図3のグラフから、定格負担に対する実際の負担率は、
(1[A]/5[A])×100=20%と求められる。
負担率20%のとき、二次側電圧には誤差として+0.5%が含まれているので、二次側電圧が100[V]と測定されているが、誤差がない場合には、
100[V]×(100%+0.5%)=100.5[V]
が出力されるはずである(真の電圧値)。そこで、現れた誤差を補正とするような負担補正係数を負担補正係数算出手段55により算出する。負担補正係数は、測定電圧値と真の電圧値との比、すなわち(負担補正係数)=(測定電圧値)/(真の電圧値)にて与えられる。つまり、上述の具体例では、
(負担補正係数)=100[V]/100.5[V]又は、
(負担補正係数)=100[%]/100.5[%]にて与えられる。
この負担補正係数から、補正電圧値算出手段56は、計器用変成器19の二次側に接続された負担を考慮した補正二次側電圧値を算出する。
(補正二次側電圧値)=(測定電圧値)×(負担補正係数)である。
本例の場合、計器用変圧器の二次側電圧が、
(補正二次側電圧値)=(100[V])×(100/100.5)≒99.5[V]
となるように、変圧器13をタップ制御すればよい。
【0020】
<ケース2>
マイナスの誤差が出ている場合も、ケース1と同様に計算できる。
例えば、計器用変成器19の二次定格負担が(100[V],5[A])=500[VA]であって、電圧測定手段51により二次側電圧が100[V]と測定され、電流測定手段52により二次側電流が5[A]と測定されている場合について考える。
図3のグラフから、定格負担に対する実際の負担率は、
(5[A]/5[A])×100=100%と求められる。
負担率100%のとき、測定された二次側電圧には誤差として−1.5% が含まれているので、二次側電圧が100[V]と測定されているが、誤差がない場合には、
100[V]×(100[%]−1.5[%])=98.5[V]
が出力されるはずである(真の電圧値)。負担補正係数は、ケース1と同様に、
(負担補正係数)=100[V]/98.5[V]である。
この負担補正係数から、求められる補正二次側電圧値は、
(補正二次側電圧値)=(100[V])×(100/98.5)≒101.5[V]
この具体例の場合、計器用変圧器の二次側電圧が101.5[V]となるように、変圧器13をタップ制御すればよい。
【0021】
<ケース3>
ケース1又はケース2において、さらに入力手段57から、計器用変成器19と電圧制御装置50とを結ぶ制御ケーブルの電圧降下分等の値が入力されている場合、補正電圧値算出手段56は、補正二次側電圧値として、
(補正二次側電圧値)=(測定電圧値)×(負担補正係数)+(電圧降下値)
を算出し、計器用変圧器の二次側電圧が、補正二次側電圧値に一致するように、変圧器13をタップ制御する。
【0022】
以上のように本発明によれば、計器用変成器の定格負担に対する、計器用変成器の二次側に接続された負担の割合を二次側電流から求め、負担割合から二次側電圧の出力誤差を算出して、誤差を補正した補正二次側電圧を求めて、この電圧値を目標として変圧器をタップ制御するので、計器用変成器の二次側負担の増減に対応して、誤差が生じないように変圧器がタップ制御されるので、変圧器の電圧調整精度が向上する。
【0023】
本発明は、単母線、その他の複数母線、環状母線等にも適用可能であるが、特に複数母線構成の場合に有効である。
図2において変圧器13は甲母線15a側と接続されており、甲側計器用線21aの電圧と電流に基づいて変圧器13がタップ制御されている。図示するように、甲側計器用線21aに流れる電流は1[A]、乙側計器用線21bに流れる電流は5[A]と、値が異なっている。この状態で、PT自動切替盤(不図示)によって、一次側LS31と二次側LS41、42が甲側から乙側に切り替わると、甲側計器用変成器19aと乙側計器用変成器19bの出力誤差が異なることから、母線15側の電圧が一定であっても、二次側電圧値として異なった値が測定される。この測定値に基づいて変圧器13をタップ制御すると、一次側LSと二次側LSが切り替わった直後にタップ制御信号59が大きく変動することとなる。
しかし、本発明においては、計器用変成器19の負担変化による誤差を補正して変圧器13のタップ制御を行うので、甲側又は乙側に切り替わったときに生ずる出力電圧の変動によるタップ制御変動を低減し、正確なタップ制御をすることができる。
【符号の説明】
【0024】
11…主線路、13…変圧器、15…母線、17…母線連絡遮断器、19…計器用変成器、21…計器用線、31〜34…一次側LS、41〜45…二次側LS、50…電圧制御装置、51…電圧測定手段、52…電流測定手段、53…演算手段、54…記憶手段、55…負担補正係数算出手段、56…補正電圧値算出手段、57…入力手段、58…表示手段、59…タップ制御信号、61〜63…保護装置、111…主線路、113…変圧器、115…母線、117…母線連絡遮断器、119…計器用変成器、121…計器用線、150…電圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続された下位線路と、該下位線路の電圧を降圧する第二変圧器と、を備えた変電設備に設置され、
前記第二変圧器の二次側電圧を測定する電圧測定手段を備え、該電圧測定手段により測定した二次側電圧に基づいて前記第一変圧器の変圧比を制御する電圧制御装置であって、
前記第二変圧器の二次側電流を測定する電流測定手段と、
該電流測定手段により測定された二次側電流に基づいて算出した前記第二変圧器の定格負担に対する負担率と、該負担率において生ずる前記第二変圧器の出力電圧の誤差特性と、から、前記第二変圧器の出力電圧の誤差を補正する負担補正係数を算出する負担補正係数算出手段と、を備え、
前記電圧測定手段により測定された二次側電圧を前記負担補正係数から算出された補正二次側電圧値により補正して二次側電圧値となるように、前記第一変圧器を制御することを特徴とする電圧制御装置。
【請求項2】
前記負担補正係数は、前記電圧測定手段により測定された二次側電圧値と、前記第二変圧器の出力誤差がないとした場合に出力される真の電圧値との比であり、
前記補正二次側電圧値は、前記測定された二次側電圧値に前記負担補正係数を乗じたものであることを特徴とする請求項1記載の電圧制御装置。
【請求項3】
前記第一変圧器が負荷時タップ切換変圧器であり、前記第二変圧器が計器用変成器であることを特徴とする請求項1又は2記載の電圧制御装置。
【請求項4】
上位線路と、該上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続された下位線路と、該下位線路の電圧を降圧する第二変圧器と、請求項1乃至3の何れか一項記載の電圧制御装置と、を備えたことを特徴とする変電設備。
【請求項5】
上位線路と、該上位線路の電圧を可変させる第一変圧器と、該第一変圧器の二次側に接続されるとともに互いに遮断器により連絡された複数の下位線路と、該複数の下位線路の夫々に対応して設置されて該各下位線路の電圧を降圧する複数の第二変圧器と、請求項1乃至3の何れか一項記載の電圧制御装置と、前記複数の下位線路から前記第一変圧器と接続する一の下位線路を選択するとともに、該一の下位線路と対応する前記第二変成器の二次側電圧と二次側電流とを前記電圧制御装置に取り込むように選択する選択手段と、を備えたことを特徴とする変電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130152(P2012−130152A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279061(P2010−279061)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】