説明

電圧変換装置

【課題】家庭用の商用電源等からの単相交流100Vあるいは200Vを三相交流200Vで数KWの大きさの出力に変換できる簡易な構成の電圧変換装置を提供する。
【解決手段】電圧変換装置10は、単相交流100V電源に接続されて過負荷状態になった時に通電を遮断するブレーカ23と、ブレーカ23に接続されて入力された単相交流100Vを220Vに変圧する変圧器17と、変圧器17の出力端子が三相交流の入力端子の内の2端子に接続され、単相交流電圧を高出力の三相交流電圧に変換して三相交流200V用の負荷装置2に出力する三相インバータ21と、三相インバータ21に接続される直流リアクトル25とを備える。三相インバータ21のキャリア周波数が最小の値に設定されており、変圧器17と三相インバータ21が単相交流100V電源1及び負荷装置2と共通の接地線で接続されて接地されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相交流電源からの単相交流電圧を三相交流電圧に変換して出力するための電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などに設けられている油圧ポンプ、クーリングタワー、エアコン、給水・排水ポンプ、フライス、旋盤等の汎用加工機、コンプレッサー、集塵機、農業機械、クレーン、シャッター等の負荷装置を駆動するための動力用の商用三相交流200V電源については、低圧電力契約を行う必要がある。しかし、これら負荷装置が定常的にはあまり使用されない場合でも、使用に備えて電源を保持するために高額の低圧電力契約を行う必要があり、電力の使用頻度が低い割に電力料金の負担が大きくなっていた。これに対して、例えば特許文献1に示すように、家庭用の単相交流100V電源等から供給を受けた単相交流電圧を倍電圧整流する単相倍電圧整流回路と、その出力直流電圧をスイッチングして三相交流200Vに変換して、負荷装置である電気洗濯機やエアコン等の三相モータに供給するインバータ回路により構成されるインバータ装置が知られている。しかし、このインバータ装置においては、変換される三相交流200V出力が1KW以下と小さいため、家庭用の低電力の負荷としては使用可能であるが、工場等における負荷装置の動力用のように数KWを必要とする用途には使用できなかった。また、災害時のような非常時において使用される単相交流100V出力用小型発電機が知られているが、これについても家庭用等では使用されているが、三相交流200Vで駆動される工場等の動力用には使用できないという不便があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−244183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、家庭用の商用電源や小型発電機からの単相交流100Vあるいは200Vを三相交流200Vで数KWの大きさの出力に変換して、工場等における種々の負荷装置に供給できる簡易な構成の電圧変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の特徴は、単相交流電源からの単相交流100Vあるいは200V入力を三相交流200Vで数KWの大きさの出力に変換して三相交流200V用の負荷装置に出力できる電圧変換装置であって、単相交流電源に接続されて負荷装置が過負荷状態になった時に通電を遮断するブレーカと、ブレーカに接続されて単相交流電源から入力された単相交流電圧を200Vより高い交流電圧に変圧する変圧器と、三相交流の各3つの入力端子と出力端子を有しており、変圧器の出力端子が3つの入力端子の内の2端子に接続され、変圧器からの単相交流電圧を三相交流200Vに変換して出力端子から負荷装置に出力する三相インバータと、三相インバータに接続される直流リアクトルとを備え、三相インバータのキャリア周波数が最小の値に設定されており、三相インバータが単相交流電源及び負荷装置と共通の接地線で接続されて接地されるようになっていることにある。
【0006】
本発明においては、単相交流電源にソケット等を介して変圧器が接続されることにより、単相交流100V又は200Vが変圧器によって200Vを越えた単相交流電圧に変圧され、この変圧器の出力が三相インバータの3つの入力端子の内の2端子に接続されることにより、三相インバータにおいて三相交流200Vで数KW程度の大きな電力が生成される。生成された三相電力が3つの出力端子から出力され、三相交流200V用の負荷装置に供給される。ここで、変圧器の出力電圧を定格の200Vより大きくすることにより、三相インバータからの出力電圧を定格200Vに合わせることができる。また、三相インバータが単相交流電源及び負荷装置と共通の接地線で接続されて接地されるようになっているため、変圧器の交流出力が三相インバータで吸引されることによる三相インバータからの三相交流出力が低下する不具合が避けられる。さらに、三相インバータのキャリア周波数が最小の値に設定されていることにより、接続される負荷装置の安全が確保される。
【0007】
また、ブレーカを設けたことにより、負荷装置が過負荷状態になったときには通電が確実に遮断されるため、負荷装置の安全が確保される。また、直流リアクトルを設けたことにより、三相インバータからの三相交流出力の力率を改善し、ノイズを低減でき、また一過性の過電流を抑制できるため、三相交流出力が安定化される。その結果、本発明においては、単相交流電源に電圧変換装置を接続することにより、単相交流100Vあるいは200V入力を三相交流200Vで数KWの大きさの出力に安定して変換することができるため、三相交流200Vの低圧電力契約を行わなくても、工場等における三相交流200V用のコンプレッサ、油圧ポンプ等の負荷装置を簡易かつ安価に駆動することができる。
【0008】
また、本発明において、三相インバータに加えて変圧器も、単相交流電源及び負荷装置と共通の接地線で接続されて接地させることができる。これにより、変圧器の絶縁が低下した場合でも、電圧変換装置の安全が確保され、また出力電圧の低下が抑えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、家庭用等の単相交流電源からの単相交流出力を三相交流200Vで数KWの大きな電力に安定した状態で変換することができるので、このような電圧変換装置を利用することにより、三相交流200V用で数KW容量の高電力の負荷装置を駆動させることができる。その結果、本発明においては、工場等で使用頻度の少ない三相交流200V用のエアコン、油圧ポンプ等の負荷装置を駆動させるために、高額の三相交流200Vの低圧電力契約を行わなくてもよいので、電力料金を大幅に低減できる。また、災害時等において、単相交流電力を発電する小型発電機を用いて、工場等における三相交流200V用の負荷装置を簡易かつ安価に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である電圧変換装置の前面扉を開いた状態を示す正面図である。
【図2】同電圧変換装置を示す左側面図である。
【図3】同電圧変換装置の右側板を除いた状態を示す右側面図である。
【図4】同電圧変換装置の使用状態を説明するブロック図である。
【図5】変形例である電圧変換装置の使用状態を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1、図2、図3は、一実施例である商用の単相交流100V電源1からの電圧を三相交流200Vで数KWの三相電力に変換して工場等におけるコンプレッサ、油圧ポンプ等の動力用の負荷装置2に供給する電圧変換装置10を正面図、左側面図及び右側面図(右側板を除く)により示したものである。以下、電圧変換装置10の前後及び左右については、図1の前後及び左右に合わせるものとする。
【0012】
電圧変換装置10は、鉄製の薄板を加工した縦長の直方体であって、前面側が前面扉12により開放可能にされた中空の箱状である装置本体11を有しており、装置本体11の底板11aの左右両側に設けた長尺のコの字状の一対の脚13により、床面G上に載置されている。前面扉12は、装置本体11の右側板11b前縁に蝶番12aにより回転可能に片持ち支持されており、装置本体11の前面を開閉可能としている。装置本体11の底板11a上には、鉄板の曲げ加工により形成されたL字状の取付台14が載置されている。
【0013】
取付台14は、水平板14aと垂直板14bを有しており、水平板14aの前側が直角に折り曲げられさらにその先端側が直角に折り返された補強部14cを有している。取付台14は、水平板14aが補強部14cにて底板11a上に載置されてボルト14dにより固定されると共に、後縁側が底板11a後縁側に設けたボス15に支持されて水平にされている。また、取付台14の垂直板14bが、背面板11cに近接して背面板11cの四隅近傍に設けたボス15に当接した状態でボルト15a止めされて装置本体11内に配設されている。そのため、取付台14は、ボルト14d、ボルト15aを取り外すことにより、装置本体11内に出し入れすることができる。
【0014】
取付台14の水平板14a上には変圧器17が載置されており、その下側が前後に設けたくの字状の固定部材18により挟まれており、固定部材18を水平板14aと変圧器17側にそれぞれボルト18a止めすることにより、変圧器17が水平板14aに強固に固定されている。変圧器17は、一次・二次電圧比が100V/220Vと、二次側が定格電圧200Vより10%程度高くなるように設定されている。変圧器17の上方には、三相交流200V用インバータ21(以下、三相インバータ21と記す。)が垂直板14bに固定されている。三相インバータ21は、キャリア周波数が最低値になるように調整されている。
【0015】
垂直板14bの三相インバータ21の左隣上側には、ブレーカ23が取り付けられている。ブレーカ23は、後述する入力コード29と変圧器17の間に設けられて、入力側からの供給電力が過負荷状態になったときに通電を遮断するものであり、また電圧変換装置10が使用されていない状態では、装置の安全のために電気的接続を遮断できるようになっている。また、ブレーカ23と重なり合った状態で、直流リアクトル25が垂直板14bに取り付けられている。直流リアクトル25は、三相インバータ21に接続されており、三相インバータ21の出力の力率の改善、ノイズの低減、一過性の過電流の抑制等に寄与し、出力を安定化させるものである。垂直板14bにおいてブレーカ23の下側には、装置本体11内に配線される多数のリード線を中継する中継端子部27が取り付けられている。上述したように、取付台14は装置本体11内から取り出すことができるので、取付台14に重量の重い変圧器17や、三相インバータ21等を組みつけた後に、装置本体11内に挿入することができ、また故障等の際には、ボルト14d,15aを緩めて装置本体11外に取り出して処理することができる。そのため、電圧変換装置10の組み立てや保守等において便利である。
【0016】
装置本体11の左側板11dの後方下端側には、単相交流100V電源1に接続されるコンセント29aが取り付けられた入力コード29が固定されるコード固定部31が設けられている。左側板11dのコード固定部31横の左右中央には、出力コンセント33が取り付けられており、三相交流200V用のコンプレッサ等負荷装置2の入力用コード33aのコンセント(図示しない)が接続されるようになっている。左側板11dの上端側の中央には、電圧変換装置10の動作をオンとオフとリセットに切り替える入力切替スイッチ35が取り付けられている。入力切替スイッチ35の下側の左側板11d内面には、変圧器17、三相インバータ21等の接地端子を接続する接地コードをまとめる接地部37が取り付けられている。
【0017】
装置本体11内におけるブレーカ23、変圧器17、三相インバータ21及び直流リアクトル25等と、単相交流100V電源1及び負荷装置2の接続状態について、図1、図3及び図4により説明する。単相交流100V電源1に接続される入力コード29は、コード固定部31を経て装置本体11内に延設されて、入力切替スイッチ35に接続され、入力切替スイッチ35の出力側がコード29bによりブレーカ23の入力端子に接続されている。ブレーカ23の出力側はコード29bにより中継端子部27を経て変圧器17の一次端子に接続される。変圧器17の二次端子は、コード29cにより中継端子部27を経て三相インバータ21の2相の入力端子R,Sに接続される。三相インバータ21の三相出力端子U,V,Wからのコード29dは出力コンセント33に接続される。
【0018】
ここで、入力コード29の接地線29e(図において点線で示す)は、接地部37に接続され、接地部37から変圧器17と三相インバータ21と出力コンセント33の接地端子にそれぞれ接続されている。これにより、負荷装置2の入力用コード33aが出力コンセント33に接続されると、単相交流100V電源1と、変圧器17と三相インバータ21と負荷装置2とが共通の接地線によって接続されるため、これらのいずれかにおいて接地線がアースされることにより、全体がアースされることになる。なお、変圧器17については、絶縁が十分に確保されているような場合は、必要に応じて接地線29eに接続しないことも可能である。
【0019】
上記構成の実施例においては、単相交流100V電源1に入力コード29がコンセント29aによって接続されることにより、単相交流100Vが変圧器17によって200Vを越えた単相交流電圧に変圧され、この変圧器17の出力が三相インバータ21の2端子R,Sに入力される。さらに、三相インバータ21の出力側三端子U,V,Wからは、三相交流200Vが出力され、出力コンセント33を通して入力用コード33aにより負荷装置2に供給される。ここで、変圧器17の出力電圧が定格電圧200Vより10%程度高く設定されていることにより、三相インバータ21からの出力電圧を200Vに合わせることができ、さらに三相インバータ21により三相200Vの出力を1〜3KW程度まで高めることができる。また、単相交流100V電源1と、変圧器17と三相インバータ21と負荷装置2とが共通の接地線によって接続されていずれかで接地されているため、変圧器17の電力出力が三相インバータ21で吸引されることにより、電力出力が低下することが防止され、また変圧器17の絶縁が不十分な状態でも電圧変換装置10の安全が確保される。さらに、三相インバータ21のキャリア周波数が最小値に設定されていることにより、接続される負荷装置2の安全が確保される。
【0020】
その結果、本実施例においては、電圧変換装置10を用意することにより、工場等で使用頻度の少ない三相交流200V用のエアコン、油圧ポンプ等の負荷装置2を駆動させるために商用三相交流200Vの低電力契約を行わなくても、家庭用の単相交流100V電源1を利用することにより、三相交流200Vで3KW程度までの高電力用の負荷装置2を駆動させることができるため、電力料金を大幅に低減することができる。また、この電圧変換装置10は、比較的小型で軽量であるため、持ち運びにも便利であり、またコストも安価であるため容易に購入が可能である。
【0021】
なお、上記実施例においては、電圧変換装置10を単相交流100Vの商用電源に適用した場合について説明されているが、商用電源に代えて単相交流100Vを発電する小型発電機に適用することもできる。例えば、災害時等において単相交流100Vを発電する小型発電機に電圧変換装置10を適用することにより、工場等の三相交流200V用のエアコン、油圧ポンプ等の負荷装置2を駆動させることができる。
【0022】
つぎに、上記実施例の変形例について図5により説明する。
本変形例においては、上記単相交流100V電源1に代えて、単相200V出力の単相交流200V電源3としたものであり、それに伴い上記変圧器17に代えて、一次・二次電圧比が200V/220Vの変圧器39とした。上記単相交流100V電源1は、家庭用の商用単相交流電源の単三端子の100V端子とニュートラル端子を接続して用いるものであるが、単相交流200V電源3としては、家庭用の商用単相交流電源の単三の2つの100V端子を接続するようにしたものである。そのため、入力コード29のコンセント29gが、上記コンセント29aに代えて、2つの100V端子に接続できるような構造のものに変更されている。その他の構成については上記実施例と同様である。
【0023】
これにより、変形例では、単相交流200V電源3から単相交流200Vが出力され、変圧器39により単相交流220Vに昇圧されて三相インバータ21に入力される。ここで、変圧器39に入力される交流入力は電流容量が大きいため、三相インバータ21からの出力も最大8KW程度にまで高められる。その結果、変形例においては、上記実施例に比べてさらに高い電力の負荷装置を駆動することが可能になる。なお、変形例においては、単相交流200V電源については、商用単相交流電源を使用しているが、これに代えて、小型の単三200V発電機を使用することも可能である。
【0024】
なお、上記実施例における装置本体の形状や装置本体内の変圧器、三相インバータ、ブレーカ等の規格や配置については電圧変換装置の性能により異なるものであり、実施例に限られるものではない。その他、上記実施例や変形例については一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0025】
10…電圧変換装置、11…装置本体、17,39…変圧器、21…三相インバータ、23…ブレーカ、25…直流リアクトル、29…入力コード、29e…接地線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相交流電源からの単相交流100Vあるいは200V入力を三相交流200Vで数KWの大きさの出力に変換して三相交流200V用の負荷装置に出力できる電圧変換装置であって、
前記単相交流電源に接続されて前記負荷装置が過負荷状態になった時に通電を遮断するブレーカと、該ブレーカに接続されて前記単相交流電源から入力された単相交流電圧を200Vより高い交流電圧に変圧する変圧器と、三相交流の各3つの入力端子と出力端子を有しており、前記変圧器の出力端子が該3つの入力端子の内の2端子に接続され、該変圧器からの単相交流電圧を三相交流200Vに変換して該出力端子から前記負荷装置に出力する三相インバータと、該三相インバータに接続される直流リアクトルとを備え、前記三相インバータのキャリア周波数が最小の値に設定されており、前記三相インバータが前記単相交流電源及び負荷装置と共通の接地線で接続されて接地されるようになっていることを特徴とする電圧変換装置。
【請求項2】
前記三相インバータに加えて前記変圧器も、前記単相交流電源及び負荷装置と共通の接地線で接続されて接地されることを特徴とする請求項1に記載の電圧変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−90435(P2013−90435A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228651(P2011−228651)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(508362310)八和エレック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】