説明

電子スタンプ

【課題】インクジェットヘッドを大型化することなく、小型で必要部分のみを変更して印字を容易に行うことのできる電子スタンプを提供する。
【解決手段】本発明の電子スタンプ1は、底面に設けられた転写印字部と、前記転写印字部を通過すべく所定方向へ搬送可能に設けられた被転写部材と、前記転写印字部よりも前記被転写部材の搬送方向上流側で前記被転写部材の表面に近接配置され、該被転写部材表面に印字情報に基づきインクを噴出させて印字情報を転写する印刷部と、スタンプ装置本体15に被せたトップケース3の前記印刷媒体の上方から下方への移動に連動させて、前記被転写部材を前記印刷部位置から前記転写印字部へ搬送させる被転写部材搬送機構と、該被転写部材搬送機構による被転写部材の搬送に応答してインクを噴出すべく前記印刷部を駆動させる印刷制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体上に底面を接触させて印字を行う電子スタンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子スタンプは、例えば、特開平8−67032号公報(特許文献1)における底面印字型ハンディプリンタのように、直接、用紙に対してインクを吹き付けるノズル列を備えたインクジェットヘッドを有し、該ノズル列に対し垂直方向にインクジェットヘッドを移動させながら印刷データに応じてインクを噴出することにより印影となるスタンプ柄の印刷を実現している。
【0003】
しかしながら、この方法では、印刷するスタンプの大きさに応じて、ノズル列の長さを長くしたり、ノズル数を増やしたりする必要があり、インクジェットヘッドを大型化する必要があった。このため、インクジェットヘッドの大型化に伴い、電子スタンプの価格が高くなってしまう問題がある。
【0004】
また、従来の電子スタンプでは、スタンプ柄と日付などのデータとを同時にスタンプする際には、日付などのデータを印刷する領域に加え、スタンプ柄となる領域を含む全領域に対応する印刷領域を持たなくてはならず、該印刷領域の全幅長のノズル列をもたなくてはならなかった。
【0005】
また、例えば、特開2006−525880公報(特許文献2)における印刷装置のように、ノズル列に対し垂直方向に移動するインクジェットヘッドと、インクを供給するインクタンクとを移動させる機構を搭載すると、製品サイズ的にも大きなものとなってしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−67032号公報
【特許文献2】特開2006−525880公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、前記問題点に対し、インクジェットヘッドを大型化することなく、小型で必要部分のみを変更して印字を容易に行うことのできる電子スタンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、印刷媒体上に底面を接触させて印字を行う電子スタンプにおいて、前記底面に設けられた転写印字部と、前記転写印字部を通過すべく所定方向へ搬送可能に設けられた被転写部材と、前記転写印字部よりも前記被転写部材の搬送方向上流側で前記被転写部材の表面に近接配置され、該被転写部材表面に印字情報に基づきインクを噴出させて印字情報を転写する印刷部と、スタンプ装置本体に被せたトップケースの前記印刷媒体の上方から下方への移動に連動させて、前記被転写部材を前記印刷部位置から前記転写印字部へ搬送させる被転写部材搬送機構と、該被転写部材搬送機構による被転写部材の搬送に応答してインクを噴出すべく前記印刷部を駆動させる印刷制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、電子スタンプは、前記被転写部材及び前記印刷部を収納した内ケースが、スタンプ装置本体に対して上下方向に摺動可能としてスタンプ装置本体に収納され、この内ケースが前記トップケースと連動してスタンプ装置本体に対して上下移動するとき、スタンプ装置本体の内壁に固定されたラックギアと歯合するピニオンギアの回転により被転写部材を搬送させることを特徴とする。
【0010】
そして、前記スタンプ装置本体の内壁には、前記内ケースの内部に突出するテープ引出しピンを有し、前記内ケースが前記スタンプ装置本体内を降下するとき、前記テープ引出しピンは、内ケース内で上昇して内ケースの内部に収納された被転写部材を供給コアから引出すことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記転写印字部は、印字情報が転写された被転写部材を露出させる開口を有し、前記開口の周囲にゴムの印面を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子スタンプは、データを変更したい部分の幅となる長さのノズル列を形成すればよく、小さなインクジェットヘッドで構成できるため安価な電子スタンプを供給できる。
【0013】
また、インクジェットヘッドとインクタンクを移動するのではなく、被転写部材とする転写用フィルムテープを移動させて印刷するため、省スペースでの実装が可能となり、製品を小型化する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る電子スタンプの外観を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る電子スタンプのゴム印面と転写印字領域を示す参考図である。
【図3】本発明の実施例に係る電子スタンプの機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係る電子スタンプの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係る電子スタンプの動作説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る電子スタンプの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。本発明の電子スタンプ1は、印刷部となるノズル列65を備えたインクジェットヘッド97と、インクが染み込まない樹脂素材で形成された被転写部材としての転写用フィルムテープ73と、電子スタンプ1の底面に形成されゴム印面27のデータを印刷する部分を切り抜いた転写開口部23を形成した転写印字部を備え、インクジェットヘッド97のノズル列65から噴出したインクを転写用フィルムテープ73に載せ、その転写用フィルムテープ73に印刷された部分を、該転写印字部の切り抜き部分となる転写開口部23にまで搬送し、転写用フィルムテープ73に印刷された部分を転写開口部23から露出させて転写印字部と同時に用紙へ押し付けることにより、転写印字部のスタンプ柄とインクジェットヘッド97で印刷したインクが用紙に転写することで、所要のスタンプ柄を捺印することを可能としている。
【0016】
また、被転写部材である転写用フィルムテープ73及び印刷部となるノズル列65を備えたインクジェットヘッド97を収納した内ケース33は、スタンプ装置本体15に対して上下方向に摺動可能としてスタンプ装置本体15に収納され、この内ケース33がスタンプ装置本体15に対して上下移動するとき、スタンプ装置本体15の内壁に固定されたラックギア17と歯合するピニオンギア51の回転により被転写部材を搬送させる。
【0017】
そして、前記スタンプ装置本体15の内壁には、前記内ケース33の内部に突出するテープ引出しピン21を有し、前記内ケース33が前記スタンプ装置本体15内を降下するとき、前記テープ引出しピン21が内ケース33内で上昇して内ケース33の内部に収納された被転写部材を供給コア69から引出すようにしている。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、本発明の実施例に係る電子スタンプ1の外観を示す斜視図であり、図2は本発明の実施例に係る電子スタンプ1の捺印したスタンプ柄と印字データの転写印字領域aを示す参考図である。
【0019】
この電子スタンプ1は、図1に示すように底面に転写印字部となるゴム印面(図示しない)を有し内ケースを内蔵する立方形状に形成されたスタンプ装置本体15と、該スタンプ装置本体15の上方を覆うように配置されて薄肉無底立方形状に形成されたトップケース3とで構成され、この電子スタンプ1を用紙上に載置し、該トップケース3を押し下げることにより、図2に示すようなスタンプ柄を捺印することができる電子スタンプ1である。
【0020】
また詳細には、スタンプ装置本体15には、ノズル列を有するインクジェットヘッドを備えたインクカートリッジや、インクが染み込まない樹脂素材で出来た転写用フィルムテープを備えた内ケースが収納され、スタンプ装置本体15の底面には、データを印刷したい部分が切り抜かれている転写印字部となるゴム印面を備えており、インクジェットヘッドのノズル列から噴出したインクを転写用フィルムテープに載せ、その転写用フィルムテープの印刷された部分を転写印字部の切り抜き部分まで搬送し、印刷された転写用フィルムテープを該切り抜き部分から露出させてゴム印面と同時に用紙へ押し付けることにより、ゴム印面のスタンプ柄とインクジェットヘッドで噴出したインクを用紙に転写することで、スタンプ柄を形成することを可能としている。
【0021】
そして、この電子スタンプ1は、図3に示すように、制御部6と、プリンタ部8と、及びこれらを動作させる電源としてのバッテリー95を備えている。
【0022】
この制御部6は、印刷制御手段とされるマイクロコンピュータとしてのCPU12と、CPU12に接続された入力部7や表示部5、各種のシステムプログラムやフォント等が記憶されたROM13、ワークメモリとしてのRAM14を備える。
【0023】
そして、印刷制御手段とされるCPU12は、入力部7からのキー操作信号に応じて、又は、自動でROM13に予め記憶されているシステムプログラムを起動させ、RAM14をワークメモリとして回路各部の動作を制御する。
【0024】
ROM13は、記憶手段とされるものであって、入力部7から入力された文字を印刷するためのプログラム、印刷フォント、印刷データ等が記憶されている。
【0025】
RAM14は、記憶手段とされるものであって、入力部7から入力された文字などを記憶する入力データメモリ、入力された文字などの印刷情報が展開された印刷パターンデータが記憶される印刷データメモリ、表示部5に表示されるパターンデータが記憶される表示データメモリ等の各領域が確保され、印刷処理等に必要なデータを一時的に記憶するレジスタやカウンタ等が設けられている。
【0026】
プリンタ部8は、ノズル列を有するインクジェットヘッド97と、エンコーダ99となるセンサとで構成されている。プリンタ部8のインクジェットヘッド97は、制御手段とされるCPU12からの印字情報となる信号に応じて、印刷部となるノズル列よりインクの噴出を行う。また、エンコーダ99は、図示しないがトップケース3の押し下げられた長さ(トップケース3の位置)を計測するセンサであり、エンコーダスリットとなる黒線を検出し、パルス信号を印刷制御手段とされるCPU12へ信号を送信する。
【0027】
更に、この本発明の実施例に係る電子スタンプ1の分解斜視図である図4を用いて、本実施例の電子スタンプ1の内部構造について具体的に述べる。
【0028】
電子スタンプ1は、トップケース3と、スタンプ装置本体15と、内ケース33とで構成されている。このトップケース3は、スタンプ装置本体15の上部を覆うように配設され、また内ケース33は、スタンプ装置本体15の内部を上下に摺動可能に内設されている。そして、スタンプ装置本体15の上面には、摺動穴31が形成されており、この摺動穴31の内部を摺動するように、内ケース33の上部に形成されている連結軸35が貫通してトップケース3と内ケース33とが接続され、トップケース3を押し下げると内ケース33も同時に押し下げられるようになっている。
【0029】
また、トップケース3は薄肉無底立方形状に形成され、該トップケース3の上面には、種々の設定や印刷物の選択、更に各警告表示等を表示するための表示部5となるLCD、入力部7となる操作ボタンが配設されている。また、トップケース3の内側側面両側には、補助スプリング11と補助板9が配設され、補助スプリング11により補助板9の下端をスタンプ装置本体15の下端よりも僅かに下方に突出させ、スタンプ装置本体15の下面に形成する転写印字部を浮かせるようにしている。
【0030】
そして、スタンプ装置本体15は中空で薄肉立方形状に形成され、スタンプ装置本体15の下面には、転写印字部となる印面が彫られたゴム印面27と後述する押当部93が突出可能な開口となる転写開口部23が形成されている。
【0031】
また、スタンプ装置本体15の内側左側面には、後述する内ケース33のピニオンギア51と螺合するラックギア17と、同様に内ケース33の摺動溝と係合する摺動レール19が形成されている。
【0032】
更に、スタンプ装置本体15の内側背面には、等間隔に配列された複数の黒線からなるエンコーダスリット29が表示されている。
【0033】
また、スタンプ装置本体15内の内側背面右側には、後述する内ケース33の背面に形成された長穴49を貫通し且つテープカートリッジ67の背面に形成された長穴をも貫通するテープ引出しピン21が形成されている。
【0034】
次に内ケース33の内部には、テープカートリッジ収納部が形成され、後述するインクカートリッジ61を組み込んだテープカートリッジ67が、該テープカートリッジ収納部に収納される。また、このテープカートリッジ収納部には、テープカートリッジ67に収納されたインクカートリッジ61を維持する仕切板43が形成されている。
【0035】
そして、図5(A)に示すように、この内ケース33は、内ケース33の左下底面に配置されたスプリング25によって常にスタンプ装置本体15内の上部に押し上げられた状態となっている。また、内ケース33は、トップケース3が押し下げられると内ケース33の上部に形成された連結軸35を介して下方へと押され、スタンプ装置本体15の下方向に移動し、テープカートリッジ67の下部に形成された押当部93が、スタンプ装置本体15のゴム印面27の中央に開口した転写開口部23に挿嵌されるようになっている。
【0036】
また、図4に示すように、内ケース33の左側面には、スタンプ装置本体15内に形成された摺動レール19と係合し、該スタンプ装置本体15内を上下に摺動可能とする溝形状の摺動案内溝39が形成されている。
【0037】
そして、内ケース33の背面側には、図示しないがエンコーダを形成するセンサが内設され、スタンプ装置本体15内に形成されたエンコーダスリット29を検出し、印刷制御手段となるCPU12へパルス信号を送信している。
【0038】
また、内ケース33の左側面には、スタンプ装置本体15に配設されたラックギア17と螺合するトルク伝達機構のピニオンギア51が配設され、またピニオンギア51の回転トルクを内ケース33の左側面から右側面側へと伝達する第一歯車53、第二歯車55、巻取軸59を有する第三歯車57が設けられており、ピニオンギア51からのトルクは、各歯車を介して伝達され、巻取軸59を有する第三歯車57を回転させる。また、このトルク伝達機構は、図示しないがクラッチ機構を有しており、内ケース33が押し下げられたときには、クラッチ機構により歯車を空転させて巻取軸59を回転しないようにすると共に巻取軸59が逆回転しないようにし、内ケース33が復帰動作を行う際には、使用済み転写用フィルムテープ73を巻取コア71に巻き取る為に巻取軸59を回転させるようにしている。
【0039】
また、内ケース33のテープカートリッジ収納部内の背壁左面には、テープカートリッジ67の供給コアと挿嵌される繰出軸45が配設されている。
【0040】
そして、内ケース33のテープカートリッジ収納部内の背壁右面には、スタンプ装置本体15内に形成さているテープ引出しピン21を貫通可能とする上下方向に長軸を有する長穴49が形成されている。
【0041】
次にインクカートリッジ61は、図示しないが液体インク収納部とインクジェットヘッドとが一体化したカートリッジであり、インクカートリッジ61の上面には、電極63が設けられ、該インクカートリッジ61がテープカートリッジ67に組み込まれテープカートリッジ収納部に収納された時に電気的に接続される。そして、インクカートリッジ61の下面には、インクを転写用フィルムテープ73に吹き付ける印刷部としてのノズル列65が形成されている。
【0042】
図6(A)を用いて、本実施例のテープカートリッジ67の内部構造について具体的に述べる。テープカートリッジ67は、厚肉コの字形状に形成され、未使用の転写用フィルムテープ73が巻装された供給コア69と、使用済みの転写用フィルムテープ73を巻き取る巻取コア71と、転写用フィルムテープ73を誘導する複数のローラからなるローラ群で構成されている。また、テープカートリッジ67の下面には、厚肉方形状にクッション性素材で形成された押当部93が位置している。
【0043】
また、該テープカートリッジ67の左上部に未使用の転写用フィルムテープ73が巻装された供給コア69が位置し、右上部に使用済みの転写用フィルムテープ73を巻き取る巻取コア71が位置しており、供給コア69は、内ケース33の繰出軸45に挿嵌され、巻取コア71は、内ケース33の巻取軸59に挿嵌されている。そして、テープカートリッジ67の背面には、スタンプ装置本体15内に形成さているテープ引出しピン21が貫通可能で上下方向に長軸を有する長穴75が形成されている。
【0044】
また、転写用フィルムテープ73は、被転写部材としてインクが染み込まない樹脂素材で出来た長尺のフィルム状のテープとしている。
【0045】
また、供給コア69から繰り出される未使用の転写用フィルムテープ73は、コの字形に形成されたテープカートリッジ67の内周側面に沿って進むように搬送され、第一ローラ77で下方へ、第二ローラ79で左方向へ向けられ、コの字状とされた内側の空間部方向に転写用フィルムテープ73が露出され、第三ローラ81で下方へ、第四ローラ83で右方へ向けられ、押当部93を通過して、第五ローラ85で上方へ向けられ、テープカートリッジ67の内側に導かれている。そして、この第二ローラ79及び第三ローラ81間の上方位置にインクカートリッジ61が位置し、転写用フィルムテープ73の表面に近接して印刷部となるノズル列65が配置されている。さらに、このインクカートリッジ61のノズル列65からインクが噴出され、インクを載せた転写用フィルムテープ73は、第四ローラ83及び第五ローラ85間の押当部93まで搬送されるようになっている。
【0046】
そして、テープカートリッジ67の背面に形成された長穴75の右下近傍位置の上下に第六ローラ87、第七ローラ89が設けられ、長穴75の左下近傍に第八ローラ91が設けられており、第六ローラ87及び第七ローラ89の中間と第八ローラ91の下方を通して、使用済み転写用フィルムテープ73を巻取コア71まで導いている。そして、この第六ローラ87及び第八ローラ91間に位置するスタンプ装置本体15内に形成されたテープ引出しピン21の動きによって、供給コア69より転写用フィルムテープ73が繰り出されるようになっている。
【0047】
また、図示しないが、電子スタンプ1には、電源としてのバッテリー95が内設されている。尚、電子スタンプ1に、パーソナルコンピュータ等の外部機器と接続するための入力端子、メモリーカード等の記憶媒体が挿入される挿入口等が形成されていることがある。
【0048】
次に、本発明の実施例に係る電子スタンプ1の被転写部材搬送の動作について、図5及び図6を用いて具体的に述べる。
【0049】
図5(A)に示すように内ケース33が押し下げられていない状態では、スタンプ装置本体15に形成されたテープ引出しピン21の位置は、図6(A)に示すようにテープカートリッジ67に設けられた長穴75の下部にある。また、内ケース33が図5(B)に示すように内ケース33が押し下げられても、スタンプ装置本体15に形成された該テープ引出しピン21の位置は変わらないことから、図6(B)に示すようにテープ引出しピン21は長穴75の上部に移動するようになる。
【0050】
この時に、図6(A)及び図6(B)に示すように、テープ引出しピン21の移動によって第六ローラ87及び第八ローラ91間の転写用フィルムテープ73が引っ張られるも、巻取コア71はトルク伝達機構のクラッチ機構によって逆回転を防止されているため、供給コア69側から転写用フィルムテープ73が供給される。即ち、内ケース33が押し下げられることによって、テープ引出しピン21の移動量の約2倍の長さの転写用フィルムテープ73が供給コア69より供給されることになる。
【0051】
つまり、この内ケース33の移動に伴いテープ引出しピン21の位置が変化し、供給コア69より転写用フィルムテープ73が供給され、該転写用フィルムテープ73は、インクカートリッジ61のノズル列65に対して垂直方向へ移動するようになり、印刷制御手段となるCPU12は、印字情報に基づきインクカートリッジ61のノズル列65よりインクを噴出させて、転写用フィルムテープ73にインクを載せるようになっている。
【0052】
また、転写用フィルムテープ73が搬送される速度は、内ケース33に設けられたセンサでエンコーダスリット29を監視し、そのセンサからのパルス信号のタイミングで転写用フィルムテープ73の速度を計測している。これにより、転写用フィルムテープ73の搬送される速度に応じてインクカートリッジ61のノズル列65よりインクを噴出することができ、もし内ケース33の移動速度に変化があった場合においても、正常にインクを噴出して転写用フィルムテープ73に正確な印影を印刷することが可能である。
【0053】
また、内ケース33を約半分まで押し下げると、転写用フィルムテープ73へのインクの噴出は終了し、その後は、内ケース33の押し下げ終了間際まで、転写用フィルムテープ73のインクを載せた部分が転写開口部23の位置まで搬送される。その後、規定の押し下げが完了すると、クッション性素材で形成された押当部93が転写開口部23に挿嵌されて、該転写開口部23より転写用フィルムテープ73のインクを載せた部分を露出させ、転写印字部となるゴム印面27と共に同時に用紙に押し付けることにより、用紙にスタンプ柄を形成することができる。
【0054】
そして、補助スプリング11及びスプリング25の作用により、内ケース33がスタンプ装置本体15内を上昇する時、トルク伝達機構の歯車列により巻取軸59が回転して巻取コア71を回転させ、テープ引出しピン21が内ケース33を降下して、緩んだ転写用フィルムテープ73を巻取コア71に巻き取ることができる。
【0055】
このような構造であれば、構成要素中の比較的大きなインクカートリッジ61を左右に動かし印刷するような方法で印刷を行うよりも、製品本体サイズを小さくすることができ、また、データを印刷する最小限のインクジェットヘッド97の幅で、印面と組み合わせることにより図2に示すようなスタンプ柄とデータを印字可能な電子スタンプ1を安価に作成することができる。
【0056】
本実施例の電子スタンプ1によれば、データを変更したい部分の幅となる長さのノズル列65を形成すればよく、小さなインクジェットヘッド97で構成できるため安価な電子スタンプ1を供給できる。
【0057】
また、インクジェットヘッド97とインクタンクを移動するのではなく転写用フィルムテープ73を移動し印刷するため省スペースでの実装が可能となり、製品を小型化する事が出来る。
【0058】
尚、本発明は、転写用フィルムテープ73の移動は、テープ引出しピン21により供給コア69から引き出す場合に限ることなく、歯車列の回転により適宜に供給コア69や巻取コア71を回転させて移送することもできる。また、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 電子スタンプ 3 トップケース
5 表示部 6 制御部
7 入力部 8 プリンタ部
9 補助板 11 補助スプリング
12 CPU 13 ROM
14 RAM 15 スタンプ装置本体
17 ラックギア 19 摺動レール
21 テープ引出しピン 23 転写開口部
25 スプリング 27 ゴム印面
29 エンコーダスリット 31 摺動穴
33 内ケース 35 連結軸
39 摺動案内溝 43 仕切板
45 繰出軸
49 長穴 51 ピニオンギア
53 第一歯車 55 第二歯車
57 第三歯車 59 巻取軸
61 インクカートリッジ 63 電極
65 ノズル列 67 テープカートリッジ
69 供給コア 71 巻取コア
73 転写用フィルムテープ 75 長穴
77 第一ローラ 79 第二ローラ
81 第三ローラ 83 第四ローラ
85 第五ローラ 87 第六ローラ
89 第七ローラ 91 第八ローラ
93 押当部 95 バッテリー
97 インクジェットヘッド 99 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上に底面を接触させて印字を行う電子スタンプにおいて、
前記底面に設けられた転写印字部と、
前記転写印字部を通過すべく所定方向へ搬送可能に設けられた被転写部材と、
前記転写印字部よりも前記被転写部材の搬送方向上流側で前記被転写部材の表面に近接配置され、該被転写部材表面に印字情報に基づきインクを噴出させて印字情報を転写する印刷部と、
スタンプ装置本体に被せたトップケースの前記印刷媒体の上方から下方への移動に連動させて、前記被転写部材を前記印刷部位置から前記転写印字部へ搬送させる被転写部材搬送機構と、
該被転写部材搬送機構による被転写部材の搬送に応答してインクを噴出すべく前記印刷部を駆動させる印刷制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子スタンプ。
【請求項2】
前記被転写部材及び前記印刷部を収納した内ケースがスタンプ装置本体に対して上下方向に摺動可能としてスタンプ装置本体に収納され、この内ケースが前記トップケースと連動してスタンプ装置本体に対して上下移動するとき、スタンプ装置本体の内壁に固定されたラックギアと歯合するピニオンギアの回転により被転写部材を搬送させることを特徴とする請求項1に記載の電子スタンプ。
【請求項3】
前記スタンプ装置本体の内壁には、前記内ケースの内部に突出するテープ引出しピンを有し、前記内ケースが前記スタンプ装置本体を降下するとき、前記テープ引出しピンが内ケース内で上昇して内ケースの内部に収納された被転写部材を供給コアから引出すことを特徴とする請求項2に記載の電子スタンプ。
【請求項4】
前記転写印字部は、印字情報が転写された被転写部材を露出させる開口を有し、前記開口の周囲にゴムの印面を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電子スタンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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