説明

電子ブラシ位置決定のための組み込み場所コード

電子インクスタック(70)は、一対の電極(71,74,78)、電子インク層(73)及び任意の光導電層(72,76)を有する。電子インク層(73)及び光導電層(72,76)は、必要に応じて、電極(71,74,78)間に備えられる。1つ又はそれ以上の場所コード(75,76,79)は、一又は両方の電極(71、74,78)の電子インクスタック(70)及び/又は光導電層(72,76)において組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気泳動ディスプレイに関する。本発明は、特に、電気泳動ディスプレイに電子インク画像を書き込むための場所コードに関連する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において周知である電子インク又はEインクは、黒色の負に帯電した粒子及び白色の正に帯電した粒子を有するカプセルを有する。電気泳動ディスプレイにおいては、カプセルは、典型的には、一対の電極間に配置され、それにより、特定極性の電圧の印加により黒色と白色との間でシステムは切り換えられる。一部の既知の電気泳動ディスプレイは、それらの電極間に光導電体層を組み合わせることにより光学的にアドレス可能である。レーザビームを走査して照射するとき、光導電体層は導体であり、Eインクは電圧パルスにより黒色と白色との間で切り換えられる。Eインク及び光導電体層の組み合わせはEペイントとして周知であり、Eブラシとして周知の携帯用装置は照明光源を内蔵している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
Eインクにおいて所望の画像を得るためには、EブラシはEインクに関連する位置を正確に決定する性能を有することが必須である。本発明は、前面電極、背面電極、光導電体層、電子インク層及び1つ又はそれ以上の場所コードを用いた電子インク積層体を提供することにより当該技術分野を進展させるものである。電子インク層は、前面電極と背面電極との間に配置される。光導電体層は又、用いる場合、前面電極と背面電極との間に配置される。場所コードは、前面電極、背面電極及び/又は光導電体層(用いる場合)内に組み込まれる。
【0004】
本発明の上記の構成及び他の構成、特徴及び有利点については、以下の添付図面に関連付けて詳述する本発明の好適な実施形態により理解できるであろう。それらの詳細な説明及び図面は、限定的なものではなく単なる本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲は同時提出の特許請求の範囲により規定されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図1に示す電子ペイントシステム20は、当業者が理解できるであろうように、従来のモニタ30と従来のコンピュータ40と従来の電子ブラシ50と従来の制御器60とを有する。電子ペイントシステム20は、図1に断続線で例示として示している埋め込み場所コードを有する新しい且つ一意の電子インクスタック70を更に有する。埋め込み場所コードは、下で、図8の説明に関連付けて更に説明するように、電子インクスタック70においてシステム20のユーザがEインク画像を適切に生成することを可能にする。
【0006】
本発明に従った電子インクスタック70の各々の実施形態は、前面電極と背面電極と電子インク層とを用いる。各々の電極は、反射性の導電性材料(例えば、アルミニウム、白金及びクロム)又は透明な導電性材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))から好適に形成される。電子インク層は、好適には、正に帯電した白色粒子及び負に帯電した黒色粒子が透明な流体中に懸濁されている多数の微小なマイクロカプセルを有する電気泳動フィルムを有する幾つかの市販されているインクの1つである。
【0007】
本発明に従った電子インクスタック70の各々の実施形態は電気泳動層(例えば、適切な材料のリスト例)を更に用いる。
【0008】
電子インクスタック70の場所コードは、前面電極、背面電極及び/又は光導電層(用いられる場合)中に組み込まれる。実際には、場所コードの実際の構成、形状及び寸法は、電子インクスタック70の実施形態の意図された市販用アプリケーションに依存する。それ故、本発明の発明者は、組み込まれる場所コードの構成、形状及び寸法のような何れの制限を課するものではなく、組み込まれる場所コードの何れの“最良の構成”、何れの“最良の形状”又は何れの“最良の寸法”を行使するものではない。更に、本発明の発明者は、場所コードにより実施されるコード化スキームに関して、何れの制限を課するものではない。
【0009】
図2乃至7は、電子インクスタック70の3つの例示としての実施形態を示しているが、組み込まれた場所コードの基礎を成す種々の原理の理解を容易にするように描かれている。
【0010】
図2及び3を参照するに、電子インクスタック70の第1の例示としての実施形態は背面電極71と導電体層72と電気泳動インク層73と前面電極74とを用いている。電子インクスタック70は、光導電性層72内に配置されている絶縁性パッド75の形で組み込み場所コードを更に用いている。絶縁性パッド75は局部抵抗として機能する。従って、制御器60(図1)により電極71及び74間における図3に示している電圧Vの印加は、絶縁性パッド75間の導電性層72の領域における光導電層72と電気泳動インク層73とにおいて電圧降下を確立する。それとは逆に、電極71と74との間の電圧Vの印加は、絶縁性パッド75を有する光導電層72において、光導電層72、絶縁性パッド75及び電気泳動インク層73に対して電圧降下を確立する。
【0011】
図4及び5を参照するに、電子インクスタック70の第2の例示としての実施形態は、背面電極71と光導電層76と電気泳動インク層73と前面電極74とを用いている。電子インクスタック70は、光導電層76内に凹部77の形で組み込み場所コードを更に用いている。凹部77は、凹部77を有する光導電層76の領域における光導電層76の抵抗強度を減少させる。従って、制御器60(図1)による電極71及び74間の図3に示すような電圧Vの印加は、光導電層76と電気泳動インク層73に対する電圧降下を確立し、それにより、電圧降下に対する抵抗は凹部77間の光導電層76の領域において最大である。
【0012】
図6及び7を参照するに、電子インクスタック70の第3の例示としての実施形態は、背面電極78と光導電層72と電子インク層73と前面電極74とを用いている。電子インクスタック70は、背面電極78を貫通している孔79の形で組み込み場所コードを更に用いている。従って、制御器60(図1)による電極78及び74間の図6に示すような電圧Vの印加は、光導電層72と電気泳動インク層73に対する電圧降下を確立し、それにより、電圧降下に対する抵抗は、電極78及び74が重なり合う光導電層72及び電気泳動インク層73の領域において最大である。
【0013】
図8は、図2乃至7に示している電子インクスタック70の例示としての実施形態において種々の画像を生成する方法を示すフローチャート80である。
【0014】
図8を参照するに、黒色ブランク画像90の形の黒色画像又は白色画像91がフローチャート80の段階S82において生成される。段階S82の一実施形態においては、図9に示すように、段階S82において電極に印加される電圧Vは、黒色ブランク画像90を生成するように全体的に黒色状態に又は白色ブランク画像91を生成するように全体に白色に電子インク層を切り換えるための大きさVE+を有する消去電圧パルスの形にある。
【0015】
他の実施形態においては、図10に示すように、段階S82において電極に印加される電圧Vは、前記泳動インク層を全体的に黒色又は全体的に白色に切り換えるための大きさV0+を有する消去電圧パルスの形にある。
【0016】
図8を参照するに、黒色コード化画像92又は白色コード化画像93の形にあるコード化画像はフローチャート80の段階S84において生成される。段階S84の一実施形態においては、図9に示すように、段階S84において電極に印加される電圧Vは、層を用いて、組み込まれた場所コードに対応する電子インク層の領域を切り換えるための大きさVCl−を有するコード化電圧パルスの形にある。消去電圧パルスVE+からコード化電圧パルスVCl−への遷移は、当業者に理解されるであろうように、図9のように適切に勾配をつけられ、それにより、電子インク層の全ての領域が黒色から白色へ又はその逆に切り換えられないようにする。
【0017】
段階S84の他の実施形態においては、図10に示すように、段階S84において電極に印加される電圧Vは、組み込まれた場所コードに対応する電子インク層の領域を切り換えるための大きさVC2O−を有する符号化電圧パルスの形にある。消去電圧VE+からコード化電圧パルスVCl−への遷移は、電子インク層の全ての領域が黒色から白色に又は、その逆に切り換えられないようにするために、図10において適切に勾配をつけられている。更に、図9の遷移の勾配より大きい、図10の遷移の勾配は、組み込まれた場所コードに対応しない電子インク層の切り換え領域を実現するが、印加電圧Vの大きさの絶対値は変わらないまま保たれる。
【0018】
図8を再び参照するに、例えば、画像94はフローチャート80の段階S86において生成されるような画像である。段階S86の実施形態においては、図9及び10に示すように、段階S86において電極に印加される電圧は、電子ブッシュ50(図1)が画像内に適切な階調層を生成するように段階S86において用いられる。このため、電子ブッシュ50は、電子インクスタックに亘って移動し、それにより、場所コードの検出後、電子ブッシュ50は、検出された場所コードと関連する適切な階調レベルを生成するためのレーザパルスを供給するように動作する。先行技術において周知であるように、適切な階調の生成は、レーザパルスのパルス期間及び/又は光強度に依存する。
【0019】
上記の本発明の実施形態は、現在、好適であると考えられるものである一方、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、種々の変形及び修正がなされることが可能である。本発明の範囲は同時提出の特許請求の範囲に記載されていて、それらと同等な意味及び範囲内に入る全ての変形はそれらの特許請求の範囲に包含されるように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従った電子ペイントシステムの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に従ったEインクスタックの第1実施形態の斜視図である。
【図3】図2に示すEインクスタックの側面図である。
【図4】本発明に従ったEインクスタックの第1実施形態の斜視図である。
【図5】図4に示すEインクスタックの側面図である。
【図6】本発明に従ったEインクスタックの第1実施形態の斜視図である。
【図7】図6に示すEインクスタックの側面図である。
【図8】図2乃至7に示すEインクスタックに種々の画像を与える方法を表すフローチャートである。
【図9】電圧振幅変調について本発明に従った一実施形態の例示としてのグラフ表示を示す図である。
【図10】電圧振幅変調について本発明に従った一実施形態の例示としてのグラフ表示を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子インクスタックであって:
前面電極;
背面電極;
前記前面電極と前記背面電極との間に配置されている層;
前記前面電極と前記背面電極の少なくとも一において組み込まれている少なくとも1つの場所コード;
を有することを特徴とする電子インクスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、前記電子インク層は電気泳動インクである、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項3】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、第1場所コードは前記背面電極を貫通している、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項4】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、第1場所コードは前記前面電極を貫通している、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項5】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、前記前面電極と前記背面電極との間のコード化電圧パルスの印加は少なくとも1つの場所コードを明らかにするためにコード化画像を生成する、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項6】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、電圧振幅変調技術の実行は、前記電子インク層におけるブランク画像、コード化画像及びEインク画像の連続的生成を容易にする、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項7】
請求項1に記載の電子インクスタックであって、電圧勾配変調技術の実行は、前記電子インク層におけるブランク画像、コード化画像及びEインク画像の連続的生成を容易にする、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項8】
請求項1に記載の電子インクスタックであって:
前記前面電極と前記背面電極との間に配置された光導電層;
を更に有する、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項9】
請求項8に記載の電子インクスタックであって、前記少なくとも1つの場所コードは、前記前面電極、前記背面電極及び前記光導電層の少なくとも一において組み込まれている、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項10】
請求項9に記載の電子インクスタックであって、第1場所コードは前記光導電層に備えられた絶縁体パッドである、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項11】
請求項9に記載の電子インクスタックであって、第1場所コードは前記光導電層における凹部である、ことを特徴とする電子インクスタック。
【請求項12】
電子インクシステムであって:
電子インクスタックであって、
前面電極と、
背面電極と、
前記前面電極と前記背面電極との間に配置されている電子インク層と、
前記前面電極と前記背面電極の少なくとも一において組み込まれている少なくとも1つの場所コードと、
前記前面電極と前記背面電極との間に電圧を印加するように動作する制御可能電圧源と、
を有する電子インクスタック;
を有することを特徴とする電子インクシステム。
【請求項13】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、前記電子インク層は電気泳動インクである、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項14】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、第1場所コードは前記背面電極を貫通している、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項15】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、第1場所コードは前記前面電極を貫通している、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項16】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、前記制御可能電圧源は、前記前面電極と前記背面電極との間にコード化電圧パルスを印加するように、それにより、少なくとも1つの場所コードを明らかにするためにコード化画像を生成するように動作する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項17】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、前記制御可能電圧源は、電圧振幅変調技術を実行するように、それにより、ブランク画像、コード化画像及び前記電子インク層における画像の連続的生成を容易にするように動作する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項18】
請求項17に記載の電子インクシステムであって:
電子ブッシュは、前記少なくとも1つの場所コードの関数として前記電子インク層において画像を生成するように前記制御可能電圧源と連動して動作する電子ブッシュ;
を更に有する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項19】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、前記制御可能電圧源は、電圧勾配変調技術を実行するように、それにより、ブランク画像、コード化画像及び前記電子インク層における画像の連続的生成を容易にするように動作する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項20】
請求項19に記載の電子インクシステムであって:
電子ブッシュは、前記少なくとも1つの場所コードの関数として前記電子インク層において画像を生成するように前記制御可能電圧源と連動して動作する電子ブッシュ;
を更に有する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項21】
請求項12に記載の電子インクシステムであって、前記電子インクスタックは:
前記前面電極と前記背面電極との間に備えられた光導電層;
を更に有する、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項22】
請求項21に記載の電子インクシステムであって、前記少なくとも1つの場所コードは、前記前面電極、前記背面電極及び前記光導電層の少なくとも一において組み込まれている、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項23】
請求項22に記載の電子インクシステムであって、第1場所コードは前記光導電層において備えられている絶縁パッドである、ことを特徴とする電子インクシステム。
【請求項24】
請求項23に記載の電子インクシステムであって、第1場所コードは前記光導電層にある、ことを特徴とする電子インクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−518116(P2007−518116A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544664(P2006−544664)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052795
【国際公開番号】WO2005/059876
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】