説明

電子ペン、電子ペンの制御方法及びプログラム、並ぶにクレードル装置、クレードル装置の制御方法及びプログラム

【課題】通信が行えない状態になった場合に、通信が行える状態への復帰をユーザに促すことができる。
【解決手段】入力手段11と、無線通信手段12と、通信制御手段1067と、通信状態判断手段と、報知手段13と、報知制御手段1065と、を備える。入力手段11は、記入情報を取得する。無線通信手段は、所定の無線通信方式にしたがってサーバ5と通信し、取得手段により取得された記入情報を送信する。通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を制御する。通信状態判断手段1064は、無線通信手段12における通信の状態を判断する。報知手段13は、通信状態判断手段1064の判断結果に基づいて、報知動作を行う。報知制御手段1065は、通信状態判断手段1064により無線通信手段12が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段13を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信が行えない状態になった場合に、通信が行える状態への復帰をユーザに促すことができる電子ペン、電子ペンの制御方法及びプログラム、並ぶにクレードル装置、クレードル装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記入した情報を電子化する電子ペンが開発されており、その代表的なものとしてスウェーデンのAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto pen)」が知られている。アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された専用紙とともに使用される。アノトペンは、ペン先部に、文字等を書くための通常のインクカートリッジに加えて、専用紙に印刷されたドットパターンを撮像するための小型カメラと、撮像したドットパターンから専用紙における位置座標を演算するプロセッサと、演算された位置座標等を外部機器へ送信するデータ通信ユニットとを搭載している。ユーザが専用紙上にアノトペンで文字等を書いたり、専用紙上に図案化されている画像にチェックマークを記入したりすると、ペンの移動に伴って小型カメラが専用紙に印刷されたドットパターンを撮像し、プロセッサによって演算された連続する位置座標から、ユーザが書き込んだ文字、画像等の記入情報が認識される。そして、この記入情報が、データ通信ユニットによりアノトペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の端末装置に送信される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述したような電子ペンに対して無線通信機能を備える技術が、特許文献2に開示されている。また、無線通信機能に関しては、個体識別を行うSIM(Subscriber Identity Module Card)カードを持たせて、3G(3rd Generation)の無線通信方式に準拠した無線通信を行う技術が、特許文献3に開示されている。
【0004】
また、通信手段を備え、電子ペンから取得したデータをサーバ等の外部機器に送信するクレードルに係る技術が、特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3842283号公報
【特許文献2】特表2003−519423号公報
【特許文献3】特開2008−306721号公報
【特許文献4】特開2006−260345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子ペンやクレードルはそもそも定位置で使用されることが前提であることから、上述した従来の技術では、通信が行えない状態になることが想定されておらず、通信が行えない状態になった場合の措置が何ら講じられていない。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、通信が行えない状態になった場合に、通信が行える状態への復帰をユーザに促すことができる電子ペン、電子ペンの制御方法及びプログラム、並ぶにクレードル装置、クレードル装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子ペンは、ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンにおいて、前記ユーザの記入操作に基づいて、前記記入情報を生成する記入情報生成手段と、所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成手段により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段と、前記無線通信手段による通信を制御する通信制御手段と、前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段と、前記通信状態判断手段の判断結果に基づいて、報知動作を行う報知手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する報知制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電子ペンでは、無線通信手段による通信状態が悪く、外部装置へのデータの通信が行えない場合には、その旨をユーザに報知するために、例えば、ユーザに外部装置へのデータの通信が行えないという認識を持たせたり、電波状態が良い場所に移動する等の行動を促すことができる。
【0010】
また、上記電子ペンでは、ユーザによる記入を検知する記入検知手段をさらに備え、前記報知制御手段は、前記記入検知手段によりユーザによる記入を検知した時に、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ユーザが電子ペンで記入をし始めたときに、記入検知手段は、ユーザによる記入を検知する。その際、電子ペンの無線通信状態が悪いと、報知制御手段は、報知動作を行うように報知手段を制御する。そのため、ユーザは、電子ペンで記入をし始めたときに、無線通信状態が悪いことを即座に認識することができ、ユーザは、電子ペンで記入し続けるか否かを判断することもできる。
【0012】
また、上記電子ペンでは、前記記入情報を記憶する記憶手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とをさらに備え、前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、電子ペンでは、通信状態判断手段により無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合には記入情報を記憶手段に記憶させるために、無線通信手段における通信不可状態が長期になっても、記入情報を確実に保持しておくことができる。そして、電子ペンの無線通信状態が良くなり、外部装置へのデータの通信が行える状態になったときに、送信をするように送信予約を行うために、記入情報を記入情報の取得により順次送信する場合に比べて、確実に記入情報を外部装置へ送信することができる。
【0014】
また、上記電子ペンでは、前記報知手段は、警告音、振動、又は画像表示により前記報知動作を行うことを特徴とする。
この構成によれば、電子ペンでは、音により聴覚、振動により触覚又は表示により視覚的な報知を行うことができる。
【0015】
また、本発明の電子ペンの制御方法は、ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンの制御方法において、前記ユーザの記入を検知する記入検知ステップと、前記記入検知ステップにより前記ユーザの記入が検知された時に、無線通信手段における通信状態が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
また、上記電子ペンの制御方法では、前記記入検知ステップにより前記ユーザの記入が検知された時に、無線通信手段における通信状態が通信可能状態であると判断された場合に、前記ユーザの記入操作に基づいて、記入情報を生成する記入情報生成ステップと、所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成ステップの処理により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のプログラムは、電子ペンを、ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンからの前記ユーザの記入操作に基づいて、前記記入情報を生成する記入情報生成手段、所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成手段により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御手段、前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0018】
また、上記プログラムでは、ユーザによる記入を検知する記入検知手段をさらに備え、前記報知制御手段は、前記記入検知手段によりユーザによる記入を検知した時に、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御するよう機能させることを特徴とする。
【0019】
また、上記プログラムでは、前記記入情報を記憶する記憶手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とをさらに備え、前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御するよう機能させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るクレードル装置は、記入の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンの置き台として機能するクレードル装置において、前記電子ペンからの記入情報を取得するデータ取得手段と、所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記データ取得手段により取得された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段と、前記無線通信手段による通信を制御する通信制御手段と、前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段と、前記通信状態判断手段の判断結果に基づいて、報知動作を行う報知手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する報知制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、クレードル装置では、ユーザに無線通信手段による通信状態が悪く、外部装置へのデータの通信が行えない場合には、その旨を報知するために、例えば、ユーザに外部装置へのデータの通信が行えないという認識を持たせたり、電波状態が良い場所に移動する等の行動を促すことができる。
【0022】
また、上記クレードル装置では、前記記入情報を記憶する記憶手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とを備え、前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、クレードル装置では、無線通信状態が悪く、外部装置へのデータの通信が行えない場合であっても、送信するべき記入情報を一端、記憶手段に記憶して、無線通信状態が良くなり、外部装置へのデータの通信が行える状態になったときに、送信するように送信予約を行うために、記入情報を記入情報の取得により順次送信する場合に比べて、確実に記入情報を外部装置に送信することができる。
【0024】
また、上記クレードル装置では、前記報知手段は、警告音、振動、又は画像表示により前記報知動作を行うことを特徴とする。
この構成によれば、クレードル装置では、音により聴覚、振動により触覚又は表示により視覚的な報知を行うことができる。
【0025】
また、本発明のクレードル装置の制御方法は、電子ペンが差し込まれるクレードル装置を、記入の軌跡を記入情報として取得して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンからの記入情報を取得するデータ取得手段、所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記データ取得手段により取得された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御手段、前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0026】
また、クレードル装置の制御方法では、前記記入情報を記憶する記憶手段と、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とを備え、前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御するよう機能させことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
通信が行えない状態になった場合に、通信が行える状態への復帰をユーザに促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る電子ペンシステムの構成を示す図である。
【図2】用紙に印刷されるドットパターンのドットとそのドットが変換される値との関係を説明する図である。
【図3】(a)は、ドットパターンを模式的に示し、(b)は、それに対応する情報の例を示す図である。
【図4】電子ペンのハードウェアの構成を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電子ペンの外観の構成を説明する図である。
【図6】電子ペンの機能ブロック図である。
【図7】電子ペンシステムによる電子ペンの処理に係るフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る電子ペンシステムの構成を示す図である。
【図9】クレードル装置の内部構造を示す側面図である。
【図10】クレードル装置の機能ブロック図である。
【図11】電子ペンシステムによるクレードル装置の処理に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る電子ペンシステムの構成を示す。本実施形態の電子ペンシステム10−1は、ユーザによる記入操作から記入に係る情報(以下、「記入情報」という)を生成して、当該記入情報をデータとして利用するためのシステムである。
本実施形態の電子ペンシステム10−1では、電子ペン1は、記入情報を取得し、外部装置であるサーバ5に送信し、サーバ5は、当該記入情報を記憶する。これにより、電子ペンシステム10−1においては、記入情報のデータが利用可能な状態になる。
【0031】
このような電子ペンシステム10−1は、図1に示すように、電子ペン1と、サーバ5とを備える。
電子ペン1とサーバ5とは、インターネット等のネットワーク4を介して相互に接続されている。
電子ペン1は、移動通信方式の3G(3rd Generation)無線通信に準拠した方式にしたがって、基地局3及びネットワーク4を介してサーバ5と各種情報を送受信する。なお、移動通信方式の世代は3G以降のものであってもよい。
具体的には、電子ペン1は、直接的には、3G無線通信に準拠した通信設備を有する基地局3と通信を行う。その結果、電子ペン1から送信されたデータは、無線通信により基地局3に送られ、基地局3からネットワーク4を介して、サーバ5に伝送される。
【0032】
電子ペン1は、用紙2に対するユーザの記入操作に基づいて、記入情報を生成し、当該記入情報を基地局3に無線送信して、ネットワーク4を介してサーバ5に伝送する機能を有する。
さらに、電子ペン1は、無線通信の通信状態の報知を行い、通信状態が通信不可状態のときには記入情報を一旦保持し、通信状態が通信可能状態に復帰したときに記入情報を送信するように、当該記入情報の送信管理を行う機能を有する。
【0033】
ここで、用紙2に形成されるアノト方式のドットパターン(コード化パターン)について説明する。図2は、用紙2に印刷されるドットパターンのドットとそのドットが変換される値との関係を説明する図である。図2に示すように、ドットパターンの各ドットは、その位置によって所定の値に対応付けられている。即ち、ドットの位置を格子の基準位置(縦線及び横線の交差点)から上下左右のどの方向にシフトするかによって、各ドットは、0〜3の値に対応付けられている。また、各ドットの値は、さらに、X座標用の第1ビット値及びY座標用の第2ビット値に変換できる。このようにして対応付けられた情報の組合せにより、用紙2上の位置座標が決定されるよう構成されている。
【0034】
図3(a)は、あるドットパターンの配列を示している。図3(a)に示すように、縦横約2mmの範囲内に6×6個のドットが、用紙2上のどの部分から6×6ドットを取ってもユニークなパターンとなるように配置されている。これら36個のドットにより形成されるドットパターンは位置座標(例えば、そのドットパターンが用紙2上のどの位置にあるのか)を保持している。図3(b)は、図3(a)に示す各ドットを、格子の基準位置からのシフト方向によって、図2に示す規則性に基づいて対応付けられた値に変換したものである。この変換は、ドットパターンの画像を撮影する電子ペン1によって行われる。
【0035】
次に、電子ペン1について図4を用いて説明する。図4は、電子ペン1のハードウェアの構成を説明する図である。
【0036】
図4に示すように、電子ペン1は、その筐体の内部に、インクカートリッジ103、光学モジュール104、圧力センサ105、CPU等により構成されるプロセッサ106(クロックあり)、ROMやRAMといったメモリ107、バッテリー108、アンテナ等により構成される3Gチップ通信モジュール109、SIMチップ110、ディスプレイ111、スピーカ112及びバイブレータ113を備える。インクカートリッジ103の先端は、インクを備えるペン先102となっており、ユーザは、電子ペン1のペン先102を用紙2上に当接させて、文字等のストローク(手書きストローク)を記入したり、タップ(ペン先102による用紙2への軽叩)したりする。ここで、電子ペン1のペン先102が用紙2に最初に接触することをペンダウンと呼び、接触している(当接している)状態からペン先102が離れることをペンアップと呼ぶ。電子ペン1のペンダウンからペンアップまでの間に記入される軌跡が1つのストロークとなり、文字や図形等は、1つ又は複数個のストロークからなる。また、電子ペン1をペンダウンすることでペン先102から用紙2上に流出するインクにより、ストロークと略同一軌道の軌跡が用紙2上に記入される。
【0037】
バッテリー108は、電子ペン1内の各部品に電力を供給するためのものであり、例えば電子ペン1のキャップ(図示せず)の脱着により電子ペン1自体の電源のオン/オフを行うよう構成させてもよい。
圧力センサ105は、ユーザが電子ペン1により用紙2に文字やマークを書いたりタップしたりする際にペン先102からインクカートリッジ103を通じて与えられる圧力、即ち筆圧を検出し、その値をプロセッサ106へ伝送する。
【0038】
プロセッサ106は、圧力センサ105から与えられる筆圧データに基づいて、光学モジュール104のスイッチのオン/オフを切替える。即ち、ユーザが電子ペン1で用紙2に文字等を書くと、ペン先102に筆圧がかかり、圧力センサ105によって所定値以上の筆圧が検出されたときに、プロセッサ106は、ユーザが記入を開始したと判断して、光学モジュール104を作動させる。そして、3Gチップ通信モジュール109が、圧力センサ105により検出されたペンダウン情報PDと、後述するペンIDとを関連付けて、記入情報として基地局3に無線送信して、ネットワーク4を介してサーバ5に伝送する。また、ユーザが1つのストロークを記入し終えて電子ペン1を用紙2から離すと、圧力センサ105は、所定値以上の筆圧が検出されなくなることでペンアップを検出する。すると、3Gチップ通信モジュール109が、圧力センサ105により検出されたペンアップ情報PUとペンIDとを関連付けて、記入情報として基地局3に無線送信して、ネットワーク4を介してサーバ5に伝送する。プロセッサ106では、現在時刻(タイムスタンプ)を示す時刻情報を取得する。
【0039】
光学モジュール104(IRLEDとCMOSカメラ)は、電子ペン1のペン先102付近に取り付けられており、筐体における光学モジュール104と対向する部分には、開口部(図示せず)が形成されている。IRLEDは、用紙2上のペン先102近傍に向けて赤外線を照明する。その領域は、ペン先102が用紙2に接触する位置とはわずかにずれている。CMOSカメラには、赤外線を透過し赤外線以外を遮断する赤外線透過フィルタが設けられており、CMOSカメラは、IRLEDによって照明された領域内におけるドットパターンを撮影し、そのドットパターンの画像データをプロセッサ106に供給する。ここで、ドットのインク素材は、赤外線を吸収するため、IRLEDによって照射された赤外線は、ドットによって吸収される。そのため、ドットの部分は、赤外線の反射量が比較的少なく、ドット以外の部分は赤外線の反射量が比較的多い。CMOSカメラの撮影により、赤外線の反射量の違いから閾値を設けることによって、ドットの領域とそれ以外の領域を区別することができる。なお、CMOSカメラによる撮影領域は、図3(a)に示すような約2mm×約2mmの大きさを含む範囲であり、CMOSカメラの撮影は毎秒50〜100回程度の定間隔で行われる。
【0040】
プロセッサ106は、ユーザの記入が行われる間、CMOSカメラによって供給される画像データのドットパターンから、ユーザが記入するストローク(筆跡)の用紙2上におけるX,Y座標(単に「位置座標」、「座標情報」とも呼ぶ)を連続的に演算していく。即ち、プロセッサ106は、CMOSカメラによって供給される、図3(a)に示されるようにドットパターンの画像データを図3(b)に示すデータ配列に変換し、さらに、X座標ビット値・Y座標ビット値に変換して、そのデータ配列から所定の演算方法によりX,Y座標データを演算する。なお、プロセッサ106は、ドットパターンに対向する電子ペン1の角度に起因するドットの画像上の配列を補正する回転補正処理機能を備えており、X,Y座標データを演算する際に、回転補正処理機能により補正を行う。そして、プロセッサ106は、現在時刻(タイムスタンプ:記入された時刻情報)、筆圧データ及びX,Y座標データを関連付ける。以後、これらの関連付けたデータを、まとめて「座標属性情報」と呼ぶ。なお、用紙2における6×6のドットパターンは、用紙2内で重複することはないため、ユーザが電子ペン1で文字等を記入すると、記入された位置が用紙2のどの位置に当たるかを、プロセッサ106による座標演算により特定することができる。
【0041】
メモリ107には、電子ペン1を識別するための「pen01」といったペンID、ペン製造者番号、ペンソフトウェアのバージョン等のプロパティ情報が記憶されている。そして、3Gチップ通信モジュール109は、ペンIDと、時刻情報(タイムスタンプ)と、筆圧データと、X、Y座標データとを関連付けて、記入情報として基地局3に無線送信して、ネットワーク4を介してサーバ5に伝送する。3Gチップ通信モジュール109による基地局3への送信は、3Gの無線通信方式に準拠した方式にしたがった無線送信によって、即時的かつ逐次的に行われる。ここで、電子ペン1のペンダウンからペンアップまでの間に生成されてサーバ5に送信された1個又は複数個の記入情報(座標属性情報)は、サーバ5によりストローク情報として記憶される。換言すると、1つのストロークは、1個又は複数個のX,Y座標(座標点)からなり、サーバ5は、ペンダウン情報PD及びペンアップ情報PUによって、1つのストロークを構成する1個又は複数個の座標属性情報を認識する。このように、ユーザにおける1つのストロークの記入により、電子ペン1によって生成される座標属性情報の集合を「ストローク情報」と呼ぶ。また、ペン先102は、筆圧をインクカートリッジ103を介して圧力センサ105に伝達する。
【0042】
3Gチップ通信モジュール109は、3Gの無線通信方式(第3世代移動通信システム)の規格に準拠して通信を行う。第3世代移動通信システムとは、国際電気通信連合(ITU)が定める「IMT−2000」(International Mobile Telecommunication 2000)規格に準拠したシステムである。3Gチップ通信モジュール109は、基地局3を介して、インターネット等のネットワーク4に接続して、当該ネットワーク4に接続するサーバ5との間でデータの送受信を行う。
SIMチップ110は、3Gの無線通信方式の通信を行うにあたり、必要となる個別識別情報が記憶されたカードである。
スピーカ112は、ビープ音等の各種警報音を発生させる。
ディスプレイ111は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成され、電波の受信状況や電子ペン1の状態等の情報を表示する。
バイブレータ113は、電子ペン1を振動させる振動子であり、本実施形態においては、モーターの軸に重心を偏らせた重りを取り付け、回転させることで振動を生む方式のものが採用される。
【0043】
ここで、電子ペン1の外観について図5を参照して説明する。図5は、電子ペン1の外観の構成を説明する図である。図5(a)は電子ペン1の外観の構成を示す側面図であり、図5(b)は電子ペン1のディスプレイ111に表示される画面の一例を示す図である。
電子ペン1には、図5(a)に示すように、電子ペン1の内部にSIMチップ110を挿入するためのSIMチップ挿入口1aが形成される。
電子ペン1のディスプレイ111には、図5(b)に示すように、電波状態アイコン表示領域R1と、文字情報表示領域R2とが設けられている。
電波状態アイコン表示領域R1には、電波状態を示す電波状態アイコンとして、アンテナを模した図柄で表現した電波状態アイコンが表示される。電波状態アイコンは、例えば、電波の受信状況に応じて、バーが増減するように表示され、電波が受信できない状態の場合には、例えば「圏外」等の表示がなされる。
文字情報表示領域R2には、図5(b)に示すように、例えば、「送信完了」等の電子ペン1における動作状態等のステータスが文字列で表示される。
【0044】
図6は、電子ペン1の機能ブロック図である。
電子ペン1は、機能的には、入力手段11と、無線通信手段12と、報知手段13と、記憶手段14と、プロセッサ106内の各手段(各手段は後述する)とを備える。
【0045】
入力手段11は、圧力センサ105や光学モジュール104を含み、ユーザによる電子ペン1での記入操作に応じた情報を入力する。
無線通信手段12は、3Gチップ通信モジュール109を含み、3Gの無線通信方式にしたがって基地局3と無線通信を行うことで、ネットワーク4を介してサーバ5等他の装置と各種情報を送受信する。
【0046】
報知手段13は、所定の条件下において報知動作を行うべく、表示手段131と、警告音発生手段132と、振動発生手段133とを備える。
表示手段131は、ディスプレイ111を含み、電子ペン1の電波の受信状態や各種情報を画像として表示する。また、表示手段131は、報知動作として、所定の条件下において、画像の少なくとも一部の領域を点滅させる等の表示を行う。
警告音発生手段132は、スピーカ112を含み、所定の条件下において、報知動作として、警告音を発生する。
振動発生手段133は、バイブレータ113を含み、所定の条件下において、報知動作として、振動する。
記憶手段14は、メモリ107を含み、各種データを記憶する。
【0047】
電子ペン1のプロセッサ106は、処理手段1061と、記入検知手段1062と、記入情報生成手段1063と、通信状態判断手段1064と、報知制御手段1065と、記憶制御手段1066と、通信制御手段1067とを備える。
【0048】
処理手段1061は、各種の汎用的な機能を実現する処理を含む、電子ペン1の動作全体を制御する各種処理を実行する。
記入検知手段1062は、入力手段11からの入力情報(具体的には、圧力センサ105の検出情報や光学モジュール104からの情報)に基づいて、ユーザの記入操作の内容を検知する。
記入情報生成手段1063は、記入検知手段1062による検知結果に基づいて、記入情報を生成する。
通信状態判断手段1064は、無線通信手段12における電波の受信状態を監視し、通信可能な状態か否かを判断する。
報知制御手段1065は、所定の条件下において、報知手段13が報知動作を行うように制御する。
本実施形態において、報知制御手段1065により報知動作が制御される所定の条件下とは、通信状態判断手段1064により通信不可状態と判断された条件下である。
記憶制御手段1066は、例えば、記入情報等を記憶手段14に記憶させる制御を実行する。
通信制御手段1067は、通信状態判断手段1064により通信可能と判断されている場合には、無線通信手段12によるデータの通信を制御して、記入情報等をサーバ5に送信する。その際、通信制御手段1067は、SIMチップ110に記憶されている識別情報を読み出して、記入情報とともに、無線通信手段12によって送信させる。
また、通信制御手段1067は、通信状態判断手段1064により通信不可状態と判断された場合には、無線通信手段12による通信を一端停止させて、通信状態判断手段1064により通信可能と再度判断された場合に当該通信を再開させる制御も実行する。なお、以下、このような制御処理を、「送信予約登録」という。この送信予約登録の開始のとき、即ち、通信状態判断手段1064により通信不可状態と判断されときに、記憶制御手段1066の制御により、送信予定の記入情報等の各種データが記憶手段14に記憶される。そして、無線通信手段12による通信が再開すると、通信制御手段1067の制御により、記憶手段14に記憶されていた記入情報が読み出されて、当該無線通信手段12からサーバ5に送信される。
【0049】
次に、サーバ5について説明する。
サーバ5は、電子ペン1からネットワーク4を介して送信されてきた記入情報を受信し、当該記入情報をデータとして利用可能になるように蓄積する機能を有する。
このようなサーバ5は、図示はしないが、ネットワーク4を介して通信を行う通信手段や各種のデータを記憶する記憶手段等を備える。
【0050】
次に、図7を参照して電子ペンシステム10−1における電子ペン1の処理フローについて説明する。図7は、電子ペンシステム10−1における電子ペン1の処理に係るフローチャートである。
【0051】
初めに、記入検知手段1062は、記入の検知を行う(ステップS1)。詳細には、圧力センサ105は、ユーザの記入操作によりペン先102からの圧力を受けると、その圧力を検出して、検出結果を出力する。記入検知手段1062は、このような圧力センサ105の検出結果に基づいて、記入の検知を行う。また、記入検知手段1062は、記入の検知をもって、ペンダウンされたことを検知する。
【0052】
次に、通信状態判断手段1064は、通信可能状態か否かを判断する(ステップS2)。詳細には、通信状態判断手段1064は、無線通信手段12の電波の受信状態を監視することにより通信可能状態か否かを判断する。
この際、表示手段131のディスプレイ111には、通信状態判断手段1064の判断結果を示す画像が表示される。例えば、通信可能状態の場合には、図5(b)に示すような画像がディスプレイ111に表示され、通信不可状態の場合には、「圏外」等通信不可状態であることを示す画像がディスプレイ111に表示される。
【0053】
通信状態判断手段1064が通信可能状態であると判断した場合(ステップS2:YES)には、記入情報生成手段1063は、記入情報を生成し、通信制御手段1067が、記入情報をSIMチップ110の識別情報とともに送信する(ステップS3)。詳細には、記入情報生成手段1063は、記入検知手段1062による筆圧の検知(ステップS1)から、電子ペン1による記入情報を生成し、続いて、通信制御手段1067は、記入情報生成手段1063により生成された記入情報を、SIMチップ110の識別情報とともに、基地局3及びネットワーク4を介してサーバ5に対して送信する。
【0054】
次に、記入検知手段1062は、ペンアップか否かを検知する(ステップS4)。詳細には、記入検知手段1062は、ペン先102からの圧力を圧力センサ105が受けなくなった場合にペンアップされたことを検知する。
記入検知手段1062がペンアップを検知していない場合(ステップS5:NO)には、ステップS3に戻り、記入情報生成手段1063は記入情報を生成し、通信制御手段1067が、記入情報とSIMチップ110の識別情報とを送信する(ステップS3)。即ち、記入検知手段1062がペンアップを検知するまでは、ステップS3の処理が繰り返されることで、座標値を含む記入情報の生成、送信が行われる。
記入検知手段1062がペンアップを検知した場合(ステップS5:YES)には、記入情報生成手段1063はペンアップ情報PUを含む記入情報を生成し、通信制御手段1067が、その記入情報とSIMチップ110の識別情報とを送信して(ステップS5)、処理を終了する。
【0055】
一方、通信状態判断手段1064が通信不可状態であると判断した場合(ステップS2:NO)には、報知制御手段1065は、報知手段13が報知動作を行うように制御する(ステップS6)。詳細には、報知制御手段1065は、データの送信が行えない状態である旨の報知として、表示手段131を点滅表示させたり、警告音発生手段132から警告音を発生させたり、振動発生手段133により振動を発生させる。
【0056】
次に、記入情報生成手段1063は、記入情報を生成し、記憶制御手段1066は、その記入情報を記憶手段14のメモリ107に記入情報を記憶する(ステップS7)。
続いて、記入検知手段1062は、ステップS4と同様に、ペンアップか否かを検知する(ステップS8)。
記入検知手段1062がペンアップを検知していない間(ステップS8:NO)は、記入情報生成手段1063は記入情報生成し、記憶制御手段1066はその記入情報をメモリ107へ記憶させ、この処理が繰り返される(ステップS7)。
記入検知手段1062がペンアップを検知した場合(ステップS8:YES)には、記入情報生成手段1063はペンアップ情報PUを含む記入情報を生成し、記憶制御手段1066は、その記入情報をメモリ107に記憶させる(ステップS9)。
そして、通信制御手段1067は、送信予約登録を行う(ステップS10)。詳細には、通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を一時停止させる。その後、ユーザが電子ペン1を電波の届くところに移動させる等をして、通信状態判断手段1064が通信可能状態に再遷移したと判断した場合に、通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を再開させる。即ち、通信制御手段1067は、記入情報を記憶手段14のメモリ107から読み出して、SIMチップ110の識別情報とともに、無線通信手段12からサーバ5に対して送信させる。
これにより、通信状態判断手段1064が通信不可状態であると判断した場合(ステップS2:NO)に係る処理が終了になる。
なお、通信制御手段1067は、通信状態判断手段1064の判断が通信可能状態から通信不可状態に変化した場合にも、記入情報の送信を停止し、送信予約登録を行う。
【0057】
[第1実施形態における作用効果]
以上説明したように第1実施形態によれば、電子ペン1は、ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報のデータをサーバ5に送信する。
即ち、電子ペン1において、記入情報生成手段1063は、ユーザの記入操作の内容に基づいて、記入情報を生成する。
無線通信手段12は、3Gの無線通信方式にしたがってサーバ5と通信することで、記入情報生成手段1063により生成された記入情報をサーバ5に送信する。
通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を制御する。
通信状態判断手段1064は、無線通信手段12における通信の状態(無線状態)を判断する。
報知手段13は、通信状態判断手段1064の判断結果に基づいて、報知動作を行う。
報知制御手段1065は、通信状態判断手段1064により無線通信手段12が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段13を制御する。
【0058】
このように、電子ペン1は、送信不可状態であることをユーザに報知するために、ユーザは、記入情報がサーバ5に送信されていないことを認識して、通信可能状態に復帰させるための措置、例えば電子ペン1を移動させる等の措置を容易かつ即座に取ることができる。さらに、電子ペン1においては、通信不可能状態では、送信予約として記入情報は記憶手段14に一旦格納されるために、通信可能状態になると、当該記入情報は確実にサーバ5に送信される。
【0059】
即ち、3Gの通信状態が悪く、サーバ5へのデータの通信が行えない場合には、その旨をユーザに適切に報知することによって、例えば、ユーザにサーバ5へのデータの通信が行えないという認識を持たせたり、電波状態が良い場所に移動する等の行動を促すことができる。
【0060】
<第2実施形態>
以下の第2実施形態の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能、処理を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態は、第1実施形態とは、電子ペン1がクレードル装置200を使用する点において相違する。また、第2実施形態においては、クレードル装置200は、第1実施形態において、電子ペン1に設けられていた報知手段13、無線通信手段12等の機能を有するように構成される。
即ち、第1実施形態においては、電子ペン1は、サーバ5に記入情報を3Gの無線通信方式に従って送信していたが、第2実施形態においては、クレードル装置200が、電子ペン1から記入情報取得して、3Gの無線通信方式に従ってサーバ5に送信する。また、第1実施形態においては、電子ペン1は、無線通信手段12において通信不可状態である場合には、報知動作及び送信予約登録を行っていたが、第2実施形態においては、クレードル装置200が無線通信手段12において通信不可状態である場合には、報知動作及び送信予約登録を行うように構成される。
【0061】
図8は、第2実施形態に係る電子ペンシステムの構成を示す。本実施形態の電子ペンシステム10−2は、図8に示すように、電子ペン1−1、1−2(用紙2−1、2−2)と、当該電子ペン1−1,1−2が共通して使うクレードル装置200と、サーバ5とを備える。
なお、以下、電子ペン1−1,1−2を個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、単に「電子ペン1」と呼ぶ。また、「電子ペン1」と呼んでいる場合には、用紙2−1,2−2もまとめて、単に「用紙2」と呼ぶ。
なお、図8には、2本の電子ペン1のみが図示されているが、これは例示に過ぎない。即ち、電子ペンシステム10−2における電子ペン1の本数は、特に限定されず、1本でもよいし、図8の例のように2本を含む複数本でもよい。
【0062】
クレードル装置200は、電子ペン1の置き台として電子ペン1が差し込まれている場合、端子等を介して電子ペン1と電気的に接続される。また、クレードル装置200は、3Gの無線通信方式により基地局3と無線通信をすることにより、インターネット等のネットワーク4を介してサーバ5と相互に接続されている。つまり、電子ペン1から出力される記入情報は、クレードル装置200を介してサーバ5に伝送される。
【0063】
図9は、クレードル装置200の内部構造を隠れ線で示した側面図である。クレードル装置200は、図9に示すように、プロセッサ210と、メモリ211と、3Gチップ通信モジュール212と、端子213と、ディスプレイ214とを備える。
プロセッサ210は、各種の処理の実行を制御する。
メモリ211は、各種のデータを記憶する。
端子213は、図示しない電子ペン1の端子に対応し、電子ペン1の間との通信及び電子ペン1への電力の供給を行う。
3Gチップ通信モジュール212は、3Gの無線通信方式(第3世代移動通信システム)の規格に準拠して基地局3と無線通信を行うことで、ネットワーク4を介してサーバ5と各種情報を送受信する。電子ペン1から端子213を介してクレードル装置200に供給された記入情報等は、プロセッサ210で処理されたり、メモリ211に一旦記憶される等した後、最終的に、3Gチップ通信モジュール212からサーバ5に送信される。
ディスプレイ214は、LCD等で構成され、電波の受信状況やクレードル装置200の状態等の情報を画像として表示する。
【0064】
また、クレードル装置200は、図9に示すように、電子ペン1を収容可能な収容開口部200aを有している。クレードル装置200は、当該収容開口部200aに電子ペン1を挿入されると、当該電子ペン1に設けられた端子(図示せず)と端子213と物理的に接触することで、電子ペン1と電気的に接続し、電子ペン1と各種データを送受信したり、電子ペン1に対して電力を供給する。
このように、クレードル装置200は、電子ペン1の置き台として機能するとともに、電子ペン1に対して電力を供給する機能、電子ペン1とサーバ5との間で送受信される情報を中継する機能を有する。
【0065】
図10は、クレードル装置200の機能ブロック図である。
クレードル装置200は、機能的には無線通信手段12と、報知手段13と、記憶手段14と、プロセッサ210内の各手段(各手段は後述する)とを備える。
無線通信手段12、報知手段13、及び記憶手段14の各々は、図6の対応する符号の手段と基本的に同様の機能と構成を有しているため、ここではその説明を省略する。なお、図10の例では、報知手段13は、ディスプレイ214を含む表示手段131のみを有しているが、必要に応じて、図6の報知手段13と同様に、警告音発生手段132や振動発生手段133を有するようにしてもよい。
また、プロセッサ210は、図6のプロセッサ106が有していた手段のうち、無線通信手段12、処理手段1061、データ取得手段1068、通信状態判断手段1064、報知制御手段1065、記憶制御手段1066及び通信制御手段1067を有している。データ取得手段1068は、電子ペン1からの記入情報等のデータを端子213を介して取得する。その他の、処理手段1061、通信状態判断手段1064、報知制御手段1065、記憶制御手段1066及び通信制御手段1067については、図6を用いて説明済みであるので、ここではその説明を省略する。
【0066】
次に、図11を参照して電子ペンシステム10−2におけるクレードル装置200の処理フローについて説明する。図11は、電子ペンシステム10−2におけるクレードル装置200の処理に係るフローチャートである。
【0067】
初めに、収容開口部200aに電子ペン1を挿入されると、データ取得手段1068は、電子ペン1から記入情報を取得し、記憶制御手段1066は、当該記入情報を記憶手段14に記憶させる(ステップS20)。なお、記入情報には、電子ペン1に内蔵されたSIMチップの識別情報が付与されている。
【0068】
次に、通信状態判断手段1064は、電波状態が通信可能状態か否かを判断する(ステップS21)。詳細には、通信状態判断手段1064は、無線通信手段12の電波の受信状態を監視することにより通信可能状態か否かを判断する。
この際、表示手段131のディスプレイ214には、通信状態判断手段1064の判断結果を示す画像が表示される。例えば、第1実施形態と同様に、通信可能状態の場合には、図5(b)に示すような画像がディスプレイ214に表示され、通信不可状態の場合には、「圏外」等通信不可状態であることを示す画像がディスプレイ111に表示される。
【0069】
通信状態判断手段1064が通信可能状態であると判断した場合(ステップS21:YES)には、通信制御手段1067は、記入情報をSIMチップの識別情報とともにまとめて送信する(ステップS22)。詳細には、通信制御手段1067は、ステップS20において記憶手段14に記憶された記入情報を、無線通信手段12から基地局3及びネットワーク4を介してサーバ5に対して送信する。
これにより、通信状態判断手段1064が通信可能状態であると判断した場合(ステップS21:YES)に係る処理は終了となる。
【0070】
一方、通信状態判断手段1064が通信不可状態であると判断した場合(ステップS21:NO)には、報知制御手段1065は、報知手段13が報知動作を行うように制御する(ステップS23)。詳細には、報知制御手段1065は、データの送信が行えない状態である旨の報知として、表示手段131のディスプレイ214を点滅させる。なお、図10には図示されていないが、クレードル装置200がバイブレータやスピーカを備えている場合には、報知制御手段1065は、バイブレータを振動させたり、スピーカから警告音を鳴らせたりしてもよい。
【0071】
次に、通信制御手段1067は、送信予約登録を行う(ステップS24)。詳細には、通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を一時停止させるとともに、記憶制御手段1066は、送信予定の記入情報の記憶手段14における記憶を維持させる。その後、ユーザが電子ペン1を電波の届くところに移動させる等をして、通信状態判断手段1064が通信可能状態に再遷移したと判断した場合に、通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を再開させる。即ち、通信制御手段1067は、SIMチップの識別情報が付された記入情報を記憶手段14から読み出して、無線通信手段12からサーバ5に対して送信させる。
これにより、通信状態判断手段1064が通信不可状態であると判断した場合(ステップS21:NO)に係る処理が終了になる。
【0072】
[第2実施形態における作用効果]
以上説明したように第2実施形態によれば、クレードル装置200は、記入の軌跡を記入情報として取得して、当該記入情報をサーバ5に送信する電子ペン1の置き台として機能する。
クレードル装置200においては、データ取得手段1068は、電子ペン1からの記入情報を取得する。
無線通信手段12は、3Gの無線通信方式にしたがってサーバ5と通信することによって、データ取得手段1068により取得された記入情報をサーバ5に送信する。
通信制御手段1067は、無線通信手段12による通信を制御する。
通信状態判断手段1064は、無線通信手段12における通信の状態(無線状態)を判断する。
報知手段13は、通信状態判断手段1064の判断結果に基づいて、報知動作を行う。
報知制御手段1065は、通信状態判断手段1064により無線通信手段12が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段13を制御する。
【0073】
このように、クレードル装置200は、送信不可状態であることをユーザに報知するために、ユーザは、記入情報がサーバ5に送信されていないことを認識して、通信可能状態に復帰させるための措置、例えばクレードル装置200を移動させる等の措置を容易かつ即座に取ることができる。さらに、クレードル装置200においては、通信不可能状態では、送信予約として記入情報は記憶手段14に一旦格納されるために、通信可能状態になると、当該記入情報は確実にサーバ5に送信される。
【0074】
即ち、3Gの通信状態が悪く、サーバ5へのデータの通信が行えない場合には、その旨をユーザに適切に報知することによって、例えば、ユーザにサーバ5へのデータの通信が行えないという認識を持たせたり、電波状態が良い場所に移動させたりする等の行動を促すことができる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限られない。
また、上述の実施形態においては、ドットパターンが印刷された専用の用紙2のドットパターンを赤外線で読み取り、ユーザによる記入操作により遷移するドットパターンの変化を記入情報として取得するような方式で、記入情報を取得したがこれに限られず、例えば、電子ペン1の相対的な位置の変化を取得することにより記入情報を取得するような方式等の種々の方式を採用することができる。また、電子ペン1、ドットパターン、記入情報は、アノト方式に限られない。
【0076】
また、上述の実施形態においては、電子ペン1及びクレードル装置200の無線通信手段12は、3Gの無線通信方式に準拠した無線通信方式したがって、通信を行うように構成したがこれに限られない。電子ペン1及びクレードル装置200の無線通信手段12は、無線方式による通信を行うものであればどのような規格に準拠した通信方式でもよく、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi(wireless fidelity)、無線LAN(Local Area Network)等であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 電子ペン
5 サーバ
11 入力手段
12 無線通信手段
13 報知手段
131 表示手段
132 警告音発生手段
133 振動発生手段
14 記憶手段
200 クレードル装置
1062 記入検知手段
1063 記入情報生成手段
1064 通信状態判断手段
1065 報知制御手段
1066 記憶制御手段
1067 通信制御手段
1068 データ取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンにおいて、
前記ユーザの記入操作に基づいて、前記記入情報を生成する記入情報生成手段と、
所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成手段により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段による通信を制御する通信制御手段と、
前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段と、
前記通信状態判断手段の判断結果に基づいて、報知動作を行う報知手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
ユーザによる記入を検知する記入検知手段をさらに備え、
前記報知制御手段は、前記記入検知手段によりユーザによる記入を検知した時に、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記記入情報を記憶する記憶手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とをさらに備え、
前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記報知手段は、警告音、振動、又は画像表示により前記報知動作を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子ペン。
【請求項5】
ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンの制御方法において、
前記ユーザの記入を検知する記入検知ステップと、
前記記入検知ステップにより前記ユーザの記入が検知された時に、無線通信手段における通信状態が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御ステップと
を含むことを特徴とする電子ペンの制御方法。
【請求項6】
前記記入検知ステップにより前記ユーザの記入が検知された時に、無線通信手段における通信状態が通信可能状態であると判断された場合に、前記ユーザの記入操作に基づいて、記入情報を生成する記入情報生成ステップと、
所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成ステップの処理により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御ステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の電子ペンの制御方法。
【請求項7】
電子ペンを、
ユーザの記入操作の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンからの前記ユーザの記入操作に基づいて、前記記入情報を生成する記入情報生成手段、
所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記記入情報生成手段により生成された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御手段、
前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
ユーザによる記入を検知する記入検知手段をさらに備え、
前記報知制御手段は、前記記入検知手段によりユーザによる記入を検知した時に、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する
よう機能させることを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記記入情報を記憶する記憶手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とをさらに備え、
前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御する
よう機能させることを特徴とする請求項7又は8に記載のプログラム。
【請求項10】
記入の軌跡を記入情報として生成して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンの置き台として機能するクレードル装置において、
前記電子ペンからの記入情報を取得するデータ取得手段と、
所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記データ取得手段により取得された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段による通信を制御する通信制御手段と、
前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段と、
前記通信状態判断手段の判断結果に基づいて、報知動作を行う報知手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、前記報知動作を行うように前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えることを特徴とするクレードル装置。
【請求項11】
前記記入情報を記憶する記憶手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とを備え、
前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御する
ことを特徴とする請求項10に記載のクレードル装置。
【請求項12】
前記報知手段は、警告音、振動、又は画像表示により前記報知動作を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載のクレードル装置。
【請求項13】
電子ペンが差し込まれるクレードル装置を、
記入の軌跡を記入情報として取得して、当該記入情報を外部装置に送信する電子ペンからの記入情報を取得するデータ取得手段、
所定の無線通信方式にしたがって外部装置と通信し、前記データ取得手段により取得された前記記入情報を前記外部装置に送信する無線通信手段による通信を制御する通信制御手段、
前記無線通信手段における通信の状態を判断する通信状態判断手段、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合に、報知動作を行うように報知手段を制御する報知制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
前記記入情報を記憶する記憶手段と、
前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記記憶手段に記憶させるように制御する記憶制御手段とを備え、
前記通信制御手段は、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信不可状態であると判断された場合、前記記入情報を前記外部装置に送信することを停止し、前記通信状態判断手段により前記無線通信手段が通信可能状態であると判断された場合には、前記記入情報を前記外部装置に送信することを再開するように前記無線通信手段を制御する
よう機能させことを特徴とする請求項13に記載のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate