説明

電子レンジでの用に供する事が可能な、深絞り成形された発泡ポリプロピレン容器

【課題】電子レンジで使用可能な耐熱性と、環境性能とを兼ね備えた、深絞り成形された発泡ポリプロピレン容器を提供する事。
【解決手段】厚み1.5mm以上で、伸び率が縦方向で80%以上で、横方向で25%以上である発泡ポリプロピレンシートを、加熱炉の雰囲気温度300℃〜400℃で10秒〜60秒間加熱し、15秒〜30秒で深絞り成形する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
電子レンジでの用に供する事が可能な、深絞り成形された発泡ポリプロピレン容器
【技術分野】
【0002】
本発明は、電子レンジでの用に供する事を可能とする、発泡ポリプロピレンの深絞り容器に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、発泡ポリプロピレンを使用した深絞り成形された容器に関しては、例えば、特開2001−247114号広報に記載されている。同広報によれば、少なくとも5層以上に積層してなる積層体を成形した深絞り多層容器を提供している。
【0004】
近年の環境保全意識の高まりにより、環境への配慮が求められている中、合成樹脂製品が多用される容器全般には消費者の健康に配慮する事も要求されている。特に、電子レンジでの簡便な調理方法が広く消費者層に浸透してきており、食品容器に関しては包装容器がそのまま食器として用いられる事も既に珍しくない。これに伴い、容器には耐熱性と、加熱時、または注湯時に環境ホルモンが溶出しない、さらに高リサイクル性、容易に破損しない等の性能が要求されている。
【0005】
現在一般に広く使用されている、発泡スチロールを成形した容器は、耐熱性が低く電子レンジでの加熱使用が不可能である事は公知である。また、例えば内容物が油脂分を含む、インスタント食品である場合、注湯時に内容物の食品に含まれる油脂分によって容器の耐熱温度を超え、スチレンモノマー等の環境ホルモンが食品中への溶出が確認されており、環境にも人体にも悪影響を及ぼす事が危惧されている。さらに、輸送中の衝撃による破損、内容物の乾燥食品によって容器を破損、箸やフォーク等で攪拌時の破損等の原因により、消費者が火傷を負う等の危険性があった。
【0006】
さらに、現在一般に広く使用されている発泡スチロールを成形した容器、または上記、特開2001−247114号広報に示されるような多層体を原反とする容器は、リサイクル性が低く、この問題を解決する事の出来る、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、容器の軽量化と、原料の少量化を可能とする発泡技術を用いた、発泡ポリプロピレンシートを原反とする、発泡ポリプロピレン容器が求められており、同時に、多様化するプラスチック製容器の形状を考慮し、深絞り成形された発泡ポリプロピレン容器が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子レンジで使用可能な高耐熱性を有し、環境及び人体に悪影響のない、深紋り成形された、発泡ポリプロピレン容器を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリプロピレン樹脂を原料とし、発泡シート状に成形された、発泡ポリプロピレンシートが好適に使用できる。
【0009】
本発明に用いられる発泡ポリプロピレンシートは、特に制限はないが、成形性の点から2〜10倍に発泡したものが好適に使用できる。より好ましくは、発泡剤に二酸化炭素ガスを使用した発泡ポリプロピレンシートであり、廃棄性を考慮して、他原料によるラミネートフィルム加工を施さないシートである。
【0010】
また、成形性をさらに向上させる目的から、発泡ポリプロピレンシートとしては、ポリプロピレン組成物、長鎖分枝を有するポリプロピレンポリマ、両者の混合品、または、ゴム改質した線状ポリプロピレン原料に、核剤、加工助剤、改質剤を適宜混合して、押出機でシート状に成形されたものが好適である。
【0011】
核剤は、軽微性炭酸カルシウム、重質炭カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸、タルクを含む。これらの核剤は、発泡ポリプロピレンシートの発泡状態を安定させる為に、ポリプロピレン原料の0.1〜30重量%で、適宜加えるものである。
【0012】
加工助剤は、滑剤、粘着防止剤、粘着付与剤を含む。これらの加工助剤は、ポリプロピレン原料の特性に応じて、必要であれば、ポリプロピレン原料の0.1〜30重量%で、適宜加えるものである。
【0013】
改質剤は、タルク、炭酸カルシウム、ゴム等を含む。これらの改質剤は、ポリプロピレン原料の0.1〜30重量%で適宜加えるものである。
【0014】
本発明に必要な発泡ポリプロピレンシートは、1.5mm以上の厚みが必要である。1.5mm未満の場合、深絞り成形時に有効な厚みを確保できず、容器としては強度不足であり、かつ断熱性能を得られない。
【0015】
さらに、本発明に必要な発泡ポリプロピレンシートの原料は、メルトインデックスが2.5g/10min〜5g/10min(JIS K6758)であり、ホモポリプロピレン樹脂が好適である。また、成形性の向上を目的に、ゴム成分や熱可塑性エストラマー等をブレンドしたものでも構わない。
【0016】
成形性を考慮すると、発泡ポリプロピレンシートの物性としては、伸び率(JIS K6732)物性値が、縦方向では80%以上、横方向では25%以上が好適である。さらに好ましくは、曲げ弾性率(ASTM−D790)物性値が700MPa以上、曲げ強度(ASTM−D790)物性値が35MPa以上であると、生産性が向上する効果が得られる。
【実施例】
【0017】
下記に示す原料を使用して、発泡倍率3倍、厚み3mmの発泡ポリプロピレンシートを作成した。この時の押出機は、単軸押出機に環状ダイを組み合わせたものであるが、多軸式押出機、タンデム式押出機に、環状ダイ、Tダイ、Iダイを組み合わせても同様の発泡ポリプロピレンシートを得られる。
【0018】
押出機には発泡剤注入口が設けられており、二酸化炭素ガスボンベから定量供給機で所望の量に計量して押出機内部に供給される。
【0019】
押出機内部には、上記に示されたポリプロピレン原料が供給され、第1押出行程として190℃〜230℃で溶融され、上記に示す方法で発泡剤が定量供給され、混練行程となる、第2押出行程に送られる。第2押出行程は、所望の発泡倍率を得る為に、160℃〜190℃に下げられており、押出機内部圧力が適宜調整される。ここで、発泡剤(二酸化炭素ガス)と混練されたポリプロピレン原料は、環状ダイ、Tダイ、Iダイの何れかから大気解放され、発泡する。
【0020】
上記に示される方法で得られた発泡ポリプロピレンシートは、熱成形機を用いて、図1に示すような、容器開口部の径97mm、容器開口部から容器底部の寸法107mmである、寸法比が1対1.1の容器を作成した。本実施例では、開口部が丸形のものを作成したが、開口部が角形、または多角形、あるいは成形可能な範囲である異形のものであっても構わない。
【0021】
この時の熱成形機は、真空引き、加圧空気圧送及び機械的圧力を単独、または組み合わせて使用する形式である。ここで、加熱炉の雰囲気温度は200℃〜350℃であり、発泡ポリプロピレンシートが加熱される時間は10秒〜60秒であり、所望の形状に成形する時間は15秒〜30秒である。
【0022】
上記に示される方法で得られた発泡ポリプロピレン容器に、インスタントラーメンのフライ麺、粉末スープ、調味油、水を入れ、電子レンジで3分加熱し、調理状態の確認と、容器の断熱性、形状等の状態を評価した。
【0023】
(1) ポリプロピレン樹脂:「日本ポリプロ株式会社 ノバテックPP FB3312」、核剤:「日本ベイリンガーインゲルハイム株式会社 CF−40EJ」
(2) ポリプロピレン樹脂:「サンアロマー株式会社 PF−814」、核剤:「日本ベイリンガーインゲルハイム株式会社 CF−40EJ」
(3) 比較対照品:「三井化学プラテック株式会社 パロニア」
(4) ポリプロピレン樹脂1:「サンアロマー株式会社 PF−814」、ポリプロピレン樹脂2「日本ポリプロ株式会社 FB3312」、核剤:「日本ベイリンガーインゲルハイム株式会社 CF−40EJ」
【0024】
評価は下記の方法で行った。
(1)成形性−発泡ポリプロピレンシートを230℃の雰囲気温度で20秒加熱し、口径97mm、深さ107mmに成形し、状態を観察した。
○:良好 △:偏肉 ×:成形不良
(2)耐熱性−発泡ポリプロピレン容器にインスタントラーメンのフライ麺、粉末スープ、調味油、水を入れ、電子レンジで3分加熱後、発泡ポリプロピレン容器の状態を確認した
○:良好 △:変形 ×:溶解
(3)物性−JIS K6732により、発泡ポリプロピレンシートの引張試験を行い、伸び率を測定した。評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【発明の効果】
【0026】
本発明の、深絞りされた発泡ポリプロピレン容器によれば、耐熱性に優れ、電子レンジ加熱される容器として好適な容器である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】深絞り成形された、発泡ポリプロピレン容器を示した外観図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリプロピレンシートを所定の条件で成形することにより、所定の深絞り比で深絞り加工された容器。
【請求項2】
容器開口部の径、または長辺の寸法と、容器開口部から容器底面との寸法比が1対1より大きい発泡ポリプロピレンで形成された容器。
【請求項3】
電子レンジで加熱可能な請求項1または請求項2の容器。

【図1】
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