説明

電子レンジによる加熱ムラの少ない冷凍麺塊

【課題】電子レンジによる解凍調理時に、加熱ムラが少なく、かつ麺塊全体としてコンパクトな、冷凍麺塊を提供する。
【解決手段】加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる、略直方体の冷凍麺塊であって、上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを有し;2つのくぼみの体積の総和の麺塊体積に対する割合(空間率)が、2%以上30%未満であり;かつ
くぼみの深さの麺塊の厚みに対する割合(深さ率)が、30〜100%である、冷凍麺塊とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍麺塊に関する。より詳細には、電子レンジによる解凍調理に適した冷凍麺塊の形状に関する。本発明は、食品製造分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
食品の冷凍は、鮮度やおいしさを保ち、また腐敗を防いで長期間保存可能とすることを目的に行われる。うどんなどの麺帯を冷凍した製品としては、喫食の際には鍋で茹で調理するものが主流であるが、電子レンジによる解凍調理ができれば、より手軽に、より短時間で喫食に呈したものとすることができる点で好ましい。
【0003】
解凍復元性の観点から冷凍麺塊の形状を検討した例としては、次のようなものがある。特許文献1は、解凍復元を電子レンジで行うに適した冷凍茹麺に関するものであり、麺塊に凹型空洞部を有する冷凍茹麺を提供する。ここでの好ましい態様においては、冷凍茹麺は、空洞率10〜50%の凹型空洞部を有する。実施例においては、空洞率5%では、復元ムラが見られたことが記載されている。また特許文献2は、解凍復元性に優れた冷凍茹麺の提供を課題として、上面および/または下面に溝を有する整形体であることを特徴とする冷凍茹麺塊を提案する。この整形冷凍茹麺塊は、自然解凍で解凍復元を行うのに適していると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-124349
【特許文献2】特開平7-203887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍麺塊を電子レンジで解凍調理する際、一般的な食中毒の原因となる菌を死滅させるとの観点からは、麺塊の中心温度が75℃となるまで処理すべきであるが、麺塊には、電子レンジ加熱調理によっては昇温しづらい箇所(コールドスポット)がある一方で、昇温が比較的早く進み、過加熱となる部分が生じ、麺塊全体としては加熱ムラができることがある。
【0006】
また、解凍復元性の観点から麺塊形状を検討した従来の方法は、いずれも比較的大きなくぼみを麺塊に設けるものであるために、麺塊全体として嵩高くなり、製品としてコンパクトでなくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討によると、冷凍麺塊の形状により、コールドスポットが常にほぼ同じ位置に生じることが分かった。本発明者らは、直方体である冷凍麺塊に生じうるコールドスポットの位置を特定し、その位置を狙って麺塊にくぼみをつけることで、麺塊全体の体積を大きく変化させることなく、加熱ムラを抑えることできることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1]加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる、略直方体の冷凍麺塊であって、
麺塊の上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを有し;
2つのくぼみの体積の総和の麺塊体積に対する割合(空間率)が、2%以上30%未満であり;かつ
くぼみの深さの麺塊の厚みに対する割合(深さ率)が、30〜100%である、冷凍麺塊。
[2]各くぼみが、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存する、[1]に記載の冷凍麺塊。
[3]空間率が、3%以上10%未満である、[1]又は[2]に記載の冷凍麺塊。
[4]深さ率が、30〜65%である、[1]〜[3]のいずれか一に記載の冷凍麺塊。
[5]2つのくぼみの入口断面の面積の総和の、上面又は底面の面積に対する割合(くぼみ面積占有率)が、5%以上である、[1]〜[4]のいずれか一に記載の冷凍麺塊。
[6]加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる冷凍麺塊の、電子レンジ解凍の際の、温度ムラを低減する方法であって、冷凍麺塊の形状を、
略直方体であって、
上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを設け;
空間率が、2%以上30%未満であり;かつ
深さ率が、30〜100%であるようにする、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍麺塊の電子レンジによる加熱ムラが抑えられるので、冷凍麺塊において、一般的な食中毒原因菌に対して有効といわれている中心温度75℃、1分以上の加熱を有効に行うことができ、またその際に、麺としての美味しさを損なわない。
【0010】
本発明によれば、冷凍麺塊において電子レンジによる昇温が遅い箇所にくぼみを設けるため、くぼみの体積を比較的小さくすることができ、麺塊全体としての体積を必要以上に増加させず、コンパクトにすることができる。
【0011】
本発明の冷凍麺塊の形状は、既存のトレーの底面に必要な凸部を設けることによって達成可能であり、現行の製造工程を大きく変えることなく実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の冷凍麺塊の一態様(麺塊上面に円柱状のくぼみを設けたもの)の平面図である。底面を短辺に平行な線で2等分する線、2つの円がくぼみを表す。
【図2】図2は、本発明の冷凍麺塊の一態様(麺塊上面に角柱状のくぼみを設けたもの)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[形状]
本発明の冷凍麺塊の形状は、下記の特徴を有する。
(1)略直方体である。
(2)上面又は底面のいずれか一方の面に、くぼみを2つ有する。各くぼみが、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存することが好ましい。
(3)2つのくぼみの体積の総和の麺塊体積に対する割合(空間率)が、2%以上であり、30%未満である。
(4)くぼみの深さの麺塊の厚みに対する割合(深さ率)が、30〜100%である。
(5)くぼみの形状は、四角柱、円柱、楕円柱であってもよい。
【0014】
直方体:
本発明で麺塊の形状に関し、直方体というときは、特に記載した場合を除き、後述するようなくぼみの部分を考慮せず、麺塊全体の形状が略直方体である場合を指し、麺塊全体の形状が、正方柱や円柱である場合を除く趣旨である。麺塊を冷凍成型するためのトレーは、麺塊の出し入れが容易なように、若干のテーパーがついていることがあるが、ここでいう略直方体には、上面と底面の辺の長さの差が、数%以内(例えば5%以内)である場合が含まれる。
【0015】
本発明で「麺で構成される麺塊」というときは、特に記載した場合を除き、麺(麺線ということもある。)の塊をいう。麺塊は、冷凍成型されている場合もある。麺塊は、通常、麺と麺との間に、ある程度の空隙を有し、そのため、冷凍されていない場合は、ある程度の圧縮が可能である。
【0016】
本発明で麺塊の体積(容積)をいうときは、麺及び麺間の空隙を含む体積を指し、麺そのものの体積とは異なる。麺塊体積は、具体的には、麺塊全体を包含する最小の直方体を想定し、その直方体の体積として定義される。例えば、麺塊が100 mm×100mm×20mmにちょうど包含される場合の麺塊体積は、200cm3と計算される。
【0017】
本発明で「加熱調理済み」というときは、特に記載した場合を除き、原料麺に、喫食可能なまでに加熱調理が施されていることをいう。加熱調理の例としては、茹でる、蒸すを掲げることができる。加熱調理の条件は、当業者であれば、麺の種類に応じ、通常の調理条件を参考に、適宜決定できる。加熱調理の後、必要に応じ、湯切り、水洗、冷却等を行うことができる。
【0018】
本発明の冷凍麺塊の形状としての直方体の大きさは、電子レンジで解凍調理可能な大きさである限り、特に限定されない。冷凍麺塊の調理は、一般的には沸騰水で茹でることによる場合が多く、その際の用具として、家庭では鍋を、外食産業の調理施設においては業務用の「てぼ」と呼ばれるすくいざるを用いることが多い。従って、既存の冷凍麺塊は、これらの調理器具の中へそのまま入れることができる大きさとして設計されていることがある。しかしながら本発明の場合は、このような制限はない。
【0019】
本発明における直方体の全体の大きさは、麺塊を構成する加熱調理済み麺の量として表わすことができる。麺量の下限は、特に制限はないが、例えば30g、50g、80gとすることができる。上限も様々とすることができるが、例えば1000g、500g、300gとすることができる。麺量範囲の例は、重量としては100g〜300gである。典型的には、200g程度である。
【0020】
本発明の冷凍麺塊において、麺量が100〜300gである場合、麺塊の上面又は底面(直方体の面のうち、最も広い面。以下、麺塊の大きさに関し、底面について説明することがあるが、特に記載した場合を除き、その説明は上面にも当てはまる。)の一辺は、50〜210mmとすることができる。
【0021】
麺量が多い場合、麺塊に高さ(厚み)を持たせず、板状にすることが好ましい場合がある。麺塊の高さは、例えば35mm以下、好ましくは33mm以下、より好ましくは31mm以下とするとよい。
【0022】
麺量がいずれの場合であっても、本発明の冷凍麺塊の形状は、底面においては、短辺の長さを1とした場合、長辺を1.10以上とすることができ、1.12以上とすることが好ましく、1.14以上とすることがより好ましい。また、いずれの場合も、底面においては、短辺の長さ1に対し、長辺は1.50以下とすることができ、1.46以下とすることが好ましく、1.43以下とするとことがより好ましい。
【0023】
くぼみ:
本発明の冷凍麺塊は、上面又は底面のいずれか一方の面に、くぼみを2つ有する。各くぼみは、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存することが好ましい。
【0024】
本発明でくぼみというときは、特に記載した場合を除き、側面に貫通した溝状のもの(本明細書の実施例の形状(5)参照。)を含まない。
【0025】
本発明者らの検討によると、直方体の冷凍麺塊を電子レンジで解凍調理した際、下図に楕円で示した2箇所のうち、いずれかにコールドスポットが現れることがある。
【0026】
【化1】

【0027】
したがって、くぼみの個数は、コールドスポットとなる可能性のある場所の数に合わせて、2個が最適である。本発明者らの検討によると、直方体の冷凍麺塊において、コールドスポットは2箇所に生じうる。この2箇所のコールドスポット位置をカバーする位置にくぼみを設けることが、コールドスポットを生じさせないために有効でありうる。したがって、設けるべきくぼみの個数は、2個が最適である。
【0028】
1つのくぼみで2箇所のコールドスポットをカバーしようとすると、くぼみの体積を比較的大きくせざるを得ず、冷凍麺塊全体が大きくなってしまう点で、好ましくない。
【0029】
また、くぼみを3箇所以上設けた場合、成型上、くぼみとくぼみの間の麺の密度が高くなる傾向があり、そのためレンジ解凍調理時に、温度ムラが生じ易い。さらにコールドスポット以外の位置にくぼみを設ける結果となり、昇温ムラを効果的に改善できない場合がある。
【0030】
本発明においては、2つのくぼみの位置を、底面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存するようにすることが好ましい。具体的には、2等分した面の重心を含む位置に、好ましくは2等分した面の重心とくぼみの横断面(上面又は底面に平行な断面)の重心が一致するように、くぼみを設けることが好ましい。本発明で「各くぼみは、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存し」というときは、特に記載した場合を除き、このような趣旨で述べている。横断面が円であるくぼみを設けた態様の模式図を図1に示す。横断面が長方形であるくぼみを設けた態様の模式図を図2に示す。
【0031】
くぼみの形状については、円柱状、直方体状、半球状、かまぼこ型などが考えられるが、特に限定されるものではない。機械特性などを考慮して、適時変更可能である。2つのくぼみの形状は、同じとすることができる。
【0032】
従来技術には、冷凍麺塊に設けるべきくぼみの空間率について言及しているものはあるが(前掲特許文献1における「空洞率」参照。)、くぼみを設けるべき位置について、具体的に示したものはない。
【0033】
空間率:
本発明においては、2つのくぼみの体積の総和の麺塊体積に対する割合(空間率)は、30%未満とすることができ、20%未満とすることが好ましく、10%未満とすることがより好ましい。いずれの場合においても、空間率は、2%以上であり、3%以上であることが好ましく、4.5%以上であることがより好ましい。
【0034】
本発明においては、くぼみをコールドスポットが発生し得る位置に設けることにより、くぼみの体積を抑えることができる。くぼみ体積が少ないと、麺塊全体をコンパクトにすることができる点で、好ましい。
【0035】
深さ率:
本発明においては、各くぼみの深さの麺塊の厚みに対する割合(深さ率)に特に制限はない。くぼみの深さは、冷凍成型のために用いるトレーの底部に凸部を設けてくぼみを形成した場合には、凸部の高さとほぼ一致するので、深さ率の計算においては、くぼみの深さ値として凸部の高さ値を用いてももよい。なお、くぼみの形状が半球状やかまぼこ型である場合、くぼみの深さは、最も深い部分(凸部としては最も高い部分)に基づいて計算する。本発明者らの検討によると、深さ率は、30%のときに、加熱ムラの解消に有効であることが分かっている。くぼみは、貫通していてもよい。すなわち、深さ率は100%であってもよい。深さ率の上限は、成型しやすさや、麺塊全体の体積を抑えるとの観点から定めてもよく、また麺塊の割れにくさ、麺の均一充填のしやすさといった観点から定めてもよい。総じて、本発明の冷凍麺塊においては、深さ率は、30〜100%とすることができ、また30〜65%とすることができる。
【0036】
なお、本発明において数値範囲を「A1〜A2」と表わすときは、特に記載した場合を除き、その数値範囲は、両端のA1及びA2を含む。
【0037】
くぼみ面積占有率:
本発明においては、2つのくぼみの入口断面の面積の総和の、上面又は底面の面積に対する割合(くぼみ面積占有率)は、5%以上とすることができ、7%以上とすることがより好ましい。なお、くぼみの入り口断面の面積は、冷凍成型のために用いるトレーの底部に凸部を設けてくぼみを形成した場合には、凸部の底面の面積とほぼ一致するので、くぼみ面積占有率の計算においては、くぼみの入り口断面の面積値として凸部の底面の面積値を用いてもよい。
【0038】
その他:
本発明においては、くぼみの形状は、側面に貫通した溝状でなければよく、角柱状、直円柱状、楕円柱状、球台(球を平行な二平面で切断したときの、その二平面にはさまれた部分)状、半球状、かまぼこ状(円柱を軸方向に平行な面で切断ときの、その一部)、角錘台(角錘を平行な二平面で切断したときの、その二平面にはさまれた部分)状、角錘状、又は直円錐状等とすることができる。
【0039】
本発明の冷凍麺塊は、圧縮(プレス)されていてもよい。
【0040】
本発明で「圧縮」というときは、特に記載した場合を除き、麺間の空隙を少なくするように麺塊の上面を抑え、麺塊の容積を減じ、かつ麺塊正面をより平坦にすることをいう。圧縮には、板状体を用いることができ、また適切であれば、別のトレーの底面を利用することができる。
【0041】
板状体の形状は、麺塊の表面をさらに均しつつ、必要に応じ圧縮することができるのであれば、特に制限はないが、略板状の部分を有し、着脱が容易なように柄を設けてもよい。板状体を取り除く際の食品の付着を防止するために、食品との接着面積が少なくなるような形状としてもよい。このためには、例えば、波板状としたり、板状の部分にスリットを設けたりすることができる。
【0042】
本発明においては、麺塊の圧縮は、板状体で、枠内又は開口部を有する容器内に充填された加熱調理済みの麺塊の上面又は開口部面を均しつつ抑えることによりなされる。これにより、麺立ち(一部の麺が、周囲に比較して、5mm以上突出すること。)の発生が防止される。突出した麺は、冷凍固化すると、包装材料を損傷することがあり、また破損しやすいために端材(麺の破片)を生じさせることがあり、製造上好ましくない。麺塊の圧縮は、麺立ちを抑えるために、有効である。
【0043】
本発明における圧縮は、少なくとも麺立ち抑制上有効な程度まで、行われる。
【0044】
[冷凍麺塊の製造]
本発明の冷凍麺塊の製造方法は、所定の形状の麺塊を形成することができる限り、制限はないが、例えば、茹で調理済みの麺の一定量をトレー内に収容し、冷凍成型することにより、製造することができる。
【0045】
本発明で「トレー」というときは、特に記載した場合を除き、麺塊を冷凍成型するための容器を指す。トレーは、上側の開放口と、麺塊を収納するための壁面及び底面からなる収納部とを有し、トレー底面は、長方形である。収納部には必要に応じ、水を排するためのスリットや穴が1又は複数個設けられている。収納部は網状材料からなる(ざる様)場合もある。
【0046】
このトレーは、冷凍麺にくぼみを設けるための凸部を底面に有していてもよい。凸部の形状は、形成したいくぼみの形状から適宜設計できる。
【0047】
また、トレーの材料は、冷凍成型後のトレーからの冷凍麺塊の離脱、すなわち脱パンが容易であるように、変形可能な材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等であってもよい。くぼみを設けた麺塊は、脱パン工程において、通常の麺塊より破損しやすい傾向がある。このような欠点を避けるためには、冷凍成型された麺塊をトレーから、ハンマー等を用いて衝撃を与えるのではなく、左右等への捻りをトレーに加えて、変形させることにより、離脱させることが好ましい場合がある。このような脱パンを行うためには、前掲特許文献9(特開2010-254375)に記載された分離装置を適用することができる。
【0048】
トレーにおいては、内側の底面及び側面に、スリットを形成することにより、麺を充填した際に、水がよく切れ、また冷凍した麺との接触面積を減らすことができるために、脱パンが容易となる。
【0049】
本発明の冷凍麺塊の製造において、トレー入り麺塊を冷凍するための手段としては、従来技術のものを利用することができる。
【0050】
[評価]
本発明の冷凍麺塊は、電子レンジによる解凍調理の際に、通常のくぼみを有さない同じ底面積、低麺塊加熱ムラが少ない。加熱ムラは、当業者によく知られた種々の方法で評価することができ、例えば、各種のサーモグラフィの手法が適用可能である。
【0051】
本発明の冷凍麺塊は、加熱ムラの評価に加えて、又は加熱ムラの評価に換えて、レンジ焼けの有無や程度により、評価することができる。
【0052】
本発明でレンジ焼けというときは、特に記載した場合を除き、マイクロ波が一部に集中し、部分的に過加熱となる現象(場合によっては焦げることもある)を指す。レンジ焼けは、具体的には、1名以上の熟練者により外観、及び/又は麺の触診により、評価することができる。より具体的な手法は、本明細書の実施例の項を参照にすることができる。
【0053】
[その他]
本発明の製造方法において麺塊を構成する麺の種類に特に制限はないが、うどん(例えば、讃岐うどん、稲庭うどん)、そば(例えば、十割蕎麦、二八蕎麦)、中華麺(例えば、ラーメン)及びパスタ(例えば、スパゲッティ、スパゲッティーニ、タリアテッレ、リングイネ等のロングパスタ;マカロニ等のショートパスタ;ラザニア、ニョッキ)からなるものとすることができる。麺の太さについても、麺食品として通常の許容される太さであれば、特に制限はなく、例えば、厚みが6.0mm以下であれば、種々の麺幅のものについて本発明を適用できる。好適に適用できることが確認されている麺の例は、幅5.2mm×厚み4.0のうどん、幅2.0mm×厚み2.0のそば、幅2.0mm×厚み2.0のラーメン、幅2.4mm×厚み2.4のパスタである。なお、本発明に関し、麺のサイズ(幅、厚み、長さ)、重量、比重(密度)をいうときは、特に記載した場合を除き、茹で調理後のもののサイズ、重量を指す。
【0054】
うどんとは、一般に、小麦粉に食塩水を加えて混捏し、平板上に延ばしてから細長く切断するか、細長く引き伸ばして麺線としたものをいい、通常、茹で調理後に、つけ汁にひたすか、汁とともに似て喫食するものである。本発明において「うどん」は通常の意味で用いている。冷凍うどんとしては、200g〜250gの麺塊を冷凍したものが流通している。従来の冷凍うどん塊の大きさは、鍋に投入しやすいように、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmであり、麺塊密度は0.55〜0.60(g/cm3)、重量あたりの麺塊表面積は1.8〜2.0(cm2/g)である。
【0055】
そばは、原料粉にそば粉を多く含む麺をいう。そばは、一般には、そば切りとも呼ばれる。本発明において「そば」は通常の意味で用いている。冷凍そばとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍そば塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0056】
「ラーメン」は、中華麺の一種であり、中華麺は、一般には、中華そばと称されることもある。中華麺は、タンパク質含量の高い強力粉や準強力粉を用い、かんすいを添加する点に特徴がある。本発明において「ラーメン」「中華麺」は通常の意味で用いている。本明細書の実施例においては、ゆで調理されるラーメンについて検討しているが、焼きそばや湯揚調理に用いられる蒸し用の中華麺においても同様に本発明を適用することができると考えられる。冷凍ラーメンとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍ラーメン塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0057】
そば及びラーメンのような比較的細い麺は、太麺のうどんの場合と比較して、冷凍麺塊に高さ(厚み)が出やすい。そのため、従来品においては、一般に、製品重量を少なくすることにより製品嵩が抑えられている。
【0058】
パスタは、一般に、デュラム小麦のセモリナ粉に、水を加えて混捏した生地を押し出し成形したものをいい、それを乾燥した物(乾麺)も多く流通している。本発明において「パスタ」は通常の意味で用いている。冷凍パスタの従来品は、家庭用には、具材の入った電子レンジ調理用のものが主流である。業務用においては、茹で調理対応の冷凍麺が流通している。
【0059】
本発明に用いる麺塊を構成する麺は、特に好ましい態様においては、うどん、特に讃岐うどん、稲庭うどんなどからなるものである。
【0060】
なお、本明細書の実施例では、調製した生麺から圧縮冷凍麺塊を調製しているが、本発明に用いられる原料麺は、性状(生麺であるか、乾麺であるか等)、製法(機械延であるか、押出成形であるか、手延であるか、等)に特に制限はない。特に、生麺のみならず、乾麺からも同様に調製することができる。
【0061】
本発明においては、麺塊を構成する加熱調理済み麺の量は、適宜設定することができる。麺量の下限は、特に制限はないが、例えば30g、50g、80gとすることができる。上限も様々とすることができるが、例えば1000g、500g、300gとすることができる。麺量の範囲は、例えば、100g〜300gである。圧縮するので、麺塊あたりの重量を従来の冷凍麺塊より増すことができる。典型的には、200g程度である。
【0062】
本発明はまた、加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる冷凍麺塊の、電子レンジ解凍の際の、温度ムラを低減する方法であって、冷凍麺塊の形状を、略直方体であって、上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを設け;空間率が、2%以上30%未満であり;かつ深さ率が、30〜100%であるようにする、方法も提供する。この方法においてもまた、各くぼみが、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存することが好ましく、また2つのくぼみの形状は、同じとすることができる。
【実施例】
【0063】
[実施例1:麺塊形状の検討]
一食分(200g)の茹でうどん(幅約5.2mm×厚み約3.5mm×長さ約300mm)の麺塊を、底面が135mm×95mmの小トレー又は173mm×150mmの中トレー(それぞれ、スリット入り)を用いて成型するに際し、トレーの底部に種々の形状の凸部を設けることにより、くぼみを有する冷凍麺塊を調整し、評価した。
【0064】
うどんの製造
澱粉入り小麦粉1000gに、水423gに塩47gを予め溶解させたものを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして、そぼろ状の生地を得、圧延、複合し、厚み約10mmで2時間25℃にて熟成させた。熟成後、常法にて圧延し、9番の麺線似て、厚み3.0mmの生うどんを得た。その後、十分な量の沸騰したお湯の中で、約12分茹で、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して茹でうどんを得た。茹でうどんを約200gずつに分けた。
【0065】
麺塊の成型
底面に、種々の形状の凸部を有するトレーに、約10cmの高さから200gの麺を投入し、麺塊上面を手で均した後、平板を用いて500g重程度の力で上面を押さえた。次いで、麺塊をトレーごと-40℃設定のフリーザーに入れ、約20分間で凍結した。凍結後、トレーをはずし、成型された冷凍麺塊を得た。
【0066】
電子レンジ調理
得られた冷凍麺塊は、電子レンジとして、ターンテーブルのないフラットタイプのもの(東芝、ER-V9 2002年製)を用い、ラップで包んで1食分ずつ、600Wで3分30秒、解凍調理した。
【0067】
評価方法
調理後、ラップをはずし、麺塊をサーモグラフィ(装置名:testo875、testo社製)で撮影し、温度分布を見た。装置の計測ソフトを用いて、麺塊の内側で一番大きい長方形を描くことで、測定範囲を選択し、範囲内の温度を測定した(下図参照)。測定点は、撮影画像の大きさや測定範囲の大きさにもよるが、3000〜5000点である。温度分布は、各くぼみ形状について、2又は3個実施した。
【0068】
【表1】

【0069】
レンジ焼けは、1名の熟練者により、外観と、麺1本1本を触診し、硬化部分のある麺の本数を数え、全体の麺の本数で割り算し、焼け割合を求めた。また官能評価は、1名の熟練者が実際に喫食することにより、三段階(○;うどんとして適切である。△;やや硬い部分がある。×;硬い部分があり、喫食上問題がある。)で評価した。
【0070】
結果
結果を次に示した。
【0071】
【表2】

【0072】
くぼみがない従来の形状の場合((1)及び(9))、麺塊中心ではなく、長辺方向左右にずれた2箇所に、コールドスポットが観られた。
【0073】
コールドスポットができやすい2箇所にくぼみをつけた、(2)、(3)、(4)は効果が現れ、端まで溝をつけた(5)や、(3)とほぼ同等の空間率の円形くぼみをつけた(6)では効果がなかった。つまり、コールドスポットをくぼみがカバーしていること、及びくぼみが麺塊の端まで達していないことが重要であると考えられた。(7)及び(8)は、くぼみが大きいために、麺塊全体としては薄くなった(表面積増)ためと、くぼみがコールドスポットをカバーしているため、効果が現れていると考えられた。
【0074】
【表3】

【0075】
また、くぼみの形を円柱、直方体から、半円((10)、(13))、かまぼこ型(11)、(12)、(14)、(15))に変えたものについても同様の効果が確認できた。特にくぼみの形状には制限されないことが明らかになった。
【0076】
[実施例2:再現性の確認]
フラットタイプのレンジに比較し、全体的な昇温が遅いという特徴がある、ターンテーブル式の電子レンジ(SANYO EMO-C16A(SB) 2008年製)を用いた以外は同じ条件で、各麺塊形状を評価した。フラットタイプの場合と同様、麺塊中心ではなく、長辺方向左右にずれた2箇所に、コールドスポットが現れた。また、レンジ焼け、及びコンクリート化を防ぐ観点からは、2箇所にくぼみを設けた実施例1でいう(2)〜(4)の形状が、同様に有効であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる、略直方体の冷凍麺塊であって、
上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを有し;
2つのくぼみの体積の総和の麺塊体積に対する割合(空間率)が、2%以上30%未満であり;かつ
くぼみの深さの麺塊の厚みに対する割合(深さ率)が、30〜100%である、冷凍麺塊。
【請求項2】
各くぼみが、該面を短辺に平行な線で2等分したときのそれぞれの中央に存する、請求項1に記載の冷凍麺塊。
【請求項3】
空間率が、3%以上10%未満である、請求項1又は2に記載の冷凍麺塊。
【請求項4】
深さ率が、30〜65%である、請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍麺塊。
【請求項5】
2つのくぼみの入口断面の面積の総和の、上面又は底面の面積に対する割合(くぼみ面積占有率)が、5%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍麺塊。
【請求項6】
加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を冷凍してなる冷凍麺塊の、電子レンジ解凍の際の、温度ムラを低減する方法であって、冷凍麺塊の形状を、
略直方体であって、
上面又は底面のいずれか一方の面に、2つのくぼみを設け;
空間率が、2%以上30%未満であり;かつ
深さ率が、30〜100%であるようにする、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−34407(P2013−34407A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171365(P2011−171365)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本食品工学会 第12回(2011年度)年次大会講演要旨集にて発表
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】